JP5709298B2 - 塗装焼付硬化性および成形性に優れたAl−Mg−Si系アルミニウム合金板の製造方法 - Google Patents
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Si:
Siは、塗装焼付硬化性を得るために必要な合金成分であり、Mg−Si系化合物を形成して強度を高めるよう機能する。Siの好ましい含有量は0.5〜2.0%の範囲であり、0.5%未満では塗装焼付処理(150〜200℃の温度範囲内で20分保持する熱処理)で十分な塗装焼付硬化性が得られず、2.0%を超えると、初期強度が高くなり、プレス成形性や曲げ加工性が劣化する。Siのさらに好ましい含有量は0.8〜1.2%の範囲である。
Mgは、Siと同様に塗装焼付硬化性を得るために必要な合金成分であり、Mg−Si系化合物を形成して強度を高めるよう機能する。Mgの好ましい含有量は0.2〜1.5%の範囲であり、0.2%未満では塗装焼付処理(150〜200℃の温度範囲内で20分保持する熱処理)で十分な塗装焼付硬化性が得られず、1.5%を超えると、初期強度が高くなり、プレス成形性や曲げ加工性が劣化する。Mgのさらに好ましい含有量は0.3〜0.7%の範囲である。
Cuは、強度を高め、成形性を向上させるよう機能する。Cuの好ましい含有量は1.0%以下の範囲であり、1.0%を越えると初期強度が高くなり、プレス成形性や曲げ加工性が低下し、また、耐食性も劣化する。
Znは、表面処理時のりん酸亜鉛処理性を向上させるよう機能する。Znの好ましい含有量は0.5%以下の範囲であり、0.5%を超えると耐食性が劣化する。
上記の元素は、強度を高め、結晶粒を微細化して成形加工時の肌荒れを防止するよう機能する。好ましい含有量はFe0.5%以下、Mn0.3%以下、Cr0.3%以下、V0.2%以下、Zr0.15%以下の範囲であり、それぞれ上限を超えると、粗大な金属間化合物が生成してプレス成形性や曲げ加工性が劣化する。
TiおよびBは、鋳造組織を微細化して成形性を向上させるよう機能する。好ましい含有量はTi0.1%以下、B0.005%以下の範囲であり、それぞれ上限を超えると、粗大な金属間化合物が生成してプレス成形性や曲げ加工性が劣化する。
冷間圧延されたAl−Mg−Si系アルミニウム合金板材は塗装焼付硬化性を得るために、先ず溶体化処理および焼入れ(T4処理)を行う。溶体化処理は480℃以上580℃以下の温度範囲で行う。480℃未満ではSiおよびMgの固溶が不十分となり、塗装焼付硬化性が低下する。また、580℃を超えると、SiおよびMgの固溶は十分であるが、局所的に融解するおそれがあり、安定した板材の製造を行うことができない。
中間予備時効は、前記焼入れ温度から2℃/分以上、より好ましくは20℃/分以上の昇温速度で後述する予備時効温度よりも10℃高い温度以上150℃以下、より好ましくは120℃以下の中間予備時効温度まで加熱し、中間予備時効温度で10分以内の時間保持することにより行われる。中間予備時効温度への昇温速度が2℃/分未満では、時効硬化が進み、十分な塗装焼付硬化が得られない。中間予備時効温度が予備時効温度よりも10℃高い温度未満では、十分な中間予備時効効果が得られず、十分な塗装焼付硬化が達成できない。中間予備時効温度が150℃を超えると、初期強度が高くなり、十分な成形性が得られなくなる。
予備時効温度は50℃以上140℃以下が好ましい。50℃未満では、十分な予備時効効果が得られず、塗装焼付硬化が不十分となる。予備時効温度が140℃を超えると、初期強度が高くなり、十分な成形性が得られなくなる。予備時効の保持時間は1分以上10時間以内が好ましく、1分未満では、十分な予備時効効果が得られず、塗装焼付硬化が不十分となる。保持時間が10時間を超えると、初期強度が高くなり、十分な成形性が得られなくなる。
表1に示す組成を有するアルミニウム合金(発明材:A〜J、比較材:K〜T)をDC鋳造により造塊し、得られた鋳塊を、550℃で24時間均質化処理した後、室温まで冷却し、その後、390℃まで再加熱して熱間圧延を開始し、厚さ4.0mmまで圧延した。熱間圧延の終了温度は240℃とした。続いて、0.9mmまで冷間圧延を行った。表1において、本発明の条件を外れたものには下線を付した。
40℃にて3日および30日保持した板材(試験材)について、圧延方向に対して垂直方向にJIS5号引張試験片を採取して、引張試験を行い、3日保持した試験材の耐力(初期耐力)および30日保持した試験材の耐力(時効後耐力)を測定した。
40℃にて30日保持した板材(試験材)について、圧延方向に対して垂直方向にJIS5号引張試験片を採取し、2%の引張変形を施した後、175℃にて30分熱処理を行った後、常温で引張試験を行い、耐力200MPa以上を合格、200MPa未満を不合格(×)と評価した。
40℃にて30日保持した板材(試験材)について、平面ひずみの破断限界ひずみ量、曲げ試験時の曲げ割れ発生有無を調査して、評価を行った。
平面ひずみの破断限界ひずみ量は、次に示す手順で測定した。圧延方向に対して垂直方向に幅140mm、長さ200mmの試験片を採取し、試験片に直径5mmのスクライブドサークルを転写した後、直径100mmの球頭パンチを用いた張出試験を行った。張出試験時の成形条件はしわ押さえ力:200kN、成形速度:200mm/分、潤滑油:高粘度油(動粘度1000mm2/s)とした。張出試験後のパネルを用いて、破断部近傍の主ひずみ方向のスクライブドサークル径(寸法A)を測定した後、次式により、平面ひずみの破断限界ひずみ量を算出し、0.20以上を曲げ加工性合格(○)、0.20未満を曲げ加工性不合格(×)と評価した。
(平面ひずみの破断限界ひずみ量)=((寸法A)−5mm)/5mm
表1に示すアルミニウム合金Aの鋳塊を、550℃で12時間均質化処理した後、室温まで冷却し、その後、410℃まで再加熱して熱間圧延を開始し、厚さ3.0mmまで圧延した。熱間圧延の終了温度は240℃とした。続いて、0.9mmまで冷間圧延を行った。
表1に示すアルミニウム合金Aの鋳塊を、540℃で16時間均質化処理した後、室温まで冷却し、その後、380℃まで再加熱して熱間圧延を開始し、厚さ2.5mmまで圧延した。熱間圧延の終了温度は240℃とした。続いて、0.9mmまで冷間圧延を行った。
表1に示すアルミニウム合金Aの鋳塊を、540℃で24時間均質化処理した後、室温まで冷却し、その後、400℃まで再加熱して熱間圧延を開始し、厚さ3.5mmまで圧延した。熱間圧延の終了温度は240℃とした。続いて、0.9mmまで冷間圧延を行った。
Claims (3)
- 質量%で、Si:0.5〜2.0%、Mg:0.2〜1.5%を含有し、さらにCu:1.0%以下、Zn:0.5%以下、Fe:0.5%以下、Mn:0.3%以下、Cr:0.3%以下、V:0.2%以下、Zr:0.15%以下、Ti:0.1%以下、B:0.005%以下のうち1種または2種以上を含有し、残部Alおよび不可避的不純物からなる組成を有するAl−Mg−Si系アルミニウム合金の板材を、480℃以上580℃以下の温度で溶体化処理し、2℃/秒以上の冷却速度で60℃未満の焼入れ温度まで冷却して、該焼入れ温度で1時間以内の時間保持した後、下記(1)〜(2)の中間予備時効および予備時効を行うことを特徴とする塗装焼付硬化性および成形性に優れたAl−Mg−Si系アルミニウム合金板の製造方法。
(1)前記焼入れ温度から2℃/分以上の昇温速度で予備時効温度よりも10℃高い温度以上120℃以下の中間予備時効温度まで加熱し、該中間予備時効温度で10分以内の時間保持する中間予備時効、および、
(2)前記中間予備時効温度から2℃/分以上の冷却速度で50℃以上140℃以下の予備時効温度まで冷却し、該予備時効温度で1分以上10時間以内の時間保持する予備時効。 - 前記(1)の中間予備時効を、予備時効温度よりも10℃高い温度以上100℃以下の温度で行うことを特徴とする請求項1記載の塗装焼付硬化性および成形性に優れたAl−Mg−Si系アルミニウム合金板の製造方法。
- 前記(1)の中間予備時効の後、2℃/分以上の冷却速度で予備時効温度未満の温度まで冷却し、該温度から2℃/分以上の昇温速度で50℃以上140℃以下の予備時効温度まで加熱して、該予備時効温度で1分以上10時間以内の時間保持する予備時効を行うことを特徴とする請求項1記載の塗装焼付硬化性および成形性に優れたAl−Mg−Si系アルミニウム合金板の製造方法。
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