JP5705043B2 - 内燃機関用点火装置 - Google Patents
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Description
また、内燃機関の運転状況によって、燃焼室内に発生する混合気の気流の強さ及び流れ方向も必ずしも一定ではない。
このため、特許文献1や特許文献2にあるように点火プラグの先端部にタンブル渦流や燃料噴射の引込流等の筒内に発生する気流を作用させたときに放電アークが引き伸ばされるか否かは確率的事象となり、期待通り放電アークが引き伸ばされない虞があることが判明した。
本図(b)に示すように、500サイクル中約82%に当たる414サイクルで放電アークの引き延ばしが行われ、本図(c)に示すように、500サイクル中約18%に当たる86サイクルで放電アークの引き延ばしが行われなかった。また、放電アークの引き延ばしが行われなかった場合には、目標とする図示平均有効圧に到達せず、燃焼サイクルによって燃焼が悪化する虞がある。
しかし、請求項1の発明によれば、上記放電アーク引き伸ばし判定手段によって、放電アークが引き伸ばされていないと判断した場合には、上記磁場発生手段への通電を行い上記放電アークに磁界によるローレンツ力を作用させ、上記放電アークを湾曲させることによって、上記筒内気流によって確実に放電アークを引き伸ばすことができ、安定した着火を実現できる。
また、上記放電アーク引き延ばし判定手段によって、放電アークが引き伸ばされていると判断した場合には、上記磁場発生手段への通電は行われず、無駄なエネルギの消耗を抑制することができる。
かかる知見に基づき、請求項2の発明にあるように、所定時間に対する放電電圧の電圧増加率を閾値判定することによって、容易に放電アークが引き伸ばされているか否かを判定することができるとの新たな知見を得たものである。
図1(a)は、本実施形態における点火装置1の適用された内燃機関(以下、E/Gと略す。)5の燃焼室側からエンジンヘッド側を望む平面図、(b)は、本図(a)中A−Aに沿った矢視断面図である。
エンジンヘッド50には吸気バルブ511によって開閉される吸気筒510と、排気バルブ521によって開閉される排気筒520とが形成されている。
エンジンヘッド50には、燃焼室500内に高圧燃料FLを噴霧する燃料噴射弁(INJ)と、高電圧の印加により放電アークを発生され燃焼室内に導入された混合気の点火を行う点火プラグ10と、本発明の要部である放電アーク引き延ばし判定手段及び放電電圧検出手段を内蔵するエンジン制御装置(ECU)30と、磁場発生手段として第1の磁場発生手段MG1と第2の磁場発生手段MG2とが設けられている。
第1の磁場発生手段MG1と第2の磁場発生手段MG2とのいずれか一方、又は、両方への通電によって、点火プラグ10の中心電極11と接地電極12との間に発生する放電アーク13にローレンツ力FLNZ1、FLNZ2を選択的に作用させ、所望の方向へ湾曲させることができる。
また、IGC20は図略の電圧検出手段を具備し、点火プラグ10に印加した放電電圧VIGの経時変化をモニタし、ECU30へ伝達する。
なお、電圧増加率ΔVは、(数1)に示すように、0.05ms間の放電電圧VIGの変化量(kV)を0.05msで割った値の絶対値とした。
例えば、燃焼室内に向かって略L字形に延びる接地電極12の脚部120が、筒内に流れる気流TMBに対して上流側となる方向で点火プラグ10がシリンダヘッド50に組み付けられている場合、図2(a)に示すように、中心電極11の先端と接地電極12の放電部121との間に放電アーク13が発生したときに、接地電極12の脚部120が障壁となり、放電アーク13は、筒内気流TMBに晒されることなく引き伸ばされない。
成層燃焼機関や高過給燃焼機関等の難着火性の機関においては、このままでは失火に至る虞がある。
そこで、このように、筒内気流によって放電アーク13が引き伸ばされない場合には、第1の磁場発生手段MG1を駆動し、第1の磁界MGF1を放電アーク13に作用させる。すると、本図(b)に示すように、第1の磁界MGF1に直交する方向の第1のローレンツ力FLNZ1によって放電アーク13がローレンツ力FLNZ1の作用する方向に引き伸ばされることになる。
すると、放電アーク13は、接地電極12の脚部120の影からはみ出し、筒内気流TMBに晒されることになり、本図(c)に示すように筒内気流TMBによって、長く引き伸ばされることになり、難着火性機関の点火が可能となる。
図3(a)に示すように、放電開始から、一定期間t1の間放電アーク13が引き伸ばされず、本図(b)に示すように、電圧増加率ΔVが所定の閾値VREF(例えば、2kV/ms)より低い場合には、第1の磁場発生手段MG1への通電を行う。
このとき、第1のローレンツ力FLNZ1が放電アーク13作用し、筒内気流TMBによって放電アーク13が引き伸ばされると、本図(a)に示すように、放電電圧VIGが大きく変化する。
なお、点火プラグ10において、中心電極11と接地電極12との間に放電アーク13が発生し、筒内気流TMBによって放電アーク13が引き伸ばされ放電電圧VIGに変化を生じはじめるのは、放電開始から、0.2ms程度の時間が経過したときであり、また、放電アーク13が維持されるのは、2ms程度の期間である。
また、本実施形態においては、中心電極11側が正極とし、接地電極12側を負極として、放電アーク13は、中心電極11から接地電極12に向かう電流とみなして第1、第2のローレンツ力FLNZ1、FLNZ2の方向を図示しているが、中心電極11及び接地電極12の極性を逆にすれば、作用するローレンツ力FLNZ1、FLMNZ2の方向も逆向きになる。
例えば、本図(a)に示すように、接地電極1の脚部120が、筒内気流TMBの下流側となるように点火プラグ10が組み付けられた場合、接地電極12の脚部120によって放電アーク13の引き延ばしが遮られ、さらに、本図(b)に示すように、上述のように第1の磁場発生手段MG1への通電により、磁界MGF1が放電アーク13に作用しても、なお、放電アーク13の引き延ばしに至らない場合に、本図(c)に示すように、第2の磁場発生手段MG2への通電が行われ、第1のローレンツ力FLNZ1に加え第2のローレンツ力FLNZ2が放電アーク13に作用し、放電アーク13の湾曲方向を変化させ、筒内気流TMBによって放電アーク13が大きく引き伸ばされるようになる。
このときの放電電圧VIG(kV)及び電圧変化率ΔV(kV/ms)を図5に示す。
すると筒内気流TMBによって放電アーク13が引き伸ばされるようになり、本図(a)に示すように、放電電圧VIGが大きく変化する。
なお、 一旦、筒内気流TMBにより放電アークが引き伸ばされれば、第1の磁場発生手段MG1、及び/又は、第2の磁場発生手段MG2への通電を終了しても良い。
ECU30から点火信号IGtの発振がなされると、それをトリガとして、磁場発生手段の制御フローが開始される。
ステップS100の第1の判定要否判定行程では、放電開始から第1の磁場発生手段MG1への通電の要否を判定する第1の判定時期か否かが判定される。
放電開始から一定時間t1となるまでは放電電圧VIGの変化が少なく、ステップS100のループを繰り返しt1の経過まで待機される。
所定の時間t1となるとステップS100の判定がYesとなり、ステップS110の第1の磁場発生要否判定行程に進む。S110の第1の磁場発生要否判定行程では、電圧増加率ΔVと所定の閾値VREFとの比較による第1の閾値判定が行われる。このとき、ΔV<VREFなら判定Yesとなり、ステップS120の第1の磁場発生行程へ進む。
ステップS120の第1の磁場発生行程では、放電アーク13に第1のローレンツ力FLNZ1を作用させるべく第1の磁場発生手段への通電が開始される(MG1 ON)。
ステップS110において、電圧増加率が所定の閾値以上、即ち、ΔV≧VREFなら判定Noとなり、磁場発生手段への通電は不要と判断され、ステップS160の終了行程に進み、第1の磁場発生手段MG1、第2の磁場発生手段MG2共に通電は行われない。
即ち、磁場による補助がなくても筒内気流TMBにより、放電アーク13が引き延ばされる場合には、磁場発生手段MG1、MG2への通電を行わず、エネルギを制限することができる。
次いで、ステップS130の第2の判定要否判定行程では、第2の磁場発生手段MG2への通電の要否を判定する第1の判定時期か否かが判定される。
ステップS130において、所定の時間t2を経過するまでは、判定Noとなり、第2の判定が行われることがなく、ステップS100〜S130のループが繰り返される。ステップS130において所定時間t2が経過すると判定Yesとなり、ステップS140の第2の磁場発生要否判定行程に進む。
ステップS140の第2の磁場発生要否判定行程では、電圧増加率ΔVと所定の閾値VREFとの比較による第2の閾値判定が行われる。このとき、ΔV<VREFなら判定Yesとなり、ステップS150の第2の磁場発生行程へ進む。
即ち、第1の磁場発生手段MG1への通電により、電圧増加率が所定の閾値VREF以上となったら第2の磁場発生手段MG2への通電が不要であるので、判定Noとなり、ステップS160の終了行程に進む。
ステップS150の第2の磁場発生行程では、第2の磁場発生手段MG2への通電がなされ、ステップ140で判定Noとなるまで、ステップS140、S150のループが繰り返される。
第2の磁場発生手段MG2への通電により、放電アーク13が筒内気流TMBによって引き伸ばされ、放電電圧VINが所定の閾値VREF以上となると、ステップS140の第2の磁場発生要否判定行程において、判定Yesとなり、ステップ160の終了行程に進む。
本図(a−1)、(a−2)、(a−3)は、接地電極12の脚部120の位置が筒内気流TMBによる放電アーク13の引き延ばしに影響を与えない位置を示し、このような場合には、筒内気流TMBが直接放電アーク13を引き伸ばして、難着火性の機関においても安定した着火が実現できるので、第1の磁場発生手段MG1、第2の磁場発生手段MG2のいずれも作動させる必要がなく、磁界発生のためのエネルギを消耗しない。
即ち、本図に示すように、本発明によれば、点火プラグ10の任意の方向に対して、効果的に磁界を作用させて、筒内気流TMBによる放電アーク13の引き延ばしを可能にし、内燃機関において安定した着火を実現できる。
図8(a)は、放電アーク13に筒内気流が作用していない状態における放電電圧VIGであり、図8(b)は、そのときの電圧増加率ΔVの変化を示す特性図である。
図8(a)に示すように、筒内気流TMBが放電アーク13に作用せず、放電アーク13の引き延ばしが行われていない状態では、放電電圧VIGにほとんど変化がなく、電圧増加率ΔVの変化も小さい。
一方、図9(a)は、放電アーク13に筒内気流が作用している状態における放電電圧VIGであり、図9(b)は、そのときの電圧増加率ΔVの変化を示す特性図である。
図9(a)に示すように、筒内気流TMBが放電アーク13に作用し、放電アーク13の引き延ばしが行われている状態では、放電電圧VIGが大きく変化し、電圧増加率ΔVの変化も大きい。
したがって、電圧増加率ΔVを閾値判定することにより、放電アーク13が筒内気流TMBによって引き伸ばされているか否かを判定できるとの知見を得たものである。
また、図10に示すように、点火制御装置IGCによって点火プラグ10に例えば20kV以上の高電圧が印加され絶縁破壊に至り、一気に放電空間の抵抗が下がるので、放電開始直後は電圧増加率の変化が極めて大きいため判定時期から除外してある。また、放電が終了する2ms以上の期間も燃焼に伴い燃焼室内に発生するイオン電流の影響により電圧増加率の変化が大きいため判定時期から除外してある。
図10(a)に示すように、放電アーク13が引き伸ばされていない状態では、判定期間内における、電圧増加率ΔVの最大値をVREFとし、電圧増加率ΔVを絶対値化することにより、図10(b)に示すように、放電アーク13が引き伸ばされている状態を閾値VREFとの比較により認識することができる点に着目したものである。
本図において、実際に計測された電圧増加率の相対値の変化を一点鎖線で示し、負の値を反転させた絶対値の変化を実線でしめしてある。
また、上記実施形態においては、第1の磁場発生手段によって放電アークの引き延ばしが行われなかった場合に、第1の磁場発生手段への通電を維持したまま、第2の磁場発生手段への通電を行う制御方法の例を示したが、いずれか一方への通電を選択的に行うようにしても良い。
さらに、磁場発生手段の数は第1、第2の2つに限定するものではなく、2以上の磁場発生手段を設けることにより、ローレンツ力を利用して、放電アークが引き伸ばされない状態を回避する本発明の趣旨に反しない限り、磁場発生手段の数は適宜変更可能である。
また、磁場発生手段に印加する電流の方向を変更することにより、発生する磁場の方向を変え、放電アークに作用するローレンツ力の方向を変え、もっとも効果的に放電アークの引き延ばしができる組み合わせを実際の燃焼行程を繰り返す間に学習し、最適な条件を選択するようにしても良い。
その際にも、電圧増加率ΔVを閾値判定することにより、効果的な磁場の発生条件か否かを判断することができる。
10 点火プラグ
11 中心電極
12 接地電極
13 放電アーク
20 点火制御手段(IGC)
30 エンジン制御装置(ECU)
40 磁場発生制御手段(MGC)
5 内燃機関
50 シリンダヘッド
500 燃焼室
510 吸気筒
511 吸気バルブ
520 排気筒
521 排気バルブ
53 シリンダブロック
54 ピストン
INJ 燃料噴射弁
MG1 第1の磁場発生手段
MG2 第2の磁場発生手段
FLNZ1 第1のローレンツ力
FLNZ2 第2のローレンツ力
TMB 燃焼室内気流
FL 燃料噴霧
Claims (3)
- 内燃機関に設けた点火プラグに高電圧を印加して絶縁体を介して対向する中心電極と接地電極との間に発生させた放電アークに内燃機関の燃焼室内に発生する気流を作用させて、上記放電アークを引き伸ばして燃焼室内に導入された混合気の点火を行う内燃機関用の点火装置であって、
上記放電アークが実際に引き延ばされているか否かを判断する放電アーク引き延ばし判定手段と、
該判定手段によって上記放電アークが引き伸ばされていないと判断したときには、上記放電アークに磁界を作用させて上記筒内気流による放電アークの引き延ばしを補助すべく磁場を発生させる磁場発生手段とを具備することを特徴とする内燃機関用点火装置。 - 上記放電アーク引き延ばし判定手段が、上記点火プラグの放電電圧を検出する放電電圧検出手段と、該放電電圧の微少時間に対する電圧増加率を算出する電圧増加率算出手段と、放電開始から所定時間における上記電圧増加率と所定の閾値との比較により上記電圧増加率が上記閾値以上のときには上記放電アークが引き伸ばされていると判断する閾値判定手段とからなる請求項1に記載の内燃機関用点火装置。
- 上記磁場発生手段が通電により発生する磁界の方向が互いに直交する2つの磁場発生手段からなり、上記放電アーク引き延ばし判定手段によって上記放電アークが引き伸ばされていないと判定されたときには、上記2つの磁場発生手段のいずれか一方、又は、両方への通電を行う請求項1又は2に記載の内燃機関用点火装置。
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