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JP5725490B2 - レチノイン酸受容体リガンドの抗腫瘍作用、発癌抑制作用を含めた種々の作用を決定する遺伝子の同定 - Google Patents

レチノイン酸受容体リガンドの抗腫瘍作用、発癌抑制作用を含めた種々の作用を決定する遺伝子の同定 Download PDF

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本発明は、レチノイドを含有する、特定の遺伝子の発現を制御する発現制御剤、またはレチノイドによって発現が制御される遺伝子のスクリーニング方法に関する。
世界における肝癌発症数は、他の悪性腫瘍と比較して第5位に位置しており、またその死亡者数は第3位を占める(非特許文献1)。肝臓における原発性悪性腫瘍には、肝細胞癌(HCC)、胆管癌、およびそれらの混合型が知られている。現在一般的に行われているHCC治療は、外科的切除、肝動脈塞栓療法、エタノール注入療法、ラジオ波焼灼療法、マイクロ波凝固療法などであるが、その治療成績は決して満足できるものとは言い難いのが現状である。さらにHCCは肝硬変を母地として発生し、その再発率は非常に高い。このため、より高い治療効果によって肝癌死亡数の減少および予後の改善をもたらす、新規肝癌治療の研究開発が必要不可欠である。
レチノイドは、レチノール、レチナール、レチノイン酸(RA)、およびそれらの誘導体を含む化合物の総称である。生体内で生理活性を持つRAとして、all-trans-RA(ATRA)や9-cis-RAなどが知られており、リガンド誘導性転写因子である核内受容体を介して機能することが明らかにされている(非特許文献2)。このRAの受容体には、レチノイン酸受容体(RAR)およびレチノイドX受容体(RXR)の2種類が存在し、さらにそれぞれ3つのアイソタイプ(α、γ、β)があることが知られている。RA存在下においてこれらの受容体は、標的遺伝子のプロモーター領域に存在するRA応答配列(RARE)に結合することで、様々な遺伝子発現を調節している(非特許文献3)。
また、生体内におけるRAの生理機能を解明するため、これらの受容体のノックアウトマウスが作製されたが、それらは成長遅延、早期致死性、奇形、生殖機能の異常などを示し、その結果、個体発生後におけるRA機能の解析は困難であった(非特許文献4)。一方、Saitouらは、RARαの303番目のグリシンをグルタミン酸に1アミノ酸置換した変異体(RAR-E)が、内因性のRARα、β、γのすべてのサブタイプに対しドミナントネガティブに作用することを報告した(非特許文献5)。すなわち、このRAR-E遺伝子を組織特異的に発現させることによって、胎生致死の問題を回避し、組織特異的にRAの生理機能を調べることが可能になった。そこで本願発明者らは以前、アルブミンエンハンサー/プロモーター制御下にRAR-E遺伝子を発現するRAR-Eトランスジェニックマウス(RAR-E Tg)を作製し、肝臓におけるRAの機能解析を行った。その結果、肝臓特異的RAシグナルの抑制により、脂肪沈着、鉄過剰沈着、酸化ストレスの亢進を介して、高頻度にHCCを発症することを明らかにした(非特許文献6)。
また過去の研究では、非環式レチノイドが外科切除またはエタノール注入療法後のHCCの再発を有意に低下させること(非特許文献7)、レチノイドが肝臓(非特許文献8)や頭頸部(非特許文献9)、皮膚(非特許文献10)、肺(非特許文献11)、乳房(非特許文献12)、造血系細胞(非特許文献13)などの腫瘍に対し抑制的に作用すること、などが報告されている。これら結果は、RAシグナルがHCCに対して抑制的に作用していることを強く示唆するものである。実際にこのような仮説に基づきHCC発生機序の解明を目的とした、肝RAシグナルの機能解析がこれまで行われてきた(非特許文献14)。
網羅的遺伝子発現解析を行うためのツールとしてcDNAマイクロアレイがあり、実際にこの解析手法を用いていくつかのRA応答性遺伝子が同定されてきた(非特許文献15)。
Parkin DM, Bray F, Ferlay J, Posani P. Estimating the world cancer burden: globocan 2000. Int. J. Cancer 2001;94:153-156. Chambon P. A decade of molecular biology of retinoic acid receptors. FASEB J 1996;10:940-954. Bastien J, Egly CR. Nuclear retinoid receptors and the transcription of retinoid-target genes. Gene 2004;328:1-16. Ross SA, McCaffery PJ, Drager UC, De Luca LM. Retinoids in embryonal development. Physiol Rev. 2000;80(3):1021-54. Saitou M, Narumiya S, Kakizuka A. Alteration of a single amino acid residue in retinoic acid receptor causes dominant-negative phenotype. J Biol Chem 1994;269:19191-7. Tsuchiya H, Akechi Y, Ikeda R, Nishio R, Sakabe T, Terabayashi K, Matsumi Y, Ashla AA, Hoshikawa Y, Kurimasa A, Suzuki T, Ishibashi N, Yanagida S, Shiota G. Suppressive effects of retinoids on iron-induced oxidative stress in the liver. Gastroenterology. 2009;136(1):341-350. Muto Y, Moriwaki H, Ninomiya M, Adachi S, Saito A, Takasaki KT, Tanaka T, Tsurumi K, Okuno M, Tomita E, Nakamura T, Kojima T. Prevention of second primary tumors by an acyclic retinoid, polyrenoic acid, in patiens with hepatocellular carcinoma. N Engl J Med 1996;334:1561-1567. Nakamura N, Shidoji Y, Yamada Y, Hatakeyama H, Moriwaki H, Muto Y. Induction of apoptosis by acyclic retinoid in the human hepatoma-derived cell line, HuH-7. Biochem Biophys Res Commun 1995;207:382-388. Lotan R. Retinoids in cancer chemoprevention. FASEB J 1996;10:1031-1039. Cheepala SB, Syed Z, Trutschl M, Cvek U, Clifford JL. Retinoids and skin: microarrays shed new light on chemopreventive action of all-trans retinoic acid. Mol Carcinog. 2007;46:643-649. Bogos K, Renyi-Vamos F, Kovacs G, Tovari J, Dome B. Role of retinoic receptors in lung carcinogenesis. J Exp Clin Cancer Res. 2008; 27:18. Leslie J. Donato, Jean H. Shu, Noa Noy. Suppression of Mammary Carcinoma Cell Growth by Retinoic Acid: the Cell Cycle Control Gene Btg2 Is a Direct Target for Retinoic Acid Receptor Signaling. Cancer Res 2007;67:609-615. Sarah J Freemantle,Michael J Spinella,Ethan Dmitrovsky. Retinoids in therapy and chemoprevention: promise meets resistance. Onco 2003;22:7305-7315. Shimizu M, Takai K, Moriwaki H. Strategy and mechanism for the prevention of hepatocellular carcinoma: phosphorylated retinoid X receptor alpha is a critical target for hepatocellular carcinoma chemoprevention. Cancer Sci. 2009;100(3):369-74. Mamoon A, Ventura-Holman T, Maher JF, Subauste JS. Retinoic acid responsive genes in the murine hepatocyte cell line AML 12. Gene. 2008;31;408(1-2):95-103.
しかしながら、上記文献記載の従来技術は、以下の点で改善の余地を有していた。
第一に、上記文献においてレチノイドの生体内メカニズムが徐々に明らかになってきているが、レチノイドがどのようなメカニズムで疾患または治癒に関与しているのか、分子レベルでは不明な点が多く残っている。またそのために、レチノイドが関連する生体メカニズムを利用した新しい治療方法の開発が困難であった。
第二に、cDNAマイクロアレイによってRA応答性遺伝子の同定が試みられているが、cDNAマイクロアレイは再現性の確認が困難であることや、操作の煩雑さ、検出限界の制約といった問題がある。さらに、この方法によって解析できるのは既知の遺伝子のみであり、未知の新規遺伝子をゲノムワイドに探索するには不向きである。そのため、これまでのマイクロアレイ解析において見逃されてきたRA標的遺伝子は、未だ数多く存在するものと考えられる。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、レチノイドを含有する、特定の遺伝子の発現を制御する発現制御剤を提供することを目的とする。また、本発明の別の目的は、レチノイドによって発現が制御される遺伝子の、効率的または高精度なスクリーニング方法を提供することである。
本発明によれば、レチノイドを含有する、特定の遺伝子の発現を制御する発現制御剤であって、コロニースティミュレイティングファクター3レセプター(グラヌロサイト)、チオレドキシンインタラクティングプロテイン、OTUドメインコンテイニング7B、チューダードメインコンテイニング5、キネシンファミリーメンバー21B、オド-スキップドリレイテッド1(ドロソフィア)、プロトカドヘリンベータ4、NHS-ライク、シトクロムP450,ファミリー26,サブファミリーA,ポリペプチド1、チロシンヒドロキシラーゼ、オルファクトメジン-ライク1、フリズルドホモログ4(ドロソフィア)、アタキシン2、RASプロテインアクチベーターライク1(GAP1ライク)、イソサイトレイトデヒドロゲナーゼ3(NAD+)アルファ、ジンクフィンガープロテイン710、セレノフォスフェイトシンセターゼ2、カルボキシペプチダーゼD、レクチンリッチリピートコンテイニング37,メンバーA2、Gプロテイン-カップルドレセプター108、FXYDドメインコンテイニングイオントランスポートレギュレーター3、およびケラチンアソシエイテッドプロテイン19−6、からなる群から選ばれる1種以上の遺伝子の発現を制御する、発現制御剤が提供される。
この発現制御剤は、後述する実施例で、上記の遺伝子の発現を制御することが実証されているレチノイドを含有する。そのため、この発現制御剤を用いれば、上記遺伝子の関連する疾患の治療等、種々の目的に応じて上記遺伝子の発現を制御することができる。
また本発明によれば、上記発現制御剤を含む試薬が提供される。
この試薬は、後述する実施例で、上記の遺伝子の発現を制御することが実証されているレチノイドを含有する、発現制御剤を含む。そのため、上記の遺伝子の発現に関連する種々の研究等の試薬として使用できる。
また本発明によれば、レチノイドによって発現が制御される遺伝子のスクリーニング方法であって、上流にRGKTCANNNNNRGKTCA(R=A/G、K=G/T、N=A/G/C/T)の塩基配列を有する遺伝子をin silico解析で選択する工程と、選択された上記遺伝子の上流に位置するRGKTCANNNNNRGKTCAの塩基配列に対する、RARまたはRXRのレチノイド依存的結合性を検査する工程と、RARまたはRXRがレチノイド依存的結合性を示したRGKTCANNNNNRGKTCAの塩基配列の下流に位置する上記遺伝子の、レチノイド依存的な発現量の変化を分析する工程とを含む、スクリーニング方法が提供される。
このスクリーニング方法は、後述する実施例でレチノイドによって発現が制御される遺伝子を、効率的または高精度でスクリーニングできることが実証されている。そのため、このスクリーニング方法を使用すれば、レチノイドによって発現が制御される新規の遺伝子を効率的または高精度に選抜することができる。
本発明によれば、レチノイドを含有する、特定の遺伝子の発現を制御する発現制御剤が得られる。または、レチノイドによって発現が制御される遺伝子の効率的、または高精度なスクリーニング方法が得られる。
図1は、典型的なレチノイドの種類および分子構造を表した図である。 図2は、典型的なRARとRXRのメカニズムを表した図である。 図3は、ATRA処理による各種細胞増殖への影響を調査した結果である。 図4は、ATRA処理によるChIP-PCRの時間変動を調査した結果である。 図5Aは、ChIP assayによるTRRA(TRRA1-80)の1次スクリーニングの結果である。 図5Bは、ChIP assayによるTRRA(TRRA81-160)の1次スクリーニングの結果である。 図5Cは、ChIP assayによるTRRA(TRRA161-201)の1次スクリーニングの結果である。 図6Aは、ATRA処理によるCYP26A1発現の時間変動をRT-PCRで調査した結果である。 図6Bは、ATRA処理によるTRRA13発現の時間変動をRT-PCRで調査した結果である。 図6Cは、ATRA処理によるTRRA52発現の時間変動をRT-PCRで調査した結果である。 図6Dは、ATRA処理によるTRRA111発現の時間変動をRT-PCRで調査した結果である。 図6Eは、ATRA処理によるTRRA121発現の時間変動をRT-PCRで調査した結果である。 図7Aは、RT-PCRによるTRRA(TRRA4-116)の2次スクリーニングの結果である。 図7Bは、RT-PCRによるTRRA(TRRA117-197)の2次スクリーニングの結果である。 図7Cは、RT-PCRによるTRRAの2次スクリーニングの結果をまとめた図である。
<用語の説明>
本明細書における、各種用語の意味を以下の通り説明する。
(1)レチノイド(retinoid)
レチノイドはレチノール、レチナール、レチノイン酸(RA、retinoic acid)、およびそれらの誘導体を含む化合物の総称である。生体内で生理活性を持つRAとして、all-trans-RA(ATRA)や9-cis-RAなどが知られており、リガンド誘導性転写因子である核内受容体を介して機能することが明らかにされている。レチノイドは、図1の分子を含む。
(2)レチノイン酸受容体とレチノイドX受容体
レチノイン酸受容体(RAR、retinoic acid receptor)とレチノイドX受容体(RXR、retinoid X receptor)は、RAの受容体であり、それぞれ3つのアイソタイプ(α、γ、β)があることが知られている。一般的に、RA存在下においてこれらの受容体は、標的遺伝子のプロモーター領域に存在するRA応答配列(RARE、retinoic acid responce element)に結合することで、様々な遺伝子発現を調節している。例えば、図2に示すような反応機序が推定されている。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、同様な内容については、
繰り返しの煩雑を避けるために、適宜説明を省略する。
<実施形態1:レチノイドを含有する発現制御剤>
本実施形態はレチノイドを含有する、特定の遺伝子の発現を制御する発現制御剤であって、コロニースティミュレイティングファクター3レセプター(グラヌロサイト)(colony stimulating factor 3 receptor (granulocyte))、チオレドキシンインタラクティングプロテイン(thioredoxin interacting protein)、OTUドメインコンテイニング7B(OTU domain containing 7B)、チューダードメインコンテイニング5(tudor domain containing 5)、キネシンファミリーメンバー21B(kinesin family member 21B)、オド-スキップドリレイテッド1(ドロソフィア)(odd-skipped related 1 (Drosophila))、プロトカドヘリンベータ4(protocadherin beta 4)、NHS-ライク(NHS-like)、シトクロムP450,ファミリー26,サブファミリーA,ポリペプチド1(cytochrome P450, family 26, subfamily A, polypeptide 1)、チロシンヒドロキシラーゼ(tyrosine hydroxylase)、オルファクトメジン-ライク1(olfactomedin-like 1)、フリズルドホモログ4(ドロソフィア)(frizzled homolog 4 (Drosophila))、アタキシン2(ataxin 2)、RASプロテインアクチベーターライク1(GAP1ライク)(RAS protein activator like 1 (GAP1 like))、イソサイトレイトデヒドロゲナーゼ3(NAD+)アルファ(isocitrate dehydrogenase 3 (NAD+) alpha)、ジンクフィンガープロテイン710(zinc finger protein 710)、セレノフォスフェイトシンセターゼ2(selenophosphate synthetase 2)、カルボキシペプチダーゼD(carboxypeptidase D)、レクチンリッチリピートコンテイニング37,メンバーA2(leucine rich repeat containing 37, member A2)、Gプロテイン-カップルドレセプター108(G protein-coupled receptor 108)、FXYDドメインコンテイニングイオントランスポートレギュレーター3(FXYD domain containing ion transport regulator 3)、およびケラチンアソシエイテッドプロテイン19−6(keratin associated protein 19-6)、からなる群から選ばれる1種以上の遺伝子の発現を制御する、発現制御剤である。レチノイドは、後述する実施例で実証されているように、上記の遺伝子の発現を制御する特徴を有する。そのため、レチノイドを含有する上記発現制御剤は、上記遺伝子の関連する疾患の治療等、種々の目的に応じて上記遺伝子の発現を制御するために好適に使用できる。
なお、上記遺伝子に関する塩基配列等の詳細は、National Center for Biotechnology Information(NCBI)のデータベースであるGenBankで確認することができる。例えば、コロニースティミュレイティングファクター3レセプター(グラヌロサイト)(Uzumaki et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 86 (23): 9323-6.)はサイトカインをコードする遺伝子であり、チオレドキシンインタラクティングプロテイン(Yu et al., PLoS One. 2009 Dec 22;4(12):e8397.)は生体内の酸化還元に関与する蛋白質をコードする遺伝子であると考えられる。
また、OTUドメインコンテイニング7BはNF-κBを間接的に抑制する遺伝子として報告されている。近年、NF-κBの抑制により、乳癌や胃癌、HBV感染HCC、口腔扁平細胞癌などで、腫瘍形成の抑制や抗腫瘍薬の効果の増強などが報告されている。
プロトカドヘリンベータ4は膜タンパク質である。近年、このプロトカドヘリンベータ4と同じファミリーに属する遺伝子のいくつかに関して、癌抑制作用を持つという報告が続いている。
フリズルドホモログ4(ドロソフィア)はwnt/β-cateninシグナルに関わると推定される遺伝子である。RAR-Eトランスジェニックマウスのβ-cateninの肝臓における発現は、wild typeのマウスより大きく増強していたことが[Yanagitani et al., Hepatology. 2004 Aug;40(2):366-75.]に記載されている。
RASプロテインアクチベーターライク1(GAP1ライク)はRASシグナル伝達系路を抑制する遺伝子として報告されている。これまでにRASのがん遺伝子としての作用はよく研究されている。
このように、上記遺伝子はいずれも生命活動に重要な役割を有していると考えられるため、新規医薬品の創薬ターゲットとなり得る。従って、上記発現制御剤によってこれらの発現を制御することで、新規の作用機序に基づいた治療が可能になる。また、上記遺伝子はレチノイドで発現が制御されることから、レチノイドが関与する疾患や治癒のメカニズムに関与している遺伝子であると考えられる。特に、OTUドメインコンテイニング7B、プロトカドヘリンベータ4、フリズルドホモログ4(ドロソフィア)、およびRASプロテインアクチベーターライク1(GAP1ライク)は、疾患との関連性が強く示唆されているため、重要な創薬ターゲットである。
上記発現制御剤は、コロニースティミュレイティングファクター3レセプター(グラヌロサイト)、OTUドメインコンテイニング7B、キネシンファミリーメンバー21B、オド-スキップドリレイテッド1(ドロソフィア)、プロトカドヘリンベータ4、NHS-ライク、シトクロムP450,ファミリー26,サブファミリーA,ポリペプチド1、チロシンヒドロキシラーゼ、アタキシン2、RASプロテインアクチベーターライク1(GAP1ライク)、イソサイトレイトデヒドロゲナーゼ3(NAD+)アルファ、ジンクフィンガープロテイン710、セレノフォスフェイトシンセターゼ2、カルボキシペプチダーゼD、レクチンリッチリピートコンテイニング37,メンバーA2、Gプロテイン-カップルドレセプター108、およびFXYDドメインコンテイニングイオントランスポートレギュレーター3、からなる群から選ばれる1種以上の遺伝子の発現を誘導する、発現制御剤であっても良い。なぜならば、上記発現制御剤が含有するレチノイドは、後述する実施例で実証されているように、上記の遺伝子の発現を誘導する特徴を有するためである。この場合、レチノイドを含有する上記発現制御剤は、上記遺伝子の関連する疾患の治療等、種々の目的に応じて上記遺伝子の発現を誘導するために好適に使用できる。
上記発現制御剤は、チオレドキシンインタラクティングプロテイン、チューダードメインコンテイニング5、オルファクトメジン-ライク1、フリズルドホモログ4(ドロソフィア)、およびケラチンアソシエイテッドプロテイン19−6、からなる群から選ばれる1種以上の遺伝子の発現を抑制する、発現制御剤であっても良い。なぜならば、上記発現制御剤が含有するレチノイドは、後述する実施例で実証されているように、上記の遺伝子の発現を抑制する特徴を有するためである。この場合、レチノイドを含有する上記発現制御剤は、上記遺伝子の関連する疾患の治療等、種々の目的に応じて上記遺伝子の発現を抑制するために好適に使用できる。
また、上記発現制御剤が含有する上記レチノイドは、オールトランスレチノイン酸(ATRA、all‐trans retinoic acid)またはその誘導体であっても良く、特にATRAであることが好ましい。なぜならば、ATRAは後述する実施例で実証されているように、上記の遺伝子の発現を制御する特徴を有するためである。
上記発現制御剤が発現を制御する遺伝子は、上記遺伝子の変異型の遺伝子を含む。ここで、変異型とは、個体間のDNA配列の差異に起因するものを含む。また、変異型の遺伝子の塩基配列は、ヒト由来の上記遺伝子の野生型の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列であっても良い。また上記「1若しくは数個」は好ましくは30個以下であり、より好ましくは20個以下であり、より好ましくは15個以下であり、より好ましくは10個以下であり、より好ましくは5個以下であり、好ましくは4個以下であり、より好ましくは3個以下であり、より好ましくは2個以下であり、さらに好ましくは1個である。なぜならば、上記「1若しくは数個」の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列にコードされる遺伝子が、野生型の遺伝子の塩基配列に対して塩基の欠失、置換若しくは付加が少ないほど、野生型の遺伝子の塩基配列をコードする遺伝子に近い特性を有していることになるからである。
また、上記の変異型の遺伝子の塩基配列は、ヒト由来の上記遺伝子の野生型の塩基配列に対して、80%以上の相同性を有する塩基配列であっても良い。ここで上記「80%以上」は好ましくは85%以上であり、より好ましくは90%以上であり、さらに好ましくは95%以上であり、最も好ましくは98%以上である。なぜならば、上記「80%以上」の相同性を有する塩基配列が、野生型の遺伝子の塩基配列に対して相同性が高いほど、野生型の遺伝子の塩基配列をコードする遺伝子に近い特性を有していることになるからである。
また、上記の変異型の遺伝子の塩基配列は、ヒト由来の上記遺伝子の野生型の塩基配列に相補的な塩基配列からなる核酸に対して、ストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸の塩基配列であっても良い。
また上記遺伝子は、上記遺伝子の上流にRGKTCANNNNNRGKTCAの塩基配列が存在すれば、その由来は限定せず、例えば、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サル、またはチンパンジーであっても良い。好ましくは、マウス、ラット、サル、チンパンジー、およびヒトであり、特に好ましくはヒトである。なぜならば、ヒトであればヒトの疾患の治療や、治療薬等の開発に利用できるためである。また、マウス、ラット、サル、およびチンパンジーは、世界中で研究用のモデル動物として汎用され多くの特性が明らかになっているため、これらの生物の上記遺伝子の発現を制御することで、治療薬等の開発のために特に有用な情報が得られる。
また本発明の他の実施形態は、上記発現制御剤を含む、試薬である。この試薬は、上記遺伝子の発現の制御作用を通して、研究用の試薬や、再生医療における細胞または組織の機能や生存率を維持するための添加剤、または畜産において動物の成育を補助するための添加剤として使用できる。
本明細書において「発現を誘導する」とは、被検試料における特定の遺伝子の発現量をコントロール試料に比べて有意に上昇させることを含む。また「発現を抑制する」とは、被検試料における特定の遺伝子の発現量をコントロール試料に比べて有意に減少させることを含む。有意であることは、例えば、in vitroまたは生体内において特定の遺伝子の発現を変化させる前後の発現量に関して、その統計学的有意差をスチューデント(Student)のt検定を使用して評価し、p<0.05であるときに統計学的に有意であると見なす事が可能である。
本明細書において「癌」とは、正常な細胞が突然変異を起こして増殖を続けることで起こる疾患を含む。悪性の癌細胞は全身のあらゆる臓器や組織から生じ、癌細胞が増殖すると、癌組織のかたまりとなって周囲の正常な組織に侵入し破壊する。癌は、肺癌、食道癌、胃癌、肝臓癌、膵臓癌、腎臓癌、副腎癌、胆道癌、乳癌、大腸癌、小腸癌、子宮頸癌、子宮体癌、卵巣癌、膀胱癌、前立腺癌、尿管癌、腎盂癌、尿管癌、陰茎癌、精巣癌、脳腫瘍、中枢神経系の癌、末梢神経系の癌、頭頸部癌(口腔癌、咽頭癌、喉頭癌、鼻腔・副鼻腔癌、唾液腺癌、甲状腺癌等)、皮膚癌、メラノーマ、甲状腺癌、唾液腺癌、血液の癌、悪性リンパ腫、癌腫または肉腫などを含む。
本明細書において「肝臓癌」とは、肝臓の細胞が増殖を続けることで起こる疾患を含む。肝臓癌を生起させることができる肝細胞は胆管、門静脈のような血管の細胞、樹状細胞または肝細胞を含む。また、原発性肝癌と転移性肝癌を含む。原発性肝癌の多くは肝細胞癌(hepatocellular carcinoma; HCC)であることが知られている。
本明細書において「結合する」とは、物質間の連結を意味する。連結は共有結合また
は非共有結合のいずれであってもよく、たとえば、イオン結合、水素結合、疎水性相互作
用、または親水性相互作用が挙げられる。
本明細書において「相同性」とは、2つもしくは複数間のアミノ酸配列の同一のアミノ酸数の割合を、当該技術分野で公知の方法に従って算定したものである。割合を算定する前には、比較するアミノ酸配列群のアミノ酸配列を整列させ、同一の割合を最大にするために必要である場合はアミノ酸配列の一部に間隙を導入する。また、いかなる保存的置換も同一と考えない。また、最適に整列した状態において、オーバーラップするアミノ酸を含めた全アミノ酸残基に対する、同一のアミノ酸数の割合を意味する。整列のための方法、割合の算定方法、およびそれらに関連するコンピュータプログラムは、当該技術分野で従来からよく知られており、一般的な配列分析プログラム(例えば、GENETYX、GeneChip Sequence Analysisなど)を使用して測定することができる。また「相同性」は、2つもしくは複数間のDNA鎖、または2つもしくは複数間のRNA鎖において、同一の塩基の割合を、上記と同様に当該技術分野で公知の方法に従って算定したものである。
本明細書において「ストリンジェントな条件」とは、例えば(1)洗浄のための低イオン強度と高温度、例えば、50℃において0.015Mの塩化ナトリウム/0.0015Mのクエン酸ナトリウム/0.1%のドデシル硫酸ナトリウムを用いる、(2)ハイブリダイゼーション中にホルムアミド等の変性剤、例えば、42℃において50%(vol/vol)ホルムアミドと0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%フィコール/0.1%ポリビニルピロリドン/50mMリン酸ナトリウムバッファー(pH6.5)、および750mMの塩化ナトリウム、75mMクエン酸ナトリウムを用いる、または(3)42℃において50%ホルムアミド、5×SSC(0.75MのNaCl、0.075Mのクエン酸ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%のピロリン酸ナトリウム、5×デンハート液、超音波処理サケ精子DNA(50μg/ml)、0.1%SDS、および10%のデキストラン硫酸と、42℃において0.2×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)中での洗浄および55℃のホルムアミド、次いで55℃におけるEDTAを含む0.1×SSCにてストリンジェントな洗浄を含む条件であっても良い。また中程度にストリンジェントな条件の例は、20%ホルムアミド、5×SSC、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハート液、10%デキストラン硫酸、および20mg/mlの変性剪断サケ精子DNAを含む溶液中において、37℃で一晩インキュベーション、次いで1×SSC中37〜50℃でのフィルターの洗浄のような条件である。なお、ハイブリダイゼーション反応のストリンジェンシーは、当業者によって容易に決定でき、一般的にプローブ長、洗浄温度、および塩濃度に依存する。一般に、長いプローブは適当なアニーリングのために高温を必要とし、短いプローブは低温を必要とする。また一般に、ストリンジェンシーは塩濃度に逆比例する。
本明細書においてポリヌクレオチドに適用される場合の「ハイブリダイズ」とは、ヌクレオチドの塩基間の水素結合等によってヌクレオチド間の対ができる性質のことを表す。塩基対はワトソン・クリック型塩基対、フーグスティーン型塩基対、または任意の他の配列特異的な形で生じうる。
本明細書において「誘導体(derivative)」は、ある有機化合物を母体として考えたとき、官能基の導入、酸化、還元、または原子の置き換えもしくは原子の付加などによって、母体の構造や性質を大幅に変えない程度の改変がなされた化合物のことを意味する。なおその改変は実際の化学反応として行えることもあるが、机上のものでも構わない。また誘導体は、好ましくは薬理的に許容される誘導体である。本明細書において「薬理的に許容される誘導体」は、所望の効果を有する化合物であれば限定されず、本発明に係る化合物の薬理的に許容される塩、溶媒和物、異性体、またはプロドラッグ等(例えばエステル)の形態を含む。またこの薬理的に許容される誘導体は、患者に投与すると、本発明に係る化合物またはその活性代謝物もしくはその残基を(直接的または間接的に)提供される任意の他の化合物を含む。そしてこのような薬理的に許容される誘導体は、当業者であれば過度の実験を行なうことなく得ることができる。例えば、[Burger's Medicinal Chemistry And Drug Discovery, 5th Edition, Vol 1: Principles and Practice]を参照できる。なお好ましくは、本発明に係る化合物の薬理的に許容される塩または溶媒和物である。また所望の効果とは、本発明に係る化合物と実質的に同等の効果を含む。
本明細書において「薬理的に許容される塩」は、特に限定されないが、例えば任意の酸性(例えばカルボキシル)基で形成されるアニオン塩、または任意の塩基性(例えばアミノ)基で形成されるカチオン塩である。塩類には無機塩および有機塩を含み、[Berge,BighleyおよびMonkhouse、 J.Pharm.Sci., 1977, 66, 1-19]に記載されている塩が含まれる。本明細書において「溶媒和物」は、溶質および溶媒によって形成される化合物である。溶媒和物については例えば、[J.Honig et al., The Van Nostrand Chemist’s Dictionary P650 (1953)]を参照できる。溶媒が水であれば形成される溶媒和物は水和物である。この溶媒は、溶質の生物活性を妨げないものが好ましい。そのような好ましい溶媒の例として、限定するものではないが、水、エタノール、および酢酸が挙げられる。最も好ましい溶媒は、水である。本発明に係る化合物またはその塩は、大気に触れるかまたは再結晶するときに水分を吸収し、場合によっては吸湿水を有するかまたは水和物となりうる。本明細書において「異性体」は、分子式は同一だが構造が異なる分子を含む。鏡像異性体(エナンチオマー)、幾何(シス/トランス)異性体、または相互に鏡像ではない不斉中心を1個以上有する異性体(ジアステレオマー)を含む。本明細書において「プロドラッグ」は、前駆体である化合物であって、その化合物を被験体へ投与した際に、代謝過程または種々化学反応によって化学的変化を起こし、本発明に係る化合物またはその塩もしくはその溶媒和物をもたらす化合物を含む。プロドラッグについては、例えば[T. Higuchi and V. Stella, “Pro-Drugs as Novel Delivery Systems”, A.C.S. Symposium Series, Volume 14]を参照できる。
また本明細書において「誘導体」には例えば、所望の効果を有する化合物であれば、PubChemのCompound Structure Searchの類似度(tanimoto係数)90%以上の化合物を含む。なお、誘導体に含める上記tanimoto係数の下限値は特に限定されないが、好ましくは95%以上であり、より好ましくは96%以上であり、より好ましくは97%以上であり、より好ましくは98%以上であり、さらに好ましくは99%以上である。類似度(tanimoto係数)が大きければ大きいほど母体に構造・生理活性などが近似した誘導体である可能性が高くなる。なお、tanimoto係数の計算式は以下のとおりであり、ケモインフォマティクスの分野では最も頻繁に使われる権威ある化合物同士の類似係数である。tanimoto係数の計算式に関してはPubChemのホームページからも参照可能である。
Tanimoto = AB / ( A + B - AB )
Where:
Tanimoto is the Tanimoto score, a fraction between 0 and 1.
AB is the count of bits set after bit-wise & of fingerprints A and B
A is the count of bits set in fingerprint A
B is the count of bits set in fingerprint B
この類似度(tanimoto係数)がATRAに対して95%以上の化合物としては、例えばPubChemのCID(Compound ID)が5538、444795、449171、4136524、5282379、5326825、5496917、6419708、6439661、6439749、6603983、6913131、6913136、6913160、9796370、9839397、9861147、9972326、9972327、9995220、10017822、10017935、10040620、10041353、10063649、10086397、10086398、10149682、10267048、10286439、10335106、10357701、10380944、10425032、10470200、10518336、10518761、10566385、10638113、10881132、11738545、12358676、12358678、18458354、18637768、19609228、21590819、23275881、25145416、44725022、9860303、9929074、10015486、10125803、10266931、10286753、10314319、10474100、10712359、11141121、14731990、18696002、18696006、21651187、22239079、25141345、44393163、44579060、167095、5355027、10087786、10193246、10215224、10358907、10426543、11266097、15125882、18977383、19063167、19360964、19609253、20830941、22646220、23002673、23181726、23208908、25011742、44314230、44579056、44579100、9830767、10636975、または11000660の化合物からなる群から選ばれる1種以上の化合物を含む。
<実施形態2:レチノイド応答性遺伝子のスクリーニング方法>
本発明の他の実施形態は、レチノイドによって発現が制御される遺伝子のスクリーニング方法であって、上流にRGKTCANNNNNRGKTCA(R=A/G、K=G/T、N=A/G/C/T)の塩基配列を有する遺伝子をin silico解析で選択する工程と、選択された上記遺伝子の上流に位置するRGKTCANNNNNRGKTCAの塩基配列に対する、RARまたはRXRのレチノイド依存的結合性を検査する工程と、RARまたはRXRがレチノイド依存的結合性を示したRGKTCANNNNNRGKTCAの塩基配列の下流に位置する上記遺伝子の、レチノイド依存的な発現量の変化を分析する工程とを含む、スクリーニング方法である。このスクリーニング方法によると、後述する実施例で実証されているように、レチノイドによって発現が制御される遺伝子を、効率的または高精度でスクリーニングすることができる。
ここで、上記のin silico解析において上流とは、上流5kb以内であっても良い。なぜならば、後述する実施例で実証されているように、上流5kb以内を調べることで、レチノイドによって発現が制御される遺伝子を、効率的または高精度でスクリーニングすることができるからである。
上記のRARまたはRXRのレチノイド依存的結合性の検査は、ChiP(Chromatin immunoprecipitation)解析を利用した検査であっても良い。なぜならば、後述する実施例で実証されているように、ChiP解析で検査を行うことで、レチノイドによって発現が制御される遺伝子を、効率的または高精度でスクリーニングすることができるからである。なおChiP解析とは、蛋白質に対する抗体を用いて核酸と蛋白質との相互作用、または核酸上の蛋白質の結合部位を調査する方法の一つである。
上記のレチノイド依存的な発現量の変化は、RT−PCRを利用して分析を行っても良い。なぜならば、後述する実施例で実証されているように、RT−PCRで分析を行うことで、レチノイドによって発現が制御される遺伝子を、効率的または高精度でスクリーニングすることができるからである。
また、上記スクリーニング方法は、上記のRARまたはRXRのレチノイド依存的結合性の検査において、in silico解析で選択された遺伝子の上流に位置するRGKTCANNNNNRGKTCAの塩基配列に対する、RARまたはRXRのレチノイド依存的結合性が陰性であった場合で、且つ、そのRGKTCANNNNNRGKTCAの塩基配列の周辺の塩基配列と重複する配列が、ゲノム上に存在する場合に、上記のin silico解析で選択された遺伝子のレチノイド依存的な発現量の変化を分析する工程を、さらに含むスクリーニング方法であっても良い。ぜならば、後述する実施例で実証されているように、この工程を含むスクリーニング方法を用いると、レチノイドによって発現が制御される遺伝子を、効率的または高精度でスクリーニングすることができるからである。
本明細書において「in silico解析」とは、コンピュータを用いて行われた解析を意味する。分子生物学などの分野では一般的に、細胞や各種の生体分子を実際に扱うin vitroやin vivoとは異なる概念で取り扱われる。
本明細書において「レチノイド依存的結合性」とは、レチノイドの存在によって結合性が増減する性質を表す。例えば、RARまたはRXRはRA存在下でRAと結合し、その後標的遺伝子のRAREに結合することが知られている。
本明細書において「レチノイド依存的な発現量の変化」とは、レチノイドの存在によって遺伝子の発現量が増減する性質を表す。例えば、RARまたはRXRはRA存在下で標的遺伝子のRAREに結合し、その後標的遺伝子の発現を増加または減少させることが知られている。
RT-PCR(Reverse Transcription Polymerase Chain Reaction)は、RNA鎖を鋳型に逆転写を行い、生成されたcDNAに対してPCRを行う方法である。例えば、Titan One-Tube RT-PCR Kit(Roche)等の市販のキットを使用できる。なお、トータルRNAは細胞からグアニジンチオシアネート法、市販の試薬またはキットを使用して抽出できる。細胞は、三光純薬株式会社やタカラバイオ株式会社等から購入できる。また、リアルタイムPCRとは、PCRによって増幅する核酸をリアルタイムでモニタリングする方法である。
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<使用した細胞>
肝細胞癌細胞株Huh7、HepG2、乳癌細胞株MCF-7
<使用した試薬>
・DMEM
Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium粉末(日水)4.75 gを超純水に溶かして全量500 mLとし、高圧蒸気滅菌した。その後、10 mL 10% NaHCO3(Wako)、5 mL 100×glucose(NACALAI TESQUE)(最終濃度3500 mg/L)、10 mL 50 ×L-glutamine(NACALAI TESQUE)(最終濃度584 mg/L)、非働化させたウシ胎児血清(FBS)(最終濃度10% または1%: JRH Bio sciences)を加えた。
・PBS(-)
NaCl、Na2HPO4・12H2O、KCl(以上、NACALAI TESQUE)、KH2PO4(Wako)をそれぞれ最終濃度137 mM、8.10 mM、2.68 mM、1.47 mMになるように超純水に加え、高圧蒸気滅菌した。
・ATRA
ATRA粉末(SIGMA)をDMSO(SIGMA)に40 mMとなるように溶かし、-30℃で保存した。
・Protease inhibitor cocktail(PIC)
プロテアーゼインヒビターカクテル錠(Roche Diagnostics)を2 mLの超純水に加え、25×PICとし、-30℃で保存し、適宜、融解させて使用した。
・Low Salt Immune Complex Wash Buffer
0.1% SDS、 2 mM EDTA、 20 mM Tris-HCl (pH 8.1)、 150 mM NaCl(以上、NACALAI TESQUE)、 1% Triton X-100(Wako)となるように超純水で調製し、4℃で保存した。
・High Salt Immune Complex Wash Buffer
0.1% SDS、 2 mM EDTA、 20 mM Tris-HCl (pH 8.1)、 500 mM NaCl(以上、NACALAI TESQUE)、 1% Triton X-100(Wako)となるように超純水で調製し、4℃で保存した。
・LiCl Immune Complex Wash Buffer
0.1% SDS、 1 mM EDTA、 20 mM Tris-HCl(pH 8.1)、 250 mM LiCl(以上、NACALAI TESQUE)、 1%deoxycholic acid (sodium salt)(Wako)、1% IGEPAL-CA360(MP Biomedicals)となるように超純水で調製し、4℃で保存した。
・TE Buffer
10 mM Tris-HCl(pH 8.1)、1 mM EDTA(以上、NACALAI TESQUE)となるように超純水で調製し、4℃で保存した。
・Elution Buffer
10 mM DTT(Wako)、 1% SDS、0.1 M NaHCO3(NACALAI TESQUE)となるように超純水で用事調製した。
・Phenol/Chloroform
TE飽和Phenol、Chloroform(共にNACALAI TESQUE)を1:1で混合し、4℃で保存した。
・70% Ethanol
35 mL 100% ethanol(NACALAI TESQUE)と15 mL超純水を混和し、室温で保存した。
・1a+1b
10 μL LightCycler FastStart Enzyme(1a)(Roche Diagnostics)をLightCycler FastStart Reaction Mix SYBR GreenI、10XConc.(1b)(Roche Diagnostics)に加えて、-30℃で保存した。
・Acidic Phenol/Chloroform
クエン酸バッファー飽和Phenol、Chloroform(共にNACALAI TESQUE)を1:1で混合し、4℃で保存した。
<実施例1:レチノイン酸応答配列を上流にもつ転写領域の選出>
in silico解析を行うにあたって使用したデータベースを表1に示す。
各rnaClusterの染色体上の位置情報とヒトゲノム塩基配列を使って、rnaCluster配列ファイルを作成した(rnaClusterSeq)。さらに、各rnaClusterの最上流(5’末端塩基)から5 kbp上流までの塩基配列を切り出し、rnaCluster上流5 kbp配列ファイルを作成した(upstream5KSeq)。コンセンサスRAREとして、2つのハーフサイト(5'-RGKTCA-3'(R=A/G、K=G/T))が、任意の5塩基のスペーサー配列によってタンデムに連結したDR5を適用し(RGKTCANNNNNRGKTCA(R=A/G、K=G/T、N=A/G/C/T))、rnaCluster上流5 kbp以内にこのDR5が存在するかどうか、検索を行った。rnaClusterの上流5 kbp以内にDR5をもつ転写領域をTarget RNA of Retinoic Acid(TRRA)とした。また、UCSCのGenome browserを使用し、各TRRAに対応する遺伝子を確認した。
以上のように、未知の新規RA標的遺伝子を同定するために、一般的にRA標的遺伝子がその上流にRAREを持つことに注目してin silico解析を行った。その結果、RAREを上流5 kbp以内に持つTRRAは、全部で201個であった。さらにUCSCのGenome browserを使用してどのような遺伝子に対応しているか確認した結果、RefSeq Genesに該当したTRRAは111個であった(TRRA-1、3、4、5、8、9、12、13、14、16、17、19、20、26、30、31、32、33、36、37、38、44、46、49、50、52、55〜58、63、67〜71、74、75、81〜86、89、91、92、94〜96、99〜102、104、106、109〜113、116、117、120〜122、129、132、137、138、140、141、143〜145、147〜149、152〜154、156、159〜161、163、166、167、171、175、176、178〜185、186〜188、190〜192、195〜200)。一方、残りの90個については、Genome browser上にRefSeq Genesとしてアノテーションされてはいなかった。しかしながら、本来rnaClusterはspliced ESTとmRNAから決定された転写領域であることから、未知の遺伝子が存在している可能性が示唆された。なお、
<実施例2:ATRA処理による細胞増殖への影響>
(2−1)細胞培養
Huh7、MCF-7、HepG2は10% FBS添加DMEM にて、10-cm dish(FALCON)を用いて5 % CO2、37℃、飽和水蒸気下で培養した。70〜90%コンフルエントになった状態で、一度PBS(-)で洗い、2 mL PBS(-)と300 μLの0.25% Trypsin/1 mM EDTA Solution(NACALAI TESQUE)を加えて細胞を剥がし、細胞を回収した。1000 rpmで3分間遠心し、上清を除去後、10% FBS DMEMに再懸濁し、1 dish分を4 dishに分けて継代した。
(2−2)WST assay
細胞(Huh7、MCF-7、HepG2)を回収し、5000 cells/50 μL となるように10% FBS DMEMで再懸濁して、96-wellプレート(FALCON)の各wellに50 μLずつ播いた。一晩、培養後、1% FBS DMEM に培地交換した。その24時間後に、ATRA最終濃度が0、1、5、10 μMになるように1% FBS DMEMで希釈して加え、37℃でインキュベートした。薬剤処理から1、2、3日後に TetraColor ONE(生化学バイオビジネス)を最終濃度が5%になるように 1%FBS DMEMで希釈して加え、37℃のCO2インキュベータ内で2時間インキュベートし、96-well plate用Micro Plate Reader(MRP-A4i、TOSOH)を用いて、450 nmの吸光度を測定した。対照波長として630 nmの波長を測定し、補正した。
以上のように、TRRAのRA応答性をスクリーニングする際に使用する細胞株を決定するために、肝癌細胞株(Huh7、HepG2)および乳癌細胞株(MCF-7)それぞれに対し、0、1、5、10 μMのATRA存在下で培養後、WST assayを行った。Huh7ではATRA処理による増殖の変化はほとんど観察されなかった(図3(a))。しかし、MCF-7ではATRA処理による増殖抑制(図3(b))が、またHepG2では増殖亢進(図3(c))がそれぞれ認められた。また、増殖に対する影響はATRAの用量に依存していた。これらの細胞株を使い比較することで、抗腫瘍効果をもつTRRAを効率的に選び出せると考え、今後の解析ではこれらの3種の細胞株を用いて5 μMのATRA処理でTRRAのスクリーニングを行うことにした。
なお、図3のATRA処理による細胞増殖への影響は以下の手順で調査した。96 well plateに各癌細胞株を5000 cells/wellずつ播き、一晩、培養後、1%FBS DMEM に培地交換した。その24時間後に各濃度でATRA処理を行い、1、2、3日後に WST assay を行った。Day 0の細胞の吸光度を100%とし、各日の吸光度をグラフにした(*, P<0.05、**, P<0.01(t 検定)、n=3)。
<実施例3:ChIP法クロマチン免疫沈降法(ChIP法)による1次スクリーニング>
10個の細胞を10-cm dishに播き、一晩培養後、1% FBS DMEM に培地交換した。その24時間後に、5 μM ATRAまたはDMSOを添加した1%FBS DMEMで処理した。また、1枚余分に播いておき、セルカウントを行った。270 μL 37% formaldehydeを加え、37℃で10分間置き、固定した。以降は氷上で実験を行った。冷PBS(-) 5 mLで2回洗い、1 mLの冷PBS(-)(PIC含)でスクレイプし回収した。遠心(700×g、4℃、3分)し、上清を除去した。106 cells/500 μL SDS lysis buffer (1% SDS、 10 mM EDTA、50 mM Tris-HCl(pH 8.1)、 PIC)に再懸濁させ、10分間氷上に置いた。Bioruptor(コスモバイオ)を使い、30秒(250W)のソニケーションを10回かけた。遠心(13 krpm、4℃、 10分)し、上清を回収した。低吸着チューブ(BioScience)を使用し、100 μLの上清に、900 μLのdilution buffer(0.01% SDS、 1.1% Triton X-100、 1.2 mM EDTA、 16.7 mM Tris-HCl(pH 8.1)、 167 mM NaCl、 PIC)を加え、anti-RARα(sc-551)(Santa cruz), anti-RARβ(sc-552)(Santa cruz), anti-RAR(sc-773)(Santa cruz)をそれぞれ2/3 μgずつ、25 μL Magnetic beads(Activemotif) を加えて、4℃で一晩、rotationさせた。また、inputとして、10 μL回収して、-30℃で保存した。
次に、下記のBufferを加え、それぞれ50回の転倒を繰り返して洗浄を行った。1400 μL Low Salt Immune Complex Wash Bufferで2回、1400 μL High Salt Immune Complex Wash Bufferで2回、1400 μL LiCl Immune Complex Wash Bufferで2回、1400 μL TE Bufferで2回の洗浄を行った。以降、室温で実験を行った。125 μL Elution Bufferを加え、15分間、rotationさせ、上清を回収した。これをさらにもう一回行った。ここで、保存しておいたInputを取り出し、240 μL Elution Bufferを加え、以降はChIPしたサンプルと同様の操作を行った。5 M NaCl 10 μL加えて、65℃で一晩インキュベートし、脱固定した。
0.5 μL Protease K(20 mg/ml)(NACALAI TESQUE)、5 μL 0.5 M EDTA(pH8.0)、10 μL 1 M Tris-HCl(pH6.8) を加え、45℃で1時間インキュベートした。270 μL Phenol/Chloroformを加え、vortexし、遠心(15 krpm, 5分間)した。上清を回収し、270 μL 100% isopropanol(NACALAI TESQUE)、13.5 μL 4 M NaCl、1 μLグリコーゲン(20 mg/ml)(Roche Diagnostics)を加え、遠心(15 krpm,、4℃、15分間)した。70% ethanolでリンスし、風乾させ、50 μL超純水に溶解させ、real-time PCRにより解析した(ChIP-PCR)。5 μL DNA、0.5 μL 10 μM primer(F)、0.5 μL 10 μM primer(R)、0.8 μl 25 mM MgCl2(Roche Diagnostics)、2.7 μL超純水、0.5 μL 1a+1bをキャピラリー(Roche Diagnostics)に入れ、LightCycler 1.5(Roche Diagnostics)を用いて、まず95℃で10分間、続いて至適温度で5秒間(アニーリング)、72℃で10秒間(伸長)、72℃で0秒(蛍光の測定)、95℃で10秒間(熱変性)の繰り返しを55回行わせた。LightCycler Software Version 3.5(Roche Diagnostics)で解析し、Inputの値で補正した。また、TRRAのスクリーニングにおいては、さらに陰性対照の値で補正した。プライマーは表2に示した。
以上のように、In silico解析により得られたTRRAのRAREに、RARがATRA依存的に結合するか調べるため、ChIP-PCRにより1次スクリーニングを行った。まず、スクリーニングにおけるATRA処理時間を決定するために、代表的なレチノイド標的遺伝子であるRARβとCYP26A1のChIP-PCRの時間変動を調べた。このときPCRのプライマーとして、RARE(DR5)を含む領域を増幅するプライマー(RARβ_DR5、CYP26A1_DR5)に加え、それぞれのDR5より4 kbp下流の領域を増幅するプライマー(RARβ_DR5_ds4kbp、CYP26A1_DR5_ds4kbp)を使用し、それらを陰性対照とした。その結果、ATRA処理を3時間行ったサンプルは、全ての細胞株において、陰性対照に対してCYP26A1_DR5の値が有意に上昇したため、1次スクリーニングのATRA処理時間を3時間とした(図4(a)、(b)、(c))。
なお、図4のATRA処理によるChIP-PCRの時間変動は以下の手順で調査した。106個の細胞を10 cm dishに播き、一晩、培養後、1%FBS DMEM に培地交換した。その24時間後に、5 μM ATRAまたはDMSOを添加した1%FBS DMEMで処理して、1.5、3、6時間後にChIP-PCRを行った。免疫沈降前に回収したinputで補正した(*, P<0.05、**, P<0.01(t 検定)、n=3)。
一方、RARβ_DR5に関しては、ATRA処理を行ったMCF-7においては差がなかった。これは、MCF-7においてRARβがほとんど発現していないことと一致していた(データを示さず)。次に、TRRAのChIP-PCRを行った(表3〜表9、図5A〜図5C)。
初期検討と同様、陰性対照プライマーとしてCYP26A1_DR5_ds4kbpを適用し、relative occupancy[=%input(目的の領域)/%input(CYP26A1_DR5_ds4kbp)]を求め、relative occupancyが1.5倍以上のTRRAを次の2次スクリーニングで検討することとした。また、目的のDR5周辺の塩基配列に関して、ゲノム上で重複している領域が存在するため、特異的なChIP-PCRが行えなかったTRRAについても2次スクリーニングで検討することとした。結果として、201個のTRRAのうち126個を次の2次スクリーニングで検討した。
<実施例4:RT-PCRによるTRRAの2次スクリーニング>
(4−1)Total RNA抽出
細胞株を3.5-cm dishで培養し、DMEMを除去後、1 mL TRIzol(invitrogen)を加え、5分間、室温で振盪した。1.5-mLチューブに回収し、200 μL chloroformを加え、30秒間激しく混和させた後、遠心(15 krpm、4℃、15分間)した。以降、RNA専用器具を用いた。上清を500 μL回収し、500 μL isopropanolを加え、vortexで撹拌した後、遠心(15 krpm、4℃、20分間)した。上清を除去し、300 μL 70% ethanolを加え、遠心(15 krpm、4℃、5分間)した。上清を除去し、RNAを7 μL超純水に溶解した。1 μL 10×DNase buffer(Nippon gene)、 1 μL 2 mg/ml BSA(Wako)、1 μL DNase(1 U/μL)(Nippon gene)を加え、37℃で一晩インキュベートした。278 μL超純水、12 μL 5 M NaCl, 300 μL Acidic Phenol/Chloroformを加え、vortexし、遠心(15 krpm、4℃、5分間)した。300 μL上清を回収し、700 μL 100% ethanolを加え、遠心(15 krpm、4℃、15分間)した。70% ethanolでリンスし、軽く風乾させ、10 μL超純水に溶解させた。
(4−2)RT反応(SuperScript First-Strand Synthesis for RT-PCR Kit(invitrogen))
RNA 5 μg、3 μL random hexamers(50 ng/μL)、1 μL 10 mM dNTPs、超純水で全量12 μLにした。Thermal Cycler(TaKaRa Bio)を用いて、65℃で5分間置くことによりアニーリングさせ、一旦、取り出して、氷上に2分置いた。そして、4 μL 5×FS buffer(invitrogen)、1 μL超純水、2 μL 0.1 M DTT、1 μL 50 U/μl SuperScriptIIを加え、再びThermal Cyclerで、25℃で10分間、さらに42℃で2時間置くことにより伸長させ、続いて70℃で10分間置き、反応を止めた。380 μLの超純水を加えて希釈し、-30℃で保存した。
(4−3)RT反応(NCode VILO miRNA cDNA Synthesis Kit(invitrogen))
1 μg RNA、4 μL 5×reaction Mix、2 μL 10×SuperScript Enzyme Mix、超純水で全量20 μLにした。Thermal Cycler(TaKaRa Bio)を用いて、37℃で60分間反応させ、続いて95℃で5分間置き、反応を止めた。180 μLの超純水を加えて希釈し、-30℃で保存した。
(4−4)cDNAのreal-time PCR
5 μL cDNA、0.5 μL 10 μM primer(F)、0.5 μL 10 μM primer(R)、0.8 μL 25 mM MgCl2 2.7 μL超純水、0.5 μL 1a+1bをキャピラリーに入れ、LightCycler 1.5を用いて、まず95℃で10分間、続いて至適温度で5秒間(アニーリング)、72℃で7秒間(伸長)、72℃で0秒(蛍光の測定)、95℃で1秒間(熱変性)の繰り返しを55回行わせた。LightCycler Software Version 3.5で解析し、β−actinの値で補正した。プライマーは表10に示した。
(4−5)統計解析
独立した、少なくとも3例以上のサンプルを解析し、t検定により、有意差を求めた。
以上のように、ChIP-PCRの1次スクリーニングによって絞り込まれたTRRAが、ATRA処理によって発現変化を示すか調べるために、RT-PCRを行った。まず、ATRA処理時間を決定するために、ATRA存在下におけるCYP26A1発現の時間変動についてRT-PCRにより検討を行った(図6A(a)、(b)、(c))。
なお、図6のATRA処理によるRT-PCRの時間変動は以下の手順で調査した。3.5 cm dish に1.5×105個の細胞を播き、一晩、培養後、1%FBS DMEM に培地交換した。その24時間後に5 μM ATRA 処理を行い、0、1、3、6、9、12、18、24時間後にtotal RNAを回収し、RT反応を行った。Real-time PCRにより定量し、β-actinの値で補正した(*, P<0.05、**, P<0.01(t 検定)、n=3)。
Huh7、HepG2においては、1時間のATRA処理により有意な発現上昇が認められ、さらに24時間後まで上昇し続けた。一方、MCF-7においても1時間で有意な発現上昇が認められたが、6時間処理でピークに達し、24時間後まで比較的高い発現レベルが維持された。次にこの初期検討の結果に従って、ATRA処理後6時間におけるTRRA発現量をRT-PCRにより解析した(表11〜表14、図7A〜図7C)。
その結果、少なくとも一つの細胞株でATRA処理による発現変化を示したTRRAは、27個であった(表15)。
また過去の報告から抗腫瘍効果が期待されたTRRAについては、ATRA存在下における発現の時間変動についても調べた(図6B(d)〜図6E(n))。TRRA13は、Huh7、MCF-7において、ATRA処理後3時間より有意な発現上昇が認められ、24時間後まで維持された(図6B(d)、(e))。一方HepG2においては、ATRA処理後9時間で有意な発現上昇が認められ、24時間後まで維持された(図6B(f))。TRRA52は、Huh7とMCF-7において、ATRA処理による発現上昇が認められ、MCF-7でより強く発現誘導された(図6C(g)、(h))。しかし、HepG2においては全く誘導されなかった(図6C(i))。TRRA111は、Huh7、MCF-7において、ATRA処理により発現減少が認められ、MCF-7においては24時間後まで発現低下が維持された(図6D(j)、(k))。一方、HepG2においては、ATRA処理24時間後に有意な発現上昇が認められた(図6D(l))。TRRA121は、MCF-7において、ATRAによる一過性の発現上昇が認められた(図6E(m))。一方、Huh7においては発現が認められなかった(データを示さず)。また、HepG2に関しては、発現は認められたものの、ATRA処理による誘導は認められなかった(図6E(n))。
<結果の考察>
ATRAの細胞増殖に対する影響を調べた結果、HCC細胞株において10μM以下の濃度では増殖抑制は認められなかった(図3(a)、(c)) 。これまでの報告では、Huh7においては0.1-20μMのATRA処理ではアポトーシスは引き起こされず、Hep3BやHepG2においてはそれぞれ100 μM、166 μMという高濃度のATRA処理によってアポトーシスが引き起こされたという報告がある(Muto et al., N Engl J Med. 1996 Jun 13;334(24):1561-7.)。しかし、レチノイド標的遺伝子の発現誘導は5 μMのATRA処理で十分引き起こされたことから(図6(a)、(b)、(c))、5 μM以上の過剰なATRA濃度によって引き起こされるアポトーシスは、本研究で注目したRAREを介したATRAによる遺伝子発現調節とは独立した作用の可能性がある。そのため、本研究では10 μM以上のATRA濃度でのWST assayを行っておらず、その結果、本研究ではHCC細胞株においてATRA処理による増殖抑制が認められなかったのではないかと考えられた。一方、低濃度でもATRAによって増殖抑制が起こることが報告されているMCF-7(Elstner et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 1998 Jul 21;95(15):8806-11.)は、今回の検討においても実際に5 μM ATRAで有意に細胞増殖が抑制された(図3(b))。これらの結果に基づき、ATRA応答性を示すTRRAのスクリーニングには、HCC細胞株Huh7、HepG2と乳癌細胞株MCF-7を用いることに決定した。これによって、MCF-7特異的、またはHuh7、HepG2特異的なTRRAを見出すことで、今回のATRA存在下での増殖能の違いを説明できる遺伝子を、より効率よく同定することが可能である。
今回1次スクリーニングにおけるChIP-PCRでは、201個のTRRAを解析した。その結果、約半分の126個までTRRAを絞り込むことができた。さらに、偽陽性が含まれている可能性を考慮して、ATRA処理した細胞株中のRNAをRT-PCRによって測定する2次スクリーニングを行った。RT-PCRによる2次スクリーニングでは、まず、CYP26A1発現の時間変動を調べた。その結果、3種の細胞株において十分な発現誘導が確認された6時間を、2次スクリーニングにおけるATRA処理時間に決定した。続いて、1次スクリーニングで絞られた126個のTRRAに対するRT-PCRを行った(表11〜14)。その結果、27個のTRRAの発現が、ATRAによって有意に調節されることが示された。
この27個のTRRAは、レチノイドが関与するHCC等各種疾患において、重要な役割を有している可能性が高い。例えば、ATRA処理した各癌細胞株における発現変化と、過去の文献における抗腫瘍作用の報告から、TRRA13、52、111、121には抗腫瘍効果が期待される。そこで、これらのTRRAに関しては、続いてRT-PCRによる時間変動解析も行った(図6B(d)〜図6E(n))。
TRRA13はNF-κBを間接的に抑制する遺伝子として報告されている。近年、NF-κBの抑制により、乳癌や胃癌、HBV感染HCC、口腔扁平細胞癌などで、腫瘍形成の抑制や抗腫瘍薬の効果の増強などが報告されている。また、非環式レチノイドがNF-κBを抑制し、さらに成人T細胞白血病を抑制することも報告されている。これらの報告から、TRRA13はレチノイドによる抗腫瘍効果の一端を担っている可能性が示唆される。
TRRA52は膜タンパク質である。近年、このTRRA52と同じファミリーに属する遺伝子のいくつかに関して、癌抑制作用を持つという報告が続いている。さらに、RT-PCRによる検討では、MCF-7において強く誘導された(図6C(h))ことからも、TRRA52もまたレチノイドによる抗腫瘍効果に関与している可能性が考えられる。
TRRA111はwnt/β-cateninシグナルに関わると推定される遺伝子である。以前、本研究室で作製したRAR-E Tgのβ-cateninの肝臓における発現は、wild typeのマウスより大きく増強していた。さらに、MCF-7ではATRAによってTRRA111の発現が強く抑制された(図6D(k))。以上より、TRRA111はRAシグナルの抗腫瘍効果の一部を担っている可能性が示唆される。
TRRA121はRASシグナル伝達系路を抑制する遺伝子として報告されている。これまでにRASのがん遺伝子としての作用はよく研究されてきた。また、本研究のTRRA121の発現解析においても、MCF-7のみで誘導された(図6E(m))。したがって、TRRA121も癌抑制に有用な遺伝子である可能性が示唆される。
以上のように、27個のTRRAの発現が、ATRAによって有意に調節されることが示された。また、27個のTRRAうち、4個のTRRAはRAシグナルの抗腫瘍効果を規定する可能性が高く、5個は未知の遺伝子領域であり、残りの18個はその多くがATRA応答性に関しては未だ報告のない遺伝子であった。
本実施例で用いた一連の手法は、新規ATRA応答性遺伝子を探索する手法として有効であることが示された。さらに、ATRAは各種疾患の創薬ターゲットになり得る上記27個の遺伝子の発現を制御できることがわかった。また、本実施例で判明したTRRAは、各種疾患の創薬ターゲットとなる重要な遺伝子であると考えられる。
以上、本発明を実施例に基づいて説明した。この実施例はあくまで例示であり、種々の変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解され
るところである。

Claims (4)

  1. レチノイドを含有する、特定の遺伝子の発現を上昇させる発現上昇剤(但し、肝臓癌の予防又は治療剤を除く)であって、
    前記レチノイドは、レチノール、レチナール、レチノイン酸、もしくはそれらの誘導体、レチニルエステル、オールトランスレチノール、14-ヒドロキシ-レトロレチノール、β-カロチン、オールトランスレチナール、オールトランスレチノイン酸、及び9-シスレチノイン酸からなる群から選ばれる1種以上の化合物であり、
    前記誘導体は、
    3,7-ジメチル-9-(2,6,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)ノナ-2,4,6,8-テトラエノイックアシッド
    (2E,4E,6E,8E)-3,7-ジメチル-9-(2,6,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)ノナ-2,4,6,8-テトラエノイックアシッド、
    (2E,4E,6Z,8E)-3,7-ジメチル-9-(2,6,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)ノナ-2,4,6,8-テトラエノイックアシッド、
    3-[2-(2,6,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)エテニル]ヘプト-2-エノイックアシッド、
    (2Z,4E,6E,8E)-3,7-ジメチル-9-(2,6,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)ノナ-2,4,6,8-テトラエノイックアシッド、
    (2Z,4Z,6E)-3,7-ジメチル-9-(2,6,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)ノナ-2,4,6-トリエノイックアシッド、
    (2E,4Z,6E)-3,7-ジメチル-9-(2,6,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)ノナ-2,4,6-トリエノイックアシッド、
    (2Z,4E,6Z,8E)-3,7-ジメチル-9-(2,6,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)ノナ-2,4,6,8-テトラエノイックアシッド、
    (2Z,4E,6Z,8E)-3,7-ジメチル-9-(2,6,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)ノナ-2,4,6,8-テトラエノイックアシッド、
    (2E,4E,6E,8E)-9-(2-エチル-6,6-ジメチルシクロヘキセン-1-イル)-3,7-ジメチルノナ-2,4,6,8-テトラエノイックアシッド、
    (2E,4Z,6E,8Z)-3,7-ジメチル-9-(2,6,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)ノナ-2,4,6,8-テトラエノイックアシッド、
    (2Z,4E,6Z,8E)-3,7-ジメチル-9-(2,6,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)-5,6-ジトリチオノナ-2,4,6,8-テトラエノイックアシッド、
    (2Z,4E,6Z,8E)-3,7-ジメチル-9-(2,6,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)-4,5-ジトリチオノナ-2,4,6,8-テトラエノイックアシッド、
    (2Z,4E,6Z,8E)-3,7-ジメチル-9-(2,6,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)-5-トリチオノナ-2,4,6,8-テトラエノイックアシッド、
    (2E,4Z,6E,8E)-3,7-ジメチル-9-(2,6,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)ノナ-2,4,6,8-テトラエノイックアシッド、
    (2E,4E,6Z,8E)-3,7-ジメチル-9-(2,6,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)-5-トリチオノナ-2,4,6,8-テトラエノイックアシッド、
    (2E,4Z,6Z,8E)-3,7-ジメチル-9-(2,6,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)ノナ-2,4,6,8-テトラエノイックアシッド、
    (2E,4Z,6E,8E)-3,7-ジメチル-9-(2,6,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)-4,5-ジトリチオノナ-2,4,6,8-テトラエノイックアシッド、
    (2Z,4Z,6E,8E)-3,7-ジメチル-9-(2,6,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)-4,5-ジトリチオノナ-2,4,6,8-テトラエノイックアシッド、
    (2E,4Z,6Z,8E)-3,7-ジメチル-9-(2,6,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)-4,5-ジトリチオノナ-2,4,6,8-テトラエノイックアシッド、
    (2E,4E,6Z,8E)-9-(3,4-ジジュウテリオ-2,6,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)-3,7-ジメチルノナ-2,4,6,8-テトラエノイックアシッド、
    (2Z,4E,6E,8E)-3,7-ジメチル-9-(2,6,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)-4,5-ジトリチオノナ-2,4,6,8-テトラエノイックアシッド、
    (2E,4E,6Z,8E)-9-(4,5-ジジュウテリオ-2,6,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)-3,7-ジメチルノナ-2,4,6,8-テトラエノイックアシッド、
    (2E,4E,6E,8E)-3-エチル-7-メチル-9-(2,6,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)ノナ-2,4,6,8-テトラエノイックアシッド、
    (2E,4E,6Z,8E)-9-[2,6-ジメチル-6-(トリジュウテリオメチル)シクロヘキセン-1-イル]-3,7-ジメチルノナ-2,4,6,8-テトラエノイックアシッド、
    (2E,4E,6Z,8E)-3,7-ジメチル-9-(2,6,6-トリメチル-3,4-ジトリチオシクロヘキセン-1-イル)ノナ-2,4,6,8-テトラエノイックアシッド、
    (2Z,4Z,6Z,8E)-3,7-ジメチル-9-(2,6,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)-4,5-ジトリチオノナ-2,4,6,8-テトラエノイックアシッド、
    (2E,4E,6Z,8E)-3,6,7-トリメチル-9-(2,6,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)ノナ-2,4,6,8-テトラエノイックアシッド、
    (2E,4E,6Z,8E)-3,7-ジメチル-9-(2,6,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)-4,5-ジトリチオノナ-2,4,6,8-テトラエノイックアシッド、
    (2E,4E,6Z,8E)-7-エチル-3-メチル-9-(2,6,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)ノナ-2,4,6,8-テトラエノイックアシッド、
    (2E,4E,6E)-3,7-ジメチル-9-(2,6,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)ノナ-2,4,6-トリエノイックアシッド、
    (2E,4E,6Z,8E)-3,7-ジメチル-9-(2,6,6-トリメチル-4,5-ジトリチオシクロヘキセン-1-イル)ノナ-2,4,6,8-テトラエノイックアシッド、
    (2E,4E,6Z,8E)-3-エチル-7-メチル-9-(2,6,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)ノナ-2,4,6,8-テトラエノイックアシッド、
    (2E,4E,6Z,8E)-4,5-ジジュウテリオ-3,7-ジメチル-9-(2,6,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)ノナ-2,4,6,8-テトラエノイックアシッド、
    (2E,4Z,6Z,8E)-4,5-ジジュウテリオ-3,7-ジメチル-9-(2,6,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)ノナ-2,4,6,8-テトラエノイックアシッド、
    (2E,4E,8E)-3-メチル-7-メチリデン-9-(2,6,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)ノナ-2,4,8-トリエノイックアシッド、
    (2E,4E,6Z,8E)-7-メチル-9-(2,6,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)-3-(トリトリチオメチル)ノナ-2,4,6,8-テトラエノイックアシッド、
    (2E,4E,6Z,8E)-7-メチル-3-(トリジュウテリオメチル)-9-(2,6,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)ノナ-2,4,6,8-テトラエノイックアシッド、
    (2E,4E,6E,8E)-3,7-ジメチル-9-(2,6,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)ノナ-2,4,6,8-テトラエノイックアシッド、
    (2Z,4Z,6E,8E)-3,7-ジメチル-9-(2,6,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)ノナ-2,4,6,8-テトラエノイックアシッド、
    (2E,4E,6E,8E)-3,7-ジメチル-9-(2,6,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)デカ-2,4,6,8-テトラエノイックアシッド、
    (2E,4E,6E,8E)-9-[3,3-ジジュウテリオ-6,6-ジメチル-2-(トリジュウテリオメチル)シクロヘキセン-1-イル]-3,7-ジメチルノナ-2,4,6,8-テトラエノイックアシッド、
    (2E,4E,6E,8Z)-3,7-ジメチル-9-(2,6,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)ノナ-2,4,6,8-テトラエノイックアシッド、
    (2Z,4E,8E)-3-メチル-7-メチリデン-9-(2,6,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)ノナ-2,4,8-トリエノイックアシッド、
    (2Z,4Z,6E,8Z)-3,7-ジメチル-9-(2,6,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)ノナ-2,4,6,8-テトラエノイックアシッド、
    (2Z,4E,6Z,8Z)-3,7-ジメチル-9-(2,6,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)ノナ-2,4,6,8-テトラエノイックアシッド、
    (2E,4E,6E,8E)-9-(2,6,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)ノナ-2,4,6,8-テトラエノイックアシッド、
    (2E,4E,6E,8E)-3,7-ジメチル-9-(2,6,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)ノナ-2,4,6,8-テトラエノイックアシッド;ジンク、
    (2E,4E,6E)-5-メチル-7-(2,6,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)ヘプタ-2,4,6-トリエノイックアシッド、
    (2E,4E,6Z)-3-メチル-7-[(E)-2-(2,6,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)エテニル]デカ-2,4,6-トリエノイックアシッド、
    (2E,4E,8E)-3,7-ジメチル-9-(2,6,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)ノナ-2,4,8-トリエノイックアシッド、
    (2E,4E,6Z,8E)-7-タート-ブチル-3-メチル-9-(2,6,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)ノナ-2,4,6,8-テトラエノイックアシッド、
    (2E,4E,6E,8E,10E)-5,9-ジメチル-11-(2,6,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)ウンデカ-2,4,6,8,10-ペンタエノイックアシッド、
    (Z)-3-[(E)-2-(2,6,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)エテニル]ヘプト-2-エノイックアシッド、
    (2E,4E,6E,8E,10E,12E)-3,7,11-トリメチル-13-(2,6,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)トリデカ-2,4,6,8,10,12-ヘキサエノイックアシッド、
    (2E,4E,6Z)-3-メチル-7-[(E)-2-(2,6,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)エテニル]ウンデカ-2,4,6-トリエノイックアシッド、
    (2E,4E,6E,8E)-4,7-ジメチル-9-(2,6,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)ノナ-2,4,6,8-テトラエノイックアシッド、
    (2E,4E,6E,8E)-7-メチル-9-(2,6,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)ノナ-2,4,6,8-テトラエノイックアシッド、
    (2E,4E,6E,8E)-9-(2-ブチル-6,6-ジメチルシクロヘキセン-1-イル)-3,7-ジメチルノナ-2,4,6,8-テトラエノイックアシッド、
    (2Z,4E,8E)-7-メチリデン-9-(2,6,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)ノナ-2,4,8-トリエノイックアシッド、
    (2E,4E,6Z,8E)-9-(2-ブチル-6,6-ジメチルシクロヘキセン-1-イル)-3,7-ジメチルノナ-2,4,6,8-テトラエノイックアシッド、
    3-メチル-5-(2,6,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)ペンタ-2,4-ジエノイックアシッド、
    (2E,4E)-3-メチル-5-(2,6,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)ペンタ-2,4-ジエノイックアシッド、
    (Z,4E)-3-メチル-4-[3-[(E)-2-(2,6,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)エテニル]シクロヘクス-2-エン-1-イリデン]ブト-2-エノイックアシッド、
    (2E,4E)-3-メチル-6-[1-[(E)-2-(2,6,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)エテニル]シクロプロピル]ヘキサ-2,4-ジエノイックアシッド、
    (2E,4E,6Z,8E)-3-メチル-7-プロパン-2-イル-9-(2,6,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)ノナ-2,4,6,8-テトラエノイックアシッド、
    (Z,4E)-3-メチル-4-[(4E)-3-メチル-4-[(2,6,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)メチリデン]シクロヘキサ-2,5-ジエン-1-イリデン]ブト-2-エノイックアシッド、
    (E,4E)-3-メチル-4-[3-[(E)-2-(2,6,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)エテニル]シクロヘクス-2-エン-1-イリデン]ブト-2-エノイックアシッド、
    (2Z,4E,8E)-3-メチル-9-(2,6,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)ノナ-2,4,8-トリエン-6-イノイックアシッド、
    (2E,4E,6E,8E)-2,3,7-トリメチル-9-(2,6,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)ノナ-2,4,6,8-テトラエノイックアシッド、
    (2E,4E,6E,8E)-3,7-ジメチル-9-(2,5,6,6-テトラメチルシクロヘキセン-1-イル)ノナ-2,4,6,8-テトラエノイックアシッド、
    (2E,4E)-3-メチル-5-[2-[(E)-2-(2,6,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)エテニル]シクロペンテン-1-イル]ペンタ-2,4-ジエノイックアシッド、
    (2E,4E,6Z,8E)-3,7-ジメチル-9-(2,5,6,6-テトラメチルシクロヘキセン-1-イル)ノナ-2,4,6,8-テトラエノイックアシッド、
    (2E,4E,6E,8E)-2,3-ジメチル-9-(2,6,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)ノナ-2,4,6,8-テトラエノイックアシッド、
    (2E,8E)-3,7-ジメチル-9-(2,6,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)ノナ-2,8-ジエノイックアシッド、
    (2Z,5E)-7-メチル-3-[(E)-2-(2,6,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)エテニル]ノナ-2,5-ジエノイックアシッド、
    (2E,4E,6E,8E)-9-[6,6-ジメチル-2-(2-メチルプロピル)シクロヘキセン-1-イル]-3,7-ジメチルノナ-2,4,6,8-テトラエノイックアシッド、
    (2E,4E,6Z,8E)-9-[6,6-ジメチル-2-(2-メチルプロピル)シクロヘキセン-1-イル]-3,7-ジメチルノナ-2,4,6,8-テトラエノイックアシッド、
    (2Z,4E,6Z,8E)-9-(6,6-ジメチルシクロヘキセン-1-イル)-3,7-ジメチルノナ-2,4,6,8-テトラエノイックアシッド、
    (2E,4E,6E,8E)-9-(6,6-ジメチルシクロヘキセン-1-イル)-3,7-ジメチルノナ-2,4,6,8-テトラエノイックアシッド、及び
    (2E,4E,6Z,8E)-9-(6,6-ジメチルシクロヘキセン-1-イル)-3,7-ジメチルノナ-2,4,6,8-テトラエノイックアシッド、
    からなる群から選ばれる1種以上の化合物である、
    コロニースティミュレイティングファクター3レセプター(グラヌロサイト)の発現を上昇させる、発現上昇剤。
  2. 前記レチノイドは、レチノール、レチナール、レチノイン酸、レチニルエステル、オールトランスレチノール、14-ヒドロキシ-レトロレチノール、β-カロチン、オールトランスレチナール、オールトランスレチノイン酸、及び9-シスレチノイン酸からなる群から選ばれる1種以上の化合物である、請求項1に記載の発現上昇剤。
  3. 請求項1又は2いずれかに記載の発現上昇剤であって、
    前記遺伝子が、変異型の遺伝子を含む、発現上昇剤。
  4. 請求項1〜3いずれかに記載の発現上昇剤を含む、試薬。
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