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JP5705605B2 - ポリプロピレン系樹脂多孔シート及びポリプロピレン系樹脂多孔シートの製造方法 - Google Patents

ポリプロピレン系樹脂多孔シート及びポリプロピレン系樹脂多孔シートの製造方法 Download PDF

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JP5705605B2 JP2011062173A JP2011062173A JP5705605B2 JP 5705605 B2 JP5705605 B2 JP 5705605B2 JP 2011062173 A JP2011062173 A JP 2011062173A JP 2011062173 A JP2011062173 A JP 2011062173A JP 5705605 B2 JP5705605 B2 JP 5705605B2
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Description

本発明は、包装用品、衛生用品、畜産用品、建築用品、医療用品、分離膜、光拡散膜、反射シート又は電池用セパレーターとして好適に利用できる通気性に優れるポリプロピレン系樹脂多孔シート及びポリプロピレン系樹脂多孔シートの製造方法に関する。
この種の多数の微細連通孔を有する高分子多孔体は、超純水の製造、薬液の生成、水処理などに使用する分離膜、医療・衛生材料などに使用する防水透湿性フィルム及びシート、ハウスラップや屋根下地材等の建築用途に使用する防水透湿性シート、あるいは電池などに使用する電池セパレーターなど各種の分野で利用されている。
この種の多数の微細連通孔を多数作る技術としては下記に記すような種々の技術が提案されている。
例えば、特許文献1では、超高分子量ポリエチレンと溶媒を混練・シート化し、延伸処理したのち溶媒を抽出することにより多孔膜を得ている。
また特許文献2には、ポリオレフィン樹脂と充填剤等を含む樹脂組成物をインフレーション成形し、得られたフィルムまたはシートをその引取り方向に一軸延伸することにより連通性をもつ多孔性フィルム又はシートが提案されている。
また特許文献3では、高ドラフト比で製膜した結晶性ポリプロピレンのシートを、必要に応じて加熱処理し、少なくとも1方向に延伸し、結晶ラメラ間をフィブリル化させた多孔膜を得る方法が開示されている。
また特許文献4には(A)成分としてエチレン含有量約10至約50質量%を有するエチレンプロピレンブロックポリマー、(B)成分としてエチレンまたは4個乃至8個の炭素原子のαオレフィンのコモノマーを10重量%まで有するプロピレンホモポリマーまたはランダムプロピレンコポリマー、及び(C)成分として低分子量のプロピレン、(D)成分として炭酸カルシウム、及び(E)成分としてベータ球晶生成核剤及び炭酸カルシウムから選択された成分類からなるポリオレフィンレジン組成物及びそれから調整された配向微多孔フィルムが開示されている。具体的には、微気孔セル及びセル間に連続孔を有するこれらの微孔性フィルムは、高分子組成物が上記(A)/(B)の重量比約5〜30/95〜70を有し、且つ(E)成分であるベータ球晶生成核剤が約0.1〜10ppmで存在するときに配向前にベータ球晶を除去する段階を含む工程によって形成される。また(D)成分である炭酸カルシウム及び(E)成分であるベータ球晶生成核剤を実質的に含まない時には、(A)/(B)の重量比約30〜95/70〜5を有し、且つ(A)成分及び(B)成分100重量部あたり(C)成分である低分子量ポリプロピレンを約5〜20重量部で存在し、且つ、この高分子組成物が(E)成分であるベータ球晶生成核剤が0.1乃至10ppm及び(D)成分である炭酸カルシウムが約5〜30重量部を有するとき、(C)成分である低分子量ポリプロピレンが(A)成分及び(B)成分の100重量部あたり約1〜10重量部で存在する。
特開平5−25305号公報 特許第3166279号公報 特公平6−79659号公報 特許第3291307号公報
しかし、特許文献1に開示された方法では、溶媒の抽出が洗浄用の有機溶媒で洗浄することにより行われるが、この際に有機溶媒が大量に必要となるので環境的な側面から好ましくない。
また特許文献2に開示された方法では、これらの方法により得られる多孔性フィルムは又はシートでは充填剤が存在していることにより単位面積あたりの質量(坪量)が大きくなるため、軽量化に向けた改善を行う余地がある。
また特許文献3に開示された方法では、結晶化制御が非常に難しく、延伸により結晶ラメラ間をフィブリル化させることで空孔を形成させるため、空孔倍率の高い多孔膜が得られにくいという課題を有していた。
また特許文献4に開示された方法では、ベータ球晶生成核剤を有する場合には、ベータ球晶生成プロセスが必要となりフィルムの冷却速度に制約が生じ、約80℃〜130℃の間で除冷することが必要となる。またベータ球晶生成核剤を実質的に含まない場合には、低分子量ポリプロピレンが存在するため、樹脂組成物の耐熱耐久性が乏しくなり、製膜時の熱安定性が低くなり工業生産性に劣る場合が多い。
本発明は、上記問題点を解決すべくなされたものであり、本発明の目的は、延伸時の加工性および空孔形成が良好であり、かつ、通気特性に優れたポリプロピレン系樹脂多孔シートを提供することにある。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、特定のポリプロピレン系樹脂を主成分とすることで上記課題を解消できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1)動的粘弾性測定により周波数10Hzで測定した損失正接のピーク温度が−60〜20℃の間に少なくとも2つ存在するポリプロピレン系樹脂組成物を主成分としており、かつ、空孔倍率が1.1〜5倍であることを特徴とするポリプロピレン系樹脂多孔シート。
(2)好ましくは、前記ポリプロピレン系樹脂組成物は、下記(A)成分と(B)成分との混合樹脂組成物であり、該組成物中の(A)成分が70〜40質量%、(B)成分が30〜60質量%であることを特徴とするポリプロピレン系樹脂多孔シート。
(A)成分:ポリプロピレン
(B)成分:プロピレン比率が40〜60mol%であるエチレン−プロピレン共重合体
(3)動的粘弾性測定により周波数10Hzで測定した損失正接のピーク温度が−60〜20℃の間に少なくとも2つ存在するポリプロピレン系樹脂組成物を主成分とする成形体を、0℃〜35℃の延伸温度で少なくとも1方向に延伸する工程を少なくとも1回以上経ることにより多孔化することを特徴とするポリプロピレン系樹脂多孔シートの製造方法。
(4)動的粘弾性測定により周波数10Hzで測定した損失正接のピーク温度が−60〜20℃の間に少なくとも2つ存在するポリプロピレン系樹脂組成物中のドメインのアスペクト比を30以下に制御した成形体を、0℃〜35℃の延伸温度で少なくとも1方向に延伸する工程を少なくとも1回以上経ることにより多孔化することを特徴とするポリプロピレン系樹脂多孔シートの製造方法。
本発明によれば、良好な通気特性を有するポリプロピレン系樹脂多孔シートを提供することができる。
実施例1のポリプロピレン系樹脂組成物からなる成形体の動的粘弾性測定結果である。 比較例1のポリプロピレン系樹脂組成物からなる成形体の動的粘弾性測定結果である。
以下、本発明を詳しく説明する。
なお、本発明における数値範囲の上限値及び下限値は、本発明が特性する数値範囲内から僅かに外れる場合であっても、当該数値範囲内と同様の作用効果を備えている限り本発明の均等範囲に包含するものである。
まず、本発明のポリプロピレン系樹脂多孔シートは、動的粘弾性測定により周波数10Hzで測定した損失正接のピーク温度が−60〜20℃の間に少なくとも2つ存在するプロピレン系樹脂組成物を主成分とすることを特徴とする。
本発明におけるポリプロピレン系樹脂組成物は、動的粘弾性測定により周波数10Hzで測定した損失正接のピーク温度が−60〜20℃の間に少なくとも2つ存在することが重要である。なお、本発明にいう損失正接のピーク温度とは、損失正接(tanδ)がピーク値(極大値)を示す温度のことである。ここで、損失正接のピーク温度が−60〜20℃の間に少なくとも2つ存在することにより、少なくとも一方向に延伸した際に破断することなく多孔化することが可能となるため好ましい。延伸加工性の点では損失正接のピーク温度の下限としては−60℃以上であり、延伸した際の多孔化のし易さの点では高温側のピーク温度の上限としては20℃以下である。また、損失正接のピーク温度が該温度範囲に少なくとも2つ存在することにより、延伸性と延伸による多孔化のし易さを両立できるようになる。すなわち、少なくとも一方向に延伸した際に、低温側(−60〜0℃)にピーク温度を有することにより延伸性が良好となり、延伸時のフィルムの破断トラブルが生じにくくなり、同時に高温側(−20〜20℃)にピーク温度を有することにより延伸による多孔化のし易さが良好となると考えられる。このように、損失正接のピーク温度が−60〜20℃の間に少なくとも2つ存在することにより、少なくとも一方向に延伸した場合の延伸性と延伸による多孔化のし易さとのバランスが両立できるのである。また本発明の主旨を超えない範囲であれば、動的粘弾性により測定した損失正接のピークは−60〜20℃の間に3つ以上存在しても構わない。また現実的な損失正接のピークの個数の上限は5つである。
ポリプロピレン系樹脂組成物は、上記した特性を満足すれば特に限定されない。たとえば動的粘弾性測定により周波数10Hzで測定した損失正接のピーク温度が−60〜20℃の間に少なくとも2つ存在するようにするには、ポリプロピレン系樹脂組成物として、プロピレン−α−オレフィン共重合体やポリプロピレンとエチレン−α−オレフィン共重合体どのブレンドなどを用いることもできる。本発明においてポリプロピレン系樹脂組成物は良好な多孔形状を発現する機能を担っているため、ポリプロピレンである(A)成分70〜40質量%と、プロピレン比率が40〜60mol%であるエチレン−プロピレン共重合体である(B)成分30〜60質量%との混合樹脂組成物が好適に用いられ、より好ましくは、(A)成分60〜40質量%と、(B)成分40〜60質量%とを含む混合樹脂組成物である。また(B)成分であるエチレン−プロピレン共重合体のエチレン比率が40〜60mol%であれば、プロピレン系樹脂組成物中にエチレン−プロピレン共重合体が均一・微細に分散するため良好な多孔形状を有することができるため好ましい。なお、本発明におけるポリプロピレン系樹脂組成物には本発明を損なわない範囲で上記(A)成分及び(B)成分以外の他の成分を有しても良い。前記他の成分としてはポリプロピレンである(A)成分よりも融点が低い樹脂が好適な例として挙げられ、より具体的にはエチレン−αオレフィン共重合体、あるいはスチレン系エラストマー樹脂等を例示することができる。前記他の樹脂成分の配合量はポリプロピレン系樹脂組成物全体に対して1〜10質量%であることが好ましい。
上記した(B)成分であるエチレン−プロピレン共重合体としは、エチレンとプロピレンの交互相互共重合体、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等がある。本発明に好適な共重合の形態としては(A)成分と(B)成分との混合樹脂組成物により構成される高次構造(モルフォロジー)が良好な相分離構造を有する点からブロック共重合体、グラフト共重合体、及びブロック性の高いランダム共重合体である。
次に本発明におけるポリプロピレン系樹脂組成物は、示差走査熱量測定により10℃/minの速度にて走査した時の結晶化融解ピーク温度が150℃〜170℃であり、且つ結晶化融解熱量が20〜50J/gであることが好ましい。かかる範囲内とすることにより、少なくとも一方向に延伸した際に破断することなく多孔化することが可能となるため好ましく、上記結晶化融解熱量は延伸のし易さの点では低い方が好ましく、多孔化のし易さの点では高い方が好ましい。なお、本発明における結晶化融解ピーク温度及び結晶化融解熱量は、次のようにして測定できる。すなわち、パーキンエルマー社製、示差熱走査型熱量計DSC−7を用い、JIS K7121に準じて、ポリプロピレン系樹脂組成物をDSC測定用アルミパンに約10mgを精秤し、室温から10℃/minの加熱速度にて200℃まで昇温する。この加熱過程におけるサーモグラムから結晶化融解ピーク温度(Tm)及び結晶融解熱量(ΔHm)を求めることができる。
ポリプロピレン系樹脂組成物のMFR(JIS K7210、230℃、荷重:21.18N)は1〜10g/10分であることが好ましい。かかる範囲内であれば、押出成形時に背圧等が急激に上がることが無く、好適な成形性を得ることが可能となるため好ましい。これらのことから該MFRは、好ましくは2〜10g/10分、更に好ましくは3〜10g/10分である。
ポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法としては特に限定されず、上記の特性を満足すれば、いかなる製造方法を用いてもよい。例えば、ポリプロピレンと共重合体とを多段重合により連続的に重合することによってポリプロピレン系樹脂組成物を製造することが例示できる。複数の重合器を使用し、1段目でポリプロピレンを重合し、引き続き2段目でポリプロピレンの存在下に共重合体を重合しポリプロピレン系樹脂組成物を重合する方法が例示できる。この連続重合法はポリプロピレン系樹脂組成物中のドメインが均一に分散するため好ましい。また、個々に重合して得られたポリプロピレンとエチレン−α−オレフィン共重合体とを溶融混練等によって混合することによりポリプロピレン系樹脂組成物を製造してもよい。具体的には例えばチタン担持触媒等のチーグラーナッタ触媒を用いて重合したエチレン−α−オレフィン共重合体を溶融混練する方法が例示できる。
また、本発明においては市販の原料を用いることもできる。本発明に優位に用いることができるポリプロピレン系樹脂組成物の具体的な商品としては、三菱化学(株)の商品名「ZELAS」が挙げられる。
本実施形態に用いられるポリプロピレン系樹脂組成物には、本発明の主旨を超えない範囲で帯電防止性、耐熱性、滑り性、力学特性等の諸物性を更に調整、向上させる目的で必要に応じて各種添加剤を適宜配合することができる。
ここで、各種添加剤としては、例えば通常のポリオレフィンに使用される酸化防止剤、中和剤、紫外線吸収剤、防曇剤や帯電防止等の界面活性剤、滑剤、安置ブロッキング剤、抗菌剤、顔料等が挙げられ、本発明の主旨を越えなければ特に限定されるものではない。
本実施形態に用いられるポリプロピレン系樹脂組成物には、残留溶剤は1000ppm以下、無機フィラーの上限は5質量%未満であることが好ましい。
本発明のポリプロピレン系樹脂多孔シートの空孔倍率は1.1〜5倍の範囲とすることが好ましい。ここでいう空孔倍率とは、ポリプロピレン系樹脂多孔シート中の空間部分の割合を示す数値であり、ポリプロピレン系樹脂組成物の密度とポリプロピレン系樹脂多孔シートの見かけ比重との比である。空孔倍率を上記範囲内とすることで、実質的に連通性を有し、機械強度的にも良好となるため好ましい。空孔倍率はより好ましくは1.3〜4倍、特に好ましくは1.5〜3.7倍である。
本発明のポリプロピレン系樹脂多孔シートの連通性の指標である透気度は1〜9,999秒/100mlの範囲が好ましい。これは透気度が9,999秒/100mlより大きければ測定上透気度の数値は出るものの、連通性のかなり乏しい構造であることを意味しているので実質的には連通性がないことに等しいとしてよい。好ましくは1〜5,000秒/100ml、より好ましくは10〜5,000秒/100ml、特に好ましくは10〜2,000秒/100mlである。なお、本発明における透気度はJIS P 8117に準拠した測定値である。
ポリプロピレン系樹脂多孔シートの空孔倍率や透気度は用途によって要求される範囲が異なる。例えば、オムツや生理用品などの衛生用品に使用する場合、透気度は1〜2,000秒/100mlが好適に用いられ、電池用セパレーターとして用いる場合、透気度は1〜500秒/100mlが好適に用いられる
ポリプロピレン系樹脂多孔シートの空孔倍率や透気度は延伸温度、延伸倍率を調整することにより所定の範囲に調整することができる。例えば、空孔倍率が所望の値よりも大きい場合や透気度が所望の値よりも小さい場合には、延伸倍率を小さくしたり、延伸温度を高くするなどで適宜調整すれば良い。逆に、空孔倍率が所望の値よりも小さい場合や透気度が所望の値よりも大きい場合には、延伸倍率を大きくしたり、延伸温度を低くするなどで適宜調整すれば良い。
次に、本発明の成形体の製造方法について説明する。なお、本発明における成形体とは多孔化する前のシート状成形物である。本発明における成形体の製造方法は公知の各種の製造方法が適用でき、本発明の趣旨を越えなければ特に制限されるものではない。成形体の製造方法としては、例えば、インフレーションフィルム成形法、Tダイフィルム成形法、カレンダー成形法などを挙げることができる。これらのうち本発明においてはTダイフィルム成形法が膜厚さの精度が高いため好適に用いられる。
本発明においては得られる成形体中のドメインのアスペクト比を30以下に制御することが好ましい。本発明におけるドメインのアスペクト比とは短径方向と長径方向の平均粒径の比を指す。ドメインのアスペクト比を30以下に制御することで延伸により多孔化しやすくなり、低倍率での延伸でも良好な多孔構造となり通気性が良好となるため好ましい。またドメインの大きさは必要に応じて種々に変化させうるが、実質的には0.5〜3μmであり、好適には0.5〜2μmである。なお、ここでいうドメインの大きさとはドメイン成分の平均的な直径をいう。すなわち短径方向と長径方向の平均値である。またドメインの形状はアスペクト比が30以下となる形状であれば特に制限は無く、例えば球構造やシリンダー構造などが挙げられる。本発明におけるドメインの大きさ(平均粒径)は、延伸前のシートに染色前処理(RuO4気相染色)を施し、透過電子顕微鏡(日本電子製:JEM−1200EX)を用いて、得られた成形体の断面の中心付近の観察を行い、無造作に100個選んで観察を行い平均化した値を指す。
次に本発明のポリプロピレン系多孔シートの多孔化方法について説明する。本発明におけるポリプロピレン系多孔シートは0℃〜35℃の延伸温度で少なくとも1方向に延伸することで多孔化する。概延伸は、縦方向(MD)に延伸する一軸延伸法、縦方向への一軸延伸後引き続きテンター延伸機等により横方向(TD)に延伸する逐次二軸延伸法、又は縦方向及び横方向に同時に延伸する同時ニ軸延伸法によって得られる。これらの延伸温度は、一軸延伸法及び同時に軸延伸法の場合には0℃〜35℃であり、逐次二軸延伸法の場合には一軸延伸時の延伸温度が0〜35℃であることが重要である。延伸温度がかかる範囲内であれば少なくとも一方向に延伸することで良好な空孔構造を形成することが可能となる。上記した温度範囲は好ましくは15℃〜35℃、特に好ましくは15℃〜30℃である。
また延伸倍率は一軸方向に少なくとも1.1倍以上、好ましくは1.2倍〜4倍、更に好ましくは1.3倍〜4倍である。ここで延伸倍率とは元の長さに対する延伸した後の長さの比を指す。また逐次二軸延伸の場合の延伸倍率は、変形倍率で1.7倍〜20倍が好ましく、更に好ましくは2倍〜15倍、特に好ましくは2倍〜13倍である。ここで変形倍率とは、成形体の厚みを得られる多孔シーとの厚みで除した値のことである。例えば成形体の厚みが500μmで、得られる多孔シートの厚みが100μmの場合の変形倍率は5倍となる。かかる範囲内であれば優れた透気性能を発現させるため好ましい。
ポリプロピレン系樹脂多孔シートの厚みは特に限定されるものではないが、一般的に10μm〜2mm程度、代表的には50μm〜1mm程度の範囲にある。
本発明のポリプロピレン系樹脂多孔シートは、本発明にかかるポリプロピレン系樹脂組成物を樹脂組成物Aとした場合、樹脂組成物Aを主成分とするA層の他に、樹脂組成物Bを主成分とするB層を有しても良い。本実施形態に係るポリプロピレン系樹脂シートの積層構成は特に限定されないが、積層構成を例示するとA層/B層の二層構成、A層/B層/A層、或いはB層/A層/B層の三層構成を挙げることができ、更に多層構造とすることもできる。本発明において、積層構成を形成する方法としては、例えば、押出しラミネート、サンドラミネート、共押出等の方法があり、更にはA層とB層の間に接着剤(接着性シートを含む)を介在させる方法、A層とB層とを接着剤を使用せずに熱融着する方法等の積層方法があるが、特に限定されるものではない。
樹脂組成物Bを構成する樹脂としては、フィルム状に成形できる熱可塑性樹脂で本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定されず、良好な平面性を付与できるという理由でポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、フッ素系樹脂などが好ましい。樹脂組成物Aを構成する樹脂と同じ樹脂を選択しても良い。
本発明のポリプロピレン系樹脂多孔シートには、必要に応じ、界面活性剤処理、コロナ放電処理、低温プラズマ処理、スルホン化処理、紫外線処理、放射線グラフト処理等の親水化処理を施すことができ、また各種塗膜を形成することができる。
前記特性を有する本発明のポリプロピレン系樹脂多孔シートは、透気性が要求される種々の用途に応用することができる。例えば使い捨て紙おむつ、生理用品などの体液吸収用パットもしくはベットシーツ等の衛生材料、手術衣もしくは温湿布用基材等の医療用材料、ジャンパー、スポーツウェアもしくは雨着等の医療用材料、壁紙、屋根下地材、断熱材、吸音材などの建材用材料、防湿材、脱酸素剤、使い捨てカイロ、鮮度保持包装もしくは包装材料等の資材として好適に使用できる。
以下に実施例でさらに詳しく説明するが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。なお、本明細書中に表示されるフィルムについての種々の測定値および評価は次のようにして行った。ここで、フィルムの押出機からの流れ方向を縦方向、その直交方向を横方向とよぶ。
(1)厚み
得られたポリプロピレン系樹脂多孔シートを1/1000mmのダイヤルゲージにて、面内を不特定に5箇所測定しその平均を厚みとした。
(2)動的粘弾性測定
多孔化させる前の成形体をJIS K−7198 A法に記載の動的粘弾性測定法により、岩本製作所(株)製粘弾性スペクトロメーター「VES−F3」を用い、振動周波数10Hz、歪み0.1%にて、昇温速度=3℃/分で、−100℃〜170℃まで測定し、得られた損失正接(tanδ)のピーク温度を測定した。
(3)透気度(ガーレー値)
得られたポリプロピレン系樹脂多孔シートから直径φ40の大きさでサンプルを切り出し、JIS P 8117に準拠して透気度(秒/100ml)を測定した。
(4)空孔倍率
得られたポリプロピレン系樹脂多孔シートを10cm角に切り出し、そのサンプルの質量と厚みを測定して、質量と厚みの比から見かけ比重(ρ)を算出し、ポリプロピレン系樹脂組成物の密度(ρ0)との比ρ0/ρを空孔倍率として求めた。なお、空孔倍率は厚みによる依存性が大きいため5回平均の値とした。
(実施例1)
ポリプロピレン系樹脂組成物として、ポリプロピレン:48質量%と、エチレン−プロピレン共重合体:52質量%(共重合体中のプロピレン成分:48mol%)との混合樹脂組成物(MFR=7.0g/10分:230℃、荷重:21.18N)を用い、幅300mm、リップギャップ1mmのTダイ口金を具備したφ40mm単軸押出機にて、押出設定温度180〜200℃に設定で押出し、設定温度110℃のキャストロールで引き取り、冷却固化させて、幅210mm、厚み330μmの成形体を得た。成形体の動的粘弾性測定結果を図1に示す。次いで、フィルムロール縦延伸機を用い、表1に記載の条件1の延伸温度及び延伸倍率で延伸を行った。得られたシートを評価した結果を表2に示す。
(比較例1)
ポリプロピレン系樹脂組成物として、ポリプロピレン:60質量%と、エチレン−プロピレン共重合体:40質量%(共重合体中のプロピレン成分:33mol%)との混合樹脂組成物(MFR=7.0g/10分:230℃、荷重:21.18N)を用い、実施例1と同様の方法にて幅200mm、厚み330μmの成形体を得た。成形体の動的粘弾性測定結果を図2に示す。次いで、フィルムロール縦延伸機を用い、表1に記載の条件1の延伸温度及び延伸倍率で延伸を行った。しかしながら得られたシートはほとんど白化することが無く、通気性は発現しなかった。
(実施例2)
実施例1において、表1に記載の条件2でフィルムロール縦延伸機を用いて縦延伸を行い、次いで京都機械製フィルムテンター設備にて横方向に延伸を行った。得られたシートを評価した結果を表2に示す。
(実施例3)
実施例1において、表1に記載の条件3でフィルムロール縦延伸機を用いて縦延伸を行い、次いで京都機械製フィルムテンター設備にて横方向に延伸を行った。得られたシートを評価した結果を表2に示す。
(実施例4)
実施例1において、表1に記載の条件4でフィルムロール縦延伸機を用いて縦延伸を行った。得られたシートを評価した結果を表2に示す。
(実施例5)
実施例1において、表1に記載の条件5でフィルムロール縦延伸機を用いて縦延伸を行い、次いで京都機械製フィルムテンター設備にて横方向に延伸を行った。得られたシートを評価した結果を表2に示す。
(実施例6)
実施例1において、表1に記載の条件6でフィルムロール縦延伸機を用いて縦延伸を行い、次いで京都機械製フィルムテンター設備にて横方向に延伸を行った。得られたシートを評価した結果を表2に示す。
(比較例2)
実施例1において、表1に記載の条件7でフィルムロール縦延伸機を用いて縦延伸を行った。縦延伸温度を50℃にした場合、延伸時に破断が見られ多孔シートを得ることが出来なかった。
Figure 0005705605
Figure 0005705605
表2より、本発明で規定するポリプロピレン系樹脂多孔シートは透気性が良好な多孔シートであることがわかる。また、延伸加工時に破断トラブル無く多孔化できていることが確認できる(実施例1〜6)。これに対して、ポリプロピレン系樹脂組成物の動的粘弾性測定により周波数10Hzで測定した損失正接のピーク温度が単一の場合(比較例1)には、延伸時の空孔の形成が悪く通気性が発現せず、延伸時の延伸温度が35℃よりも高い場合(比較例2)には延伸時に破断が生じ問題があることが確認できる。
本発明のポリプロピレン系樹脂多孔シート及びポリプロピレン系樹脂多孔シートであり、通気性に優れ包装用品、衛生用品、畜産用品、建築用品、医療用品、分離膜、光拡散膜、反射シート又は電池用セパレーターとして好適に利用できる。

Claims (3)

  1. 動的粘弾性測定により周波数10Hzで測定した損失正接のピーク温度が−60〜20℃の間に少なくとも2つ存在し、−60〜0℃の間に少なくとも1つのピークと、−20〜20℃の間に少なくとも他の1つのピークを有するポリプロピレン系樹脂組成物を主成分としており、かつ、空孔倍率が1.1〜5倍であるポリプロピレン系樹脂多孔シートであって、該ポリプロピレン系樹脂組成物は、下記(A)成分と(B)成分との混合樹脂組成物であり、該組成物中の(A)成分が60〜40質量%、(B)成分が40〜60質量%であり、該ポリプロピレン系樹脂組成物の下記条件で測定したMFRが3〜10g/10分であり、厚みが50μm〜1mmであることを特徴とするポリプロピレン系樹脂多孔シート
    (A)成分:ポリプロピレン
    (B)成分:プロピレン比率が40〜60mol%であるエチレン−プロピレン共重合体
    (MFRの測定条件)JIS K7210に準拠し、230℃、荷重21.18Nで測定する。
  2. 動的粘弾性測定により周波数10Hzで測定した損失正接のピーク温度が−60〜20℃の間に少なくとも2つ存在し、−60〜0℃の間に少なくとも1つのピークと、−20〜20℃の間に少なくとも他の1つのピークを有するポリプロピレン系樹脂組成物を主成分とする成形体を、0℃〜35℃の延伸温度で少なくとも1方向に延伸する工程を1回以上経ることにより多孔化するポリプロピレン系樹脂多孔シートの製造方法であって、該ポリプロピレン系樹脂組成物は、下記(A)成分と(B)成分との混合樹脂組成物であり、該組成物中の(A)成分が60〜40質量%、(B)成分が40〜60質量%であり、該ポリプロピレン系樹脂組成物の下記条件で測定したMFRが3〜10g/10分であり、厚みを50μm〜1mmとすることを特徴とするポリプロピレン系樹脂多孔シートの製造方法
    (A)成分:ポリプロピレン
    (B)成分:プロピレン比率が40〜60mol%であるエチレン−プロピレン共重合体
    (MFRの測定条件)JIS K7210に準拠し、230℃、荷重21.18Nで測定する。
  3. 前記ポリプロピレン系樹脂組成物中のドメインのアスペクト比を30以下に制御した請求項2に記載のポリプロピレン系樹脂多孔シートの製造方法。
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