JP5734246B2 - 光学ガラス、プレス成形予備体および光学部品 - Google Patents
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(1)必須成分として、B2O3、La2O3、Gd2O3およびZnOを含むとともに、鉛およびフッ素を実質上含まず、かつ屈折率(nd)が1.72〜1.83、アッベ数(νd)が45〜55、ガラス転移温度(Tg)が630℃以下および液相温度における粘度が0.6Pa・s以上であることを特徴とする光学ガラス(以下、光学ガラスIと称す。)、
(2)モル%表示で、B2O3 45〜65%、La2O3 5〜22%、Gd2O3 1〜20%(ただし、La2O3とGd2O3の合計含有量が14〜30%)、ZnO 5〜30%、SiO2 0〜10%、ZrO2 0〜6.5%およびSb2O3 0〜1%を含むとともに、鉛およびフッ素を実質上含まず、かつ屈折率(nd)が1.72〜1.83およびアッベ数(νd)が45〜55であることを特徴とする光学ガラス(以下、光学ガラスIIと称す。)、
(4)上記光学ガラスIまたは光学ガラスIIからなる光学部品、
(5)所定量の溶融ガラスからガラス塊を作製し、このガラス塊を用いて上記光学ガラスIまたは光学ガラスIIからなるプレス成形予備体を成形することを特徴とするプレス成形予備体の製造方法、
(6)上記(3)のプレス成形予備体または(5)の方法により成形されたプレス成形予備体を再加熱し、プレス成形することを特徴とするプレス成形品の製造方法、および
(7)上記(6)の方法により、光学部品を成形することを特徴とする光学部品の製造方法、
を提供するものである。
また、本発明によれば、プレス成形予備体を上記光学ガラスによって構成することによって精密プレス成形に好適なプレス成形予備体を提供することができる。
まず、光学ガラスIについて説明する。
本発明の光学ガラスIは、必須成分として、B2O3、La2O3、Gd2O3およびZnOを含むとともに、鉛およびフッ素を実質上含まず、かつ屈折率(nd)が1.72〜1.83、アッベ数(νd)が45〜55、ガラス転移温度(Tg)が630℃以下および液相温度における粘度が0.6Pa・s以上のものである。
この光学ガラスIにおいては、屈折率(nd)は1.74〜1.80、アッベ数(νd)は45〜52の範囲が好ましく、液相温度は、好ましくは1050℃以下、より好ましくは1030℃以下である。
前記特性は、B2O3−La2O3−Gd2O3−ZnOを必須成分とする光学ガラスの組成を調整することで達成することができる。すなわち、本発明の光学ガラスIIは、モル%表示で、B2O3 45〜65%、La2O3 5〜22%、Gd2O3 1〜20%(ただし、La2O3とGd2O3の合計含有量が14〜30%)、ZnO 5〜30%、SiO2 0〜10%、ZrO2 0〜6.5%およびSb2O3 0〜1%を含むとともに、鉛およびフッ素を実質上含まず、かつ屈折率(nd)が1.72〜1.83およびアッベ数(νd)が45〜55を有するものである。
B2O3は、ガラスの網目構造形成酸化物であり、本発明における必須成分である。特にLa2O3、Gd2O3などの高屈折率成分を多く導入すると、ガラスの安定性を保つため、B2O3の含有量を多くする必要があるが、65モル%を超えて導入すると、ガラスの屈折率が低下し、化学耐久性も悪化してしまうのに対し、45モル%未満ではガラスの失透傾向が増大し、安定性が低下してしまうので、その含有量を45〜65モル%とし、好ましくは47〜60モル%とするのがよい。
Sb2O3については前述のとおりである。
また、熱間成形時などにおけるガラスの安定性の面から、液相温度を1050℃以下とすることが好ましく、1030℃以下とすることがより好ましい。
本発明のプレス成形予備体は、前述の光学ガラス(IまたはII)からなるものであって、高生産性、高重量精度のもとにプレス成形予備体(プリフォーム)を製造する方法としては、溶融または軟化状態のガラスを熱間成形する方法が優れている。したがって、本発明のプリフォームの製造方法としては、前述の光学ガラス(IまたはII)が得られるようなガラス原料を溶解、清澄、攪拌して均一な溶融ガラスを作り、この溶融ガラスを白金製または白金合金製のパイプから流出させて、所定量の溶融ガラスからガラス塊を作製し、これを用いてプリフォームを成形する方法が用いられる。この方法では、溶融ガラスを上記パイプの流出口から連続して流出させ、流出口より流出したガラスの先端部分を分離して所定量のガラス塊を得、それをガラスが塑性変形可能な温度範囲にある間にプリフォーム形状に成形する。流出ガラスの先端部分の分離方法としては、先に説明したように滴下法と降下切断法を例示できる。いずれの場合も、分離のあたっては切断機などによる機械切断を行うと切断部分がプリフォームに痕跡となって残り、精密プレス成形品の品質を悪化させるので、機械切断は好ましくない。上記光学ガラスを用いることにより、ガラスを失透させることなく、パイプ流出口から流出したガラス先端部分を機械切断することなく分離することができる。流出スピード、流出温度を一定に保ち、滴下条件または降下条件も一定に保つことにより、一定重量のプリフォームを再現性よく高精度に製造することができる。上記方法は、1〜5000mgの重量範囲のプリフォームを高い重量精度のもとに製造する場合に好適である。
精密プレス成形とは、上述したように再加熱されたプリフォームを所定形状のキャビティを有する成形型によって加圧成形し、最終製品の形状と同じまたは極めて近似した形状の成形品を作製する方法である。精密プレス成形法によれば、成形品に研削や研磨を施さずに、あるいは研磨による除去量が極めて少ない研磨のみを施すことによって、最終製品、特に光学部品のような極めて高い形状精度や面精度を要求される最終製品を作製することが可能である。そのため、本発明の精密プレス成形品の製造方法は、レンズ、レンズアレイ、回折格子、プリズムなどの光学部品の製造に好適であり、特に非球面レンズを高生産性のもとに製造する際に最適である。本発明の精密プレス成形品の製造方法によれば、高屈折率・低分散特性を有する光学素子を作製できるとともに、プリフォームを構成するガラスの転移温度(Tg)が630℃以下と低く、ガラスのプレス成形としては比較的低い温度でプレスが可能になるので、プレス成形型の成形面への負担が軽減され、成形型の寿命を延ばすことができる。またプリフォームを構成するガラスが高い安定性を有するので、再加熱、プレス工程においてもガラスの失透を効果的に防止することができる。さらに、ガラス溶解から最終製品を得る一連の工程を高生産性のもとに行うことができる。
本発明はまた、前述の本発明の光学ガラスIまたは光学ガラスIIからなる光学部品をも提供する。
例1〜52中、例1、2、5、8〜10、18、19、21〜26及び32は、本発明に対する参考例であり、その他は実施例である。
各々のガラス成分に対応する酸化物、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、水酸化物など、例えば、SiO2、Al2O3、Al(OH)3、MgO、CaCO3、Y2O3、TiO2、ZrO2、Li2CO3などをガラス原料として用い、表1〜表9に示した組成になるように所定の割合に250〜300g秤量し、十分に混合して調合バッチと成し、これを白金るつぼに入れ、1200〜1250℃で攪拌しながら空気中で2〜4時間、ガラスの溶解を行った。溶解後、溶融ガラスを40×70×15mmのカーボンの金型に流し、ガラスの転移温度まで放冷してから直ちにアニール炉に入れ、ガラスの転移温度範囲で約1時間アニールして炉内で室温まで放冷し、例1〜52の52種類の光学ガラスを作製した。得られたガラスには顕微鏡で観察できる結晶が析出しなかった。得られたガラスは透明かつ均質な光学ガラスであり、表1〜表9に示される組成、光学恒数[屈折率(nd)、アッべ数(νd)]、ガラス転移温度(Tg)、液相温度(LT)、及び液相温度における粘度を有していた。なお、本例において、屈折率(nd)、アッべ数(νd)、ガラス転移温度(Tg)、屈伏点温度(Ts)、液相温度(LT)及び液相温度におけるガラスの粘度、1100℃における粘度の測定は、以下のようにして行った。
徐冷降温速度を−30℃/時にして得られた光学ガラスについて測定した。
(2)ガラス転移温度(Tg)及び屈伏点温度(Ts)
理学電機株式会社の熱機械分析装置により昇温速度を4℃/分にして測定した。
(3)液相温度(LT)
400〜1100℃の温度勾配のついた失透試験炉に1時間保持し、倍率80倍の顕微鏡により結晶の有無を観察し、液相温度を測定した。
(4)粘度
JIS規格 Z8803、共軸二重円筒形回転粘度計による粘度測定方法により粘度を測定した。
例1〜52と同様にして、表10に示す組成を有する光学ガラスを作製し、各物性を測定した。結果を表10に示す。
次に表1〜表9に示す光学ガラスが得られる高品質かつ均質化された溶融ガラスを白金合金製のパイプから連続流出させて、これをパイプ流出口から滴下させ、複数のプリフォーム成形型で次々と受け、浮上成形法により複数個の球状のプリフォームを成形した。なお、流出時のガラスの温度は液相温度よりも数℃高温とした。これらのプリフォームはいずれも失透しておらず、高い重量精度のものが得られた。なお、プリフォームの状態でもガラスの組成、光学恒数、ガラス転移温度は表1〜表9に示した値とほぼ等しい。
白金製パイプを使用しても、白金合金製パイプと同様、溶融ガラスの流出によってパイプが破損することはなかった。
例53で得られたプリフォームを、図1に示す精密プレス成形装置を用いて非球面精密プレス成形することにより非球面レンズを得た。プリフォームの形状は直径2〜30mmの球状であり、このプリフォーム4を下型2及び上型1の間に設置したのち、石英管7内を窒素雰囲気としてヒーター8に通電して石英管7内を加熱した。成形型内部の温度を(ガラスの屈伏点温度+20〜60℃)となる温度に設定し、同温度を維持しつつ、押し棒9を降下させて上型1を押して成形鋳型内のプリフォームをプレス成形した。プレスの圧力は8MPa、プレス時間は30秒とした。プレス成形の後、プレスの圧力を解除し、非球面プレス成形されたガラス成形品を下型2及び上型1と接触させたままの状態で(ガラス転移温度−30℃)の温度までに徐冷し、次いで室温まで急冷して非球面レンズに成形されたガラスを成形型から取り出した。得られた非球面レンズは、きわめて精度の高いレンズであり、表1〜表9に示す屈折率(nd)およびアッベ数(νd)を有していた。なお、プリフォームの再加熱は、下型2と上型1の間に載置する前に行ってもよい。また、図1において符号3は案内型(胴型)、5は支持棒、6は支持台、10は熱伝対である。
成形型のキャビティ形状を所定の形状に設計することによって、球面レンズなどその他の光学部品も同様に精密プレス成形により作製することができる。
加えて、本発明によれば、上記プレス成形予備体を再加熱、精密プレス成形することによって、高精度の光学部品等のプレス成形品を製造する方法を提供することができる。
また、本発明によれば、プレス成形予備体を上記光学ガラスによって構成することによって精密プレス成形に好適なプレス成形予備体を提供することができる。
2 下型
3 案内型(胴型)
4 プリフォーム
5 支持棒
6 支持台
7 石英管
8 ヒーター
9 押し棒
10 熱伝対
Claims (12)
- モル%表示で、
B2O3 45〜55.26%、
La2O3 5〜22%、
Gd2O3 1〜20%(ただし、La2O3とGd2O3の合計含有量が15〜30%)、
ZnO 5〜20.0%、
SiO2 0〜10%、
ZrO2 0〜6.5%、
Li2O 0〜6.5%、
Sb2O3 0〜0.5%、
Al2O3 0〜5.26%、および
WO3 0〜1.0%、
を含むとともに、鉛およびフッ素を実質上含まず、かつ屈折率(nd)が1.76294〜1.78045、アッベ数(νd)が48.76〜55、およびガラス転移温度(Tg)が630℃以下である、光学ガラス。 - モル%表示で、
Na2O 0〜5%、
K2O 0〜5%、
MgO 0〜10%、
CaO 0〜10%、
SrO 0〜10%、
BaO 0〜10%、
Y2O3 0〜10%、
Yb2O3 0〜10%、
TiO2 0〜8%、
Ta2O5 0〜8%、および
Nb2O5 0〜8%、
を含む請求項1に記載の光学ガラス。 - Li2O、Na2O、およびK2Oの合計含有量が10モル%以下である請求項2に記載の光学ガラス。
- MgO、CaO、SrOおよびBaO の合計含有量が15モル%以下である請求項2または3に記載の光学ガラス。
- B2O3、La2O3、Gd2O3、ZnO、Li2O、SiO2、ZrO2、Sb2O3、Na2O、K2O、MgO、CaO、SrO、BaO、Al2O3、Y2O3、Yb2O3、TiO2、Ta2O5、Nb2O5、およびWO3の合計含有量が95モル%以上である請求項2〜4のいずれか1項に記載の光学ガラス。
- 液相温度における粘度が0.6Pa・s以上である請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学ガラス。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の光学ガラスからなるプレス成形予備体。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の光学ガラスからなる光学部品。
- 所定量の溶融ガラスからガラス塊を作製し、このガラス塊を用いて請求項1〜6のいずれか1項に記載の光学ガラスからなるプレス成形予備体を成形する、プレス成形予備体の製造方法。
- パイプより流出する溶融ガラスからガラス塊を作製する請求項9に記載のプレス成形予備体の製造方法。
- 請求項7に記載のプレス成形予備体、あるいは請求項9または10に記載の方法により成形されたプレス成形予備体を再加熱し、プレス成形する、プレス成形品の製造方法。
- 請求項11に記載の方法により光学部品を成形する、光学部品の製造方法。
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