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JP5721638B2 - コンジュゲート分子 - Google Patents

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Description

本発明は、ペルオキシダーゼ活性を持つ酵素の基質となりうる二以上の部分と一又は複数の標識のコンジュゲートである化合物に関する。本発明のコンジュゲート分子は、例えば免疫組織化学的検査(IHC)、インサイツハイブリダイゼーション(ISH)、ELISA、サザン、ノーザン、及びウェスタンブロット法等の、かかる標的を検出し可視化する多くの実験スキームを使用して、試料中の生物学的又は化学的分子のような分子標的、分子構造等を検出するために有用である。
検出可能な標識を使用した試料中の生物学的又は化学的標的の検出は、医療診断方法を含む多くの生物学的検出方法の中心となる手順である。ある場合では、標的は、インサイツか又は抽出もしくは単離後の何れかで、DNA又はRNAレベルで検出される特定のポリヌクレオチド配列又は遺伝子、遺伝子変異、遺伝的発現パターンでありうる。他の場合では、標的は、インサイツ又は単離もしくは実験操作後に再度検出されるペプチド、タンパク質、抗原、又は他の物質でありうる。標的はまた有機由来の粒子又はデブリでありうる。
多くの標準的な検出方法、例えばIHC、ISH、ELISA、ブロット法は、所望の標的を検出するために標識化スキームを用いる。典型的には、そのスキームは、検出可能な標的を潜在的に含む実験試料をプローブと共にインキュベートし、ついで結合剤と標的の間の結合を、例えば色、蛍光シグナル、又は放射活性を生じうる検出可能な標識を用いて検出することを含む。一つ又は多くの結合剤が、使用されるスキームの特異性に応じてそれぞれの標的に結合しうる。ある場合には、特に標的が低濃度で存在している場合、系に一又は複数の増幅層を加えて、標的−結合剤複合体からのシグナルを増幅することが必要である。例えば、結合剤が標的を認識する一次抗体であるならば、一次抗体を認識する二次抗体を加えて、多くの二次抗体が各一次抗体に結合するようにする。二次抗体が検出可能な標識、例えばフルオロフォア又は発色団に結合するならば、増幅を介して、試料中の各標的は、唯一の又は数個のフルオロフォア又は発色団の代わりに、複数のフルオロフォア又は発色団に効果的に結合しうる。よって、標的が、増幅後により強い検出シグナルを生じる。
しかしながら、ある検出実験では、特に試料が分析前に所定時間放置される場合、比較的拡散したように見えるシグナルを生じせしめる傾向がある。例えば、標的に結合した一又は複数の結合剤及び/又は検出可能な標識は、標的からゆっくりと拡散するか、又は経時的に互いに離れる場合がある。ある場合には、標的、結合剤の結合親和性、及び増幅層に影響を及ぼすバッファー交換もまたシグナル拡散を引き起こしうる。多くの検出可能な標識は、タンパク質リガンド結合又はポリヌクレオチドハイブリダイゼーションのような非共有的相互作用により標的に結合する。標識化後のバッファー交換は、標的、結合剤、及び検出可能な標識の間の親和性を低下させ、様々な成分を解離させうる。例えば数日の所定期間にわたる単純な拡散もまた標的、結合剤,及び検出可能な標識の間の解離を引き起こし、シグナルを拡散させうる。
現在利用できる検出手順、特に免疫検出に伴う他の問題は、時間消費である。標識の検出のために標的を標識化する工程から試料を処理するのに、通常、最小でも1から3時間かかる。
従来技術では、上述の課題を解決しうる技術はほんの少ししか記載されておらず、しかも部分的に解決するのみである。このような技術の一例は、米国特許第5863748号;第5688966号;第5767287号;第5731158号;第5583001号、第5196306号、第6372937号又は第6593100号に記載された触媒レポーター沈着(CARD)法である。この方法は、アッセイプラットホームの固相上への検出可能な標識の沈着を触媒するために、いわゆる「分析物依存酵素活性化系」(ADEAS)を利用する。該アッセイ形式では、ADEASに含まれる酵素が、該酵素に特異的な検出可能に標識された基質からなるコンジュゲートと反応する。酵素とコンジュゲートが反応すると、活性化コンジュゲートに特異的なレセプターが固定される部位に共有的に沈着する活性化コンジュゲートが形成される。よって、コンジュゲートは標識を含んでいるので、部位での標的の存在を示すレポーターの役割を果たす。酵素により沈着された標識は、直接的又は間接的に検出されうる。該方法はシグナル増幅を生じ、検出限界を改善した。
CARD法は、検出される標的が固体支持体、例えば膜に固定されたレセプターであるアッセイ形式で使用されうる。このようなアッセイ形式は、サンドイッチ免疫アッセイ及び膜ベース核酸ハイブリダイゼーションアッセイを含む。CARD法はまた例えば米国特許第6593100号に記載される免疫組織化学的検査(IHC)による生物学的標的の検出に応用可能である。米国特許第6593100号に記載された方法は、エンハンサーの存在下で、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)と、HRP基質を含む標識されたコンジュゲートとの反応を利用する。HRP基質及びエンハンサーは双方ともフェノール誘導体である。HRPとの反応の際、HRP基質は活性化され、典型的にはタンパク質の低含量の芳香族アミノ酸残基によって表される試料のレセプター部位に結合する。
多くの他の現在利用可能な方法、特に標的の免疫組織化学的検出方法と比較して試料中の標的分子の検出は相対的に良好な感度を有しているにもかかわらず、CARD法は、染色前に不適切に進められた組織試料又は低レベルの標的発現を有するものの場合に該方法を負担にする、他の方法の問題、例えば強いバックグラウンド染色、尚も不十分な感度及び時間消費を十分には解決していない。
最近、IHC試料中の低含量の標的分子の検出を可能にする他のHRPベース増幅法が記載されている(国際公開第2009036760号)。該方法は、DABをHRPの発色基質としてではなく他のHRP基質の架橋剤として利用している。国際公開第2009036760号によれば、DABは他のHRP基質のHRP媒介沈着を媒介し、それ自体は沈着DABではなく、つまり、記載された沈着条件下で形成される可視できる茶色がかった沈着物が存在しない。他のHRP基質の沈着物は検出可能であるが、これは、それらがHRP基質分子に付随する検出可能な標識を含むためであり、例えばそれらは沈着工程の後の工程で検出されうる。該方法は沈着したHRP基質のシグナルの強い増幅をもたらし、これがその方法の感度をCSA法に匹敵するものとするが、後者の方法と比較して、新規の方法は有利にはバックグラウンド標識化をもたらさない。この新規方法の他の利点のなかで、検出法の速度が伝統的なDAB又はビオチニル−チラミド検出法の何れよりも更に速いことは述べる価値がある。
本発明は、分子標的、特にペルオキシダーゼ活性を含む分子標的の検出を有利に改善しうる化合物及び組成物に関する。特に本発明の化合物及び組成物は、国際公開第2009036760号に記載された方法による検出を、分子標的のより速く、より感度があり、かつ正確な検出が達成される点で改善する。
一態様では、本発明は、少なくとも30の相互連結原子の線状鎖を含む水溶性ポリマーを含む水溶性コンジュゲートに関し、ここで、上記ポリマーは少なくとも一つの検出可能な標識とペルオキシダーゼ酵素の基質となりうる少なくとも二つの部分にコンジュゲートされ、少なくとも一つの検出可能な標識と少なくとも二つの部分は、少なくとも30の相互連結原子の鎖に相当する距離だけ互いに離間し、ペルオキシダーゼ酵素の基質の何れか二つの部分間の距離が30の相互連結原子の鎖より少ない。
一態様では、本発明は、
(i)一又は複数の検出可能な物質、
(ii)少なくとも二つの物質で、その各々がペルオキシダーゼ活性を有する酵素の基質となりうるもの
を含む水溶性コンジュゲートであって、
ここで、標識(i)とペルオキシダーゼ基質の部分(ii)が同じ化学物質ではなく、
ここで、標識(i)とペルオキシダーゼ基質の部分(ii)がリンカーを介して結合され、該リンカーが少なくとも30の連続的に連結された原子の少なくとも一つの線状鎖を含む化合物であり、上記線状鎖は少なくとも30の連続的に連結された原子の距離だけ分離した少なくとも二つの分岐点を含み;
ここで、標識(i)とペルオキシダーゼ基質の部分(ii)は少なくとも30の連続的に連結された原子によってコンジュゲート分子において分離され、
ここで、二つの隣接するペルオキシダーゼ基質部分は30未満の連続的に連結された原子によって互いから分離されているコンジュゲートに関する。
一実施態様では、ペルオキシダーゼ酵素を持つ酵素の基質となりうる部分は、次の式:
Figure 0005721638
[上式中、
R1は−H、−O−X、N(X)又は−S−Xであり;
R2は−H、−O−X、−N(X)、又は−S−Xであり、
R3は−H、−OH、−NH又は−SHであり;
R4は−H、−O−X、−N(X)、又は−S−Xであり、
R5は−H、−O−X、N(X)、又は−S−Xであり、
R6は−CON(X)、又はCO−Xであり、
ここで、
Hは水素であり;
Oが酸素であり、
Sが硫黄であり、
Nが窒素であり、
XがH、アルキル又はアリールである]
を有する。
一実施態様では、ペルオキシダーゼ基質の部分は、フェルラ酸、ケイ皮酸、アミノケイ皮酸、コーヒー酸、シナピン、又はチロシンの残基である。
一実施態様では、ペルオキシダーゼ酵素の基質となりうる部分の少なくとも二つはチロシン残基である。
一実施態様では、コンジュゲート分子の少なくとも30の連続して連結された原子の一つの線状鎖は次の式
Figure 0005721638
[上式中、R及びRはNH及びOから選択され、Rはメチル、エチル、プロピル、CHOCH、及び(CHOCHから選択される]の2の反復を含み、3以下の連続的に反復するエチルオキシ基を有する。
一実施態様では、コンジュゲート分子は、ペルオキシダーゼ酵素の基質となりうる2から4の部分と1つの検出可能な標識を含み、標識と部分は上式の化合物の2から10の反復を含む線状ポリマーに結合し、該ポリマーはポリマー鎖の対向端に少なくとも二つの分岐点を有し、上記部分と上記標識は上記対向分岐点でポリマーに結合する。
一実施態様では、コンジュゲート分子は、少なくとも一つの第一及び少なくとも一つの第二線状ポリマーにコンジュゲートしたデキストランポリマーを含み、上記少なくとも一つの第一ポリマーはペルオキシダーゼ酵素基質となりうる2から4の部分にコンジュゲートされ、上記少なくとも一の第二ポリマーは一又は複数の検出可能な標識にコンジュゲートされる。一実施態様では、第二ポリマーは二以上の標識を含み、2つの隣接する標識間の分子距離は少なくとも30の連続的に連結された原子である。
一実施態様では、検出可能な標識は蛍光物質又は特異的結合対のメンバーである。
一実施態様では、ペルオキシダーゼ活性を持つ酵素は西洋わさびペルオキシダーゼである。
本発明はまた本発明に係るコンジュゲート分子を含む組成物及び試料中における標的又はペルオキシダーゼ活性の検出のためのキットオブパーツに関する。
更に、一態様における本発明は、試料中のペルオキシダーゼ活性の検出方法において、
I. ペルオキシダーゼ活性を有すると思われる試料を、
a)請求項1から10の何れかに記載の化合物
b)3,3’ジアミノベンジジン、及び
c)過酸化物化合物
を含有する水溶液中でインキュベートし、それによって化合物の沈殿物を形成し;
II. 試料中の化合物の沈殿物を検出し、それによって試料中のペルオキシダーゼ活性を検出する
ことを含んでなる方法に関する。
一実施態様では、本発明の方法は、試料中の標的、例えば標的分子の検出のためのものである。一実施態様では、西洋わさびペルオキシダーゼが標的に直接的に又は間接的に結合される。一実施態様では、試料は生物学的試料、環境試料、又は化学的試料である。一実施態様では、試料又は/及び標的は固体支持体に固定される。
一実施態様では、本発明の方法は、5mMを越える過酸化水素と0.25mMから6mMの3,3’ジアミノベンジジンを含有する本発明のコンジュゲート分子の水溶液、又は3,3’ジアミノベンジジンの量が1.5mMを越える溶液を使用する。
幾つかの実施態様における本発明のコンジュゲート化合物は交換可能に「コンジュゲート」又は「レポーター分子」と称される。
発明の例示的なコンジュゲート分子の合成の概略図である(詳細は実施例参照)。 発明の例示的なコンジュゲート分子の合成の概略図である(詳細は実施例参照)。 発明の例示的なコンジュゲート分子の合成の概略図である(詳細は実施例参照)。
コンジュゲート分子
本発明は、次の特徴を共有するコンジュゲート分子(交換可能に「コンジュゲート」と称される)の大きな群に関する:
1. コンジュゲート分子は、ペルオキシダーゼ酵素の基質、好ましくはHRP基質となりうる二以上の物質と水溶性リンカー化合物を介して互いに結合している一又は複数の標識を含む水溶性分子である;
2. ペルオキシダーゼ基質部分は、上記分子の一部分のコンジュゲート分子中において、それらが2,5nmを越えない距離だけ互いに分離している、例えば30未満の相互連結された炭素原子の鎖又は炭素、窒素、硫黄及び/又は酸素のようなヘテロ原子の鎖だけ、好ましくは5−20原子を越える鎖だけコンジュゲートの分子内で分離しているという点で「濃縮」されている;
3. 検出可能な標識はペルオキシダーゼ基質部分から少なくとも30の連続敵に相互連結された原子だけ離れた距離にある、つまり2.5nmを越えて、好ましくは3nmを越えた距離にある;
4. リンカーは、好ましくは、少なくとも30の連続的に連結された原子の少なくとも一つの線状鎖を含むポリマーを含み;好ましくはここで二つの連続する炭素に酸素又は窒素原子が続く;
5. コンジュゲートは環境中にペルオキシダーゼ活性を有している酵素の不在下で過酸化物化合物及び3,3’−ジアミノベンジジン(DAB)を含む水溶液から沈殿しない。
6. コンジュゲートは環境中にペルオキシダーゼ活性を有している酵素の存在下で過酸化物化合物を含むが3,3’−ジアミノベンジジン(DAB)を含まない水溶液から沈殿しない。
7. コンジュゲートは環境中にペルオキシダーゼ活性を有している酵素の存在下で過酸化物化合物と3,3’−ジアミノベンジジン(DAB)を含む水溶液から沈殿する。
これらの特徴を以下に詳細に記載し、これらの特徴を有する幾つかのコンジュゲート分子を実施例において例証する。
一態様では、本発明は、
(i)一又は複数の検出可能な物質(交換可能に「標識」と称される)、
(ii)少なくとも二つの物質で、その各々がペルオキシダーゼ活性を有する酵素の基質となりうるもの(かかる物質は「ペルオキシダーゼ基質」又は「ペルオキシダーゼ基質の部分」と称される)
を含む水溶性コンジュゲートであって、
ここで、標識(i)とペルオキシダーゼ基質の部分(ii)が同じ化学物質ではなく、
ここで、標識(i)とペルオキシダーゼ基質の部分(ii)がリンカーを介して結合され、該リンカーが少なくとも30の連続的に連結された原子の少なくとも一つの線状鎖を含む化合物であり、上記線状鎖は少なくとも30の連続的に連結された原子の距離だけ分離した少なくとも二つの分岐点を含み;
ここで、標識(i)とペルオキシダーゼ基質の部分(ii)は少なくとも30の連続的に連結された原子によってコンジュゲート分子において分離され、
ここで、二つの隣接するペルオキシダーゼ基質部分は30未満の連続的に連結された原子によって互いから分離されているコンジュゲートに関する。
「検出可能な物質」なる用語は、(i)検出可能な発色性、蛍光性、発光性又は放射性シグナルを生じうるか、又は(ii)例えば抗体、核酸配列、核酸配列アナログ配列、ハプテン、抗原、レセプター、レセプターリガンド、酵素等のシグナルを検出することができる特異的結合対のメンバーである物質に関する。
ある実施態様では、本発明の水溶性コンジュゲート分子は、その特徴を向上させうる部分を、つまり標識及び/又はペルオキシダーゼ基質部分として更に含み得、又は分子の水溶性を増加/減少させる。
本発明のコンジュゲート分子は次の式(I):
(Y)n-(B1)L(B2)-(Z)m
[上式中、
Yはペルオキシダーゼ活性を持つ酵素の基質となりうる部分であり;
Zは検出可能な標識であり;
Lはリンカーであり
B1及びB2は分岐点であり、
ここで、
nは2から150の整数であり、かつ
mは1から150の整数である]
によって表すことができる。
好ましい一実施態様では、Yは次の式(II):
Figure 0005721638
[上式中、
R1は−H、−O−X、N(X)又は−S−Xであり;
R2は−H、−O−X、−N(X)、又は−S−Xであり、
R3は−H、−OH、−NH又は−SHであり;
R4は−H、−O−X、−N(X)、又は−S−Xであり、
R5は−H、−O−X、N(X)、又は−S−Xであり、
R6は−CON(X)、又はCO−Xであり、
ここで、
Hは水素であり、
Oは酸素であり、
Sは硫黄であり、
Nは窒素であり、
XはH、アルキル又はアリールである]
を有している。
好ましい一実施態様では、Yはケイ皮酸の残基であり;他の好ましい実施態様では、Yはフェルラ酸の残基である。他の好ましい実施態様では、Yはコーヒー酸の残基であり;他の好ましい実施態様では、Yはアミノケイ皮酸の残基である。他の好ましい実施態様では、Yはシナピン酸の残基である。他の好ましい実施態様では、Yはフェルラ酸、ケイ皮酸、コーヒー酸、アミノケイ皮酸又はシナピン酸の誘導体である。
好ましくは、式(II)の残基YはR6基を介してLに連結される。
好ましい一実施態様では、コンジュゲートは2から4の同一又は異なった残基Yを含む。
好ましい一実施態様では、コンジュゲート分子は、式(II)の二つのY分子、例えば二つのフェルラ酸残基、又は二つのケイ皮酸残基、又は二つのアミノケイ皮酸残基、又は二つのコーヒー酸残基、又は二つのシナピン三残基、及び一又は複数の検出可能な標識;一又は複数の検出可能な標識;他の実施態様では、コンジュゲートは、式(II)の3分子、例えば3つのフェルラ酸、ケイ皮酸、コーヒー酸、アミノケイ皮酸又はシナピン酸残基、及び一又は複数の検出可能な標識を含み得;他の実施態様では、コンジュゲートは、式(II)の三つ又は四つの分子、例えば4つのフェルラ酸、ケイ皮酸、コーヒー酸、アミノケイ皮酸又はシナピン酸残基、及び一又は複数の検出可能な標識を含みうる。
ある実施態様では、Y残基の数は、4より多く、例えば5−10、10−15、15−20、20−50、50−100、又は100−150分子でありうる。そのようなコンジュゲート分子の非限定的な作用例は実施例に記載する。好ましくは、そのようなコンジュゲートは少なくとも30の連続的に連結された原子、例えば30−150原子の一つを越える線状鎖を含み、ここで2から4のY残基が(以下に記載の態様において)鎖の第一の分岐点で各線状鎖に結合し、かかる線状鎖の幾つかが他の水溶性ポリマー、例えばデキストランに、その鎖の第二分岐点を介して結合する。
好ましい一実施態様では、コンジュゲート分子は式(II)の二以上の異なった分子を含みうる。
好ましい一実施態様では、Yはアミノ酸チロシンの残基又はその誘導体でありうる。コンジュゲートは、2から4のチロシン残基、又はそれ以上のチロシン残基を含みうる。
本発明によれば、2から4のY残基が好ましくは群としてコンジュゲート分子中に位置する(つまり、4を越えるY残基を含むコンジュゲートがある距離、例えば30の連結された原子又はそれ以上、コンジュゲート分子において分離した2から4のY残基の幾つかの群を含む)。好ましくは、2から4のY残基は、例えば5−10、6−12、7−13、8−14、9−15、10−16、11−17、12−18、13−19、20、21、22、23等の5−30以下の長さの相互に連結された原子である2つの隣接Y残基間の距離をもたらす化合物(スペーサー)を介して互いに結合している。例えば、2−4のY残基は、例えばリジン残基のような2から4のアミノ酸を含むペプチド鎖に結合され得、ここで、Y残基はペプチドのアミノ酸残基の側鎖反応性基、例えばリジン残基のイプシロンアミノ酸残基に結合される。2から4は、3−5原子、好ましくは3原子を越えないこれらの分岐点間の距離を持つ多くの分岐点を含む他の短いポリマーを介して連結され得、ここで、Y残基はこれらのポリマーの原子又は化学基の側鎖に結合されうる。そのようなグループ化されたY残基の位置はここではコンジュゲート分子の「Yヘッド」と称される。
好ましい一実施態様では、Yヘッドは、短いポリマー、例えばPNA又はペプチドを介して結合した2から4のY残基を含み、ここで、ペプチドは好ましくはリジン、セリン、グルタメート又はシステイン残基を含む。しかしながら、少なくとも2つのY残基及びリンカーLとコンジュゲートされうる任意の他の短いポリマーが適切である場合がある。
一実施態様では、2から4の残基Yを含むYヘッドは、次の式(III)の分子の二又はそれ以上の残基を含むポリマーに結合され、
Figure 0005721638
ここで、R及びRはNH及びOから選択され、Rがメチル、エチル、プロピル、CHOCH、及び(CHOCHから選択され、連続反復エチルオキシ基が3以下である。得られたコンジュゲートは一つの検出可能な標識(又は以下に記載されるような一を越える検出可能な標識)で更にコンジュゲートされ得、又はそれは(一又は数個のそのようなレポーターが結合されうる)水溶性ポリマー、例えばデキストランでコンジュゲートされうる。
本発明のコンジュゲート分子中におけるY残基の近接する間隔は、(Y残基のみを含むか又はYヘッドの形態のコンジュゲート分子中に「濃縮」していない、つまり隣接する2つのY残基間の分子間隔が上で検討した距離よりも大きい、幾つかのY残基を含むレポーターと比較して)コンジュゲートが、環境中でペルオキシダーゼ活性を有する酵素の不在下で過酸化物化合物及び3,3’−ジアミノベンゼジン(DAB)を含む水溶液に可溶性であるが、環境中でペルオキシダーゼ活性を有する酵素の存在下でそのような溶液から素早くかつ豊富に沈殿する点でコンジュゲートの特徴に影響を及ぼす。
検出可能な標識Zは、視覚的に検出できる任意の物質、例えば蛍光又は発光物質、又はある検出手段を使用することによって検出することができる任意の物質、例えば放射性標識、特異的結合対のメンバー、例えば核酸配列、ハプテン等でありうる。
任意の蛍光、発光、生物発光又は放射性分子を標識として使用することができる。これらの多くは市販されており、例えば蛍光染料Alexa Fluors(Molecular Probes)及びDyLight Fluors(Thermo Fisher Scientific)である。蛍光標識の他の非限定的な例は次の分子でありうる:5−(及び6)−カルボキシフルオレセイン、5−又は6−カルボキシフルオレセイン、6−(フルオレセイン)−5−(及び6)−カルボキサミドヘキサン酸、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、テトラメチルローダミン、Cy2、Cy3、Cy5、AMCA、PerCP、R−フィコエリトリン(RPE)アロフィコエリトリン(APC)、テキサスレッド、プリンストンレッド、緑色蛍光タンパク質(GFP)コートCdSeナノクリスタライト、ルテニウム誘導体、ルミノール、イソルミノール、アクリジニウムエステル、1,2−ジオキセタン及びピリドピリダジン、水素、炭素、硫黄、ヨウ素、コバルト、セレン、トリチウム、又はリンの放射性同位体。
ある実施態様では、検出可能な標識は、酵素でありうる。適切な酵素標識の非限定的な例は、アルカリホスファターゼ(AP)、β−ガラクトシダーゼ(GAL)、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、β−N−アセチルグルコサミニダーゼ、β−グルクロニダーゼ、インベルターゼ、キサンチンオキシダーゼ、ホタルルシフェラーゼ、グルコースオキシダーゼ(GO)でありうる。
他の実施態様では、検出可能な標識は、特異的な結合対のメンバー、例えばハプテンでありうる。適切なハプテンの非限定的な例として、2,4−ジニトロフェノール(DNP)、ジゴキシギニン、フルオレセイン、テキサスレッド、テトラメチルローダミン、ニトロチロシン、アセチルアミノフルレン、水銀トリニトロフェノール(mercury trintrophonol)、エストラジオール、ブロモデオキシウリジン、ジメチルアミノナフタレンスルホネート(ダンシル)を挙げることができ;適切な特異的結合剤の例として、ビオチン、ストレプトアビジン、相補的天然及び非天然オリゴヌクレオチド配列、ジンクフィンガー結合ドメイン対等を挙げることができる。特異的結合対のメンバーの他の例は上記セクションにおいて検討されている。
好ましい一実施態様では、標識はハプテンである。他の好ましい実施態様では、標識は蛍光物質である。他の好ましい実施態様では、標識は特異的結合対のメンバーである。
コンジュゲート分子当たりの検出可能な標識の数は変動しうる。ある実施態様では、コンジュゲート分子当たり1から3、例えば1、2又は3の標識が好ましい場合がある。好ましい実施態様では、そのようなコンジュゲートは一つの検出可能な標識を含む。一実施態様では、式(II)の2から4の残基Y又は2から4のチロシンと一つのシグナル標識を含むコンジュゲート分子が好ましい場合がある。ある実施態様では、コンジュゲートは3を越える標識、例えば4〜150の標識をコンジュゲート分子当たりに含みうる。
本発明によれば、コンジュゲート分子において、標識がペルオキシダーゼ基質部分から、例えばYヘッドから、2.5nmを越える距離だけ、分離され、例えば少なくとも30の連続的原子、例えば60、90又は150の連続的原子の鎖によって分離される。コンジュゲートがYヘッドと1(又はそれ以上)の標識を結合する原子の一つの線状鎖を含む実施態様では、Yヘッド及び標識は、鎖の反対端部に位置する分岐点で上記鎖に結合される。
ある実施態様では、コンジュゲートが1を越える標識を含む場合、標識がリンカー(つまり、一分子において標識とペルオキシダーゼ部分を連結させる物質)にコンジュゲートされ、標識の結合部位間の距離があるのが好ましく、この距離は、少なくとも30の連続的に連結された原子(「スペーサー部分」又は「スペーサー」と称される)、好ましくは60の連続的な原子又はそれ以上、例えば90の連続的に相互連結された原子の鎖に対応する。結合された標識間のスペーサー部分は親水性であることが好ましい。コンジュゲート分子における複数の標識のそのような配置はここでは「Zテール」と称される。Yヘッドに最も近く位置させられるZテール含有複数標識の標識は、Yヘッドのペルオキシダーゼ部分の何れかから少なくとも30の相互連結原子だけ、つまり少なくとも2.5nmの距離だけ離間していることが理解される。
好ましくは、少なくとも30の連続的原子のスペーサーは次の式(II)
Figure 0005721638
の分子の二以上の残基を含む化合物であり、ここで、R及びRはNH及びOから選択され、Rはメチル、エチル、プロピル、CHOCH、及び(CHOCHから選択され、連続的に反復するエチルオキシ基は3を越えない。
上記スペーサーに結合されそれによって分離される複数の標識は一つのYヘッド又は幾つかのYヘッドに適切なリンカー、例えばデキストランのような複数の結合を可能にする水溶性ポリマーでコンジュゲートされうる。ある実施態様では、幾つかのYヘッドはそのようなポリマーを介して幾つかのZテールにコンジュゲートされうる。
一実施態様では、一つの同じコンジュゲート分子に結合される複数の検出可能な標識は、同じ検出可能な物質であり得、他の実施態様では、標識は異なった検出可能な物質であり得る。
標識のZテール配置は、(1)標識間を親水性スペーサー分子によって分離されている複数の疎水性標識を含むコンジュゲートは水溶液への良好な溶解度のままであり、(2)標識は結合剤がコンジュゲートを検出するために使用される場合に結合剤により接近可能であるという利点を有している。
リンカーLは、本発明によれば、少なくとも30の連続的原子、例えば30−150原子又はそれ以上、例えば30、45、60、90、150、300、500原子又はそれ以上の鎖を含む分子である。好ましい一実施態様では、好ましくは、Lは150の連続した原子を含む。ある実施態様では、リンカー分子は、2つの連結された炭素原子毎に酸素又は窒素の原子が続く原子の線状鎖を含む。
好ましい一実施態様では、Lは単一の線状ポリマー分子であり;好ましい一実施態様では、Lは互いにコンジュゲートされた幾つかの異なったポリマーを含むコンジュゲート分子である。
好ましい一実施態様では、線状ポリマーは、二つの連続した炭素原子に、酸素又は窒素から選択されるヘテロ原子が続く原子鎖、例えば以下に記載のリンカー、又はポリエチレングリコール等を含む。
リンカーLとして使用することができる非常に様々なポリマー分子が存在する。例としては、デキストラン、カルボキシメチルデキストラン、デキストランポリアルデヒド、カルボキシメチルデキストランラクトン、及びシクロデキストリンなどの多糖類;プルラン、シゾフィラン、スクレログルカン、キサンタン、ジェラン、O−エチルアミノグアラン(ethylamino guaran)、6−O−カルボキシメチルキチン及びN−カルボキシメチルキトサンなどのキチン及びキトサン;カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、6−アミノ−6−デオキシセルロース及びO−エチルアミンセルロースなどの誘導体化セルロース;ヒドロキシル化デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、ヒドロキシエチルデンプン、カラゲナン、アルギニン酸、及びアガロース;フィコール及びカルボキシメチル化フィコールなどの合成多糖類;ポリ(アクリル酸)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(アクリル酸エステル)、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(マレイン酸)、ポリ(マレイン酸無水物)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(エチル−コ−酢酸ビニル)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルクロロ酢酸)、アミノ化ポリ(ビニルアルコール)、及びそれらのブロックコポリマーなどのビニルポリマー;直鎖、櫛形又は高分岐ポリマー及びデンドリマー、例えば分岐PAMAM−デンドリマーなどのポリマー主鎖を含むポリエチレングリコール(PEG)又はポリプロピレングリコール又はポリ(エチレンオキシド−コ−プロピレンオキシド);ポリリジン、ポリグルタミン酸、ポリウレタン、ポリ(エチレンイミン)、プルリオール(pluriol)などのポリアミノ酸;アルブミン、免疫グロブリン、及びウイルス様タンパク質(VLP)などのタンパク質、及びポリヌクレオチド、DNA、PNA、LNA、オリゴヌクレオチド及びオリゴヌクレオチドデンドリマーコンストラクト;混合ポリマー、すなわちポリマー、ブロックコポリマー及びランダムコポリマーの先の例の一又は複数からなるポリマーが挙げられる。
選択されるポリマーの性質は、性能を最適化するために改変でき、例えば長さ及び分岐度を最適化できる。更に、該ポリマーは化学的に修飾して様々な置換基を有しうる。該置換基は、更に化学的に保護され、及び/又は活性化され、ポリマーを更に誘導体化しうる。
好ましい一実施態様では、リンカーはデキストラン又はデキストランを含む混合ポリマーである。
他の好ましい実施態様では、リンカーは次の式(II)
Figure 0005721638
の分子の二以上の残基を含む化合物であり、
ここで、R及びRはNH及びOから選択され、Rはメチル、エチル、プロピル、CHOCH、及び(CHOCHから選択され、連続的に反復するエチルオキシ基は3を越えない。
好ましくは、リンカーLは、上記式の少なくとも二つの残基を含み、ここでR1及びRは双方ともNHであり、RはCHOCHである。好ましくは、Lは、次の式(III)
Figure 0005721638
の一又は複数の単位を含み、ここで、nは1から10の整数であり、(B)は分岐点である。この式のL分子及びその合成は、出典明示によりここに援用される国際公開第2007/015168号に詳細に記載されている。
「分岐点」なる用語は、分岐、例えば同じポリマーの側鎖、又は他の分子が結合されうるポリマー分子中の点(ポイント)を意味する。一実施態様では、分岐点(B)は原子であり得、他の実施態様では、分子Y及びZがLに直接的に又は間接的に、例えばY又はZの官能基を介して(つまり直接的に)、又は例えばアミノ酸、例えばシステイン、リジン等の小二官能性分子を介して(つまり間接的に)コンジュゲートされうる。
例えば標識のような異なった化学物質とポリマーをコンジュゲートさせる方法は当該分野でよく知られており、本発明のコンジュゲートを作製するために使用することができる。例えば、ポリマーはビニルスルホンで活性化され、検出可能な標識及び式(II)の分子と混合されてポリマーコンジュゲートが形成されうる。他の実施態様では、アルデヒドをポリマー、例えばデキストランを活性化させるために使用することができ、これをついで検出可能な標識及び式(II)の分子と混合する。ポリマーコンジュゲートを調製する更に他の方法は、成分を一緒にカップリングさせるためにいわゆる官能基選択的カップリングスキームを使用することによるもので、例えば分子はチオール改変ポリマー骨格に共有的にカップリングさせる前にチオール反応性マレイミド基で誘導体化されうる。幾つかの他の実施態様では、式(I)の分子及び検出可能な標識は、リンカーグルーピングを介してポリマーに結合されうる。この方法の例は、グルタルジアルデヒド、ヘキサンジイソシアネート、ジメチルアピミデート、1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼンなどのホモ二官能性リンカーグルーピング、例えばN−γ−マレイミドビチロロキシ(maleimidobytyroloxy)スクシンイミドエステルのようなヘテロ二官能性架橋バインダー、及び1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドなどのゼロレングス架橋バインダーの使用を含む。
L30の一又は複数の単位を含む分子の誘導体化法は、出典明示によりここに援用される国際公開第2007/015168号に詳細に記載されている。
L30反復、例えばL60(2×L30反復)、L90(3×L30反復)、L150(5×L30反復)を含む例示的なコンジュゲートは実施例に記載し、図1(3)に示す。
コンジュゲート分子の使用
本発明のコンジュゲート分子は、有利には、試料中のペルオキシダーゼ活性の検出に使用されうる。
ペルオキシダーゼ酵素、例えば西洋わさびペルオキシダーゼは本発明のコンジュゲート分子を基質として使用し、他の基質3,3’ジアミノベンジジン及び過酸化物化合物の存在下でコンジュゲートの水溶性分子を水不溶性に転換する。これは、コンジュゲート固体支持体の沈殿物(沈着物)の形成として観察され得、又はそれは清澄な溶液の濁りとして検出され得、沈殿物は溶液中に懸濁する。ペルオキシダーゼ酵素が固体支持体に固定される場合には、沈着物の形成はペルオキシダーゼ活性を含むこの支持体の部位に向かう。固体支持体上の沈着物又は溶液中の懸濁沈殿物は、例えば眼での観察によって直接的に、又は検出手段の使用によって、例えば沈殿したコンジュゲート分子の検出可能な標識を検出することによって、検出されうる。
試料中に存在するペルオキシダーゼ活性は、それ自体が、記載されたコンジュゲート分子を用いる方法による検出の標的でありうる。ある実施態様では、検出の標的は、それ自体はペルオキシダーゼ活性を有していない物の分子でありうる。これらの実施態様では、標的分子又は物はペルオキシダーゼ活性で最初に標識されて、本発明によって検出可能にされなければならない。本発明の文脈において「標的」なる用語の意味は以下のセクションで検討する。
1.検出の方法
一態様では、本発明は、試料中のペルオキシダーゼ活性の検出方法において、
I. ペルオキシダーゼ活性を有すると思われる試料を、
d)本発明のコンジュゲート
a)3,3’ジアミノベンジジン、及び
b)過酸化物化合物
を含有する水溶液中でインキュベートし、それによって化合物の沈殿物を形成し;
II. 試料中の化合物の沈殿物を検出し、それによって試料中のペルオキシダーゼ活性を検出する
ことを含んでなる方法に関する。
他の態様では、本発明は、試料中の標的が、例えばペルオキシダーゼ活性を持つ物、生物学的マーカー等であり、上記標的又は試料が固体支持体に固定される方法において、
a.ペルオキシダーゼ活性を有する一又は複数の結合剤と共に標的を含むと思われる試料をインキュベートし、ここで、上記一又は複数の結合剤はひょうてきに直接的又は間接的に結合可能で、その少なくとも一つがペルオキシダーゼ活性を含む一又は複数の結合剤及び標的を含む複合体を形成し;
b.(i)の試料を。
i.3,3’ジアミノベンジジン、
ii.過酸化物化合物、及び
iii.コンジュゲート
を含有する水溶液中でインキュベートし
c.沈着したコンジュゲートを検出し、それによって標的を検出する
工程を含んでなる方法に関する。
本発明の検出方法の実施態様を以下に検討する。
試料
「試料」なる用語は、残りの材料がどのようであるか又はどのようにあるべきかを示すある量の材料を意味し、例えば生物学的、化学的、環境的材料の試料、例えば体組織の試料、食物の試料、土壌の試料である。一実施態様では、試料は生物学的試料である。
生物学的試料は次のように例示されうる:
1.懸濁細胞及び/又は細胞片を含む試料、例えば血液試料、クローン化細胞懸濁物、体組織ホモジネート等;
2.動物の身体の無傷の又は損傷した細胞、体組織、スメア又は液又は腫瘍の試料、例えば生検試料;これは新鮮な組織試料か、又は保存された組織試料、例えばホルマリンで固定されパラフィン包埋された組織試料でありうる;
3.生きた生物体の試料、例えば動物、植物、細菌、真菌等を含む媒体の試料;
4.ウイルス粒子、その細片、又はウイルス産物、例えばウイルス核酸、タンパク質、ペプチド等を含む体スメア;
5.細胞小器官を含む試料;
6.天然又は組換え生物学的分子を含む試料、例えば血漿試料、条件細胞培養培地等。
化学試料の例は、限定されないが、化学的化合物のライブラリー、例えばペプチドライブラリーの試料を含む。環境試料の例は、限定されないが、土壌、水又は空気試料及び食物試料を含む。
試料は一実施態様では固体支持体上に固定され得、例えば体組織資料はガラス又はプラスチックスライドに固定され;生物学的分子を含む無細胞試料はニトロセルロース膜に固定される等である。「固体支持体」なる用語は、ニトロセルロース膜、ガラススライド等の任意の固形の水不溶性材料片を意味する。支持体は一実施態様では一分子層厚の膜又は複数の分子層の材料片、例えばプラスチック又はガラスでありうる。この実施態様における標的は支持体の表面に固定される。他の実施態様では、固体支持体は三次元構造、例えばゲルブロック又は繊維のメッシュでありうる。この実施態様では、標的は構造内で固定される。一実施態様では、固体支持体は細胞膜、例えば細胞膜である。「固定される」なる用語は、試料又は標的が支持体上又は支持体内において移動可能ではなく、又は非常に限られた度合いまで移動可能である。
試料を固定するのに適切な支持体の例は、限定しないが、合成ポリマー支持体、例えばポリスチレン、ポリプロピレン、置換ポリスチレン、例えばアミノ化又はカルボキシル化ポリスチレン;ポリアクリルアミド;ポリアミド;ポリ塩化ビニル;ガラス;アガロース;ニトロセルロース;ナイロン;ポリフッ化ビニリデン;表面改質ナイロン等々を含む。本発明は、ここに記載された条件下で化学的に不活性である固体支持体に関し、つまり、選択された支持体は該方法による検出の結果に如何なる主要な影響も有さないであろう。従って、例えばIHC、ELISA、ブロット法等の選択されたアッセイ形式に適合する試料又は標的の固定化に適切な任意のそのような不活性な支持体を選択することができる。
一実施態様では、試料はそれ自体固体であり得、例えばホルマリン固定固体組織(つまり、血液試料ではない)及び/又はパラフィン包埋組織試料、例えば固形腫瘍のホルマリン固定パラフィン包埋試料、皮膚、肝臓、乳房、肺等の試料でありうる。この実施態様では、試料自体は固定化された標的を含む固体支持体として説明されうる。
標的
「標的」なる用語は、特定の物理的及び機能的特徴によって特徴付けることができる(試料中に存在すると思われる)興味ある物を意味する。本発明の文脈において、「標的」なる用語は、その物の個々の単一の各単位ではなく、試料中に存在するその物の実質的に類似の実体の全プールに関する。本文脈において、「実質的に類似」なる用語は、プールの全ての実体が標的としてそれらを認識可能にする特徴を有していることを意味する。例えば、一実施態様では、標的は、試料中に存在するタンパク質で試料中のそのタンパク質の全ての分子を含むものであり得;他の実施態様では、標的は分子複合体又は構造で試料中のその種の全ての分子複合体又は分子構造を含むものであり得;他の実施態様では、標的はウイルス粒子又は細菌で試料のウイルス粒子又は細菌の全集団を含むものでありうる。よって、標的なる用語は試料中の特定の一種の複数の単位に関する。よって、ここに記載された方法は、標的の個々の単一単位、例えば単一分子を可視化するのではなく、分子標的の複数の単一単位、つまり試料中の標的分子の全プールを可視化することに関することが理解される。
医療診断分野において、生物学的な物、例えば分子、分子複合体、構造、粒子又は生物は、しばしば細胞型、組織、細胞構造、生理的条件等々の特徴に関連し、治療標的又は特定の疾患の特徴的な分子的特徴を指摘するために「生物学的マーカー」と称される。本発明のある実施態様では、「標的」なる用語は「生物学的マーカー」なる用語と交換可能に使用され、特定の細胞型、組織、生理的条件等に特徴的な分子、分子複合体、構造又は粒子に関する。そのような生物学的マーカーの非限定的な例には、限定しないが、特定のヌクレオチド配列、タンパク質又は他の生物学的分子、例えば炭水化物又は脂質、染色体又は膜構造、ウイルス、細菌、微生物等を含む。
一実施態様では、標的はポリペプチド、核酸、炭水化物、脂質又はその誘導体、分子複合体、粒子、真核生物又は原核生物細胞又は微生物である。
化学的及び環境試料の標的は異なった汚染物質、毒素、戦争物質、分子ライブラリーのメンバー、有毒な産業廃棄物等でありうる。
標的は細胞の構造の一部、例えば細胞膜のタンパク質でありうる。この実施態様では、標的が固定される細胞構造は、本発明の文脈内において固体支持体の一種と考えうる。
好ましい一実施態様では、標的は癌に関連する生物学的マーカー、例えば遺伝子又はその癌関連産物、例えばホルモン及び増殖因子及びそのレセプター、細胞接着分子シグナル伝達分子、細胞周期調節分子等の核酸及びポリペプチド、例えば群:PDGF、VEGF、TGF、HGF、FGF又はEGF、そのレセプター及びシグナル伝達分子、遺伝子及びその産物で、JAK/STAT経路又はAkt1/PKB細胞生存経路、又は5−FU経路に関連したもの、エストロゲンレセプターERとその遺伝子(ERS1)等である。
一実施態様では、標的は試料中に存在するペルオキシダーゼ酵素である。
標的部位
本発明の文脈における「標的部位」なる用語は、標的及びペルオキシダーゼ活性を含む固体支持体の部位又は固体試料、例えば固形組織試料の部位を意味する。一実施態様では、標的部位は、ペルオキシダーゼ活性で標識された例えば分子、ウイルス、微生物等の標的を含む試料の部位又は固体支持体の部位であり得、つまり標的はそれ自体はペルオキシダーゼ活性を有していないが、上記活性は標的に直接的に又は間接的に関連していた。ペルオキシダーゼ活性は、上記標的に対するペルオキシダーゼ酵素の部分の直接的なコンジュゲーションを介して標的に関連されうる(本発明の文脈における「部分」は、分子の機能的部分、例えば上記ペルオキシダーゼの酵素活性を可能にするペルオキシダーゼ酵素の一部を意味する)。あるいは、ペルオキシダーゼ活性は標的に間接的に、例えばペルオキシダーゼ活性含有結合剤の標的への結合を介して、関連させられうる。
一実施態様では、標的はペルオキシダーゼ酵素自体であり得、従ってこの酵素を含む固体試料の部位又は固体支持体の部位が本発明の標的部位である。
本発明によれば、コンジュゲート分子は、コンジュゲートが環境中の標的分子の存在をその標識に関連するシグナルを直接的又は間接的に発することにより本発明の条件下でレポートする点で標的を検出することを可能にする。
インキュベーション
ある実施態様では、試料、標的、標的部位、沈着コンジュゲートは異なった媒体中でインキュベートされうる。
「インキュベートする」なる用語は、試料又は標的又は結合剤との標的の複合体が、
所定の期間、媒体中に、例えば標的と特異的に相互作用する特定の試薬、例えば標的に直接的に又は間接的に結合可能な結合剤等を含有する媒体中に維持されることを意味する。該期間は10秒から3分まで変動し得、又はより長い期間、例えば5−10分、10−20分、40−60分、1−2時間又はそれ以上、例えば一晩続く。インキュベーションは、異なった実施態様、例えば検出される標的分子のタイプ及び/又は検出に使用される結合剤及び/又はレポーターのタイプ等に応じて、異なった温度で実施されうる。ある実施態様では、「インキュベートする」なる用語は、試料が特異的結合剤を欠く媒体中でインキュベートされる条件で通常使用され、試料から特定の薬剤を除去するのに役立つ「洗浄」なる用語と交換可能に使用されうる。
殆どの実施態様における本発明は、10秒から20分の範囲内のインキュベーション時間に関する。
結合剤
「結合剤」なる用語は、標的に直接的又は間接的に結合しうる分子を示し、ここで、「直接的」なる用語は、結合剤が標的に対して親和性を有しており、標的を特異的に認識し、それと相互作用し、それに結合しうることを意味し、「間接的」なる用語は、結合剤は標的に対して特異的な親和性を有していないが、標的に関連する物質とそのような親和性を有しており、該物質に特異的に結合可能であることを意味する。標的に直接結合可能である結合剤はここでは「第一結合剤」と言う。標的に間接的に結合可能な結合剤はここでは「第二結合剤」と言う。第一結合剤は典型的には試料に接触させるために使用される。試料中に存在すると思われる標的に特異的に結合する分子から構成されうる。第二結合剤は、第一結合剤に結合する分子でありうる。
本発明に係る検出システムは他の結合剤、例えば第三、第四等の結合剤を含みうる。これらの結合剤は、沈着されたレポーター分子によって構成される標識の認識のために使用されうる。このような結合剤の使用は、標的に関連するシグナルを亢進することが望まれる場合、例えば試料中の標的が相対的に低い量の場合に、特に有利である。
本発明に係る第一、第二及び更なる結合剤は特異的結合対のメンバーでありうる。
多くの異なった特異的結合対が当該分野で知られており、これらは互いに対して相互の親和性を有し、互いに特異的に結合可能である2つの異なった分子の対である。本発明の実施に使用するのに適した特異的結合対のメンバーは免疫又は非免疫タイプのものでありうる。
非免疫特異的結合対は、互いに特異的に結合する成分が互いに相互の親和性を共有するが、それらは抗体ではない系を含む。例示的な非免疫性結合対は、ビオチン-アビジン又はビオチン-ストレプトアビジン、葉酸−葉酸結合タンパク質、相補的核酸、レセプター−リガンド等である。本発明はまた互いに共有結合を形成する非免疫性結合対を含む。例示的な共有結合対としては、マレイミド及びハロアセチル誘導体などのスルフヒドリル反応性基、及びイソチオシアネート、スクシンイミジルエステル、スルホニルハロゲン化物などのアミン反応性基、及び3−メチル−2−ベンゾチアゾリノンヒドラゾン(MBTH)及び3−(ジメチル−アミノ)安息香酸(DMAB)などのカプラー色素等を含む。
免疫特異的結合対は、抗体/抗体系又はハプテン/抗ハプテン系又は抗原/抗体系が例示されうる。一実施態様では、免疫特異的結合対は互いに親和性を有する二以上の抗体分子を含む抗体/抗体結合対、例えば一次抗体が第一結合剤を表し二次抗体が第二結合剤を表す一次抗体及び二次抗体対、又は3又は4又はそれ以上の抗体メンバーを含む抗体系でありうる。他の実施態様では、免疫特異的結合対はハプテン/抗ハプテン系でありうる。例えば、第一結合剤はハプテンを含む分子、例えばハプテン標識一次抗体によって表され得、第二結合剤は抗ハプテン抗体によって表されうる。
「ハプテン」なる用語は、抗体が作製されうる単離エピトープと考えることができる小分子を意味し、ハプテン単独では動物に注射された場合、免疫応答を誘導しないが、担体(通常、タンパク質)にコンジュゲートされなければならない。ハプテンは小分子であるので、ハプテンの複数コピーが大きな分子、例えばタンパク質、ヌクレオチド配列、デキストラン等に結合されうる。ハプテンは、シグナルを増幅することが必要であるか又は有利であるアッセイ形式に対して便利な標識分子となりうる。よって、ハプテンの複数の結合コピーは、感度の向上、例えばシグナル強度の増加をもたらす。適切なハプテンの非限定的な例は、FITC、DNP、mycジゴキシゲニン、ニトロチロシンビオチン、アビジン、ストレプトアビジン及び例えばテトラメチルローダミン、テキサスレッド、ダンシル、Alexa Fluor488、BODIPY FL、ルシファーイエロー及びAlexa Fluor405/カスケードブルーフルオロフォアに対する抗色素抗体、又は米国特許出願公開第20080305497号に記載されたものを含む。
「抗体」なる用語は、ここで使用される場合、免疫グロブリン又はその部分を意味し、供給源、製造方法、及び他の特徴とは無関係に、抗原結合部位を含む任意のポリペプチドを含む。該用語は、例えば、ポリクローナル、モノクローナル、単一特異的、多重特異的、ヒト化、単鎖、キメラ、合成、組換え、ハイブリッド、変異、及びCDR移植抗体を含む。抗体の一部としては、尚も抗原に結合することができる任意の断片、例えば、Fab、F(ab’)、Fv、scFvを含みうる。抗体の由来は、製造方法とは無関係にゲノム配列によって定まる。
一次抗体は、ここで使用される場合、試料の標的分子に特異的に結合する抗体を意味する。ある実施態様では、一次抗体は重合されうる。一次抗体は、任意の温血種、例えば哺乳動物、鳥類に由来しうる。
二次抗体は、ここで使用される場合、一次抗体又は標的部位に沈着したハプテン、又は一次抗体又は他の結合剤に直接的もしくは間接的に結合されたハプテンに特異的に結合する抗原結合ドメインを有する抗体を意味する。
三次抗体は、ここで使用される場合、二次抗体又は二次抗体に結合されたハプテン又は二次抗体にコンジュゲートされたポリマーに結合されたハプテン、又は標的部位に沈着したハプテンに特異的に結合する抗原結合ドメインを有する抗体を意味する。
場合によっては、抗体は、二次抗体及び三次抗体の両方として機能しうる。
一次抗体、二次抗体及び三次抗体を含む本発明で使用される抗体は、任意の哺乳動物種、例えば、ラット、マウス、ヤギ、モルモット、ロバ、ウサギ、ウマ、ラマ、ラクダ、又は任意の鳥類種、例えば、ニワトリ、アヒルから誘導されうる。任意の哺乳動物又は鳥類種から誘導されるとは、ここで使用される場合、特定の抗体をコードする核酸配列の少なくとも一部が、特定の哺乳動物、例えば、ラット、マウス、ヤギ、もしくはウサギ又は特定の鳥、例えば、ニワトリ、アヒルのゲノム配列に由来することを意味する。抗体は、任意のアイソタイプ、例えば、IgG、IgM、IgA、IgD、IgE又は任意のサブクラス、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4でありうる。
ある実施態様では、一次抗体は、生物学的試料を構成する細胞によって発現される生物学的マーカーに特異的に結合しうる抗原結合領域を含む。該マーカーは、細胞表面上又は細胞膜内、すなわち、細胞内部、例えば、細胞質内、核内、小胞体内に発現されうる。ある実施態様では、生物学的マーカーは細胞から分泌され、よって液中、例えば、細胞培養培地中、血中又は血漿中に存在する。
ある実施態様では、二次抗体は、一次抗体、例えば、一次抗体の定常領域に特異的に結合する抗原結合領域を含む。ある実施態様では、二次抗体はポリマーにコンジュゲートされる。所定の実施態様では、ポリマーは2−20の二次抗体、例えば5−15の二次抗体とコンジュゲートされる。他の実施態様では、ポリマーは1−10の二次抗体、例えば2、3、4、5、6、7、8、又は9の二次抗体とコンジュゲートされる。
ある実施態様では、三次抗体は、二次抗体、例えば、二次抗体の定常領域に特異的に結合する抗原結合領域、又は二次抗体に結合されたハプテン又は二次抗体にコンジュゲートされたポリマーを含む。ある実施態様では、三次抗体はポリマーにコンジュゲートされる。幾つかの実施態様では、ポリマーは1−20の三次抗体にコンジュゲートされる。他の実施態様では、ポリマーは1−5の三次抗体、例えば2、3、又は4の三次抗体にコンジュゲートされる。
本発明の方法及び組成物に使用されうる抗体は、モノクローナル抗体及びポリクローナル抗体、遺伝子操作抗体、例えば、キメラ、CDR移植及びファージディスプレイ又は代替技術を用いて作製された人工的に選択された抗体を含む。
抗体を製造するための様々な技術が記載されており、例えば、出典明示によりここに援用されるKohler及びMilstein, (1975) Nature 256:495;Harlow及びLane, Antibodies: a Laboratory Manual、(1988)(Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, NY)を参照のこと。組換え抗体分子の調製のための技術は、上記文献に記載され、また例えば欧州特許出願公開第0623679号;同第0368684号;及び同第0436597号にも記載されている。抗体を組換え的に又は合成的に製造することができる。抗体をコードする核酸をcDNAライブラリーから単離することができる。抗体をコードする核酸はファージライブラリーから単離することができる(例えばMcCafferty等 1990, Nature 348:552, Kang等 1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:4363; 欧州特許第0589877B1号を参照)。抗体をコードする核酸は、既知の配列の遺伝子シャフッリングによって得ることができる(Mark等 1992, Bio/Technol. 10:779)。抗体をコードする核酸は、インビボ組換えによって単離することができる(Waterhouse等 1993, Nucl. Acid Res. 21:2265)。本発明の方法及び組成物に使用される抗体はヒト化免疫グロブリンを含む(米国特許第5585089号, Jones等 1986, Nature 332:323)。
抗体は、毒素または標識、例えば検出可能な物質などのエフェクタータンパク質を含む改変された抗体であり得る。
本発明の一実施態様では、抗体は抗体のFab領域によって表される。
他の実施態様では、結合剤は、非免疫特異的結合対、例えば相補的ヌクレオチド配列対、又は相互親和性を有する二つの核酸アナログ分子の対のメンバーでありうる。
核酸核酸又は核酸アナログ分子、例えばDNA分子、RNA分子、PNA分子を含む結合剤は、例えば核酸標的の検出に有用でありうる。
核酸配列は化学的に又は細胞中で組換え的に生産されうる(例えばSambrook等 (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2版 Cold Spring Harbor Pressを参照)。ある実施態様では、結合剤はペプチド核酸(PNA)からなる。ペプチド核酸は、通常DNA及びRNA内に存在するデオキシリボース又はリボース糖骨格がペプチド骨格で置き換えられた核酸分子である。PNAの作製方法は、当該分野で知られている(例えば、Nielson、2001、Current Opinion in Biotechnology 12:16を参照)(出典明示によりここに援用される)。他の実施態様では、結合剤はロックド核酸(LNA)からなる(Sorenson 等 2003、Chem. Commun. 7(17):2130)。
結合剤は、ある実施態様では、特定のストリンジェンシー条件下で、生物学的試料中の標的配列、例えば、ゲノムDNA配列又はmRNA配列などの核酸配列に特異的にハイブリダイズする少なくとも一つの配列を含みうる。ここで使用される場合、「ストリンジェント条件下でのハイブリダイゼーション」なる用語は、互いに有意に相補的なヌクレオチド配列が互いに結合されたままであるハイブリダイゼーション及び洗浄のための条件を記述することを意図する。該条件は、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85−90%相補的な配列が互いに結合されたままであるようなものである。相補的である割合は、Altschul等 (1997) Nucleic Acids Res. 25:3389-3402(出典明示によりここに援用される)に記載されているようにして決定される。
ストリンジェンシーの特定の条件は、当該分野で知られており、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons,Inc. (Ausubel等 1995編)、セクション2、4及び6 (出典明示によりここに援用する)に見出すことができる。また、具体的なストリンジェント条件は、Sambrook等 (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版 Cold Spring Harbor Press、第7、9及び11章(出典明示によりここに援用する)に記載されている。ある実施態様では、ハイブリダイゼーション条件は、高ストリンジェンシー条件である。高ストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件の一例は、65〜70℃で4×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中でのハイブリダイゼーション、又は42〜50℃で4×SSC+50%ホルムアミド中でのハイブリダイゼーション後、65〜70℃で1×SSC中での一又は複数回の洗浄である。ハイブリダイゼーション及び/又は洗浄バッファーに、更なる試薬、例えば、ブロッキング剤(BSA又はサケ精子DNA)、界面活性剤(SDS)、キレート化剤(EDTA)、Ficoll、PVP等を添加してもよいことは理解されるであろう。
ある実施態様では、結合剤は中ストリンジェント条件下で試料中の標的配列にハイブリダイズしうる。ここで使用される中ストリンジェンシーは、例えばDNAの長さに基づいて当業者によって容易に決定され得る条件を含む。例示的な条件は、Sambrook等. Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版 第1巻、第1.101−104、Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)(出典明示によりここに援用する)に記載されており、5×SSC、0.5%SDS、1.0mMのEDTA(pH8.0)の予備洗浄液、42℃で50%ホルムアミド、6×SSCのハイブリダイゼーション条件(又は42℃で50%ホルムアミド中シュタルク溶液等の他の同様のハイブリダイゼーション溶液)、60℃、0.5×SSC、0.1%SDSの洗浄条件の使用を含む。
ある態様では、結合剤は、低ストリンジェント条件下で試料中の標的配列にハイブリダイズする。低ストリンジェンシー条件は、ここで使用される場合、例えばDNAの長さに基づいて当業者によって容易に決定されうる条件を含みうる。低ストリンジェンシーは、例えば、35%ホルムアミド、5×SSC、50mMのTris−HCl(pH7.5)、5mMのEDTA、0.1%のPVP、0.1%のFicoll、1%のBSA、及び500μg/mlの変性サケ精子DNAを含む溶液中で、40℃で6時間のDNAの前処理を含みうる。ハイブリダイゼーションは、以下の改変を有する同じ溶液中で実施される:0.02%PVP、0.02%Ficoll、0.2%BSA、100μg/mlのサケ精子DNA、10%(wt/vol)硫酸デキストラン、及び5−20×10CPMの結合剤が使用される。試料は、ハイブリダイゼーション混合物中で18−20時間40℃でインキュベートされ、ついで、2×SSC、25mMのTris−HCl(pH7.4)、5mMのEDTA、及び0.1%SDSを含む溶液中で1.5時間55℃で洗浄される。洗浄溶液を新鮮な溶液で交換し、60℃で更に1.5時間インキュベートされる。
本発明の他の実施態様は、ペプチド配列、例えば異なったタンパク質由来のペプチド配列、例えば異なったタンパク質の核酸結合ドメイン、異なった細胞及び核内レセプター及びその誘導体のリガンドの断片であるか又はこれを含みうる結合剤に関しうる。そのような結合剤の幾つかの例は、抗体定常領域に結合可能な補体カスケードの古典経路のc1qタンパク質、MHC分子、例えばMHCクラスI及びMHCクラスII及び一般的でないMHC、特異的結合対を有する分子、例えば細胞シグナル伝達経路に関与する分子、例えばロイシンジッパードメインを有する分子、例えばfos/jun、myc、GCN4、SH1又はSH2ドメインを有する分子、例えばSrc又はGrb−2;免疫グロブリンレセプター、例えばFcレセプター;キメラタンパク質、つまり、二以上の特異的結合対の特徴を組み合わせるように操作されたタンパク質、例えばロイシンジッパーは抗体のFc領域に操作され得、SH2ドメインは抗体のFc領域において発現されるように操作されうる。他の実施態様では、置換可変ドメインを有する抗体のFc部分を含む融合タンパク質が操作されうる。しかしながら、これは、本発明の目的に対する結合剤として使用することができる物質の非限定的な例のほんのリストに過ぎない。結合剤はまた大きな生物学的分子のある種の構造単位に特異的に結合しうる小分子でもありうる。
一実施態様では、結合剤は抗体誘導体、好ましくは抗原結合ドメインFabによって表される。ある実施態様においてHRPの少なくとも一部とコンジュゲートされる一次及び/又は二次抗体のFab領域によって表される結合剤が、対応する全抗体結合剤よりも好ましい場合がある。そのような結合剤は全抗体結合剤よりもよりコンパクトな分子であり、これは、標的部位に近接したレポーターのより濃縮された沈着を得るのには有利である。これは標的の検出の精度に有益でありうる。これは、本発明の方法が細胞を含む生物学的試料中の標的分子、構造又は粒子の免疫組織化学的検出に使用される場合に特に有利な場合がある。そのような試料中の標的分祀の免疫染色は、使用される結合剤がHRPの部分にコンジュゲートしたFab分祀であるか又はそれらがFab領域とHRPを含む場合に特に鮮明である。HRPコンジュゲートFab結合剤を使用する他の利点は、これらの結合剤が相対的に小さいサイズであり、よってより大きな抗体ベースの結合剤が使用される場合には典型的には接近することが困難な生物学的試料中の隠れた又は遮蔽された標的への接近がより良好になるという点である。
本発明は標的に関連した検出シグナルの強い増幅をもたらすので、本発明の方法を使用するアッセイにおいて標的の検出に使用される結合剤の量は、従来技術の方法において常套的に使用される量と比較して有意に減少し得、例えば100−1000倍減少する。
試料中の標的の検出に使用される抗体の量は、抗体、標的、又は試料に非常に依存する。従って、この量は、各特定の場合に個々に定められなければならず、これは当業者に知られた常套手順である。しかしながら、本発明による標的の検出に使用される抗体の量を定めるならば、殆どの現在の免疫検出法によって必要とされる量と比較して1000倍まででありうる。標的に関連するシグナルの多重増幅の可能性、つまり最初に本発明のレポーターの沈着の工程において、ついで沈着したレポーターの標識工程においての増幅により、本発明の検出方法は、一次結合剤の親和性、つまり標的への親和性にあまり依存しないものになるが、これは標的への結合剤の弱い結合が検出されうるためである。
特定のシグナル、つまり関連した標的の増幅は、沈着工程を繰り返し、標的部位における沈着レポーターの量を増加させることにより更に増加させうる。例えば、本発明の方法の工程(ii)において沈着したレポーターは、ペルオキシダーゼ活性を有する結合剤によって特異的に認識されうる検出可能な標識を含み得;この試料は、同じ又は他のレポーター分祀を含む沈着媒体中で再びインキュベートされ得、よって部位関連沈着物が増加する。顕著なことに、このようにして、顕著な非特異的沈着なしに、例えば非標的部位なしに同じ又は固形支持体の領域において同じ標的部位に対してのレポーター沈着が50試行まで実施されうる。述べたように、沈着の第二及び更なる試行で沈着されるレポーター分子は同じレポーターであり得、つまり最初の試行のものと同じであり、又はそれは異なったレポーター分子でありうる。この第二又は更なるレポーター分子は、より強いシグナルを生じうるか又は増加した量の検出可能な標識を含みうる分子であり得;このようにして、標的部位に関連したシグナルは代わりに又は/及び更に亢進されうる。
従って、該方法は検出手順の柔軟性と固体支持体に固定された非常に広範な試料における標的の再現性のある検出をまたもたらす。該方法は、分子標的の非常に鮮明で特異的な免疫化学的標識化をもたらし、よって試料内容物の解釈及び定量を容易にするので、組織学的試料のような試料に挑む場合における標的の免疫化学的検出に非常に有利である。
ペルオキシダーゼ活性
「ペルオキシダーゼ活性」なる用語は、次式の反応を触媒する酵素活性に関する:
ROOR’+電子供与体(2e)+2H→ROH+R’OH
ペルオキシダーゼ活性を有する酵素はここでは「ペルオキシダーゼ」又は「ペルオキシダーゼ活性を持つ酵素」と呼ばれる。多くのペルオキシダーゼに対して、最適な基質は過酸化水素であるが、他のものは有機過酸化物のような有機ヒドロペルオキシドでより活性である。電子供与体の性質は酵素の構造に非常に依存し、例えば西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)/EC1.11.1.7)は電子供与体及び受容体の双方として広範な有機化合物を使用することができる。HRPは接近可能な活性部位を有しており、多くの化合物が反応部位に達しうる。
ペルオキシダーゼ活性は、結合剤の分子に直接的に又は間接的に結合しているペルオキシダーゼ酵素の分子、又は酵素活性と関連した酵素の断片、例えばペルオキシダーゼ分子の全サイズの51%から99.9%、又は51%未満によって表されうる。
本発明の結合剤は一又は複数のペルオキシダーゼ部分に直接的又は間接的にコンジュゲートされうる(本文脈における「部分」なる用語は、ペルオキシダーゼの全分子又はペルオキシダーゼ酵素活性を可能とする上記分子の部分を意味する)。第一及び/又は第二結合剤の双方又は何れかの分子は、ペルオキシダーゼの一又は数個の機能的に活性な部分とコンジュゲートされうる。一実施態様では、第一結合剤の少なくとも一つの分子は一又は複数のペルオキシダーゼ部分とコンジュゲートされうる;他の実施態様では、第二結合剤の少なくとも一つの分子は一又は複数のペルオキシダーゼ部分とコンジュゲートされうる第三及び更なる結合剤の分子もまたペルオキシダーゼとコンジュゲートされうる。「直接的にコンジュゲートされる」なる用語は、酵素部分が化学結合を介して結合剤の分子に結合されることを意味する。「間接的にコンジュゲートされる」なる用語は、結合剤と一つの化学結合を、ペルオキシダーゼと他の化学結合を有するリンカー分子を介して結合剤の分子に結合されることを意味する。リンカー分子の実施態様を以下に検討する。酵素部分をコンジュゲートさせる方法は当該分野でよく知られている。
一実施態様では、ペルオキシダーゼの部分は、HRPの部分、例えば全HRP分子又はHRP酵素活性を可能にするその断片であり、また酵素活性を有するHRPの一部を含む組換えタンパク質等でありうる。他の実施態様では、ペルオキシダーゼは大豆ペルオキシダーゼ(SP)でありうる。
ペルオキシダーゼ活性を有する酵素を含む結合剤の非限定的な例は、一次又は二次抗体分子又はその誘導体、例えば完全長HRPの一又は複数の部分とコンジュゲートされたFab、及びHRPとコンジュゲートされた核酸結合剤でありうる。このような結合剤は標的分子に直接的に又は間接的に結合し得、それによってペルオキシダーゼ活性を有する酵素を含む結合剤の一又は複数の分子をそれぞれが含む複合体を形成する。
一実施態様では、結合剤は、結合剤に直接的に結合している一、又は二又はそれ以上のペルオキシダーゼ部分を含むコンジュゲート、例えば一又は複数のHRP部分に結合した抗体分子である。他の実施態様では、結合剤は、間接的に結合剤に結合しているペルオキシダーゼの二以上の機能的部分を含むコンジュゲート、例えば抗体の一又は複数の分子と一又は複数のHRP部分が独立して骨格ポリマーに連結しているコンジュゲート、つまり、ペルオキシダーゼ活性を持つ酵素が結合剤、つまり抗体に間接的に結合している結合剤である。結合剤の分子当たりのHRPの数は1から10又は更に高くと変動し得、例えば20−5−又は更に高い。
ある実施態様では、結合剤の小コンジュゲート分子、例えば単一の抗体分子又は例えばHRPのようなペルオキシダーゼの一、二、又はそれ以上の部分とコンジュゲートしたそのFab領域が好ましい場合がある。そのような結合剤は相対的にコンパクトな分子であり、この特徴は、細胞を含む複雑な生物学的試料中において隠れた標的、例えば個々の単一の標的分子、構造又は粒子を検出するのに有利な場合がある。他の実施態様では、結合剤及び何十から何百の酵素部分を含む大きなコンジュゲートが好ましい場合がある。そのような結合剤は、例えば、非常に速い標的の検出が関連しているか又は個々の標的部位について大きな沈着物を得ることが望ましい場合に有利な場合がある。
ペルオキシダーゼ活性を含む固体支持体の部位はここでは「標的部位」と称される。一実施態様では、標的部位は、ペルオキシダーゼ活性、例えばペルオキシダーゼ酵素の部分を含み、これは固体支持体上又はその内部に直接的に固定されている。他の実施態様では、標的部位は、固体支持体上又はその内部に間接的に固定されるペルオキシダーゼ活性を含み、つまり、ペルオキシダーゼ酵素の部分が、固体支持体上又はその内部に固定されている標的に直接的に又は間接的に結合可能な結合剤に連結している。後者は本発明の標的部位の非限定的な例である。
インキュベーション媒体
標的を含む試料は異なったインキュベーション媒体中でインキュベートされうる。
「インキュベーション媒体」なる用語は、本文脈においては、溶液の特定の化合物と試料間で所望の反応が起こることを可能にするために所定の時間(ここでは「インキュベーション時間」と称される)試料が維持される特定の化合物を含む溶液を意味する。
インキュベーション媒体中において試料を維持する/インキュベートする時間、つまりインキュベート時間は、およそ3秒からおよそ3分、例えば約10秒、20秒、30秒、1分、2分等、例えば3−10分、10−20分、20−40分、40−60分、1−2時間又はそれ以上、例えば一晩と実施態様に応じて変動しうる。一実施態様では、検出手順の全工程におけるインキュベート時間は同じ期間を持ち得、つまり、インキュベーション毎に1分、2分、3分、5分、10分等々が続きうる。他の実施態様では、インキュベート時間は一工程と他の工程とで変動し得、例えば結合剤を含む媒体中での試料のインキュベートは1分続き得、3’,3−ジアミノベンジジン(DAB)、レポーター、及び過酸化物化合物を含有する媒体中での試料のインキュベートは2分続き得、レポーター沈着物の検出のための媒体中での試料のインキュベートは5分続きうる等である。
インキュベートは、標的、結合剤、レポーター等のタイプに応じて、様々な温度条件で実施されうる。検出法は主として温度非依存性であるが、しかしながら、所望されるならば、温度をインキュベート時間を調節するために使用することができ、例えばより低い温度を使用してインキュベート時間を延長することができ、逆に、より高い温度を使用してインキュベート時間を短くすることができる。
該方法によれば、標的を含む試料は異なった薬剤と共に連続的にインキュベートされ、ここで、薬剤は水性媒体に溶解される。インキュベーション媒体の組成物は各インキュベーションの目的に応じて調節される。
本発明の方法の工程(i)では、試料は一又は複数の結合剤とインキュベートされる。従って、一態様では、本発明は標的の単一の単位に直接的に又は間接的に結合可能なペルオキシダーゼ活性を有する酵素を含む結合剤を含む媒体に関し、それによって標的部位を形成する。この媒体はここで「第一インキュベーション媒体」又は「標的インキュベーション媒体」と称される。
第一のインキュベーション媒体は、選択された結合剤が可溶性であり、標的単位に結合可能である任意の液体媒体、好ましくは水性媒体でありうる。基本的には、第一インキュベーション媒体は、4から9の範囲のpHを有する一又は複数の結合剤の緩衝水溶液である。ある実施態様では、第一インキュベーション媒体は有機又は無機塩を含みうる。無機塩は、例えば塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、リン酸ナトリウム、又は硫酸アンモニウムから選択されうる。有機塩は、例えば酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウム又はイミダゾール塩、例えばイミダゾール塩酸塩などから選択されうる。
第一インキュベーション媒体中の塩の量は、およそ10−3Mから飽和まで、例えばおよそ20mMから約200mM、又はおよそ50mMからおよそ500mMの範囲でありうる。好ましい一実施態様では、媒体は、およそ10mMから500mMの量の塩を含みうる。他の好ましい実施態様では、媒体は塩を含まない場合がある。
述べたように、典型的には、第一インキュベーション媒体のpH値は約4から約9まで変動し得、例えばpH3.5及びpH9.5の間、例えばpH5とpH7の間、pH5.5とpH6.5の間又はpH6.5と7.5の間、又はpH7とpH8の間、又はpH7.5とpH8.5の間、又はpH8とpH9の間でありうる。適切なバッファー能の任意のバッファーを使用することができ、例えばリン酸緩衝生理食塩水(PBS)及びイミダゾールバッファーである。他の適切なバッファーはGood, NE.等(1966) Hydrogen ion buffers for biological research. Biochem. 5(2), 467-477に見出すことができる。媒体のpH値は標的への結合剤の結合のために重要な場合がある;それは結合剤及び標的の性質に応じて最適化されうる。
ある実施態様では、第一インキュベーション媒体は、有機調整剤(「有機調整剤」なる用語は任意の非水溶媒を意味する)、例えばN−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、モノ−及びジエチレングリコール、スルホラン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ポリエチレングリコール(PEG)、プロピレングリコール等を含みうる。有機調整剤の量はおよそ1%からおよそ20%(v/v又はw/v)まで変動し得、又は幾つかの実施態様では、20%よりも高い場合がある。
ある実施態様では、第一インキュベーション媒体は、洗浄剤、例えばポリエチレングリコール−p−イソオクチルフェニルエーテル(NP−40)又は界面活性剤(例えばポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートに基づく界面活性剤(Tween)、ブロックコポリマーに基づく界面活性剤(プルロニック等)から選択される。洗浄剤の量は、約0.001%から約5%v/v又はw/vと変動しうる)等を含みうる。
ある実施態様では、第一インキュベーション媒体は、結合剤安定化剤、例えばウシ血清アルブミン又はデキストランを含みうる。安定化剤の量は0.01%から20%(w/v)まで変動しうる。
ある実施態様では、第一インキュベーション媒体は、イオンキレート剤(例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA)又はエチレンジアミンヒドロキシフェニル酢酸型キレート剤(EDHPA)等)を含みうる。キレート剤の量は、約10−6から約10−2Mまで変化しうる。
ある実施態様では、第一インキュベーション媒体は、非特異的結合部位、つまり標的を含まない固体支持体の部位を飽和させるための一又は複数の遮断剤を含みうる。異なった実施態様に対して適切な遮断剤の幾つかの非限定的な例は、デンハート液、ウシ血清アルブミン、脱脂粉乳等でありうる。
発明は標的、結合剤及びアッセイ形式の非常に多様な種を考慮するので、第一インキュベーション媒体の組成は変動し得、当該分野の知識を使用してそれぞれの特定の実施態様に対して調整されなければならない。第一インキュベーション媒体の幾つかの非限定的な例は実施例に記載する。
ある実施態様では、本発明は、沈着したコンジュゲートがこれらの部位における標的の存在についての情報を提供するコンジュゲートとなる標的部位にコンジュゲート分子を沈着させるための媒体に関する。この媒体はここでは「沈着媒体」又は「第二インキュベーション媒体」と交換可能に称される。
本発明の沈着媒体は液体媒体、好ましくは水性媒体である。
一実施態様では、沈着媒体は、
(i)レポーター;
(ii)過酸化物化合物、及び
(iii)3,3’-ジアミノベンジジン(DAB)
を含む、約4から約9の範囲のpHを有する緩衝水性媒体である。
他の実施態様では、沈着媒体は、
(i)レポーター及び
(ii)過酸化物化合物
を含む、約4から約9の範囲のpHを有する緩衝水性媒体である。
適切な緩衝能を有する任意のバッファー、例えばリン酸緩衝生理食塩水(PBS)及びイミダゾールバッファーが使用されうる。他の適切なバッファーは、Good, NE.等 (1966) Hydrogen ion buffers for biological research. Biochem. 5(2), 467-477に見い出すことができる。媒体のpH値は、レポーターを沈着させるのに必須であり得、レポーターの性質に応じて最適化されうる。
媒体は、有機又は無機塩を更に含みうる。
無機塩は、例えば塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、リン酸ナトリウム、又は硫酸アンモニウム等から選択されうる。
有機塩は、例えば酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウム又はイミダゾール塩、例えばイミダゾール塩酸塩等から選択されうる。
沈着媒体中の塩の量は、およそ10−3Mから飽和まで、例えばおよそ20mMからおよそ200mM、又はおよそ50mMからおよそ500mMの範囲でありうる。好ましい一実施態様では、媒体は、およそ10mMから500mMの量で塩を含みうる。別の好ましい実施態様では、媒体は塩を含まない場合がある。
沈着媒体は異なった実施態様では、
(i)有機調整剤(有機モディファイアー)、及び/又は
(ii)酵素増強剤(酵素エンハンサー)、及び/又は
(iii)鉄キレート剤、及び/又は
(iv)洗浄剤、及び/又は
(v)抗菌剤
を更に含みうる。
有機調整剤は、媒体中に約1%から約20%(v/v又はw/v)の量で存在しうるが、幾つかの実施態様では、より高濃度の有機調整剤が必要とされうる。有機調整剤は、例えばポリエチレングリコール(PEG)でありうる。他の例としては、限定されないが、本質的にC1−C4、つまり低級のアルコール、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、モノ−及びジエチレングリコール、スルホラン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)からなる群から選択される有機調整剤が含まれる。幾つかの実施態様では、ポリエチレングリコール(PEG)、例えばPEG2000を使用することが有利でありうる。これらの場合、媒体中のポリエチレングリコールの量は、約0.1%(v/v)から約20%(v/v)、例えば約1%(v/v)から約15%、例えば5−10%(v/v)で変動しうる。
「酵素増強剤」なる用語は、ペルオキシダーゼの触媒活性を亢進させる任意の化合物を意味する。このような酵素増強剤は、本質的にフェニルホウ酸誘導体及びニッケル又はカルシウムなどの二価金属イオンからなる群から選択されうる。酵素増強剤の量は、約10−7から約10−3Mで変化しうる。
鉄キレート剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)又はエチレンジアミンヒドロキシフェニル酢酸型キレート剤(EDHPA)でありうる。鉄キレート剤の濃度は、約10−6から約10−2Mで変化しうる。
洗浄剤は、ポリエチレングリコール−p−イソオクチルフェニルエーテル(NP−40)、ポリオキシエチルソルビタンモノラウレート(Tween)を基にした界面活性剤から選択される界面活性剤、又はブロックコポリマーを基にした界面活性剤(プルロニック等)から選択されうる。洗浄剤の濃度は、約0.001%から約5%で変化しうる。
本発明によれば、沈着媒体は安定な溶液である。本文脈における「安定」なる用語は、ペルオキシダーゼ媒介性コンジュゲート沈着のための反応媒体となる媒体の能力が、実質的な時間、本質的に変化しないままであることを意味し;例えば媒体は調製され、使用前に室温で少なくとも4時間維持されうる。沈着媒体はまた調製され、長時間保存されうる。媒体の貯蔵寿命を延ばすために、媒体を20℃以下、例えば4−10℃で保存し、及び/又は媒体に抗微生物化合物を添加することが有用でありうる。抗微生物化合物は、このような目的で一般的に使用される任意の抗微生物化合物、例えばアジ化ナトリウム、ProclinTM又はBronidox(登録商標)でありうる。
媒体中のレポーターの濃度は、コンジュゲートの性質に応じて、約10−10Mから約10−2Mと変動しうる。例えばコンジュゲートが放射性で、酵素又は特異的結合対のメンバーである場合は、約10−10Mから約10−6Mであり;例えばコンジュゲートが蛍光又は特異的結合対のメンバーである場合は、約10−9Mから約10−5Mであり;例えばコンジュゲートが色素原である場合は、約10−5Mから約10−2Mである。
本発明の媒体は過酸化物化合物を含む。過酸化物化合物は、tert−ブチルペルオキシド、ジtert−ブチルペルオキシド、過酢酸などの有機過酸化物から選択されうるか、又は過酸化水素尿素付加物などの過酸化水素の付加物でありうる。幾つかの実施態様では、過酸化水素(H)が好ましい過酸化物化合物でありうる。媒体中のHの量は、異なる実施態様では約1.5mMから150mMと変動し得、例えば約6mMから約100mM、約5mMから約50mM、約10mMから約15mM等である。
好ましい一実施態様では、沈着媒体中のHの量は5mMより多く、例えば5.1mMから65mM、例えば5.2mMと55mMの間、例えば5.3mMから45mM、例えば5.4mMと35mMの間、例えば5.5mMから25mM、例えば5.6mMから15mMである。
沈着媒体中のDABの量は、沈着媒体中のHの量に応じて変動しうる。ある実施態様では、DABは沈着媒体中に1mM未満であり、例えば0.25mMと0.85mMの間の量で存在し得、但しこの沈着媒体中のHの量は、5.5mMより高く、例えば5.6mMから56mMである。
好ましくは、沈着媒体中のDABの量は1.4mMより多く、例えば1.5mMと6mMの間である。DABのこの量は、その最も広い濃度範囲、つまり1.5mMから159mMの範囲でHを含む沈着媒体からコンジュゲート分子の特異的で豊富な沈着をもたらす。3mMから6mMのDABの量はコンジュゲート分子の最も特異的で豊富な沈着をもたらし、これが、例えば免疫組織化学検出におけるコンジュゲート沈着物の最終染色の鮮明度と強度の双方を担保する。しかしながら、1.5mMから3mMの範囲のDABの量もまた使用することができるが、但し、この量は、3mMから6mMの範囲内の量より更に曖昧であるが尚も強いシグナルをもたらし、これはある実施態様では低存在量の標的の検出に有利に使用されうる。そのような実施態様では、沈着したコンジュゲートで標的部位の飽和度を向上させるために、沈着媒体中における試料のインキュベーション期間を、多い量のDABで1分のインキュベーションと比較して、例えば3−5分まで、延長させることができる。しかしながら、述べたように、標的の最終染色の鮮明さは有意に低減するであろう。
沈着したコンジュゲートは、例えば標的部位から発せられる色又は蛍光を観察することによって直接的に検出することができ、又は沈着物は検出媒体を使用して間接的に検出することができる。従って、一態様では、本発明は、沈着したコンジュゲートを含む試料が沈着したコンジュゲートの検出可能な標識を検出するためにインキュベートされる媒体である検出媒体に関する。
検出媒体は、試料中のコンジュゲートの沈着物の標識、特に例えば顕微鏡観察を介して直接的には可視できない標識、例えば特異的結合対のメンバーである標識を検出し、及び/又は可視化することを可能にする任意の媒体でありうる。このようなコンジュゲート沈着物の可視化は沈着後の一又は複数の工程を使用して行うことができ、ここで、最初の工程は、例えば第三又は更なる結合剤(上述)のような、沈着物の検出可能な標識に特異的に結合可能な薬剤と共に(沈着コンジュゲートを含む)試料のインキュベーションを含みうる。
コンジュゲート検出媒体の組成物についての要件は標的検出媒体のものと同じである:選ばれる結合剤が媒体中で可溶性で、沈着したコンジュゲート/標的に結合可能でなければならない。従って、コンジュゲートの検出のためのインキュベーション媒体は、その実施態様を上述している標的インキュベーション媒体と同じか又は同様の組成物を有しうる。典型的には、それは、沈着コンジュゲートの検出可能な標識に結合可能な結合剤と上で検討した一又は複数の成分を含有する緩衝水溶液である。
一実施態様では、検出媒体は、例えば酵素基質溶液又はカラー発現溶液のようなコンジュゲート沈着物の可視化のための媒体である。この種の検出媒体は、当該分野のインストラクションに従ってそれぞれ特定の実施態様(つまり、沈着物に関連した検出可能な標識の性質)に対して選択される従来から知られている任意の適切な媒体でありうる。
本発明はまた洗浄媒体、例えば該方法の工程(i)と(ii)の間、工程(ii)と工程(iii)の間の洗浄媒体にも関する。典型的には、洗浄媒体は、洗浄工程に先立つ工程において試料のインキュベートに使用されたものと同じか又は類似の組成物の媒体であり、該洗浄媒体は活性成分、つまりインキュベーション工程の特定の薬剤、例えば結合剤、コンジュゲート分子等を欠く。
一実施態様では、本発明は内因性ペルオキシダーゼ活性をクエンチさせるための媒体に関する。この種の媒体は当該分野で常套的に使用されているこの目的に適した任意の媒体でありうる。
組成物
一実施態様では、本発明は本発明のコンジュゲート分子を含む組成物に関する。「本発明のコンジュゲート分子を含む組成物」なる用語は、例えば実施例の表1に述べられているような、本発明のコンジュゲート分子の合成の中間体を含む組成物をまた含む。
一実施態様では、組成物は本発明のコンジュゲート分子を含む水溶液である。本発明のコンジュゲート分子を含む水溶液の非限定的な例は実施例において上述した媒体でありうる。
一実施態様では、本発明のレポーターを含む組成物は本発明のキットオブパーツの一部である。
キットオブパーツ
本発明のキットオブパーツは試料中の標的を検出するためのキットオブパーツである。
本発明の方法は多様なアッセイ形式で多様な試料中の非常に多様な標的を検出するのに適しているので、本発明のキットオブパーツは多くの異なったアイテムを含みうるが、本発明の全てのキットオブパーツは本発明のコンジュゲート分子を含む組成物を含む。次は本発明のキットオブパーツの幾つかの非限定的な例示的実施態様である。
一実施態様では、キットオブパーツは、
(i)上述のものの何れかのようなコンジュゲートを含む組成物;及び
(ii)標的に直接的又は間接的に結合可能な一又は複数の結合剤で、結合剤はここに記載された任意の結合剤でありうるもの
を含みうる。
他の実施態様では、キットオブパーツは、
(i)上述のものの何れかのようなコンジュゲート;及び
(ii)DABを含む水組成物
を含みうる。
他の実施態様では、キットオブパーツは、
(i)コンジュゲート、又はコンジュゲートを含む組成物;場合によっては
(ii)DABを含む水組成物;
(iii)レポーターの検出可能な標識に特異的に結合可能な結合剤
を含みうる。
他の実施態様では、キットオブパーツは、
(i)上記実施態様のアイテム又は全てのアイテムのいずれか
(ii)レポーター沈着物の可視化手段
を含みうる。
適切な結合剤は上に詳細に記載されている。特に、一実施態様では、結合剤はアミノ酸配列、核酸配列又は核酸アナログ配列であるか又はこれらを含む。
特に一実施態様では、本発明のキットオブパーツの結合剤は、抗体又はその誘導体でありうるか又はこれらを含みうる。一実施態様では、抗体結合剤は抗体のF(ab)’1断片でありうるか又はそれを含みうる。F(ab)’1は一実施態様ではマウス抗体のものであり得、他の実施態様では、ウサギ抗体のものであり得、他の実施態様では、ブタ抗体又はヤギ抗体でありうる。述べた抗体種は本発明の結合剤として使用するのに適した抗体の単なる非限定的な例である。一実施態様では、抗体は酵素の部分、又は上述の検出可能な標識の何れか、例えばハプテンで標識される。結合剤は西洋わさびペルオキシダーゼHRP又は大豆ペルオキシダーゼ(SP)の少なくとも一部分を含みうる。一実施態様では、結合剤はHRP又はSPの二つの部分を含む。
他の実施態様では、結合剤は標識された又は未標識の核酸配列又は核酸アナログ配列でありうるか又はこれらを含みうる。
コンジュゲート沈着物の可視化のための手段は、沈着コンジュゲートに関連する特定の検出可能な標識の可視化に適している任意の手段である。コンジュゲート沈着物の可視化手段の実施態様は、標的の酵素標識化のための試薬、例えばHRP又はアルカリホスファターゼのような酵素、それらの基質及び基質溶液、コンジュゲートの標識に関連するシグナルの増強のための手段、例えばここに記載されたもの以外の増幅溶液を含む。
アッセイ形式
本発明の方法は非常に多様なアッセイ形式で実施されうる。そのようなアッセイ形式の幾つかの非限定的実施態様を以下に記載する。
細胞懸濁液の細胞に含まれる標的分子は、任意の適当なアッセイ形式、例えば、フローサイトメトリー(FC)、又はELISA、又は免疫組織化学(IHC)、又はインサイツハイブリダイゼーション(ISH)において上述の方法を用いて検出されうる。
一実施態様では、生物学的試料は、細胞の懸濁液でありうる。懸濁液中の細胞の標的分子又は構造は、FC、ELISA、IHC又はISHを用いて検出されうる。ELISA、IHC又はISHが検出に使用される場合、懸濁液の細胞が固体支持体、例えば、ELISAプレート又はICHスライドに結合させられる。
別の実施態様では、生物学的試料は、体組織の切片でありうる。このような試料の細胞の標的分子又は構造は、典型的にはIHC又はISHを使用して検出される。
IHC及びISHアッセイ形式は、通常、疾患状態の所定の形態学的インジケータの選択的染色又は生物学的マーカーの検出によって強調されるための、顕微鏡検査又は顕微鏡写真の作製のための適当な固体支持体、例えば、ガラススライド又は他の平坦な支持体に取付けた組織切片で行なわれる一連の処理工程を必要とする。よって、例えば、IHCでは、試料が個体から採取され、固定され、対象の生物学的マーカーに特異的に結合する抗体に曝露される。試料処理工程は、例えば、抗原回復、一次抗体への曝露、洗浄、(場合によってはHRP部分にカップリングされた)二次抗体への曝露、洗浄、及び一又は複数のHRP部分に連結された三次抗体への曝露を含みうる。洗浄工程は、任意の適当なバッファー又は溶媒、例えば、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、トリス緩衝生理食塩水(TBS)、蒸留水を用いて実施されうる。洗浄バッファーは場合によっては洗浄剤、例えば、Tween20を含みうる。
上記のように、組織学的試料には一般に2つのカテゴリーがある:(1)一般的にはアルデヒド系固定剤で固定されない新鮮組織及び/又は細胞を含む調製物、及び(2)固定され包埋された組織被検物、しばしば保管物質。
IHCアッセイ形式で標的の検出を実施する前に、予備検出手順が実施されることになる。これは、組織の切断及びトリミング、固定、脱水、パラフィン浸潤、薄片への切断、ガラススライド上へのマウント、ベーキング、脱パラフィン化、再水和、抗原回復、ブロック工程、一次抗体の適用、洗浄、二次抗体−酵素コンジュゲートの適用、及び洗浄の工程を含みうる。
ISHでは、試料を個体から採取し、固定し、相補的塩基対形成によって対象の核酸にハイブリダイズする核酸結合剤に曝露する。生物学的試料は、典型的には、DNA及びRNA、例えば、メッセンジャーRNAなどの検出可能な核酸を含む。DNA/RNAレベルの検出は、特定の遺伝子の発現のレベルを示し得、よって、細胞、組織、器官又は生物の状態(例えば疾患状態)を検出するために使用されうる。試料中の核酸は、典型的には変性されて結合部位を露出する。結合剤は、典型的には、DNAもしくはRNAなどの二本鎖もしくは単鎖の核酸、又はPNAなどの核酸アナログである。このような技術によって検出された関連する標的タンパク質又は核酸の量が、ついで、所定の予め決められた最低閾値より上かどうかを決定するために評価されるか、又は既知の標準と比較され、従って診断上関連するかどうかが評価される。ついで、必要に応じて、個体に適当な治療が計画されうる。
組織被検物を固定し包埋する多くの方法、例えば、アルコール固定及びホルマリン固定と続いてのパラフィン包埋(FFPE)が知られている。
固定剤は、細胞及び組織を再生可能な状態及び生存しているような様式で保存するために必要とされる。これを達成するため、組織塊、切片又はスメアを、固定剤液中に浸漬するか、又はスメアの場合は、乾燥させる。固定剤が細胞及び組織を安定化させ、それによりそれらを処理及び染色技術の苛酷さから保護する。
任意の適切な固定剤、例えば、エタノール、酢酸、ピクリン酸、2−プロパノール、3,3’−ジアミノベンジジン四塩酸二水和物、アセトイン(単量体の混合物)及び二量体、アクロレイン、クロトンアルデヒド(シス+トランス)、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、グリオキサール、重クロム酸カリウム、過マンガン酸カリウム、四酸化オスミウム、パラホルムアルデヒド、塩化第2水銀、トリレン−2,4−ジイソシアネート、トリクロロ酢酸、タングステン酸が使用されうる。他の例は、ホルマリン(水性ホルムアルデヒド)及び中性緩衝ホルマリン(NBF)、グルタルアルデヒド、アクロレイン、カルボジイミド、イミデート、ベンゾエキノン、オスミウム酸及び四酸化オスミウムを含む。
免疫組織化学的分析用の新鮮生検被検物、細胞学的調製物(接触調製物及び血液スメアを含む)、凍結切片及び組織は、一般に、エタノール、酢酸、メタノール及び/又はアセトンを含む有機溶媒中に固定される。
固定組織中での特異的認識を容易にするため、しばしば、被検物の前処理によって標的、すなわち、対象の生物学的マーカーを回復又はマスク除去し、大部分の標的の反応性を増大させることが必要である。この手順は、「抗原回復」、「標的回復」又は「エピトープ回復」、「標的アンマスキング」又は「抗原アンマスキング」と称される。抗原回復(抗原アンマスキング)の広範な概説は、Shi等 1997, J Histochem Cytochem, 45(3):327に見出すことができる。
抗原回復は、特異的検出試薬との相互作用への標的の利用可能性が最大化される様々な方法を含む。最も一般的な技術は、適切なバッファー中でのタンパク質分解酵素(例えば、プロテイナーゼ、プロナーゼ、ペプシン、パパイン、トリプシンもしくはノイラミニダーゼ)での酵素的消化、又はマイクロ波照射、水浴、スチーマー、通常のオーブン、オートクレーブ又は加圧調理器内での通常、EDTA、EGTA、Tris−HCl、クエン酸、尿素、グリシン−HClもしくはホウ酸を含有し、適切にpHを安定化させたバッファー中の加熱を使用する加熱誘導性エピトープ回復(HIER)である。洗浄剤は、エピトープ回復を増大させるためにHIERバッファーに添加されうるか、又は非特異的結合を低下させるために希釈培地及び/又はリンスバッファーに添加されうる。
抗原回復バッファーは、たいていは水性であるが、他の溶媒、例えば、水よりも高い沸点を有する溶媒を含んでいてもよい。これにより、常圧で100℃より上での組織の処理が可能になる。
加えて、信号雑音比は、異なった物理的方法、例えば、真空及び超音波の適用、又は試薬のインキュベーション前もしくはインキュベーション中での切片の凍結及び解凍によって増大されうる。
内因性ビオチン結合部位又は内因性酵素活性(例えば、ホスファターゼ、カタラーゼ又はペルオキシダーゼ)は、検出手順内の一工程として除去され得、例えば、内因性ビオチン及びペルオキシダーゼ活性は、ペルオキシドでの処理によって除去されうる。内因性ホスファターゼ活性は、レバミゾールでの処理によって除去されうる。内因性ホスファターゼ及びエステラーゼは加熱によって破壊されうる。
不活性タンパク質、例えばウマ血清アルブミン(HSA)、カゼイン、ウシ血清アルブミン(BSA)、及びオボアルブミン、ウシ胎児血清もしくは他の血清、又はTween20、Triton X−100、Saponin、BrijもしくはPluronicsなどの洗浄剤による非特異的結合部位のブロッキングが使用されうる。非標識型及び標的非特異的型の特異的試薬での組織又は細胞内の非特異的結合部位のブロッキングもまた使用されうる。
また、試料を調製し、浮遊技術を用いて標的分子を検出してもよい。この方法では、適切な容器、例えば、マイクロ遠心チューブ内で懸濁又は浮遊状態で組織切片を異なる試薬及び洗浄バッファーと接触させる。
組織切片を、例えば、「釣りフック様」装置、スパチュラ又はガラス環を用いて染色手順中、チューブから、異なる試薬及びバッファーを有するチューブに移してもよい。また、穏やかなデカンテーション又は真空吸引によって異なる試薬及びバッファーを交換することもできる。別法では、組織切片の入った容器をCorning「Netwells」(Corning)などの特殊な染色ネットに移し、組織切片を洗浄した後、次の染色工程のためにチューブに戻してもよい。
例えば、固定、抗原回復、洗浄、ブロック試薬とのインキュベーション、免疫特異的試薬及びペルオキシダーゼ媒介性レポーター沈着などの全ての工程は、組織切片を浮遊させたまま、又はネットに保持したまま行なわれる。レポーターの沈着後、組織切片をスライドに載せ、レポーターを検出し、スライドをカバースリップで覆った後、例えば、光学又は蛍光顕微鏡検査によって解析する。
ある実施態様では、組織切片は、該方法の手順(a)に従って免疫特異的試薬との重要なインキュベーション後にスライドにマウントされうる。ついで、検出方法の残りをスライドにマウントした組織切片について実施する。
該方法により検出可能であれば、生物学的マーカーは、試料、好ましくは生物学的試料中に存在する任意の分子又は構造、例えば、タンパク質、糖タンパク質、リポタンパク質、リンタンパク質、メチル化タンパク質もしくはタンパク質断片、例えばペプチド又は核酸、例えば、DNA、RNA、脂質、糖脂質、又は糖、多糖又はデンプンでありうる。生物学的マーカーは、生物学的試料の表面上で発現され得、例えば、膜結合でありうる。マーカーは、生物学的試料の内部、すなわち、細胞膜内、例えば、細胞質内、核内、細胞内区画又は細胞小器官内に含有されうる。生物学的マーカーは、膜微小ドメイン、イオンチャネル、染色体構造などの細胞構造であってもよく、あるいは、分子複合体、例えば、RNA−タンパク質複合体などであってもよい。生物学的マーカーは、好ましくは特異的生物学的マーカーであり、例えば、正常状態もしくは病理状態のマーカー、又は特定の細胞もしくは組織に特異的、又は特定の生物学的種に特異的である。そのような生物学的マーカーの検出は病理症状の診断及び治療において有用でありうる。
本発明の方法は、試料中の一又は複数の標的、例えば生物学的試料中の一又は複数の生物学的マーカーの検出に使用されうる。従って、本発明は、また、診断及び治療に関連したデータ、例えば診断に関連するタンパク質及び遺伝子マーカーの存在に関する情報を得ることをもたらす。一例として、限定されないが、HER2タンパク質とHER2遺伝子が、癌診断アッセイ、例えば乳癌のアッセイにおいて同時にスクリーニングされうる。別の非限定的な例は、例えば頚部癌を検出するための3つのマーカーのスクリーニングを含みうる。マーカーは、Ki67/mib−1、並びに細胞増殖マーカー、p16(INK4a)を、ヒトパピローマウイルスのマーカー、例えばタンパク質又は核酸と共に含みうる。また別の非限定的な例は、前立腺癌と関連する複数のマーカーのスクリーニングを含む。これらのマーカーは、AMACR P504S、高分子量サイトケラチン(HMW−CK)、及びp63を含みうる。このマーカーの組合せのスクリーニングは、良性前立腺腫瘍を悪性のものと識別する方法を提供する。
例えば、複数のマーカーを検出する場合、結合剤間の交差反応性を最小限にすることが望ましい。これは、検出手順において異なる結合剤及び異なるコンジュゲート分子を使用することによって達成することができる。2つの異なった生物学的マーカーが検出されるシステムは、次の工程:
a) 第一生物学的マーカーに特異的な第一結合剤と、第一の検出可能な標識を含む第一レポーターを使用して工程(i)及び(ii)を実施する工程;
b) 第二生物学的マーカーに特異的な第二結合剤と、第二の検出可能な標識を含む第二レポーターを使用して工程(i)及び(ii)を実施する工程;
c) 沈着した第一レポーターを検出し、それによって第一生物学的マーカーを検出する工程;
d) 沈着した第二レポーターを検出し、それによって第二生物学的マーカーを検出する工程
を含みうる。
一実施態様では、(各洗浄工程を含む)本発明の方法の各工程は、同じインキュベーション時間、例えば各工程30秒、各工程1分、各工程2分、各工程3分、各工程4分等で実施されうる。他の実施態様では、各工程の実施に使用される時間間隔は変動しうる。(洗浄工程を含む(i)から(iii)の)該方法の全ての工程は2−20分内に完了されうる。そのような迅速な検出は標的生物学的マーカーの自動化又は半自動化検出に有利に使用されうる。一実施態様では、該方法はマニュアル、自動化又は半自動化検出のためのものである。
自動化染色装置は、本発明の様々な実施態様、例えば、複数の生物学的マーカーの検出に使用されうる。複数のマーカーの検出は、しばしば、異なる検出可能な標識から得られるシグナルの均衡を必要とする。自動化手順は、標的生物学的マーカーから発生するシグナルの増幅の複数工程を含みうる。複数のマーカーが検出されることになる場合、特に有利である。自動化染色装置は当該分野で知られており、該方法はこれらの装置に適合化されうる。
該方法は広範囲の温度内で、例えば+4℃から+60℃の間隔、例えば+10℃から+40℃、例えば室温で、実施されうる。
1.コンジュゲート
略号
MBHA 4−メチルベンズヒドリルアミン
NMP N−メチルピロリドン
HATU 2−(1h−7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート;メテンアンミニウム
DIPEA ジイソプロピルエチルアミン
DCM ジクロロメタン
TFA トリフルオロ酢酸
TFMSA トリフルオロメチルスルホン酸
Fer フェルラ酸
Flu フルオレセイン
Tyr チロシン
Lys リシン
Dex デキストラン
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
equi. 当量
L30 1,10,16,25−テトラアザ−4,7,13,19,22,28−ヘキサオキサ−11,15,26,30−テトラオキソ−トリアコンタン
L60,L90,L120,L150−qが2、3、4又は5の式(L30)qのポリマー
CIZ 2−クロロZ=2クロロベンジルオキシカルボニル
FITC フルオレセインイソチオシアネート
HRP 西洋わさびペルオキシダーゼ
PNA−X 異なった置換基がPNA骨格(N−(2−アミノエチル)−グリシン)の中央の窒素にカップリングしたもの
A アデニン−9−酢酸,
C シトシン−1−酢酸,
D 2,6−ジアミノプリン−9−酢酸,
G グアニン−9−酢酸,
Gs 6−チオグアニン−9−酢酸,
P 2−ピリミジノン−1 酢酸,
T チミン−1−酢酸,
Us 2−チオウラシル−1−酢酸.
Dpr 2,3 ジアミノ−プロピオン酸,
Caf コーヒー酸,
Sin シナピン酸,
DNP ジニトロフェニル,
Acin 4−アミノ−ケイ皮酸,
Phe フェニルアラニン,
Tyr チロシン,
Trp トリプトファン,
Lys リジン,
Cys システイン,
βアラ βアラニン、N,N二酢酸
コンジュゲート
Figure 0005721638
Figure 0005721638
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表の異なったコンジュゲート及び中間体は、その合成方法に従って、大まかに複雑さが増加する順でカラム3に分類されている:
1.固相化学のみ。
2.固相と、ついで一つの溶液相工程。
3.固相と、ついで二つの溶液相工程。
4.固相と、ついで二つの溶液相工程。
5.固相と、ついで4つの溶液相工程。
6.アミノ及びβアラ無水物中間体間の溶液相カップリング。
7.一つの置換基とのデキストランコンジュゲート。
8.二つの置換基とのデキストランコンジュゲート。
1. このグループは、4つの天然及び更に4つの非天然塩基のトリフルオレセイン標識PNAペンタマーから調製される8つのコンジュゲート(D18007−D18014)を含む。5−6のチロシンと3つのフルオレセインを持つ4つのチロシンコンジュゲートのD18044、D18049、D18137及びD18138があり、3つのDNPがフルオレセイン標識に代わっている。D18128及びD18132はそれぞれ5つのチロシンと3つのフルオレセインを有しており、よってそれらは潜在的なコンジュゲートであるが、それらはまた更なるデキストランカップリングのためのN末端システイン残基を含み、それらを「中間体」のグループに分類する。中間体は更に重要なシステイン(D17127)及びβアラニン(D17126)トリ−フルオレセインリンカー、並びにジアミノ−プロピオン酸リンカーで7つのチロシン(D18084)又は3つのフルオレセイン(D18085)を持つものを含む。最後に、コントロールとして使用した小ジフルオレセインリンカー(D17161)をまた固相合成法だけで調製した。全てのこれら化合物の背後の合成方策は単純である:Boc保護モノマーは市販されており、又は会社内で調製し、コンジュゲート及び中間体は直鎖固相合成によって調製し、ついで6:2:1:1のTFMSA:TFA:m−クレゾール:チオアニソールのカクテルによって樹脂から切断する。最良の結果に対しては全てのモノマーの結果的な二重カップリングが使用される。固相でのFmoc脱保護後に、フルオレセインがリジン側鎖(及びN末端,D17161)に導入される。HATU活性化カルボキシ−フルオレセイン(混合異性体)をフルオレセイン標識に使用した(NMP中0.2Mで3×20分)。DNP標識化を2,4−ジニトロ−フルオロベンゼン(DIPEAと共にNMP中0.5Mで、2×10分)を用いて達成した。
2. このグループは、N末端アミノ基及び遊離リジン側鎖アミノ基を担持する中間体の固相合成の後に溶液相にケイ皮酸誘導体で標識された多数のコンジュゲートを含む。α−N−Boc−(ε−N−2−Cl−Z)−リジンを使用してリジン残基を導入し、樹脂からの切断後に遊離のε−N−アミノ基を生じせしめた。溶液相標識化は基本的には固相技術の拡張であり、相対的に高分子量の中間体をTFA又はNMP溶液からジエチルエーテルでほぼ定量的に沈殿させることができることを利用している。
3. 合成の観点からは、このグループの中間体は更に高度の複雑さを表す。1及び2におけるように、固相合成及び溶液相標識化に溶液相Fmoc脱保護の更なる工程が続く。Boc−L30リンカーをBoc−2ClZ及びBoc−Fmoc−リジンと組み合わせることによって、保護(Fmoc)リジン側鎖及び遊離N末端及び他のリジン側鎖遊離アミノ基(樹脂切断中にN末端Boc及び2−ClZリジン残基から)の組み合わせの中間体となる。これらの中間体は2におけるように溶液中のフェルラ酸で標識されうる。しかしながら、エチレンジアミンでのスクラブ工程に先立ち、5%エタノールアミンを用いた余分の5分の工程が使用される。この余分のスクラブ工程は、エチレンジアミンによるFmoc脱保護の前にアミノ反応性種を非活性化する。この余分の工程がない場合、エチレンジアミンは、HATU活性化フェルラ酸を非活性化するよりもFmoc基をより速やかに脱保護し、Fmoc「保護」アミノ基はフェルラ酸で標識されるようになる。遊離アミノ基を持つこのグループは、D17120(6つのフェルラ酸)、D17093(PNA骨格に結合した5つのフェルラ酸)、D17138(フェルラ酸間にL90−リンカー)、D17139(3つの近接対の6つのフェルラ酸)、D17104(フェルラ酸間にグリシンスペーサー)、D17192(フェルラ酸の代わりに6つの7−ヒドロキシクマリンを持つ)、D18019(最も近いフェルラ酸と遊離アミノ基間に延長されたL270リンカー)、D18080(L90のスペーサーで3つの遊離アミノ基)を含む。
4. 6つのフェルラ酸と3つの遊離アミノ基を持つ中間体D18080から、更なる溶液相標識化によって2つのコンジュゲートを調製した。3つのテキサスレッド−X’を持つD18081と3つの7−ヒドロキシクマリンを持つD18096。これは、コンジュゲートが二つの異なった置換基で溶液中で如何に標識できるかを例証する。利点は、中間体D18080 を最終の標識化の前に精製することができることであり、不安定な又は高価な標識、例えばテキサスレッドを使用する場合、有利である。
5. D17152の合成は、溶液中のリンカーに適用できる固相合成化学の範囲を例証し、その後に低分子量反応体及び溶媒を除去するためのジエチルエーテルによる反復沈殿が続く。固相でNH2−Lys(NH2)−(L30−Lys(NH2))4−L30−Lys(Fmoc)を調製し、樹脂から切断した。ついで、Boc−L30リンカーを溶液中の6つの遊離アミノ基にカップリングさせた。中間体を沈殿させ、TFA中の5%のm−クレゾールに2回溶解させた。ついで、このようにしてK30延長されたアミノ基に対してフェルラ酸標識化を2におけるようにして実施した後、3におけるようにしてエタノールアミン及びエチレンジアミンでスクラブし、最後に1におけるように3TFA沈殿をさせた。
6. フラグメントカップリングをアミノ置換中間体と「βアラ無水物」活性化中間体との間で実施した。3つのフルオレセインを持つD17126は更にN末端βアラニン−N,N−二酢酸を担持する。10分間の活性化(NMP:ジイソプロピルカルボジイミド:ピリジン;88:10:2)によって、アミノ基へのカップリングに使用できる環状「βアラ無水物」が形成される。これにより、D17120からD17134(L30スペーサーで6つのフェルラ酸)、D17139からD17148(L30スペーサーで3対での6つのフェルラ酸)、D17152から D17156(6つのL30延長フェルラ酸)及びD17192からD18003(6つの7−ヒドロキシクマリンを含む)が得られた。このようなフラグメントカップリングの利点は、中間体がカップリング前にHPLC精製でき、大きく複雑で尚かなり純粋なコンジュゲートを得ることを可能にすることである。他の利点は、D17126のような単一の中間体を使用して一連の関連しているが異なっているコンジュゲートを調製することができることである。
7. 単一の置換基を持つデキストランコンジュゲートは、コントロールのフルオレセインのみのコンジュゲートD17132、D18130及びD18088(全てシステインカップリングを介してのD17127からのDex70コンジュゲート)、D17162(D17127からのdex270コンジュゲート)及びD18086(ジアミノプロピオン酸を介したあまり効果的ではないカップリングでのD18085から)を含む。これらは、フルオレセインのみのコンジュゲートが作用しなかったことを証明するためにコントロールとして使用された。コンジュゲートは、また、デキストランに複数の中間体コンジュゲートをカップリングさせることにより、このようにして調製された。これらはD18133(L30離間チロシン−フルオレセインコンジュゲートD18132を含むdex70)及びD18130(チロシン−フルオレセインコンジュゲートD18128を有するdex70)を含む。単一のコンジュゲートをHRP基質と標識の双方にカップリングさせる利点は、二つの置換基間に固定された比率が担保されることである。
8. 二つの異なった置換基を持つデキストランコンジュゲートは、6つのフェルラ酸リンカーD18074とトリ−フルオレセインリンカーD17127(又はリンカーの再生)を持つ全てがdex70であるD17130、D18077、D18079、D18090、D18122及びD21008を含む。約100のフェルラ酸と70のフルオレセインを持つD17130、D18077、D18079及びD21008間に良好な再現性が存在している一方、D18122は更なる過剰のフルオレセインリンカーとカップリングされて、およそ100のフェルラ酸及びフルオレセインをそれぞれ含むコンジュゲートを生じる。D17128はD17130に似ているが、使用されるフェルラ酸リンカー(D17093)は、リジン側鎖よりもPNA骨格に結合したフェルラ酸を有している。コンジュゲートD18031はまたD17127を有しているが、L270延長フェルラ酸リンカーD18019を有している。このコンジュゲートはフェルラ酸をHRP酵素により容易に接近できるようにする試みであった。
選択化合物の合成手順の例
D19185: Boc−(Lys(2−Cl−Z))3−L150−Lys(Fmoc)は固相で調製される。Fmoc基を除去した後、上述のようにして蛍光標識する。中間体NH2−((Lys(NH2))3−L150−Lys(Flu)は樹脂からの切断により生じる。それをジエチルエーテルで沈殿させ、TFAに溶解させ、沈殿後にNMPに溶解させ、DIPEAで塩基性にする。この溶液を、HATU及びDIPEAによって活性化されるNMP中の等容量の0.2Mのフェルラ酸と混合する。10分後、標識化が完了し、10%の濃度になるまで5分間、エチレンジアミンを添加して粗生成物を更に「スクラブ」する。ジエチルエーテルでの沈殿化後、生成物を更にTFAに溶解させ、ジエチルエーテルで3回沈殿させて、低分子量の細片を除去する。エチレンジアミンでの「スクラブ」の前において、質量分析は、二種の付加物(及びその組み合わせ)を示す:+(176)nは余分なフェルラ酸(他のフェルラ酸とフルオレセインへのフェノールエステル)及び+98(同様に未保護のフェノール基へのN,N’−テトラメチルウロニウム付加物)を示す。これらはエチレンジアミン処理によって完全に除去され、活性エステル及びフェルラ酸オリゴマーは同様に分解される。
D19185の合成法は図1に示す。
次のフルオレセイン−フェルラ酸コンジュゲートはこのスキームに従って作製した:D17157、D17158、D19112、D19185、D18015、D20086、D20118、D20120、D19037及びD18157(これらのコンジュゲートの幾つかの合成の詳細を以下に記載する)。他の標識を有するフェルラ酸コンジュゲートは次のものを含む:D19048(標識されたリサミン);D19059、D18141及びD19040(標識されたDNP)。フェルラ酸の代わりにシナピン酸を持つコンジュゲートは同じ方法によって調製し、0328−018及びD21028でフルオレセイン標識を持つもの及びDNP標識D21048を含む。D21020は3つのコーヒー酸とフルオレセインを持ち、D18146は6つの4−アミノ−ケイ皮酸と3つのフルオレセインを持ち、共に同じ方策によって調製される。
D17158 MBHA樹脂にFmoc−Lys(ivDDE)を150μmol/gの負荷量まで負荷した。NMP中20%ピペリジンを用いて200mgの樹脂を脱Fmocし、1回のBoc−L30−OH(1.5mL、NMP中0.26M、0.9equi.のHATU、2当量のDIPEAで2分間予備活性化)とのカップリングに20分間供した。NMP中5%ヒドラジンを用いてivDDE基を除去し、リジン側鎖をカルボキシフルオレセイン(Flu)(1.5mL、NMP中0.2M、0.9equi.のHATU、2equiのDIPEAで2分間予備活性化)で2×20分間標識した。樹脂をNMP中20%ピペリジン、NMP、DCM、ついでDCMで処理した。TFA:TFMSA:mクレゾール(7:2:1、1.5mlで1時間)を用いて中間生成物H−L30−Lys(Flu)−NHを樹脂から切断し、ジエチルエーテルにより沈殿させ、TFA中に再懸濁し、ジエチルエーテルにより沈殿させ、NMP中に再懸濁し、再度ジエチルエーテルにより沈殿させた。これを、100μLのDIPEAを用いて塩基性にし、0.9equi.のHATUおよび2equi.のDIPEAで予備活性化した0.5mLの0.3Mフェルラ酸に直接溶解した。25分後、粗生成物をジエチルエーテルにより沈殿させ、450μLのNMP及び50μLのエチレンジアミン中に溶解した。5分後、生成物をジエチルエーテルにより沈殿させ、水(8mL)中15%アセトニトリル中に溶解し、100μLのTFAで酸性化し、RP−HPLC精製に供した。
D17157 MBHA樹脂にBoc−Lys(Fmoc)を100μmol/gの負荷量まで負荷した。100mgの樹脂をBoc−L30−OH(a. 1の場合のようにBoc−L30−OHとのカップリング。b. NMP:ピリジン1:1中2%無水酢酸での2分間のキャッピング。c. TFA中5%mクレゾールでの2×5分間の脱Bc)を用いた5回のカップリングサイクルに供した。1の場合のようにリジン側鎖を脱Fmocし、カルボキシフルオレセインで標識した。1.1の場合のように、中間生成物H−L150−Lys(Flu)−NHを樹脂から切断し、フェルラ酸でN末端を標識し、精製した。
D16127 Boc−L90−Lys(Fmoc)−L90−Lys(Fmoc)−L90Lys(Fmoc)を、標準的な固相化学(1.1.及び1.2の場合のように)を用いて0.5gのMBHA樹脂上で調製した。NMP中20%ピペリジンを用いてFmoc基をリシン側鎖から除去し、化合物を反復カルボキシフルオレセイン標識(3×30分間)に供した。TFAでのBoc基の除去後、N末端を固相で、βアラニン−N,N−二酢酸(βアラ)tert−ブチルエステルにより標識した。樹脂からの切断およびHPLC精製後、βアラ−L90−Lys(Flu)−L90Lys(Flu)−L90−Lys(Flu)−NH2を単離した。
D17127 Boc−L90−Lys(Fmoc)−L90−Lys(Fmoc)−L90Lys(Fmoc)樹脂を調製し、1.3に記載の手順を用いてフルオレセインで標識した。Boc基の除去後、N末端をN−Boc−S(4−メトキシベンジル)−Cys−OHで標識した。化合物をカラムから切断し、HPLCによって精製した。
D18074/D17128 MBHA樹脂に、Boc−Lys(Fmoc)(2サイクル)、Boc−L30−OH(5サイクル)及びBoc−Lys(2CIZ)−OHを逐次カップリングした。2CIZ基を除去するための10%チオアニソールスカベンジャーの存在下で中間生成物を樹脂から切断した。1.1の場合ようにN末端および5脱保護リシン側鎖をフェルラ酸で標識した(2×30分)。ついで、C末端リシン残基のN上のFmoc基をNMP中10%エチレンジアミンで除去した後、精製した。
D17134 βアラ−L90−Lys(Flu)−L90Lys(Flu)−L90−Lys(Flu)−NH2(D16126)(上の1.4参照)500nmolを88μLのNMP及び2μLのピリジンに溶解し、10μLのジイソプロピルカルボジイミドとの10分間の反応によって環状無水物に変換させた。無水物をジエチルエーテルにより沈殿させ、ペレットを、250nmolのFer−(Fer−L30)−Lys(NH)−NHを含む100μLのNMPに溶解した。20分後、5μLのエチレンジアミンを添加し、5分後、生成物をジエチルエーテルにより沈殿させ、酸性化し、HPLCで精製した。
D18044 Ac−(Tyr(2BrZ)−L30)−L90−Lys(Fmoc)−L90−Lys(Fmoc)−Lys(Fmoc)をMBHA樹脂上で調製した。固相上で、Fmoc基を除去し、リシン側鎖をカルボキシフルオレセインで標識した。樹脂から切断後、生成物をHPLCで精製した。
D17140 Boc−Lys(2CIZ)−L60−Lys(2CIZ)−Lys(2CIZ)−L60−Lys(2CIZ)−Lys(2CIZ)−L30−Lys(Fmoc)をMBHA樹脂上で調製した。樹脂から切断後、中間生成物H−Lys(NH)−L60−Lys(NH)−Lys(NH)−L60−Lys(NH)−Lys(NH)−L30−Lys(Fmoc)を、沈殿によって単離し、1.1の場合のようにフェルラ酸で標識した。最終生成物をHPLCによって単離した。
D18090 ジビニルスルホンで活性化させたデキストランMW 70kDa 10nmolを、総容量300μLの0.16M NaHCOpH9.5中でFer−(Fer−L30)−Lys(NH)−NH(D18074)(上記の1.4参照)500nmolと40Cで30分間反応させた。僅かな沈殿が観察された後、更に100μLの水を添加し、更に30分間、反応を進行させた。更に、200μLの0.15M NaHCOを500nmolのH−Cys−L90−Lys(Flu)−L90Lys(Flu)−L90−Lys(Flu)−NH2(D17127)(上記の1.5を参照)と一緒に添加した。40℃で1時間後、30分間の50μLの0.165Mシステインの添加によって反応混合物をクエンチし、溶液を濾過し、10mMのCHES,pH9.0、及び0.1M NaClを含有する水性溶液中20%EtOHを用いたスーパーデックス200上でのFPLCによって生成物を精製した。溶出された生成物は、ほぼ56個のフルオレセイン残基及び113個のフェルラ酸残基を含むデキストランコンジュゲートであった。
D19112 固相でMBHA樹脂Boc−Lys(2Clz)−Lys(2ClZ)−L150−Lys(Fmoc)を、標準的な固相Boc化学を使用して調製した。Fmoc基をNMP(2×5分)中の20%ピペリジンを使用して除去し、遊離アミノ基をカルボキシフルオレセイン(NMP中0.9equi.のHATU及び1equi.のDIPEAで3×20分、活性化させた0.2 Mのカルボキシフルオレセイン)で標識した。ついで、樹脂をNMP中20%のピペリジンでの処理に2×5分間供した。TFA:TFMSA:m−クレゾール:チオアニソール(6:2:1:1)混合物中で1時間、樹脂からの切断を実施し、中間生成物H2N−Lys(NH2)−Lys(NH2)−L150−Lys(Flu)を得た。この生成物をTFAに溶解させ、ジエチルエーテルで沈殿させた後、NMPに溶解させ、再びジエチルエーテルで沈殿させた。ついで、沈殿物を、0.9当量のHATU及び2当量のジイソプロピル−エチル−アミンで活性化させた0.3 Mのフェルラ酸に溶解させた。10分の反応後、生成物をジエチルエーテルで沈殿させた後、NMP中の10%エチレンジアミンに2分間溶解させた。ついで、最終生成物をジエチルエーテルで沈殿させ、水中の30%アセトニトリルに溶解させ、C18カラムでHPLC精製した。
D19185、D20068及びD20171: 更なるLys(Fer)基を導入して、D19112と同じようにして調製した。
D21020: Caf−Lys(Caf)−Lys(Caf)−L150−Lys(Flu)をD19185として調製した。固相合成に従って、コーヒー酸標識化を溶液中で実施した。
0328−018: Sin−Lys(Sin)−Lys(Sin)−L150−Lys(Flu)をD19185として調製した。固相合成にに従って、シナピン酸標識化を溶液中で実施した。
D20118: L60リンカーを使用して、D19112と同じようにして調製した。
D20086: L30リンカーを使用して、D19112と同じようにして調製した。
D20120: L30リンカーと追加的にグルタミン酸残基を使用して、D19112と同じようにして調製した。Boc−Glu(O−ベンジル)を固相合成に使用してグルタミン酸残基を構築した。
D19048: 0.5gのMBHA樹脂でBoc−L150−Lys(Fmoc)を調製した。Fmoc基を除去し、リジン側鎖アミノ基を、2mLのNMPを使用し、80μLのDIPEAを3×10分間添加してリサミン(Molecular Probes 製品番号L20、ローダミンBスルホニルクロライド)で標識した。ついで、Boc基をTFAで除去し、Boc−Lys(2ClZ)をN末端にカップリングさせた。中間生成物HN−Lys(NH)−L150−Lys(リサミン)を、TFA:TFMSA:m−クレゾール:チオアニソール(6:2:1:1)を用いて樹脂から切断し、D19112に対して記載されたようにフェルラ酸で標識して、Fer−Lys(Fer)−L150−Lys(リサミン)を得た。生成物をRP−HPLCによって精製したが、リサミンの異なった異性体を表す別個のピークに分かれた。最初の異性体は塩基性水溶液中で殆ど無色に変わり、廃棄した。第二の異性体は塩基性水溶液中で色と蛍光を保持しており、収集した。
D19059: D19112と同じようにして調製したが、1.5mLのNMP中の100mgの2,4−ジニトロフルオロベンゼンを使用し、50μLのDIPEAを2×20分間加えて、ジニトロフェニルで固相上のC末端リジン側鎖アミノ基に標識した。
D18126: Fer−Lys(Fer)−L30−Lys(Fer)−L30−Lys(Fer)−L30−Lys(Fer)−L30−Lys(Fer)−L120−Lys(Flu)−L90−Lys(Flu)−L90−Lys(Flu)=Fer−(Lys(Fer)−L30)5−(L90−Lys(Flu))3。この延長されたコンジュゲートはD19112と同じ経路によって調製した:Boc−(Lys(2ClZ)−L30)5−(L90−Lys(Fmoc))3を固相上に調製した。3つのFmoc基をNMP中のピペリジンを用いて除去し、3つのカルボキシフルオレセインをD19112におけるようにして導入した。中間生成物NH2−(Lys(NH2)−L30)5−(L90−Lys(Flu))3を樹脂から切断し、N末端及び5つの遊離リジン側鎖をフェルラ酸で標識し、NMP中の10%エチレンジアミンで洗浄し、TFAから沈殿させ、HPLCで精製した。
D18146: ACim−(Lys(ACim)L30)5−(L90−Lys(Flu))3を、D18126と同じリジン−リンカー骨格上に調製した。固相からの切断後、中間フルオレセイン標識リンカーをNMPに溶解させ、DIPEAで塩基性にした。NMP中0.1Mの4−アミノ−ケイ皮酸を0.9equi.のHATU及び3equiのDIPEAで30秒間活性化させ、リンカーに加えた。10%の最終濃度までエチレンジアミンを添加して2分後に反応をクエンチした。沈殿後、生成物をRP−HPLCによって精製した。
D18074: Fer(Lys(Fer)−L30)5−Lys(NH2)。6つのフェルラ酸と遊離リジン側鎖アミノ基を有するこの中間体リンカーは、C末端Boc−Lys(Fmoc)を使用し、ついでBoc−L30リンカー及びBoc−Lys(2ClZ)で交互にカップリングすることによって固相化学法によって調製した。樹脂からの切断後、中間生成物NH2(Lys(NH2)−L30)5−Lys(Fmoc)を、D19112に対して記載されているようにしてフェルラ酸溶液で標識化した。10%のエチレンジアミンでの最終処理で、Fmoc基をまた除去した。このホモフェルラ酸オリゴマーをデキストランコンジュゲートD21008の調製に使用した。
D18118: NH2−Cys−(L90Lys(Flu))。この中間体トリフルオロセインリンカーは、リジンを導入するためにBoc−Lys(Fmoc)を使用して、固相で直接調製し、Fmocの除去後にカルボキシフルオレセインで標識した。N末端システインを、Boc(S−p−メトキシベンジル)システインを使用して導入した。
D18044: 固相でFer−(Tyr−L30)5−(L90−Lys(Flu))3をD18126として調製した。N−Boc−O−2BrZ チロシンを使用してチロシンを導入した。樹脂からの切断後に、生成物をHPLCで精製した。
D21008: D18074及びD18118とのDex70コンジュゲート。140μLの水中の10nmolのビニルスルホン活性化された70kDaのデキストランを更なる200μLの水と60μLの0.8Mの炭酸水素ナトリウム,pH9.5と混合した。この混合物を使用して、500nmolの凍結乾燥したD18074を溶解させた。反応混合物を40℃に60分間維持し、ついで更に250μLの水に溶解させた500nmmolのD18118を、更なる50μLの0.8M炭酸水素ナトリウム,pH9.5と共に反応混合物に加えた。40℃での更なる60分の反応後、0.8Mの炭酸水素ナトリウム,pH9.5中の0.165mMシステインを70μL添加して反応を停止させた。コンジュゲートをスーパーデックス200で、溶出剤として水中の20%エタノール中、10 mMのCHES,pH9.0、100mMのNaClを使用して精製した。これによりコンジュゲートを含む最初のピークが生じ、未コンジュゲートリンカーが続いた。81%のフルオレセイン及びフェルラ酸の全回収率に基づき、デキストランコンジュゲートに対して同じ回収率(81%)を仮定して、デキストラン当たり111のフェルラ酸及び83のフルオレセインの比が計算され、(D18074)18.5−Dex70−(D18118)27.7
に相当していた。
D19059: 0.1gのMBHA樹脂で、標準的な固相化学を用いて Boc−Lys(2ClZ)−Lys(2ClZ)−L150−Lys(Fmoc)を調製した。Fmoc保護リジン側鎖をNMP中の20%ピペリジンを用いて脱保護(2×5分)し、2×20分間、1.5mlのNMP、1.5mL及び50μLのDIPEAに溶解させた150mgの2−4−ジニトロ−フルオロベンゼンでの標識化に供した。その樹脂をNMP中の20%ピペリジン、NMP及びDCMで処理した。
その中間生成物を、TFA:TFMSA:チオアニソール:m−クレゾール(6:2:1:1、1.5mLで1時間)を用いて樹脂から切断し、ジエチルエーテルで沈殿させ、TFAに再懸濁させ、ジエチルエーテルで沈殿させ、NMPに再懸濁させ、再びジエチルエーテルで沈殿させた。それを100μLのDIPEAで塩基性にし、0.9equiのHATU及び2equiのDIPEAで前もって活性化させた0.5mLの0.3Mフェルラ酸に直接溶解させた。10分後、粗生成物をジエチルエーテルで沈殿させ、900μLのNMP及び100μLのエチレンジアミンに再溶解させた。2分後、生成物をジエチルエーテルで沈殿させた。TFAに再懸濁させ、ジエチルエーテルで沈殿させ、水中の22%アセトニトリル(8.2mL)に溶解させ、RP−HPLC精製に供した。
収量8μmol、MS実験値3582(M+Na)、Fer−Lys(Fer)−Lys(Fer)−L150−Lysに対する理論値3558.784(DNP)
D19112: 1gのMBHA樹脂で標準的な固相化学を用いてBoc−Lys(2ClZ)−Lys(2ClZ)−L150−Lys(Fmoc)を調製した。Fmoc保護リジン側鎖を、NMP中の20%ピペリジンで脱保護(2×5分)し、3×20分、反復カルボキシフルオレセイン標識化(0.9equiのHATU、1equiのDIPEAで2分間前もって活性化された、3mLのNMP中0.2M)に供した。樹脂をNMP中の20%ピペリジンで処理し、ついでNMP、DCM及びTFAで洗浄した。中間生成物を、TFA:TFMSA:チオアニソール:m−クレゾール(6:2:1:1、3mL、1時間)を用いて樹脂から切断し、ジエチルエーテルで沈殿させ、TFAに再懸濁させ、ジエチルエーテルで沈殿させ、NMPに再懸濁させ、再びジエチルエーテルで沈殿させた。それを200μLのDIPEAで塩基性にし、0.9equiのHATU及び2equiのDIPEAで前もって活性化させた2mLの0.3Mフェルラ酸に直接溶解させた。10分後、粗生成物をジエチルエーテルで沈殿させ、1350μLのNMPに再溶解させ、150μLのエチレンジアミンを加えた。2分後、生成物をジエチルエーテルで沈殿させた。TFAに再懸濁させ、ジエチルエーテルで沈殿させ、水中の25%アセトニトリル(24mL)に溶解させ、RP−HPLC精製に供した。
収量19μmol、MS実験値3749、Fer−Lys(Fer)−Lys(Fer)−L150−Lys(Flu)に対する理論値3750.998
D19185: D19185を固相合成法によりD19112と同様にして調製した後、フェルラ酸溶液で標識した。MS実験値4054
D19037: D19037を固相合成法によりD19112と同様にして調製した後、フェルラ酸溶液で標識した。MS実験値3447
D18126: MBHA樹脂で標準的な固相化学を用いてBoc−(Lys(2ClZ)−L3090−Lys(Fmoc)−L90Lys(Fmoc)−L90Lys(Fmoc))を調製した。Fmoc保護リジン側鎖を、NMP中の20%ピペリジンで脱保護(2×5分)し、3×20分、反復カルボキシフルオレセイン標識化(0.9equiのHATU、1equiのDIPEAで2分間前もって活性化された、3mLのNMP中0.2M)に供した。樹脂をNMP中の20%ピペリジンで処理し、ついでNMP、DCM及びTFAで洗浄した。中間生成物を、TFA:TFMSA:チオアニソール:m−クレゾール(6:2:1:1、3mL、1時間)を用いて樹脂から切断し、ジエチルエーテルで沈殿させ、TFAに再懸濁させ、ジエチルエーテルで沈殿させ、NMPに再懸濁させ、再びジエチルエーテルで沈殿させた。それを200μLのDIPEAで塩基性にし、0.9equiのHATU及び2equiのDIPEAで前もって活性化させた2mLの0.3Mフェルラ酸に直接溶解させた。10分後、粗生成物をジエチルエーテルで沈殿させ、1350μLのNMPに再溶解させ、150μLのエチレンジアミンを加えた。2分後、生成物をジエチルエーテルで沈殿させた。TFAに再懸濁させ、ジエチルエーテルで沈殿させ、水中の25%アセトニトリル(24mL)に溶解させ、RP−HPLC精製に供した。
収量2μmol、MS実験値10666。
1.結合剤
ヤギ抗マウス−Dex70−HRP(D18033/D18175
13.7nmolのジビニルスルホンで活性化させた70kDAのMWのデキストランを、600μLのバッファー(100mMのNaCl、25mMのNaHCO,pH9.5)中で、602nmolのHRPと3時間30℃で反応させた。ついで、105μLの水中41.1nmolのヤギ抗マウスF(ab)抗体を添加し、反応を更に16時間継続した。30分間の70μLの0.165Mシステインの添加によって反応混合物をクエンチし、100mMのNaCl、10mMのHEPES,pH7.2中スーパーデックス200上で生成物を精製した。溶出した生成物は、ヤギ抗マウス(GaM)及びHRP(dex:GaM:HRP比=1:1:1)を含むデキストランコンジュゲートであった。
抗FITC−Dex70−HRP(D18058/D18144
10nmolのジビニルスルホンで活性化させた70kDAのMWのデキストラン及び440nmolのHRPを、400μLのバッファー(100mMのNaCl、25mMのNaHCO,pH9.5)中で3時間、30℃で反応させた。ついで、80μLの水中30nmolの抗マウスF(ab)抗体を添加し、反応を更に40℃で90分間継続した。30分間の50μLの0.165Mシステインの添加によって反応混合物をクエンチし、100mMのNaCl、10mMのHEPES,pH7.2中スーパーデックス200上で生成物を精製した。溶出した生成物は、デキストランと抗FITC及びHRP(Dex/抗FITC/HRP比=1/2/9)のコンジュゲートであった。
抗FITC−Dex70−HRP(D17030)
10nmolのジビニルスルホンで活性化させた70kDAのMWのデキストラン;440nmolのHRP及び25nmolのF(ab)抗FITCを、374μLのバッファー(100mMのNaCl、25mMのNaHCO,pH9.5)中で16、30℃で反応させた。30分間の50μLの0.165Mシステインの添加によって反応混合物をクエンチし、100mMのNaCl、10mMのHEPES,pH7.2中スーパーデックス200上で生成物を精製した。溶出した生成物は、抗FITC及びHRPを含むデキストランコンジュゲートであった(比1:1:1)。
ウサギ抗FITC F(ab’) −HRPコンジュゲート(D19142)
ポリクローナルウサギ抗FITC IgG抗体を37℃で4時間、ペプシンで消化させ、スーパーデックス200での精製を施してペプシン及びFc断片を除去した。
F(ab’)断片を0.2Mのリン酸ナトリウム,pH6.0中の5 mMのEDTAに対して更に透析した。その溶液をアミコン・ウルトラスピンカラムで25g/Lのタンパク質濃度まで濃縮した。6.0mLの上記溶液(150mgのF(ab’))に、共に水中の487μLの50mg/mL DTT及び423μLの56mM 2−メルカプトエタノールを加えた。反応混合物を室温で穏やかに40分間攪拌し、直後に0.2Mのリン酸ナトリウム,pH6.0中の5mMのEDTAを用いてPD−10カラムで精製し、118mgのF(ab’)を8.0mLのバッファー中に回収した。
250mgのHRP(Servac)を2.5mLの0.15m NaCL、0.05Mのリン酸カリウムpH8に溶解させ、同バッファーに対して透析した。透析後、酵素溶液を濃縮し、40mg/mLの濃度に調節した。3.21mLの128.6mg HRP溶液に860μLの15mg/mL SMCCを加え、室温で暗所で反応を30分進行させた。SMCC活性化HRP酵素を、0.15mのNaCL、0.05Mのリン酸カリウムpH8を用いてPD−10カラムで精製した。126.9mgを7.9mL中に回収した。
8.0mLのF(ab’)に6.25mLのSMCC活性化HRP溶液を加え、全体積を、0.15mのNaCL、0.05Mのリン酸カリウム,pH8を用いて43.8mLに調節した。酵素と抗体断片間の反応を室温で暗所にて210分間実施した。ついで、室温で15分間、343μLの水中の25mg/mLのシステアミンを添加して反応をクエンチさせ、反応混合物を一晩冷やして保存し、精製を待った。試料を8mLまで濃縮し、4分割してスーパーデックス200カラムに適用し、150mMのNaCL、50mMのTris,pH7.6で溶出させた。生成物は最初のピークで流れ、未反応の抗体及び酵素のピークが続いた。100mgのコンジュゲートを数画分で単離した。280nm/403nmでのUV測定は0.8から1.2の抗体酵素比を示した。
ヤギ抗マウスF(ab’) −HRP(D19150)
ヤギ抗マウスF(ab’)−HRPを、DTT及びメルカプトエタノールでのF(ab’)の還元とSMCC活性化HRPへのカップリングによってウサギ抗FITC F(ab’)−HRPとして調製した。ウサギ抗FITC F(ab’)−HRPの場合のように、12 当量のSMCCをHRP活性化に使用し、1:1モル比のF(ab’)及びHRPを使用した。
ヤギ抗ウサギF(ab’) −HRP(AMM279.168)
ヤギ抗マウスF(ab’)−HRPを、DTT及びメルカプトエタノールでのF(ab’)の還元とSMCC 活性化HRPへのカップリングによってウサギ抗FITC F(ab’)−HRPとして調製した。ウサギ抗FITC F(ab’)−HRPの場合のように、12当量のSMCCをHRP活性化に使用し、1:1モル比のF(ab’)及びHRPを使用した。
2.本発明の方法によるIHC染色
IHCを、ガラススライドに負荷したホルマリン固定パラフィン包埋組織の試料で実施した。3−5ミクロンの組織切片を切り取り、べークし、使用まで4℃で保存した。ついで、キシレン(2×5分);99%エタノール(2×2分);70%エタノール(2×2分)及び最後に水によってパラフィンを除去した。スライドを標的回収溶液,pH9、(DAKO S2367)中に入れ、ついで電子レンジ(10分間煮沸)で加熱した。その後、スライドを冷却し、ついで洗浄バッファー(DAKO S3006)に移した。該手順の後に5分間の3%過酸化水素での内因性ペルオキシダーゼ活性のブロック工程を続け、ついで、再びスライドを洗浄バッファー中に移し、ついで、様々な条件下で染色した。染色手順とその結果は以下に詳細に記載する(実験1−10)。スライド間の変動を最小限にするため、各比較実験を、同日中に連続して切り取った切片を用いて実施した。特異的シグナル並びにバックグラウンドシグナルを0〜4のスコア段階を使用してスコア化したが、そこでは、0は全く染色なし、1−弱い染色、2−中程度の染色、3−強い染色、4−非常に強い染色を表す。本発明の染色手順の結果を評価するための比較「標準」染色として参照Envision Flex(DAKO K8010)染色を製造者の推奨に従って実施し、簡潔には、スライドを、
2.S0809(DAKO)に希釈した一次抗体(以下の抗体表を参照)と共に、20分;
3.Envision Flex HRP(DAKO DM807)と共に20分、又はEnvision Flexマウスリンカー(DAKO DM804)と共に15分(表1中「リンク」を付した抗体のみ)
4.DM803(DAKO)で1:50で希釈したEnvision Flex DAB色素原(DAKO DM807)と共に2×5分
連続してインキュベートした。
Figure 0005721638
表1の全てのコンジュゲート及びコントロール化合物を、実験1の手順を使用して少なくとも一つを試験し、他の以下に記載の実験の手順を使用してコンジュゲートの幾つかを試験した。「コントロール」として特定される化合物で処理したスライドでは染色は観察されなかった。全ての他の化合物(大きなコンジュゲートの合成における中間コンストラクトである「中間体」と印されたものを除外)は+1から+4までの強度等級での標的の標識を示した。以下の実験は表1の選択されたコンジュゲートで実施されたIHC手順の異なった実施態様を記述する。
実験1
スライドを連続してインキュベートした:
1. 一次抗体80秒(「Link」抗体では300秒)
2. ヤギ抗マウスF(ab’)−HRP、20nM、80秒
3. コンジュゲートD19185 1200nM+5.6mM DAB、200秒
4. 抗FITC F(ab’)−HRP、100nM、140秒
5. 5.6mM DAB、200秒。
一次抗体を抗体表(上記)に示したように抗体希釈剤S0809(DAKO)で希釈した。
ヤギ抗マウスHRP及び抗FITC−HRPを、0.4%のカゼイン、2%のBSA、2%のPEG3000、0.1%のプロクリン、0.05%の4−アミノアンチピリン、0.1%のTween−20、100mMのNaCl、10mMのTris,pH8.0を含むバッファー(ABCPTバッファー)で希釈した。
工程3のコンジュゲートD19185(Fer−L30−Flu)及びDABと工程5のDABを、50mMのイミダゾール−HCl,pH7.4、5.6mMの過酸化水素、0.1%のTween−20の水溶液で希釈した。
工程間の洗浄は、室温でそれぞれ2分、S0809(工程3の後は、S0809又は10mMのCHES,pH9、0.1%のTween−20で)で実施した。
該方法を、12の異なったヒト組織:扁桃腺、肝臓、乳房癌、カルチノイド、結腸癌、メラノーマ、前立腺、小脳、腎臓、膵臓に対して表の15の異なった抗体を使用して試験した。対応する組織について実施された本発明の方法及びEnvision Flex法による組織染色の全体強度は同じであった;色相並びに高及び低発現標的の染色強度(高/低バランス)はまた同一であったが、本方法による染色はより鮮明(つまり、よりシャープで明瞭)であるように見えた。例えば結腸癌のような小さい細胞構造を含む幾つかの組織では、細胞質染色は本方法を使用した場合に僅かに鮮明さが少なかった。抗体希釈剤単独で、つまり抗体なしに処理したスライドは、染色がないことが証明され、つまり双方の方法による染色は特異的であった。
実験は、同じ希釈で、しかし有意に短いインキュベーション時間(つまり、15倍短い)同じ抗体を使用すると、本発明の染色方法では、Envision Flex染色と同じパターンと品質の染色を生じることを示している。
実験2
スライドを連続してインキュベートした:
1. 一次抗体、140秒(「Link」抗体では300秒)
2. ヤギ抗マウスF(ab’)−HRP(D19150)、30nM、200秒
3. コンジュゲートD19059 1200nM+2.8mM DAB、200秒
4. 抗FITC F(ab’)−HRP(D19142)、150nM、140秒
5. 2.8mM DAB、200秒。
一次抗体を上の抗体表に示したよりも10倍多い抗体希釈剤S0809(DAKO)(「Link」抗体に対しては5倍多い)で希釈した。
二次抗体、コンジュゲート及びDABのための溶媒、及び洗浄バッファーは、実験1におけるものとした。
該方法を、Envision Flexのインキュベーション時間よりも約9倍短いインキュベーション時間を使用して、同じ12の異なったヒト組織(上記)に対して同じ15の異なった抗体で試験した。染色パターンと品質の双方とも、実験1の染色と本質的に同一であった。工程1で抗体希釈剤単独で処理されたコントロールスライドにはバックグラウンドはなかった。
実験は、本発明に係る方法による特定の標的の検出感度は、Envision Flex法によるよりも少なくとも10倍高いことを示している(Envision Flex法は実験1におけるように、つまり如何なる変更もなしに実施した)。この実験は、工程2の沈着溶液及び工程5の染色溶液(5.6mMの代わりに2.8mM)中のDABの減少した濃度は染色結果に影響を及ぼさないことをまた示している。
実験3
スライドを連続してインキュベートした:
1. 抗体表に示したよりも45倍に希釈した抗サイトケラチン(クローンAE1/A3、Dakoカタログ番号M3515)、20分
2. ヤギ抗マウスF(ab’)−HRP(D19150)、30nM、5分
3. コンジュゲートD19185 1200nM+2.8mM DAB、200秒
4. 抗FITC F(ab’)−HRP(D19142)、150nM、140秒
5. 2.8mM DAB、200秒。
一次抗体を表(上記)に示したよりも45倍多い抗体希釈剤S0809(DAKO)(「Link」抗体に対しては5倍多い)で希釈した。二次抗体、コンジュゲート及びDABのための溶媒、及び洗浄バッファーは、実験1におけるものとした。
得られた染色は、(同じインキュベーション時間を使用し)45×高い濃度の抗サイトケラチンを用いたEnvision Flex染色と本質的に同一であった。工程1で(抗体なしで)S0809で処理されたコントロールスライドにはバックグラウンドはなかった。
実験は、(上記の表において推奨されているものと比較して)抗体の45倍の余分の希釈が染色強度に関して最適であり、つまり本方法の感度がEnvision Flex法の感度よりも少なくとも45倍高いことを示している。この実験は工程2の沈着溶液及び工程5の染色溶液(5.6mMの代わりに2.8mM)中のDABの減少した濃度は染色結果に影響を及ぼさないことをことをまた確認している。
実験4
スライドを連続してインキュベートした:
1. 推奨された(上記表参照)よりも1000倍多く希釈された抗サイトケラチン(クローンAE1/A3、Dakoカタログ番号M3515)、20分
2. ヤギ抗マウスF(ab’)−HRP(D19150)、30nM、5分
3. コンジュゲートD19185 1200nM+(1.4から2.8mMのDAB)、200秒
4. 抗FITC F(ab’)−HRP(D19142)、150nM、140秒
5. 2.8mM DAB、5分。
6. 2.8mM DAB、5分。
二次抗体、コンジュゲート及びDABのための溶媒、及び洗浄バッファーは、実験1におけるものとした。
工程3の沈着バッファー中の2.8mMのDABでの染色強度はEnvision Flex染色よりも更に弱かった。しかしながら、扁桃腺及び結腸上皮、乳癌細胞質、肝内胆汁管及び腎細胞において高度に発現された標的はこのプロトコルでは尚も中程度に(+2)染色された。2.8mMから1.4mMへの工程3の沈着溶液中のDAB濃度の減少は、染色強度を有意に増加させたが減少した鮮明さが犠牲になっている。高度の発現試料は強く染色され(+3)、殆どの中程度の発現試料は中程度に染色された(+2)。しかしながら、低発現組織は、弱く染色されるか全く染色されなかった(0から+1)。
工程3において2.8mMのDABでは、工程1における抗体なしでバッファーで処理されたコントロールスライドではバックグラウンドはなかったが、工程4における1.4mMのDABを伴う増加したレベルの増幅では、工程1においてS0809で処理されたコントロールスライドには幾らかのバックグラウンド染色が出現した。工程2における処理溶液からヤギ抗マウスHRPが省かれている更なるコントロール実験は、バックグラウンドが主としてこのコンジュゲートから付随したが、次の工程ではない、つまりDADの存在下でのコンジュゲートの沈着及び最終DAB染色ではないことを示している。
該実験は、本方法のシグナル増幅系が強いので、推奨されたよりも1000倍大熊で抗体試薬を希釈することが可能になるのに、染色の品質は尚も変わらないことを示している。
実験5
スライドを連続してインキュベートした:
1. 一次抗体(表に従って希釈)、80秒(「Link」抗体では300秒)
2. ヤギ抗マウスF(ab’)−HRP(D19150)、50nM、140秒
3. コンジュゲート D19059 1000nM+5.8mM DAB、80秒
4. 抗FITC F(ab’)−HRP(D19142)、150nM、140秒
5. 5.6mM DAB、80秒。
工程3のコンジュゲートD19185+DAB及び工程5のDABの双方を、50mMのイミダゾール−HCl,pH7.4、56mMのH、0.1%のTween(つまり、Hの濃度が実験1−4と比較して10倍高かった)の水溶液に希釈した。
該方法を12の異なったヒト組織に対して15の異なった抗体で実施した(実験1のように)。
染色の結果は、強度に関してはEnvision Flex染色と同様であったが、低発現標的は強さが僅かに少なかった。工程1における抗体なしで処理されたコントロールスライドにはバックグラウンドはなかった。色相は僅かに異なっていた:Envision FLEXの淡い褐色かた暗褐色ではなく、一般に灰色から黒であった。工程5における増加した時間(200秒)、減少したDAB(2.8mM)及び減少した過酸化水素(5.8mM)でのコントロール実験は典型的な褐色の色相が生じており、色相は主に最終(染色)工程によって決定されることを示している。
このプロトコルは非常に鮮明な染色を生じた:結腸及び結腸癌試料の小細胞構造は非常に区別でき明瞭に見られた;膜染色はシャープであった;強く染色された細胞質の領域は非常に明瞭な青色の核と対比してシャープに限られていた;中程度に染色された核は、Envision FLEXによって生成された均一な染色を含む見えない微細な核内詳細を示した。
工程3及び5における減少したインキュベーション時間での手作業のコントロール実験は、染色強度が、過酸化水素濃度が高い(56mM)場合にこれらの工程においてインキュベーション時間を30秒を越えて延長することにより増加しないことを示した。
実験6
スライドを連続してインキュベートした:
1. 一次抗体80秒(「Link」抗体では300秒)
2. ヤギ抗マウスF(ab’)−HRP(D19150)、50nM、140秒
3. コンジュゲートD19059 1000nM+5.8mM DAB、80秒
4. 抗FITC F(ab’)−HRP(D19142)、150nM、140秒
5. 2.8mM DAB、300秒。
コンジュゲート及びDAB(工程3)を、50mMのイミダゾール−HCl,pH7.4、56mMの過酸化水素、0.1%のTweenの水溶液に希釈した。工程5において、DABは50mMのイミダゾール−HCl,pH7.4、5.6mMの過酸化水素、0.1%のTweenに希釈した。
該方法を12の異なったヒト組織に対して15の異なった抗体で実施した(実験1のように)。
高発現標的の染色の結果はEnvision Flex染色(強度に関して)と同様であったが、低発現標的は有意により強く染色され、Envision FLEXで染色されなかった(+0)細胞構造は中程度に染色された:抗BCL−6は乳癌中の核の大きな割合を中程度に染色し、これに対してEnvision FLEXでのこれらの領域の染色は弱く;抗エストロゲンレセプターでの染色レベルは Envision FLEXと比較して乳癌において有意に増加し;結腸上皮細胞の抗癌胎児抗原染色はEnvision FLEX法の場合よりも強く堅牢であり;抗シナプトフィジンの弱い染色から中程度の染色が12全ての組織において観察される一方、Envision FLEXでは非常に弱い染色が観察されるか染色は観察されなかった。高発現構造は一般に強く染色されたが、過剰染色ではなく、シャープであった。一次抗体なしのコントロールスライドには染色が全くなかった。
該実験は、沈着溶液中の過酸化水素の高(56mM)濃度と染色溶液中の「通常」(5.6mM)の組合せが強力なシグナル増幅系をもたらし、広いダイナミックレンジで発現される抗原の非常に速い感度があり特異的な検出を可能にする。
実験7
スライドを連続してインキュベートした:
1. 一次抗体80秒(「Link」抗体では300秒)
2. ヤギ抗マウスF(ab’)−HRP(D19150)、20nM、80秒
3. コンジュゲートD19059 3.0μM+2.8mM DAB、200秒
4. 抗DNP F(ab’)−AP、100nM、5300秒
5. LPRリキッドパーマネントレッド(DAKO K3468)、300秒。
全ての工程の溶媒と洗浄バッファーは実験1におけるものとした。
該方法を12の異なったヒト組織に対して15の異なった抗体で実施した(実験1のように)。
染色の外観は、赤い色相であるが、DABでのEnvision Flex染色と同様であった。色相は強いピンク(低発現標的)から深紅(中発現標的)を経てワインレッドの赤(高発現標的)及び黒に近い赤(非常に高発現の標的)までの範囲であり、良好なダイナミックレンジを与えた。工程1における抗体なしのコントロールスライドではバックグラウンドはなかった。
該実験は、本発明の増幅系が広いダイナミックレンジで発現される抗原の検出ではLPRのような「感度の少ない」色素原の有益な使用をもたらすことを示している。
実験8
スライドを連続してインキュベートした:
1. 抗体S0809(DAKO)で1:1に希釈された一次抗体及びヤギ抗マウスF(ab’)−HRP(D19150)のプレミックス、30秒。
2. コンジュゲートD19185 10μM+DAB 280μM+56mM H、30秒。
工程2の溶媒は、50mMのイミダゾール−HCl,pH7.4、5.6mMの過酸化水素、0.1%のTweenの水溶液であった。
該方法を12の異なったヒト組織に対して15の異なった抗体で実施した(実験1のように)。
このプロトコルは、抗原の特異的な明るい緑色の蛍光染色を生じ、本発明に係るコンジュゲートの沈着の機序自体が標的に関連するシグナルの強力で特異的な増幅をもたらす。
実験9
実験9は本発明の異なったコンジュゲート分子及び結合剤を評価する。
プロトコル:
全てのスライドに同じプロトコルを施した:
1. S0809で1:50に希釈された抗サイトケラチン(クローンAE1/A3、Dakoカタログ番号M3515)、1分;
2. ABCPTバッファー*)中のヤギ抗マウス結合剤(表3)、2分;
3. 50 mMのイミダゾール−HCL,pH7.4、58mMの過酸化水素、5.8mMのDAB中のコンジュゲート(表3)、1分
4. ABCPTバッファー*)中の抗FITC−HRP結合剤(表3),2分
5. 50mMのイミダゾール−HCL,pH7.4、58mMの過酸化水素中の5.8mMのDAB、1分
6. ヘマトキシリンでの対比染色、5分
*) ABCPTバッファー:0.1%の4−アミノアンチプリン、0.2%のプロクリン2%のBSA、0.2%のカゼイン、2%のPEG、0.1%のTween20、0.1MのNaCL、10mMのHEPES,pH7.2
Figure 0005721638
サイトケラチン陰性組織、並びにサイトケラチン低及び高発現組織の双方を含む6つの異なった組織(肝臓、膵臓、乳房、扁桃腺、虫垂及び結腸癌)について該プロトコルを試験した。
結果:
ヤギ抗マウスHRPコンジュゲート: F(ab)−HRPコンジュゲートD19150(スライド1及び29)を、平均でコンジュゲート当たり1.4抗体及び10 HRP酵素(スライド2−6)を有する抗体−デキストラン−HRPコンジュゲートD18175と比較した。コンジュゲートD18175におけるHRP酵素の更に多くの数にかかわらず、スライド2の染色強度はスライド1及び29よりもほんの僅かにより強かった。スライド3はスライド1及び27と同じほど強く染色され、D18175の濃度が減少するスライド4−6は漸次的に強さが少なくなる染色になった。非特異的なバックグラウンド染色は虫垂平滑筋組織の試料のスライド2−5に存在していたが、スライド1及び29には観察されなかった。同様に、スライド1及び29に存在していない折り畳み組織の非特異的染色はスライド2−6に観察された。
これは、標的に結合する結合剤当たりのHRPの存在量は特異的シグナルの増幅を増加させず、むしろノイズシグナルを生じることを示している。
抗FITC−HRPコンジュゲート: F(ab)−HRPコンジュゲートD19142(スライド1及び29)を、平均で1.4の抗体及び10のHRP酵素/コンジュゲートを有する抗体−デキストラン−HRPコンジュゲートD18144(スライド7−11)と比較した。コンジュゲートD18144におけるHRP酵素のより多い数にもかかわらず、スライド7の染色強度は、スライド1及び29よりもほんの僅かだけ強かった。スライド8はスライド1及び29と同じ強さに染色され、D18175(スライド9−11)の濃度の低下は漸次強さが弱くなる染色になる。スライド7−11では、スライド1及び29には観察されない深刻な非特異的バックグラウンド染色が虫垂平滑筋組織に存在し、スライド7−9には扁桃腺胚中心にまたバックグラウンドがあった。同様に、スライド1及び29には存在しない折り畳み組織の非特異的染色がスライド7−11に観察された。
これは、沈着コンジュゲートに結合しない結合剤当たりのHRPの存在量は特異的シグナルの増幅を増加させず、むしろノイズシグナルを生じることを示している。
コンジュゲート: 6つの異なったコンジュゲートを比較した:
D17157(一つのフェルラ酸、一つのフルオレセイン、スライド12−14);
D19037(二つのフェルラ酸、一つのフルオレセイン、スライド15−17);
D19112(3つのフェルラ酸、一つのフルオレセイン、スライド18−20);
D19185(4つのフェルラ酸、一つのフルオレセイン、スライド1、29及び21−23);
D18126(6つのフェルラ酸、3つのフルオレセイン、スライド24−26);及び
D18090(101のフェルラ酸と72のフルオレセインを持つデキストランンジュゲート)。
染色の強度はコンジュゲート当たりのフェルラ酸残基(Fer)の数と共に漸次増加しており、次の蛍光を明らかに証明した:1つのFer(D17157)<<2つのFer(D19037)<<3つのFer(D19112)<4つのFer(D19185)。D19185は、濃度が(D19185と比較して)倍のD19112とほぼ同じ強さの染色をもたらした、つまりスライド19及び21及びスライド20及び22は同様の強度であった。
6つのフェルラ酸と3つのフルオレセインを持つD18126は、D19185と同様の強さの染色を生じた;しかしながら、D18126での染色は鮮明さが少なく、これは結腸癌のような小細胞組織において特に顕著であった。D18126の他の欠点は、強く染色された領域、つまり扁桃腺が隣接する細胞において非特異的な染色のハローを示したことであった。
非常に大きなデキストランコンジュゲートのD18090は、上記のより小さいコンジュゲートとは異なった染色パターンを示した。標的の高発現の試料は非常に強い染色(+3 −+4)を示したが(例えばスライド28はこの点でスライド1及び29と類似していた)、標的の低発現の試料(例えば膵臓、特に肝臓)は殆ど全く染色されなかった(+0−+0,5)。
実験10
実験10はコンジュゲート沈着媒体におけるDAB及びHの濃度の影響を実証している。
プロトコル:
全てのスライドに同じプロトコルを施した:
1. S0809で1:200に希釈した抗サイトケラチン(クローンAE1/A3、Dakoカタログ番号M3515)、1分又は3分
2. ABCPTバッファー中のヤギ抗マウス(D19150)、2分
3. 50mMのイミダゾール−HCL,pH7.4中の1μMのコンジュゲートD19185で、変動するDAB及びH(表4)、1分又は3分。
4. ABCPTバッファー中の150nMの抗FITC−HRP(D19142)、2分。
5. 50mMのイミダゾール−HCL,pH7.4、58mMの過酸化水素中、5.5 mMのDAB、1分。
6. ヘマトキシリンでの対比染色、5分。
Figure 0005721638
該プロトコルは、サイトケラチン陰性組織、並びに低及び高発現標的の双方を含む6つの異なった組織(肝臓、膵臓、乳房、扁桃腺、虫垂及び結腸癌)で試験した。
結果:
染色の強度:染色の強度に関しては、コンジュゲート沈着溶液中の高いDAB濃度程、強さが少ない染色を生じるという明瞭な傾向が観察された、つまり5.5mMのDAB<2.8mMのDAB<1.4mMのDAB。しかしながら、増加した強度はまた染色の鮮明度の減少と相関していた。これは、結腸癌の小細胞構造において特に見られた。全ての組織にわたって対比染色された青い核は、低濃度でよりも高DAB濃度で処理されたスライドにおいてより区別でき明瞭であった。
コンジュゲート沈着溶液中の15mMの過酸化水素は最も強い染色を生じるのに最適であったが、5.8、15及び58mM間の小さな差ではブロードな最適であった。全ての場合において溶液中のHを147mMまで増加させると、有意に強さが少ない染色を生じた。1.5mMの過酸化水素では、インキュベーション時間が1分であった場合、染色はまた少ない強さであったが、この場合、インキュベーション時間を3分まで増加させることによって強度は僅かに増加させることができた。
染色の強度は、DABの濃度及び過酸化水素濃度が低下された場合インキュベーションの時間に依存し、濃度が高い場合、インキュベーション時間に非依存性であった。
高DAB及び高Hの存在下でインキュベートされたスライド(スライド1−3(1分)及びスライド6−8(3分))は同一に見え、またスライド11及び12は対応してスライド16及び17と同一に見えた。他方、スライド28−30(低DAB、低H、3分)は、スライド23−25(低DAB、低H、1分)よりも有意に強い染色であった。時間の増加によるこの亢進は肝臓及び膵臓中の低発現標的の場合に最も明白であった。
結論:
実験10及び11は、広い範囲の結合剤、コンジュゲート及び反応条件を使用することができることを証明している。「最適」であるものは意図された用途に依存するが、典型的なパターンを有する速く鮮明なIHC染色、つまりEnvision Flexシステムによって生じる典型的な染色(DAKO、K8010)に似た染色を得るためには、次の組み合わせが推奨されうる:
(1) より小さいF(ab)−HRPコンジュゲートは、工程2における一次抗体の認識(D19150)、並びに工程4におけるコンジュゲートの認識(D19142)の双方となると、より大きなデキストランコンジュゲートよりも良好な信号雑音比をもたらす。
(2) 領域内で近接して離間している2から4のペルオキシダーゼ基質を含む、つまり2つの隣接するペルオキシダーゼ基質間の距離が2.5nm未満で、例えば2つ並べたリジンのサイズに等しい第一領域と、単一の検出可能な部分を含む第二の領域をその分子内に有し、これら二つの領域が2.5nmを越える距離、例えば3−20nmだけ該コンジュゲート分子内で分離しているコンジュゲートが本発明の最も効率的なコンジュゲートであり、つまり、それらは標的部位の周りに正確に沈着され、つまり、結果的にバックグラウンド染色及び/又は鮮明度の減少を生じる非特異的な沈着が避けられる。そのようなコンジュゲートの例は、4つのフェルラ酸残基、L150リンカーによって分離した1つのフルオレセインを含むD19185(D19185の構造は図1(3)に示される)でありうる。
(3) 効率的なコンジュゲートD19112及びD19185と組み合わせて低バックグラウンド結合剤D19150及びD19142を使用すると、広い範囲の条件にわたって非常に強く速いバックグラウンドのない特異的なシグナル増幅をもたらしうる。
(4) 任意の伝統的なIHC染色に(どの点でも)取って代わるIHC染色は、工程3において高過酸化水素と高DABを使用することにより鮮明度の増加を容認してシグナル強度の強さをわざと犠牲にして調製され得、つまり該方法は、より短いプロトコル時間、より少ない結合剤の量、標的検出のより広いダイナミックレンジ、より良好な信号雑音比、高発現及び非常に低発現の双方の標的に対するより高いシグナル強度、及び染色の鮮明度の増加をもたらす。
(5)幾つかの特殊な用途に対しては、他のコンジュゲート又はインキュベーション条件(上記の(1)から(3)ではなく)を使用することができる。これは、大きなデキストランコンジュゲートD18090を使用して染色された実験10、スライド27及び28によって例証されうる:これらのスライドは高発現標的を含む組織であり、それらは過剰染色されている(+4)。これは、イエス/ノーの結果が所望される場合又はつまり一次抗体からの弱いバックグラウンドを抑制することが望ましい場合に使用できる。逆に、実験11のスライド28−30によって例証されるように、低DAB(1.4mM)、低過酸化水素(5.8mM及び15mM)(1.5mMの過酸化水素,スライド30の場合には延長された反応時間と組み合わせて)を有利に使用して、高発現標的を過剰染色することなく低発現標的の染色を向上させることができる。
実験12
インキュベーション後の加熱が(米国特許第5863748号;同第5688966号;同第5767287号;同第5731158号;同第5583001号、同第5196306、同第6372937号又は同第6593100号(上で検討した)及びBobrow MN等(1989) J Immunol Methods 125:279-285;及びBobrow MN等(1992) J Immunol Methods 150:45-49)に記載された)チラミドシグナル増幅を有意に改善することが報告されている(Volante M.等(2000) J Histochem Cytochem 48:1583-1585)。実験12は、本発明の方法に従ってのリキッドパーマネントレッドでの染色の結果についての沈着後加熱の条件を評価する。
12のスライドを表(実験1を参照)の3つの異なった抗体を用いて、以下のプロトコルA又はBに従って処理した:
1.マウス抗サイトケラチン(希釈1:50)
2.マウス抗CD20(希釈1:200)
3.マウス抗BCL6(希釈1:75)
プロトコルA
1. 一次抗体、1分(1、2)又は5分(3)
2. ヤギ抗マウスF(ab’)−HRP(D19150)、ABCPTバッファー中40nM、1分;
3. 室温でS3006(DAKO)で洗浄、2分
4. 沈着媒体:コンジュゲートD21030 100nM+0.8mM DAB+5.8mM H、1分
5. 室温でS3006で2分洗浄、又はマイクロ波オーブンで5分煮沸
6. 抗FITC F(ab’)−AP、ABCPTバッファー中100nM、3分
7. 室温でS3006で洗浄、2分
8. LPR、5分。
プロトコルB:
1. 一次抗体、1分(1、2)又は5分(3)
2. ヤギ抗マウスF(ab’)−HRP(D19150)、ABCPTバッファー中40nM、1分;
3. 室温でS3006(DAKO)で洗浄,5分
4. コンジュゲートD21030 1μM+2.8mM DAB+5.8mM H、1分
5. 室温でS3006で5分洗浄、又はマイクロ波オーブンで5分煮沸
6. 抗FITC F(ab’)−AP、ABCPTバッファー中100nM、3分
7. 室温でS3006で洗浄、5分
8. LPR、5分。
結果
3つの異なった抗体で試行された12全てのスライドは+0.5から+3の範囲で染色された。「高」対「低」DABプロトコルの結果、及び「高温」対「低温」プロトコルの結果の評価は、CD20の高発現マーカーに対して、顕著であるが、高DAB(+2.5)又は低DAB(+3)の存在下及び室温での洗浄、又は高DAB及び高温(+2)対低DAB及び高温(+1.5)下で染色強度に少しの差が明らかになった。同じであるが更により有意な差(高DAB+2、低DAB+3;室温洗浄)が、標的が低く発現されている試料中(特に肝臓及び腎臓試料中)のサイトケラチンに対して観察された。煮沸洗浄の効果はDAB濃度の効果よりも更により明らかに見えたが、それはサイトケラチンの低発現のこれらの組織の染色強度に特徴的な低下(+1.5(低DAB)から+0.5(高DAB))を生じさせているためである。
BCL6では高プロトコル及び低プロトコル間に殆ど差がないが、再び、煮沸洗浄を受けるスライドは室温で洗浄されたものよりも強度が顕著に少なかった。
該実験は、沈殿工程後の煮沸洗浄が、感受性の低発現標的の場合には明らかに可視できる染色強度の低下を引き起こすことを示している。これらの知見は、染色強度の劇的な増加がコンジュゲート、つまりビオチニル−チラミド沈着工程後の煮沸洗浄の結果として報告されているVolante M.等(2000)(上を参照)による知見と対照をなす。
理論に拘束されるものではないが、我々は、ここに記載のコンジュゲート沈着が、(互いに共有的に結合した)本発明のコンジュゲート分子を含む水不溶性の沈殿物及び/又はDAB及びコンジュゲート分子を含む沈殿物の形成に主に関連していると推測する。そのような沈殿物は、該沈殿物が試料の標的タンパク質と堅牢な共有結合を形成しないので、試料に沈殿手順後に煮沸を施すと部分的に洗浄されて流されうる。これに対して、ビオチニル−チラミドコンジュゲート分子は芳香族アミノ酸上に沈着し、そこで共有結合を形成する。芳香族アミノ酸は典型的にはタンパク質構造内に隠されている。タンパク質変性を引き起こすインキュベーション後の加熱は、日特異的ビオチニル−チラミド沈殿物を除去しながら、チラミドに結合した芳香族残基の曝露を容易にし、それによって特異的シグナルを増加させうる。

Claims (21)

  1. (i)一又は複数の検出可能な標識
    (ii)少なくとも二つの物質を含み、その各々がペルオキシダーゼ活性を有する酵素の基質となりうるものである、ペルオキシダーゼ基質の部分
    を含む水溶性コンジュゲートであって、
    ここで、標識(i)とペルオキシダーゼ基質の部分(ii)が同じ化学物質ではなく、
    ここで、標識(i)とペルオキシダーゼ基質の部分(ii)がリンカーを介して結合され、該リンカーが少なくとも30の連続的に連結された原子の少なくとも一つの線状鎖を含む化合物であり、上記線状鎖は少なくとも30の連続的に連結された原子の距離だけ分離した少なくとも二つの分岐点を含み;
    ここで、標識(i)とペルオキシダーゼ基質の部分(ii)は少なくとも30の連続的に連結された原子によってコンジュゲート分子において分離され、
    ここで、二つの隣接するペルオキシダーゼ基質部分は30未満の連続的に連結された原子によって互いから分離されているコンジュゲート(ただし、(His) −GFP−EK−(Tyr) を除く)
  2. ペルオキシダーゼ活性を有する酵素の基質となりうる部分が、次の式:
    Figure 0005721638
    [上式中、
    は−H、−O−X、N(X)又は−S−Xであり;
    は−H、−O−X、−N(X)、又は−S−Xであり、
    は−H、−OH、−NH又は−SHであり;
    は−H、−O−X、−N(X)、又は−S−Xであり、
    は−H、−O−X、N(X)、又は−S−Xであり、
    は−CON(X)、又はCO−Xであり、
    ここで、
    Hは水素であり;
    Oが酸素であり、
    Sが硫黄であり、
    Nが窒素であり、
    XがH、アルキル又はアリールであり、
    を介してリンカーに連結される
    を有する請求項1に記載のコンジュゲート。
  3. 部分が、フェルラ酸、ケイ皮酸、アミノケイ皮酸、コーヒー酸、又はシナピン酸の残基である請求項2に記載のコンジュゲート。
  4. ペルオキシダーゼ酵素の基質となりうる部分の少なくとも二つがチロシン残基である請求項1に記載のコンジュゲート。
  5. ペルオキシダーゼ酵素の基質となりうる複数の部分の数が2から4である請求項1、2、3又は4に記載のコンジュゲート。
  6. 少なくとも一つの線状鎖が、次の式
    Figure 0005721638
    (上式中、R及びRはNH及びOから選択され、Rはメチル、エチル、プロピル、CHOCH、及び(CHOCHから選択される)の2から10の反復を含み、3以下の連続的に反復するエチルオキシ基を有するポリマーである請求項1、2、3、4又は5に記載のコンジュゲート。
  7. コンジュゲートがペルオキシダーゼ酵素の基質となりうる2から4の部分と一つの検出可能な標識を含み、上記部分と標識が一つの線状ポリマーを介して互いに連結され、上記部分と上記標識が、ポリマー鎖の少なくとも30の連続的に連結された原子によって相互に分離されたポリマーの二つの分岐点に結合された請求項1から6の何れかに記載のコンジュゲート。
  8. リンカーがデキストランポリマーと少なくとも一の第一及び少なくとも一の第二線状ポリマーを含み、上記少なくとも一の第一ポリマーがペルオキシダーゼ酵素基質となりうる2から4の部分にコンジュゲートされ、少なくとも一の上記第二ポリマーが一又は複数の検出可能な標識にコンジュゲートされ、上記少なくとも一の第一及び少なくとも一の第二ポリマーがデキストランにコンジュゲートされる請求項1から6の何れかに記載のコンジュゲート。
  9. 少なくとも一の第二ポリマーが二以上の標識を含み、上記二以上の標識の各々間の分子距離が少なくとも30の連続的に連結された原子である請求項8に記載のコンジュゲート。
  10. 検出可能な標識が蛍光物質又は特異的結合対のメンバーである請求項1から9の何れかに記載のコンジュゲート。
  11. ペルオキシダーゼ活性を持つ酵素が西洋わさびペルオキシダーゼである請求項1から10の何れかに記載のコンジュゲート。
  12. 請求項1から11の何れかに記載のコンジュゲートを含む組成物。
  13. 試料中のペルオキシダーゼ活性を有する標的の検出のためのキットオブパーツであって、請求項1〜11のいずれかに記載のコンジュゲートまたは請求項12に記載の組成物を含む、キットオブパーツ
  14. 試料中のペルオキシダーゼ活性を有する標的の検出方法において、
    III.
    e)請求項1から11の何れかに記載のコンジュゲート
    f)3,3’ジアミノベンジジン、及び
    g)過酸化物化合物
    を含む水溶液中で試料をインキュベートし、それによってコンジュゲートの沈殿物を形成し;
    IV. 試料中の化合物の沈殿物を検出し、それによって試料中のペルオキシダーゼ活性を検出する
    ことを含んでなる方法。
  15. 水溶液(i)が5mMを越える過酸化水素と0.25mMから6mMの3,3’ジアミノベンジジンを含有する請求項14に記載の方法。
  16. 3,3’ジアミノベンジジンの量が1.5mMを越える請求項14に記載の方法。
  17. ペルオキシダーゼ活性が西洋わさびペルオキシダーゼを含む試料にて検出される請求項14に記載の方法。
  18. 西洋わさびペルオキシダーゼが標的であり、又は標的に直接的に又は間接的に結合している請求項17に記載の方法。
  19. 標的がポリペプチド、核酸、炭水化物、脂質又はその誘導体、分子複合体、粒子、真核生物又は原核生物細胞又は微生物である請求項18に記載の方法。
  20. 試料が、生物学的試料、環境試料、又は化学的試料である請求項14から19の何れかに記載の方法。
  21. 試料が固体支持体に固定される請求項20に記載の方法。
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