従来の課題を解決するために、第1の発明の自動製パン機は、被調理材を収容する容器と、前記容器の周囲に配設し前記容器を加熱する加熱手段と、前記容器内の被調理材を撹拌する撹拌手段と、前記被調理材の温度を直接的または間接的に検出する温度検出手段と、操作条件を設定する操作部と、前記操作部で設定された条件と、前記温度検出手段検出された前記被調理材の温度に基づき、前記加熱手段および前記撹拌手段を駆動し前記被調理材の混合から焼成までの工程を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記容器に前記被調理材の一部の少なくとも生米と水を投入し炊飯して作製したご飯に、前記容器に前記被調理材の残りを投入してパンを作製する工程を行うものである。
本発明によれば、容器に被調理材の一部の少なくとも生米と水を投入し炊飯してご飯を作製したものに、容器に被調理材の残りを投入してパンを作製するようにしてあるので、米を米粉に粉砕する必要がなく、製パンする際の時間の短縮が図れると共に、静音化が図れるようになる。また、米の粉砕による米粒のデンプンが損傷を生じて膨らみが悪くなる心配もなく、簡単にご飯を使ったおいしいパンを作ることができる。
さらに、この機器で米を炊飯してできたご飯を被調理材として用いるので、炊飯したご飯を準備する必要がなく手軽に炊飯したご飯を製パンすることができる。
ここで、炊飯したご飯は水分量が多く、ご飯を準備したものを使おうとすると、保管の状態、例えばラップをして冷蔵した場合や、冷凍したものを解凍した場合、室温で放置した場合など、さらには、炊飯した条件、例えば、炊飯器の性能ばらつき、早炊きなどの炊飯設定条件などでは、ご飯に含まれる水分量が変化して、製パンしたときに水分量のばらつきで、うまく膨らまなかったり、ベタッとしたものになったりする心配もある。
しかしながら、被調理材の一部の少なくとも生米と水を投入し炊飯してご飯を作製したものに、容器に被調理材の残りを投入してパンを作製するようにしてあるので、製パンに適した炊飯条件で作製したご飯が得られ、炊飯したご飯を用いて出来上がりの安定した製パンを行うことができる。
特に、米を炊飯してできたご飯に米粉を被調理材として用いたパンにおいては、小麦を用いていないので、小麦アレルギーの人でも食べられるようになるが、小麦に比べ、米粉は水を多量に含み、小麦パンが膨らむ要素のグルテンを有しておらず、グルテンの代替品を用いても膨らみにくいため、捏ね方や水分量など作り方が難しく、パン材料の炊飯・捏ねから焼成までの種々の工程を自動製パン機で一貫して行うことで、炊飯したご飯から出来上がりの安定した製パンを行うことができる。
また、第2の発明にかかる自動製パン機は、特に第1の発明において、前記操作部が、前記容器に前記被調理材の一部の少なくとも生米と水を投入し炊飯して作製したご飯に、前記容器に前記被調理材の残りを投入してパンを作製する工程と、小麦粉を主とした前記被調理材を用いてパンを作製する工程を選択する工程選択手段を有するものである。
本発明によれば、容器に被調理材の一部の生米と水を投入し炊飯してご飯を作製したものに、容器に被調理材の残りを投入してパンを作製する工程と、小麦粉を主とした被調理材を用いてパンを作製する工程を選択する選択手段を有するので、炊飯したご飯を用いて作製するパンと小麦粉を主とした従来のパンが簡単に切り替えられ、使用者の好みにあったパンを手軽に作製することできる。
特に、炊飯したご飯を用いて作製するパンは、小麦粉を主とした従来のパンと共通するようなパンのメニュー例えば食パンやレーズンなどの具入りパンができるので、選択手段で炊飯したご飯を用いて作製するパンかあるいは小麦粉を主とした従来のパンかを選択してパンのメニューを選ぶことが出来、使用者にとって判りやすく、操作性のよい機器を提供することができる。
第3の発明にかかる自動製パン機は、特に第1または2の発明において、前記操作部が、前記容器に前記被調理材の一部の生米と水を投入し炊飯して作製したご飯に、前記被調理材の残りにグルテンを含まない前記被調理材を用いてグルテンを含まないパンを作製する工程と、小麦粉を主とした前記被調理材を用いてパンを作製する工程を選択する工程選択手段を有するものである。
本発明によれば、容器に被調理材の一部の生米と水を投入し炊飯してご飯を作製したものに、被調理材の残りにグルテンを含まない被調理材を用いてグルテンを含まないパンを作製する工程と、小麦粉を主とした被調理材を用いてパンを作製する工程を選択する選択手段を有するので、グルテンを含まないパンを作製する工程と小麦粉を主とした従来のパンが簡単に切り替えられ、使用者の好み必要性にあったパンを手軽に作製することができる。
また、第4の発明にかかる自動製パン機は、特に第1〜3のいずれかの発明において、前記制御部が、前記容器に前記被調理材の一部の生米と水を投入し炊飯してご飯を作製する時に、前記被調理材を撹拌するよう前記撹拌手段を制御するものである。
本発明によれば、容器に被調理材の一部の生米と水を投入し炊飯してご飯を作製するときに、撹拌手段で被調理材を撹拌するので、生米と水の状態で攪拌することで、生米の吸水を早く均一にすることができ、炊飯中に攪拌することで温度分布を平均にすることができ、更に製パン時の捏ねに適するように混ぜることができるので、製パンに適した条件で炊飯時間を短縮することができる。
また、第5の発明にかかる自動製パン機は、特に第1〜4のいずれかの発明において、前記制御部が、前記容器に前記被調理材の一部の生米と水を投入し炊飯してご飯を作製する時に、生米のでんぷんの糊化が始まるデンプン糊化温度で加熱するよう前記加熱手段を制御するものである。
本発明によれば、容器に被調理材の一部の生米と水を投入し炊飯してご飯を作製するときに、生米のでんぷんの糊化が始まるデンプン糊化温度で加熱するので、炊飯時の加熱量を小さくでき、この機器の機体温度の上昇を抑えることができる。
そして、冷却は必要となるが、製パン時に用いるイースト菌をこの機器の機体内に保管することが容易にできるようになるとともに、炊飯時から製パンに至るときに必要な冷却期間を短縮することができる。ここで、製パン時に用いるイースト菌は、温度が27〜36℃でイーストが最も活動的になり、60℃以上で死滅する。
このため、製パン時はパンを焼成する前まで、すなわち、イースト菌の保管、捏ね、発
酵の各期間は少なくとも常温に近い温度にしておかねばならず、炊飯時の加熱量を小さくすることで、イースト菌の冷却保管を容易にして、イースト菌の冷却手段を簡易とすることができ、イースト菌の温度管理が容易となり、炊飯したご飯を用いて安定した製パンを行うことができる。
また、第6の発明にかかる自動製パン機は、特に第1〜5のいずれかの発明において、前記操作部が、炊飯する米量または炊飯したご飯の量を設定する設定手段を有するものである。
本発明によれば、この機器で炊飯する米量あるいは炊飯したご飯の量を設定する設定手段を有するので、使用するご飯量に応じたメニューが選択できるようになり、例えば、ご飯量と他の被調理材の比率を変えて、出来上がりのパンの膨らみつまり体積を合わせるなどのバリエーションを増すことができる。
また、第7の発明にかかる自動製パン機は、特に第1〜6のいずれかの発明において、前記操作部に表示部が設けられ、前記操作部は、炊飯する米量または炊飯したご飯の量を設定する設定手段を有し、前記設定手段で設定されたご飯の量に基づき、ご飯以外の使用する前記被調理材の量を前記表示部により表示するものである。
本発明によれば、設定手段で設定されたこの機器で炊飯する米量あるいはご飯の量に基づき、ご飯以外の使用する被調理材の量を表示部に表示するので、使用者がご飯以外の使用する被調理材を間違えないように手順よく準備することが出来、使い勝手が向上するとともに、炊飯したご飯を用いて安定した製パンを行うことができる。
また、第8の発明にかかる自動製パン機は、特に第1〜7のいずれかの発明において、前記被調理材に使用する炊飯されたご飯の量と残りの前記被調理材の量の割合を変えて、出来上がりのパンのご飯の含有割合を変化させる選択手段を有するものである。
本発明によれば、調理材に使用する炊飯されたご飯の量と残りの他の被調理材の量の割合を変えて、出来上がりのパンのご飯の含有割合を変化させる選択手段を有するので、ご飯量と出来上がりのパンの膨らみつまり体積を変えることが出来、出来上がりのパンの見映えを調整することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は本発明の第1の実施の形態における自動製パン機の要部断面図、図2は本発明の第1の実施の形態における自動製パン機の制御ブロック図、図3は本発明の第1の実施の形態における自動製パン機の操作部の表示例を示す図である。
図4は本発明の第1の実施の形態における小麦粉を主とした従来のパンの工程図、図5は本発明の第1の実施の形態におけるご飯を用いて作製するパンの工程図である。
図6は本発明の第1の実施の形態におけるご飯を用いて作製するパンの工程のフローチャート(フローA)、図7は本発明の第1の実施の形態におけるご飯を用いて作製するパンの工程のフローチャート(フローB)、図8は本発明の第1の実施の形態におけるご飯を用いてグルテンを含まないパンを作製する工程図、図9は本発明の第1の実施の形態におけるご飯を用いてグルテンを含まないパンを作製する工程のフローチャート(フローC)である。
図10は本発明の第1の実施の形態における炊飯したご飯を用いてグルテンを含まないパンを作製する工程のフローチャート(フローD)、図11は本発明の第1の実施の形態における炊飯したご飯を用いてグルテンを含まないパンを作製する工程のフローチャート(フローE)である。
図1、図2に示すように、本実施の形態における自動製パン機は、機器本体21内部に設けた加熱室22(焼成室)と、加熱室22内に着脱自在に収納され被調理材を収容する容器(焼成ケース)23が配設してある。
この容器23内には被調理材を攪拌する撹拌手段である練り羽根24が設けられ、製パン中または炊飯時において練り羽根24により被調理材を攪拌するようになっている。また、機器本体21の上部には開口部を覆う開閉自在な外蓋25が設けられ、加熱室22内の下方の容器23の外周に位置して外周部より容器23を加熱する加熱手段26が設けてある。
そして、容器23の温度を検知して被調理材の温度を間接的に検出する温度検出手段27が容器23に当接して設けられ、温度検出手段27で検出された前記被調理材の温度に基づき、機器本体21上部に配設した操作部28で設定された設定内容に対応する所定のシーケンスで、制御部29によって前記加熱手段26および練り羽根24を駆動制御し前記被調理材の炊飯あるいは混合から焼成までを自動的に行うようになっている。
機器本体21の上部の外蓋25の内部には、イースト菌を自動投入するイースト菌自動投入器30と、小麦粉などの粉を投入する粉自動投入器31と、具材を投入する具材自動投入器32が配設され、さらに、機器本体21の適所に上部の外蓋25内を冷却してイースト菌を冷却する冷却ファン33と冷却ファン33の空気を取り入れる吸気口34および排気口35が設けられ、イースト菌を冷却して常温に保つようにしてある。
さらに、粉自動投入器31には、粉が固まって落ちにくいので、粉自動投入器31に接して振動を与えて粉を落としやすいようにバイブレーター36が設けられ、この粉自動投入器31は炊飯したご飯を用いて作製するパンの工程の炊飯時に、一所に炊くことのできない小麦粉や上新粉あるいは餅粉などの被調理材をあとから投入する必要性があるものを、適切な投入時期に自動的に投入するものである。
さらに、この機器の雰囲気温度などの影響で温度検出手段27により検出された被調理材の温度が所定の温度より低いときは、加熱手段26で加熱するとともに、温度検出手段27で検出された被調理材の温度が所定の温度より高いときは、被調理材の発酵時間を短縮するなど、温度検出手段27で検出する温度によって調整するようにしてある。
また、図3に示すように、操作部28には、小麦粉を主とした従来のパンの工程と、炊飯したご飯を用いて作製するパンの工程と、炊飯したご飯を用いてグルテンを含まないパンを作製する工程を選択する工程選択手段37と表示部38が設けられ、表示部38に工程毎の設定内容を表示し、例えば食パンやレーズンなどの具入りパンなどのそれぞれの工程に共通のメニューと、上記工程の単独メニューを表示してメニュー選択手段39で選べるようになっている。
さらに、操作部28には、炊飯したご飯を用いて作製するパンの工程のときに、この機器で炊飯する米量を設定するご飯量設定手段40と、出来上がりのパンのご飯の含有割合を変化させるがご飯割合選択手段41が設けられ、ご飯量設定手段40で設定されたご飯の量とご飯割合選択手段41で選択された含有割合に基づき、ご飯以外の使用する前記被
調理材の量を表示部38に表示するようになっている。
なお、制御部29は、マイクロコンピュータによって実現され制御手段として機能する。
以上のように構成された自動製パン機について、それぞれの工程のパンの作製について説明する。
まず、小麦粉を主とした従来のパンの工程についてすると、図4に示すように、はじめに操作部28で小麦粉を主とした従来のパンの工程を選択して(ステップ101)、表示部38に、例えば食パンやレーズンなどの具入りパンなどの共通のメニューあるいは小麦粉を主とした従来のパンの個別のメニューを表示して(ステップ102)、メニュー選択手段39で選択する(ステップ103)。
次に、選択された内容に基づき表示部38に必要な具材の量を表示して(ステップ104)、使用者が確認して小麦粉や、イースト菌などの具材をこの機器にセットし(ステップ105)、準備が完了したら、スタートボタン42を押して、この機器の製パンを開始させる(ステップ106)。
この機器は、操作部28で設定された設定内容に対応する所定のシーケンスで、温度検出手段27で検出された前記被調理材の温度に基づき、加熱手段26および練り羽根24を駆動制御し、ねり、ねかせ、発酵、焼き上げを組み合わせて、小麦粉を主とした従来のパンを作製する(ステップ107)。ここでは、ねり、ねかせ、発酵、焼き上げのシーケンスについては詳細な説明は省略する。
炊飯したご飯を用いて作製するパンの工程について説明すると、図5に示すように、はじめに操作部28で炊飯したご飯を用いて作製するパンの工程を選択して(ステップ201)、ご飯量設定手段40においてこの機器で炊飯する米量を設定する(ステップ202)とともに、ご飯割合選択手段41で出来上がりのパンのご飯の含有割合を選択する(ステップ203)。
表示部38に、例えば食パンやレーズンなどの具入りパンなどの共通のメニューあるいは炊飯したご飯を用いて作製するパンの個別のメニューを表示して(ステップ204)、メニュー選択手段39で選択(ステップ205)する。
選択された内容に基づき表示部38に必要な具材の量を表示(ステップ206)して、使用者が確認して容器23に水と米を所定量投入するとともに、イースト菌自動投入器30にイースト菌を、粉自動投入器31にグルテン、小麦粉等の粉品を、そして、具材自動投入器32に具材を所定量セットし(ステップ207)、準備が完了したら、スタートボタン42を押して、この機器の製パンを開始させる(ステップ208)。
この機器は、操作部28で設定された設定内容に対応する所定のシーケンスで、温度検出手段27検出された前記被調理材の温度に基づき、加熱手段26および練り羽根24を駆動制御し、炊飯、ねり、ねかせ、発酵、焼き上げを組み合わせて、炊飯したご飯を用いたパンを作製する(ステップ209)。
ここで、炊飯、ねり、ねかせ、発酵、焼き上げのシーケンスについては詳細な説明は省略するが、代表例の簡単な2つのフローチャートA、Bについて説明する。
まず、フローチャートAについて、図6に示すように、ステップ211で炊飯する。こ
の時、練り羽根24で米と水をゆっくりと間欠的に撹拌するようにしてあるとともに、炊飯のための加熱温度は生米のでんぷんの糊化が始まるデンプン糊化温度(α化温度近傍、具体的には60〜65℃)で加熱するようにしてある(詳細の炊飯のシーケンスについては省略する)。
炊飯が終了すると、ステップ212で練り羽根24で練り、ステップ213において粉自動投入器31で小麦粉等の粉品を投入して、ステップ214で練りを行い炊飯したご飯と小麦粉等の粉品を混ぜるとともに、ステップ212からステップ214の間で、炊飯したご飯をイースト菌の最も活動的する温度に冷却していく。
この時、イースト菌を常温に保つために設けた冷却ファン33あるいは他の冷却手段で、容器23を冷却して炊飯したご飯を冷却するようにしてもよい。次に、ステップ215で、炊飯したご飯と小麦粉等の粉品の混合品をねかせるが、この時に、イースト菌をイースト菌自動投入器30で自動投入する。
次に、ステップ216で、さらに第3練りを行うが、この時に、具材自動投入器32でレーズン等の具材を投入する。そして、ステップ217で焼き上げ、ステップ218で焼き上がったら完成で、容器23から取り出して完了する。
次に、フローチャートBについて、図7に示すように、ステップ221で炊飯する。フローチャートAと同様に練り羽根24で米と水をゆっくりと間欠的に撹拌するようにしてあるとともに、炊飯のための加熱温度は生米のでんぷんの糊化が始まるデンプン糊化温度(α化温度近傍、具体的には60〜65℃)で加熱するようにしてある(詳細の炊飯のシーケンスについては省略する)。
ステップ222において、粉自動投入器31で小麦粉等の粉品を投入、ステップ223で練りを行い炊飯したご飯と小麦粉等の粉品を混ぜるとともに、ステップ221からステップ222の間で、炊飯したご飯をイースト菌の最も活動的する温度に冷却していく。この時、イースト菌を常温に保つために設けた冷却ファン33あるいは他の冷却手段で、容器23を冷却して炊飯したご飯を冷却するようにしてもよい。
ステップ224において、炊飯したご飯と小麦粉等の粉品の混合品をねかせるが、この時に、イースト菌をイースト菌自動投入器30で自動投入する。次に、ステップ225で、さらに練り、この時に、具材自動投入器32でレーズン等の具材を投入する。そして、ステップ226で焼き上げ、ステップ227で焼き上がったら完成で、容器23から取り出して完了する。
上述のフローチャートAでは、練りの回数が多いため、練った炊飯ご飯の粒が細かくなり、パンしたときの米の粒子が残りにくい利点がある。フローチャートBでは、練りの回数が少ないため、パン作製の時間の短縮が図れる。
炊飯したご飯を用いて作製するパンの工程で作製したものパンは、添加する小麦粉やグルテン等の添加する割合にもよるが、実験によれば、ご飯と例えば小麦粉の割合が50%程度まであれば、小麦粉を主とした従来のパンの工程で作製したものとほぼ同等の膨らみが得られ、もちもちとした食感で、よりおいしく感じられた。
炊飯したご飯を用いてグルテンを含まないパンを作製する工程について説明すると、上述した炊飯したご飯を用いて作製するパンの工程とほぼ同じで、被調理材にグルテンを含まない材料を用いるようにしてあり、図8に示すように、はじめに操作部28で炊飯したご飯を用いて作製するパンの工程を選択する(ステップ301)。
次に、ご飯量設定手段40でこの機器で炊飯する米量を設定する(ステップ302)とともに、ご飯割合選択手段41で出来上がりのパンのご飯の含有割合を選択する(ステップ303)。
表示部38に、例えば食パンやレーズンなどの具入りパンなどの共通のメニューあるいは炊飯したご飯を用いて作製するパンの個別のメニューを表示して(ステップ304)、メニュー選択手段39で選択する(ステップ305)。
選択された内容に基づき表示部38に必要な具材の量を表示して(ステップ306)、使用者が確認して容器23に水と米を所定量投入するとともに、イースト菌自動投入器30にイースト菌を、粉自動投入器31にグルテンを含まない上新粉、餅粉等の粉品を、そして、具材自動投入器32に具材を所定量セットし(ステップ307)、準備が完了したら、スタートボタン42を押して、この機器の製パンを開始させる(ステップ308)。
この機器は、操作部28で設定された設定内容に対応する所定のシーケンスで、温度検出手段27検出された前記被調理材の温度に基づき、加熱手段26および練り羽根24を駆動制御し、炊飯、ねり、ねかせ、発酵、焼き上げを組み合わせて、炊飯したご飯を用いたパンを作製する(ステップ309)。
ここで、炊飯、ねり、ねかせ、発酵、焼き上げのシーケンスについては詳細な説明は省略するが、代表例の簡単な3つのフローチャートC、フローチャートD、フローチャートEについて説明する。
まず、フローチャートCについて、図9に示すように、ステップ311で炊飯する。この時、練り羽根24で米と水をゆっくりと間欠的に撹拌するようにしてあるとともに、炊飯のための加熱温度は生米のでんぷんの糊化が始まる60〜65℃(ステップα化温度近傍)で加熱するようにしてある(詳細の炊飯のシーケンスについては省略する)。
ステップ312において練り羽根24で練り、ステップ313において粉自動投入器31でグルテンを含まない上新粉、餅粉等の粉品を投入、ステップ314において練りを行い炊飯したご飯とグルテンを含まない上新粉、餅粉等の粉品を混ぜるとともに、ステップ312からステップ314の間で、炊飯したご飯をイースト菌の最も活動的する温度に冷却していく。
この時、イースト菌を常温に保つために設けた冷却ファン33あるいは他の冷却手段で、容器23を冷却して炊飯したご飯を冷却するようにしてもよい。ステップ315において、炊飯したご飯とグルテンを含まない上新粉、餅粉等の粉品の混合品をねかせ、この時に、イースト菌をイースト菌自動投入器30で自動投入する。
ステップ316において、さらに第3練りを行い、この時に、具材自動投入器32でレーズン等の具材を投入する。そして、ステップ317で焼き上げ、ステップ318で焼き上がったら完成で、容器23から取り出して完了する。
フローチャートDについて、図10に示すように、ステップ321で炊飯する。この時、フローチャートCと同様に練り羽根24で米と水をゆっくりと間欠的に撹拌するようにしてあるとともに、炊飯のための加熱温度は生米のでんぷんの糊化が始まるデンプン糊化温度(α化温度近傍、具体的には60〜65℃)で加熱するようにしてある(詳細の炊飯のシーケンスについては省略する)。
ステップ322において粉自動投入器31で小麦粉等の粉品を投入、ステップ323で練りを行い炊飯したご飯とグルテンを含まない上新粉、餅粉等の粉品を混ぜるとともに、ステップ322からステップ323の間で、炊飯したご飯をイースト菌の最も活動的する温度に冷却していく。この時、イースト菌を常温に保つために設けた冷却ファン33あるいは他の冷却手段で、容器23を冷却して炊飯したご飯を冷却するようにしてもよい。
ステップ324において、炊飯したご飯とグルテンを含まない上新粉、餅粉等の粉品の混合品をねかせ、この時に、イースト菌をイースト菌自動投入器30で自動投入する。次に、ステップ325で、さらに練り、この時に、具材自動投入器32でレーズン等の具材を投入する。そして、ステップ326で焼き上げ、ステップ327で焼き上がったら完成で、容器23から取り出して完了する。
最後にフローチャートEについて、図11に示すように、ステップ331で炊飯開始する。この時、フローチャートAと同様に練り羽根24で米と水をゆっくりと間欠的に撹拌するようにしてあるとともに、炊飯のための加熱温度は生米のでんぷんの糊化が始まるデンプン糊化温度(α化温度近傍、具体的には60〜65℃)で加熱するようにしてある(詳細の炊飯のシーケンスについては省略する)。
そして、ステップ332で水飴などのパンの膨らみを形成するための添加剤を投入(添加剤の詳細については省略する)、ステップ333で練りを行うとともに、ステップ332からステップ333の間で、炊飯したご飯をイースト菌の最も活動的する温度に冷却していく。この時、イースト菌を常温に保つために設けた冷却ファン33あるいは他の冷却手段で、容器23を冷却して炊飯したご飯を冷却するようにしてもよい。
ステップ334において、炊飯したご飯の練ったものをねかせ、この時に、イースト菌をイースト菌自動投入器30で自動投入する。ステップ335において、さらに練り、この時に、具材自動投入器32でレーズン等の具材を投入する。そして、ステップ336で焼き上げ、ステップ337で焼き上がったら完成で、容器23から取り出して完了する。
上述のフローチャートAでは、練りの回数が多いため、練った炊飯ご飯の粒が細かくなり、パンしたときの米の粒子が残りにくい利点がある。フローチャートBでは、練りの回数が少ないため、パン作製の時間の短縮が図れる。
フローチャートCでは、炊飯したご飯のみを使用するので、ご飯 100%のグルテンフリーの製パンができる。ただし、グルテンを含まない上新粉、餅粉等でパンを試作したところ、膨らみが悪く食感も通常の小麦を使用したパンとは大きく異なり新しい食感となる。
容器23に被調理材の一部の少なくとも生米と水を投入し炊飯してご飯を作製したものに、容器23に被調理材の残りを投入してパンを作製するようにしてあるので、米を米粉に粉砕する必要がないため、製パンする際の時間の短縮とが図れると共に、静音化が図れるようになる。
また、米の粉砕による米粒のデンプンが損傷を生じて膨らみが悪くなる心配もなく、簡単にご飯を使ったおいしいパンを作製することができる。
さらに、この機器で米を炊飯してできたご飯を被調理材として用いるので、炊飯したご飯を準備する必要がなく手軽に炊飯したご飯を製パンすることができる。
ここで、炊飯したご飯は水分量が多く、ご飯を準備したものを使おうとすると、保管の
状態、例えばラップをして冷蔵した場合や、冷凍したものを解凍した場合、室温で放置した場合など、さらには、炊飯した条件、例えば、炊飯器の性能ばらつき、早炊きなどの炊飯設定条件などでは、ご飯に含まれる水分量が変化して、製パンしたときに水分量のばらつきで、うまく膨らまなかったり、ベタッとしたものになったりする心配もある。
例えば、ご飯に含まれる水分量は一般に約60%で、これがおかゆになると約85%、おもゆでは約90%、餅では約40〜45%、赤飯では約45〜48%となり炊き方でいろいろ変化し、これが、大気に放置されたり、冷凍したりすることで、水分が飛んでしまい、水分量がばらついてしまう心配がある。
特に、ご飯に含まれる水分量が冷ます状態で置かれ、赤飯程度の水分量になったとすると、ご飯160gに対し後者の乾燥したご飯だと145gとなり、水分量は15gも少なくなってしまう。また、ご飯160gに相当する米を、水分量を多くしすぎて炊飯してしまい、例えば10%多めになると、ご飯170gになってしまい水分量は水分量は15gも多くなってしまう。
そして、レシピでご飯200gを用いるとした場合に、乾燥したご飯では水分量が約62g、水分が10%多めのご飯では水分量が約82gとなり、水分量が20gも大きく変化して、これを同じ条件でパンにすると、膨らみが悪くなったり、練り不十分で不均一のものができたりして、できの悪いパンが出来てしまう心配があった。
例えば、ご飯に含まれる水分量は一般に約60%で、これがおかゆになると約85%、おもゆでは約90%、餅では約40〜45%、赤飯では約45〜48%となり炊き方でいろいろ変化し、これが、大気に放置されたり、冷凍されたりすることで、水分が飛んでしまい、水分量がばらついてしまう心配がある。
特に、ご飯に含まれる水分量が冷ます状態で置かれ、赤飯程度の水分量になったとすると、ご飯160gに対し後者の乾燥したご飯だと145gとなり、水分量は15gも少なくなってしまう。また、ご飯160gに相当する米を、水分量を多くしすぎて炊飯してしまい、例えば10%多めになると、ご飯170gになってしまい水分量は15gも多くなってしまう。
レシピでご飯200gを用いるとした場合に、乾燥したご飯では水分量が約62g、水分が10%多めのご飯では水分量が約82gとなり、水分量が20gも大きく変化して、これを同じ条件でパンにすると、膨らみが悪くなったり、練り不十分で不均一のものができたりして、できの悪いパンが出来てしまう心配があった。
しかしながら、被調理材の一部の少なくとも生米と水を投入し炊飯してご飯を作製したものに、容器23に被調理材の残りを投入してパンを作製するようにしてあるので、製パンに適した炊飯条件で作製したご飯が得られ、炊飯したご飯を用いて安定した製パンができる。
尚、上述のご飯は、水分量の多い粥状のものでも、また、水分量の少ないおこわ状のものでもまた、普通のご飯の水分量のものでもよく、目的のパンに適した水分量となるように用いるようにすればよい。
さらに、米を炊飯してできたご飯に米粉を被調理材として用いたパンにおいては、小麦を用いていないので、小麦アレルギーの人でも食べられるようになるが、小麦に比べ、米粉は水を多量に含み、小麦パンが膨らむ要素のグルテンを有しておらず、グルテンの代替品を用いても膨らみにくいため、捏ね方や水分量など作り方が難しく、パン材料の捏ねか
ら焼成までの種々の工程を自動製パン機で一貫して行うことで炊飯したご飯を用いて安定した製パンを行うことができる。
そして、容器23に被調理材の一部の生米と水を投入し炊飯してご飯を作製したものに、容器23に被調理材の残りを投入してパンを作製する工程と、小麦粉を主とした被調理材を用いてパンを作製する工程と、容器23に被調理材の一部の生米と水を投入し炊飯してご飯を作製したものに、被調理材の残りにグルテンを含まない被調理材を用いてグルテンを含まないパンを作製する工程を選択する工程選択手段37を有するので、それぞれの工程で作製したパンを使用者が簡単に選択でき、使用者の好みにあったパンを手軽に製パンできるようになる。
特に、それぞれの工程で作製したパンは、小麦粉を主とした従来のパンと共通するようなパンのメニュー例えば食パンやレーズンなどの具入りパンができるので、工程選択手段37で炊飯したご飯を用いて作製するパンかあるいは小麦粉を主とした従来のパンかを選択してパンのメニューを選ぶことが出来、使用者にとって判りやすく、操作性のよい機器を提供できるようになる。
さらに、容器23に被調理材の一部の生米と水を投入し炊飯してご飯を作製するときに、練り羽根24で被調理材を撹拌するようにした構成としてあるので、生米と水の状態で攪拌することで、生米の吸水を早く均一にすることができる。
また、炊飯中に攪拌することで、温度分布を平均にすることができ、更に製パン時の捏ねに適するように混ぜることができ、製パンに適した条件で炊飯時間を短縮することができるとともに、次ステップの練りにスムーズに移行でき、練り時間を短縮することができる。
また、容器23に被調理材の一部の生米と水を投入し炊飯してご飯を作製するときに、生米のでんぷんの糊化が始まるデンプン糊化温度(α化温度近傍、具体的には60〜65℃)で加熱するようにしてあるので、炊飯時の加熱量を小さくでき、この機器の機体温度の上昇を抑えることができる。
そして、冷却は必要となるが、製パン時に用いるイースト菌をこの機器の機体内に保管することが容易にできるようになるとともに、炊飯時から製パンに至るときに必要な冷却期間を短縮することができる。
ここで、製パン時に用いるイースト菌は、温度が27〜36℃でイーストが最も活動的になり、60℃以上で死滅するため、製パン時はパンを焼成する前まで、すなわち、イースト菌の保管、捏ね、発酵の各期間は少なくとも常温に近い温度にしておかねばならず、炊飯時の加熱量を小さくすることで、イースト菌の冷却保管を容易にして、イースト菌の冷却手段を簡易とすることができ、イースト菌の温度管理が容易となり、炊飯したご飯を用いて安定した製パンを行うことができる。
このように、炊飯中の攪拌と炊飯中の温度をα化温度近傍で加熱することを組み合わせてあるので、より、炊飯時間を短縮化が図れるようになる。
そして、この機器で炊飯する米量あるいは炊飯したご飯の量を設定するご飯量設定手段40を有するので、使用するご飯量に応じたメニューが選択できるようになる。
これに、調理材に使用する炊飯されたご飯の量と残りの他の被調理材の量の割合を変えて、出来上がりのパンのご飯の含有割合を変化させる工程選択手段37を組み合わせるこ
とで、ご飯量と出来上がりのパンの膨らみつまり体積を変えることが出来、出来上がりのパンの見映えを調整することができる。
例えば、ご飯量と他の被調理材の比率を変えて、出来上がりのパンの膨らみ、つまり体積を合わせたり、ご飯量を増やして密度の高いパンなどのバリエーションを増したりすることができる。
特に、炊飯したご飯の量を増やしてパンを作製するとパンの膨らみが少なくなる傾向を有するので、一所に加える被調理材の量の割合を増やすことができるようになり、容器23の容積いっぱいに、有効活用することができる。
そして、ご飯量設定手段40で設定されたこの機器で炊飯する米量あるいはご飯の量に基づき、ご飯以外の使用する被調理材の量を表示部38に表示するようにしてあるので、使用者がご飯以外の使用する被調理材を間違えないように手順よく準備することが出来、使い勝手が向上するとともに、炊飯したご飯を用いて安定した製パンを行うことができる。
なお、本実施の形態においては、冷却手段に送風機を用いた例で説明したが冷却手段はペルチェ素子など他の冷却手段を用いるようにしてもよく、また、冷却手段をなくして、この機器の適所に炊飯時の蒸気の熱を逃がすような蒸気逃がし口35aを設けてもよく、冷却をよりこの機器に対応した冷却方法で構成すればよい。
また、炊飯したご飯を被調理材として用いてパンを作製する場合は、小麦粉を主とした被調理材を用いてパンを作製する場合より、パンの膨らみが少なく、また、炊飯したご飯の量や被調理材などの量を調整して、容器23のパンを作製したときのパンの体積が少なくて、容器23の上部まで達してないと、どうしても、パン焼成時のパン上面への熱の伝わり方が不十分となりやすい。
そこで、容器23の上方にできあがるパンの天面を加熱する第2加熱手段26を配設するか、あるいは、容器23の上方に加熱手段26の熱を反射させる反射板を配設するようにしてもよい。
これによれば、パンの膨らみが十分でない場合でも、容器23の側面からの加熱に加えて、容器23の上方から加熱されるので、パン焼成時にパン上面が加熱されやすくなり、パン上面の焼きムラが低減されるようになる。
さらに、操作部に、被調理材の一部の炊飯に用いる米の種別を選択する選択手段を配設してもよい。
これによれば、米の種別、例えば、タイ米などを用いて炊飯してできたご飯の水分量は約55%で、日本米を用いて炊飯してできたご飯の水分量(約60)%より少なく、その分、製パンするときの被調理材の調合を変えた方がよく、米の種別を選択できるようにすることで、より細やかに製パン時の条件を合わせることができるようになり、炊飯したご飯を用いて安定した製パンを行うことができる。