JP5708525B2 - 触媒微粒子の被覆率算出方法及び触媒微粒子の評価方法 - Google Patents
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Description
一方、白金触媒及び白金合金触媒は非常に高価であるにもかかわらず、触媒反応は粒子表面のみで生じ、粒子内部は触媒反応にほとんど関与しない。したがって、白金触媒及び白金合金触媒における、材料コストに対する触媒活性は、必ずしも高くなかった。
また、白金触媒及び白金合金触媒を電極に用いた場合、高電位環境下においては白金イオンが溶出する一方、低電位環境下においては白金イオンが析出する課題があった。したがって、高電位放電と低電位放電が交互に繰り返された場合、白金微粒子の凝集が起こる。このような白金微粒子の凝集は、電気化学表面積の低下を招き、電池性能の低下の一因となる。
コア−シェル構造を有する触媒微粒子において中心粒子が溶出した場合、当該触媒微粒子そのものの触媒活性が失われたり、溶出したイオンが電池材料を汚染したりする等により、電池性能の著しい低下が生じることが知られている。このような中心粒子の溶出を抑えるために、中心粒子の全表面積に対して、最外層により被覆された中心粒子の表面積の割合の高い触媒微粒子、すなわち、中心粒子に対する最外層の被覆率が高い触媒微粒子が求められている。したがって、触媒微粒子について被覆率を予め正確に算出し、被覆率の高い触媒微粒子を選択的に採用することの重要性が増している。
被覆率(%)={[(Auのピーク面積)−(Pt/Auのピーク面積)]/(Auのピーク面積)}×100 式(A)
(上記式(A)中、「Auのピーク面積」とは、白金被覆前の金粒子(Au)についてのサイクリックボルタモグラムにおける金酸化物の還元ピーク面積を、「Pt/Auのピーク面積」とは、白金被覆後の金粒子(Pt/Au)についてのサイクリックボルタモグラムにおける金酸化物の還元ピーク面積を、それぞれ示す。)
上記式(A)によれば、白金被覆前後において、サイクリックボルタモグラムにおける金酸化物の還元ピーク面積の変化率が、白金被覆率とされている。
本発明は、上記実状を鑑みて成し遂げられたものであり、触媒微粒子において中心粒子に対する最外層の正確な被覆率を算出する方法、及び当該算出方法を応用した触媒微粒子の評価方法を提供することを目的とする。
被覆率n(%)={CCu/(2×CH)}×100 式(1)
(上記式(1)中、CCuは銅−アンダーポテンシャル析出(Cu−UPD)時における前記中心粒子への銅吸着電荷量(C)であり、CHは前記中心粒子へのプロトン吸着電荷量(C)であり、且つ、0<n<100である。)
被覆率n(%)={CCu/(2×CH)}×100 式(1)
(上記式(1)中、CCuは銅−アンダーポテンシャル析出(Cu−UPD)時における前記中心粒子への銅吸着電荷量(C)であり、CHは前記中心粒子へのプロトン吸着電荷量(C)であり、且つ、0<n<100である。)
本発明の触媒微粒子の被覆率算出方法は、中心粒子、及び当該中心粒子を被覆する最外層を備える触媒微粒子において、当該中心粒子に対する当該最外層の被覆率を算出する方法であって、前記触媒微粒子を準備する工程、前記触媒微粒子について、互いに異なる2つ以上の掃引速度条件下において酸素還元反応測定を行い、且つ、前記掃引速度条件のうち2つを選択し、選択した掃引速度条件下における、掃引した範囲内の所定の電位に対する電流値の維持率を算出する工程、及び、前記電流値の維持率の値から前記被覆率を算出する工程、を有することを特徴とする。
なお、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope;以下、TEMと称する。)観察等でも最外層の存在を確認できる。しかし、TEM観察等によっても、電気化学表面積や被覆率の正確な値を得ることはできない。
触媒微粒子の被覆率は、触媒微粒子の触媒活性等を判定する指標となる他、当該触媒微粒子を用いて膜・電極接合体を製造するにあたり、製造方法の良否を判定する指標ともなる。
本発明の触媒微粒子の被覆率算出方法は、製造中の触媒微粒子の被覆率を正確に算出できる利点がある他に、未知の被覆率を有する触媒微粒子の完成品についても、電流値の維持率を求めることにより被覆率を算出できる利点があり、従来の方法とは全く異なる新しい方法であるといえる。
以下、主に上記工程(1)〜(3)について順に説明する。
本発明に用いられる触媒微粒子は、中心粒子と、当該中心粒子を被覆する最外層を備えるものであれば、特に限定されない。本発明に用いられる触媒微粒子は、市販のものであってもよいし、予め製造したものであってもよい。
この様な観点から、中心粒子に含まれる材料は、パラジウム、イリジウム、ロジウム若しくは金等の金属、又は2種以上の当該金属からなる合金を含むことが好ましい。これらの金属材料のうち、パラジウム、又は上記金属材料を含むパラジウム合金を中心粒子に用いることがより好ましい。
なお、本発明に用いられる粒子の平均粒径は、常法により算出される。粒子の平均粒径の算出方法の例は以下の通りである。まず、400,000倍又は1,000,000倍のTEM画像において、ある1つの粒子について、当該粒子を球状と見なした際の粒径を算出する。このようなTEM観察による粒径の算出を、同じ種類の200〜300個の粒子について行い、これらの粒子の平均を平均粒径とする。
担体として使用できる導電性材料の具体例としては、ケッチェンブラック(商品名:ケッチェン・ブラック・インターナショナル株式会社製)、バルカン(商品名:Cabot社製)、ノーリット(商品名:Norit社製)、ブラックパール(商品名:Cabot社製)、アセチレンブラック(商品名:Chevron社製)等の炭素粒子や、炭素繊維等の導電性炭素材料;金属粒子や金属繊維等の金属材料;が挙げられる。
以下、2段階の反応を経て中心粒子へ最外層が被覆される例について主に説明する。
特に、中心粒子としてパラジウム微粒子を使用し、最外層に白金単原子層を使用する場合には、Cu−UPD法によって、白金の被覆率が高く耐久性に優れる触媒微粒子を製造できる。これは、Cu−UPD法によって、Pd{111}面やPd{110}面に銅を被覆率100%で析出させることができるためである。
開始電位E0は、Cu−UPDに由来する銅の析出が始まる電位であるのが好ましい。開始電位E0は、例えば、以下の様に決定できる。サイクリックボルタモグラムの還元波においては、掃引初期、すなわち、比較的高い電位の部分に、還元波の接線の傾きが1.0×10−5〜0(A/V)、すなわちほぼ0(A/V)と見なせる電位の範囲が存在する。この電位の範囲においては、触媒表面における電気化学反応が未だ生じず、カーボン等の担体において充放電が起きると考えられる。この掃引初期の部分の直後に、還元波の接線の傾きがある所定の傾きとなる電位を、電位E0と決定することができる。ここで、所定の傾きとは、例えば、5.0×10−4〜1.0×10−4(A/V)の範囲の傾きである。
開始電位E0は、例えば、0.6〜0.7V(vsRHE)の範囲内の電位としてもよい。
停止電位E1は、例えば、以下の様に決定できる。銅析出の際のサイクリックボルタモグラムの還元波においては、掃引後期、すなわち、比較的低い電位の部分に、還元波の接線の傾きが−1.0×10−3(A/V)を超える電位の範囲が存在する。この電位の範囲においては、銅のバルク析出に由来する銅吸着電荷量が、Cu−UPDによる銅吸着電荷量よりも大きくなると考えられる。この掃引後期の電位の範囲の直前、すなわち、銅のバルク析出が優位となる直前に還元波の接線の傾きがある所定の傾きとなる電位を、電位E1と決定することができる。ここで、所定の傾きとは、例えば、−1.0×10−3〜0(A/V)の範囲の傾きである。
電位掃引速度が遅い場合には、銅のバルク析出が優位となる直前に、還元波中に極大点又は変曲点が現れることがある。この極大点又は変曲点に対応する電位を停止電位E1としてもよい。
停止電位E1は、例えば、0.34〜0.4V(vsRHE)の範囲内の電位としてもよい。なお、停止電位E1において電位の掃引を停止し、電位を所定の時間、好ましくは30〜60分間固定することが好ましい。
実際に掃引する電位の範囲は、開始電位E0から停止電位E1までの範囲を含み且つ0.01〜0.1V程度の幅だけ広い電位の範囲であってもよい。
まず、導電性炭素材料に担持されたパラジウム(以下、Pd/Cと称する)粉末を水に分散させ、ろ過して得たPd/Cペーストを電気化学セルの作用極に塗工する。なお、Pd/Cペーストは、ナフィオン(商品名)等の電解質をバインダーにして、作用極上に接着してもよい。Pd/Cペーストには、適宜、水やアルコール等の溶媒を加えてもよい。作用極としては、白金メッシュや、グラッシーカーボン等の、導電性が担保できる材料を用いることができる。
・銅イオン溶液:0.05mol/L CuSO4と0.05mol/L H2SO4の混合溶液(窒素をバブリングさせる)
・雰囲気:窒素雰囲気下
・掃引速度:0.2〜0.01mV/秒
・電位:0.3〜0.75V(vsRHE)の範囲で掃引し、停止電位E1=0.35V(vsRHE)で電位を固定する。
・電位固定時間:30〜60分間
この様な観点から、最外層に含まれる材料は、白金、イリジウム、ルテニウム、ロジウム及び金からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属材料であることが好ましい。
これらの金属材料の中でも、最外層は白金を含むことが特に好ましい。白金は、触媒活性、特に酸素還元反応(Oxygen Reduction Reaction;以下、ORRと称する場合がある。)活性に優れている。また、白金の格子定数は3.92Åであるのに対し、パラジウムの格子定数は3.89Åであり、パラジウムの格子定数は白金の格子定数の±5%の範囲内の値である。したがって、中心粒子にパラジウム又はパラジウム合金を、最外層に白金をそれぞれ用いることにより、中心粒子と最外層の間で格子不整合が生じず、白金による中心粒子の被覆が十分に行われる。
本発明に用いられる触媒微粒子の平均粒径は、30nm以下、好ましくは5〜10nmである。
Cu−UPDにおける電位固定時間が終了した後、速やかに作用極を白金溶液に浸漬させ、イオン化傾向の違いを利用して銅と白金とを置換メッキする。置換メッキは、窒素雰囲気等の不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましく、不活性ガス雰囲気に置換したグローブボックス等を用いることがより好ましい。銅イオン溶液から白金溶液へ、不活性ガス雰囲気下で作用極を速やかに移動することにより、被覆後の銅の酸化を防ぐことができる。
白金溶液は特に限定されないが、例えば、0.005M K2PtCl4溶液が使用できる。白金溶液は十分に攪拌し、当該溶液中には予め窒素をバブリングさせることが好ましい。置換メッキ時間は、90分以上確保することが好ましい。
上記置換メッキによって、UPDにより析出した銅原子と白金イオン(Pt2+)が1対1で置換され、パラジウム微粒子表面に白金単原子層が析出した触媒微粒子が得られる。
触媒微粒子のろ過・洗浄は、製造された触媒微粒子の被覆構造を損なうことなく、不純物を除去できる方法であれば特に限定されない。当該ろ過・洗浄の例としては、水、過塩素酸、希硫酸、希硝酸等を用いて吸引ろ過をする方法が挙げられる。
触媒微粒子の乾燥は、溶媒等を除去できる方法であれば特に限定されない。当該乾燥の例としては、室温下の真空乾燥を0.5〜2時間行った後、不活性ガス雰囲気下、60〜80℃の温度条件で1〜4時間乾燥させるという方法が挙げられる。
本工程は、上記触媒微粒子について、互いに異なる2つ以上の掃引速度条件下において酸素還元反応(ORR)測定を行い、且つ、前記掃引速度条件のうち2つを選択し、選択した掃引速度条件下における、掃引した範囲内の所定の電位に対する電流値の維持率を算出する工程である。
本工程は、上記の原理を利用し、互いに異なる2つ以上の掃引速度条件下でORR測定を行い電流値の維持率を算出する工程であり、本工程により求めた電流値は次の工程に供される。
ORR測定は、例えば、回転ディスク電極(Rotational Disk Electrode;以下、RDEと称する場合がある。)、回転リングディスク電極(Rotational Ring Disk Electrode;以下、RRDEと称する場合がある。)等を作用極に用いた電気化学装置により行われる。RDE及びRRDEを用いる対流ボルタンメトリーは、物質輸送速度を回転数で再現よく制御でき、且つ、電極への物質輸送を均一にできる観点から好ましい。
また、測定する際の掃引速度条件は、2つのみであってもよいし、3つ以上であってもよい。得られるデータの成否を判断し、電流値の維持率の傾向を確認する観点からは、少なくとも3つ以上の掃引速度条件についてORR測定を行うことが好ましい。
電気化学測定条件は、触媒微粒子の劣化や、担体であるカーボンの劣化が生じない条件であることが好ましい。RDEを用いたCVの具体的な条件の一例を下記に示す。
・電解液:0.1M HClO4aq(酸素をバブリングさせる)
・雰囲気:酸素雰囲気下
・掃引速度:0.1〜20mV/秒の範囲内の、2つ以上の掃引速度
・電位:0.1〜1.085V(vsRHE)
・回転数:400〜3,000rpm
本発明における電流値の維持率とは、選択した2つの掃引速度条件下における電流値のうち、より大きい電流値に対する、より小さい電流値の割合を指す。上述したように、一般的には、掃引速度が速いほど電流値が大きくなる傾向がある。したがって、本発明における電流値の維持率とは、より早い掃引速度の条件下における電流値に対する、より遅い掃引速度の条件下における電流値の割合であることが好ましい。
算出される電流値の維持率は、掃引した範囲内のどの電位を採用するかによって変わるため、電流値の維持率は電位に依存する。
本工程は、上記電流値の維持率から前記被覆率を算出する工程である。
本発明において、中心粒子に対する最外層の被覆率とは、中心粒子の全表面積に対する、最外層によって被覆されている中心粒子の表面積の割合を指す。
以下、本発明に用いられるマップについて説明する。
なお、上述したように、電流値の維持率はORR測定時の電位に依存する。したがって、ORR測定時の電位(V)をz軸にとれば、上記データは、(x,y,z)=(0,Q0,V0)、(n,Qn,V0)、(100,Q100,V0)となる。ORR測定時の電位を変数とすることにより、3次元のマップも得られる。
被覆率n(%)={CCu/(2×CH)}×100 式(1)
上記式(1)中、CCuはCu−UPD時における中心粒子への銅吸着電荷量(C)であり、CHは中心粒子へのプロトン吸着電荷量(C)である。また、0<n<100である。なお、上記式(1)において分母に2を乗じる理由は、銅(II)イオンとプロトンとではカチオンの価数が異なるため、その価数の違いを是正するためである。
本発明に係る触媒微粒子の評価方法は、中心粒子、及び当該中心粒子を被覆する最外層を備える触媒微粒子の評価方法であって、前記触媒微粒子を準備する工程、前記触媒微粒子について、互いに異なる2つ以上の掃引速度条件下において酸素還元反応測定を行い、且つ、前記掃引速度条件のうち2つを選択し、選択した掃引速度条件下における、掃引した範囲内の所定の電位に対する電流値の維持率を算出する工程、前記電流値の維持率の値から前記被覆率を算出する工程、及び、算出された前記被覆率と予め設定した基準値とを比較し、算出された前記被覆率が前記基準値以上である場合に触媒微粒子を合格と判定し、算出された前記被覆率が前記基準値未満である場合に触媒微粒子を不合格と判定する工程を有し、前記判定工程において不合格と判定された場合、触媒微粒子を準備する工程から被覆率を算出する工程まで再度実施することを特徴とする。
判定の基準となる基準値は、触媒微粒子の用途により適宜決定できる。例えば、触媒微粒子を燃料電池の電極触媒として用いる場合には、基準値を好ましくは90%以上の値、より好ましくは95%以上の値に設定する。
まず、評価の対象となる触媒微粒子を準備する(S1)。次に、触媒微粒子について、酸素還元反応測定を行い、電流値の維持率を算出する(S2)。酸素還元反応測定の詳細は、上述した通りである。続いて、電流値の維持率から触媒微粒子の被覆率を算出する(S3)。被覆率の算出には、例えば、上述したように関係式やマップ、プログラム等が使用できる。次に、判定工程として、算出された被覆率n(%)と予め設定した基準値n0(%)とを比較する(S4)。n≧n0である場合には触媒微粒子を合格と判定し(S5)、触媒微粒子の評価を終了する。一方、n<n0である場合には触媒微粒子を不合格と判定し、再度触媒微粒子を準備する(S1)。この場合に準備される触媒微粒子とは、不合格と判定された触媒微粒子とは異なる触媒微粒子であってもよいし、不合格と判定された触媒微粒子に再度最外層を被覆することにより、再生させた触媒微粒子であってもよい。このように、判定工程(S4)において不合格と判定された場合、触媒微粒子を準備する工程から再度実施し、所望の被覆率を有する触媒微粒子が得られるまで繰り返し評価を行う。
1−1.銅単原子層の形成
まず、カーボン担持パラジウム微粒子粉末(Basf社製、20%Pd/C)を準備した。
次に、Cu−UPD法によりパラジウム微粒子上に銅単原子を被覆した。具体的には、まず、カーボン担持パラジウム微粒子粉末0.5g、及びナフィオン(商品名)0.2gをアルコール水溶液に分散させ、ろ過して得た触媒インクを、グラッシーカーボン電極に塗工した。
Cu−UPDを行った電気化学装置は、図1に示す通りである。電気化学装置の詳細は下記の通りである。
・銅イオン溶液:0.05mol/L CuSO4と0.05mol/L H2SO4の混合溶液(予め窒素をバブリングさせた)
・電極:グラッシーカーボンを備えた電極
・対極:白金電極(北斗電工製)
・参照極:銀−塩化銀電極(サイプレス社製)
・デュアル電気化学アナライザー:BAS社製、ALS700C
本実施例においては、まず、0.29Vから0.73V(vsRHE)まで電位を掃引した。次に、0.73V(vsRHE)から、停止電位E1(図3中の黒丸に対応する電位)まで電位を掃引し、且つ、当該停止電位E1で電位を所定時間維持し、パラジウム微粒子の表面に銅の単原子層を析出させた。
まず、0.005M K2PtCl4溶液を調製し、予め当該溶液中に窒素をバブリングさせた。上記「1−1.銅単原子層の形成」の項で述べた方法で銅単原子層をパラジウム微粒子表面に析出させた後、上記グラッシーカーボンを備えた電極を、窒素雰囲気下のグローブボックス中で速やかにK2PtCl4溶液に所定の時間浸漬させた。当該浸漬によりCu−UPDで析出した銅原子と白金イオンとが1対1で置換され、パラジウム微粒子の表面に白金単原子層が析出したカーボン担持触媒微粒子が製造された。
被覆率と、電流値の維持率との関係を表すマップを作成した。
まず、カーボン担持パラジウム微粒子、カーボン担持白金微粒子、及びコア−シェル構造を有し且つ互いに異なる被覆率(35%又は55%)を有する2種類の触媒微粒子サンプルを準備した。なお、当該2種類の触媒微粒子サンプルは、Cu−UPDを用いて互いに異なる条件で作製された触媒微粒子のサンプルであり、被覆率は上述した式(1)により算出された値である。
まず、カーボン担持パラジウム微粒子、カーボン担持白金微粒子、及び上記2種類の触媒微粒子サンプル(以下、これら4種類の微粒子を、4種類の触媒と称する場合がある。)について、それぞれ触媒インクを調製した。具体的には、触媒粉末0.5g、及びナフィオン(商品名)0.2gをアルコール水溶液に分散させ、そのろ過物を触媒インクとした。
次に、当該触媒インクをグラッシーカーボン製RDEに塗工し、当該RDEを図1に示した装置に設置した。装置の詳細は、電解液を0.1mol/L HClO4に替え、且つ、窒素バブリングを酸素バブリングに替えたこと以外は、図1に示した装置と同様である。
続いて、RDEを1600rpmで回転させながら、掃引速度を1mV、2mV、3mV、4mV、又は5mVとして、それぞれORR測定を行った。図4は、ある触媒微粒子サンプルについて、掃引速度が1mV、2mV、3mV、4mV、又は5mVのときのORR測定により得られた酸素還元波を重ねて示したグラフである。図4から分かるように、掃引速度が遅いほど、所定の電位における電流値が低い。これは、掃引速度が遅いほど、触媒が電位に曝される時間がより長くなる結果、触媒表面に酸化被膜が形成されやすくなり、当該酸化被膜によって電子の導通がより妨げられやすくなることを示唆している。
次に、被覆率と、電流値の維持率との関係を表すマップを作成した。本実施例においては、図5中のデータから、掃引速度5mVの条件下における電位0.9Vに対する電流値を基準(100%)としたときの、掃引速度1mVの条件下における電位0.9Vに対する電流値の割合を百分率で表したものを維持率としてマップを作成した。なお、カーボン担持パラジウム微粒子の電流値の維持率をQ0とし、カーボン担持白金微粒子の電流値の維持率をQ100とした。
図6は、上記4種類の触媒のデータを基に、縦軸に電流値の維持率Qn(%)を、横軸に被覆率n(%)を、それぞれとったマップである。なお、図6中においては、カーボン担持パラジウム微粒子の被覆率を0%とし、カーボン担持白金微粒子の被覆率を100%とした。
図6に示すように、上記4種類の触媒のデータは、ほぼ一直線上に並ぶことが分かる。図6より、Qnとnの関係は、下記式(2)で表すことができる。
Qn=0.2774×n+32.947 式(2)
22 銅イオン溶液
23 ペースト
24 作用極
26 対極
27 参照極
28 気体の導入管
29 気泡
Claims (8)
- 中心粒子、及び当該中心粒子を被覆する最外層を備える触媒微粒子において、当該中心粒子に対する当該最外層の被覆率を算出する方法であって、
前記触媒微粒子を準備する工程、
前記触媒微粒子について、互いに異なる2つ以上の掃引速度条件下において酸素還元反応測定を行い、且つ、前記掃引速度条件のうち2つを選択し、選択した掃引速度条件下における、掃引した範囲内の所定の電位に対する電流値の維持率を算出する工程、及び、
中心粒子に対する最外層の被覆率と、前記選択した掃引速度条件下における前記所定の電位に対する電流値の維持率との関係を表す少なくとも1つの所定のマップにより、前記電流値の維持率の値から前記被覆率を算出する工程、を有することを特徴とする、触媒微粒子の被覆率算出方法。 - 前記電流値の維持率は、より早い掃引速度の条件下における電流値に対する、より遅い掃引速度の条件下における電流値の割合である、請求項1に記載の触媒微粒子の被覆率算出方法。
- 前記所定のマップは、
いずれも、前記選択した掃引速度条件下における前記所定の電位に対する電流値の維持率のデータであって、且つ、
前記中心粒子における電流値の維持率のデータ、
前記最外層における電流値の維持率のデータ、並びに、
前記中心粒子及び前記最外層を備え、当該中心粒子に対する当該最外層の被覆率がn%の触媒微粒子サンプルにおける電流値の維持率のデータ、を少なくとも含むマップである、請求項1又は2に記載の触媒微粒子の被覆率算出方法。 - 前記触媒微粒子サンプルは、銅−アンダーポテンシャル析出(Cu−UPD)により中心粒子に最外層を被覆させた触媒微粒子のサンプルであって、
前記被覆率n%は下記式(1)により得られる値である、請求項3に記載の触媒微粒子の被覆率算出方法。
被覆率n(%)={CCu/(2×CH)}×100 式(1)
(上記式(1)中、CCuは銅−アンダーポテンシャル析出(Cu−UPD)時における前記中心粒子への銅吸着電荷量(C)であり、CHは前記中心粒子へのプロトン吸着電荷量(C)であり、且つ、0<n<100である。) - 中心粒子、及び当該中心粒子を被覆する最外層を備える触媒微粒子の評価方法であって、
前記触媒微粒子を準備する工程、
前記触媒微粒子について、互いに異なる2つ以上の掃引速度条件下において酸素還元反応測定を行い、且つ、前記掃引速度条件のうち2つを選択し、選択した掃引速度条件下における、掃引した範囲内の所定の電位に対する電流値の維持率を算出する工程、
中心粒子に対する最外層の被覆率と、前記選択した掃引速度条件下における前記所定の電位に対する電流値の維持率との関係を表す少なくとも1つの所定のマップにより、前記電流値の維持率の値から前記被覆率を算出する工程、及び、
算出された前記被覆率と予め設定した基準値とを比較し、算出された前記被覆率が前記基準値以上である場合に触媒微粒子を合格と判定し、算出された前記被覆率が前記基準値未満である場合に触媒微粒子を不合格と判定する工程を有し、
前記判定工程において不合格と判定された場合、触媒微粒子を準備する工程から被覆率を算出する工程まで再度実施することを特徴とする、触媒微粒子の評価方法。 - 前記電流値の維持率は、より早い掃引速度の条件下における電流値に対する、より遅い掃引速度の条件下における電流値の割合である、請求項5に記載の触媒微粒子の評価方法。
- 前記所定のマップは、
いずれも、前記選択した掃引速度条件下における前記所定の電位に対する電流値の維持率のデータであって、且つ、
前記中心粒子における電流値の維持率のデータ、
前記最外層における電流値の維持率のデータ、並びに、
前記中心粒子及び前記最外層を備え、当該中心粒子に対する当該最外層の被覆率がn%の触媒微粒子サンプルにおける電流値の維持率のデータ、を少なくとも含むマップである、請求項5又は6に記載の触媒微粒子の評価方法。 - 前記触媒微粒子サンプルは、銅−アンダーポテンシャル析出(Cu−UPD)により中心粒子に最外層を被覆させた触媒微粒子のサンプルであって、
前記被覆率n%は下記式(1)により得られる値である、請求項7に記載の触媒微粒子の評価方法。
被覆率n(%)={CCu/(2×CH)}×100 式(1)
(上記式(1)中、CCuは銅−アンダーポテンシャル析出(Cu−UPD)時における前記中心粒子への銅吸着電荷量(C)であり、CHは前記中心粒子へのプロトン吸着電荷量(C)であり、且つ、0<n<100である。)
Priority Applications (1)
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