以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
(第1実施形態)
本実施形態において、単斜晶系β型チタン複合酸化物とは、単斜晶系二酸化チタンの結晶構造を有するチタン複合酸化物を示す。単斜晶系二酸化チタンの結晶構造はTiO2(B)と表記する。TiO2(B)は、主に空間群C2/mに属し、図1に例示されるようなトンネル構造を示す。TiO2(B)の詳細な結晶構造に関しては、非特許文献1に記載されている。
図1に示すようにTiO2(B)は、チタンイオン73と酸化物イオン72が骨格構造部分71aを構成し、この骨格構造部分71aが交互に配置された構造を有する。骨格構造部分71a同士の間には空隙部分71bが形成される。この空隙部分71bは、異原子種のインターカレート(挿入)のホストサイトとなることができる。TiO2(B)はまた、結晶表面にも異原子種を吸蔵放出可能なホストサイトが存在するといわれている。リチウムイオンがこれらのホストサイトに挿入・脱離することにより、TiO2(B)はリチウムイオンを可逆的に吸蔵・放出することができる。
リチウムイオンが空隙部分71bに挿入されると、骨格を構成するTi4+がTi3+へと還元され、これによって結晶の電気的中性が保たれる。TiO2(B)を有するチタン酸化物は化学式あたり1つのTi4+を有するため、理論上、層間に最大1つのリチウムイオンを挿入することが可能である。このため、TiO2(B)を有するチタン酸化物は一般式LixTiO2 (0≦x≦1)により表わすことができる。この場合、理論容量335mAh/gが得られる。
チタン酸リチウムは導電性に乏しいため、大電流特性を向上させるために粒子径を小さくして用いられることがある。しかしながら、微粒子化したチタン酸リチウムは、比表面積が大きいため、電極中で集電体と活物質の密着強度が低く、界面の抵抗が大きくなることがあった。
そこで、本発明者らは、単斜晶系β型チタン複合酸化物の二次粒子を製造し、これを用いて電極を作製した。しかしながら、このような二次粒子は、電極の製造工程において崩壊し、一次粒子の形状となりやすいことが分かった。二次粒子が崩壊して一次粒子の形状になると、活物質間の結着強度が低下し、活物質と集電体の剥離が生じやすくなる。
さらに、K2Ti4O9のような単斜晶系β型チタン複合酸化物の合成前駆体が繊維粒状に成長しやすいため、一次粒子も主として繊維粒状である。そのため、塗工及び圧延のような電極製造工程において、繊維状の一次粒子が集電体となる基板と平行に並んでしまう。
本発明者らは、リチウムイオンの吸蔵及び放出に伴って、結晶格子の拡張及び収縮が起こり、さらに、特定の結晶軸に沿って大きく拡張及び収縮が生じることを確認している。繊維状の一次粒子が集電体と平行に並んでいる場合、特定方向に電極体積の膨張及び収縮が繰り返されるため、電池厚さが変化する。これが原因となって、電極層が基板から剥離し易くなったり、電池がよれたり、電極間が広がって、電池の抵抗が大きくなり、電池特性が低下するという問題がある。
そこで、本発明者らは、圧縮破壊強度が高い単斜晶系β型チタン複合酸化物の二次粒子を用いることにより、電極製造の際に二次粒子が崩壊せず、優れた大電流性能と充放電サイクル性能に寄与する電極用活物質を提供できることを見出した。なお、ここで二次粒子の圧縮破壊強度とは、粉体強度と称することもできる。
本実施形態における電池用活物質は、平均一次粒径が1nm以上10μm以下である単斜晶系β型チタン複合酸化物の一次粒子を含む平均粒径が1μm以上100μm以下である二次粒子を含み、該二次粒子の圧縮破壊強度が20MPa以上である。
電池用活物質に単斜晶系β型チタン複合酸化物の二次粒子を含むことにより、リチウムイオンを吸蔵及び放出する際に、等方的に体積変化が起こるため、電極層内の応力が緩和され、抵抗の増大を抑制することができる。
二次粒子は、平均粒径が1μm以上100μm以下である。平均粒径が1μm未満であると、工業生産上、扱い難くなり、100μmを超えると、電極を作製するための塗膜において、質量及び厚さを均一にすることが困難になり、また、表面平滑性が低下しやすくなる。二次粒子の平均粒径は、3μm以上30μm以下であることがより好ましい。
単斜晶系β型チタン複合酸化物が二次粒子状であることは、走査型電子顕微鏡(SEM)観察によって確認できる。
二次粒子の平均粒径の測定方法は、以下の通りである。レーザー回折式分布測定装置(島津SALD-300)を用い、まず、ビーカーに試料を約0.1gと界面活性剤と1〜2mLの蒸留水を添加して十分に攪拌した後、攪拌水槽に注入し、2秒間隔で64回光度分布を測定し、粒度分布データを解析するという方法にて測定した。
二次粒子を構成する一次粒子は、平均一次粒径が1nm以上10μm以下である。平均一次粒径が1nm未満であると、工業生産上、扱い難くなり、10μmを超えると、チタン複合酸化物の固体内におけるリチウムイオンの拡散が遅くなる。平均一次粒径は、10nm以上1μm以下であることがより好ましい。
平均一次粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)観察によって確認できる。典型的な視野から抽出される典型的な粒子10個の平均を求め、平均一次粒径を決定する。
一次粒子は繊維状であることが好ましい。本実施形態において、繊維状の粒子とは、アスペクト比が3以上である粒子を意味する。一次粒子が繊維状である場合、平均一次粒径は繊維直径である。一次粒子が繊維状粒子であることは、走査型電子顕微鏡(SEM)観察によって確認できる。
二次粒子の圧縮破壊強度は20MPa以上である。圧縮破壊強度が20MPa未満であると、電極製造工程中に粒子が崩壊して、電極の結着性が低下し、活物質と集電体の剥離が生じてサイクル寿命が大きく低下する。圧縮破壊強度は、好ましくは35MPa以上である。圧縮破壊強度の上限は100MPa以下であることが好ましい。圧縮破壊強度が100MPa以下であると、電極密度が高めやすく、体積エネルギー密度を増大させることができる。
二次粒子は、BET法によって測定された比表面積が、5m2/g以上50m2/g以下であることが好ましい。比表面積が5m2/g以上である場合には、リチウムイオンの吸蔵・脱離サイトを十分に確保することが可能になる。比表面積が50m2/g以下である場合には、工業生産上、扱い易くなる。
(圧縮破壊強度の測定)
圧縮破壊強度(St[MPa])は、以下に示す装置により測定され、下記(1)式に示す平松らの式(非特許文献2)により求められる。
測定装置:島津微小圧縮試験機MCT−W
<試験条件>
試験圧子:FLAT50
測定モード:圧縮試験
試験力: 20.00[mN]
負荷速度:0.892405[mN]/sec]
算出式:St=2.8P/πd2 (1)式
P:試験力[N]、d:粒子径(mm)
本実施形態では、粒径が平均粒径の±3μm以内である二次粒子5個について、上述の測定を行い、測定値の平均値を圧縮破壊強度とした。
本実施形態において、単斜晶系β型チタン複合酸化物にはさらに、5族及び13族から選ばれる少なくとも1つの元素を含むことが好ましい。当該元素を含む単斜晶系β型チタン複合酸化物中の当該元素の含有量は、0.03質量%以上15質量%以下の範囲であることが好ましい。
5族、13族から選ばれる少なくとも1つの元素を、0.03質量%以上含むことにより、十分な圧縮破壊強度を得ることができ、15質量%以下含むことにより、電気容量及び充放電サイクル性能を低下させる要因となり得るTiO2(B)の異相の発生を防ぐことができる。該元素のより好ましい含有量は、1質量%以上10質量%以下である。
5族、13族から選ばれる少なくとも1つの元素は、V、Nb、Ta、Al、Ga及びInの群から選択されることが好ましく、特に、Nb、V、及びAlから選択されることが好ましい。上記少なくとも1つの元素は、単独で添加されてもよく、あるいは、2種以上の元素が添加されてもよい。2種以上の元素を添加する場合は、何れの組み合わせであってもよいが、特にNbとV,NbとAl,及びNbとVとAlの組合せを用いることが好ましい。
5族、13族から選ばれる少なくとも1つの元素は、単斜晶系β型チタン複合酸化物のTiサイトの一部を置換した状態で存在するか、又は固溶された状態であると考えられる。5族、13族から選ばれる少なくとも1つの元素の含有量を多くすると、より高い圧縮破壊強度を得ることができるが、該元素の固溶限を超えると異相が表れるため、固溶限の範囲内で添加することが好ましい。0.03質量%以上15質量%以下の範囲で含ませることにより、より効果的に二次粒子の圧縮破壊強度を高めることができる。
なお、2種以上の元素を添加する場合は、それらの元素を合計した含有量が0.03質量%以上15質量%以下であることが好ましい。
5族、13族から選ばれる少なくとも1つの元素の合計含有量は、ICP発光分光法によって測定できる。ICP発光分光法による上記元素の含有量の測定は、例えば以下の方法で実行できる。放電状態で電池を解体し、電極(例えば負極)を取り出し、その負極層を水中で失活する。その後、負極層中のチタン複合酸化物を抽出する。抽出処理は、例えば、バインダーにポリフッ化ビニリデンを用いた場合には、N-メチル-2-ピロリドンなどで洗浄してバインダー成分を除去した後、適切な目開きのメッシュで導電剤を除去する。これらの成分が僅かに残存する場合は、大気中での加熱処理(例えば、250℃で30分など)によって除去すれば良い。抽出したチタン複合酸化物を容器に測り取った後、酸融解またはアルカリ融解して測定溶液を得る。この測定溶液を測定装置(例えばエスアイアイ・ナノテクノロジー社製:SPS−1500V)でICP発光分光を行なって上記元素の含有量を測定する。
本実施形態における活物質を負極活物質として用いる場合、単独で用いてもよいが、他の活物質とともに用いてもよい。他の活物質は、例えば、スピネル構造を有するリチウムチタン複合酸化物(Li4Ti5O12など)、アナターゼ或いはルチル構造を有するチタン複合酸化物(a−TiO2、r−TiO2)、鉄複合硫化物(FeS、FeS2など)を用いることができる。また、本実施形態における活物質を正極活物質として用いる場合、単独で用いてもよいが、他の活物質とともに用いてもよい。他の活物質は、例えば、スピネル構造を有するリチウムチタン複合酸化物(Li4Ti5O12など)、アナターゼ或いはルチル構造を有するチタン複合酸化物(a−TiO2、r−TiO2)、鉄複合硫化物(FeS、FeS2など)を用いることができる。
電極中に他の活物質も含まれる場合は、5族、13族から選ばれる少なくとも1つの元素の合計含有量は、以下のように測定することができる。電極中から取り出した負極活物質をTEM−EDXに供し、制限視野回折法によって各々の粒子の結晶構造を特定する。β型TiO2に帰属される回折パターンを有する粒子を選定し、EDX分析によって、5族、13族から選ばれる少なくとも1つの元素の合成含有量を測定する。
電池を解体して活物質を抽出する場合、以下の手順によって行うことができる。まず、電池を25℃環境において0.1C電流で定格終止電圧まで放電させる。放電させた電池を不活性雰囲気中で解体し、電極(例えば負極)中央部を切り出す。切り出した負極をエチルメチルカーボネートで充分に洗浄して電解質成分を除去した後、大気中で1日放置するか、或いは水で洗浄し、失活させる。その後、負極層中のチタン複合酸化物を抽出する。抽出処理は、例えば大気中で、200〜300℃、3時間未満の加熱処理によって負極層中の導電剤及び結着剤を除去することにより行うことができる。
(製造方法)
次に、実施形態に係る電池用活物質の製造方法を説明する。
本実施形態の製造方法は、チタンを含む化合物及びアルカリカチオンを含む化合物を含む原料二次粒子を製造することと、該原料二次粒子を加熱処理して、二次粒子状のプロトン交換前駆体を得ることと、該プロトン交換前駆体に酸を反応させてアルカリカチオンをプロトン交換することにより、二次粒子状のプロトン交換体を得ることと、該プロトン交換体を加熱処理することにより、二次粒子状の単斜晶系β型チタン複合酸化物を得ることと、を含む。
本実施形態の方法に従って、チタンを含む化合物及びアルカリカチオンを含む化合物のような出発原料を二次粒子形状にし、この二次粒子を高温で焼成することにより、最終産物として圧縮破壊強度が高い単斜晶系β型チタン複合酸化物の二次粒子を得ることができる。
以下、より詳細に説明する。
まず、出発原料を用いて二次粒子を製造する。この出発原料からなる二次粒子を、原料二次粒子と称する。原料二次粒子は、出発原料を所定比率で混合し、例えばスプレードライすることによって製造できる。
出発原料には、チタンを含む化合物と、アルカリカチオンを含む化合物を用いることができ、例えば、アナターゼ構造を有するTiO2、K2CO3、Na2CO3、又は、Cs2CO3などを用いることができる。
スプレードライは、例えば、純水のような溶媒に、アルカリカチオンを含む化合物を溶解し、これにチタンを含む化合物を分散させて噴霧することにより実施できる。スプレードライによれば、微粒子を高分散した液滴を瞬時に乾燥することができるため球状の二次粒子が得られ易い。
次いで、原料二次粒子を熱処理し、プロトン交換前駆体として用いられる二次粒子状のチタン酸アルカリ化合物を得る。チタン酸アルカリ化合物は、これらに限定されないが、Na2Ti3O7、K2Ti4O9、又はCs2Ti5O12のような、チタン酸ナトリウム、チタン酸カリウム又はチタン酸セシウムであることが好ましい。所望のチタン酸アルカリ化合物に合わせて出発原料を混合する比率を決定する。熱処理は、850〜1200℃の温度範囲で、1〜100時間の間行われることが好ましい。この原料二次粒子を上記温度範囲で焼成することにより、二次粒子の圧縮破壊強度を上昇させることができる。一次粒子及び二次粒子の平均粒径は、熱処理の温度と時間を変化させることによって調節することができる。
単斜晶系β型チタン複合酸化物に、5族及び13族から選ばれる少なくとも1つの元素を含有させる場合は、出発原料、即ち、チタンを含む化合物及びアルカリカチオンを含む化合物のうち少なくともいずれかに、5族、13族から選ばれる少なくとも1つの元素を含有させてもよい。或いは、Nb2O5のような、5族又は13族の元素を含む化合物を、出発原料と混合してもよい。
次に、チタン酸アルカリ化合物をプロトン交換に供する。得られた二次粒子状のチタン酸アルカリ化合物を純水で十分に水洗し、不純物を取り除く。その後、酸で処理することにより、アルカリカチオンがプロトンに交換される。酸処理は、例えば二次粒子状のチタン酸アルカリ化合物を濃度1Mの塩酸に加えて攪拌することによって行うことができる。酸処理は、充分にプロトン交換が完了するまで行われることが望ましい。プロトン交換時には、溶液にアルカリ性溶液を添加してpHを調整してもよい。プロトン交換の完了後、再び純水で水洗する。チタン酸ナトリウム、チタン酸カリウムおよびチタン酸セシウムは、結晶構造を崩さずにアルカリカチオンをプロトンに交換することが可能である。
次に、プロトン交換を終了した二次粒子状の生成物を水洗及び乾燥することにより、中間生成物である二次粒子状のプロトン交換体を得る。このプロトン交換体を加熱処理することにより、最終生成物である二次粒子状の単斜晶系β型チタン複合酸化物を得ることができる。原料二次粒子の製造工程において、5族、13族から選ばれる少なくとも1つの元素を含有した化合物を用いた場合は、5族、13族から選ばれる少なくとも1つの元素を含有した単斜晶系β型チタン複合酸化物が得られる。
プロトン交換体の加熱処理は、300℃〜500℃で行われることが好ましい。加熱温度を300℃未満にすると、結晶性が著しく低下し、電極容量、充放電効率、繰り返し特性が低下する。一方、加熱温度が500℃を超えると、アナターゼ相のような不純物相が生成され、容量が低下する虞がある。より好ましい加熱温度は、350℃〜400℃である。なお、プロトン交換体の加熱処理における、熱処理の温度と時間を変化させることによっても、一次粒子及び二次粒子の平均粒径を調節することができる。
本実施形態の方法では、出発原料を二次粒子の形状にすることにより、二次粒子の状態で高温焼成することが可能である。二次粒子の状態で高温焼成すると、一次粒子の界面における結合を増強させることができ、これによって、圧縮破壊強度の高い二次粒子を得ることができる。本実施形態の方法によって得られた単斜晶系β型チタン複合酸化物の二次粒子は、圧縮破壊強度が高く、電極製造工程においても崩壊しない。よって、該単斜晶系β型チタン複合酸化物を用いることにより、優れた充放電サイクル性能を有する非水電解質電池を製造できる電極活物質を提供することができる。
なお、本実施形態に係る電池用活物質は、負極のみならず、正極にも用いることができ、いずれに適用しても優れた充放電サイクル性能を得ることができる。すなわち、優れたサイクル特性は、二次粒子の圧縮破壊強度を高めることで得られる効果であり、負極に用いても正極に用いてもその効果は変わらない。したがって、実施形態に係る電池用活物質は正極にも負極にも用いることができ、同様な効果を得ることができる。
実施形態に係る電池用活物質を正極に用いる場合、対極としての負極の活物質は金属リチウム、リチウム合金、またはグラファイト、コークスなどの炭素系材料を用いることができる。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る非水電解質電池を説明する。
実施形態に係る非水電解質電池は、外装材と、外装材内に収納された正極と、外装材内に正極と空間的に離間して、例えばセパレータを介在して収納された活物質を含む負極と、外装材内に充填された非水電解質とを具備する。
負極の活物質には、第1実施形態にかかる電池用活物質が用いられる。
実施形態に係る非水電解質電池100の一例を示した図2、図3を参照してより詳細に説明する。図2は、外装材2がラミネートフィルムからなる扁平型非水電解質電池100の断面模式図であり、図3は図2のA部の拡大断面図である。なお、各図は説明のための模式図であり、その形状や寸法、比などは実際の装置と異なる個所があるが、これらは以下の説明と公知の技術を参酌して適宜、設計変更することができる。
扁平状の捲回電極群1は、2枚の樹脂層の間にアルミニウム箔を介在したラミネートフィルムからなる袋状外装材2内に収納されている。扁平状の捲回電極群1は、外側から負極3、セパレータ4、正極5、セパレータ4の順で積層した積層物を渦巻状に捲回し、プレス成型することにより形成される。最外殻の負極3は、図3に示すように負極集電体3aの内面側の片面に負極層3bを形成した構成を有する。その他の負極3は、負極集電体3aの両面に負極層3bを形成して構成されている。正極5は、正極集電体5aの両面に正極層5bを形成して構成されている。
捲回電極群1の外周端近傍において、負極端子6は最外殻の負極3の負極集電体3aに電気的に接続され、正極端子7は内側の正極5の正極集電体5aに電気的に接続されている。これらの負極端子6および正極端子7は、袋状外装材2の開口部から外部に延出されている。例えば液状非水電解質は、袋状外装材2の開口部から注入されている。袋状外装材2の開口部を負極端子6および正極端子7を挟んでヒートシールすることにより捲回電極群1および液状非水電解質を完全密封している。
負極端子は、例えばリチウムイオン金属に対する電位が0.6V以上3V以下の範囲における電気的安定性と導電性とを備える材料を用いることができる。具体的には、アルミニウムまたはMg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu、Si等の元素を含むアルミニウム合金が挙げられる。負極端子6は、負極集電体3aとの接触抵抗を低減するために、負極集電体3aと同様の材料であることが好ましい。
正極端子7は、リチウムイオン金属に対する電位が3〜5Vの範囲における電気的安定性と導電性とを備える材料を用いることができる。具体的には、アルミニウムまたはMg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu、Si等の元素を含むアルミニウム合金が挙げられる。正極端子7は、正極集電体5aとの接触抵抗を低減するために、正極集電体5aと同様の材料であることが好ましい。
以下、非水電解質電池100の構成部材である外装材2、負極3、正極5、セパレー4タおよび非水電解質について詳細に説明する。
1)外装材
外装材2は、厚さ1mm以下のラミネートフィルムから形成される。或いは、外装材は厚さ3mm以下の金属製容器が用いられる。金属製容器は、厚さ1mm以下であることがより好ましい。
外装材2の形状は、扁平型(薄型)、角型、円筒型、コイン型、及びボタン型から選択できる。外装材の例には、電池寸法に応じて、例えば携帯用電子機器等に積載される小型電池用外装材、二輪乃至四輪の自動車等に積載される大型電池用外装材などが含まれる。
ラミネートフィルムは、樹脂層間に金属層を介在した多層フィルムが用いられる。金属層は、軽量化のためにアルミニウム箔若しくはアルミニウム合金箔が好ましい。樹脂層は、例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の高分子材料を用いることができる。ラミネートフィルムは、熱融着によりシールを行って外装材の形状に成形することができる。
金属製容器は、アルミニウムまたはアルミニウム合金等から作られる。アルミニウム合金は、マグネシウム、亜鉛、ケイ素等の元素を含む合金が好ましい。合金中に鉄、銅、ニッケル、クロム等の遷移金属が含まれる場合、その量は100質量ppm以下にすることが好ましい。
2)負極
負極3は、集電体3aと、この集電体3aの片面または両面に形成され、活物質、導電剤および結着剤を含む負極層3bとを備える。
活物質としては、第1の実施形態に係る電池用活物質が用いられる。
このような活物質を含む負極層3bを備えた負極3を組み込まれた非水電解質電池100は、大電流特性および充放電サイクル性能を向上できる。
導電剤は、活物質の集電性能を高め、集電体との接触抵抗を抑える。導電剤の例は、アセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛を含む。
結着剤は、活物質と導電剤を結着できる。結着剤の例は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素系ゴム、スチレンブタジエンゴムを含む。
負極層3b中の活物質、導電剤および結着剤は、それぞれ70質量%以上96質量%以下、2質量%以上28質量%以下および2質量%以上28質量%以下の割合で配合することが好ましい。導電剤の量を2質量%以上とすることにより、負極層3bの集電性能を向上させ、非水電解質電池100の大電流特性を向上させることができる。また、結着剤の量を2質量%以上とすることにより、負極層3bと集電体3aの結着性を高め、サイクル特性を向上させることができる。一方、導電剤および結着剤はそれぞれ28質量%以下にすることが高容量化を図る上で好ましい。
集電体3aは、1Vよりも貴である電位範囲において電気化学的に安定であるアルミニウム箔またはMg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu、Siのような元素を含むアルミニウム合金箔であること好ましい。
負極3は、例えば活物質、導電剤および結着剤を汎用されている溶媒に懸濁してスラリーを調製し、このスラリーを集電体3aに塗布し、乾燥し、その後、プレスを施すことにより作製される。負極3はまた活物質、導電剤および結着剤をペレット状に形成して負極層3bとし、これを集電体3a上に形成することにより作製されてもよい。
3)正極
正極5は、集電体5aと、この集電体5aの片面または両面に形成され、活物質、導電剤および結着剤を含む正極層5bとを備える。
活物質は、例えば酸化物、ポリマー等を用いることができる。
酸化物は、例えばリチウムを吸蔵した二酸化マンガン(MnO2)、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケルおよびリチウムマンガン複合酸化物(例えばLixMn2O4またはLixMnO2)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLixNiO2)、リチウムコバルト複合酸化物(LixCoO2)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLiNi1-yCoyO2)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLixMnyCo1-yO2)、スピネル構造を有するリチウムマンガンニッケル複合酸化物(LixMn2-yNiyO4)、オリビン構造を有するリチウムリン酸化物(例えばLixFePO4、LixFe1-yMnyPO4、LixCoPO4)、硫酸鉄(Fe2(SO4)3)、またはバナジウム酸化物(例えばV2O5)を用いることができる。ここで、x、yは0<x≦1、0≦y≦1であることが好ましい。
ポリマーは、例えばポリアニリンやポリピロールのような導電性ポリマー材料、またはジスルフィド系ポリマー材料を用いることができる。イオウ(S)、フッ化カーボンもまた活物質として使用できる。
好ましい活物質の例には、正極電圧が高いリチウムマンガン複合酸化物(LixMn2O4)、リチウムニッケル複合酸化物(LixNiO2)、リチウムコバルト複合酸化物(LixCoO2)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(LixNi1-yCoyO2)、スピネル構造のリチウムマンガンニッケル複合酸化物(LixMn2-yNiyO4)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(LixMnyCo1-yO2)、またはリチウムリン酸鉄(LixFePO4)が含まれる。ここで、x、yは0<x≦1、0≦y≦1であることが好ましい。
さらに好ましい活物質は、リチウムコバルト複合酸化物またはリチウムマンガン複合酸化物である。これらの活物質は、イオン伝導性が高いため、前述した負極活物質との組み合わせにおいて、正極活物質中のリチウムイオンの拡散が律速段階になり難い。このため、前記活物質は前記負極活物質中のリチウムチタン複合酸化物との適合性に優れる。
導電剤は、活物質の集電性能を高め、集電体との接触抵抗を抑える。導電剤の例は、アセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛などの炭素質物を含む。
結着剤は、活物質と導電剤を結着させる。結着剤の例は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素系ゴムを含む。
正極層5b中の活物質、導電剤および結着剤は、それぞれ80質量%以上95質量%以下、3質量%以上18質量%以下および2質量%以上17質量%以下の割合で配合することが好ましい。導電剤は、3質量%以上の量にすることにより上述した効果を発揮することができる。導電剤は、18質量%以下の量にすることにより高温保存下での導電剤表面での非水電解質の分解を低減することができる。結着剤は、2質量%以上の量にすることにより十分な正極強度が得られる。結着剤は、17質量%以下の量にすることにより、正極中の絶縁材料である結着剤の配合量を減少させ、内部抵抗を減少できる。
集電体は、例えばアルミニウム箔、またはMg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu、Siのような元素を含むアルミニウム合金箔であることが好ましい。
正極5は、例えば活物質、導電剤および結着剤を汎用されている溶媒に懸濁してスラリーを調製し、このスラリーを集電体5aに塗布し、乾燥し、その後、プレスを施すことにより作製される。正極5はまた活物質、導電剤および結着剤をペレット状に形成して正極層5bとし、これを集電体5a上に形成することにより作製されてもよい。
4)非水電解質
非水電解質は、例えば電解質を有機溶媒に溶解することにより調製される液状非水電解質、または液状電解質と高分子材料を複合化したゲル状非水電解質を用いることができる。
液状非水電解質は、電解質を0.5M以上2.5M以下の濃度で有機溶媒に溶解することが好ましい。
電解質の例は、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、六フッ化砒素リチウム(LiAsF6)、トリフルオロメタスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、ビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム[LiN(CF3SO2)2]のリチウム塩、またはこれらの混合物を含む。電解質は、高電位でも酸化し難いものであることが好ましく、LiPF6が最も好ましい。
有機溶媒の例は、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ビニレンカーボネートのような環状カーボネート;ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)のような鎖状カーボネート;テトラヒドロフラン(THF)、2メチルテトラヒドロフラン(2MeTHF)、ジオキソラン(DOX)のような環状エーテル;ジメトキシエタン(DME)、ジエトエタン(DEE)のような鎖状エーテル;またはγ−ブチロラクトン(GBL)、アセトニトリル(AN)、スルホラン(SL)を含む。これらの有機溶媒は、単独または混合溶媒の形態で用いることができる。
高分子材料の例は、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエチレンオキサイド(PEO)を含む。
好ましい有機溶媒は、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)およびジエチルカーボネート(DEC)からなる群のうち、少なくとも2つ以上を混合した混合溶媒、またはγ−ブチロラクトン(GBL)を含む混合溶媒である。これらの混合溶媒を用いることにより、高温特性の優れた非水電解質電池を得ることができる。
5)セパレータ
セパレータ4は、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、セルロース、もしくはポリフッ化ビニリデン(PVdF)を含む多孔質フィルム、または合成樹脂製不織布を用いることができる。好ましい多孔質フィルムは、ポリエチレンまたはポリプロピレンから作られ、一定温度において溶融し、電流を遮断することが可能であるために安全性を向上できる。
以上記載した本実施形態によれば、優れた充放電サイクル性能を有する非水電解質電池を提供することができる。
(第3実施形態)
次に、実施形態に係る電池パックを詳細に説明する。
実施形態に係る電池パックは、上記第2実施形態に係る非水電解質電池(即ち、単電池)を一以上有する。電池パックに複数の単電池が含まれる場合、各単電池は、電気的に直列、並列、或いは、直列と並列に接続して配置される。
図4および図5を参照して電池パック200を具体的に説明する。図3に示す電池パック200では、単電池21として図2に示す扁平型非水電解液電池を使用している。
複数の単電池21は、外部に延出した負極端子6および正極端子7が同じ向きに揃えられるように積層され、粘着テープ22で締結することにより組電池23を構成している。これらの単電池21は、図5に示すように互いに電気的に直列に接続されている。
プリント配線基板24は、負極端子6および正極端子7が延出する単電池21側面と対向して配置されている。プリント配線基板24には、図5に示すようにサーミスタ25、保護回路26および外部機器への通電用端子27が搭載されている。なお、組電池23と対向する保護回路基板24の面には組電池23の配線と不要な接続を回避するために絶縁板(図示せず)が取り付けられている。
正極側リード28は、組電池23の最下層に位置する正極端子7に接続され、その先端はプリント配線基板24の正極側コネクタ29に挿入されて電気的に接続されている。負極側リード30は、組電池23の最上層に位置する負極端子6に接続され、その先端はプリント配線基板24の負極側コネクタ31に挿入されて電気的に接続されている。これらのコネクタ29,31は、プリント配線基板24に形成された配線32,33を通して保護回路26に接続されている。
サーミスタ25は、単電池21の温度を検出するために用いられ、その検出信号は保護回路26に送信される。保護回路26は、所定の条件で保護回路26と外部機器への通電用端子27との間のプラス側配線34aおよびマイナス側配線34bを遮断できる。所定の条件とは、例えばサーミスタ25の検出温度が所定温度以上になったときである。また、所定の条件とは単電池21の過充電、過放電、過電流等を検出したときである。この過充電等の検出は、個々の単電池21もしくは単電池21全体について行われる。個々の単電池21を検出する場合、電池電圧を検出してもよいし、正極電位もしくは負極電位を検出してもよい。後者の場合、個々の単電池21中に参照極として用いるリチウム電極が挿入される。図4および図5の場合、単電池21それぞれに電圧検出のための配線35を接続し、これら配線35を通して検出信号が保護回路26に送信される。
正極端子7および負極端子6が突出する側面を除く組電池23の三側面には、ゴムもしくは樹脂からなる保護シート36がそれぞれ配置されている。
組電池23は、各保護シート36およびプリント配線基板24と共に収納容器37内に収納される。すなわち、収納容器37の長辺方向の両方の内側面と短辺方向の内側面それぞれに保護シート36が配置され、短辺方向の反対側の内側面にプリント配線基板24が配置される。組電池23は、保護シート36およびプリント配線基板24で囲まれた空間内に位置する。蓋38は、収納容器37の上面に取り付けられている。
なお、組電池23の固定には粘着テープ22に代えて、熱収縮テープを用いてもよい。この場合、組電池の両側面に保護シートを配置し、熱収縮テープを周回させた後、熱収縮テープを熱収縮させて組電池を結束させる。
図4、図5では単電池21を直列接続した形態を示したが、電池容量を増大させるためには並列に接続しても、または直列接続と並列接続を組み合わせてもよい。組み上がった電池パックをさらに直列、並列に接続することもできる。
以上記載した本実施形態によれば、優れた充放電サイクル性能を有する電池パックを提供することができる。
なお、電池パックの態様は用途により適宜変更される。電池パックの用途は、大電流を取り出したときに優れたサイクル特性を示すものが好ましい。具体的には、デジタルカメラの電源用や、二輪乃至四輪のハイブリッド電気自動車、二輪乃至四輪の電気自動車、アシスト自転車等の車載用が挙げられる。特に、高温特性の優れた非水電解質電池を用いた電池パックは車載用に好適に用いられる。
(第4実施形態)
第4の実施形態に係る自動車は、第3の実施形態に係る電池パックを備える。ここでいう自動車としては、二輪〜四輪のハイブリッド電気自動車、二輪〜四輪の電気自動車、アシスト自転車などが挙げられる。
図6〜8は、内燃機関と電池駆動の電動機とを組み合わせて走行動力源としたハイブリッドタイプの自動車を示している。自動車の駆動力には、その走行条件に応じ、広範囲な回転数及びトルクの動力源が必要となる。一般的に内燃機関は理想的なエネルギー効率を示すトルク・回転数が限られているため、それ以外の運転条件ではエネルギー効率が低下する。ハイブリッドタイプの自動車は、内燃機関を最適条件で稼動させて発電すると共に、車輪を高効率な電動機にて駆動することによって、あるいは内燃機関と電動機の動力を合わせて駆動したりすることによって、自動車全体のエネルギー効率を向上できるという特徴を有する。また、減速時に車両のもつ運動エネルギーを電力として回生することによって、通常の内燃機関単独走行の自動車に比較して、単位燃料当りの走行距離を飛躍的に増大させることができる。
ハイブリッド自動車は、内燃機関と電動機の組み合わせ方によって、大きく3つに分類することができる。
図6には、一般にシリーズハイブリッド自動車と呼ばれるハイブリッド自動車50が示されている。内燃機関51の動力を一旦すべて発電機52で電力に変換し、この電力をインバータ53を通じて電池パック54に蓄える。電池パック54には上記第3の実施形態に係る電池パックが使用される。電池パック54の電力はインバータ53を通じて電動機55に供給され、電動機55により車輪56が駆動する。電気自動車に発電機が複合されたようなシステムである。内燃機関は高効率な条件で運転でき、電力回生も可能である。その反面、車輪の駆動は電動機のみによって行われるため、高出力な電動機が必要となる。また、電池パックも比較的大容量のものが必要となる。電池パックの定格容量は、5〜50Ahの範囲にすることが望ましい。より好ましい範囲は10〜20Ahである。ここで、定格容量とは、0.2Cレートで放電した時の容量を意味する。
図7には、パラレルハイブリッド自動車と呼ばれるハイブリッド自動車57が示されている。付番58は、発電機を兼ねた電動機を示す。内燃機関51は主に車輪56を駆動し、場合によりその動力の一部を発電機58で電力に変換し、その電力で電池パック54が充電される。負荷が重くなる発進や加速時には電動機58により駆動力を補助する。通常の自動車がベースになっており、内燃機関51の負荷変動を少なくして高効率化を図り、電力回生なども合わせて行うシステムである。車輪56の駆動は主に内燃機関51によって行うため、電動機58の出力は必要な補助の割合によって任意に決定することができる。比較的小さな電動機58及び電池パック54を用いてもシステムを構成することができる。電池パックの定格容量は、1〜20Ahの範囲にすることができる。より好ましい範囲は5〜10Ahである。
図8には、シリーズ・パラレルハイブリッド車と呼ばれるハイブリッド自動車59が示されている。シリーズとパラレルの両方を組み合わせた方式である。動力分割機構60は、内燃機関51の出力を、発電用と車輪駆動用とに分割する。パラレル方式よりもきめ細かくエンジンの負荷制御を行い、エネルギー効率を高めることができる。
電池パックの定格容量は、1〜20Ahの範囲にすることが望ましい。より好ましい範囲は5〜10Ahである。
上述した図6〜図8に示すようなハイブリッド自動車に搭載される電池パックの公称電圧は、200〜600Vの範囲にすることが望ましい。
電池パック54は、一般に外気温度変化の影響を受けにくく、衝突時などに衝撃を受けにくい場所に配置されるのが好ましい。例えば図9に示すようなセダンタイプの自動車では、後部座席61後方のトランクルーム62内などに配置することができる。また、座席61の下や後ろに配置することができる。電池質量が大きい場合には、車両全体を低重心化するため、座席の下や床下などに配置するのが好ましい。
本実施形態によれば、上記第3実施形態に係る優れたサイクル特性を有する電池パックを備えることにより、優れた性能を有する自動車を提供することができる。
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
(実施例1)
<正極の作製>
正極活物質としてリチウムニッケル複合酸化物(LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2)を用い、導電剤としてアセチレンブラック及びポリフッ化ビニリデン(PVdF)を用いて正極を作製した。
まず、リチウムニッケル複合酸化物粉末90質量%、アセチレンブラック5質量%、及びポリフッ化ビニリデン(PVdF)5質量%をN−メチルピロリドン(NMP)に混合してスラリーを調製した。このスラリーを厚さ15μmのアルミニウム箔からなる集電体の両面に塗布し、乾燥し、プレスして、電極密度が3.15g/cm3の正極を作製した。
<チタン複合酸化物の作製>
炭酸カリウム(K2CO3)、及びアナターゼ構造を有する酸化チタン(TiO2)から、スプレードライによって原料二次粒子を作製した。スプレードライは、K:Ti=2:4のモル比で前記原料を量り取り、これらを蒸留水を溶媒として分散させた後、スプレードライヤーを用いて噴霧乾燥させることにより行った。
次いで、該原料二次粒子を1000℃で24時間焼成し、K2Ti4O9の二次粒子を得た。このK2Ti4O9の二次粒子を純水で洗浄し、プロトン交換前駆体の二次粒子を得た。このプロトン交換前駆体の二次粒子は、平均粒径が約10μmであった。プロトン交換前駆体の二次粒子を1Mの塩酸溶液中に投入し、25℃の環境下で12時間攪拌してプロトン交換を行った。これにより、プロトン交換体の二次粒子を得た。
プロトン交換体の二次粒子を、大気中で350℃で3時間焼成し、チタン複合酸化物
(TiO2)の二次粒子を得た。この二次粒子は球状であり、平均粒径は9.6μmであり、比表面積は10.8m2/gであり、圧縮破壊強度は37MPaであり、平均一次粒径は0.30μmであった。
<チタン複合酸化物のX線回折解析>
得られたチタン複合酸化物を直径25mmの標準ガラスホルダーに詰め、広角X線回折法による測定を行った。その結果、図10に示すX線回折パターンを得た。この回折パターンから、得られたチタン複合酸化物を構成する主物質がJCPDS(Joint Committee on Powder Diffraction Standards):46−1237に帰属される単斜晶系β型チタン複合酸化物であることが確認された。以下に測定装置および条件を示す。
(1)X線回折装置:Bruker AXS 社製;D8 ADVANCE(封入管型)
X線源:CuKα線(Niフィルター使用)
出力 :40kV,40mA
スリット系:Div. Slit;0.3°
検出器:LynxEye(高速検出器)
(2)スキャン方式:2θ/θ連続スキャン
(3)測定範囲(2θ):5〜100°
(4)ステップ幅(2θ):0.01712°
(5)計数時間:1秒間/ステップ。
<負極の作製>
得られたチタン複合酸化物を活物質として用い、導電剤としてアセチレンブラック及びポリフッ化ビニリデン(PVdF)を用いて負極を作製した。
チタン複合酸化物粉末90質量%、アセチレンブラック5質量%、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)5質量%を、N−メチルピロリドン(NMP)に混合し、スラリーを調製した。このスラリーを厚さ15μmのアルミニウム箔からなる集電体の両面に塗布し、乾燥した。その後、プレスすることにより電極密度が1.9g/cm3の負極を作製した。
<電極群の作製>
正極、厚さ25μmのポリエチレン製多孔質フィルムからなるセパレータ、負極、及びセパレータを、この順序で積層し、次いで、渦巻き状に捲回した。これを90℃で加熱プレスすることにより、幅が30mm、厚さ1.8mmの偏平状電極群を作製した。得られた電極群をラミネートフィルムからなるパックに収納し、80℃で24時間真空乾燥した。ラミネートフィルムは厚さ40μmのアルミニウム箔の両面にポリプロピレン層を有する構成であり、全体の厚さが0.1mmである。
<液状非水電解質の調製>
エチレンカーボネート(EC)およびエチルメチルカーボネート(EMC)を1:2の体積比率で混合して混合溶媒とした。この混合溶媒に電解質であるLiPF6を1M溶解することにより液状非水電解質を調製した。
<非水電解質二次電池の製造>
電極群を収納したラミネートフィルムのパック内に液状非水電解質を注入した。その後、パックをヒートシールにより完全密閉し、図2に示す構造を有し、幅35mm、厚さ2mm、高さが65mmの非水電解質二次電池を製造した。
(実施例2〜4)
<チタン複合酸化物の作製>
炭酸カリウム(K2CO3)、及びアナターゼ構造を有する酸化チタン(TiO2)から、スプレードライによって原料二次粒子を作製した。スプレードライは、K:Ti=2:4のモル比で前記原料を量り取り、これらを蒸留水を溶媒として分散させた後、スプレードライヤーを用いて噴霧乾燥させることにより行った。このとき、噴霧条件を変えて、原料二次粒子の粒径を調整した。その後は実施例1と同様の方法でチタン複合酸化物(TiO2)の二次粒子を得た。この二次粒子は球状であり、平均粒径、比表面積、圧縮破壊強度、平均一次粒径は、表1の通りであった。
得られたチタン複合酸化物をX線回折により解析した結果、チタン複合酸化物を構成する主物質がJCPDS:46−1237に帰属される単斜晶系β型チタン複合酸化物であることが確認された。
このチタン複合酸化物を用いて、実施例1と同様に非水電解質二次電池を製造した。
(実施例5〜8)
<チタン複合酸化物の作製>
炭酸カリウム(K2CO3)、及びアナターゼ構造を有する酸化チタン(TiO2)から、スプレードライによって原料二次粒子を作製した。スプレードライは、K:Ti=2:4のモル比で前記原料を量り取り、これらを蒸留水を溶媒として分散させた後、スプレードライヤーを用いて噴霧乾燥させることにより行った。
次いで、該原料二次粒子を表1記載の温度で24時間焼成し、K2Ti4O9の二次粒子を得た。このK2Ti4O9の二次粒子を純水で洗浄し、プロトン交換前駆体の二次粒子を得た。このプロトン交換前駆体の二次粒子は、平均粒径が約10μmであった。プロトン交換前駆体の二次粒子を1Mの塩酸溶液中に投入し、25℃の環境下で12時間攪拌してプロトン交換を行った。これにより、プロトン交換体の二次粒子を得た。
その後は実施例1と同様の方法でチタン複合酸化物(TiO2)の二次粒子を得た。この二次粒子は球状であり、平均粒径、比表面積、圧縮破壊強度、平均一次粒径は、表1の通りであった。
得られたチタン複合酸化物をX線回折により解析した結果、チタン複合酸化物を構成する主物質がJCPDS:46−1237に帰属される単斜晶系β型チタン複合酸化物であることが確認された。
このチタン複合酸化物を用いて、実施例1と同様に非水電解質二次電池を製造した。
(実施例9〜23)
原料として、炭酸カリウム(K2CO3)、及び、アナターゼ構造を有する酸化チタン(TiO2)とともに、酸化ニオブ(Nb2O5)、酸化バナジウム(V2O5)、酸化アルミ(Al2O3)、酸化タンタル(Ta2O5)、酸化ガリウム(Ga2O3)、又は酸化インジウム(In2O3)、を用い、配合比を変えた以外は、実施例1と同様にしてチタン複合酸化物((Ti,Nb)O2)を合成した。
得られたチタン複合酸化物の平均一次粒径、二次粒子の平均粒径、比表面積、及び圧縮破壊強度をそれぞれ表1に示す。
得られたチタン複合酸化物をX線回折により解析した結果、チタン複合酸化物を構成する主物質がJCPDS:46−1237に帰属される単斜晶系β型チタン複合酸化物であることが確認された。
また、得られたチタン複合酸化物のNb、V、Al、Ta、Ga、又はInの濃度を、ICP発光分光法によって測定した。その結果を表1に示す。
得られたチタン複合酸化物を用いて、実施例1と同様に非水電解質二次電池を製造した。
(比較例1)
<チタン複合酸化物の作製>
炭酸カリウム(K2CO3)、及びアナターゼ構造を有する酸化チタン(TiO2)を
ジルコニア製容器を用いて、600rpmで3時間のボールミル処理を行って混合した。該混合物を600℃で24時間焼成してK2Ti4O9を合成した。これを純水で洗浄しプロトン交換前駆体を得た。得られたプロトン交換前駆体を1Mの塩酸溶液中に投入し、25℃の環境下で12時間攪拌して、プロトン交換体を得た。
プロトン交換体をスプレードライすることにより、平均粒径が約10μmの凝集粒子を得た。これを大気中で350℃、3時間焼成し、チタン複合酸化物(TiO2)を合成した。合成したチタン複合酸化物の平均粒径、比表面積、圧縮破壊強度、平均一次粒径は、表1の通りであった。
得られたチタン複合酸化物をX線回折により解析した結果、チタン複合酸化物を構成する主物質がJCPDS:46−1237に帰属される単斜晶系β型チタン複合酸化物であることが確認された。
このチタン複合酸化物を用いて、実施例1と同様に非水電解質二次電池を製造した。
(比較例2、3)
原料の混合物の焼成温度を表1に記載した通りにした以外は、比較例1と同様にチタン複合酸化物(TiO2)を合成した。得られたチタン複合酸化物をX線回折により解析した結果、チタン複合酸化物を構成する主物質がJCPDS:46−1237に帰属される単斜晶系β型チタン複合酸化物であることが確認された。得られたチタン複合酸化物を用いて、実施例1と同様に非水電解質二次電池を製造した。
(比較例4)
原料に、炭酸カリウム(K2CO3)、酸化アルミ(Al2O3)、及びアナターゼ構造を有する酸化チタン(TiO2)を用いた以外は、比較例1と同様にチタン複合酸化物(TiO2)を合成した。
得られたチタン複合酸化物をX線回折により解析した結果、チタン複合酸化物を構成する主物質がJCPDS:46−1237に帰属される単斜晶系β型チタン複合酸化物であることが確認された。
また、得られたチタン複合酸化物の添加元素濃度をICP発光分光法によって測定した。結果を表1に示す。
得られたチタン複合酸化物を用いて、実施例1と同様に非水電解質二次電池を製造した。
(電池性能の測定)
得られた実施例1〜23、比較例1〜4の二次電池について、抵抗値を測定した。抵抗測定は1kHzの交流インピーダンスで行った。その後、充放電サイクル試験を実施した。充放電サイクル試験は、1C充電/1C放電の充放電を繰返す充放電サイクルを100回繰り返した。初回放電容量に対する100回目の放電容量の比率、すなわち放電維持率(%)を表1に示す。また、各二次電池について、「100サイクル後の抵抗値/サイクル前の抵抗値」を算出し、抵抗増加率[倍]として表1に示した。抵抗は1kHzの交流インピーダンスを測定した。
また、図11に、電極表面を走査型電子顕微鏡により撮影した写真を示した。図11(a)は実施例1の負極表面であり、図11(b)は比較例1の負極表面である。負極の中央部分を切り取り、電極圧延時に圧延ローラーと接する部分を撮影した。
実施例1〜23におけるチタン複合酸化物の二次粒子は、比較例1〜4の二次粒子よりも圧縮破壊強度が著しく高かった。このような二次粒子を用いた実施例1〜23の二次電池は、比較例1〜4の二次電池に比べて抵抗増加率が小さく、容量維持率が高かった。よって、本実施形態に従って製造され、圧縮破壊強度が20MPa以上であるチタン複合酸化物の二次粒子を用いた二次電池は、優れた充放電サイクル性能を有することが示された。
単斜晶系β型チタン複合酸化物にNb、V、又はAlを含有させた実施例9〜23の二次電池は、より一層優れた充放電サイクル性能を有することが示された。
また、図11(a)に示した実施例1の電池の電極は、活物質の粒子が大きく、電極製造後も二次粒子の形状が保たれていることが分かる。一方、図11(b)に示した比較例1の電池の電極は、活物質の粒子が小さく、電極製造工程により二次粒子が崩壊していることが分かる。比較例1〜4の電池では、チタン複合酸化物の二次粒子が崩壊して一次粒子の形状となったことにより、電池抵抗を増大させ、容量維持率を低下させたことが示されている。
また、実施例1〜23におけるチタン複合酸化物の二次粒子は、比較例1〜4の二次粒子よりも比表面積が著しく小さかった。これは、原料二次粒子を高温で焼成したことによって、一次粒子が融解し、隣接する一次粒子同士の界面が融合することにより、二次粒子の表面積を低下させたことによるものである。表1に示したとおり、二次粒子の比表面積が小さい実施例1〜23の容量維持率が、比表面積の大きい比較例1〜4よりも著しく高いことから、良好な充放電サイクル性能を得るために二次粒子の比表面積が小さい方が望ましいと考えられる。
付記
[1]平均一次粒径が1nm以上10μm以下である単斜晶系β型チタン複合酸化物の一次粒子を含む平均粒径が1μm以上100μm以下である二次粒子を含み、該二次粒子の圧縮破壊強度が20MPa以上であることを特徴とする電池用活物質。
[2]前記単斜晶系β型チタン複合酸化物が5族及び13族から選ばれる少なくとも1つの元素を0.03質量%以上15質量%以下の範囲で含むことを特徴とする請求項1に記載の電池用活物質。
[3]前記少なくとも1つの元素は、前記単斜晶系β型チタン複合酸化物のTiサイトの一部を置換することを特徴とする[1]又は[2]に記載の電池用活物質。
[4]正極と、[1]〜[3]の何れか一つに記載の電池用活物質を含む負極と、非水電解質と、を備えることを特徴とする非水電解質電池。
[5]前記正極は、リチウムニッケル複合酸化物及びリチウムマンガン複合酸化物から選択される一種以上の正極活物質を含むことを特徴とする、[4]に記載の非水電解質電池。
[6]ラミネートフィルム製の外装材をさらに備えることを特徴とする、[4]又は[5]に記載の非水電解質電池。
[7]上記[4]〜[6]の何れか一項に記載の非水電解質電池を一以上備えることを特徴とする電池パック。
[8]電気的に接続された複数の前記非水電解質電池を具備し、各非水電解質電池の電圧が検知可能な保護回路をさらに備えることを特徴とする、[7]に記載の電池パック。
[9]上記[7]又は[8]に記載の電池パックを具備することを特徴とする自動車。