<第1の実施形態>
第1の実施形態に係る通信システム1では、基地局装置100−j及び移動局装置200−kが、OFDM(orthogonal frequency division multiplexing;直交周波数分割多重)方式を用いてデータの伝送を行う例について説明する。尚、本実施形態ではこれに限らず、その他の伝送方式、例えば、SC−FDMA(single carrier−frequency division multiple access;単一キャリア周波数分割多元アクセス)、DFT−s−OFDM(discrete Fourier transform−spread−OFDM;離散フーリエ変換拡散OFDM)等のシングルキャリア伝送方式や、MC−CDMA(multiple carrier−code division multiple access;多重キャリア符号分割多重アクセス)等のマルチキャリア伝送方式を用いてもよい。また、第1の実施形態に係る通信システム1の例として、3GPP(Third Generation Partnership Project)によるWCDMA(Wideband Code Division Multiple Access)、LTE(Long Term Evolution)、LTE−A(LTE−Advanced)やIEEE(The Institute of Electrical and Electronics engineers)によるWiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)等のような無線通信システムを含むが、これらに限定されない。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る通信システム1の構成を示す概略図である。第1の実施形態に係る通信システム1は、複数の基地局装置100−j(jは任意の正整数であり、図1において、j=1〜3とする)と、複数の移動局装置200−k(kは任意の正整数であり、図1において、k=1〜3とする)を備えている。
通信システム1における複数の基地局装置100−jは、互いに協調してセル間干渉を抑圧するように構成される。また、通信システム1における移動局装置200−kは、協調する基地局装置と接続する移動局装置かつ協調の対象となる移動局装置を含む。
各基地局装置100−jは、自己のセルが他の基地局装置のセルと全域又は一部が重複するような構成で配置されている。基地局装置100−j間は、光ファイバやインターネット回線または無線回線等を用いたバックホール回線10−1、10−2(例えば、X2インターフェース)により接続されている。また、通信システム1は、全てのセルで同一の周波数を利用する、いわゆる1セル周波数繰り返しを用いている。
基地局装置100−jと移動局装置200−k間は、各伝搬路Hkj(伝達関数)で表されている(k及びjは任意の正整数である。図1において、k=1〜3及びj=1〜3とする)。ここで、協調の対象となる基地局装置及び移動局装置間の前記伝搬路Hkjをシステム全体の伝搬路と呼ぶ。通信システム1において、移動局装置200−kは、k=jとなる基地局装置100−jと無線接続されている。すなわち、移動局装置200−kにおいて、k≠jとなる基地局装置100−jが送信する信号はセル間干渉となる。
例えば、移動局装置200−1において、伝搬路H11を通って受信する基地局装置100−1からの送信信号が所望信号であり、伝搬路H12及び伝搬路H13を通って受信する基地局装置100−2及び基地局装置100−3からの送信信号がセル間干渉(非所望信号)となる。
詳しくは後述するが、各基地局装置100−jは、自己が送信する送信信号に、基地局装置100−jと移動局装置200−kが協調して、互いに与え得るセル間干渉を抑圧できるような送信重み係数Vjを乗算する。また、各移動局装置200−kは、基地局装置100−jと移動局装置200−kが協調して、互いに与え得るセル間干渉を抑圧できるような受信重み係数Ukを受信信号に乗算する。
以下、図1の通信システム1において、基地局装置100−1は、送信重み係数及び受信重み係数を算出する主基地局装置(マスター基地局装置)とし、基地局装置100−2及び基地局装置100−3は、マスター基地局装置の指示に従って協調動作する従基地局装置(スレーブ基地局装置)とする。
次に、第1の実施形態に係るマスター基地局装置(基地局装置100−1)について説明する。
マスター基地局装置(基地局装置100−1)は、図2に示すように、上位レイヤ101、符号化部102、変調部103、プレコーディング部104、重み係数制御部105、参照信号生成部106、制御信号生成部107、リソースマッピング部108、IDFT部109、GI挿入部110、送信部111、送信アンテナ部112、受信アンテナ部121、受信部122、制御信号検出部123を備えて構成される。尚、上記基地局装置100−1の一部或いは全部をチップ化して集積回路となる場合、各機能ブロックに対して制御を行なうチップ制御回路(図示せず)を有する。
基地局装置100−1は、受信アンテナ部121を介して、移動局装置200−1が上りリンクで送信した伝搬路情報などの制御信号を含む信号を受信し、受信部122は、前記制御信号等を信号検出処理等のデジタル信号処理が可能な周波数帯へダウンコンバート(無線周波数変換)し、さらにスプリアスを除去するフィルタリング処理を行ない、フィルタリング処理した信号をアナログ信号からデジタル信号に変換(Analog to Disital変換)を行なう。
制御信号検出部123は、受信部122が出力した制御信号に対して復調処理及び復号処理等を行なう。制御信号は、上りリンク制御チャネル(PUCCH;Physical Uplink Control Channel)や上りリンク共通チャネル(PUSCH;Physical Uplink Shared Channel)から検出される。
上位レイヤ101は、制御信号検出部123から入力された制御信号に含まれる伝搬路情報(基地局装置100−1と移動局装置200−1間の伝搬路情報H11、基地局装置100−2と移動局装置200−1間の伝搬路情報H12、基地局装置100−3と移動局装置200−1間の伝搬路情報H13)を取得する。ここで、上位レイヤとは、OSI参照モデルで定義された通信機能の階層のうち、物理層(Physical Layer)よりも上位の機能の階層、例えば、データリンク層、ネットワーク層等である。
また、上位レイヤ101は、バックホール回線10−1、10−2を通して、スレーブ基地局装置(基地局装置100−2及び基地局装置100−3)から伝搬路情報を取得する。具体的には、上位レイヤ101は、基地局装置100−1と移動局装置200−2間の伝搬路情報(伝搬路H21に関する情報)、基地局装置100−2と移動局装置200−2間の伝搬路情報(伝搬路H22に関する情報)、基地局装置100−3と移動局装置200−2間の伝搬路情報(伝搬路H23に関する情報)は、バックホール回線10−1を通じて取得し、基地局装置100−1と移動局装置200−3間の伝搬路情報(伝搬路H31に関する情報)、基地局装置100−2と移動局装置200−3間の伝搬路情報(伝搬路H32に関する情報)、基地局装置100−3と移動局装置200−3間の伝搬路情報(伝搬路H33に関する情報)はバックホール回線10−2を通じて取得する。
すなわち、マスター基地局装置は、各移動局装置200−kが協調制御を行う全ての基地局装置(マスター基地局装置及びスレーブ基地局装置)との間の伝搬路変動を推定した結果である伝搬路情報を取得する。
また、上位レイヤ101は、伝搬路情報を重み係数制御部105に入力する。ここで、上位レイヤ101は、協調する基地局装置数及び移動局装置数を重み係数制御部105に入力する構成としても良い。
また、上位レイヤ101は、後述する重み係数制御部105で算出した送信重み係数及び受信重み係数を、バックホール回線10−1及び10−2を通して、スレーブ基地局装置に通知する。基地局装置100−1の上位レイヤ101は、基地局装置100−2が送信信号に乗算する送信重み係数V2と、移動局装置200−2が受信信号に対して乗算する受信重み係数U2とを、バックホール回線10−1を介して基地局装置100−2に通知する。基地局装置100−1の上位レイヤ101は、基地局装置100−3が送信信号に乗算する送信重み係数V3と、移動局装置200−3が受信信号に対して乗算する受信重み係数U3とを、バックホール回線10−2を介して基地局装置100−3に通知する。
また、上位レイヤ101は、制御信号に含まれるMCS情報、空間多重数などのフィードバック情報も取得する。上位レイヤ101は、フィードバック情報に基づき、符号化部102に情報データを出力し、制御信号生成部107に制御データを出力する。尚、上位レイヤ101は、基地局装置100−1を構成する各部位が、機能を発揮するために必要なその他のパラメータも通知する。
符号化部102は、上位レイヤ101から入力された情報データに対して誤り訂正符号化を行う。情報データは、例えば、通話に伴う音声信号、撮影した画像を表す静止画像又は動画像信号、文字メッセージ等である。符号化部102が誤り訂正符号化を行う際に用いる符号化方式は、例えば、ターボ符号化(turbo coding)、畳み込み符号化(convolutional coding)、低密度パリティ検査符号化(low density parity check coding;LDPC)などである。
尚、符号化部102は、誤り訂正符号化したデータ系列の符号化率(coding rate)をデータ伝送率に対応する符号化率に合わせるために、符号化ビット系列に対してレートマッチング処理を行ってもよい。また、符号化部102は、誤り訂正符号化したデータ系列を並び替えてインターリーブする機能を有してもよい。
変調部103は、符号化部102から入力された信号を変調して変調シンボルを生成する。変調部103が行う変調処理は、例えば、BPSK(binary phase shift keying;2相位相変調)、QPSK(quadrature phase shift keying;4相位相変調)、M−QAM(M−quadrature amplitude modulation;M値直交振幅変調、例えば、M=16、64、256、1024、4096)などである。尚、変調部103は、生成した変調シンボルを並び替えてインターリーブする機能を有してもよい。
重み係数制御部105は、上位レイヤ101から取得した伝搬路情報(伝搬路推定値)を用いて、マスター基地局装置及びスレーブ基地局装置が送信する信号に乗算する送信重み係数V
j並びに各基地局装置と接続している移動局装置が受信信号に乗算する受信重み係数U
kを算出する。すなわち、重み係数制御部105は、システム全体の伝搬路情報を用いて、送信重み係数並びに受信重み係数を算出する。
一例として、重み係数制御部105は、干渉源となる複数の基地局装置から到来する干渉信号の等価伝搬路の向き(ベクトル)が、各移動局装置において受信信号に乗算する受信重み係数に直交するように送信重み係数を算出する(式1)。
ここで、H
kjは、基地局装置100−jと、協調制御の対象である移動局装置200−kとの間の伝搬路行列、V
jは基地局装置100−jの送信重み係数のベクトル、U
kは移動局装置200−kの受信重み係数のベクトル、d
kはストリーム数である。
Hは複素共役転置である。
また、重み係数制御部105は、スレーブ基地局装置の送信重み係数Vj及びスレーブ基地局装置に接続している移動局装置の受信重み係数Ukを上位レイヤ101に通知する。
また、重み係数制御部105は、マスター基地局装置(自局)の送信信号に乗算する送信重み係数V1をプレコーディング部104に出力する。また、重み係数制御部105はマスター基地局装置(自局)に接続している移動局装置の受信重み係数U1を制御信号生成部107に出力する。
プレコーディング部104は、変調部103が出力する変調シンボルに送信重み係数V1を乗算する。
参照信号生成部106は、参照信号(パイロット信号)を生成し、生成した参照信号をリソースマッピング部108に出力する。例えば、参照信号は、基地局装置の送信アンテナ部112から各移動局装置の受信アンテナ部201−1及び201−2までの伝搬特性を推定するために用いる信号である。推定した伝搬特性は、送信重み係数及び受信重み係数算出のための伝搬路情報、或いは移動局装置における伝搬路補償に用いられる。尚、参照信号を構成する符号系列は、直交系列、例えば、アダマール符号又はCAZAC(Constant Amplitude Zero Auto−Correlation)系列であることが好ましい。
制御信号生成部107は、上位レイヤ101が出力する制御データ及び重み係数制御部105が出力する受信重み係数U1(自局に接続する移動局装置の受信重み係数)を含む制御信号を生成する。ここで、重み係数を含む制御信号を生成する制御信号生成部を重み係数情報生成部と、前記制御信号生成部が生成した重み係数を含む制御信号を重み係数情報とよんでもよい。尚、該制御信号に誤り訂正符号化及び変調処理を施してもよい。
図3は、制御信号生成部107が出力する制御信号のフォーマットの一例を示す概念図である。制御信号では、自局と接続している移動局装置の受信重み係数情報を格納する領域(セル情報領域)を有する。図3に示すように、移動局装置200−1が受信信号に乗算する受信重み係数U1を受信重み係数情報とし、該情報を格納する領域が設けられている。
リソースマッピング部108は、上位レイヤ101から通知されるスケジューリング情報に基づいて、変調シンボル、参照信号及び制御信号をリソースエレメントにマッピングする(以降、リソースマッピングと呼ぶ。)リソースエレメントとは、1つのサブキャリアと1つのOFDMシンボルから成る信号を配置する最小単位をいう。
IDFT部109は、リソースマッピング部108から入力された周波数領域信号に対して逆離散フーリエ変換(inverse discrete Fourier Transform;IDFT)して時間領域信号に変換する。IDFT部109は、周波数領域信号を時間領域信号に変換できれば、IDFTの代わりに、他の処理方法(例えば、逆高速フーリエ変換[IFFT、inverse fast Fourier transform])を用いてもよい。
GI挿入部110は、IDFT部109から入力された時間領域信号(有効シンボルと呼ぶ)にGI(Guard Interval;ガードインターバル、ガード区間ともいう)を付加してOFDMシンボルを生成する。GIとは、前後の時間のOFDMシンボルが互いに干渉しないことを目的として付加する区間である。例えば、GI挿入部110は、有効シンボルの後半の一部の区間の複写(コピー)をGIとして、有効シンボルに前置する。従って、GIが前置された有効シンボルがOFDMシンボルとなる。
送信部111は、GI挿入部110から入力されたOFDMシンボルを、D/A(digital−to−analog;デジタル・アナログ)変換して、アナログ信号を生成する。送信部111は、生成したアナログ信号に対してフィルタリング処理により帯域制限して帯域制限信号を生成する。送信部111は、生成した帯域制限信号を無線周波数帯域にアップコンバートし、送信アンテナ部112に出力する。
次に、通信システム1において、送信重み係数Vj及び受信重み係数Ukを算出する処理を説明する。図4は、重み付け制御部105が送信重み係数Vj及び受信重み係数Ukを算出する処理の一例を示すフローチャートである。
図4の算出方法では、基地局装置から移動局装置の伝搬路行列の複素共役転置行列が、移動局装置から基地局装置の伝搬路行列となるという性質(伝搬路の相反性)を利用して、送信と受信の役割を入れ替えながら干渉の影響ができるだけ小さくなるような重み係数を求める処理を繰返し行う。
まず、重み係数制御部105は、伝搬路情報を取得すると、任意の送信重み係数Vjを設定する(S100)。
次に、重み係数制御部105は、移動局装置200−kが受信する干渉の総和Q
k、iを式2に基づいて算出する(S101)。ここで、Qは受信する干渉信号の共分散行列である。また、Pは送信電力、Kは協調制御の対象となる移動局装置数である。また、
Hは複素共役転置を表す。
次に、重み係数制御部105は、算出した干渉の総和Qk、iを特異値分解し、干渉の総和Qk、iを抑圧する受信重み係数Uk、iを算出する(S102)。尚、ステップS102及びステップS103では、基地局装置100−jの送信信号を移動局装置200−kが受信する場合について、受信重み係数Ukが算出されていることになる。
次に、基地局装置100−jと移動局装置200−kの送信と受信の役割の入れ替えを行う(S103)。すなわち、移動局装置200−kが前記係数Uk、iを乗算した送信信号を基地局装置100−jが受信する場合について、該基地局装置100−jの受信重み係数Uk 〜を算出する。該受信重み係数Uk 〜は、基地局装置100−jの送信重み係数Vkに該当することになる。
受信重み係数U
k 〜の算出について、まず、基地局装置100−jが受信する干渉の総和Q
j、i 〜を式(3)に基づき算出する(S104)。ここで、H
jk 〜=H
kj H、V
k 〜=U
k、P
〜は送信電力である。
次に、干渉の総和Qj、i 〜を特異値分解し、干渉の総和Qj、i 〜を抑圧する受信重み係数Uk、i 〜を算出する(S105)。再度、基地局装置100−jと移動局装置200−kの送信と受信の役割の入れ替えを行う(S106)。すなわち、Vk、i=Uk、i 〜を代入する。
処理の回数をカウントするカウンタを1つインクリメントし(S107)、所定の回数Iに到達するまで(S108、N)ステップS101乃至ステップS106の処理を繰返す。所定の回数Iに到達した場合(S108、Y)、処理を終了する。
このように、基地局装置100−jと移動局装置200−kの送信と受信の役割を入れ替えながら、干渉電力が小さくなるような受信重み係数(Uk、Uk 〜)を繰り返し更新していくことで、基地局装置100−j及び移動局装置200−kが干渉の影響を抑圧することができる受信重み係数が得られる。
k=jとなる受信重み係数Uk 〜を基地局装置100−jの送信重み係数Vjとし、受信重み係数Ukを移動局装置200−kの受信重み係数Ukとすることで、複数の基地局装置100−jが協調して干渉の影響を抑圧することができる。尚、この算出方法は一例であり、これに限定されず、この他の算出方法を用いてもよい。
次に、第1の実施形態におけるスレーブ基地局装置(基地局装置100−2及び基地局装置100−3)について説明する。図5は、第1の実施形態に係るスレーブ基地局装置(基地局装置100−2及び基地局装置100−3)の構成を表す概略図である。以下、基地局装置100−2の構成として説明するが、基地局装置100−3も同様の構成を有する。
基地局装置100−2は、上位レイヤ151、符号化部102、変調部103、プレコーディング部154、参照信号生成部106、制御信号生成部157、リソースマッピング部108、IDFT部109、GI挿入部110、送信部111、送信アンテナ部112、受信アンテナ部121、受信部122及び制御信号検出部123を含んで構成される。尚、基地局装置100−2の一部あるいは全部をチップ化して集積回路となる場合、各機能ブロックに対して制御を行なうチップ制御回路(図示せず)を有する。
基地局装置100−1と比較すると、基地局装置100−2における、上位レイヤ151、プレコーディング部154及び制御信号生成部157における動作が異なる。以下、主に異なる部分について説明する。
上位レイヤ151は、制御信号検出部123から入力された制御信号に含まれる伝搬路情報(基地局装置100−1と移動局装置200−2間の伝搬路情報H21、基地局装置100−2と移動局装置200−2間の伝搬路情報H22、基地局装置100−3と移動局装置200−2間の伝搬路情報H23)を取得する。
また、上位レイヤ151は、伝搬路情報をバックホール回線10−1を介して、受信重み係数の算出を行うマスター基地局装置に通知する。また、上位レイヤ151は、バックホール回線10−1を介して、自局の送信信号に乗算する送信重み係数V2及び自局と接続している移動局装置200−2の受信重み係数U2をマスター基地局装置から取得する。
また、上位レイヤ151は、前記送信重み係数V2をプレコーディング部154に入力する。更に、上位レイヤ151は、受信重み係数U2を制御信号生成部157に入力する。
プレコーディング部154は、変調部103が出力する変調シンボルに送信重み係数V2を乗算する。
制御信号生成部157は、上位レイヤ151が出力する制御データ及び受信重み係数U2(自局に接続する移動局装置200−2の受信重み係数)を含む制御信号を生成する。同様に、制御信号のフォーマットは、図3に示すフォーマットが適用される。すなわち、自局と接続している移動局装置200−2の受信重み係数情報U2を格納する領域を有する。
次に、第1の実施形態における移動局装置200−kについて説明する。図6は、第1の実施形態に係る移動局装置200―kの構成を示す概略図である。
移動局装置200−kは、複数の受信アンテナ部201−e、複数の受信部202−e、伝搬路推定部203、複数のGI除去部204−e、複数のDFT部205−e、干渉抑圧部206、伝搬路補償部207、復調部208、復号部209、制御信号検出部210及び上位レイヤ211、制御信号生成部221、送信部222及び送信アンテナ部223を含んで構成される。尚、図6では、移動局装置200−kが2本(e=2)の受信アンテナを有する場合の例を示すが、これに限らず、何本のアンテナを備えてもよい。また、1本の送信アンテナとなっているが、これに限らず、複数の送信アンテナを備えてもよいし、送信アンテナと受信アンテナを共用する構成としてもよい。また、移動局装置200−kの一部あるいは全部をチップ化して集積回路となる場合、各機能ブロックに対して制御を行なうチップ制御回路(図示せず)を有する。
移動局装置200−kは、受信アンテナ部201−eを介して、基地局装置100−jの送信信号を受信する。ここで、移動局装置200−m(m∈kの集合)が基地局装置100−mと接続している場合、基地局装置100−m以外の送信信号はセル間干渉となる。
受信部202−eは、受信アンテナ部201−eから入力された無線周波数信号をデジタル信号処理が可能な周波数帯域にダウンコンバートし、ダウンコンバートした信号を更にフィルタリング処理を行って不要成分(スプリアス;Spurious)を除去する。また、受信部202−eは、フィルタリング処理を行った信号をアナログ信号からデジタル信号に(A/D;Analog−to−Digital)変換し、変換したデジタル信号を伝搬路推定部203、GI除去部204−e及び制御信号検出部210に出力する。
GI除去部204−eは、遅延波による歪を回避するために受信部202−eから出力される信号からガードインターバルGIを除去し、除去された信号をDFT部205−eに出力する。
DFT部205−eは、GI除去部204−eから入力されたガードインターバルGIが除去された信号を時間領域信号から周波数領域信号に変換する離散フーリエ変換(DFT:Discrete Fourier Transform)を行い、干渉抑圧部206に出力する。尚、DFT部205−eは、信号を時間領域から周波数領域に変換できれば、DFTに限らず、他の方法、例えば、高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)等を行ってもよい。
伝搬路推定部203は、受信部202−eが出力した信号に含まれる参照信号を用いて、伝搬路推定を行う。そして、伝搬路推定部203は、伝搬路推定値を伝搬路補償部207、制御信号生成部221及び上位レイヤ211に通知する。尚、伝搬路推定値は、例えば、伝達関数、インパルス応答などである。
制御信号検出部210は、受信部202−eが出力した信号に含まれる制御信号の検出を行う。そして、制御信号検出部210は、制御信号に含まれる受信重み係数情報(図3参照)を抽出すると、干渉抑圧部206に入力する。また、制御信号検出部210は、制御信号に含まれる情報データ等に施されているMCS、レイヤ数の情報を抽出すると、復調部208及び復号部209に通知する。
干渉抑圧部206は、DFT部205−eから入力された周波数領域の信号に制御信号検出部210から入力された受信重み係数を乗算する。
伝搬路補償部207は、伝搬路推定部203から入力された伝搬路推定値に基づき、ZF(Zero Forcing;ゼロフォーシング)等化、MMSE(Minimum Mean Square Error;最小平均二乗誤差)等化等の方式を用いて、フェージングによる伝搬路歪を補正する重み係数を算出する。伝搬路補償部207は、この重み係数を干渉抑圧部206から入力された信号に乗算して伝搬路補償を行う。
復調部208は、伝搬路補償部207から入力された伝搬路補償後の信号(データ変調シンボル)に対して復調処理を行う。該復調処理は、硬判定(符号化ビット系列の算出)、軟判定(符号化ビットLLRの算出)のどちらでもよい。
復号部209は、復調部208が出力する復調後の符号化ビット系列(又は、符号化ビットLLR)に対して誤り訂正復号処理を行い、自己宛に送信された情報データを算出し、上位レイヤ211に出力する。この誤り訂正復号処理の方式は、接続している基地局装置100−mが行ったターボ符号化、畳み込み符号化等の誤り訂正符号化に対応する方式である。誤り訂正復号処理は、硬判定又は軟判定のどちらも適用できる。
尚、基地局装置100−jが、インターリーブしたデータ変調シンボルを送信する場合には、復号部209は、誤り訂正復号処理を行う前に、入力された符号化ビット系列をインターリーブに対応するデインターリーブ処理を行う。そして、復号部209は、デインターリーブ処理が行われた信号に対して誤り訂正復号処理を行う。
制御信号生成部221は、自局と基地局装置100−jとの間の伝搬路情報を含む制御信号を生成する。例えば、図1の通信システム1において、移動局装置200−1の前記制御信号には、移動局装置200−1と協調する基地局装置100−1との間の伝搬路H11、移動局装置200−1と協調する基地局装置100−2との間の伝搬路H12、移動局装置200−1と協調する基地局装置100−3との間の伝搬路H13の伝搬路情報が含まれる。
また、制御信号生成部221は、フィードバック情報(CQI、RI、PMIが含まれる)を基地局装置に送信するための制御信号を生成する。フィードバック情報は、上位レイヤ211が、伝搬路推定部203で算出した伝搬路推定値に基づいて決定する。
また、制御信号生成部221は、フィードバック情報を示す制御データを誤り訂正符号化及び変調マッピングし、制御信号を生成する。制御信号生成部221が出力する制御信号を含む信号は、送信部222で、下りリンクにおいて送信可能な周波数帯まえアップコンバートされ、送信アンテナ部223を介して、接続している基地局装置100−jに送信される。
次に、移動局装置200−kの干渉抑圧部206における処理について、具体的に説明する。以下は、移動局のアンテナが2本(e=2)の場合の例である。
移動局装置200−kにおいて、DFT部205−1及びDFT部205−2から干渉抑圧部206に入力される信号をベクトルR
kをとして、式4を用いて以下のように表わすことができる。
ここで、R
k、eは移動局装置kのDFT部205−eから入力される信号、H
kj、eは基地局装置100−j(j=1〜3)の送信信号を移動局装置200−kが受信アンテナ部201−eを介して受信した場合の伝搬路(伝達関数)、V
jは基地局装置100−jの送信信号に乗算されている送信重み係数(各基地局装置のプレコーディング部104で乗算)、S
jは基地局装置100−jのデータ変調シンボルである。また、+(式4及び式5では丸プラスで表す)は要素毎の加算である。
また、干渉抑圧部206が上記のR
kに受信重み係数U
kを乗算した信号をY
kとすると、式5と表せる。ここで、U
k、eは、移動局装置200−kのDFT部205−eから入力される信号に乗算する受信重み係数である。
次に、通信システム1における送信重み係数Vj及び受信重み係数Ukの通知手順について説明する。
図7は、通信システム1のマスター基地局装置(基地局装置100−1)が送信重み係数Vj及び受信重み係数Ukを算出し、スレーブ基地局装置(基地局装置100−2及び100−3)及び移動局装置200−kに通知する動作例を示すシーケンス図である。
最初に、マスター基地局装置は、協調してデータ伝送するスレーブ基地局装置に対して、伝搬路情報通知依頼をする(S201)。
ステップS201の通知依頼を受けた各スレーブ基地局装置は、それぞれ接続している移動局装置200−2及び200−3に対して、伝搬路情報通知依頼をする(S202)。
一方、マスター基地局装置に接続している移動局装置200−1は、マスター基地局装置から直接、伝搬路情報通知依頼を受ける。
全ての移動局装置200−kは、伝搬路情報通知依頼(S202)を受けると、協調する基地局装置各々との伝搬路を推定する(S203)。
通信システム1において、移動局装置200−kは、伝搬路Hk1、伝搬路Hk2及びHk3を推定する。伝搬路推定は、例えば、各基地局装置200−jが送信する参照信号を用いて行う。
次に、移動局装置200−kは、伝搬路推定の結果(伝搬路情報)を伝搬路情報通知の依頼元である基地局装置100−jに通知する(S204)。
次に、伝搬路情報の通知(S204)を受けたスレーブ基地局装置(基地局装置100−2及び100−3)は、伝搬路情報をマスター基地局装置(基地局装置100−1)に通知する(S205)。
具体的には、通信システム1において、基地局装置100−1は、基地局装置100−2に対して、接続している移動局装置200−2の伝搬路情報の通知を依頼する。そして、基地局装置100−2は、移動局装置200−2に対して伝搬路情報通知の依頼を行う。基地局装置100−3も同様に、伝搬路情報通知の依頼を行う。
一方、マスター基地局装置に接続している移動局装置200−1は、マスター基地局装置に直接、伝搬路情報を通知する。
これにより、マスター基地局装置は、協調してデータ伝送を行う全基地局装置と移動局装置間の全ての伝搬路情報を得ることになる。
次に、マスター基地局装置は、ステップS205で得た伝搬路情報を用いて、送信重み係数Vj及び受信重み係数Ukを算出する(S206)。
そして、マスター基地局装置は、バックホール回線を用いて、算出した送信重み係数Vjをスレーブ基地局装置100−jに通知する(S207)。
また、マスター基地局装置は、各移動局装置が接続している基地局装置を経由して各移動局装置の受信重み係数Ukを通知する(S207、S208)。例えば、スレーブ基地局装置100−2に接続している移動局装置200−2は、スレーブ基地局装置100−2を介して、マスター基地局装置100−1から受信重み係数U2を取得することになる。
また、マスター基地局装置は、自局に接続している移動局装置200−1の受信重み係数U1を当該移動局装置に直接通知する(S209)。
そして、マスター基地局装置及びスレーブ基地局装置は、各々に接続している移動局装置に送信する情報データに送信重み係数Vjを乗算し(S210、S211)、送信する(S212、S213)。
以上のように、第1の実施形態では、複数の基地局装置100−jの各セルが全部或いは一部を重複するように配置される通信システム1において、マスター基地局装置は、各基地局装置100−jに接続している移動局装置200−kが受信する干渉信号の等価伝搬路の向きが移動局装置200−kが受信信号に乗算する受信重み係数に直交するように、各基地局装置100−jの送信重み係数Vj及び移動局装置200−kの受信重み係数Ukを算出する。
そして、基地局装置100−jは、自局に接続する移動局装置200−kに受信重み係数Ukを通知し、移動局装置200−kは受信信号(干渉信号を含む)に受信重み係数Ukを乗算して受信処理を行う。
これにより、異なるセル範囲を有する複数の基地局装置におけるセルが、全部或いは一部を重複するように配置される通信システムにおいて、複数の基地局装置が同一周波数を用いて通信することに起因するセル間干渉を効果的に抑圧し、良好な受信特性を得ることができる。
尚、基地局装置100−1の重み係数制御部105は、上位レイヤ101に含んでも良い。また、重み係数制御部105は、協調する複数の基地局装置100−jの外部に位置し、これらの基地局装置100−jを統括する基地局管理部に含んでもよい。
<第2の実施形態>
第2の実施形態では、第1の実施形態で説明した複数の基地局装置100−jが協調してセル間干渉を抑圧する通信システム1において、コードブックを用意して、基地局装置100−jが移動局装置200−kに受信重み係数Ukを通知する方法について説明する。コードブックとは、通信システム1において、予め決められた送信重み係数Vj及び受信重み係数Ukの一覧表である。
第2の実施形態の通信システム1における基地局装置100−jは、基地局装置の送信重み係数Vj及び移動局装置の受信重み係数Ukのコードブックを共有し、移動局装置200−kは、少なくとも移動局装置200−kの受信重み係数Ukのコードブックを共有するように構成されている。
コードブックの一例を図8に示す。図8において、送信重み係数Vj、nは、第jの基地局装置におけるn番目の送信重み係数候補である(j及びnは任意の正整数)。また、受信重み係数Uk、nは、第kの移動局装置におけるn番目の受信重み係数候補である(k及びnは任意の正整数)。
図8のコードブックにおいて、コードブックインデックス#0〜3は、2個の基地局装置と2個の移動局装置との間で協調してセル間干渉を抑圧する送信重み係数Vj及び受信重み係数Ukの候補である。コードブックインデックス#4〜7は、3個の基地局装置と3個の移動局装置との間で協調してセル間干渉を抑圧する送信重み係数Vj及び受信重み係数Ukの候補である。コードブックインデックス#8〜11は4個の基地局装置と4個の移動局装置との間で協調してセル間干渉を抑圧する送信重み係数Vj及び受信重み係数Ukの候補である。
次に、コードブックを用いて送信重み係数Vj及び受信重み係数Ukの選択について説明する
例えば、マスター基地局装置100−1は、コードブックを重み係数制御部105に保持する。まず、重み係数制御部105は、上位レイヤ101から入力される、協調する基地局装置数及び移動局装置数から、コードブックの候補を選択する。
図1に示す通信システム1の場合は、3個の基地局装置100−jと3個の移動局装置200−kで協調するから、コードブックインデックス#4〜7が候補として選択される。
次に、重み係数制御部105は、上位レイヤ101から入力される伝搬路情報Hkjと、選択したコードブックインデックスの候補とを用いて、干渉の影響ができるだけ小さくなるような受信重み係数Ukを求める処理を行う。
例えば、前記伝搬路情報Hkjと候補となったコードブックインデックの送信重み係数Vj及び受信重み係数Ukを式2及び式3に代入し、干渉の総和Qk、i及び総和Qj、i 〜が最小となるコードブックを選択する。
次に、コードブックを用いて、送信重み係数Vj及び受信重み係数Ukの通知方法について説明する。
マスター基地局装置が選択したコードブックインデックスをスレーブ基地局装置及び移動局装置に通知する動作のシーケンスは、図7に示すシーケンスを適用する。
この場合、図7の「“送信重み係数及び受信重み係数通知”(S207)」及び「“受信重み係数通知”(S208及びS209)」を「コードブックインデックス通知」に置き換えることにより実現する。
そして、マスター基地局装置は、前記選択したコードブックインデックを、バックホール回線10−1、10−2を用いて、スレーブ基地局装置に通知する。
次に、制御信号生成部107が出力する制御信号のフォーマットを説明する。図9は、制御信号生成部107が出力する制御信号のフォーマットの一例を示す概念図である。
制御信号は、自局と接続している移動局装置の受信重み係数Ukの情報を通知するためのコードブックインデックスの領域を有する。図9は、一例として、移動局装置200−1が受信信号に乗算する受信重み係数U1を受信重み係数情報とし、該情報を格納する領域を4ビット設けている場合を示している。
また、スレーブ基地局装置の制御信号生成部157は、図9に示す制御信号のフォーマットにより、移動局装置200−kに受信重み係数Ukを通知する。
上述したように、基地局装置100−j及び移動局装置200−kでコードブックを共有することにより、送信重み係数Vj及び受信重み係数Ukを算出する際の繰り返し数を減らすことができるため、基地局装置100−j及び移動局装置200−kにおいて演算処理の負担を軽減できる。また、コードブックインデックを通知することにより移動局装置200−kに受信重み係数Ukを通知できるので、オーバヘッド(制御信号の重み係数通知のための格納領域)を軽減することができる。
<第3の実施形態>
第3の実施形態では、第1の実施形態で説明した複数の基地局装置100−jが協調してセル間干渉を抑圧する通信システム1において、複数の参照信号を用いて、基地局装置100−jが移動局装置200−kに受信重み係数Ukを通知する方法を用いる形態について説明する。
第3の実施形態における通信システム1aは、図10に示すように、マスター基地局装置である基地局装置300−1、スレーブ基地局装置である基地局装置300−2及び300−3及び複数の移動局装置400−1乃至移動局装置400−3を備えている。尚、第3の実施形態における通信システム1aは、図1の基地局装置100−1を基地局装置300−1に、図1の基地局装置100−2及び100−3を基地局装置300−2及び300−3に、移動局装置200−1乃至移動局装置200−3を移動局装置400−1乃至移動局装置400−3に置き換えることにより実現できる。
図11は、第3の実施形態に係る基地局装置300−1の構成を表す概略図である。基地局装置300−1は、上位レイヤ101、符号化部102、変調部103、プレコーディング部104、重み係数制御部305、参照信号生成部306、制御信号生成部107、リソースマッピング部108、IDFT部109、GI挿入部110、送信部111、送信アンテナ部112、受信アンテナ部121、受信部122、制御信号検出部123を含んで構成される。尚、基地局装置300−1の一部あるいは全部をチップ化して集積回路となる場合、各機能ブロックに対して制御を行なうチップ制御回路(図示せず)を有する。
基地局装置300−1において、図2と共通する参照番号の構成要素は、その機能や動作が同じであるため、説明を省略する。第3の実施形態の基地局装置300−1と第1の実施形態の基地局装置100−1と比較した場合、重み係数制御部305及び参照信号生成部306が異なる。以下、これら部位を中心に説明する。
重み係数制御部305は、上位レイヤ101から取得した伝搬路情報を用いて、基地局装置及びスレーブ基地局装置が送信する信号に乗算する送信重み係数Vj並びに前記基地局装置と接続している移動局装置が受信信号に乗算する受信重み係数Ukを算出する。送信重み係数Vj並び受信重み係数Ukの算出方法は、第1の実施形態と同様の方法が適用できる。
また、重み係数制御部305は、スレーブ基地局装置の送信重み係数Vj及びスレーブ基地局装置に接続している移動局装置の受信重み係数Ukを上位レイヤに通知する。また、重み係数制御部305は、マスター基地局装置(自局)の送信信号に乗算する送信重み係数V1をプレコーディング部104に出力する。さらに、重み係数制御部305は、マスター基地局装置(自局)に接続している移動局装置の受信重み係数U1を参照信号生成部306に出力する。
参照信号生成部306は、基地局装置300−jの送信アンテナから移動局装置300−kの各受信アンテナまでの伝搬特性を推定するために用いる第1の参照信号と、受信重み係数U1を移動局装置に通知するために用いる第2の参照信号とを生成する。第2の参照信号は、通信システム1aで予め決められた既知の符号系列に受信重み係数U1を乗算することで生成される。ここで、重み係数を含む参照信号を生成する参照信号生成部を重み係数情報生成部と、前記参照信号生成部が生成した重み係数を含む参照信号を重み係数情報とよんでもよい。
例えば、通信システム1aで予め決められた既知の符号系列をSRSとすると、第1の参照信号は、SRSとなり、第2の参照信号は、U1SRSとなる。
リソースマッピング部108は、上位レイヤ101から通知されるスケジューリング情報に基づいて、プレコーディング部104から出力される変調シンボル、第1の参照信号、第2の参照信号及び制御信号をリソースマッピング部108のリソースエレメントにリソースマッピングする。
次に、第3の実施形態に係る基地局装置300−2及び基地局装置300−3(スレーブ基地局装置)の説明をする。
図12は、第3の実施形態に係る基地局装置300−2及び基地局装置300−3の構成を表す概略図である。以下基地局装置300−2の構成として説明するが、基地局装置300−3も同様の構成を有する。また、スレーブ基地局装置の数は2つに限定されず、少なくとも1つの基地局装置を含むものであれば良い。
基地局装置300−2は、上位レイヤ152、符号化部102、変調部103、プレコーディング部154、参照信号生成部356、制御信号生成部157、リソースマッピング部108、IDFT部109、GI挿入部110、送信部111、送信アンテナ部112、受信アンテナ部121、受信部122、制御信号検出部123を含んで構成される。尚、基地局装置300−2の一部あるいは全部をチップ化して集積回路となる場合、各機能ブロックに対して制御を行なうチップ制御回路(図示せず)を有する。
基地局装置300−2において、図5と共通する参照番号の構成要素は、その機能や動作が同じであるため、説明を省略する。第3の実施形態の基地局装置300−2と第1の実施形態の基地局装置100−2と比較した場合、上位レイヤ152及び参照信号生成部356が異なる。以下、これらの部位を中心に説明する。
上位レイヤ152は、制御信号検出部123から入力された制御信号に含まれる伝搬路情報(基地局装置300−1と移動局装置400−2間の伝搬路情報H21、基地局装置300−2と移動局装置400−2間の伝搬路情報H22、基地局装置300−3と移動局装置400−2間の伝搬路情報H23)を取得する。
また、上位レイヤ152は、バックホール回線10−1(又はバックホール回線10−2)を通じて、受信重み係数Ukの算出を行うマスター基地局装置に取得した伝搬路情報を通知する。
また、上位レイヤ152は、バックホール回線10−1(又はバックホール回線10−2)を通じて、自局の送信信号に乗算する送信重み係数V2(又はV3)及び自局と接続している移動局装置400−2の受信重み係数U2(又はU3)をマスター基地局装置から取得する。
更に、上位レイヤ152は、送信重み係数V2(又はV3)をプレコーディング部154に入力する。また、上位レイヤ152は、受信重み係数U2(又はU3)を参照信号生成部356に入力する。
参照信号生成部356は、基地局装置の送信アンテナから各移動局装置の受信アンテナまでの伝搬特性を推定するために用いる第1の参照信号SRS1と、受信重み係数U2(又はU3)を移動局装置400−2に通知するために用いる第2の参照信号SRS2とを生成する。尚、基地局装置300−2、300−3の参照信号生成部356における参照信号の生成方法は、基地局装置300−1の参照信号生成部306における参照信号の生成方法を適用する。
リソースマッピング部108は、上位レイヤ152から通知されるスケジューリング情報に基づいて、プレコーディング部154から出力される変調シンボル、第1の参照信号、第2の参照信号及び制御信号をリソースマッピング部108のリソースエレメントにリソースマッピングする。リソースマッピングのフォーマットは、基地局装置300−1の参照信号生成部106におけるフォーマットを適用する。
次に、第3の実施形態に係る移動局装置400―kの構成について説明する。
図13は、第3の実施形態に係る移動局装置400―kの構成を示す概略図である。移動局装置400−kは、受信アンテナ部201−e、受信部202−e、伝搬路推定部203、GI除去部204−e、DFT部205−e、干渉抑圧部206、伝搬路補償部207、復調部208、復号部209、制御信号検出部410及び上位レイヤ211、制御信号生成部221、送信部222及び送信アンテナ部223を含んで構成される。図13は、アンテナ2本(e=1、2)の例である。尚、移動局装置400−kの一部あるいは全部をチップ化して集積回路となる場合、各機能ブロックに対して制御を行なうチップ制御回路(図示せず)を有する。
移動局装置400−kにおいて、図6と共通する参照番号の構成要素は、その機能や動作が同じであるため、説明を省略する。第3の実施形態の移動局装置400−kと第1の実施形態の移動局装置200−kと比較した場合、制御信号検出部410が異なる。以下、該部位を中心に説明する。
伝搬路推定部203は、受信部202−1が出力した信号に含まれる第1の参照信号SRS1を用いて、伝搬路推定を行う。そして、伝搬路推定値(例えば、伝達関数)を制御信号検出部410、伝搬路補償部207、制御信号生成部221及び上位レイヤ211に通知する。
伝搬路推定部203は、受信部202−eが出力した第1の参照信号HSRS1(Hkは基地局装置300−j(ただしj=k)と移動局装置400−k間の伝搬路)を既知信号SRS1で除算することにより伝搬路推定値H^を算出する。
また、既知信号SRS1を配置していないサブキャリアの伝搬路推定値は、第1の参照信号HSRS1を配置したサブキャリアの伝搬路推定値Hk^を用いて、線形補間、FFT補完などの補間技術により算出することができる。
制御信号検出部410は、受信部202−2が出力した信号に含まれる制御信号の検出を行う。制御信号に含まれる情報データなどに施されているMCS、レイヤ数の情報を抽出すると、復調部208及び復号部209に通知する。
また、制御信号検出部410は、受信部202−2が出力した信号に含まれる第2の参照信号S
RS2(=U
kS
RS1)を用いて受信重み係数情報U
k^を算出する。そして、受信重み係数情報U
k^を干渉抑圧部206に入力する。算出した受信重み係数情報U
k^は、以下の式6で表すことができる。ここで、H
k^は伝搬路推定値である。
干渉抑圧部206は、算出した受信重み係数情報Uk^を用いて、式5で表す処理を行う。
次に、第3の実施形態に係る基地局装置300−1のリソースマッピング部108におけるリソースマッピングを説明する。図14は、第3の実施形態に係る基地局装置300−1のリソースマッピング部108におけるリソースマッピングの一例である。
図14に示すリソースマッピング部108におけるリソースマッピングは、基地局装置300−1が1個の送信アンテナ部により送信する場合の一例である。図14において、横方向は時間Tを示し、縦方向は周波数Fを示す。図14において、白抜き部RE1は、制御信号及び情報データをマッピングするリソースエレメントである。
また、斜線部RE2及び塗潰し部RE3は参照信号をマッピングするリソースエレメントである。参照信号をマッピングできるリソースエレメントは、システム帯域全体に有する。すなわち、セル固有の参照信号をマッピングするリソースエレメントである。
そして、前記参照信号をマッピングするリソースエレメントのうち、塗潰し部RE3に第1の参照信号を配置する。また、参照信号をマッピングするリソースエレメントのうち、斜線部RE2に第2の参照信号を配置する。
このように、セル固有の参照信号の一部に受信重み係数Ukを乗算することで、受信重み係数Ukを移動局装置に通知する。尚、情報データ及び制御信号に、誤り訂正符号化及び変調処理を施しても良い(以下図15乃至図17も同様)。
図15は、第3の実施形態に係る基地局装置300−1のリソースマッピング部108におけるリソースマッピングの別の一例である。
図15において、横方向は時間Tを、縦方向は周波数Fを示す。図15において、白抜き部RE1は、制御信号及び情報データをマッピングするリソースエレメントである。太線の範囲は、受信重み係数を通知する移動局装置の変調シンボルが割り当てられる範囲MAである。
また、斜線部RE2及び塗潰し部RE3は参照信号をマッピングするリソースエレメントである。参照信号をマッピングできるリソースエレメントは、受信重み係数Ukを通知する移動局装置の変調シンボルが割り当てられる範囲に有する。すなわち、ユーザ固有の参照信号をマッピングするリソースエレメントである。
そして、参照信号をマッピングするリソースエレメントのうち、塗潰し部RE3に第1の参照信号を配置する。また、参照信号をマッピングするリソースエレメントのうち、斜線部RE2に第2の参照信号を配置する。
このように、ユーザ固有の参照信号の一部に受信重み係数Ukを乗算することで、該受信重み係数を移動局装置に通知する。
図16は、第3の実施形態に係る基地局装置300−1のリソースマッピング部108におけるリソースマッピングの別の一例である。
図16において、横方向は時間Tを、縦方向は周波数Fを示す。図16において、白抜き部RE1は、制御信号及び情報データをマッピングするリソースエレメントである。太線の領域は、受信重み係数を通知する移動局装置の変調シンボルが割り当てられる領域MAである。
また、斜線部RE2及び塗潰し部RE3は、参照信号をマッピングするリソースエレメントである。塗潰し部RE3で示した参照信号をマッピングできるリソースエレメントは、セル固有の参照信号をマッピングするリソースエレメントである。斜線部RE2で示した参照信号をマッピングできるリソースエレメントは、ユーザ固有の参照信号をマッピングするリソースエレメントである。
そして、参照信号をマッピングするリソースエレメントのうち、塗潰し部RE3に第1の参照信号を配置する。また、参照信号をマッピングするリソースエレメントのうち、斜線部RE2に第2の参照信号を配置する。
このように、ユーザ固有の参照信号或いはセル固有の参照信号のいずれかに受信重み係数Ukを乗算することで、該受信重み係数を移動局装置に通知する。
図17は、第3の実施形態に係る基地局装置300−1のリソースマッピング部108におけるリソースマッピングの別の一例である。
図17において、横方向は時間Tを、縦方向は周波数Fを示す。図17において、白抜き部RE1は、制御信号及び情報データをマッピングするリソースエレメントである。太線の領域は、リソースブロックRBである。リソースブロックとは、複数のリソースエレメントを纏めたリソースの単位であり、移動局装置毎に変調シンボルを割り当てるリソースの最小単位である。図17では、リソースブロックRBは、12個のサブキャリアと7個のOFDMシンボルから成るリソースとすることができる。
また、斜線部RE2及び塗潰し部RE3は参照信号をマッピングするリソースエレメントである。塗潰し部RE3で示した参照信号をマッピングできるリソースエレメントは、セル固有の参照信号をマッピングするリソースエレメントである。斜線部RE2で示した参照信号をマッピングできるリソースエレメントは、ユーザ固有の参照信号をマッピングするリソースエレメントである。
そして、参照信号をマッピングするリソースエレメントのうち、塗潰し部RE3に第1の参照信号を配置する。また、参照信号をマッピングするリソースエレメントのうち、斜線部RE2に第2の参照信号を配置する。
このように、各移動局装置に固有の参照信号或いはセル固有の参照信号のいずれかの参照信号であって、移動局装置の変調シンボルをマッピングする領域の一部のリソースブロックに有する参照信号に受信重み係数を乗算することで、該受信重み係数を移動局装置に通知する。
以上のように、第3の実施形態に係る通信システムにおいて、複数の基地局装置のセルが全部或いは一部を重複するように配置され、複数の基地局装置と、該基地局装置に接続する各移動局装置が協調してセル間干渉を抑圧する。そして、基地局装置は、参照信号を用いてセル間干渉を抑圧するための受信重み係数を移動局装置に通知するため、制御信号を増加することを防ぐことができ、複数の基地局装置及び各移動局装置における制御信号の処理の負担を軽減できる通信システムを実現することができる。また、基地局装置は、移動局装置やセルの固有の参照信号を利用して重み係数を通知することができ、通信環境などに対応して効率良くデータを受送信できる通信システムを構築できる。
尚、本実施態様では、参照信号に受信重み係数を乗算して、該受信重み係数を移動局装置に通知する方法について説明したが、これに限らず、受信重み係数を乗算する信号は既知信号であればよい。例えば、既知信号である制御信号に受信重み係数を乗算して、該受信重み係数を移動局装置に通知する構成としても良い。
尚、本発明に係る基地局装置及び移動局装置で動作するプログラムは、本発明に関わる上記実施形態の機能を実現するように、CPU等を制御するプログラム(コンピュータを機能させるプログラム)である。そして、これら装置で取り扱われる情報は、その処理時に一時的にRAMに蓄積され、その後、各種ROMやHDDに格納され、必要に応じてCPUによって読み出し、修正・書き込みが行なわれる。プログラムを格納する記録媒体としては、半導体媒体(例えば、ROM、不揮発性メモリカード等)、光記録媒体(例えば、DVD、MO、MD、CD、BD等)、磁気記録媒体(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスク等)等のいずれであってもよい。また、ロードしたプログラムを実行することにより、上述した実施形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムの指示に基づき、オペレーティングシステムあるいは他のアプリケーションプログラム等と共同して処理することにより、本発明の機能が実現される場合もある。
また市場に流通させる場合には、可搬型の記録媒体にプログラムを格納して流通させたり、インターネット等のネットワークを介して接続されたサーバコンピュータに転送したりすることができる。この場合、サーバコンピュータの記憶装置も本発明に含まれる。また、上述した実施形態における移動局装置および基地局装置の一部、または全部を典型的には集積回路であるLSIとして実現してもよい。受信装置の各機能ブロックは個別にチップ化してもよいし、一部、または全部を集積してチップ化してもよい。各機能ブロックを集積回路化した場合に、それらを制御する集積回路制御部が付加される。
また、集積回路化の手法はLSIに限らず専用回路、または汎用プロセッサで実現しても良い。また、半導体技術の進歩によりLSIに代替する集積回路化の技術が出現した場合、当該技術による集積回路を用いることも可能である。
以上、この発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も特許請求の範囲に含まれる。