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JP5715851B2 - ナノ粒子インク組成物を用いた印刷物の製造方法 - Google Patents

ナノ粒子インク組成物を用いた印刷物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明の実施形態は、ナノ粒子インク組成物を用いた印刷物の製造方法に関する。
回路基板などに使用される金属配線はこれまでメッキや銅箔基板のエッチングによる製造方法が主に用いられてきている。これらの方法では工程としてレジスト塗布・回路パターン露光・現像・エッチング・レジスト除去などが必要であり装置が大型化してしまうことや回路パターン露光のためのマスクが必要であることなどの課題や、湿式処理であるために廃液が発生してしまうことによる環境負荷の面での課題があった。このため近年ではフォトリソグラフィによるエッチング法に替わる方法として印刷による回路形成が注目されている。
印刷方法としてはスクリーン印刷、グラビア印刷、マイクロコンタクト印刷(スタンプ法)、インクジェット印刷など様々な方法が検討されている。またこれらに合わせて導電性ペーストや金属ナノ粒子インクなどの印刷用導電材料が開発されている。このような印刷方法による回路形成方法では、従来の露光エッチングなどの工程が不要であるため製造装置も簡便化でき、また現像液、エッチング液などの廃液はないため環境負荷も低減できる。なかでもインクジェット方式での回路形成方法は印刷のための版も不要でありオンデマンドでの製造が可能であることや、使用インクの無駄が少ないこと、非接触で印刷が可能であるため印刷可能な媒体が広がること、大面積化が可能であることなどの多くのメリットがあり、製造プロセスの簡便化、低コスト化、低環境負荷化、省資源化、省エネルギー化への貢献が大きい。
従来の金属配線用のインクとして、Agナノ粒子を含有するインクが知られている。しかしAgナノ粒子を含むインクは高価であるうえ、イオンマイグレーションによりパターン間の短絡が発生してしまうという問題点がある。
他方、Cuナノ粒子を含有するものが知られている。Cuナノ粒子はAgナノ粒子に比べて安価であり、イオンマイグレーションの問題も無い。しかしながらCuナノ粒子は酸化されやすく、融点が十分低下するほど粒径を小さくできない。そのため焼成処理には高い温度が必要であり、印刷媒体としては耐熱性を有する基板を用いなければならないという問題点がある。これを克服するために、フラッシュランプアニールによる焼成方法が考案されている。
またCuナノ粒子およびAgナノ粒子の両方を有することで、両者の各々の問題点を軽減するインクが考案されている。
特開2009−124032号公報 特開2009−286934号公報
しかしながら、Agナノ粒子およびCuナノ粒子を含有するインクであっても、金属ナノ粒子としての問題点は軽減されない。例えばフラッシュランプアニール法による焼成処理では金属ナノ粒子は光吸収が十分でない。そのため、焼成された金属インク塗膜の導電性が十分でない。また金属ナノ粒子は比重が大きいため、沈降してしまい、インクの保存安定性が良くないという問題点がある。
本発明はこのような課題を解決するものであり、多くの基材に対応できる光焼成による導電性パターン作製に使用でき、かつ十分な導電性をもった導電性パターンを短時間で焼成できるナノ粒子インク組成物を用いた印刷物の製造方法を提供するものである。
実施形態のナノ粒子インク組成物を用いた印刷物の製造方法は、Cuの酸化物ナノ粒子およびAgの酸化物ナノ粒子と、前記Cu酸化物ナノ粒子を被覆する有機分散剤と、前記有機分散剤で被覆されたCuの酸化物ナノ粒子を含むナノ粒子を分散させる分散媒と、を有するナノ粒子インク組成物を用いてパターンを印刷する工程と、前記パターンにフラッシュランプを用いて光照射する焼成還元工程と、を有する。
以下、本実施形態を説明する。
本実施形態のナノ粒子インク組成物においては、分散剤を含有するナノ粒子が溶媒中に分散される。ナノ粒子としては、金属もしくは金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属錯体などの粒子があり、これらは導電性粒子もしくは焼結・還元により導電性を発現する。本実施形態のナノ粒子は、銅および銀を含有し、その少なくとも一方は酸化物である。
銅酸化物としては酸化銅(II)[CuO]および酸化銅(I)[Cu2O]があるが、比較的安定な酸化銅(II)を用いることが好ましい。また、銀酸化物としては酸化銀(I)[Ag2O]、酸化銀(II)[AgO]、酸化銀(III)[Ag2O3]が知られているが、比較的安定な酸化銀(I)を用いることが望ましい。
酸化物を使用することにより、主成分である金属ナノ粒子のコスト低減が可能であるとともに、光吸収の増加による光照射での焼成効率の向上が可能である。また酸化物は比重が金属粒子よりも小さいことからインクに分散された粒子の沈降も抑制されるため、インクの分散性が向上する。さらに溶媒との親和性も向上することにより、分散溶媒の選択範囲も拡大する。また光照射での焼成が可能になることで、基板材料としてフレキシブル基板や紙などの媒体も使用できる。フラッシュランプにより瞬間的に短時間で焼成できるため、焼成時間も大幅に短縮される。
また、銅と銀の2成分系にすることにより導電性および信頼性を向上させることができる。すでにAgナノ粒子分散インクによる導電パターン印字は一部で実用化されつつあり、金属のバルクでの導電性は銀が優れているが、イオンマイグレーションによるパターン間の短絡が発生するなど信頼性に課題がある。このため電子回路基板業界ではこれまで銅箔として使用されてきた実績のある銅材料によるパターン印字の実現が望まれている。しかしCuナノ粒子は酸化されやすく、融点が十分低下するほど粒径を小さくできない。このためCuナノ粒子インクは高い焼成温度での処理が必要であり、しかも還元雰囲気下での焼成が必要であったため、なかなか実用化されていない。そこで銅を主成分として銀との2成分系とすることによりCuナノ粒子インクの焼成温度を低温化して導電性を向上させることができる。
ここで上記酸化物の使用は銅もしくは銀あるいは両方を酸化物としてナノ粒子インクとして使用することが可能である。導電性の観点および焼結温度の観点からは、より導電性が高く、融点の低いAgナノ粒子の使用が望ましく、また酸化物として安定している酸化銅との組合せが望ましい。しかしAgナノ粒子はその環境(生態系)への影響度からRoHS規制の対象物質候補として検討されており、必ずしもその使用が好適とは言えない状況である。このため酸化銀ナノ粒子としてインク中に含有し焼成・還元により銀の焼結体とすることが望ましいといえる。
また上記酸化物は酸化物粒子のみでなく酸化物被覆粒子を用いてもよい。即ち銅または銀粒子の表面に酸化物層をもつ粒子であり、上述の酸化物の使用による効果が同様に得られる。
銀または銅の酸化物を含有するインクにおいて適宜銀または銅の金属ナノ粒子も併用して含有することも可能である。インク濃度に合わせて光の吸収効率を調整し光の透過膜厚を最適とすることにより、より焼成効率を向上させることができる。
インク中のナノ粒子の一次粒子径はインクとして分散可能であれば特に限定されないが、粒子の沈降を考慮すると一次粒子径は300nm以下であることが望ましい。特に印刷方法としてインクジェット方式を選択する場合には、インク中における平均粒子径は300nm以下に規定される。平均粒子径が300nm以上であるとインクジェットヘッドからの吐出において吐出不良が多く発生してしまうためである。インクジェット印刷におけるナノ粒子の平均粒子径は、好ましくは200nm以下であり、より好ましくは180nm以下である。ここでいう平均粒子径はインク中での凝集体も含めた平均粒子径である。このとき銅またはその化合物を含有するナノ粒子に対して、銀またはその化合物を含有するナノ粒子の一次粒径が小さいことが望ましい。これにより、低温での焼成においても銀が銅粒子の間に入り込んで焼結し、導電性を良好にすることができる。また銀もしくは銀化合物のナノ粒子については、より焼成温度を低温化するためにさらに小さい一次粒子径を持つことが望ましい。具体的には60nm以下がよく、好ましくは40nm以下、さらに好ましくは20nm以下にすることにより焼成温度を下げることができる。
なお一次粒径が小さすぎると金属の酸化や凝集が起きやすくなり、これを防止するためにより多くの保護分散剤が必要となり焼成温度も高くなってしまう。このため一次粒子径は5nm以上が好ましい。特に銅などの酸化しやすい金属の場合には一次粒子径20nm以上であることが好ましい。
ナノ粒子の一次粒子径は、透過電子顕微鏡もしくは走査電子顕微鏡により直接測定することができる。ナノ粒子の一次粒子径とは平均一次粒子径をさす。またインク中のナノ粒子の平均粒子径は、例えば以下のような手法により求めることができる。まず、インク試料を20〜200倍程度に溶媒に希釈し、この希釈した試料について動的光散乱法による粒子径測定を行い、キュムラント解析によりキュムラント平均粒子径を算出する。こうして得られた値を、試料の平均粒子径とする。なお、平均粒子径の値は通常体積平均の値を用いるが、動的光散乱法によるz値(強度平均)を用いてもよい。このような測定はたとえばMalvern社製Zetasizerなどを用いて行うことができる。
本実施形態のナノ粒子インクは、さらに銅および銀以外の導電性粒子もしくは焼結、還元により導電性を発現する粒子を添加することも可能である。このような粒子としては金属もしくは金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属錯体、炭素から選択される粒子などが使用できる。ここで使用される金属としては期律表の第4周期、第5周期、及び第6周期からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属が好ましく、このうち第2〜14族から選ばれる少なくとも1種の金属がより好ましく、第2族、第8族、第9族、第10族、第11族、第12族、第13族、及び第14族から選ばれる少なくとも1種の金属が更に好ましい。このうちAu、Pt、Pd、Ni、Sn、Co、Rh、Ir、Fe、Ru、Os、Mn、Mo、W、Nb、Ta、Ti、Bi、Sb、Pb、又はこれらの合金などが挙げられる。これらの中で特に、Au、Pt、Pd、Ni、Sn、Co、Rh、Irが好ましい。またこれらを組み合わせて用いてもよく、合金として用いてもよい。金属酸化物としてはTi、Ni、Zn、Sn、Inまたはこれらの組合せの酸化物が好ましい。窒化物としてはTi、Zr、Nb、Ta、Cr、Vなどの窒化物が好ましい。炭化物としてはW、Mo、Ni、Cu、Co、Zr、V、Nb、Cr、Mn、Feなどが好ましい。金属錯体としてはCu、Ag、Au、Pt、Pd、Ni、Sn、Co、Rh、Ir又はこれらの合金の錯体が用いられる。
粒子の形状は特に限定されないが、球形や不定形の粒子のほか、導電性を高めるためにはナノロッド状、針状、フレーク(扁平)状などの粒子を使用することにより粒子同士の接触面積を大きくすることが可能である。
本実施形態のナノ粒子インクは印刷するだけでは導電性を有さないため、焼成、還元処理が必要となる。金属ナノ粒子の表面を包んでいる有機保護材を除去するとともに、粒子を金属に還元して、焼結させることにより導電性を発現させることができる。ただしナノ粒子が金属である場合や酸化銀のように加熱により還元する化合物である場合は還元処理を省くことも可能である。
この方法は一般的な方法として200℃〜400℃程度の炉などを用いた焼成により行われる。この際金属の還元を行う場合には水素やギ酸などの還元ガスを導入して焼成を行うことができる。また還元の必要がない場合は窒素などの不活性ガスを導入して焼成を行い、金属ナノ粒子の酸化を防ぐことが必要となる。またナノ粒子表面の有機保護材を除去するために酸素や空気を導入して焼成することを上記の焼成の前に行うと、より導電性の高い焼成膜を得ることができる。本実施形態のインクでもこのような処理を行うことができるが、より望ましい方法としてはフラッシュランプもしくはレーザを用いた光焼成を行うことが有効である。
キセノンフラッシュランプやレーザなどを使用して短時間で高エネルギーを照射することによりインク塗膜は1000℃以上の高温にすることが可能である。このとき照射時間や照射エネルギーを調整することでインクを塗布した基材の温度はほとんど上昇せずに(たとえば100℃以下で)インク中の金属微粒子を焼結することが可能である。またインクとして銅や銀の金属酸化物を用いた場合にも光還元作用により金属に還元、焼結を行い導電性金属膜とすることができる。エネルギーの照射時間や照射量はインクや塗布膜厚などによって異なるため調整が必要であるが、概ね0.1〜10ミリ秒、10〜100J/cmの範囲で焼成を行うことが可能である。
焼成時間が非常に短時間であるため、積層して印刷膜厚を増加させることも容易であり、これにより配線抵抗を減らすことが可能である。なお光焼成はインクの塗布後、ある程度乾燥してから行うのが効果的である。乾燥方法はとくに限定されないが、ヒータにより基板下部から加熱する方法や、ヒータもしくは赤外線ランプなどにより基板上部から加熱する方法、加熱された気体を基板上に吹き付ける方法などにより行うことができる。
上述したナノ粒子をインク化するためには有機分散剤でナノ粒子が被覆されるようにして分散媒中に分散させる。分散媒としては上記ナノ粒子を分散可能で、かつ印刷可能であれば特に限定されない。印刷後に溶媒の除去が可能であり、印刷塗膜の導電性に影響を与えないものであればよい。たとえば加熱により揮発可能な有機溶剤や水などが使用できる。
有機溶剤についてはアルコール系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、飽和炭化水素類やその他の非極性有機溶剤あるいは低極性有機溶剤を使用できる。具体的にはアルコール系溶媒としてはメタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、イソブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、イソペンタノール、2−メチルブタノール、2−ペンタノール、t−ペンタノール、3−メトキシブタノール、1−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、2−ヘキサノール、2−エチルブタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、1−オクタノール、2−エチルヘキサノール、2−オクタノール、1−ノナノール、2,6−ジメチル−4−ヘプタノール、1−デカノール、シクロヘキサノール、グリシドール、ベンジルアルコール、メチルシクロヘキサノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、4−メチル−2−ペンタノール、テルピネオール、ジヒドロテルピネオール、ジアセトンアルコールなどのモノアルコール系溶媒、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ペンタメチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、へキシレングリコール、2,5−ヘキサンジオール、2,4−ヘプタンジオール、2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、トリメチレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、グリセロールなどの多価アルコール系溶媒、およびエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテルなどの多価アルコール部分エーテル系溶媒などを挙げることができる。ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−n−ペンチルケトン、エチル−n−ブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘキサノン、2−メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン、アセトフェノンなどのほか、アセチルアセトン、2,4−ヘキサンジオン、2,4−ヘプタンジオン、3,5−ヘプタンジオン、2,4−オクタンジオン、3,5−オクタンジオン、2,4−ノナンジオン、3,5−ノナンジオン、5−メチル−2,4−ヘキサンジオン、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン、1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−2,4−ヘプタンジオンなどのβ−ジケトン類などが挙げられる。アミド系溶媒としては、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−エチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N−メチルピロリドン、N−ホルミルモルホリン、N−ホルミルピペリジン、N−ホルミルピロリジン、N−アセチルモルホリン、N−アセチルピペリジン、N−アセチルピロリジンなどが挙げられる。エステル系溶媒としては、ジエチルカーボネート、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジエチル、酢酸メチル、酢酸エチル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸イソアミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチルなどが挙げられる。エーテル系溶媒としては、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテルなどが挙げられる。また飽和炭化水素類を好適に用いることができ、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカンが好ましい。また非極性有機溶剤あるいは低極性有機溶剤として、キシレン、トルエン、エチルベンゼン、メシチレン、シクロヘキサン、シクロオクタン等が用いられる。
これら例示した溶媒から選ばれた1種又は2種以上を組み合わせて分散媒体として用いることができる。
インクジェット法による印刷に用いる場合には、揮発性が低く室温の常圧下で気化しにくいものが好ましい。上記アルコール類のなかで好ましいものは、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノール、1−オクタノール、テルピネオール、ジヒドロテルピネオール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−n−ブトキシエタノール、ジアセトンアルコール等が挙げられる。
グリコール類は粘度の高いものが多いためインクジェット吐出できる粘度に調整するためには比較的粘度の低いものが好ましい。エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール等が良い。またグリコール類はアルコール類に比べ粘度が高いため、常温での粘度が100mPa・s以下であるものが良い。粘度が高すぎる場合、金属インクに適した粘度調整が困難となるためである。また、ブチルカルビトールも好ましく用いることができる。
分散剤については上記の所望の粒子を上記の溶媒に分散可能な分散剤であればよく、特に限定されない。主に高分子分散剤もしくは界面活性剤が使用可能である。具体的には粒子および溶媒によって好適な分散剤は異なるが、高分子分散剤としてはポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン等のアミン系の高分子;ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース等のカルボン酸基を有する炭化水素系高分子;ポリアクリルアミド等のアクリルアミド;ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、更にはデンプン、及びゼラチンの中から選択される1種又は2種以上が使用可能である。
上記の共重合体も分散剤として使用可能である。水溶性分散剤の具体例として、ポリビニルピロリドン(分子量:1000〜500,000)、ポリエチレンイミン(分子量:100〜100,000)、カルボキシメチルセルロース(アルカリセルロースのヒドロキシル基Na塩のカルボキシメチル基への置換度:0.4以上、分子量:1000〜100,000)、ポリアクリルアミド(分子量:100〜6,000,000)、ポリビニルアルコール(分子量:1000〜100,000)、ポリエチレングリコール(分子量:100〜50,000)、ポリエチレンオキシド(分子量:50,000〜900,000)、ゼラチン(平均分子量:61,000〜67,000)、水溶性のデンプン等が挙げられる。(上記かっこ内は水溶性の場合の高分子化合物の数平均分子量を示す。)有機物保護被膜として好適に使用できる。この他、例えば特開平11−319538号公報に示されるような高分子分散剤が使用できる。
市販の分散剤としては例えば、ソルスパース20000、ソルスパース24000、ソルスパース26000、ソルスパース27000、ソルスパース28000(ルーブリゾール社製);ディスパービック160、ディスパービック161、ディスパービック162、ディスパービック163、ディスパービック166、ディスパービック170、ディスパービック180、ディスパービック182、ディスパービック184、ディスパービック190(ビックケミー社製);EFKA−46、EFKA−47、EFKA−48、EFKA−49(EFKAケミカル社製);ポリマー100、ポリマー120、ポリマー150、ポリマー400、ポリマー401、ポリマー402、ポリマー403、ポリマー450、ポリマー451、ポリマー452、ポリマー453(EFKAケミカル社製);アジスパーPB711、アジスパーPA111、アジスパーPB811、アジスパーPW911(味の素社製);フローレンDOPA−158、フローレンDOPA−22、フローレンDOPA−17、フローレンTG−730W、フローレンG−700、フローレンTG−720W(共栄社化学社製)等を挙げることができる。
界面活性剤としてはアミノ基−NH2、カルボキシル基−COOH、チオール基−SH、スルホ基−SO3H、又はホスホノ基−PO(OH)2を有する界面活性剤分子を用いることができる。高分子分散剤の場合、上記分散剤の含有量は金属粒子に対して0.5重量%〜20重量%の範囲であることが良く、特に1〜10重量%が好ましい。また界面活性剤を使用する場合には金属粒子:界面活性剤のモル比が1:0.8〜1:50の範囲であることが良く、特に1:1〜1:20の重量比の範囲であることが好ましい。
Cuナノ粒子は酸化されやすいため、上記の高分子分散剤を用いることが好ましい。またAgナノ粒子は粒子の液相合成時に用いられるカルボキシル基含有化合物やアミン化合物が好ましい。カルボキシル基含有化合物としては例えば末端にカルボン酸を有する化合物が使用できる。カルボン酸としてはモノカルボン酸、ポリカルボン酸、およびオキシカルボン酸などが挙げられる。
モノカルボン酸として例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプリル酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、およびリグノセリン酸などの炭素数1〜24の脂肪族モノカルボン酸が挙げられる。また、オレイン酸、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、ジホモ−γ−リノレン酸、エライジン酸、アラキドン酸、エルカ酸、ネルボン酸、ステアリドン酸、エイコサペンタエン酸、およびドコサヘキサエン酸などの炭素数4〜24の不飽和脂肪族カルボン酸を用いてもよい。さらには、安息香酸、およびナフトエ酸などの炭素数7〜12の芳香族モノカルボン酸などを用いることもできる。
ポリカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、およびセバシン酸などの炭素数2〜10の脂肪族ポリカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、ソルビン酸、およびテトラヒドロフタル酸などの炭素数4〜14の脂肪族不飽和ポリカルボン酸;フタル酸、およびトリメリット酸などの芳香族ポリカルボン酸などが挙げられる。
オキシカルボン酸としては、例えば、グリコール酸、乳酸、オキシ酪酸、およびグリセリン酸などの脂肪族ヒドロキシモノカルボン酸;サリチル酸、オキシ安息香酸、および没食子酸などの芳香族ヒドロキシモノカルボン酸;酒石酸、クエン酸、およびリンゴ酸などのヒドロキシポリカルボン酸などが挙げられる。
特に、分子内に1つの遊離のカルボキシル基を有する比較的低分子の飽和脂肪族カルボン酸が好ましい。こうしたカルボン酸は、金属ナノ粒子表面と配位し、室温環境で組成物中に存在している際には安定である。一方、所定の温度で焼成されると、こうしたカルボン酸はAgナノ粒子から脱離または消失して、導電膜の成膜性および導電性の向上につながる。
アミン化合物としては第一級アミンが好ましい。第一級アミンとしてはアルキルアミンを挙げることができる。沸点の低すぎるアルキルアミンは熱的に不安定であり蒸気圧も高い。また金属ナノ粒子表面に配位しても脱離しやすく、ナノ粒子同士の凝集を招く虞がある。ゆえに50℃以上の沸点を有するアルキルアミンが良い。アルキルアミンの沸点は100℃以上であることがより好ましい。
さらに金属焼成時には上記化合物は金属ナノ粒子表面から離脱して蒸発することが望ましく、このためにはアルキルアミンの沸点は250℃以下であることが好ましい。なお、光焼成を行う場合にはこれ以上の沸点でも焼成可能であるが、より低エネルギーで焼成できることが望まれるため、上記と同様の沸点であることが好ましい。
上記の沸点を考慮すると、アルキル基の炭素数が4〜12であるアルキルアミンを使用することが好ましい。具体的にはプロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ヘキサデシルアミン、ドデシルアミン、およびオレイルアミンなどが挙げられる。
第一級アミン以外でも分散剤として使用できるアミン化合物がある。第二級アミンおよび第三級アミン、1,2一ジアミン、および1,3一ジアミンなどのような近接する2つ以上のアミノ基が結合に関与する化合物等が挙げられる。また、ポリオキシアルキレンアミン型のエーテル型のオキシ基を鎖中に含む、鎖状のアミン化合物を用いることもできる。
酸化物粒子の場合、水系の溶媒を用いるときは分散剤を用いなくとも良い。また他の添加剤も含有可能である。例えば密着性を向上させるためのバインダーや粘度調整剤、界面活性剤などを含有することができる。
ナノ粒子インクの粘度は一般に常温で流動性を有していれば任意のものを用いることができる。具体的にはスクリーン印刷などでは0.1Pa・s〜500Pa・sの粘度範囲が使用され、インクジェット印刷などでは1mPa・s〜50mPa・sの粘度で使用される。上記粘度は例えばコーンプレート型の粘度計で測定が可能である。
ナノ粒子インク中のナノ粒子の濃度は、上記粘度の範囲内になるように調整されれば、特に限定されない。しかしナノ粒子の濃度が低すぎる場合、金属ナノ粒子の特性である導電性等が発現しにくい。一方、濃度が高すぎる場合、粘度の上昇や、金属ナノ粒子の沈降の虞がある。ゆえにナノ粒子インク中のナノ粒子の割合は、ナノ粒子インク100重量部に対して、10〜80重量部が良く、20〜70重量部が特に好ましい。
また、ナノ粒子の割合は、Agナノ粒子もしくは銀化合物ナノ粒子が、Cuナノ粒子もしくは銅化合物ナノ粒子よりも少ないことが好ましい。
低分子化合物で被覆されたAgナノ粒子もしくは銀化合物ナノ粒子の割合が大きいと、ナノ粒子間の凝集が進みやすくなってしまう虞があるためである。ナノ粒子に対する低分子化合物の被覆安定性は、例えば温度やその他の流動等の、多少のエネルギーを与えるだけで低下してしまう。Agナノ粒子もしくは銀化合物ナノ粒子の割合が増えるほどこの傾向は顕著になり、インク中における金属ナノ粒子の分散安定性が保たれなくなる虞がある。
両者の好ましい質量の比は、Cuナノ粒子もしくは銅化合物ナノ粒子中の銅の質量に対して、Agナノ粒子もしくは銀化合物ナノ粒子中の銀の質量が、0.1%〜50%であることが良く、0.1%〜20%がより好ましい。
以下、本実施形態の実施例について詳細に説明する。以下に示す実施例は、本実施形態を好適に説明する例示に過ぎず、なんら本実施形態を限定するものではない。
(実施例1)
まず酸化銅粒子の分散液を調製した。
酸化銅ナノ粒子としてシーアイ化成社製酸化銅(製品名NanoTek)を使用した。このナノ粒子のSEM観察による一次粒径は48nmであった。酸化銅(50g)、ドデシルアミン(7.5g)、ターピネオール(75g)を混合し、得られた混合物をローリングミルにて簡単に撹拌した後、超音波ホモジナイザーにより分散処理を行い、酸化銅ナノ粒子の分散液を得た。超音波の条件は、周波数20kHz、出力約3Wとした。
得られた酸化銅ナノ粒子の分散液を動的光散乱法により粒度分布計測を実施した。一次粒子径は55nm、最大粒径は100nm以下であった。
一方、Agナノ粒子は次のような手法により製造した。ラウリン酸ナトリウムと硝酸銀とを等量混合し、イオン交換によりラウリン酸銀を合成した。得られたラウリン酸銀(30g)と第一級アミンであるヘキシルアミン(9.9g)とを、キシレン(200mL)に溶解させた。なお、ヘキシルアミンの沸点は約131℃である。溶液を130℃で5時間保持後、60℃に低下させたところ、ラウリン酸を表面に有するAgナノ粒子の生成を確認した。メタノール(500mL)を加えてAgナノ粒子を凝集させ、吸引ろ過により回収した。
Agナノ粒子の収率は73%であり、SEM観察による一次粒子径は約20nmであった。動的光散乱法により粒度分布計測を実施したところ、平均粒子径は40nm、最大粒径は100nm以下であった。また赤外分光分析により、低分子化合物の少なくとも一部は第一級アミンとしてのヘキシルアミンであることを確認した。
前述のようにして得られた酸化銅粒子インクとAgナノ粒子を混合し、含有されるCuに対する銀の割合を3.3重量%となるようにし、混合物をローリングミルにて簡単に撹拌後、超音波分散機により分散を行ない、実施例1のナノ粒子インクを製造した。
得られたナノ粒子インクを用いて導電膜を形成し、その特性を調べた。ポリイミド膜が設けられたシリコンウエハを用意し、前述のナノ粒子インクを1000rpm/60秒でスピンコート法により塗布した。ナノ粒子インクの塗膜は、150℃/60秒で昇温して乾燥させ、ナノ粒子分散膜を作製した。
上記により得たナノ粒子分散膜を、フォーミングガス(窒素/酸素=97/3)中、200℃/60分加熱した。さらに、水素気流中、250℃/30分の焼成処理を施して導電膜を形成した。得られた導電膜を所定の寸法(縦1cm×横2cm)に切断し、四端子法により体積抵抗率を測定したところ、3.4μΩ・cmであった。
(実施例2)
実施例1と同様にナノ粒子分散膜を作製し、キセノンフラッシュランプ(40J/cm2)により焼成し導電膜を形成した。実施例1と同様に体積抵抗率を測定した結果、3.3μΩ・cmであった。
(実施例3)
含有される銅に対する銀の割合を20重量%に変化させた以外は実施例2と同様の作業を実施した。酸化銅粒子分散液とAgナノ粒子を混合し、ナノ粒子分散膜を作製し、キセノンフラッシュランプで焼成した。体積抵抗率を測定したところ、3.0μΩ・cmであった。
(実施例4)
Cuナノ粒子インクを調製した。Cuナノ粒子として、熱プラズマ法により作製されたCuナノ粒子(日清エンジニアリング社製)を50g使用した。このCuナノ粒子は、SEM観察による一次粒子径が約50nmであった。高分子化合物として、ポリビニルピロリドン(重量平均分子量50000)を使用した。この高分子化合物1gと、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(85g)と、ウンデカン(10g)とを混合した。得られた混合物をローリングミルにて簡単に撹拌した後、超音波ホモジナイザーにより分散させた。超音波の条件は、周波数20kHz、出力約3Wとした。
三本ロールミルを通過させた後、同様の条件で超音波ホモジナイザー処理を再度施して、ポリビニルピロリドンを表面に有するCuナノ粒子の分散液が得られた。動的光散乱法による粒度分布計測(マルバーン社製 ゼータナノサイザー)では、平均粒子径が58nm、最大粒径が100nm以下であった。
一方、酸化銀粒子の分散液は次のような手法により調製した。熱プラズマ法により作製された酸化銀ナノ粒子(日清エンジニアリング社製)を(50g)使用した。ディスパービック161(3g)、ターピネオール(75g)を混合し、Cuナノ粒子の分散液と同様にして超音波ホモジナイザーにより分散処理を行い、酸化銀ナノ粒子の分散液を得た。動的光散乱法による粒度分布計測では、平均粒子径が50nm、最大粒径が100nm以下であった。
前述のように得られたCuナノ粒子の分散液と酸化銀粒子の分散液とを混合した。含有される銅に対する銀の割合が3.3重量%となるように、実施例1と同様に分散処理を行って実施例4のナノ粒子インクを作製した。このインクを使用して実施例2と同様にナノ粒子分散膜を作製し、キセノンフラッシュランプで焼成した。体積抵抗率の測定結果は4.2μΩ・cmであった。
(実施例5)
実施例1と同様に酸化銅粒子の分散液を調製した。また実施例4と同様に酸化銀粒子の分散液を調製した。酸化銅粒子の分散液と酸化銀粒子の分散液とを混合し、含有される銅に対する銀の割合を3.3重量%となるようにした。実施例1と同様に分散処理を行って実施例5のナノ粒子インクを作製した。このインクを使用して実施例2と同様にナノ粒子分散膜を作製し、キセノンフラッシュランプで焼成した。体積抵抗率の測定結果は4.6μΩ・cmであった。
(実施例6)
酸化物被覆銅ナノ粒子の分散液を調製した。酸化物被覆銅ナノ粒子として熱プラズマ法により作製された日清エンジニアリング製酸化物被覆銅ナノ粒子を(50g)使用した。このナノ粒子のSEM観察による一次粒径は50nmであった。ドデシルアミン(7.5g)、ターピネオール(75g)を混合し、Cuナノ粒子と同様にして超音波ホモジナイザーにより分散処理を行い、酸化銅被覆銅ナノ粒子の分散液を得た。得られた分散液を動的光散乱法による粒度分布計測により評価したところ、平均粒子径として58nm、最大粒径は100nm以下であった。
一方、Agナノ粒子は実施例1と同様の手法により製造した。
酸化物被覆銅ナノ粒子の分散液とAgナノ粒子を混合し、含有される銅に対する銀の割合を3.3重量%となるようにし、実施例1と同様に分散処理を行って実施例6のナノ粒子インクを作製した。このインクを使用して実施例2と同様にナノ粒子分散膜を作製し、キセノンフラッシュランプで焼成した。体積抵抗率の測定結果は3.3μΩ・cmであった。
(比較例1)
上記Cuナノ粒子インクを実施例1と同様にして塗膜とし、導電膜を形成した。体積抵抗率は15μΩ・cmであった。
(比較例2)
上記Cuナノ粒子インクを実施例2と同様にして塗膜とし、キセノンフラッシュランプにより導電膜を形成した。体積抵抗率は22μΩ・cmであった。
(比較例3)
上記Agナノ粒子をトルエンと混合し分散させた後、ターピネオールを混合した。ロータリーエバポレータを用いてトルエンを除去して溶媒置換し、Agナノ粒子分散インクを得た。このAgナノ粒子分散インクを実施例1と同様に塗膜とし、導電膜を形成した。体積抵抗率は3.4μΩ・cmであった。
(比較例4)
上記Agナノ粒子をトルエンと混合し分散させた後、ターピネオールを混合した。ロータリーエバポレータを用いてトルエンを除去して溶媒置換し、Agナノ粒子分散インクを得た。このAgナノ粒子分散インクを実施例2と同様に塗膜とし、キセノンフラッシュランプにより導電膜を形成した。体積抵抗率は4.8μΩ・cmであった。
(比較例5)
上記Cuナノ粒子インクに上記Agナノ粒子を混合し、実施例2と同様にして分散させた。これを塗膜とし、キセノンフラッシュランプにより導電膜を形成した。体積抵抗率は11μΩ・cmであった。
(比較例6)
上記酸化銅粒子インクを使用し、実施例2と同様にして分散させた。これを塗膜とし、キセノンフラッシュランプにより導電膜を形成した。体積抵抗率は9.5μΩ・cmであった。
(比較例7)
含有される銅に対する銀の割合を100重量%に変化させた以外は実施例2と同様に酸化銅粒子インクとAgナノ粒子を混合した。ナノ粒子分散膜を作製し、キセノンフラッシュランプで焼成した。体積抵抗率は3.5μΩ・cmであった。
(比較例8)
Agナノ粒子合成の出発物質をカプリン酸銀として反応時間を8時間とした以外は、実施例2と同様の作業を実施した。ナノ粒子分散膜を作製し、キセノンフラッシュランプで焼成した。体積抵抗率は89μΩ・cmであった。なお、用いたAgナノ粒子の平均粒子径は80nm、また最大粒径は100nmを超えていた。
上記で得られた各ナノ粒子インクを用いてマイグレーション試験を実施した。パターニングを行い幅約1mm、長さ約15mmの一対の導電膜を間隔約0.5mmで隣接するよう形成し、導電膜間にイオン交換水を滴下し、互いの導電膜に水滴が接触するようにした。導電膜間に、直流3Vの電圧を300秒間印加し、銀の析出による短絡が発生しなかった場合を良とした。この結果、比較例3,4,7において不良であった。
以上のように実施例1〜6の焼成膜は良好な導電性が得られた。一方、不十分な導電性しか得られなかったのは、比較例1、2、5、6、7であった。また比較例3,4、7は、導電性は良好であったが、イオンマイグレーションによる不具合が発生した。
以上説明したように本発明の実施形態によれば、インクの導電物質成分として金属化合物、特に酸化物を添加することにより、主成分である金属ナノ粒子のコスト低減が可能であるとともに、酸化物は比重が金属粒子よりも小さいことからインクに分散された粒子の沈降が抑制される。このため、インクの分散性が向上し、均質な塗膜が形成され、焼結後に十分な導電性を持った導電パターンが得られる。
さらに酸化物は光吸収に優れているため、光照射での焼成効率が向上し、印刷すべき基材の温度を殆ど上昇させることなく(例えば100℃以下で)インク中の金属微粒子を焼結することが可能である。
さらに金属酸化物により、溶媒との親和性を向上させることができるため、分散溶媒の選択範囲も拡大することが可能となる。
本実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行なうことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。

Claims (3)

  1. Cuの酸化物ナノ粒子およびAgの酸化物ナノ粒子と、前記Cu酸化物ナノ粒子を被覆する有機分散剤と、前記有機分散剤で被覆されたCuの酸化物ナノ粒子を含むナノ粒子を分散させる分散媒と、を有するナノ粒子インク組成物を用いてパターンを印刷する工程と、
    前記パターンにフラッシュランプを用いて光照射する焼成還元工程と、
    を有する、ナノ粒子インク組成物を用いた印刷物の製造方法
  2. Cuの酸化物ナノ粒子およびAgの酸化物ナノ粒子と、前記Agの酸化物ナノ粒子を被覆する有機分散剤と、前記有機分散剤で被覆されたAg酸化物ナノ粒子を含むナノ粒子を分散させる分散媒と、を有するナノ粒子インク組成物を用いてパターンを印刷する工程と、
    前記パターンにフラッシュランプを用いて光照射する焼成還元工程と、
    を有する、ナノ粒子インク組成物を用いた印刷物の製造方法
  3. Cuの酸化物ナノ粒子およびAgの酸化物ナノ粒子と、前記各酸化物ナノ粒子を分散させる分散媒と、を有するナノ粒子インク組成物を用いてパターンを印刷する工程と、
    前記パターンにフラッシュランプを用いて光照射する焼成還元工程と、
    を有する、ナノ粒子インク組成物を用いた印刷物の製造方法
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