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JP5711560B2 - モータ制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、モータ制御装置に係り、特に同一軸を複数のモータで駆動するタンデム制御を行なうモータ制御装置に関するものである。
工作機械等において、移動させようとする可動部が大きく、その移動軸を一つのモータだけで駆動することが出来ない場合において、二つのモータに対して同一の指令を行ない、可動部(同一軸)を二つのモータで駆動するタンデム制御が行なわれている。
図3は従来の二つのモータによるタンデム制御を行なうための制御ブロックを示す図である。この図において、この図において図示されていない二つのモータ(マスタ軸モータとスレーブ軸モータ)は、それぞれ電流制御部33M、33Sで算出されたマスタ軸電流指令、スレーブ軸電流指令により駆動制御される。
まず、マスタ軸およびスレーブ軸での動作について記述する。マスタ軸では、位置指令値P*と位置帰還Pmとから位置制御部31Mで速度指令値Vm*を算出し、この算出された速度指令値Vm*と速度帰還Vmとから速度制御部32MでPI制御等の演算を行ない、トルク指令値Tm*を算出する。電流制御部33Mは、このトルク指令値Tm*と電流帰還Imとからマスタ軸電流指令を算出し、マスタ軸モータを駆動制御する。また、速度制御部32Mで算出されたトルク指令値Tm*は、反転器34を通してトルク調停部35に渡される。ここで、反転器34はマスタ軸モータとスレーブ軸モータの回転方向に応じて、符号を反転させるために用いられており、回転方向が同一の場合には符号反転を行なわず、回転方向が異なる場合には符号反転を行なう。次に、スレーブ軸では、マスタ軸と同一の位置指令値P*と位置帰還Psとから位置制御部31Sで速度指令値Vs*を算出し、この算出された速度指令値Vs*と速度帰還Vsとから速度制御部32SでPI制御等の演算を行ない、トルク指令値Ts*を算出する。このトルク指令値Ts*とマスタ軸からのトルク指令値Tm*とからトルク調停部35にて調停トルク指令値Ts1*を算出する。この調停トルク指令値Ts1*と電流帰還Isとからスレーブ軸電流指令を算出し、スレーブ軸モータを駆動制御する。
次に、図4にてトルク調停部35での処理について詳しく説明する。トルク調停部35では、マスタ軸のトルク指令値Tm*とスレーブ軸のトルク指令値Ts*との差に対してフィルタ処理を行ない、調停トルク指令値Ts1*を算出する。すなわち、トルク指令値の差(Tm*−Ts*)から前回のトルク調停値Ta*を引いた値に対して係数41を掛け、前回のトルク調停値Ta*を加算することにより、今回のトルク調停値Ta*を算出する。これらの処理は、マスタ軸のトルク指令値とスレーブ軸のトルク指令値との差およびトルク調停値をそれぞれTd(n)およびTa*(n)とすれば、
Ta*(n)=K*(Td(n)−Ta*(n−1))+Ta*(n−1)・・・式1
で表される。ただし、Ta*(n−1)は前回のトルク調停値を示す。この式1からスレーブ軸の調停トルク指令値Ts1*は、
Ts1*=Ts1*(n)=Ta*(n)+Ts*(n)
=K*(Td(n)−Ta*(n−1))+Ta*(n−1)+Ts*(n)
=K*((Tm*(n)−Ts*(n))−Ta*(n−1))+Ta*(n−1)+Ts*(n)・・・式2
となる。ここで、トルク調停値Ta*(n)はスレーブ軸のトルク指令値Ts*(n)をマスタ軸のトルク指令値Tm*(n)と同じ値に近づくように補正する。そして、トルク指令値の差Td(n)から前回のトルク調停値Ta*(n−1)を引き、さらにその値に定数Kを掛けた値が前回のトルク調停値Ta*(n−1)からの増加分であるので、トルク調停値Ta*(n)はマスタ軸のトルク指令値Tm*(n)が急に大きく変化しても、その変化を緩和して、スレーブ軸のトルク指令値を徐々にマスタ軸のトルク指令値の値に補正する。言い換えると、マスタ軸のトルク指令値Tm*(n)とスレーブ軸のトルク指令値Ts*(n)との差Td(n)に対して、ある時定数によるローパスフィルタ処理を行い、低周波成分を抽出して、スレーブ軸のトルク指令値Ts*(n)を補正する。したがって、トルク調停部を備えることで、位置誤差によるモータ同士の駆動力の干渉が発生することを防止でき、また、マスタ軸のトルク指令値が急に大きく変化した場合でも、スレーブ軸のトルク指令値に影響を与えることを防止でき、安定した制御が可能となる。
つまり、スレーブ軸の調停トルク指令値Ts1*は、定常状態では低周波成分であるマスタ軸トルク指令値Tm*を使用することになる。また、過渡状態では高周波成分であるスレーブ軸トルク指令値Ts*を使用することになる。すなわち、定常状態ではマスタ軸とスレーブ軸で同一のトルク指令値となり、マスタ軸モータとスレーブ軸モータとの干渉が発生しなくなり、安定した制御が可能となる。
特許第3954818号明細書 特許第3537416号明細書
従来の二つのモータによるタンデム制御では、位置制御および速度制御および電流制御をマスタ軸とスレーブ軸それぞれにて行なっている。そのため、加減速などの軸動作を行なうと、異なった検出器からの位置帰還(Pm、Ps)や速度帰還(Vm、Vs)に違いが生じるため、マスタ軸とスレーブ軸にて算出されるトルク指令値(Tm*、Ts*)にも違いが生じる。この場合、マスタ軸モータとスレーブ軸モータとの干渉が発生することになるが、トルク調停部35により、定常状態ではマスタ軸のトルク指令値Tm*とスレーブ軸の調停トルク指令値Ts1*は同一の値となり、安定した制御が可能となる。
しかし、定常状態の場合、マスタ軸のトルク指令値Tm*とスレーブ軸の調停トルク指令値Ts1*は同一の値となるが、スレーブ軸のトルク指令値Ts*とは異なる値となっている。この時、スレーブ軸の速度制御部32Sの積分成分は、スレーブ軸の調停トルク指令値Ts1*に対し、同一の値となっていない場合があり、また適切な値となっていない。停止時にスレーブ軸の速度制御部32Sの積分成分にスレーブ軸の微小な速度偏差分により、大きな積分成分が演算される。このため、停止後の反転動作等の過渡状態において、適切な積分成分に達するまでに時間遅れが発生し、スレーブ軸の速度制御の応答性が悪化する課題があった。
また、積分成分の出力を同一にする方式も提案されているが、加減速等の動作中において、マスタ軸とスレーブ軸が全く同一動作をするわけではないため、同一の積分成分を使用することで過渡時の速度制御性が低下する。本来、マスタ軸とスレーブ軸で積分成分は異なるものであるが、同一の値を使用することで、偏差分を比例成分のみで制御することになる。よって、どちらか一方の軸に、または両方の軸に微小な偏差が発生することになる。
この発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、マスタ軸モータと少なくとも一つのスレーブ軸モータとを用いて、一つの軸を駆動するタンデム方式のモータ制御装置であって、前記モータ毎に位置制御部と速度制御部と電流制御部とを具備し、さらにスレーブ軸にはマスタ軸のトルク指令値と前記スレーブ軸のトルク指令値とから前記スレーブ軸の調停トルク指令値を算出するトルク調停部と、前記スレーブ軸には上位制御装置からの指令の反転を検出する指令反転検出部と、を備え、前記指令反転検出部は、前記上位制御装置からの指令の反転を検出した場合、指令反転直前の前記調停トルク指令値を前記スレーブ軸の速度制御部の積分成分に設定する。または、前記スレーブ軸の前記調停トルク指令値に応じて、前記スレーブ軸の前記速度制御部の積分成分のリミット値を可変する。
本発明の技術により、マスタ軸モータと少なくとも一つのスレーブ軸モータとを用いて、一つの軸を駆動するタンデム方式のモータ制御装置において、マスタ軸とスレーブ軸にて算出されるトルク指令値に違いが生じ、マスタ軸モータとスレーブ軸モータとの干渉が発生する場合に、スレーブ軸のトルク指令値をトルク調停することで安定した制御が可能となる。また、加減速等の動作において、マスタ軸とスレーブ軸で同一の積分成分を使用することで過渡時の速度制御性が低下する場合でもマスタ軸とスレーブ軸にて算出されたトルク指令値を使用することで、それぞれの軸に対して最適な制御を行なうことできる。さらに、軸反転時において、指令反転直前の調停トルク指令値をスレーブ軸の速度制御部の積分成分に設定すること、または、スレーブ軸の調停トルク指令値に応じて、スレーブ軸の速度制御部の積分成分のリミット値を可変することにより、応答性がよく、安定したモータ制御を行なうことができる。すなわち、停止時等の定常状態だけでなく、加減速や軸反転時等の過渡状態において、タンデム方式の軸の制御性や応答性を向上させることができる。
本発明の実施形態であるモータの制御装置における制御回路を示すブロック図である。 本発明の実施形態であるモータの制御装置における指令反転検出部の処理の詳細を示すブロック図である。 従来の二つのモータによるタンデム制御を行なうための制御ブロックの詳細を示すブロック図である。 従来の二つのモータによるタンデム制御を行なうためのトルク調停部の詳細を示すブロック図である。 本発明にかかるモータの制御装置におけるスレーブ軸の速度制御部の積分成分演算部の詳細を示すブロック図である。
図1、図2により、本発明をタンデム制御によるモータ制御装置に適用した第一の実施形態について説明する。図1はこの発明の実施形態であるモータ制御装置の制御回路を示すブロック図である。図2は指令反転検出部および速度制御部のPI制御部の詳細を示すブロック図である。
図1により、本発明をモータ制御装置に適用した第1の実施形態について説明する。図1は第一実施形態のモータ制御装置における制御ブロックを示す図である。
マスタ軸では、位置指令P*と位置帰還Pmとから位置制御部1Mで速度指令値Vm*を算出し、この算出された速度指令値Vm*と速度帰還Vmとから速度制御部2MでPI制御等の演算を行ない、トルク指令値Tm*を算出する。電流制御部3Mは、このトルク指令値Tm*と電流帰還Imとからマスタ軸電流指令を算出し、マスタ軸モータを駆動制御する。また、速度制御部2Mで算出されたトルク指令値Tm*は、反転器4を通してトルク調停部5に渡される。ここで、反転器4はマスタ軸モータとスレーブ軸モータの回転方向に応じて、符号を反転させるために用いられており、回転方向が同一の場合には符号反転を行なわず、回転方向が異なる場合には符号反転を行なう。次に、スレーブ軸では、マスタ軸と同一の位置指令値P*と位置帰還Psとから位置制御部1Sで速度指令値Vs*を算出し、この算出された速度指令値Vs*と速度帰還Vsとから速度制御部2SでPI制御等の演算を行ない、トルク指令値Ts*を算出する。このトルク指令値Ts*とマスタ軸からのトルク指令値Tm*とからトルク調停部5にて調停トルク指令値Ts1*を算出する。このトルク指令値Ts1*と電流帰還Isとからスレーブ軸電流指令を算出し、スレーブ軸モータを駆動制御する。また、トルク調停部5での処理については、トルク調停部35と同一の処理を行っている。
次に、図2にて指令反転検出部23および速度制御部のPI制御部について詳しく説明する。比例成分演算部21と積分成分演算部22は、速度誤差ΔVを入力として演算を行ない、それぞれの演算部にて算出された値を加算して、スレーブ軸のトルク指令値Ts*を算出する。指令反転検出部23は、位置指令P*の反転を検出した時に、直前のスレーブ軸のトルク指令値Ts1*を積分成分演算部22に出力する。この場合、積分成分演算部22は、指令反転検出部23から出力された値を積分成分とする。ここで、PI制御部に関して、構成や処理内容を簡潔に記述したが、積分成分のリミット処理や減衰処理等を行なうPI制御とすることもできる。
定常状態では低周波成分であるマスタ軸トルク指令値Tm*を使用することになる。また、過渡状態では高周波成分であるスレーブ軸トルク指令値Ts*を使用することになる。すなわち、定常状態ではマスタ軸とスレーブ軸で同一のトルク指令値となり、マスタ軸モータとスレーブ軸モータとの干渉が発生しなくなり、安定した制御が可能となる。
図5により、本発明をモータ制御装置に適用した第2の実施形態について説明する。図5はこの発明にかかるモータ制御装置におけるスレーブ軸の速度制御部の積分成分演算部の詳細を示す図である。
図5にて、スレーブ軸の速度制御部の積分成分演算部について詳しく説明する。速度誤差ΔVと係数51の積と、前回の積分成分52を加算して算出された積分成分は、リミット処理部53にてリミット処理が行われる。また、リミット処理部53のリミット値は、調停トルク指令値Ts1*と係数54の積に応じて可変することができる。ここで、係数54は、マスタ軸とスレーブ軸の制御特性の差により、1.0〜1.3程度の値にて可変するものとする。
ここで、スレーブ軸の速度制御部の積分成分がモータ制御に及ぼす影響について以下で考察する。トルク調停部5により、定常状態では低周波成分であるマスタ軸トルク指令値Tm*を使用することなり、マスタ軸のトルク指令値Tm*とスレーブ軸の調停トルク指令値Ts1*は同一の値となり、安定した制御が可能となる。しかし、軸反転時などの過渡状態では、高周波成分であるスレーブ軸トルク指令値Ts*を使用することになる。スレーブ軸トルク指令値Ts*はPI制御部の出力であり、速度誤差がほぼゼロであれば、積分成分により決定される。よって、この積分成分が適切な値でない場合、モータ制御に影響を与える可能性がある。軸反転時は、速度誤差がほぼゼロであるため、指令反転直前のトルク指令値は、積分成分とほぼ同一の値と考えることができる。すなわち、指令反転直前のトルク指令値を積分成分に設定することで、積分成分は、制御上適切な値となり、応答性がよく、安定したモータ制御を行なうことができる。
1M,1S,31M,31S 位置制御部、2M,2S,32M,32S 速度制御部、3M,3S,33M,33S 電流制御部、4,34 反転器、5,35 トルク調停部、23 指令反転検出部、21 比例成分演算部、22 積分成分演算部、41,51,54 定数、42,52 前回値、53 リミット処理部。

Claims (2)

  1. マスタ軸モータと少なくとも一つのスレーブ軸モータとを用いて、一つの可動部を駆動するタンデム方式のモータ制御装置であって、
    前記モータ毎に、可動部の位置を制御するための共通の位置指令に基づき対応するモータの速度指令を演算する位置制御部と、前記位置制御部で演算された速度指令に基づき対応するモータのトルク指令を演算する速度制御部と、トルク指令に基づき対応するモータの電流指令を演算する電流制御部と、をそれぞれ備え、
    さらに、マスタ軸モータに対応する速度制御部で演算されたトルク指令と、スレーブ軸モータに対応する速度制御部で演算されたトルク指令と、の差に基づいて、スレーブ軸のトルク指令をマスタ軸のトルク指令に補正した調停トルク指令値を演算するトルク調停部と、
    上位制御装置からの指令の反転を検出し、当該反転を検出した場合に指令反転直前の前記スレーブ軸の前記調停トルク指令値を前記スレーブ軸の前記速度制御部の積分成分に設定する指令反転検出部と、
    を備えることを特徴とするモータ制御装置。
  2. 請求項1に記載のモータ制御装置であって、
    前記スレーブ軸の前記調停トルク指令値に応じて、前記スレーブ軸の前記速度制御部の積分成分のリミット値を可変するリミット処理部を備えることを特徴とするモータ制御装置。
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