以下、本発明の一実施形態を図1〜図26に基づいて説明する。図1には、一実施形態に係る画像形成装置としてのレーザプリンタ1000の概略構成が示されている。
このレーザプリンタ1000は、光走査装置1010、感光体ドラム1030、帯電装置1031、現像ローラ1032、転写チャージャ1033、除電ユニット1034、クリーニングユニット1035、トナーカートリッジ1036、給紙コロ1037、給紙トレイ1038、レジストローラ対1039、定着ローラ1041、排紙ローラ1042、排紙トレイ1043、通信制御装置1050、及び上記各部を統括的に制御するプリンタ制御装置1060などを備えている。なお、これらは、プリンタ筐体1044の中の所定位置に収容されている。
通信制御装置1050は、ネットワークなどを介した上位装置(例えばパソコン)との双方向の通信を制御する。
プリンタ制御装置1060は、CPU、該CPUにて解読可能なコードで記述されたプログラム及び該プログラムを実行する際に用いられる各種データが格納されているROM、作業用のメモリであるRAM、アナログデータをデジタルデータに変換するAD変換回路などを有している。そして、プリンタ制御装置1060は、上位装置からの要求に応じて各部を制御するとともに、上位装置からの画像情報を光走査装置1010に送る。
感光体ドラム1030は、円柱状の部材であり、その表面には感光層が形成されている。すなわち、感光体ドラム1030の表面が被走査面である。そして、感光体ドラム1030は、不図示の回転機構によって、図1における矢印方向に回転するようになっている。
帯電装置1031、現像ローラ1032、転写チャージャ1033、除電ユニット1034及びクリーニングユニット1035は、それぞれ感光体ドラム1030の表面近傍に配置されている。そして、感光体ドラム1030の回転方向に沿って、帯電装置1031→現像ローラ1032→転写チャージャ1033→除電ユニット1034→クリーニングユニット1035の順に配置されている。
帯電装置1031は、感光体ドラム1030の表面を均一に帯電させる。
光走査装置1010は、帯電装置1031で帯電された感光体ドラム1030の表面を、上位装置からの画像情報に基づいて変調された光束により走査し、感光体ドラム1030の表面に画像情報に対応した潜像を形成する。ここで形成された潜像は、感光体ドラム1030の回転に伴って現像ローラ1032の方向に移動する。なお、この光走査装置1010の構成については後述する。
トナーカートリッジ1036にはトナーが格納されており、該トナーは現像ローラ1032に供給される。
現像ローラ1032は、感光体ドラム1030の表面に形成された潜像にトナーカートリッジ1036から供給されたトナーを付着させて画像情報を顕像化させる。ここでトナーが付着した像(以下では、便宜上「トナー画像」ともいう)は、感光体ドラム1030の回転に伴って転写チャージャ1033の方向に移動する。
給紙トレイ1038には記録紙1040が格納されている。この給紙トレイ1038の近傍には給紙コロ1037が配置されており、該給紙コロ1037は、記録紙1040を給紙トレイ1038から1枚ずつ取り出し、レジストローラ対1039に搬送する。該レジストローラ対1039は、給紙コロ1037によって取り出された記録紙1040を一旦保持するとともに、該記録紙1040を感光体ドラム1030の回転に合わせて感光体ドラム1030と転写チャージャ1033との間隙に向けて送り出す。
転写チャージャ1033には、感光体ドラム1030の表面のトナーを電気的に記録紙1040に引きつけるために、トナーとは逆極性の電圧が印加されている。この電圧により、感光体ドラム1030の表面のトナー画像が記録紙1040に転写される。トナー画像が転写された記録紙1040は、定着ローラ1041に送られる。
定着ローラ1041では、熱と圧力とが記録紙1040に加えられ、これによってトナーが記録紙1040上に定着される。トナーが定着された記録紙1040は、排紙ローラ1042を介して排紙トレイ1043に送られ、排紙トレイ1043上に順次積み重ねられる。
除電ユニット1034は、感光体ドラム1030の表面を除電する。
クリーニングユニット1035は、感光体ドラム1030の表面に残ったトナー(残留トナー)を除去する。残留トナーが除去された感光体ドラム1030の表面は、再度帯電装置1031に対向する位置に戻る。
次に、前記光走査装置1010の構成について簡単に説明する。
この光走査装置1010は、一例として図2に示されるように、光源14、カップリングレンズ15、開口板16、シリンドリカルレンズ17、反射ミラー18、ポリゴンミラー13、偏向器側走査レンズ11a、像面側走査レンズ11b、及び走査制御装置(図示省略)などを備えている。
なお、以下では、便宜上、主走査方向に対応する方向を「主走査対応方向」と略述し、副走査方向に対応する方向を「副走査対応方向」と略述する。
カップリングレンズ15は、光源14から出力された光束を略平行光とする。
開口板16は、開口部を有し、カップリングレンズ15を介した光束のビーム径を規定する。
シリンドリカルレンズ17は、開口板16の開口部を通過した光束を、反射ミラー18を介してポリゴンミラー13の偏向反射面近傍に副走査対応方向に関して結像する。
光源14とポリゴンミラー13との間の光路上に配置される光学系は、偏向器前光学系とも呼ばれている。
ポリゴンミラー13は、高さの低い正六角柱状部材からなり、側面に6面の偏向反射面が形成されている。このポリゴンミラー13は、副走査対応方向に平行な軸のまわりを等速回転しながら、反射ミラー18からの光束を偏向する。
偏向器側走査レンズ11aは、ポリゴンミラー13で偏向された光束の光路上に配置されている。
像面側走査レンズ11bは、偏向器側走査レンズ11aを介した光束の光路上に配置されている。そして、この像面側走査レンズ11bを介した光束が、感光体ドラム1030の表面に照射され、光スポットが形成される。この光スポットは、ポリゴンミラー13の回転に伴って感光体ドラム1030の長手方向に移動する。このときの光スポットの移動方向が「主走査方向」である。また、感光体ドラム1030の回転方向が「副走査方向」である。
ポリゴンミラー13と感光体ドラム1030との間の光路上に配置される光学系は、走査光学系とも呼ばれている。なお、偏向器側走査レンズ11aと像面側走査レンズ11bの間の光路上、及び像面側走査レンズ11bと感光体ドラム1030の間の光路上の少なくとも一方に、少なくとも1つの折り返しミラーが配置されても良い。
光源14は、一例として図3に示されるような面発光レーザ素子100を有している。なお、本明細書では、レーザ光の発振方向をZ軸方向とし、Z軸方向に垂直な面内における互いに直交する2つの方向をX軸方向及びY軸方向として説明する。図3は面発光レーザ素子100をXZ面に平行に切断したときの切断面を示す図(縦断面図)である。
この面発光レーザ素子100は、発振波長が780nm帯の面発光レーザ素子であり、基板101、下部半導体DBR103、下部スペーサ層104、活性層105、上部スペーサ層106、上部半導体DBR107、コンタクト層109などを有している。
基板101は、n−GaAs基板である。
下部半導体DBR103は、第1下部半導体DBR103aと第2下部半導体DBR103bから構成されている。
第1下部半導体DBR103aは、n−GaAsからなるバッファ層を介して基板101の+Z側の面上に積層され、n−AlAsからなる低屈折率層と、n−Al0.3Ga0.7Asからなる高屈折率層のペアを37ペア有している(図4参照)。各屈折率層の間には、電気抵抗を低減するため、一方の組成から他方の組成へ向かって組成を徐々に変化させた厚さ約20nmの組成傾斜層(図示省略)が設けられている。そして、各屈折率層はいずれも、隣接する組成傾斜層の1/2を含んで、発振波長をλとするとλ/4の光学的厚さとなるように設定されている。なお、光学的厚さとその層の実際の厚さについては以下の関係がある。光学的厚さがλ/4のとき、その層の実際の厚さDは、D=λ/4n(但し、nはその層の媒質の屈折率)である。
第2下部半導体DBR103bは、第1下部半導体DBR103aの+Z側の面上に積層され、n−Al0.98Ga0.02Asからなる低屈折率層と、n−Al0.3Ga0.7Asからなる高屈折率層のペアを3ペア有している。各屈折率層の間には、電気抵抗を低減するため、一方の組成から他方の組成へ向かって組成を徐々に変化させた厚さ約20nmの組成傾斜層(図示省略)が設けられている。そして、高屈折率層は、隣接する組成傾斜層の1/2を含んで、λ/4の光学的厚さとなるように設定されている。また、低屈折率層は、隣接する組成傾斜層の1/2を含んで、3λ/4の光学的厚さとなるように設定されている。すなわち、第2下部半導体DBR103bの低屈折率層(n−Al0.98Ga0.02As)は、第1下部半導体DBR103aの低屈折率層(n−AlAs)に対して、Alの含有量が少なく、光学的厚さが3倍である。
下部スペーサ層104は、第2下部半導体DBR103bの+Z側に積層され、ノンドープの(Al0.1Ga0.9)0.5In0.5Pからなる層である。
活性層105は、下部スペーサ層104の+Z側に積層され、3層の量子井戸層と4層の障壁層とを有する3重量子井戸構造の活性層である。各量子井戸層は、0.7%の圧縮歪みを誘起する組成であるGaInAsPからなり、バンドギャップ波長が約780nmである。また、各障壁層は、0.6%の引張歪みを誘起する組成であるGaInPからなる。
上部スペーサ層106は、活性層105の+Z側に積層され、ノンドープの(Al0.1Ga0.9)0.5In0.5Pからなる層である。
下部スペーサ層104と活性層105と上部スペーサ層106とからなる部分は、共振器構造体とも呼ばれており、λの光学的厚さとなるように設定されている。なお、活性層105は、高い誘導放出確率が得られるように、電界の定在波分布における腹に対応する位置である共振器構造体の中央に設けられている。
上部半導体DBR107は、上部スペーサ層106の+Z側に積層され、p−Al0.9Ga0.1Asからなる低屈折率層とp−Al0.3Ga0.7Asからなる高屈折率層のペアを24ペア有している(図5参照)。各屈折率層の間には、電気抵抗を低減するため、一方の組成から他方の組成へ向かって組成を徐々に変化させた組成傾斜層(図示省略)が設けられている。そして、各屈折率層はいずれも、隣接する組成傾斜層の1/2を含んで、λ/4の光学的厚さとなるように設定されている。なお、被選択酸化層を含む低屈折率層は、3λ/4の光学的厚さとなるように設定されている。
上部半導体DBR107における低屈折率層の1つには、p−AlAsからなる被選択酸化層108が厚さ約30nmで挿入されている(図5参照)。この被選択酸化層108の挿入位置は、定在波の電界強度分布において、活性層105から3番目となる節に対応する位置である。
コンタクト層109は、上部半導体DBR107の+Z側に積層され、p−GaAsからなる層である。そして、このコンタクト層109は、p側電極113と導通する。
次に、面発光レーザ素子100の製造方法について簡単に説明する。なお、上記のように、基板101上に複数の半導体層が積層されたものを、以下では、便宜上「積層体」ともいう。
(1)上記積層体を有機金属気相成長法(MOCVD法)あるいは分子線エピタキシャル成長法(MBE法)による結晶成長によって作成する(図6参照)。
ここでは、MOCVD法の場合には、III族の原料には、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルガリウム(TMG)、トリメチルインジウム(TMI)を用い、V族の原料には、フォスフィン(PH3)、アルシン(AsH3)を用いている。また、p型ドーパントの原料には四臭化炭素(CBr4)を用い、n型ドーパントの原料にはセレン化水素(H2Se)を用いている。
(2)積層体の表面に一辺がL1(ここでは、25μm)の正方形状のレジストパターンを形成する。
(3)Cl2ガスを用いるECRエッチング法で、上記レジストパターンをフォトマスクとしてメサ構造体(以下では、便宜上「メサ」と略述する)を形成する。ここでは、エッチングの底面は下部スペーサ層104中に位置するようにした。
(4)フォトマスクを除去する(図7参照)。
(5)積層体を水蒸気中で熱処理する。これにより、被選択酸化層108中のAl(アルミニウム)がメサの外周部から選択的に酸化され、メサの中央部に、Alの酸化物108aによって囲まれた酸化されていない領域108bが残留する(図8参照)。すなわち、発光部の駆動電流の経路をメサの中央部だけに制限する、いわゆる酸化狭窄構造体が形成される。上記酸化されていない領域108bが電流通過領域(電流注入領域)である。このようにして、例えば幅4μm程度の略正方形状の電流通過領域が形成される。
(6)気相化学堆積法(CVD法)を用いて、SiNからなる保護層111を形成する(図9参照)。保護層111は、面発光素子を備えたチップの端面に施される必要は必ずしもない。
(7)レーザ光の射出面となるメサ上部にp側電極コンタクトの窓開けを行うためのエッチングマスクを作製する。
(8)BHF(バッファード・ふっ酸)にて保護層111をエッチングし、p側電極コンタクトの窓開けを行う。
(9)エッチングマスクを除去する(図10参照)。
(10)p側電極となる部分以外をフォトレジストによりマスクし、p側の電極材料の蒸着を行なう。
(11)アセトン等のフォトレジストが溶解する溶液中で超音波洗浄し、p側電極113を形成する(図11参照)。このp側電極113で囲まれた領域が射出領域である。p側電極は、Cr/AuZn/Auからなる多層膜、もしくはAuZn/Ti/Auからなる多層膜である。
(12)基板101の裏側を所定の厚さ(例えば、100μm程度)まで研磨した後、n側電極114を形成する(図12参照)。n側電極114は、AuGe/Ni/Auからなる多層膜である。
(13)アニールによって、p側電極113とn側電極114のオーミック導通をとる。これにより、メサは発光部となる。
(14)チップ毎に分離する。ここでは、隣接するチップ間に、基板にまで到達するチップ分離用の溝を形成した後、基板をへき開し、個々のチップとする。
そして、種々の後工程を経て、面発光レーザ素子100となる。
このように、下部半導体DBR103では、活性層105に近い3ペアに含まれる低屈折率層が、n−Al0.98Ga0.02Asからなる層であり、しかも、その光学的厚さを3λ/4としている。すなわち、下部スペーサ層から−Z方向に関して光学的厚さが3λの範囲内では、Al0.98Ga0.02Asが9λ/4を占め、Al0.3Ga0.7Asが3λ/4を占めている。
ところで、図13には、AlxGa1−xAsにおけるAlの組成比xと熱抵抗率との関係が示されている。熱抵抗率は、組成比xの増加とともに大きくなり、組成比xが0.5付近で極大になり、組成比xが0.5よりも多くなると、組成比xの増加とともに小さくなる。そして、組成比xが1.0のときに、熱抵抗率は、最も小さくなる。
Al0.3Ga0.7Asの熱抵抗率は8.5[K・cm/W]であり、Al0.9Ga0.1Asの熱抵抗率は3.9[K・cm/W]であり、AlAsの熱抵抗率は1.1[K・cm/W]である。
このように、AlAsは、Al0.9Ga0.1Asに比べて熱抵抗率が1/3以下であり、素子の放熱を向上させるためには極めて有効である。しかしながら、AlGaAs混晶は、Alの組成比が大きいほど酸化(腐食)されやすい性質を有しており、AlAsが最も酸化されやすい。
また、Al0.98Ga0.02Asの熱抵抗率は1.7[K・cm/W]であり、Al0.3Ga0.7Asの熱抵抗率は8.5[K・cm/W]である。すなわち、Al0.98Ga0.02Asの熱抵抗率は、Al0.3Ga0.7Asの熱抵抗率よりも小さい。
図14には、従来の面発光レーザ素子(「面発光レーザ素子A」という)における下部半導体DBRの構成が示されている。ここでは、n−AlAsからなる低屈折率層と、n−Al0.3Ga0.7Asからなる高屈折率層のペアを40ペア有している。すなわち、上記第1下部半導体DBR103aと同様な構成の下部半導体DBRが活性層105の近くまで積層されている。この場合は、下部スペーサ層から−Z方向に関して光学的厚さが3λの範囲内では、AlAsが6λ/4を占め、Al0.3Ga0.7Asが6λ/4を占めている。
面発光レーザ素子Aの熱抵抗を計算機シミュレーションによって算出したところ、2942[K/W]であった。
一方、同様にして面発光レーザ素子100の熱抵抗を計算機シミュレーションによって算出したところ、2857[K/W]であった。
このように、面発光レーザ素子100は、面発光レーザ素子Aよりも熱抵抗が小さく、面発光レーザ素子Aよりも活性層105の温度上昇を抑制することができる。
面発光レーザ素子100では、活性層105で発生した熱は、第2下部半導体DBR103bの低屈折率層を介して横方向(Z軸に直交する方向)に拡散されると考えられる。
ところで、図15には、第2下部半導体DBR103bの低屈折率層におけるAlの組成比と熱抵抗との関係を計算機シミュレーションによって求めた結果が示されている。この図15から、第2下部半導体DBR103bの低屈折率層におけるAlの組成比が0.97より大きければ、面発光レーザ素子Aよりも面発光レーザ素子の全体の熱抵抗を小さくすることができることがわかる。
図16には、特許文献2に開示されている面発光レーザ素子(「面発光レーザ素子B」という)における下部半導体DBRの構成が示されている。面発光レーザ素子Bでは、活性層105の近くのAlAs層の厚さを厚くしている。すなわち、下部スペーサ層から−Z方向に関して光学的厚さが3λの範囲内では、AlAsが9λ/4を占め、Al0.3Ga0.7Asが3λ/4を占めている。AlAsはAl0.9Ga0.1Asに比べて熱抵抗率が1/3以下である。そこで、下部半導体DBRにおける活性層105に近い部分の熱抵抗は、面発光レーザ素子100よりも小さく、活性層105の温度が上昇するのを抑制することができる。面発光レーザ素子Bは、AlAs層を厚くした構造の素子のために耐腐食性を確保する必要がある。つまり、絶縁膜などにより端面を保護したり、気密性の高いパッケージを用いるなど、十分な対策を講じる必要があり、コストの増加につながる。
しかしながら、AlGaAs混晶は、Alの組成比が大きいほど酸化(腐食)されやすい性質を有しており、AlAsが最も酸化されやすい。
そこで、一例として図17に示されるように、チップ分離用の溝を形成することによって空気中に露出された下部半導体DBR(以下では、便宜上「露出下部半導体DBR」ともいう)に注目した。
面発光レーザ素子Bを室温で大気中に1週間放置したときの、露出下部半導体DBRの走査型電子顕微鏡(SEM)像が図18に示されている。このとき、活性層105の近くの厚さが3λ/4のAlAs層(図19参照)に腐食がみられた。
また、面発光レーザ素子Bを温度85℃、湿度85%の雰囲気中で耐久性試験を行った。このとき、15時間経過した時点でチップ周辺から約200μmまで腐食が進行していた。そして、300時間経過すると、図20(A)及び図20(B)に示されるように、最も−Z側の厚さが3λ/4のAlAs層よりも+Z側の部分がはがれ落ちていた。このときの平面図が図21(A)に示され、残っている下部半導体DBRのSEM像が図21(B)に示されている。λ/4のAlAs層には腐食はみられない。図21(A)は、図37に示されるように面発光レーザ素子がアレイ状に形成されていた表面を上から撮影したものである。つまり、図12(A)は、図21(B)のAの位置から、+Z側の層はアレイ状に形成された表面を全てに渡って剥がれ落ちてしまっていることを示している。
このように、面発光レーザ素子Bでは、下部半導体DBRの端面が空気中に露出するため、AlAs層の厚さが厚いほど空気に触れる面積が増え、より腐食されやすくなる(図22参照)。そこで、面発光レーザ素子Bは、時間の経過とともにAlAs層の自然酸化による腐食が進行する。この腐食が進行すると、酸化によるAlAs層の体積膨張により、部分的な膜はがれを生じ、更に腐食が進行する。その結果、AlAsが酸化して絶縁体のAl2O3腐食した部分では電気が通らなくなり下部半導体DBRが高抵抗化したり、素子自体が破壊されるおそれがある。すなわち、面発光レーザ素子Bは、素子寿命が短い。
次に、面発光レーザ素子100の耐久性試験を行った。ここでは、一例として図23に示されるように、チップ分離用溝を注目領域としている。そして、試験前、20時間経過後、60時間経過後、2500時間経過後の注目領域が、図24に示されている。これによると、20時間経過後に部分的な腐食が見られ(黒く変色した部分が図18に示したような腐食が生じている)、60時間経過後には腐食の進行がほぼ停止し、2500時間経過後もさほど腐食が大きくなっていない。このときチップ周辺から50μm程度腐食していた。
面発光レーザ素子100では、活性層105の近くの厚い層は、AlAs層ではなく、Al0.98Ga0.02As層である。Al0.98Ga0.02Asは、Gaを含んでいるため、AlAsよりも酸化されにくく、面発光レーザ素子100は、面発光レーザ素子Bよりも耐腐食性が高い(図25参照)。
ところで、面発光レーザ素子Aの耐久性試験の結果が図26に示されている。これによると、2500時間経過後もほとんど腐食されていなかった。つまり、面発光レーザ素子Aでは、AlAs層がλ/4の厚さで腐食がし難いことが見て取れる。他方、放熱性をより向上させるためにはAlAs層の厚さを大きくしたいが、腐食しやすい。
面発光レーザ素子100は、耐久性試験では、チップ周辺部に部分的な腐食が見られるが、腐食はチップ周辺部にとどまり、発光部には達していない。すなわち、面発光レーザ素子100は、放熱性と耐腐食性とを両立することができる。
そして、面発光レーザ素子100は、放熱性に優れているため結晶の劣化速度が緩やかであることに加え、素子の耐腐食性(耐湿性)に優れていることから、長期信頼性(素子寿命)が改善されている。これにより光源の再利用が可能となる。
以上説明したように、本実施形態に係る面発光レーザ素子100によると、基板101上に、下部半導体DBR103、活性層105を含む共振器構造体、被選択酸化層108を有する上部半導体DBR107などが積層されている。
そして、下部半導体DBR103は、第1下部半導体DBR103aと第2下部半導体DBR103bから構成され、共振器構造体に近い第2下部半導体DBR103bは、n−Al0.98Ga0.02Asからなる低屈折率層と、n−Al0.3Ga0.7Asからなる高屈折率層のペアを3ペア有している。そして、第2下部半導体DBR103bでは、高屈折率層は、隣接する組成傾斜層の1/2を含んで、λ/4の光学的厚さとなるように設定され、低屈折率層は、隣接する組成傾斜層の1/2を含んで、3λ/4の光学的厚さとなるように設定されている。
第2下部半導体DBR103bの低屈折率層は、第1下部半導体DBR103aの低屈折率層であるn−AlAsと高屈折率層であるn−Al0.3Ga0.7Asとの間の熱抵抗率を有している。第2下部半導体DBR103bの低屈折率層は、厚くする必要があるため、第1下部半導体DBRの低屈折率層よりもAl組成を小さくする必要がある。従って、第2下部半導体DBR103bの低屈折率層は、第1下部半導体DBR103aの低屈折率層であるn−AlAsと高屈折率層であるn−Al0.3Ga0.7Asとの間の熱抵抗率を有する。
この場合は、高い放熱性と高い耐腐食性を両立させることができる。そこで、高コスト化を招くことなく、放熱性及び耐腐食性に優れた面発光レーザ素子を実現することができる。
また、下部半導体DBR103の各層は、その光学的厚さがλ/4の奇数倍となっているため、ブラッグ多重反射の位相条件を満たすことができる。そこで、第2下部半導体DBR103bは、反射鏡としての反射率を維持しつつ、素子の熱抵抗を低減させることができる。
また、各スペーサ層にAlGaInP混晶である(Al0.1Ga0.9)0.5In0.5Pを用いている。この場合は、メサを形成する際のエッチング工程において、エッチングを下部スペーサ層104中で精度良く停止させることができる。そこで、第2下部半導体DBR103bの端面がメサの側面(側壁)に露出されるのを防止することができる。すなわち、被選択酸化層108を酸化させる際に、第2下部半導体DBR103bが同時に酸化されるのを防止することができる。これにより、製造歩留まりが向上し、コストを下げることができる。
なお、各スペーサ層がいずれもAlGaInP混晶である必要はない。発振波長が長波長になると、スペーサ層に用いることができるAlGaAsにおけるAl組成比が小さくなり、熱抵抗が小さくなる。そこで、AlGaAsの熱抵抗率がAlGaInP混晶よりも小さい場合は、下部スペーサ層104を該AlGaAsとしても良い。
本実施形態に係る光走査装置1010によると、光源14が面発光レーザ素子100を有している。そこで、高コスト化を招くことなく、安定した光走査を行うことが可能である。
また、本実施形態に係るレーザプリンタ1000によると、光走査装置1010を備えているため、その結果として、高コスト化を招くことなく、高品質の画像を形成することが可能である。
次に、面発光レーザ素子100の変形例を説明する。各変形例は、第2下部半導体DBR103bの構成が異なる点に特徴を有している。なお、以下においては、面発光レーザ素子100との相違点を中心に説明するとともに、前述した面発光レーザ素子100と同一若しくは同等の構成部分については同一の符号を用い、その説明を簡略化し若しくは省略するものとする。
《変形例1》
変形例1の面発光レーザ素子(面発光レーザ素子1001という)では、図27に示されるように、第2下部半導体DBR103bにおける最も+Z側の低屈折率層のみが、その光学的厚さが5λ/4である。この場合であっても、放熱性及び耐腐食性を向上させることができる。Al0.98Ga0.02AsはAl0.3Ga0.7Asより熱抵抗率が小さいので、3λ/4が3ペアよりも、いちばん+Z側の層を5λ/4にするとより素子の熱抵抗が小さくなる。また、Al0.98Ga0.02Asは、AlAsよりは酸化されにくいのでAlAsよりは耐腐食性が向上する。
《変形例2》
変形例2の面発光レーザ素子(面発光レーザ素子1002という)では、図28に示されるように、第2下部半導体DBR103bが、下部スペーサ層104側に、それぞれ光学的厚さがλ/4の、n−AlGaAsからなる低屈折率層とn−Al0.3Ga0.7Asからなる高屈折率層を更に1ペア有している。この場合であっても、放熱性及び耐腐食性を向上させることができる。
《変形例3》
変形例3の面発光レーザ素子(面発光レーザ素子1003という)では、図29に示されるように、第2下部半導体DBR103bの各低屈折率層は、光学的厚さが3λ/4であり、3層構造を有している。該3層構造は、第1層がn−AlAsからなる層であり、第2層がAl0.9Ga0.1Asからなる層であり、第3層がn−AlAsからなる層である。3層構造における各層の光学的厚さはλ/4である。
前記面発光レーザ素子Bと比較すると、活性層に近い3ペアにおける低屈折率層の光学的厚さが3λ/4であることは同じであるが、該低屈折率層が、面発光レーザ素子Bではn−AlAsの単層であるのに対し、面発光レーザ素子1003では3層構造であり、n−Al0.9Ga0.1Asがn−AlAsに挟まれている。
Al0.9Ga0.1Asは、Gaを含んでいることから、n−AlAsよりも酸化されにくい。また、面発光レーザ素子1003では、AlAs層の光学的厚さがλ/4であるため、AlAs層における露出部分の面積が小さく、腐食されにくくなっている(図30参照)。
また、面発光レーザ素子1003の熱抵抗を計算機シミュレーションによって算出したところ、2794[K/W]であり、面発光レーザ素子100よりも小さかった(図31参照)。
ところで、図32には、上記3層構造の第2層におけるAlの組成比と熱抵抗との関係を計算機シミュレーションによって求めた結果が示されている。この図32から、上記3層構造の第2層におけるAlの組成比が0.54より大きければ、面発光レーザ素子Aよりも面発光レーザ素子の全体の熱抵抗を小さくすることができる。
《変形例4》
変形例4の面発光レーザ素子(面発光レーザ素子1004という)では、図33に示されるように、第2下部半導体DBR103bの3ペアのうち、−Z側の2ペアの低屈折率層は、3層構造で光学的厚さが3λ/4であり、最も+Z側の低屈折率層は、5層構造で光学的厚さが5λ/4である。
3層構造の低屈折率層は、第1層がn−AlAsからなる層であり、第2層がAl0.9Ga0.1Asからなる層であり、第3層がn−AlAsからなる層である。3層構造における各層の光学的厚さはλ/4である。
5層構造の低屈折率層は、第1層がn−AlAsからなる層であり、第2層がAl0.9Ga0.1Asからなる層であり、第3層がn−AlAsからなる層であり、第4層がAl0.9Ga0.1Asからなる層であり、第5層がn−AlAsからなる層である。5層構造における各層の光学的厚さはλ/4である。
《変形例5》
変形例5の面発光レーザ素子(面発光レーザ素子1005という)では、図34に示されるように、第2下部半導体DBR103bの各低屈折率層は、光学的厚さが3λ/4であり、5層構造を有している。該5層構造は、第1層がn−AlAsからなる層であり、第2層がAl0.9Ga0.1Asからなる層であり、第3層がn−AlAsからなる層であり、第4層がAl0.9Ga0.1Asからなる層であり、第5層がn−AlAsからなる層である。5層構造における各層の光学的厚さは同じである。
《変形例6》
変形例6の面発光レーザ素子(面発光レーザ素子1006という)では、図35に示されるように、第2下部半導体DBR103bの各低屈折率層は、光学的厚さが3λ/4であり、5層構造を有している。該5層構造は、第1層がn−AlAsからなる層であり、第2層がAl0.7Ga0.3Asからなる層であり、第3層がAl0.9Ga0.1Asからなる層であり、第4層がAl0.7Ga0.3Asからなる層であり、第5層がn−AlAsからなる層である。第2層及び第4層は、約20nmの厚さである。また、第1層及び第5層は、光学的厚さがλ/4である。第2層と第3層とを合わせた光学的厚さは、λ/4である。第2層と第3層と第4層とを合わせた光学的厚さは、λ/4である。
Al0.7Ga0.3Asは、Al0.9Ga0.3AsよりもAl組成比が小さいので、より酸化されにくい。また、面発光レーザ素子1004よりも、Al0.9Ga0.1Asからなる層の膜厚が小さく、その露出面積が小さくなり、より腐食されにくくなっている(図36参照)。また、Al0.7Ga0.3Asは、AlAsよりも格段に酸化されにくいので、酸化による体積膨張に起因する膜はがれが抑制され、腐食が進行しにくくなっている。
なお、上記3層構造及び5層構造におけるAl0.9Ga0.1As、Al0.7Ga0.3Asは一例であり、これに限定されるものではない。また、膜厚も一例であり、これに限定されるものではない。要求される耐腐食性に応じて、適切なAlの組成比、適切な膜厚を設定することができる。
なお、上記実施形態において、光源14は、前記面発光レーザ素子100に代えて、一例として図37に示される面発光レーザアレイ100Mを有しても良い。
この面発光レーザアレイ100Mは、2次元的に配列された複数(ここでは21個)の発光部が同一基板上に形成されている。ここでは、図37におけるX軸方向は主走査対応方向であり、Y軸方向は副走査対応方向である。複数の発光部は、すべての発光部をY軸方向に伸びる仮想線上に正射影したときに発光部間隔が等間隔d2となるように配置されている。なお、本明細書では、発光部間隔とは2つの発光部の中心間距離をいう。また、発光部の数は21個に限定されるものではない。
各発光部は、図37のA−A断面図である図38に示されるように、前述した面発光レーザ素子100と同様な構造を有している。そして、この面発光レーザアレイ100Mは、前述した面発光レーザ素子100と同様な方法で製造することができる。そこで、面発光レーザアレイ100Mは、高い放熱性と高い耐腐食性を両立させることができる。すなわち、放熱性及び耐腐食性に優れた面発光レーザアレイを実現することができる。
そして、各発光部は放熱特性が改善された構造であることから、発光部間の熱干渉が抑えられ、複数の発光部がより近接した(高密度)アレイとすることが可能である。
また、面発光レーザアレイ100Mは、通常の半導体プロセスで形成されるので、複数の発光部の位置精度が高い。さらに、メサ形成時の制御性が改善されているので低コスト化を図ることができる。
また、面発光レーザアレイ100Mでは、各発光部を副走査対応方向に延びる仮想線上に正射影したときの発光部間隔が等間隔d2であるので、点灯のタイミングを調整することで感光体ドラム1030上では副走査方向に等間隔で発光部が並んでいる場合と同様な構成と捉えることができる。
そして、例えば、上記間隔d2を2.65μm、光走査装置1010の光学系の倍率を2倍とすれば、4800dpi(ドット/インチ)の高密度書込みができる。もちろん、主走査対応方向の発光部数を増加したり、副走査対応方向のピッチd1を狭くして間隔d2を更に小さくするアレイ配置としたり、光学系の倍率を下げる等を行えばより高密度化でき、より高品質の印刷が可能となる。なお、主走査方向の書き込み間隔は、発光部の点灯のタイミングで容易に制御できる。
また、高出力での動作が可能な面発光レーザ素子100が、同一基板上に多数集積されているため、同時にマルチビームでの書き込みが容易となり、書き込み速度が格段に向上し、レーザプリンタ1000では書き込みドット密度が上昇しても印刷速度を落とすことなく印刷することができる。また、同じ書き込みドット密度の場合には印刷速度を更に速くすることができる。
また、面発光レーザアレイ100Mを情報通信機器に応用した場合、同時に多数のビームによるデータ伝送が可能となるので通信速度の高速化を図ることができる。更に、面発光レーザアレイ100Mは、高出力であることから低消費電力で動作し、特に機器の中に組み込んで利用した場合、温度上昇を抑制することができる。
また、上記実施形態において、前記面発光レーザ素子100に代えて、面発光レーザ素子100と同様にして製造され、面発光レーザ素子100と同様の発光部が1次元配列された面発光レーザアレイを用いても良い。
また、上記実施形態では、発光部の発振波長が780nm帯の場合について説明したが、これに限定されるものではない。感光体の特性に応じて、発光部の発振波長を変更しても良い。
また、上記面発光レーザ素子100及び面発光レーザアレイ100Mは、画像形成装置以外の用途にも用いることができる。その場合には、発振波長は、その用途に応じて、650nm帯、850nm帯、980nm帯、1.3μm帯、1.5μm帯等の波長帯であっても良い。この場合に、活性層を構成する半導体材料は、発振波長に応じた混晶半導体材料を用いることができる。例えば、650nm帯ではAlGaInP系混晶半導体材料、980nm帯ではInGaAs系混晶半導体材料、1.3μm帯及び1.5μm帯ではGaInNAs(Sb)系混晶半導体材料を用いることができる。
また、上記実施形態では、画像形成装置としてレーザプリンタ1000の場合について説明したが、これに限定されるものではない。
例えば、レーザ光によって発色する媒体(例えば、用紙)に直接、レーザ光を照射する画像形成装置であっても良い。
例えば、媒体が、CTP(Computer to Plate)として知られている印刷版であっても良い。つまり、光走査装置1010は、印刷版材料にレーザアブレーションによって直接画像形成を行い、印刷版を形成する画像形成装置にも好適である。
また、例えば、媒体が、いわゆるリライタブルペーパーであっても良い。これは、例えば紙や樹脂フィルム等の支持体上に、以下に説明するような材料が記録層として塗布されている。そして、レーザ光による熱エネルギー制御によって発色に可逆性を与え、表示/消去を可逆的に行うものである。
透明白濁型リライタブルマーキング法とロイコ染料を用いた発消色型リライタブルマーキング法があり、いずれも適用できる。
透明白濁型は、高分子薄膜の中に脂肪酸の微粒子を分散したもので、110℃以上に加熱すると脂肪酸の溶融により樹脂が膨張する。その後、冷却すると脂肪酸は過冷却状態になり液体のまま存在し、膨張した樹脂が固化する。その後、脂肪酸が固化収縮して多結晶の微粒子となり樹脂と微粒子間に空隙が生まれる。この空隙により光が散乱されて白色に見える。次に、80℃から110℃の消去温度範囲に加熱すると、脂肪酸は一部溶融し、樹脂は熱膨張して空隙を埋める。この状態で冷却すると透明状態となり画像の消去が行われる。
ロイコ染料を用いたリライタブルマーキング法は、無色のロイコ型染料と長鎖アルキル基を有する顕消色剤との可逆的な発色及び消色反応を利用している。レーザ光により加熱されるとロイコ染料と顕消色剤が反応して発色し、そのまま急冷すると発色状態が保持される。そして、加熱後、ゆっくり冷却すると顕消色剤の長鎖アルキル基の自己凝集作用により相分離が起こり、ロイコ染料と顕消色剤が物理的に分離されて消色する。
また、媒体が、紫外光を当てるとC(シアン)に発色し、可視光のR(レッド)の光で消色するフォトクロミック化合物、紫外光を当てるとM(マゼンタ)に発色し、可視光のG(グリーン)の光で消色するフォトクロミック化合物、紫外光を当てるとY(イエロー)に発色し、可視光のB(ブルー)の光で消色するフォトクロミック化合物が、紙や樹脂フィルム等の支持体上に設けられた、いわゆるカラーリライタブルペーパーであっても良い。
これは、一旦紫外光を当てて真っ黒にし、R・G・Bの光を当てる時間や強さで、Y・M・Cに発色する3種類の材料の発色濃度を制御してフルカラーを表現し、仮に、R・G・Bの強力な光を当て続ければ3種類とも消色して真っ白にすることもできる。
このような、光エネルギー制御によって発色に可逆性を与えるものも上記実施形態と同様な光走査装置を備える画像形成装置として実現できる。
また、像担持体として銀塩フィルムを用いた画像形成装置であっても良い。この場合には、光走査により銀塩フィルム上に潜像が形成され、この潜像は通常の銀塩写真プロセスにおける現像処理と同等の処理で可視化することができる。そして、通常の銀塩写真プロセスにおける焼付け処理と同等の処理で印画紙に転写することができる。このような画像形成装置は光製版装置や、CTスキャン画像等を描画する光描画装置として実施できる。
また、一例として図39に示されるように、複数の感光体ドラムを備えるカラープリンタ2000であっても良い。
このカラープリンタ2000は、4色(ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー)を重ね合わせてフルカラーの画像を形成するタンデム方式の多色カラープリンタであり、ブラック用のステーション(感光体ドラムK1、帯電装置K2、現像装置K4、クリーニングユニットK5、及び転写装置K6)と、シアン用のステーション(感光体ドラムC1、帯電装置C2、現像装置C4、クリーニングユニットC5、及び転写装置C6)と、マゼンタ用のステーション(感光体ドラムM1、帯電装置M2、現像装置M4、クリーニングユニットM5、及び転写装置M6)と、イエロー用のステーション(感光体ドラムY1、帯電装置Y2、現像装置Y4、クリーニングユニットY5、及び転写装置Y6)と、光走査装置2010と、転写ベルト2080と、定着ユニット2030などを備えている。
各感光体ドラムは、図39中の矢印の方向に回転し、各感光体ドラムの周囲には、回転方向に沿って、それぞれ帯電装置、現像装置、転写装置、クリーニングユニットが配置されている。各帯電装置は、対応する感光体ドラムの表面を均一に帯電する。帯電装置によって帯電された各感光体ドラム表面に光走査装置2010により光が照射され、各感光体ドラムに潜像が形成されるようになっている。そして、対応する現像装置により各感光体ドラム表面にトナー像が形成される。さらに、対応する転写装置により、転写ベルト2080上の記録紙に各色のトナー像が転写され、最終的に定着ユニット2030により記録紙に画像が定着される。
光走査装置2010は、前記面発光レーザ素子100と同様にして製造された面発光レーザ素子及び面発光レーザアレイのいずれかを含む光源を、色毎に有している。そこで、上記光走査装置1010と同様の効果を得ることができる。また、カラープリンタ2000は、この光走査装置2010を備えているため、上記レーザプリンタ1000と同様の効果を得ることができる。
ところで、カラープリンタ2000では、各部品の製造誤差や位置誤差等によって色ずれが発生する場合がある。このような場合であっても、光走査装置2010の各光源が前記面発光レーザアレイ100Mと同様な面発光レーザアレイを有していると、点灯させる発光部を選択することで色ずれを低減することができる。