JP5712454B2 - セミフィニッシュトブランクの測定方法及び加工方法 - Google Patents
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Description
セミフィニッシュトブランクをブロッキング又はチャッキングし、加工が完了すると完成したレンズが所定の加工条件を充足しているかどうかをチェックしなければならない。例えばプリズムやレンズ度数等の光学特性を測定装置によって測定し、加工条件に対応した光学特性が得られているかどうかをチェックするわけである。この場合において、光学特性はレンズを透過する光線の屈折量に基づいて測定されるため、一旦測定の邪魔となるブロッキング又はチャッキングに係る部品を取り外してレンズ単独の状態で測定する必要があった。
また、セミフィニッシュトブランクを加工装置に固定するためのブロッキングやチャッキングという手段以外にもセミフィニッシュトブランク(レンズ)の移送・運搬の必要のために一方の面側を覆うように把持する場合もあり、そのような場合にも上記と同様の課題が生じる。
本発明は、このような課題に着目してなされたものである。その目的とするところは、表裏いずれか一方の面に被覆部材が装着されたセミフィニッシュトブランクにおいて、被覆部材を取り外さなくとも所定の光学特性の値を算出でき、その算出結果に基づいて加工条件を充足しているかどうかをチェックすることが可能なセミフィニッシュトブランクの測定方法及び加工方法を提供することにある。
また、請求項2の発明では、凸面と凹面の表裏面を有するセミフィニッシュトブランクであって、その表裏いずれか一方の第1の面に同第1の面を覆う被覆部材が装着され、いずれか他方の第2の面には前記被覆部材が装着されていない前記セミフィニッシュトブランクに対して、前記第2の面に反射膜を形成させて、前記第2の面に対して光を照射し前記第2の面から取得した反射光に基づいて前記第2の面の第1のカーブの値を算出する一方、前記第2の面に反射膜のない状態で前記第2の面に対して光を照射し前記第1の面から取得した反射光に基づいて前記第1の面の第2のカーブの値を算出し、前記第1及び第2のカーブの値に基づいて所定の光学特性を算出することをその要旨とする。
また、請求項3の発明では、凸面と凹面の表裏面を有するセミフィニッシュトブランクであって、その表裏いずれか一方の第1の面に同第1の面上を覆う被覆部材が装着され、いずれか他方の第2の面上には前記被覆部材が装着されていない前記セミフィニッシュトブランクに対して、前記第1の面に照射光を鏡面反射させるための前記第1の面の形状に沿った反射手段を形成し、前記第2の面側から前記第1の面側に向けて光を照射し前記第2の面側で取得した反射光の測定値に基づいて所定の光学特性の値を算出することをその要旨とする。
また、請求項4の発明では請求項2に記載の発明の構成に加え、前記第1の面の第2のカーブの値を算出する際には前記セミフィニッシュトブランクの前記第2の面上には照射光の前記第2の面での反射を防止する反射防止膜が形成されていることをその要旨とする。
また、請求項5の発明では請求項1〜4のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記所定の光学特性とはプリズムであることをその要旨とする。
また、請求項6の発明では請求項1〜4のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記所定の光学特性とはレンズ度数であることをその要旨とする。
また、請求項8の発明では請求項7に記載の発明の構成に加え、前記連結部材は前記セミフィニッシュトブランクの前記凸面側に装着されていることをその要旨とする。
また、請求項9の発明では請求項1〜8のいずれかに記載の発明の構成に加え、レンズの広範囲に渡って第2の面側から複数の光線を照射させ、各光線ごとに反射光を取得してその測定値に基づいて所定の光学特性の値を算出することをその要旨とする。
また、請求項10の発明では請求項1〜9のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記反射光の測定において波面を測定し、その測定結果に基づいて前記所定の光学特性を算出することをその要旨とする。
また、請求項12の発明では請求項1〜10のいずれかの測定方法において算出された所定の光学特性の値をチェックして加工条件に応じた必要な補正を加えるようにしたことをその要旨とする。
また、請求項13の発明では請求項11又は12の加工方法において前記セミフィニッシュトブランクは前記凸面側に累進屈折面が形成され、作製されるレンズは外面累進屈折力レンズであるようにしたことをその要旨とする。
また、請求項14の発明では請求項11〜13の加工方法において、前記反射光の測定は前記セミフィニッシュトブランクの前記凹面側を加工した後に行うことをその要旨とする。
また、請求項15の発明では請求項11〜14のいずれかの加工方法において、前記凹面側の加工を予定の厚さとなる前に一旦中止し、その段階で前記被覆部材が装着された状態の前記セミフィニッシュトブランクに対して前記凹面側から前記凸面側に向けて光を照射し前記凹面側で取得した反射光の測定値に基づいて所定の光学特性を算出し、その算出結果をチェックして加工条件に応じた必要な補正を加えて再度加工するようにしたことをその要旨とする。
反射光はセミフィニッシュトブランクを第2の面→第1の面→第2の面という経路で第2の面側に反射する光線(以下、主反射光とする)と、セミフィニッシュトブランク内に透過せず第2の面で反射する光線(以下、副反射光とする)の両方の成分を含む。本発明では本来第2の面→第1の面という2つの界面を透過する光線を測定して分析するところを、その代わりに第2の面→第1の面→第2の面という経路で3つの界面を透過する主反射光を照射側で測定し所定の光学特性の値を算出するものであり、算出された値に基づいて第2の面側を加工することが可能である。また、その所定の光学特性の値をチェックして加工条件に応じた必要な補正を加えることも可能である。主反射光のみを測定しても副反射光を含んだ状態の光を測定してもよいが、主反射光のみを測定する場合にはなるべく副反射光が発生しないことが好ましい。
光線の種類としては単純にプリズムを測定する場合では、1本の光線でもよいが、複数の本数であればより複雑な測定が可能である。例えば、乱視度数を測定する場合には少なくとも4本が必要である。更に面に対してリング状に交叉する光線、つまり円筒状に照射される光線であればより、高精度の測定が可能であり、更に面に対して円形に交叉する領域すべてを埋め尽くすような光束であれば更に測定精度は向上する。
更にレンズの広範囲に渡って第2の面側から複数の光線を照射させ、各光線ごとに反射光を取得してその測定値に基づいて所定の光学特性の値を算出するようにしてもよい。
測定する所定の光学特性としては、代表的なものとしてプリズムとレンズ度数が挙げられる。
セミフィニッシュトブランクの第2の面上には照射光の凹面での反射を防止する反射防止膜が貼着されていることが好ましい。これによって第2の面上で光を反射させず、高い透過率でセミフィニッシュトブランク内に光を入射させることができる。これは特に副反射光を必要としない場合には有効である。一般に反射防止膜は透明フィルムに膜体を形成させこれを貼着することが考えられるが、その場合に膜側を外方(つまり照射側)に向けて配置して貼着させる必要がある。また、透明フィルムの屈折率はセミフィニッシュトブランクの基材屈折率と同じあるいは近いことが望ましい。
反射光の測定において波面を測定し、その測定結果に基づいて前記所定の光学特性を算出するものであってもよい。波面を測定することで、主反射光と副反射光が混ざった状態でも良好に測定が可能である。また、レンズ度数を測定するためには凹面と凸面の反射が必要であるため、主反射光と副反射光の混ざった波面を測定することでレンズ度数を測定することが可能である。また、同時にプリズムの測定も行うことが可能である。理想的な波面と測定される実波面とのズレは波面収差として認識され、一般にはこの波面収差を評価対象とする。
(実施の形態1)
図1はセミフィニッシュトブランク(以下、ブランクとする)11の凸面側に固定手段としてのアロイ12を用いて連結部材としてのブロックピース13を装着した状態である。ブランク11は平面形状円形に構成されたプラスチック製の透明体であって、外観上厚みの大きいメニスカス形状のレンズ状を呈する。ブランク11の直径は本実施の形態1では70mmとされている。ブランク11の凸面(表面)は球面、非球面あるいは累進屈折面とされ切削加工は施されず、凹面(裏面)は被加工面とされる。凹面は特に特定のカーブを意図するものではないため、ここでは適当なカーブの球面とされている。
ブランク11の凸面側には透明フィルムに金属酸化物を蒸着させた反射膜14が貼着されている。反射膜14は直径15mmの円形形状の薄膜体であって、その中心とブランク11の幾何中心0が一致されている。反射膜14を覆うようにアロイ12が配設され、アロイ12の中央位置にブロックピース13が溶着されている。アロイ12が固化した状態では凹面側からブランク11の幾何中心0を含む半径15mmの領域にアロイ12を背景として反射膜14の蒸着面側が目視されることとなる。測定精度を高めるためには反射膜14は蒸着面側がブランク11側を向くように貼着させることが好ましい。
また、ブランク11の凹面側には誘電体多層膜を透明フィルムに蒸着させた反射防止膜15が貼着されている。反射防止膜15は直径15mmの円形形状の薄膜体であって、その中心とブランク11の幾何中心0が一致されている。同様に測定精度を高めるためには反射防止膜15は誘電体多層膜側が外方(つまり照射側)に向いて貼着させることが好ましい。
ブロックピース13は次のように固着される。図3(a)及び(b)に示すように、斜状に構成された設置面21には凹部22が形成されている。ブロックピース13をこの凹部22内に収納し、アロイ成形用のリングとしてブロックリング23をこの凹部22を包囲するように位置決めブロック24に沿って配置する。ブロックリング23にはアロイ12を注入する注入口25が形成されており、この注入口25が斜面の最も上部位置となるように配置する。そして、ブロックピース13の中心とブランク11の幾何中心0とが一致するようにブランク11をブロックリング23上に載置する。本実施の形態ではブランク11にはこの載置の前段階で既に上記反射膜14と反射防止膜15がそれぞれ凸面側と凹面側に貼着されている。この状態で注入口25から溶融状態のアロイ12を注入していく。ブランク11とブロックリング23とブロックピース13によって包囲された内部空間にアロイ12が充填され、最も高い位置にある注入口24まで達した状態で静置して冷却・固化させることでアロイ12によってブランク11にブロックピース13が固着されることとなる。
本実施の形態1では図4(a)に示すような反射式測定装置28を使用する。反射式測定装置28は照射光をレンズの対向する面に反射させその反射光の入射光に対する角度のずれに基づいて測定して面のカーブ又は傾きを測定する測定装置である。反射式測定装置28はある1つの面のみに照射光を反射させ、その反射光を測定することでその面のカーブ又は傾きを測定するものである。
図4(a)に示すように、ブランク11を反射式測定装置28の測定端子29上に照射光が凹面と直交して入射するように配置する。本実施の形態1では測定位置はブランク11の幾何中心0と一致させる。そして、ブランク11を測定端子29上に載置した状態で図4(b)に示すように、クランプ30によってブロックピース13と測定端子29を挟み、ブランク11が動かないように固定して測定を実行する。
プリズムは凹面に対する凸面の傾きで評価される。そのため、本実施の形態1では凹面の幾何中心0位置を水平面とみなし、幾何中心0における凸面の傾きをもってプリズム量が加工条件通りであるかどうかをチェックするものとする。そのため、反射式測定装置28を使用してブランク11の凸面の傾きを凹面側からの照射光によって測定する。
そのためには、ブランク11内に入射される照射光を凹面で極力反射させずに入射させ、また、入射される照射光が最初に透過する界面である凹面に直交し屈折せずに凸面まで達することが必要である。本実施の形態1では反射防止膜15によって凹面で反射されずに界面を透過してブランク11内に入射した光線は凸面に沿って貼着された反射膜14によって凸面の傾きに従って入射方向に対して所定の反射角をもって反射される。この反射光の角度を算出することでプリズムが測定できる。但し、その反射光は凹面から出射する際にスネルの法則に従って屈折するため、それを考慮して計算する必要がある。図5に示すように、凹面から出射した屈折光は屈折しないと想定した方向(破線の矢印)に対して素材屈折率に応じた所定の傾きとなる(尚、図5の反射角度は若干誇張して図示されている)。
・外面累進屈折力レンズ(累進帯長13m、素材屈折率1.6、遠用度数0.00D、加入度2.00D)
・ダウンプリズムを0.8プリズムディオプター設定
(2)測定結果と補正
このような条件のブランク11について測定した。上記のようにスネルの法則に従って凹面から出射した屈折光は得られた値は屈折しないと想定した方向に対して素材屈折率に対応した傾斜角度で傾く(ここでは素材屈折率1.6なので1.6倍)ため、ダウン方向に0.8×1.6=1.28プリズムディオプター(△)という測定結果を得れば、このブランク11は所定のプリズムを得られているわけである。ところが、実際に測定した結果、ダウン1.12△、イン0.32△という測定結果を得た。
このブランク11の実際の特性は1.6で除することで、ダウン方向0.70△、イン0.20△であることがわかる。つまり、ダウン方向に0.10△足らず、イン方向に不要なプリズムが0.20△が誤差としてあるわけである。
そのため、求める条件であるダウン方向0.80△、イン0.00△とするために、改めてブランク11を加工装置に装着し、装置の加工条件をダウン方向0.90△、アウト0.20△のレンズを作製するように設定して改めて予定の厚みまで加工して、求めるプリズム特性を得るようにする。
(1)ブロックピース13が固着されているため照射光を透過させることができないブランク11について、ブロックピース13を取り付けたままで凹面側から凸面側に向けて照射した光を凸面で反射させた反射光を使用してプリズム量を測定するようにしたため、加工前、あるいは加工途中や加工後における任意の段階で本発明を適用してプリズム測定を行うことができる。
(2)ブランク11の凹面側に反射防止膜15を貼着しているため入射する照射光が反射して測定の邪魔になることがない。また、凸面側には鏡面反射する反射膜14を貼着しているため凸面に達した照射光が比較的減衰することなく、凸面形状に応じた正確な反射をすることとなる。
(3)照射光を最初に透過する界面である凹面に直交するように照射しているため、最初の界面である凹面の角度の影響を受けることなく、反射光のデータを入手できるため、計算が容易である。
実施の形態2では上記と同じ反射式測定装置28を使用してレンズ度数を測定する場合について説明する。図6(a)に示すように、測定対象となる加工途中のブランク11は実施の形態1と同様に凸面側にアロイ12によってブロックピース13が固着されている。また実施の形態1と同様に凸面には反射膜14が貼着され、凹面には反射防止膜15が貼着されている。実施の形態2でも実施の形態1と同様に図示しない加工装置にブロックピース13を介してブランク11を装着し、わずかに予定したレンズ厚に達する手前で一旦加工装置から取り外して、このブランク11を測定するものとする。そして実施の形態1と同様にブランク11を反射式測定装置28の測定端子29上に配置し、クランプ30によってブランク11が動かないように固定して1回目の測定を実行する。
次いで、その測定が完了した後、一旦クランプ30を解放し、ブランク11を取り出し、図6(b)に示すように、反射防止膜15を剥がし、その位置に反射膜14を貼着させる。この際に反射膜14は蒸着面側がブランク11側を向くように貼着させる。このように両面ともに反射膜14が貼着されたブランク11を上記同様に反射式測定装置28の測定端子29上に配置し、クランプ30によってブランク11が動かないように固定して2回目の測定を実行する。
レンズ度数はレンズを透過する光線の収束あるいは発散する度合いであるので、レンズの表裏両方の面の状態がわからないと評価はできない。つまり、ここでは凸面と凹面の両方のレンズの状態を測定する必要がある。そのため、本実施の形態2では1回目の測定で凸面の反射光に基づいて凸面側のカーブの値を算出し、2回目の測定で凹面の反射光に基づいて凹面側のカーブの値を算出する。カーブの値を算出するためには単に傾きだけではなく少なくともある面上の2つの点の傾きからカーブを算出しなければならない。尚、凸面の反射光は実施の形態1と同様にスネルの法則に従って屈折するため、それを考慮して計算する必要がある。次いで得られた、凹面側のカーブと凸面側のカーブの値からレンズ度数を算出する。
具体的なカーブの測定方法の一例について説明する。乱視度数や累進面がある場合では複数の光線による複雑な計算が必要であるため、ここでは1本の光線で説明が可能な球面レンズを例にとって説明する。まず凹面側のカーブの計算について説明する。
図7に示すように、幾何中心からずれた位置において幾何中心を通る軸線と平行に凹面に1本の光線(測定光)を照射し、凹面で反射する反射光を測定する。ここに、幾何中心から照射位置との離間距離をAとする。この値Aは基本的な装置の設計値として既知の値である。今、凹面の曲率半径をR2とすると、測定装置は図7におけるθ2を測定することとなる。つまり、sinθ2=A/R2の関係からR2を求めることができる。更に、実際の計算においては、特にレンズの厚さとAに比較してレンズから測定部(センサ)までの距離と面の曲率半径が十分大きい場合にはsinθ2=A/R2をθ2=A/R2と近似させることも可能である。ここでは近似させて計算するものとする。尚、図7の反射角度は説明の都合上若干大きめに表現されている。
図8に示すように、凹面での入射位置でまずスネルの法則に従って屈折する。ここで例えば素材屈折率1.6とすると、屈折角度は
α=θ2−θ2/1.6・・・(1)
とされる。上記凹面側での計算でθ2は既知であるので、αが求まる。次いで、この光線が凸面で反射した場合について考える。図8に示すように、凸面反射位置と凹面射出位置に、それぞれ入射光線に平行な直線を補助線(図上では破線)P,Qとして描き入れる。
2つの平行な直線に対して1本の直線が斜めに交わるときにできる錯角は等しいので
α+2β=γ+θ2・・・(2)
が成り立つ。ここにα+βは凸面反射位置での法線R1と入射光線に平行な直線の間の角度であり、これをθ1とする。つまり、
α+β=θ1・・・(3)
幾何中心から照射位置との離間距離をAは十分大きいと考えて、θ1=A/R1となる(θ1とR1は未知)。
さて、上記(2)より、γ=α+2β−θ2、上記(3)よりβ=θ1−α なので、
γ=α+2(θ1−α)−θ2=2θ1−θ2−α・・・(4−1)
が成り立つ。
更に、(1)よりα=θ2−θ2/1.6 なので
γ=2θ1−θ2−(θ2−θ2/1.6)=2θ1−2θ2+θ2/1.6・・・(4−2)
凹面の射出位置でスネルの法則を適用すると、射出光線の傾きは 1.6γ+θ2 であることがわかる。
(4−2)より、
1.6γ+θ2=1.6(2θ1−2θ2+θ2/1.6)+θ2=3.2θ1−1.2θ2
つまり、測定装置によって「3.2θ1−1.2θ2」の値を得られるので、結果としてθ1、R1を求めることができることとなる。尚、図8の反射角度は説明の都合上若干大きめに表現されている。また、図8では作図の都合上法線R1,R2はレンズ近辺のみを図示している。
・非球面力レンズ(素材屈折率1.6、S度数−1.00D、C度数0.00D)
凸面カーブを屈折率1.6換算で2カーブとする。曲率半径は(1.6−1)/2(m-1)=0.3m=300mmである。
凹面カーブを屈折率1.6換算で1カーブとする。曲率半径は(1.6−1)/1(m-1)=0.6m=600mmである。
従って、このレンズの度数は−1.00Dである。凹面カーブは、1.00カーブをねらって加工したところ、1.03カーブになった。するとこのレンズの度数は−1.03Dであることがわかる。
そのため、求める条件である−1.00Dとするために、改めてブランク11を加工装置に装着し、装置の加工条件として0.97カーブの凹面を加工するように設定して改めて予定の厚みまで加工して、求めるレンズ特性を得るようにする。
(1)ブロックピース13が固着されているため照射光を透過させることができないブランク11について、ブロックピース13を取り付けたままで凹面側から凸面側に向けて照射した光を凸面と凹面でそれぞれ反射させた反射光を使用してレンズ度数を測定するようにしたため、加工前、あるいは加工途中や加工後における任意の段階で本発明を適用してレンズ度数の測定を行うことができる。
(2)ブランク11の凹面側に反射防止膜15を貼着しているため入射する照射光が反射して測定の邪魔になることがない。また、凸面側には鏡面反射する反射膜14を貼着しているため凸面に達した照射光が比較的減衰することなく、凸面形状に応じた正確な反射をすることとなる。
実施の形態3では波面測定装置31を使用してレンズ度数を測定する場合について説明する。実施の形態3では図9に示すような光学系を設定した。
実施の形態1と同じブランク11の凸面側には実施の形態1及び2と同じ反射膜14が蒸着面側がブランク11側を向くように貼着されている。反射膜14を覆うようにアロイ12が配設され、アロイ12の中央位置にブロックピース13が溶着されている。本実施の形態3ではブランク11の凹面が上面を向くようにブロックピース13を水平な設置面32上に載置する。凹面の上方位置にはハーフミラー33を配置するとともに、ハーフミラー33の上方位置には光源35が設置されている。ハーフミラー33の側方には波面測定装置31が配設されている。
このような構成において、光源35からブランク11方向に照射された光はハーフミラー33を透過してブランク11に至る。そして、界面である凹面を透過して凸面に達し、反射してその反射光は再度凹面を透過し、ハーフミラー33で反射されて波面測定装置31方向に向かう。一方、光源35からブランク11方向に照射された光は一部が凹面で反射され更にハーフミラー33で反射されて波面測定装置31方向に向かう。つまり、波面測定装置31には凸面と凹面の両方の面で反射された反射光の情報が取り込まれることとなる。波面測定装置31は取り込まれた凸面と凹面の両方の成分を含んだ光に基づいて凸面と凹面のカーブを測定し、もってブランク11のレンズ度数およびプリズムを測定する。
波面測定装置31は取り込まれた凸面と凹面の両方の成分を含んだ光に基づいて凸面と凹面のカーブを測定し、もってブランク11のレンズ度数およびプリズムを測定する。すなわち、凸面と凹面の両方の面で反射された2つの反射光の波面の傾きの差からプリズムを測定することが可能で、2つの反射光の波面の曲率の差から度数を測定することが可能となる。
上記のような構成とすることで、実施の形態3では次のような効果が奏される。
(1)ブロックピース13が固着されているため照射光を透過させることができないブランク11について、ブロックピース13を取り付けたままで凹面側から凸面側に向けて照射した光を凸面と凹面でそれぞれ反射させた反射光を使用してレンズ度数を測定するようにしたため、加工前、あるいは加工途中や加工後における任意の段階で本発明を適用してレンズ度数の測定を行うことができる。
(2)波面測定装置31を利用して凸面と凹面の両方の反射光のデータを入手できるため、レンズ度数だけでなくプリズム量も同時に測定することが可能である。
実施の形態4では実施の形態3のより具体的な波面測定装置として波面センサーを使用した場合について説明する。実施の形態4では図10のような光学系を設定した。
実施の形態1と同じブランク11の凸面側には実施の形態1〜3と同じ反射膜14が蒸着面側がブランク11側を向くように貼着されている。反射膜14を覆うようにアロイ12が配設され、アロイ12の中央位置にブロックピース13が溶着されている。
実施の形態4では波面センサー41がブランク11の凹面側に配置されている。波面センサー41は光源42、プリズム43、レンズアレイからなるハルトマンプレート44及び撮像手段としてのCCDカメラ45を備えている。図11に示すように、波面センサー41は解析用コンピュータ45に接続されて波面測定装置を構成する。解析用コンピュータ45にはCPU(中央処理装置)からなる演算部46と記憶手段としてのメモリ47を備えている。メモリ47内には各種プログラムや波面収差を解析する解析ソフトが記憶されている。演算部46によって波面センサーから取得された波面収差が解析される。
解析用コンピュータ45には出力手段としてのモニター48と入力手段としてのキーボード49が接続されている。尚、出力手段としてはモニター48以外にプリンタや他の装置へデータを転送する出力手段等が挙げられる。また、入力手段としてはキーボード49以外にバーコードのような2次元コードやLAN接続された他のコンピュータやデータ記憶装置等の他の装置から転送されたデータを入力する手段等が挙げられる。
ここで、波面測定の原理について説明する。
今、ハルトマンプレート44上のある座標を(X,Y)と置く。座標(X,Y)がCCDカメラ45上において被験レンズ(ブランク11)が無収差(理想的な波面)であると仮定した場合の集光点と、実際の到達点とのずれ量をΔx,Δyとし、ハルトマンプレート44とCCDカメラ45との距離をfとすると、波面収差とずれ量をΔx,Δyとは一般に以下の数式1及び数式2の偏微分方程式の関係が成り立つ。セミフィニッシュトレンズが理想的な平面レンズの場合、Δx及びΔyの値は0となる。また一定の曲率半径を持つセミフィニッシュトレンズである場合は、前記曲率半径は既知である。そのため、レンズアレイ毎の集光点位置である理想的なΔx及びΔyは、容易に計算が可能である。そのため、前記ΔxとΔyとのずれ量をCCDカメラ45から取得した画像より解析することにより波面収差成分の計算が可能となる。ずれ量Δx,Δyはハルトマンプレート7を構成するレンズアレイの多数のマイクロレンズ毎に測定され、最終的に測点以外の部分は補間計算がされる。
下記表1はレンズの高次の波面収差について収差のない理想的な場合(下段数値)と、ある収差が発生している場合(上段数値)の実測値である。ここでは3次と4次のZ06〜Z14の各項について取得した。5次以降の次数については収差量が非常に小さくなっているため、ここでは考慮に入れていない。図13及び図14はこの表1の値を用いて作成した高次収差の3次元図である。図13は表1の下段の値に基づき、図14は上段の値に基づく。3次元図が図13のような平面状に表現される場合は波面収差がない状態であり、一方図14のような凹凸がある3次元図である場合にはそのレンズは高次収差を有しているということである。高次収差の原因としてはあまり精度のよくない加工機(NC旋盤装置)によって凹面を切削加工した場合や、ブランク11を成形する際のモールドの精度がよくない場合、若しくはブランク自体に形状誤差を持つ場合が考えられる。
ブランク11が高次収差を有している場合には、ブランク11の再加工を実施し、図13に示すような収差のない(あるいは少ない)ブランク11を製作するように加工補正を行う必要がある。解析用コンピュータ45によって解析した結果、3次以上の高次の収差成分がある場合にこのような波面収差を補正するような加工データ、つまり一定の曲率を持つセミフィニッシュレンズである場合は、図10にて示すレンズアレイ毎の集光点位置が理想的なΔx及びΔyになるように解析用コンピュータ45によって設計し、その新たな加工データに基づいて図示しないNC旋盤装置にブロックピース13を介してブランク11を装着し再加工させるようにする。実施の形態1と同様にわずかに予定したレンズ厚に達する手前で一旦加工装置から取り外し予定の厚みまで加工するようにする。
(1)高次(3次以上)の波面収差に由来する変形が残存している場合に、それを判定して補正することができるため、より装用感のよいレンズ(ブランク11)を提供することができる。
(2)従来の評価では判断できないようなレンズの局所的な変形なども客観的な収差成分として評価することができるため、この点でもより装用感のよいレンズ(ブランク11)を提供することができる。
実施の形態5ではレンズ(ブランク11)の広範囲に渡って多数の光線を照射させ、その反射光を測定する場合について説明する。
図15に示すように、実施の形態1と同じブランク11の凸面側には実施の形態1〜4と同じ反射膜14が蒸着面側がブランク11側を向くように貼着されている。反射膜14を覆うようにアロイ12が配設され、アロイ12の中央位置にブロックピース13が溶着されている。実施の形態5では度数分布測定装置(レンズマッパー)51がブランク11の凹面側に配置されている。レンズマッパー51は図15に示すように光源52、プリズム53、ビームスプリッタ54、スクリーン55及び撮像手段としてのCCDカメラ56を備えている。
このような構成において測定の際には、光源52からプリズム53方向に照射された光線は反射面53aで90度方向転換させられブランク11方向に向かう。そして凹面を透過して凸面に達し、反射してその反射光は再度凹面を透過し、更にプリズム53を透過してビームスプリッタ54に達する。ビームスプリッタ54には整然と等間隔に縦横に配置された多数の透孔が形成され、透孔を通過した光線(光束)はスクリーン55上に投影される。この投影された光点がマッピングポイントとされる。CCDカメラ56はスクリーン12上に投影されたマッピングポイントの映像を取り込む。
図16に示すように、レンズマッパー51は解析用コンピュータ57に接続されている。解析用コンピュータ57はCCDカメラ56によって取り込まれた光線に対応する透孔との位置変位に基づいてすべてのマッピングポイントに対して屈折力を算出する。つまり、レンズ上にマッピングされたすべての位置について被験レンズ5の屈折力データ(S度数データ、C度数データ、乱視軸データ、プリズム量データ)を得ることができる。解析用コンピュータ57内部には記憶手段としてのメモリ58が配設され屈折力データを記憶する。
図16に示すように、解析用コンピュータ57は評価用コンピュータ58に接続されている。評価用コンピュータ58は解析用コンピュータ57から入手した光学特性データに基づいてブランク11の評価計算を行う。
・上記各実施の形態においては、凹面を平面として計算したが、これは1本の測定光線が入射・射出する位置がレンズの中心に近い領域であると想定したからであり、レンズの中心から離れた1本または複数の測定光線やある面積の光束を使用してレンズ度数を算出する際には凹面のカーブを考慮して計算してもよい。
・被覆部材として上記ではブロックピース13を一例として挙げたが、その他の被覆部材を想定することも可能である。
・反射膜14や反射防止膜15の素材は上記に限定されるものではない。上記のようなテープ状の膜体を貼着する以外に蒸着やスパッタリング等でミラーコートをするように形成させる膜でもよい。
・実施の形態3〜5で反射防止膜15をブランク11の凹面に貼着するようにしてもよい。
・実施の形態5においてレンズマッパー51ではなく干渉計を使用して広範囲の光学特性を取得するようにしてもよい。
・上記実施の形態ではいずれも切削面を凹面とした場合を挙げたが、ブロックピース13を凹面に固着して凸面側を切削する(加工面とする)ことも可能である。
・上記ではブランク11の凹面が所定の度数やプリズム等が設定されたレンズ面であり、これをチェックして必要な場合に補正をする、という実施の形態であったが、凹面がまだ度数等が未設定な段階であっても適用することが可能である。
・その他、本発明の趣旨を逸脱しない態様で実施することは自由である。
Claims (15)
- 凸面と凹面の表裏面を有するセミフィニッシュトブランクであって、その表裏いずれか一方の第1の面上に同第1の面を覆う被覆部材が装着され、いずれか他方の第2の面上には前記被覆部材が装着されずに前記第2の面での反射を防止する反射防止膜が形成された前記セミフィニッシュトブランクに対して、前記第2の面側から前記第1の面側に向けて光を照射し前記第2の面側で取得した反射光の測定値に基づいて所定の光学特性の値を算出することを特徴とするセミフィニッシュトブランクの測定方法。
- 凸面と凹面の表裏面を有するセミフィニッシュトブランクであって、その表裏いずれか一方の第1の面に同第1の面を覆う被覆部材が装着され、いずれか他方の第2の面には前記被覆部材が装着されていない前記セミフィニッシュトブランクに対して、前記第2の面に反射膜を形成させて、前記第2の面に対して光を照射し前記第2の面から取得した反射光に基づいて前記第2の面の第1のカーブの値を算出する一方、前記第2の面に反射膜のない状態で前記第2の面に対して光を照射し前記第1の面から取得した反射光に基づいて前記第1の面の第2のカーブの値を算出し、前記第1及び第2のカーブの値に基づいて所定の光学特性を算出することを特徴とするセミフィニッシュトブランクの測定方法。
- 凸面と凹面の表裏面を有するセミフィニッシュトブランクであって、その表裏いずれか一方の第1の面上に同第1の面を覆う被覆部材が装着され、いずれか他方の第2の面上には前記被覆部材が装着されていない前記セミフィニッシュトブランクに対して、前記第1の面に照射光を鏡面反射させるための前記第1の面の形状に沿った反射手段を形成し、前記第2の面側から前記第1の面側に向けて光を照射し前記第2の面側で取得した反射光の測定値に基づいて所定の光学特性の値を算出することを特徴とするセミフィニッシュトブランクの測定方法。
- 前記第1の面の第2のカーブの値を算出する際には前記セミフィニッシュトブランクの前記第2の面上には照射光の前記第2の面での反射を防止する反射防止膜が形成されていることを特徴とする請求項2に記載のセミフィニッシュトブランクの測定方法。
- 前記所定の光学特性とはプリズムであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のセミフィニッシュトブランクの測定方法。
- 前記所定の光学特性とはレンズ度数であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のセミフィニッシュトブランクの測定方法。
- 前記被覆部材とは加工装置に連結するために固定手段によって連結部材を前記第1の面の中央領域を覆うように固定された連結部材であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のセミフィニッシュトブランクの測定方法。
- 前記連結部材は前記セミフィニッシュトブランクの前記凸面側に装着されていることを特徴とする請求項7に記載のセミフィニッシュトブランクの測定方法。
- レンズの広範囲に渡って第2の面側から複数の光線を照射させ、各光線ごとに反射光を取得してその測定値に基づいて所定の光学特性の値を算出することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のセミフィニッシュトブランクの測定方法。
- 前記反射光の測定において波面を測定し、その測定結果に基づいて前記所定の光学特性を算出することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のセミフィニッシュトブランクの測定方法。
- 請求項1〜10のいずれかの測定方法において算出された所定の光学特性の値に基づいて前記第2の面側を加工することを特徴とするセミフィニッシュトブランクの加工方法。
- 請求項1〜10のいずれかの測定方法において算出された所定の光学特性の値をチェックして加工条件に応じた必要な補正を加えるようにしたことを特徴とするセミフィニッシュトブランクの加工方法。
- 前記セミフィニッシュトブランクは前記凸面側に累進屈折面が形成され、作製されるレンズは外面累進屈折力レンズであることを特徴とする請求項11又は12に記載のセミフィニッシュトブランクの加工方法。
- 前記反射光の測定は前記セミフィニッシュトブランクの前記凹面側を加工した後に行うことを特徴とする請求項11〜13のいずれかに記載のセミフィニッシュトブランクの加工方法。
- 前記凹面側の加工を予定の厚さとなる前に一旦中止し、その段階で前記被覆部材が装着された状態の前記セミフィニッシュトブランクに対して前記凹面側から前記凸面側に向けて光を照射し前記凹面側で取得した反射光の測定値に基づいて所定の光学特性を算出し、その算出結果をチェックして加工条件に応じた必要な補正を加えて再度加工するようにしたことを特徴とする請求項11〜14のいずれかに記載のセミフィニッシュトブランクの加工方法。
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