以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は本発明の一実施形態に係る自動ワインダが備えるワインダユニット(糸処理装置)10の側面図である。図2はワインダユニット10の概略的な構成を示した正面図である。
図1及び図2に示すワインダユニット10は、給糸ボビン21から解舒される紡績糸20をトラバースさせながら巻取ボビン22に巻き付けて、所定長で所定形状のパッケージ30を形成する。本実施形態の自動ワインダは、並べて配置された複数のワインダユニット10と、その並べられた方向の一端に配置された図略の機台制御装置と、を備えている。
それぞれのワインダユニット10は、正面視で左右一側に設けられたユニットフレーム11(図1)と、このユニットフレーム11の側方に設けられた巻取ユニット本体16と、を備えている。巻取ユニット本体(糸処理部)16は、マガジン式供給装置60と、巻取部31と、給糸ボビン保持部71と、を備えている。
マガジン式供給装置60は、図1に示すように、ワインダユニット10の下部から正面上方向に斜めに延出するマガジン保持部61と、このマガジン保持部61の先端に取り付けられているボビン収納装置62と、を備えている。このボビン収納装置62はマガジンカン63を備え、このマガジンカン63には給糸ボビン70をセット可能な複数の収納孔が形成されている。マガジンカン63は図略のモータによって間欠的に回転送り駆動され、この間欠駆動とマガジンカン63が備える図略の制御弁とによって、マガジン保持部61が有する図略のボビン供給路に供給ボビン70を1つずつ落下させる。これにより、供給ボビン70は給糸ボビン保持部71へ導かれる。
図1に示すようなマガジン式供給装置60に代えて、自動ワインダ下部に設けられた図略の搬送コンベアにより給糸ボビン21を図略の給糸ボビン供給部から各ワインダユニット10の給糸ボビン保持部71に供給する形態であっても良い。
巻取部31は、給糸ボビン21から解舒された紡績糸20を、巻取ボビン22の周囲に巻き取ってパッケージ30を形成する。具体的には、巻取部31は、巻取ボビン22を把持可能に構成されたクレードル23と、紡績糸20をトラバースさせるとともに巻取ボビン22を駆動するための巻取ドラム24と、を備えている。クレードル23は、巻取ドラム24に対し近接又は離間する方向に揺動可能に構成されている。これによって、パッケージ30が巻取ドラム24に対して接触又は離間される。図2に示すように、巻取ドラム24の外周面には螺旋状の綾振溝27が形成されており、この綾振溝27によって紡績糸20をトラバースさせる。
巻取ボビン22は、当該巻取ボビン22に対向して配置される巻取ドラム24が回転駆動することにより、従動回転する。紡績糸20は、綾振溝27によってトラバースされつつ、回転する巻取ボビン22の周囲に巻き取られる。図2に示すように、この巻取ドラム24はドラム駆動モータ53の出力軸に連結されている。ドラム駆動モータ53の作動はモータ制御部54により制御される。モータ制御部54は、ユニット制御部(制御部)50からの制御信号を受けてドラム駆動モータ53を運転及び停止させる制御を行う。
巻取ドラム24には回転センサ42が取り付けられている。回転センサ42は、後述のクリアラ15が備えるアナライザ52等に電気的に接続されている。回転センサ42は例えばロータリエンコーダとして構成され、巻取ドラム24が所定角度回転するごとにパルス状の信号をアナライザ52に送信する。回転センサ42が出力するパルス状の信号を、回転パルス信号と呼ぶ。
巻取ユニット本体16は、給糸ボビン21と巻取ドラム24との間の糸走行経路中に、給糸ボビン21側から順に、解舒補助装置12と、テンション付与装置13と、糸継装置14と、クリアラ(糸走行情報取得装置)15が備えるクリアラヘッド49と、を配置した構成となっている。
解舒補助装置12は、給糸ボビン21の芯管に被さる規制部材40を給糸ボビン21からの紡績糸20の解舒と連動して下降させることにより、給糸ボビン21からの紡績糸20の解舒を補助する。規制部材40は、給糸ボビン21から解舒された紡績糸20が振り回されることにより給糸ボビン21上部に形成されるバルーンに対し接触し、当該バルーンに適切なテンションを付与することによって紡績糸20の解舒を補助する。
テンション付与装置13は、走行する紡績糸20に所定のテンションを付与する。テンション付与装置13によって、紡績糸20に一定のテンションを付与し、パッケージ30の品質を高めることができる。
クリアラ15は、紡績糸20の太さムラを適宜のセンサで検出することで欠陥を検出する。具体的には、クリアラ15は、クリアラヘッド49と、アナライザ52(図2)と、を備えている。クリアラヘッド49には、2つの糸ムラセンサ43及び44が設置されている。糸ムラセンサ43及び44からの信号をアナライザ52で処理することで、スラブ等の糸欠点を検出可能である。クリアラヘッド49の近傍には、クリアラ15が糸欠点を検出したときに直ちに紡績糸20を切断するための図略のカッタが付設されている。
クリアラ15は、紡績糸20の走行情報を取得する糸走行情報取得装置としても機能させることができる。糸の走行情報とは、走行中の紡績糸20がどのような状態にあるかを示す情報である。クリアラ15によって紡績糸20の走行情報を取得する構成については後述する。
糸継装置14は、クリアラ15が糸欠点を検出して行う糸切断時、又は給糸ボビン21からの解舒中の糸切れ時等に、給糸ボビン21側の下糸と、パッケージ30側の上糸とを糸継ぎする。糸継装置14としては、機械式のものや、圧縮空気等の流体を用いるもの等を使用することができる。
糸継装置14の下側及び上側には、給糸ボビン21側の下糸を捕捉して案内する下糸案内パイプ25と、パッケージ30側の上糸を捕捉して案内する上糸案内パイプ26と、がそれぞれ設けられている。下糸案内パイプ25の先端には吸引口32が形成されている。上糸案内パイプ26の先端にはサクションマウス34が備えられている。下糸案内パイプ25及び上糸案内パイプ26には適宜の負圧源(図略)がそれぞれ接続されており、吸引口32及びサクションマウス34に吸引流を作用させることができる。
糸切れ時又は糸切断時においては、下糸案内パイプ25の吸引口32が図1及び図2で示す位置で下糸を捕捉し、その後、軸33を中心にして上方へ回動することで糸継装置14に下糸を案内する。これとほぼ同時に、上糸案内パイプ26が図示の位置から軸35を中心として上方へ回動し、パッケージ30から解舒される上糸をサクションマウス34によって捕捉する。続いて、上糸案内パイプ26が軸35を中心として下方へ回動することで、糸継装置14に上糸を案内する。下糸と上糸の糸継ぎが、糸継装置14によって行われる。
次に、図3を参照してクリアラ15について詳しく説明する。
図3に示すように、クリアラヘッド49は、第1糸ムラセンサ(第1検出部)43及び第2糸ムラセンサ(第2検出部)44と、2つのA/Dコンバータ45及び46と、を備えている。アナライザ52は、CPU47、RAM48、ROM(図略)等のハードウェアと、ROMに記憶されたプログラム等のソフトウェアと、から構成されている。ハードウェアとソフトウェアとが協働することにより、CPU47を、類似度評価部65、重み付け処理部66、走行情報取得部67、糸品質測定部68、サンプリング速度取得部72、計測部73等として機能させることができるように構成されている。アナライザ52には、回転センサ42からのパルス信号が入力されている。
第1糸ムラセンサ43と第2糸ムラセンサ44は、糸走行方向に適宜の距離を開けて並べられ、第1糸ムラセンサ43が下流側、第2糸ムラセンサ44が上流側に配置されている。本実施形態において、糸ムラセンサ43及び44は、紡績糸20の太さのムラを検出する。具体的には、糸ムラセンサ43及び44は、光センサとして構成されている。紡績糸20の糸道を挟んで糸ムラセンサ43及び44の反対側には、光源としてLED36及びLED37を配置する。糸ムラセンサ43及び44は、それぞれLED36及び37からの受光量を検出する。走行する紡績糸20の太さが変化すると、糸ムラセンサ43及び44の受光量が変化するので、クリアラ15は、紡績糸20の太さムラを検出することができる。糸ムラセンサ43及び44の出力信号(糸太さムラ信号)は、A/D変換された後、アナライザ52に出力される。
アナライザ52が備えるCPU47は、A/D変換された糸太さムラ信号を監視して紡績糸20の品質の測定を行う。例えば、紡績糸20の品質に問題がある箇所においては紡績糸20の太さに異常がみられるので、CPU47において紡績糸20の太さの異常を検出することにより、紡績糸20の欠陥を検出することができる。このようにCPU47によって紡績糸20の品質を測定しているので、CPU47は、糸品質測定部68として機能するということができる。
給糸ボビン21は、通常、リング精紡機において紡出された糸を有している。このような糸には、僅かな太さムラが周期的に生じることがある。この周期的な糸太さムラの原因としては、例えばリング精紡機でスライバを延伸するドラフトローラが芯ズレしていること等が考えられる。この精紡工程の周期的な太さムラは、後の製織工程において織布にモアレが生じる原因となる。糸品質測定部68としてのCPU47は、糸太さムラ信号のFFT演算を行うことにより、紡績糸20の周期的な太さムラを検出することができる。上記FFT演算を正確に行うためには、糸太さムラ信号をA/Dコンバータでサンプリングする際に、紡績糸20の単位長さあたりの波形データ数を正確に一定にする必要がある。
本実施形態のCPU47は、紡績糸20の走行状態に関する情報を取得し、当該走行状態に応じて第2のA/Dコンバータ46のサンプリング周期を変化させる。具体的には、CPU47は、紡績糸20が一定長(例えば1mm)走行するごとにパルス信号を生成して、第2のA/Dコンバータ46に対して送信する。このパルス信号を、定長パルス信号と呼ぶ。第2のA/Dコンバータ46は、この定長パルス信号に基づいて、第1糸ムラセンサ43からのアナログ信号をサンプリングして、デジタル信号に変換する。これにより、紡績糸20の単位長さあたりのデータ数を正確に一定に保つことができるので、CPU47において上記FFT演算を正確に行い、周期的な太さムラを確実に検出することができる。また、紡績糸20の単位長さあたりのデータ数を正確に一定に保つことにより、CPU47は、周期性のない単発的な糸欠陥であっても紡績糸20の太さムラの長さ評価が正確に行えるため、アナライザ52の検出精度が向上する。定長パルス信号は、紡績糸20の走行状態に関する情報であるから、糸走行情報の一種であると言える。このように、CPU47は、糸走行情報を取得しているので、走行情報取得部67として機能していると言うことができる。
次に、上記定長パルス信号を取得する構成について説明する。
本実施形態のクリアラ15は、上記第2のA/Dコンバータ46とは別に、第1のA/Dコンバータ45を備えている。
第1のA/Dコンバータ45は、CPU47が上記定長パルス信号を取得するために糸太さムラ信号のサンプリングを行うA/Dコンバータである。具体的には、第1のA/Dコンバータ45は、2つの糸ムラセンサ43及び44からのアナログ信号をサンプリングして、デジタル信号に変換する。このようにして得られたデジタル信号がアナライザ52に入力される。アナライザ52が備えるCPU47は、類似度評価部65、重み付け処理部66、及び/又は走行情報取得部67等として機能することにより、入力されたデジタル信号を用いて紡績糸20の走行速度の検出を行う。紡績糸20の走行速度も紡績糸20の走行状態に関する情報であるから、糸走行情報の一種であると言える。この点でも、CPU47は、走行情報取得部67として機能していると言うことができる。
紡績糸20の走行速度がわかると、当該走行速度に基づいて所定時間の間に紡績糸20が走行した長さを検出することができる。CPU47は、紡績糸20の走行速度に基づいて定長パルス信号を生成して取得し、第2のA/Dコンバータ46に対して定長パルス信号を送信する。これにより、第2のA/Dコンバータ46において、紡績糸20の一定長ごとに糸太さムラ信号のサンプリングを行うことができる。
次に、クリアラ15による紡績糸20の走行速度(糸走行情報)の取得方法について詳しく説明する。
まず、第1のA/Dコンバータ45において、糸ムラセンサ43及び44が出力したアナログ波形のサンプリングが行われる。この時のサンプリング周波数fs1は、巻取ドラム24の回転速度に比例させて随時変更させる。糸ムラセンサ43及び44の信号波形を第1のA/Dコンバータ45によってサンプリングした際、紡績糸20の単位長さあたりに取得されるデータ数を略一定に保つことができる。サンプリング周波数を固定する場合よりもCPU47の計算負荷を軽減することができる。
前述のように、回転センサ42は、巻取ドラム24が所定角回転するごとに回転パルス信号を出力している。従って、単位時間あたりに出力される回転パルス信号の数は、巻取ドラム24の回転速度に比例している。そこで、アナライザ52のCPU47は、回転センサ42から受信した回転パルス信号に基づいて、巻取ドラム24の回転情報を取得する。巻取ドラム24の回転情報とは、当該巻取ドラム24の回転速度に関する情報であり、例えば当該巻取ドラム24の周速であっても良いし、当該巻取ドラム24の角速度であっても良いし、単位時間あたりに出力された回転パルス信号の数であっても良い。要は、回転パルス信号に基づいて、巻取ドラム24の回転速度に関する情報を何らかの形式で取得することができれば良い。
CPU47は、上記のようにして得られた巻取ドラム24の回転情報に所定の係数を乗じる等の処理により紡績糸20の走行速度の基準となるサンプリング速度を求める。CPU47は、求めたサンプリング速度に応じてサンプリング周波数fs1を求め、求めたサンプリング周波数fs1を第1のA/Dコンバータ45に設定する。サンプリング周波数は、紡績糸20が所定の単位長さ走行する毎にサンプリングが1回行われるように設定される。第1のA/Dコンバータ45のサンプリング周波数fs1を、巻取ドラム24の回転速度に比例させて随時変更することができる。CPU47は、巻取ドラムの回転情報に基づいてサンプリング速度を算出しているので、サンプリング速度取得部72として機能していると言うことができる。
アナライザ52は、第1のA/Dコンバータ45から入力されてくる波形データを一時的に保持しておくために、リングバッファとして構成された記憶領域(下流側リングバッファ55及び上流側リングバッファ56)を、RAM48に有している。具体的には、第1糸ムラセンサ43からの出力信号(第1糸太さムラ信号)をサンプリングしたデータは、下流側リングバッファ55に蓄積される。第2糸ムラセンサ44からの出力信号(第2糸太さムラ信号)をサンプリングしたデータは、上流側リングバッファ56に蓄積される。下流側リングバッファ55及び上流側リングバッファ56のサイズは特に限定されないが、本実施形態では、それぞれ128点のデータを保持可能としている。
図4は、リングバッファ55及び56に蓄積されるデータ系列(波形データ系列)のグラフである。図4のグラフにおいて、縦軸は、波形データが示す信号レベルを表しており、横軸は、波形データが格納されたリングバッファのindexを表している。図4の横軸のindexは、リングバッファの中で古いデータほど小さい値を割り振るものとする。即ち、リングバッファの中で一番古いデータが格納されたindexをindex[0]、最新のデータが格納されたindexをindex[127]、としている。従って、図4の横軸は時間軸であると言うこともできる。
紡績糸20に加わる張力が一定であるとすれば、第1糸ムラセンサ43と第2糸ムラセンサ44の測定位置における紡績糸20の伸びは同じであるため、2つの糸ムラセンサ43及び44では同じ波形が観測されるものと考えることができる。第1糸ムラセンサ43は第2糸ムラセンサ44よりも糸走行方向下流側に配置されているため、第1糸ムラセンサ43が出力する信号(第1糸太さムラ信号)の波形は、第2糸ムラセンサ44が出力する信号(第2糸太さムラ信号)の波形に対して時間的な遅れがある。この遅れにより、上流側リングバッファ56に格納されている波形データ系列は、下流側リングバッファ55に格納されている波形データ系列に比べて、時間軸で過去方向(図4の左方向)にΔTだけズレている。この時間的な遅れ(ズレ)をΔT、2つの糸ムラセンサ43及び44の検出位置の間の距離をLとすると、糸速度Vは、
V=L/ΔT・・・(1)
で求めることができる。このように、アナライザ52は、第2糸太さムラ信号の波形に対する第1糸太さムラ信号の波形の時間的な遅れ(ズレ)ΔTを検出することにより、紡績糸20の走行速度を算出することができる。
本実施形態において、CPU47は、第1糸太さムラ信号の波形(下流側リングバッファ55に蓄積された波形データ系列)と、第2糸太さムラ信号の波形(上流側リングバッファ56に蓄積された波形データ系列)と、を比較して、時間的な遅れΔTを求める。「波形」と言ったときには、ある程度の時間的な幅が想定され、ある瞬間にサンプリングされた単独の波形データのみでは「波形」と言うことはできない。信号の波形を比較する、と言った場合、具体的な処理としては、ある程度の時間範囲内で連続して取得されたデータ系列同士を比較することになる。
CPU47は、下流側リングバッファ55に蓄積されている下流側の波形データのうち所定の第1時間範囲内に連続して取得された波形データ系列(第1波形データ系列)と、上流側リングバッファ56に蓄積されている波形データのうち所定の第2時間範囲内に連続して取得された波形データ系列(第2波形データ系列)と、を比較する。
図4に示すように、本実施形態において、第1時間範囲は、リングバッファのindex[64]からindex[127]までの範囲としている。従って、第1波形データ系列は、下流側リングバッファ55に蓄積された波形データの中で最新の64点の波形データから構成されている。第2時間範囲は、リングバッファのindex[32]からindex[127]までの範囲としている。従って、第2波形データ系列は、上流側リングバッファ56に蓄積された波形データの中で最新の96点の波形データから構成されている。
次に、CPU47によって行われる波形同士の比較について、具体的に説明する。CPU47は、第1波形データ系列と第2波形データ系列とを比較して、第1糸太さムラ信号の波形と第2糸太さムラ信号の波形との類似度を求める。ここで類似度とは、2つの波形がどの程度重なり合うか(2つの波形がどの程度似ているか)を示す指標である。
類似度の算出方法としては各種の方法が考えられるが、本実施形態では、以下のようにして算出している。比較対象となる2つの波形を重ね合わせ、2つの波形グラフの間の面積(図6において斜線でハッチングされた部分)を取得する。2つの波形が全く異なっていれば2つの波形は全く重ならないので、上記面積は2になる。2つの波形が完全に一致していれば、上記面積は0となる。上記の面積を用いて、以下の式(2)により類似度を算出する。
類似度=1−(2つの波形の間の面積)÷2 ・・・(2)
上記類似度の定義によれば、類似度が0に近いほど2つの波形は異なっており、類似度が1に近いほど2つの波形は似ているといえる。
第2波形データ系列は96点の波形データから構成され、第1波形データ系列は64点の波形データから構成されているので、第2波形データ系列の範囲は、第1波形データ系列の範囲よりも広く設定されている。言い換えれば、本実施形態では、第2時間範囲は第1時間範囲よりも長く設定されている。上記類似度を算出するためには、比較する2つの波形の時間軸上での長さ(波形データ系列の長さ)が一致していなければならない。CPU47は、第1波形データ系列と第2波形データ系列とを比較する際には、第2波形データ系列の中から第1波形データ系列と同じ長さの波形データ系列を抜き出して、抜き出した波形データ系列と第1波形データ系列との類似度を求める。
以下、より具体的に説明する。CPU47は、リングバッファ55及び56内の波形データのうち、所定の時間範囲の間に取得された波形データ系列を仮想的に取り出す仮想フレーム(下流側フレーム及び上流側フレーム)を用意している。CPU47は、下流側フレーム(第1仮想フレーム)内の波形データと、上流側フレーム(第2仮想フレーム)内の波形データの重なり合い(類似度)を評価する。
下流側フレーム(第1仮想フレーム)は、下流側リングバッファ55に蓄積された波形データの中から、第1時間範囲内に連続して取得された波形データ系列(第1波形データ系列)を仮想的に取り出すための仮想フレームである。具体的には、図5に示すように、下流側フレームは、下流側リングバッファ55に格納された波形データの中で最新の64点のデータ(下流側リングバッファのindex[64]からindex[127]までの範囲の波形データ)を含むように設定される。以下の説明で、仮想フレームに含まれる波形データのうち最も古いデータのindexを、仮想フレームの先頭位置と表現する。例えば下流側フレームの場合、先頭位置はindex[64]である。
上流側フレーム(第2仮想フレーム)は、第2時間範囲内に取得された上流側リングバッファ56の波形データ系列(第2波形データ系列)の中から、第1時間範囲と同じ長さの時間範囲の波形データ系列(64点の波形データ)を仮想的に取り出すための仮想フレームである。上流側フレームには、上流側リングバッファ56のindex[32]からindex[127]までの範囲(第2時間範囲)の波形データのうち、連続する64点のデータを格納できるように設定される。
第2波形データ系列は、第1波形データ系列に比べて、時間軸で過去方向に向かって32点の波形データ分だけ範囲が広くなっている。上流側フレームの先頭位置は、下流側フレームの先頭位置よりも過去方向に32点以内でズラした位置に設定することができる。下流側フレームの先頭位置と上流側フレームの先頭位置のindexの差を、「フレームズレ量」、または単に「ズレ量」と呼ぶ。
上記のようにして上流側フレームが設定されると、CPU47は、設定された上流側フレーム内の64点の波形データの中から所定の抽出条件に基づいて波形データの抽出を行い、抽出した波形データに基づいて新たな上流側フレームを作成する。これは、上流側フレームに含まれる波形データの数を減らす(間引く)ものである。所定の抽出条件として、例えば、上流側フレームに含まれる波形データを一つ飛ばしで抽出したり、二つ飛ばしで抽出したりする等が挙げられる。同様に、CPU47は、設定された下流側フレーム内の64点の波形データの中から、所定の抽出条件に基づいて波形データの抽出を行い、抽出した波形データに基づいて新たな下流側フレームを作成する。例えば、抽出条件は、糸走行速度(サンプリング速度)が、所定の糸走行速度(所定のサンプリング速度)を超えた場合に、変更される。糸走行情報取得に関する処理時間は略一定であるため、サンプリング速度が速くなった場合、糸走行情報を取得している時間あたりにサンプリングされる点数が増加する。この場合、サンプリングされる点数に対して、糸走行情報が取得される割合が低下する。従って、抽出条件として、例えば、所定のサンプリング速度が第1の閾値未満の場合は、間引きを行わず、所定のサンプリング速度が第1の閾値以上の場合は、一つの波形データを飛ばして間引きを行い、所定のサンプリング速度が第2の閾値以上の場合は、二つの波形データを飛ばして間引きを行う、ことを設定する。
波形データの数が間引かれた上流側フレーム及び下流側フレームが設定されると、CPU47は、上流側フレームに含まれる波形と下流側フレームに含まれる波形がどの程度重なり合っているかの指標である類似度を求める。糸ムラセンサ43及び44の出力信号にはバイアス成分が含まれており、糸ムラセンサ43及び44の感度のバラツキにより、そのままでは2つの波形がうまく重なり合わない場合がある。CPU47は、上流側フレームと下流側フレーム内の波形データに対して、バイアス成分除去と正規化の処理を行う。バイアス成分除去とは、図6に示すように、計算フレーム内におけるデータの最小値を検索し、各データの値から最小値を減算する処理である。正規化とは、計算フレーム内のデータの合計値で各データの値を割る処理である。これにより、計算フレーム内の波形のグラフの面積が1に正規化される。上流側と下流側の波形データそれぞれに対して、バイアス成分除去及び波形の正規化を行うので、糸ムラセンサ43及び44ごとのバイアス成分のバラツキや、糸ムラセンサ43及び44ごとの感度差を吸収することができる。
バイアス成分除去と正規化の処理を行うと、CPU47は、下流側フレーム内のデータ系列(第1糸太さムラ信号の波形)と、上流側フレーム内のデータ系列(第2糸太さムラ信号の波形)と、の類似度を求める類似度評価処理を実行する。このように2つの波形の類似度を評価しているので、CPU47は、類似度評価部65として機能していると言うことができる。
上流側フレームの先頭位置は、下流側フレームの先頭位置よりも過去方向に32点以内でズラした位置に設定することができる。フレームズレ量(所定のズレ量)を0〜32の範囲で変化させることができる。類似度評価部65は、上記範囲内でフレームズレ量を変化させながら上記類似度評価処理を繰り返し実行する。類似度評価部65は、第2時間範囲の中で上流側フレームの時間軸上での位置を複数選択し、当該複数の位置それぞれに対する類似度を評価する。これにより、類似度評価部65は、複数の類似度を取得する。第1時間範囲よりも第2時間範囲を長く設定することにより、当該第2時間範囲内で上流側フレームを移動させて複数回の類似度評価が可能となるので、CPU47は複数の類似度を取得することができる。フレームズレ量に対応した複数の類似度が取得される結果、CPU47は、例えば図7のように、フレームズレ量と類似度との関係を得ることができる。CPU47は、求められたフレームズレ量と類似度との関係のうち、類似度が極大となる極大点(類似度極大点)のみを抽出し、図8に示すように抽出した各極大点におけるフレームズレ量と類似度との関係を求める。この極大点のみを抽出する処理は、類似度に対して重み付けを行った場合に誤差が生じることを抑制するために行われる。この重み付けの詳細について、詳しくは後述する。このように、極大点は、類似度の極大部分のみを抽出したものであり、類似度を表している。
上流側フレーム及び下流側フレーム内の波形データを間引いて類似度を求めることによる作用について説明する。巻取ドラム24の回転情報に基づいて得られるサンプリング周波数に応じて、糸ムラセンタ43及び44からの出力信号を一定長でサンプリングすると、算出される紡績糸20の走行速度の分解能を高くすることができる。例えば、糸ムラセンサ43及び44間の距離が10mmであり、サンプリング速度に基づいて紡績糸20が1mm移動する毎にサンプリングを行う場合、分解能は、5/10、6/10、7/10、8/10、・・・のように、サンプリング速度の1/10倍となる。この時、類似度を求める範囲が20mm(20index分)であると、20点の波形データ分に対して類似度の評価処理を行うこととなる。紡績糸20が0.5mm移動する毎にサンプリングを行う場合には、分解能はサンプリング速度の1/20倍となるが、40点の波形データに対して類似度の評価処理を行う必要がある。このように、分解能と処理時間とはトレードオフの関係にある。そこで本実施形態のように、サンプリングの間隔を短くすることによって紡績糸20の走行速度の分解能を高めながら、上流側フレーム及び下流側フレーム内の波形データを間引くことで類似度評価のための処理時間を短縮することができる。
類似度が最大となったときが、上流側フレームの波形と下流側フレームの波形が最も良く重なり合っているときである。別の観点から言えば、このとき、上流側リングバッファ56の波形データ系列と下流側リングバッファ55の波形データ系列との間にあった時間的なズレΔTが解消された状態にあるといえる。従って、類似度が最大になったときのフレームズレ量は、上流側リングバッファ56の波形と下流側リングバッファ55の波形の時間的なズレΔTに対応していると考えられる。即ち、類似度が最大となるときのフレームズレ量に基づいて、波形の時間的なズレΔTを算出することができる。ズレΔTの算出について、詳しくは後述する。
クリアラ15は、求めたΔTを式(1)に代入することにより、紡績糸20の走行速度を算出することができる。以上のようにして、クリアラ15は、2つの波形の類似度に基づいて紡績糸20の走行速度を求めることができる。但し、本実施形態のクリアラ15では、上記のように類似度をそのまま用いて紡績糸20の走行速度を算出するのではなく、後述するように、重み付けを行った類似度を用いて紡績糸20の走行速度を算出している。
本実施形態では、上記のように上流側フレームを時間軸上で移動させることで複数の類似度を求めているが、これに代えて下流側フレームを時間軸上で移動させることも考えられる。但し、本実施形態のように上流側フレームを時間軸上で移動させれば、下流側フレームは、下流側リングバッファ55に含まれる波形データのうち最新の波形データを含むように時間軸上での位置を固定することができる(図5において、下流側フレームを一番右に寄った位置に固定することができる)。これにより、クリアラ15は、下流側の最新の糸太さムラ信号を用いて時間的なズレΔTを算出することができるので、紡績糸20の走行速度をリアルタイムで求めることができる。
ところで、走行する紡績糸20の太さムラは、似たような状態が続くことがあるため、糸ムラセンサ43及び44が出力する信号も似たような波形が続く場合がある。この場合、上流側の波形と下流側の波形とが複数の位置で重なり合うため、図7のように、上流側フレームの移動範囲内で、類似度が大きなピーク(極大点)を示すフレームズレ量が複数存在することになる。このように上流側フレームの移動範囲内で類似度の大きなピークが複数存在すると、どのピークのフレームズレ量を用いて波形の時間的なズレΔTを算出すれば良いのかまぎらわしく、誤ったフレームズレ量を用いて糸走行速度を算出してしまう場合がある。
本実施形態では、上記のような類似度のピークのまぎらわしさを解消するため、類似度に対して重み付けを行っている。以下、本実施形態においてCPU47が実行する糸走行速度取得処理について、図9を参照して説明する。
CPU47は、第1のA/Dコンバータ45で新しいデータがサンプリングされ、当該新しい波形データがリングバッファ55及び56に追加されるごとに、図9のフローチャートに示す糸走行速度取得処理を実行する。糸走行速度取得処理を開始すると、CPU47は、上述したように、下流側フレーム内の波形データを間引きし、バイアス成分除去と波形の正規化とを行う(ステップS101)。
次に、CPU47は、フレームズレ量の初期化(上流側フレームの位置の初期化)を行う(ステップS102)。本実施形態では、フレームズレ量を32に初期化する。これにより、上流側フレームは、下流側フレームから波形データ32点に相当する過去にズレた位置に設定される。従って、上流側フレームには、上流側リングバッファ56のindex[32]からindex[95]までの範囲の波形データが含まれることになる(図5参照)。
上流側フレームの位置が決まると、CPU47は、上述したように、上流側フレーム内の波形データを間引きし、バイアス成分除去と、波形の正規化とを行う(ステップS103)。
続いて、CPU47は、上流側フレーム内の波形データと下流側フレーム内の波形データについて、類似度を求める類似度評価処理を行う(ステップS104)。類似度が算出されると、CPU47は、類似度の各極大点のフレームズレ量(図8参照)を保存する(ステップS105)。
続いて、CPU47は、上流側フレームの移動範囲が終了したか否かの判定を行う(ステップS106)。本実施形態では、上流側フレームを、フレームズレ量が32から0までの範囲で(即ち、上流側フレームが第2時間範囲に収まる範囲内で)移動させる。上記移動範囲が終了していない場合(ステップS106:NO)、ステップS107でフレームズレ量を1つ減らして(上流側フレームを図5の右方向に1つずらして)、ステップS103に戻る。上記移動範囲が終了している場合(ステップS106:YES)、ステップS108に進む。
以上のループ処理により、上流側フレームの時間軸上での位置をずらしながらステップS103からS107の処理が繰り返し行われる。これにより、上流側フレームの移動範囲(フレームズレ量が0から32の範囲)の中で類似度評価処理及び重み付け処理が複数回行われるので、CPU47は、複数の類似度を取得することができる。ステップS105で保存されたデータは、新たな糸走行速度取得処理が開始される度にリセットされる。
次にCPU47は、求められた複数の極大点について、上流側リングバッファ56の波形データと下流側リングバッファ55の波形データとの時間的なズレΔTを算出するために採用する極大点を判定する採用判定処理(ステップS108)を行う。
以下、図10のフローチャートを参照して、採用判定処理の内容について具体的に説明する。CPU47は、採用判定処理を開始すると、図8に示す各極大点に対して重み付け処理を行い、重み付き極大点を算出する重み付け処理を行う(ステップS201)。このように重み付け処理を行うので、CPU47は、重み付け処理部66として機能していると言うことができる。なお以下の説明において、重み付き極大点と区別する必要がある場合には、重み付けをする前の極大点のことを特に「生の極大点」と呼ぶことがある。上記重み付け処理は、生の極大点の値に、重み係数を乗算することによって行う。即ち、フレームズレ量c_indexのときの生の極大点をSc_index、フレームズレ量c_indexに対する重み係数をWc_indexとすると、重み付き極大点S´c_indexは以下の式(3)で求めることができる。
S´c_index=Sc_index×Wc_index ・・・(3)
或るフレームズレ量c_indexのときの重み係数Wc_indexをどのような値とするかは、フレームズレ量と重み係数との関係を指定する重み付けカーブによって決定する。この重み付けカーブの例を、図11の上側に示す。図11に示すように、重み付けカーブは、所定のフレームズレ量c_indexの位置で重み係数がピークとなる極大値を1つ持つように設定されており、当該ピークから離れるに従って、重み係数の値がなだらかに減少するように設定されている。従って、この重み付けカーブで指定される重み係数を用いて極大点に対する重み付けを行うことにより、当該重み付けカーブのピーク近傍に位置する極大点は強調され、それ以外の極大点は抑圧される。この結果、図11の下側に示すように、複数の極大点のうち、不要な極大点の強さ(類似度)を抑えることができる。
極大点に対して重み付け処理を行うことによる作用について説明する。例えば、図12(a)の上段に示すように重み付けがされていない生の類似度に対して、重み付けカーブを用いて重み付けを行う場合、図12(a)の下段に示すように、重み付け後の類似度である重み付き類似度の極大点が、生の類似度の極大点の位置(フレームズレ量)からずれてしまう場合がある。また、例えば、図12(b)の上段に示すように重み付けがされていない生の類似度に対して、重み付けカーブを用いて重み付けを行う場合、図12(b)の下段に示すように、重み付き類似度の極大点の数が増加してしまう場合がある。
本実施形態では、図11に示すように、極大点に対して重み付けを行うことで、極大点の位置のずれの発生、及び/又は極大点の数の増加を抑制することができる。従って、本実施形態では、より精度よく重み付け処理を行うことができる。
本実施形態では、重み付けカーブとして、履歴重みカーブと、サンプリング速度重みカーブとを用いる。ステップS201においてCPU47は、履歴重みカーブを用いて極大点に重み付けを行う処理と、サンプリング速度重みカーブを用いて極大点に重み付けを行う処理とをそれぞれ行う。
履歴重みカーブは、前回の糸走行速度取得処理において重み付き極大点が最大となったときのフレームズレ量の近傍で、重み係数が大きくなるように設定される。糸走行速度は連続的に変化するため、今回の糸走行速度取得処理で取得される糸走行速度は、前回の糸走行速度取得処理で取得された糸走行速度とは大きく異ならないと考えられる。従って、今回の糸走行速度取得処理における極大点が最大となるフレームズレ量は、前回の糸走行速度取得処理における極大点が最大となるフレームズレ量の近傍である蓋然性が高い。換言すると、前回の糸走行速度取得処理における極大点が最大となるフレームズレ量から離れた位置に出現する生の極大点は、糸走行速度には対応していない偽の極大点である可能性が高い。前回の糸走行速度取得処理における極大点が最大となるフレームズレ量から離れた位置における生の極大点に対しては、重み係数を小さくして重要度を下げることが好ましい。この履歴重みカーブについて、詳しくは後述する。
サンプリング速度重みカーブは、巻取ドラム24の回転情報に基づいて算出されたサンプリング速度に対応するフレームズレ量の近傍で、重み係数が大きくなるように設定される。即ち、糸走行速度は、サンプリング速度付近で変化しており、このサンプリング速度から大きく離れることはないと考えることができる。従って、下流側リングバッファ55内の波形データに対する上流側リングバッファ56内の波形データの時間的なズレΔTは、上記サンプリング速度に対応したフレームズレの近傍で変化していると考えられる。これを別の観点から言うと、サンプリング速度に対応するフレームズレ量から離れた位置に出現する生の極大点は、糸走行速度には対応していない偽の極大点である可能性が高い。そこで、サンプリング速度に対応するフレームズレ量から離れた位置における生の極大点に対しては、重み係数を小さくして重要度を下げることが好ましい。このサンプリング速度重みカーブについて、詳しくは後述する。
図10に戻り、CPU47は、履歴重みカーブ及びサンプリング速度重みカーブを用いて複数の重み付き極大点を算出した後、最も類似度(重み付き後の類似度)が大きい重み付き極大点を抽出する(ステップS202)。CPU47は、最も類似度が大きい重み付き極大点が複数抽出されたか否かを判断する(ステップS203)。最も類似度が大きい重み付き極大点が一つのみ抽出された場合(ステップS203:NO)、CPU47は、ステップS202で抽出された極大点を、波形データの時間的なズレΔTを算出するための極大点(対象重み付き類似度)として採用する。
最も類似度が大きい重み付き極大点が複数抽出された場合(ステップS203:YES)、CPU47は、抽出された重み付き極大点について、重み付け前の類似度を比較する。CPU47は、比較の結果、重み付け前の類似度が最も大きい重み付き極大点を抽出する(ステップS204)。CPU47は、重み付け前の類似度が最も大きい極大点が複数抽出されたか否かを判断する(ステップS205)。重み付け前の類似度が最も大きい重み付き極大点が一つのみ抽出された場合(ステップS205:NO)、CPU47は、ステップS204で抽出された極大点を、波形データの時間的なズレΔTを算出するための極大点(対象重み付き類似度)として採用する。
重み付け前の類似度が最も大きい重み付き極大点が複数抽出された場合(ステップS205:YES)、まず、CPU47は、抽出された重み付き極大点のうち、前回の糸走行速度取得処理において極大点が最大となるフレームズレ量に最も近いフレームズレ量を有する極大点を抽出する。CPU47は、抽出した重み付き極大点を、波形データの時間的なズレΔTを算出するための極大点(対象重み付き類似度)として採用する(ステップS206)。このように、CPU47が複数の重み付き極大点からズレΔTを算出するための極大点を抽出しているので、CPU47は、ズレΔTを算出するための極大点を抽出する走行情報取得部67としても機能している。
次に、上記採用判定処理が終了した後の処理について説明する。CPU47は、採用判定処理の実行が終了すると、図9のフローに戻ってステップS109の処理に進む。
ステップS109において、CPU47は、ステップS108の採用判定処理で採用された極大点のフレームズレ量に基づき、紡績糸20の走行速度を算出する。なお、以下の説明では、ステップS108で採用された極大点のフレームズレ量のことを「今回採用の最大値対応ズレ量」と呼ぶ。今回採用の最大値対応ズレ量は、上流側リングバッファ56の波形データと下流側リングバッファ55の波形データとの時間的なズレΔTに対応していると考えられる。今回採用の最大値対応ズレ量とは、図13に示す下流側フレームを上流側フレームの時間軸上において最新の位置から過去の方向へ移動させたときに、上流側リングバッファ56の波形と下流側リングバッファ55の波形とが一致するまでのフレームズレ量である。図13の例では、下流側フレームをindex[127]からindex[119]までの8index分だけずらしたときに、上流側リングバッファ56の波形データと下流側リングバッファ55の波形データとが一致した場合(即ち、フレームズレ量が8である場合)を示している。
従って、図13の例では、index[127]からindex[119]までの時間幅が、上流側リングバッファ56の波形データと下流側リングバッファ55の波形データとの時間的なズレΔTに対応する。
CPU47は、糸太さムラ信号をサンプリングする際のサンプリング時間間隔を、サンプリング間隔毎に計測している。CPU47は、サンプリングの時間間隔を計測しているので、計測部73として機能している。CPU47は、index[127]からindex[119]までの各サンプリング時間間隔を積算する。即ち、CPU47は、index[127]からindex[126]までのサンプリングの時間間隔と、index[126]からindex[125]までのサンプリングの時間間隔と、・・・、index[120]からindex[119]までのサンプリングの時間間隔とを積算する。この積算結果が、波形の時間的なズレΔTとなる。
サンプリングの時間間隔を積算することで波形の時間的なズレΔTを算出することによる作用について説明する。例えば、紡績糸20の走行速度が一定であるとき、サンプリングの時間間隔は一定となるため、サンプリング時間間隔×フレームズレ量(indexの数)によって波形の時間的なズレΔTが求まる。紡績糸20の平均走行速度が加速中であるとき、サンプリングの時間間隔は段々と短くなるため、最新のサンプリング時間間隔×フレームズレ量(indexの数)よりも波形の時間的なズレΔTは長くなる。紡績糸20の平均走行速度が減速中であるとき、波形の時間的なズレΔTは短くなる。本実施形態のように、サンプリングの時間間隔を積算することによって波形の時間的なズレΔTを算出することで、紡績糸20が加減速を行っている場合であってもズレΔTを正確に算出することができる。
CPU47は、上記のようにして求めたΔTを式(1)に代入することにより、紡績糸20の走行速度を算出する(ステップS109)。このように、重み付けを行った極大点に基づいて紡績糸20の走行速度を算出することにより、生の極大点が複数存在する場合であっても、CPU47は、紡績糸20の走行速度を正確に算出することができる。本実施形態では、上記のように、信頼性の低い極大点が採用されてしまうことを防ぐ採用判定処理を行っている。これにより、CPU47は、信頼性の高い糸走行速度を得ることができる。
CPU47は、上記のようにして求めた糸走行速度に基づいて第2のA/Dコンバータ46のサンプリング周期を変化させる。具体的には、CPU47は、糸走行速度に比例した周波数で定長パルス信号を生成して、生成した定長パルス信号を第2のA/Dコンバータ46に送信する。糸走行速度は、重み付けを行った極大点に基づいて求めた正確な糸走行速度である。従って、この糸走行速度に基づく定長パルス信号に基づいて第2のA/Dコンバータ46による糸太さムラ信号のサンプリングを行うことにより、紡績糸20の単位長さあたりのデータ数を正確に一定にすることができる。
上記のようにして求められた糸走行速度は、ユニット制御部50に送信される。ユニット制御部50においては、クリアラ15から送信された紡績糸20の走行速度に応じて、モータ制御部54に制御信号を送信し、巻取ドラム24の回転を制御する。これにより、ワインダユニット10は、紡績糸20の正確な走行速度に応じてパッケージ30の巻き取りを行うことができる。ユニット制御部50は、紡績糸20の走行速度を時間で積分することにより、パッケージ30に巻き取った紡績糸20の総長を算出することができる。従って、例えば、ワインダユニット10は、所定の長さの紡績糸20を巻き取り終わったときに、紡績糸20の巻き取りを終了してパッケージの完成とすることができる。これにより、ワインダユニット10は、それぞれのパッケージ30に巻き取られる紡績糸20の長さを均一化することができるので、均一な長さのパッケージ30を生産することができる。
以上の説明において、CPU47は紡績糸20の走行速度を算出するものとして説明したが、必ずしも速度の形式で糸走行情報を取得しなければならないわけではない。例えば、紡績糸20が1秒間に2cm動き、次の1秒間で3cm動いた場合、CPU47は「2秒間で合計5cm動いた」という情報を取得できれば良く、必ずしも「毎秒2.5cm」のように速度の態様で情報を取得しなくても良い。なお、このように「時間あたりに紡績糸20が動いた長さ」の情報も、紡績糸20の走行状態に関する情報であるから、糸走行情報の一種であるといえる。
次に、上記重み付けカーブの決定方法について説明する。本実施形態において、上記重み付けカーブは、履歴重みカーブと、サンプリング速度重みカーブと、が含まれている。
まず、履歴重みカーブについて説明する。履歴重みカーブは、上述したように、前回の糸走行速度取得処理において重み付き極大点が最大となったときのフレームズレ量の近傍で、重み係数が大きくなるように設定される。即ち、履歴重みカーブの極大点は、前回算出されたフレームズレ量に基づいて設定される。また、この履歴重みカーブは、第1糸太さムラ信号及び第2糸太さムラ信号のフレームズレ量(所定のズレ量)に基づく速度比に応じた重み付けカーブとなる。
以下、速度比に応じた重み付けカーブについて、具体例を用いて説明する。紡績糸20が1mm走行する毎に第1のADコンバータ45が糸太さムラ信号をサンプリングするものとする。この場合、巻取ドラム24の回転情報に基づいて算出された紡績糸20の走行速度が1000mm/sであるならは、サンプリングの時間間隔は1msとなる。このとき、第1糸ムラセンサ43及び第2糸ムラセンサ44の間隔を10mmとし、実際の紡績糸20の走行速度が1000mm/sであるならば、図9のステップS108で採用される極大点のフレームズレ量の値は10となる。しかしながら、サンプリング周波数等に誤差があり、算出されたフレームズレ量が9であった場合、実際の紡績糸20の走行速度は1000×(10/9)mm/sとなる。同様に、算出されたフレームズレ量が11であった場合、実際の紡績糸20の走行速度は1000×(10/11)mm/sとなる。このように、フレームズレ量が1であったとしても、速度比が異なる。そのため、フレームズレ量に基づいて重みを決定するのではなく、フレームズレ量に基づく速度比に応じた重みを決定する必要がある。
図14(a)に示すように、CPU47は、基準となるフレームズレ量と算出されたフレームズレ量とに基づく速度比を求める。図14(a)では、分子が基準となるフレームズレ量、分母が算出されたフレームズレ量を表している。基準となるフレームズレ量は、サンプリング速度に対応するフレームズレ量であり、ここでは10であるものとする。この速度比は、基準となるフレームズレ量10を分子とし、分母のフレームズレ量を1ずつ変えることによって作成される。次に、図14(b)に示すように、CPU47は、求めた速度比に対して前回算出されたフレームズレ量を考慮した第1履歴補正速度比を求める。例えば、前回算出されたフレームズレ量が13であった場合、図14(a)に示す枠Aの速度比(10/13)を用いて、第1履歴補正速度比を算出する。具体的には、CPU47は、図14(b)に示す枠C内の第1履歴補正速度比を求める場合、枠Bの速度比(10/11)を枠Aの速度比(10/13)で除算することにより、枠Cの第1履歴補正速度比(13/11)を算出する。同様に枠D内の第1履歴補正速度比は、枠Aの速度比で枠A内の速度比を除算することで求めることができる。
次に、CPU47は、図14(c)に示すように、第2履歴補正速度比を求める。この第2履歴補正速度比は、前回算出されたフレームズレ量に対応する第1履歴補正速度比(枠Dの速度比13/13)が最も大きな値となるように、この値を超える第1履歴補正速度比を補正したものである。具体的には、第1履歴補正速度比が13/13を超えている「13/7」、「13/8」、・・・、「13/12」の各値の分母と分子を入れ替えて、第2履歴補正速度比を算出する。13/13を超えていない第1履歴補正速度比は、そのまま第2履歴補正速度比として用いる。
CPU47は、第2履歴補正速度比を用いて、履歴重みカーブを求める。具体的には、履歴重みカーブは、履歴重みカーブを形成する履歴重み係数WPと、第2履歴補正速度比Nとの関係を指定した以下の式(4)で定義される。
WP=exp(−(1−N)2/W) ・・・(4)
なお、Wは、ユーザが設定可能な定数である。
図14(d)に、式(4)を用いて算出した履歴重みカーブの例を示す。ここでは、前回のフレームズレ量13を極大とした履歴重みカーブとなる。
上述した例では、前回算出されたフレームズレ量が13である場合の履歴重みカーブを算出する例を示したが、前回算出されたフレームズレ量が他の値である場合の履歴重みカーブについても予め算出しておく。CPU47は、履歴重みカーブを用いて極大点に重み付けを行う際に、前回のフレームズレ量に対応する履歴重みカーブを選択して使用することができる。
次に、サンプリング速度重みカーブについて説明する。サンプリング速度重みカーブは、上述したように、巻取ドラム24の回転情報に基づいて算出されたサンプリング速度に対応するフレームズレ量の近傍で、重み係数が大きくなるように設定される。サンプリング速度重みカーブの極大点は、サンプリング速度で紡績糸20が走行した場合のフレームズレ量に基づいて設定される。このサンプリング速度重みカーブは、履歴重みカーブと同様に、フレームズレ量に基づいて重みを決定するのではなく、フレームズレ量に基づく速度比に応じた重みを決定する必要がある。従って、サンプリング速度重みカーブは、第1糸太さムラ信号及び第2糸太さムラ信号のフレームズレ量(所定のズレ量)に基づく速度比に応じた重み付けカーブとなる。
図15(a)に示すように、CPU47は、基準となるフレームズレ量と算出されたフレームズレ量とに基づく速度比を求める。図15(a)では、分子が基準となるフレームズレ量、分母が算出されたフレームズレ量を表している。基準となるフレームズレ量は、サンプリング速度に対応するフレームズレ量であり、ここでは10であるものとする。この速度比は、基準となるフレームズレ量10を分子とし、分母のフレームズレ量を1ずつ変えることによって作成される。
次に、CPU47は、図15(b)に示すように、サンプリング速度補正速度比を求める。このサンプリング速度補正速度比は、サンプリング速度で紡績糸20が走行した場合のフレームズレ量に対応する速度比(枠Eの速度比10/10)が最も大きな値となるように、この値を超える速度比を補正したものである。具体的には、速度比が10/10を超えている「10/7」、「10/8」、「10/9」の各値の分母と分子を入れ替えて、サンプリング速度補正速度比を算出する。10/10を超えていない補正速度比は、そのままサンプリング速度補正速度比として用いる。
CPU47は、サンプリング速度補正速度比を用いて、サンプリング速度重みカーブを求める。具体的には、サンプリング速度重みカーブは、サンプリング速度重みカーブを形成するサンプリング速度重み係数WAと、サンプリング速度補正速度比Nとの関係を指定した以下の式(5)で定義される。
WA=exp(−(1−N)2/W) ・・・(5)
なお、Wは、ユーザが設定可能な定数である。
図15(c)に、式(5)を用いて算出したサンプリング速度重みカーブの例を示す。図15(c)に示す例は、サンプリング速度で紡績糸20が走行した場合のフレームズレ量(10)を極大としたサンプリング速度重みカーブである。
上述した例では、サンプリング速度で紡績糸20が走行した場合のフレームズレ量が10である場合のサンプリング速度重みカーブを算出する例を示したが、サンプリング速度は変動するため、サンプリング速度毎にサンプリング速度重みカーブを予め算出しておく。CPU47は、サンプリング速度重みカーブを用いて極大点に重み付けを行う際に、サンプリング速度に対応するフレームズレ量のサンプリング速度重みカーブを選択して使用することができる。
CPU47は、前回の糸走行速度取得処理において重み付き極大点が最大となるときの重み付き類似度に基づいて、履歴重みカーブの履歴重み係数WPと、サンプリング速度重みカーブのサンプリング速度重み係数WAとを補正することもできる。具体的には、前回の糸走行速度取得処理において重み付き極大点が最大となるときの重み付き類似度をSPとすると、補正後の履歴重み係数WP’及び補正後のサンプリング速度重み係数WA’は、それぞれ以下の式(6)及び式(7)で定義される。
WP’=SP×WP ・・・(6)
WA’=(2S’−SP)WA ・・・(7)
なお、S’は、安定類似係数であり、例えば、類似度の最低値等を設定することができる。
この履歴重み係数及びサンプリング速度重み係数の補正は、類似度SPが大きい場合には履歴重み係数WPの影響を強くし、類似度SPが小さい場合にはサンプリング速度重み係数の影響を強くする。これは、前回の類似度SPが大きい場合には、履歴重みカーブの方がサンプリング速度重みカーブよりも信頼性が高いと考えられることに基づいている。従って、この補正を行うことで、信頼性の高い極大点を選択することが可能となる。このように、CPU47が前回の類似度に基づいて履歴重み係数やサンプリング速度重み係数を補正しているので、CPU47は、履歴重み係数やサンプリング速度重み係数を補正する走行情報取得部67としても機能している。
本実施形態は以上のように構成され、重み付け処理部66は、第1糸太さムラ信号及び第2糸太さムラ信号のフレームズレ量に基づく速度比に応じた重み付けカーブ(履歴重みカーブ及びサンプリング速度重みカーブ)を用いて、複数の極大点に対してそれぞれ重み付け処理を行う。このように、フレームズレ量に基づく速度比に応じた重み付けカーブを用いることで、フレームズレ量毎に重みを適切に設定することができる。従って、フレームズレ量に基づく速度比に応じた重み付けカーブを用いることで、より正確に重み付け処理を行うことができ、より精度よく紡績糸20の走行状態が取得可能となる。
重み付けカーブは、一つの極大値を有する。このような重み付けカーブを用いることで、類似度の複数の極大点に対して適切に重み付けを行うことができる。
重み付け処理部66は、過去に算出されたフレームズレ量を考慮した履歴重みカーブと、サンプリング速度を考慮したサンプリング速度重みカーブとを用いて極大点に重み付けを行う。これにより、過去に算出されたフレームズレ量やサンプリング速度を考慮した適切な対象重み付き類似度を抽出することができ、より正確な糸走行情報を取得することができる。
走行情報取得部67は、過去に算出した対象重み付き類似度に基づいて、履歴重みカーブ及びサンプリング速度重みカーブを補正する。これにより、過去に算出した対象重み付き類似度を考慮した履歴重みカーブ及びサンプリング速度重みカーブを得ることができ、より適切に重み付けを行うことができる。なお、走行情報取得部67は、過去に算出した対象重み付き類似度が大きくなるに従って履歴重みカーブが指定する重み係数の値を大きくし、過去に算出した対象重み付き類似度が小さくなるにしたがってサンプリング速度重みカーブが指定する重み係数の値を大きくする。過去に算出した対象重み付き類似度が大きい場合には、履歴重みカーブの方がサンプリング速度重みカーブよりも信頼性が高いと言える。過去に算出した対象重み付き類似度が大きくなるにしたがって履歴重みカーブが指定する重み係数の値を大きくすることで、実情に即して適切に履歴重みカーブ及びサンプリング速度重みカーブを補正することができる。
走行情報取得部67は、複数の重み付き極大点が求められた場合であっても、採用判定処理を行うことによって波形データの時間的なズレΔTを算出するための極大点をより適切に抽出することができる。
類似度評価部65は、算出された類似度のうち極大点のみを複数算出する。この場合には、類似度の極大点についてのみ重み付け処理が行われる。これにより、これらの極大点に対してフレームズレ量の位置はそのままとして類似度の値のみを上げ下げ(重み付けを行う)ことができ、より正確に重み付けを行うことができる。
波形データの時間的なズレΔTを算出するときに、サンプリングの時間間隔を積算することにより、例えば、紡績糸20が加減速していた場合であっても、より正確に紡績糸20がフレームズレ量だけ走行した場合の時間を求めることができる。
ワインダユニット10が、上述したように糸走行速度を算出可能なクリアラ15を備えているので、クリアラ15によって取得された精度の良い紡績糸20の走行情報を用いて各部の制御を行うことができる。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、回転する巻取ドラム24によってパッケージを回転させつつ、当該パッケージの表面に紡績糸20を綾振りする構成としたが、これに限定されず、パッケージの駆動と綾振りとが独立した構成の糸巻取機であっても本発明の構成を適用することができる。このような糸巻取機としては、例えば、旋回運動するアームによって紡績糸20を綾振りするアーム式トラバース装置や、ベルトによって左右往復運動する糸掛け部材によって紡績糸20を綾振りするベルト式トラバース装置を備えた自動ワインダ等を挙げることができる。
本発明の糸走行情報取得装置は、自動ワインダに限らず、例えば精紡機等、他の糸処理装置にも適用することができる。
上記実施形態において、糸ムラセンサ43及び44は受光量の変化を見る構成としたが、例えば走行する紡績糸20の静電容量の変化を検出するタイプの糸ムラセンサであっても良い。この構成の場合は、紡績糸20の単位長さあたりの質量の変化を検出することができる。要は、何らかの方法で紡績糸20の太さムラを検出するように構成されていれば良い。
重み付けカーブは実施形態で説明したように指数関数の形である必要は無く、何らかの形で重み付けを行うことができれば良い。
上記実施形態では、重み付けカーブ(履歴重みカーブ、サンプリング速度重みカーブ)を指数関数(exp関数)によって定義しているが、これに限らず、極大値を1つ持つ関数であれば任意の関数を重み付けカーブの定義に用いることができる。
クリアラ15においては、定長パルス信号、糸走行速度等の糸走行情報を取得するものとして説明したが、これ代えて、他の糸走行情報を取得するように構成しても良い。例えば、クリアラ15において、求めた糸走行速度を時間で積分することにより、走行した紡績糸20の総長を求めるようにしても良い。
クリアラ15においては、糸走行速度を算出することなく、例えば波形の時間的なズレΔTのみを求めるよう構成しても良い。波形の時間的なズレΔTは紡績糸20が走行することにより生じるものであるから、紡績糸20の走行情報であると言うことができる。なお、この場合、クリアラ15が求めた波形の時間的なズレΔTは、ユニット制御部50に出力し、当該ユニット制御部50において、ΔTを用いた糸走行速度の算出を行うこともできる。
上記実施形態では、クリアラ15で算出した糸走行速度をユニット制御部50に出力するとしたが、数値データとして糸走行速度を出力しても良いし、他の形式で出力しても良い。例えば、前述の定長パルス信号をユニット制御部50に出力するように構成することもできる。
クリアラ15が備える第2のA/Dコンバータ46は、FFT演算を行うためのものであるから、FFT演算を行わない場合は第2のA/Dコンバータ46を省略しても良い。
上記実施形態では、ロータリエンコーダからの回転パルス信号に基づいてサンプリング速度を取得する構成としたが、これに限らない。
上記実施形態では、重み付けカーブとして、履歴重みカーブと、サンプリング速度重みカーブとを用いた例を示したが、どちらか一方のみを用いてもよい。
上記実施形態では、下流側フレームの先頭位置は固定とし、上流側フレームの先頭位置をズラしながら類似度を求めている。この構成に代えて、上流側フレームの先頭位置を固定とし、下流側フレームの先頭位置をズラしながら類似度を求めても良い。また、下流側フレームと上流側フレームの両方をズラしながら類似度を求めても良い。ただし、下流側フレームを、下流側リングバッファに含まれる波形データのうち最新のデータを含む位置に固定しておけば、常に最新のデータを用いてリアルタイムで類似度を算出することができるので特に好適である。
上記実施形態では、類似度評価部65、重み付け処理部66、走行情報取得部67、糸品質測定部68、サンプリング速度取得部72、計測部73等の機能を、ハードウェアとソフトウェアとによって実現する構成としたが、当該機能の一部又は全部を、専用のハードウェアによって実現する構成であっても良い。