JP5703859B2 - 有機電界発光素子用組成物及び有機電界発光素子の製造方法 - Google Patents
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Description
本発明はまた、この有機電界発光素子用組成物を用いて湿式成膜法により形成された正孔注入層及び/又は正孔輸送層を有する有機電界発光素子に関する。
このうち、真空蒸着法は積層化が可能であるため、陽極及び/又は陰極からの電荷注入の改善、励起子の発光層封じ込めが容易であるという利点を有する。
湿式成膜法で有機層を形成した例として、特許文献1があり、特許文献1には、電荷輸送用組成物に用いられる各種の溶媒や、安息香酸エチルを溶媒として用いた正孔注入層用組成物が開示されている。しかし、特許文献1に開示されるトルエンやキシレン、あるいは安息香酸エチルといった、沸点が240℃に満たない溶媒を用いた組成物には、塗布の際、とりわけノズルを用いた塗布の際、乾燥によりノズル近傍で溶質が濃縮されたり析出したりして、塗布工程の歩留まりが下がる欠点があった。また、特許文献1には、沸点が250℃である安息香酸n−ブチル等も溶媒として用いられる旨記載があるが、例えばトルエンやキシレン、安息香酸エチルといった低沸点溶媒に比べると、組成物に用いられる高分子化合物を溶解させる度合いが低く、このために均一な成膜が困難であるなど、実用上の課題があった。
有機電界発光素子用組成物に含まれる溶媒(a)及び溶媒(b)の合計において、溶媒(a)及び溶媒(b)に含まれる芳香環を構成する炭素原子の合計数が、溶媒(a)及び溶媒(b)に含まれる脂肪族炭化水素基を構成する炭素原子の合計数に対して、2.7を超えることを特徴とする有機電界発光素子用組成物、に存する。
本発明の有機電界発光素子用組成物は、有機電界発光素子の正孔注入層及び正孔輸送層のうちの少なくとも1層を形成するための有機電界発光素子用組成物であって、正孔注入・輸送性材料と溶媒とを含有し、前記正孔注入・輸送性材料が、繰り返し単位に少なくともトリアリールアミノ基を有する、重量平均分子量3000〜1000000の高分子化合物であり、前記溶媒として、(a)沸点が240℃以上であり、アルキル基を有し、アリール基を1つ有する化合物(以下「溶媒(a)」と称す。)と、(b)沸点が240℃以上であり、アリール基を2つ以上有する化合物(以下「溶媒(b)」と称す。)とを含有し、有機電界発光素子用組成物に含まれる溶媒(a)及び溶媒(b)の合計において、溶媒(a)及び溶媒(b)に含まれる芳香環を構成する炭素原子の合計数が、溶媒(a)及び溶媒(b)に含まれる脂肪族炭化水素基を構成する炭素原子の合計数に対して、2.7を超えることを特徴とする。
また、本発明の有機電界発光素子用組成物は、更に電子受容性化合物を含有することが好ましい。
本発明の有機電界発光素子用組成物に含有される溶媒(a)は、沸点が240℃以上であり、アルキル基を有し、アリール基を1つ有する化合物である。
溶媒(a)の沸点が250℃未満であると、組成物の耐乾燥性が悪くなる。溶媒(a)の沸点は、好ましくは245℃以上、より好ましくは250℃以上である。ただし、溶媒(a)の沸点が過度に高いと有機電界発光素子の製造時、組成物付与後の乾燥に時間を要することから、溶媒(a)の沸点は、好ましくは400℃以下、より好ましくは350℃以下である。
xは1〜3の自然数で、xが2以上の場合、複数のLaとRaは互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。)
Raのアルキル基は、直鎖でも分枝していてもよい。Raとしては炭素数1〜6のものが好ましく、4以下のものが更に好ましく、2以下のものが更に好ましい。
Raのアリール基が有していてもよい置換基としてはハロゲン原子、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアルキルカルボニル基、炭素数1〜4のアルキルオキシカルボニル基、炭素数1〜4のアルキルカルボニルオキシ基が好ましく、炭素数1〜4のアルキルオキシ基、炭素数1〜4のアルキルオキシカルボニル基がより好ましい。
Raが置換基を有する場合、その置換基の数は特に制限はないが、通常3以下、好ましくは2以下である。
aは、2以下であることが好ましく、1であることがより好ましい。
本発明の有機電界発光素子用組成物に含有される溶媒(b)は、沸点が240℃以上であり、アリール基を2つ以上有する化合物である。
溶媒(b)の沸点が240℃未満であると、組成物の耐乾燥性が悪くなる。溶媒(b)の沸点は、好ましくは250℃以上、より好ましくは260℃以上である。ただし、溶媒(b)の沸点が過度に高いと有機電界発光素子製造時、組成物付与後の乾燥に時間を要することから、溶媒(b)の沸点は、好ましくは400℃以下、より好ましくは350℃以下である。
Arb1,Arb2のアリール基が有していてもよい置換基としては、各々独立に、ハロゲン原子、炭素数1〜2のアルキル基、炭素数1〜2のアルコキシ基、炭素数1〜2のアルキルカルボニル基、炭素数1〜2のアルキルオキシカルボニル基、炭素数1〜2のアルキルカルボニルオキシ基、フェニル基が好ましく、炭素数1〜2のアルキル基、炭素数1〜2のアルキルオキシ基がより好ましい。
Arb1,Arb2が置換基を有する場合、その置換基の数は特に制限はないが、通常3以下、好ましくは2以下である。
本発明の有機電界発光素子用組成物は、上述の溶媒(a)と溶媒(b)とを、ArC/AlC比が2.7を超えるような割合で含むことを特徴とする。
有機電界発光素子用組成物中の溶媒(a)の含有量を「Ga」(重量基準)、溶媒(b)の含有量を「Gb」(重量基準)とし、溶媒(a)の1分子中の芳香族炭素の数を「ArCa」、脂肪族炭素の数を「AlCa」、分子量を「Wa」とし、溶媒(b)の1分子中の芳香族炭素の数を「ArCb」、脂肪族炭素の数を「AlCb」、分子量を「Wb」で表した場合、有機電界発光素子用組成物中の溶媒(a)と溶媒(b)のモル比は
溶媒(a):溶媒(b)=Ga/Wa:Gb/Wb
で求められる。
溶媒(a)と溶媒(b)の合計中の芳香族炭素の数:ArCは、
溶媒(a)→ArCa×Ga/Wa
溶媒(b)→ArCb×Gb/Wb
より、
ArC=ArCa×Ga/Wa+ArCb×Gb/Wb
で算出される。
溶媒(a)と溶媒(b)の合計中の脂肪族炭素の数:AlCは、
溶媒(a)→AlCa×Ga/Wa
溶媒(b)→AlCb×Gb/Wb
より、
AlC=AlCa×Ga/Wa+AlCb×Gb/Wb
で算出される。
よって、ArC/AlC比は、下記式で算出することができる。
即ち、本発明では共に高沸点の溶媒(a)と溶媒(b)を併用することにより耐乾燥性を高めた上で、アリール基を多く有する溶媒(b)を用いることにより、繰り返し単位に少なくともトリアリールアミノ基を有する、重量平均分子量3000〜1000000の高分子化合物の溶解性を高めて組成物の均一性を高める。
このため、溶媒(a)と溶媒(b)とを上記ArC/AlC比を満たすように併用するが、ArC/AlC比が大き過ぎると組成物の粘度が過度に上昇する傾向があるため、ArC/AlC比は上記上限値以下とすることが好ましい。
本発明の有機電界発光素子用組成物において、溶媒(a)と溶媒(b)の合計の含有量は、組成物中において、50重量%以上99%以下であることが好ましく、75重量%以上98%以下がより好ましく、90%以上がより好ましく、95%以上が特に好ましい。溶媒(a)と溶媒(b)の含有量が上記下限値以上であることにより、組成物の均一性が高められるが、組成物に含有させる正孔注入・輸送性材料等の固形分濃度を確保するために、組成物中の溶媒(a)と溶媒(b)の合計含有量は上記上限値以下とする。
本発明の有機電界発光素子用組成物に含まれる正孔注入・輸送性材料は、繰り返し単位に少なくともトリアリールアミノ基を有する、重量平均分子量3000〜1000000の高分子化合物(以下「芳香族アミン系ポリマー」と称す場合がある。)である。
本発明における芳香族アミン系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、3000以上、また、1000000以下であり、有機電界発光素子への使用に好適である。
また重量平均分子量がこの下限値を下回ると、ガラス転移温度、融点及び気化温度が低下するため、耐熱性が著しく損なわれるおそれがある。
また、本発明における芳香族アミン系ポリマーの数平均分子量(Mn)は、通常2,500,000以下、好ましくは750,000以下、より好ましくは400,000以下であり、また通常500以上、好ましくは1,500以上、より好ましくは3,000以上である。
上記範囲内であると、精製が容易であり、また芳香族アミン系ポリマーの有機溶媒に対する溶解性や電荷輸送能が良好であるため好ましい。
本発明の有機電界発光素子用組成物に含有される芳香族アミン系ポリマーは、下記式(2)で表される繰り返し単位を含むポリマーであることが好ましい。
Ar31、及びAr32は、各々独立して、直接結合、2価の、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、Ar33〜Ar35は、各々独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。Ar33及びAr35は1価の基を、Ar34は2価の基を示す。但し、Ar31及びAr32が同時に、直接結合であることはない。)
置換基を有していてもよい芳香族複素環基としては、例えばフラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環などの、5又は6員環の単環又は2〜4縮合環由来の基が挙げられる。
また、Ar31〜Ar35としては、前記群から選ばれる1種又は2種以上の環を直接結合、又は―CH=CH―基により連結した基も好ましく、ビフェニル基及びターフェニル由来基、がさらに好ましい。
メチル基、エチル基等の好ましくは炭素数1〜24、更に好ましくは炭素数1〜12のアルキル基;
ビニル基等の好ましくは炭素数2〜24、更に好ましくは炭素数2〜12のアルケニル基;
エチニル基等の好ましくは炭素数2〜24、更に好ましくは炭素数2〜12のアルキニル基;
メトキシ基、エトキシ基等の好ましくは炭素数1〜24、更に好ましくは炭素数1〜12のアルコキシ基;
フェノキシ基、ナフトキシ基、ピリジルオキシ基等の好ましくは炭素数4〜36、更に好ましくは炭素数5〜24のアリールオキシ基;
メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の好ましくは炭素数2〜24、更に好ましくは炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基;
ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等の好ましくは炭素数2〜24、更に好ましくは炭素数2〜12のジアルキルアミノ基;
ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、N−カルバゾリル基等の好ましくは炭素数10〜36、更に好ましくは炭素数12〜24のジアリールアミノ基;
フェニルメチルアミノ基等の好ましくは炭素数6〜36、更に好ましくは炭素数7〜24のアリールアルキルアミノ基;
アセチル基、ベンゾイル基等の好ましくは炭素数2〜24、好ましくは炭素数2〜12のアシル基;
フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;
トリフルオロメチル基等の好ましくは炭素数1〜12、更に好ましくは炭素数1〜6のハロアルキル基;
メチルチオ基、エチルチオ基等の好ましくは炭素数1〜24、更に好ましくは炭素数1〜12のアルキルチオ基;
フェニルチオ基、ナフチルチオ基、ピリジルチオ基等の好ましくは炭素数4〜36、更に好ましくは炭素数5〜24のアリールチオ基;
トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基等の好ましくは炭素数2〜36、更に好ましくは炭素数3〜24のシリル基;
トリメチルシロキシ基、トリフェニルシロキシ基等の好ましくは炭素数2〜36、更に好ましくは炭素数3〜24のシロキシ基;
シアノ基;
フェニル基、ナフチル基等の好ましくは炭素数6〜36、更に好ましくは炭素数6〜24の芳香族炭化水素基基;
チエニル基、ピリジル基等の好ましくは炭素数3〜36、更に好ましくは炭素数4〜24の芳香族複素環基。
上記各置換基は、さらに置換基を有していてもよく、その例としては前記置換基群Zに例示した基が挙げられる。
Ar31〜Ar35における芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基が有してもよい置換基の分子量としては、さらに置換した基を含めて500以下が好ましく、250以下がさらに好ましい。
なお、mが2以上である場合、前記式(2)で表される繰り返し単位は、2個以上のAr34及びAr35を有することになる。その場合、Ar34同士及びAr35同士は、各々、同じでもよく、異なっていてもよい。さらに、Ar34同士、Ar35同士は、各々互いに直接又は連結基を介して結合して環状構造を形成していてもよい。
mは0であることが、架橋性ポリマーの、有機溶媒に対する溶解性及び成膜性が高められる点で好ましい。
また、mは1以上、3以下であることが、ポリマーの正孔輸送能が向上する点で好ましい。
本発明における芳香族アミン系ポリマーは、共役系の構造を有する繰り返し単位からなるため、十分な電荷輸送能を有し、また溶媒に対する十分な溶解性を有する点から、共役ポリマーであることが好ましい。
より具体的には、前記式(2)で表される繰り返し単位からなるポリマーであることが好ましい。
また、本発明における芳香族アミン系ポリマーは、共役ポリマーである場合、積層が容易であり、また成膜時の表面平坦性に優れる点で、さらに不溶化基を有することが好ましい。つまり、本発明における芳香族アミン系ポリマーは、不溶化基を有する共役ポリマーであることが好ましい。
芳香族アミン系ポリマーは、置換基として不溶化基を含む基を有するが、不溶化基を有する位置は、前記式(2)で表される繰り返し単位中にあってもよく、また式(2)で表される繰り返し単位以外の部分、例えば、末端基に有していてもよい。
解離性基とは、溶媒に対して可溶性を示す基であり、結合している基(例えば、炭化水素環)から70℃以上で熱解離する基を表す。また、解離性基が解離することにより、ポリマーの溶媒への溶解度は低下する。
このような解離性基は、炭化水素環に結合し、該炭化水素環は極性基を有さない芳香族炭化水素環に縮合していることが好ましく、逆ディールスアルダー反応により熱解離する基であることがより好ましい。
上記範囲内であると、ポリマーの合成が容易であり、また成膜時に化合物が分解するなどが起きにくい。
また特に、分子間のスタッキングを抑制する立体構造を有する基が可溶性に優れるため好ましい。化合物から解離性基が解離する反応の一例を下記に示す。
このような解離性基は、加熱処理前において、その嵩高い分子構造から、分子間のスタッキングを防止したり、有機塗布溶媒に対して該ポリマーが良好な溶解性を有するものとすることができる。また、加熱処理によって該ポリマーから解離性基が解離するため、加熱後の化合物の溶媒への溶解性を著しく抑制することができ、該化合物を含む有機層に耐有機溶媒塗布性を付与することが出来る。したがって、本発明における解離性ポリマーを用いて形成された有機層上に、さらに湿式成膜法によって有機薄膜を積層して形成することが容易となる。
解離性基を含む基が2価の基である場合の具体例は、以下の<2価の解離性基を含む基群A>の通りである。
解離性基を有する共役ポリマーは、その構造中に解離性基を有するものであれば、その繰り返し単位等の構造は特に制限はないが、繰り返し単位内に芳香族環を有し、この芳香族環に縮合した炭化水素環に上記解離性基が結合していることが好ましい。
また中でもエテノ基、あるいは、エタノ基を含む解離性基が結合している部分構造を有する繰り返し単位を含む解離性基を有する共役ポリマーであることが、成膜性が優れる点から好ましい。
本発明における解離性基を有する共役ポリマーは、解離性基が結合している部分構造を有する繰り返し単位として、下記化学式(U3)または(U4)で表される部分構造を有する繰り返し単位を含むことが好ましい。この場合、ポリマー鎖中の繰り返し単位(U3)あるいは(U4)の含有量は、好ましくは10モル%以上、更に好ましくは30モル%以上である。
S21、S22、R21〜R26は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、置換基を有していてもよいアシル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいアシルオキシ基、置換基を有していてもよいアリールアミノ基、置換基を有していてもよいへテロアリールアミノ基または置換基を有していてもよいアシルアミノ基を表す。
X1及びX2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数6以上50以下の2価の芳香族炭化水素環基、または置換基を有していてもよい炭素数5以上50以下の2価の芳香族複素環基を表す。
式(U4)中、環B1は芳香族環を表す。前記芳香族環は置換基を有していてもよい。また、前記置換基同士が直接または2価の連結基を介して環を形成していてもよい。S31〜S34、R31〜R36、X3及びX4は、それぞれ独立に、上記S21、S22、R21〜R26、X3及びX4として示したものと同様である。n1〜n4はそれぞれ独立に、0〜5の整数を表す。)
上記の中でも環A1および環B1が、それぞれ独立に、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環およびテトラセン環からなる群から選ばれることが好ましい。
解離性基は、上記解離性ポリマーの繰り返し単位以外の部分に含まれていてもよい。解離性ポリマー鎖の中に含まれる解離性基は、好ましくは平均5以上、より好ましくは平均10以上、より好ましくは平均50以上である。
また、本発明における芳香族アミン系ポリマーは、共役ポリマーである場合、不溶化基として、架橋性基を有していることが、熱及び/又は活性エネルギー線の照射により起こる反応(架橋反応)の前後で、溶媒に対する溶解性に大きな差を生じさせることができる点で好ましい。
架橋性基としては、架橋がしやすいという点で、例えば、架橋性基群Tに示す基が挙げられる。
また、架橋性基の中でも、不溶化後の構造が特に安定な点で、ベンゾシクロブテン環由来の基が特に好ましい。
具体的には、下記式(5)で表される基であることが好ましい。
本発明における架橋性ポリマーが有する架橋性基の数は、分子量1000あたりの数で表すことができる。
上記架橋性ポリマーが有する架橋性基の数を、分子量1000あたりの数で表した場合、分子量1000あたり、通常3.0個以下、好ましくは2.0個以下、さらに好ましくは1.0以下、また通常0.01以上、好ましくは0.05以上である。
ここで、架橋性ポリマーの分子量1000あたりの架橋性基の数は、架橋性ポリマーからその末端基を除いて、合成時の仕込みモノマーのモル比と、構造式から算出する。
例えば、下記化合物の場合で説明する。
以下に、本発明における架橋性ポリマーの好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明における架橋性ポリマーは、下記の繰り返し単位群Aからなる群より選ばれる少なくとも一つの繰り返し単位、及び下記の繰り返し単位群Bからなる群より選ばれる少なくとも一つの繰り返し単位を有する共役ポリマーであることが、電荷輸送能が高く、酸化還元安定性に優れる点で特に好ましい。
本発明における架橋性ポリマーのガラス転移温度は、通常50℃以上、有機電界発光素子の耐熱性を含めた駆動安定性の点で好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上、また、通常300℃以下である。
また、上記共役ポリマーのイオン化ポテンシャルは、電荷輸送能が優れる点で、通常4.5eV以上、好ましくは4.8eV以上、また、通常6.0eV以下、好ましくは5.7eV以下である。
溶液状態の電荷輸送膜用組成物の場合、溶液であるために架橋性基の分子運動が固体状態よりも大きくなる。このとき、架橋性ポリマーの凝集状態において、架橋性基同士が常に近くに存在し続けた場合、適度な分子運動のために、後述の不溶化のための加熱温度以下であっても凝集状態で架橋してしまう確率が高くなると推測される。凝集状態でない均一な溶液の場合は、架橋性ポリマー分子そのものの分子運動が大きいために架橋性基同士が常に近くに存在し続けることはないため、後述の不溶化のための加熱温度以下の溶液状態では架橋する可能性はほとんどない。
本発明における芳香族アミン系ポリマーは、非共役ポリマーであることが好ましい。この理由としては、電子受容性化合物により、アミン部位がカチオンラジカルになった場合、主鎖が共役していないことから、電圧の印加がない状態ではカチオンラジカルが移動し難い。つまり、カチオンラジカルが、ポリマー鎖中に均一に分布している。この為、カチオンラジカルがポリマー鎖中を伝播して、ポリマーが局在化してしまうことによる凝集が置きにくいため好ましい。
また、Ar3〜Ar5としては、耐熱性、酸化還元電位を含めた正孔注入・輸送性の点から、各々独立に、ベンゼン環、ナフタレン環、トリフェニレン環、フェナントレン環由来の基が好ましく、フェニレン基(ベンゼン環由来の基)、ビフェニレン基(ベンゼン環由来の基)、ナフチレン基(ナフタレン環由来の基)が好ましい。
置換基の分子量としては、通常400以下、中でも250以下程度が好ましい。
さらに、前記式(2)で表される繰り返し単位において、連結基Xが、連結基群X’から選ばれた2価の連結基であることが好ましい。
以下、本発明における芳香族アミン系ポリマーを構成する繰り返し単位の好ましい例について例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
また、式(1)で表される繰り返し単位中のAr1〜Ar5又は連結基Xが異なることで、異なる繰り返し単位になっていてもよい。
電子受容性化合物とは、酸化力を有し、上述の正孔輸送性化合物から一電子受容する能力を有する化合物が好ましく、具体的には、電子親和力が4eV以上である化合物が好ましく、5eV以上の化合物である化合物がさらに好ましい。
このような電子受容性化合物としては、例えば、トリアリールホウ素化合物、ハロゲン化金属、ルイス酸、有機酸、オニウム塩、アリールアミンとハロゲン化金属との塩、アリールアミンとルイス酸との塩よりなる群から選ばれる1種または2種以上の化合物等が挙げられる。
R51、R61及びR71としては、D1〜D3との結合部分に炭素原子を有する有機基であれば、本発明の効果を損なわない限り、その種類は特に制限されない。本発明における有機基とは、少なくとも一つの炭素原子を含む基である。
アルケニル基としては、炭素数が通常2以上、通常12以下、好ましくは6以下のものが挙げられる。具体例としては、ビニル基、アリル基、1−ブテニル基等が挙げられる。
アミノ基としては、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アシルアミノ基等が挙げられる。
アルキルアミノ基としては、炭素数が通常1以上、また、通常12以下、好ましくは6以下のアルキル基を1つ以上有するアルキルアミノ基が挙げられる。具体例としては、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基等が挙げられる。
アシルアミノ基としては、炭素数が通常2以上、また、通常25以下、好ましくは15以下のアシル基を1つ以上有するアシルアミノ基が挙げられる。具体例としては、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等が挙げられる。
アリールオキシ基としては、炭素数が通常3以上、好ましくは4以上、また、通常25以下、好ましくは15以下の芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を有するアリールオキシ基が挙げられる。具体例としては、フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基、ピリジルオキシ基、チエニルオキシ基等が挙げられる。
アルコキシカルボニル基としては、炭素数が通常2以上、また、通常10以下、好ましくは7以下のアルコキシカルボニル基が挙げられる。具体例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等が挙げられる。
アルキルカルボニルオキシ基としては、炭素数が通常2以上、また、通常10以下、好ましくは7以下のアルキルカルボニルオキシ基が挙げられる。具体例としては、アセトキシ基、トリフルオロアセトキシ基等が挙げられる。
アリールチオ基としては、炭素数が通常3以上、好ましくは4以上、また、通常25以下、好ましくは14以下のアリールチオ基が挙げられる。具体例としては、フェニルチオ基、ナフチルチオ基、ピリジルチオ基等が挙げられる。
スルホニルオキシ基の具体例としては、メシルオキシ基、トシルオキシ基等が挙げられる。
シリル基の具体例としては、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基など挙げられる。
中でも、電子受容性及び入手容易性の観点から、周期表の第5周期以前の元素が好ましい。即ち、D1としてはヨウ素原子、臭素原子、塩素原子のうち何れかが好ましく、D2としてはテルル原子、セレン原子、硫黄原子のうち何れかが好ましく、D3としてはアンチモン原子、ヒ素原子、リン原子、窒素原子のうち何れかが好ましい。特に、電子受容性、化合物の安定性の面から、式(I−1)におけるD1が臭素原子又はヨウ素原子である電子受容性化合物、式(I−2)におけるD2がセレン原子又は硫黄原子である電子受容性化合物、式(I−3)におけるD3が窒素原子である電子受容性化合物が好ましく、中でも、式(I−1)におけるD1がヨウ素原子である電子受容性化合物、式(I−3)におけるD3が窒素原子である電子受容性化合物が最も好ましい。
n1〜n3は、各々独立に、対アニオンZ1 n1-〜Z3 n3-のイオン価に相当する任意の正の整数である。n1〜n3の値は特に制限されないが、何れも1又は2であることが好ましく、1であることが最も好ましい。
式(I−5)中、E2は、長周期型周期表の第15族に属する元素を表す。中でもリン原子、ヒ素原子、アンチモン原子が好ましく、化合物の安定性、合成及び精製が容易である点から、毒性の点から、リン原子が好ましい。
本発明の有機電界発光素子用組成物は、有機溶媒として前述の溶媒(a)と溶媒(b)を含有することを必須とするが、本発明の有機電界発光素子用組成物に含有されるこれらの有機溶媒としては、本発明における芳香族アミン系ポリマーを、通常0.05重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、さらに好ましくは1重量%以上溶解する有機溶媒であることが好ましい。また、電子受容性化合物を0.005重量%以上溶解することが好ましく、0.05重量%以上溶解することがより好ましく、0.5重量%以上溶解することがさらに好ましい。
含ハロゲン有機溶媒の具体例としては、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等、
エーテル系有機溶媒の具体例としては、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテルアセタート(PGMEA)等の脂肪族エーテル;1,2−ジメトキシベンゼン,1,3−ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2−メトキシトルエン、3−メトキシトルエン,4−メトキシトルエン、2,3−ジメチルアニソール,2,4−ジメチルアニソール、ジフェニルエーテル等の芳香族エーテル等、
エステル系有機溶媒の具体例としては、酢酸エチル、酢酸n―ブチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル等の脂肪族エステル;酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸n−ブチル等の芳香族エステル等が挙げられる。
これらは1種で用いてもよく、2種以上の混合有機溶媒としてもよい。
本発明の有機電界発光素子用組成物の粘度は、固形分の濃度に依存するが、通常15mPas以下、好ましくは10mPas以下、さらに好ましくは8mPas以下、また通常2mPas以上、好ましくは3mPas以上、さらに好ましくは5mPas以上である。
この上限値を超えると、湿式成膜法にて膜形成時、均一な成膜ができないおそれがある。また、この下限値を下回ると成膜できないおそれがある。
本発明の有機電界発光素子用組成物は、必要に応じ、レベリング剤や消泡剤等の塗布性改良剤などの各種添加剤等を含んでいてもよい。この場合は、有機溶媒としては、芳香族アミン系ポリマーと添加剤の双方を0.05重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、さらに好ましくは1重量%以上溶解する有機溶媒を使用することが好ましい。
本発明の有機電界発光素子用組成物は、保存安定性が高く、湿式成膜法で正孔注入層及び/又は正孔輸送層を形成する場合において、均一に成膜可能であり、好ましい。
また、本発明における湿式成膜法とは、スピンコート法、ディップコート法、ダイコート法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法、キャピラリーコート法、組成物ジェット法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷等の有機溶媒を含有する組成物を用いて成膜する方法をいう。パターニングのし易さという点で、ダイコート法、ロールコート法、スプレーコート法、組成物ジェット法、フレキソ印刷法が好ましい。
本発明の有機電界発光素子用組成物の製造方法の一例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
特に、本発明の有機電界発光素子用組成物は、以下に記載する方法、特に好ましい方法を組み合わせるなどして用いることにより製造することができる。
本発明の有機電界発光素子用組成物に含有される、芳香族アミン系ポリマー、電子受容性化合物及び有機溶媒を混合する場合、混合する芳香族アミン系ポリマー及び電子受容性化合物は、各々独立に、固体であってもよく、また溶液であってもよい。
芳香族アミン系ポリマー及び電子受容性化合物を共に溶液状態で混合することが好ましい。或いは、芳香族アミン系ポリマー及び電子受容性化合物の何れか一方が固体状態で、何れか一方が溶液状態で混合することが好ましい。この場合、固体の溶解を確認しながら添加できる点で溶液に、固体を入れることが好ましい。
上記の通り固体で混合する場合、粒径は、通常5cm以下、好ましくは1cm以下、より好ましくは5mm以下、また通常0.5mm以上である。
本発明の有機電界発光素子用組成物の好ましい製造方法においては、通常溶解工程を有する。
本発明の有機電界発光素子用組成物を得るための製造方法としては、特に、超音波処理、光照射処理、加熱処理の少なくとも一つの処理を含むことが好ましい。
尚、これらの処理は、いずれか一種の処理を単独で行ってもよく、また併用して処理を行ってもよい。
超音波処理を行う場合、振動子28kHzを用いることが好ましい。
超音波処理における超音波時間は、通常5分以上、好ましくは10分以上、また通常2時間以下、好ましくは1時間以下である。
この上限値を上回ると、ポリマーが分解するおそれがあり、またこの下限値を下回ると溶解が不十分となるおそれがある。
光照射処理を行う場合、高圧水銀灯を用いることが好ましい。高圧水銀灯は404.7nm、435.8nm、546.1nm、577.0nm、及び579.1nmの輝線スペクトルからなる緑がかった青白色(5,700K)の光源で、253.7nm、365.0nmの紫外線照射を伴う。
紫外線の照射量は、通常10mJ/cm2以上、好ましくは100mJ/cm2以上、より好ましくは600mJ/cm2以上、通常50000mJ/cm2以下、好ましくは10000mJ/cm2以下、より好ましくは5000mJ/cm2以下である。上記範囲内であると、芳香族アミン系ポリマーから電子受容性化合物への電子移動度が十分であり、また芳香族アミン系ポリマーが劣化しにくくなるため好ましい。
紫外線の照射面積としては、組成物の入った容器全体に紫外線が照射されることが好ましいが、組成物の一部を照射してもよい。その場合は、紫外線照射後に組成物を攪拌することが好ましく、組成物を撹拌しながら照射することも好ましい。
加熱処理における加熱手段は、本発明の効果を損なわない限り、公知の技術を用いることができる。
具体的には、芳香族アミン系ポリマー、電子受容性化合物及び有機溶媒を加熱可能な容器に入れ、攪拌しながら、加熱バスにより温度を調節し、加熱攪拌する方法が挙げられる。加熱バスとしては、水バス、オイルバス等が用いられる。
加熱処理における加熱温度は、通常40℃以上、好ましくは80℃以上、また、通常、有機溶媒の沸点以下、好ましくは有機溶媒の沸点より10℃以上低い温度である。
この上限値を上回ると、有機溶媒が突沸するおそれがありかつ有機溶媒の蒸発により仕込み時の濃度変化をきたす。またこの下限値を下回ると加熱処理の効果がなく、溶解不十分になるおそれがある。
本発明の有機電界発光素子用組成物の製造方法においては、濾過工程を含むことが好ましい。また、本発明における濾過工程は、溶解工程の後に行うことが好ましい。
濾過工程に用いるフィルターの孔は、通常5μm以下、好ましくは0.5μm以下、また通常0.02μm以上、好ましくは0.1μm以上である。
この上限値を上回ると、不溶物が混入するおそれがあり、また、この下限値を下回ると濾過ができず目詰まりするおそれがある。
前述の如く、有機電界発光素子は、多数の有機化合物からなる層を積層して形成するため、膜質が均一であることが非常に重要である。湿式成膜法で層形成する場合、その材料や、下地の性質によって、スピンコート法、スプレー法などの塗布法や、インクジェット法、スクリーン法などの印刷法等、公知の成膜方法が採用できる。
本発明における芳香族アミン系ポリマーが、不溶化基を有さない場合は、塗布後、通常加熱等により有機電界発光素子用組成物の膜を乾燥させる。乾燥させる方法としては、通常、加熱工程が行なわれる。加熱工程において使用する加熱手段の例を挙げると、クリーンオーブン、ホットプレート、赤外線、ハロゲンヒーター、マイクロ波照射などが挙げられる。中でも、膜全体に均等に熱を与えるためには、クリーンオーブン及びホットプレートが好ましい。
加熱及び光などの活性エネルギー照射は、それぞれ単独、あるいは組み合わせて行ってもよい。組み合わせる場合、実施する順序は特に限定されない。
加熱及び光などの活性エネルギー照射は、実施後に層に含有する水分及び/又は表面に吸着する水分の量を低減するために、窒素ガス雰囲気等の水分を含まない雰囲気で行うことが好ましい。同様の目的で、加熱及び/又は光などの活性エネルギー照射を組み合わせて行う場合には、少なくとも発光層の形成直前の工程を窒素ガス雰囲気等の水分を含まない雰囲気で行うことが特に好ましい。
本発明の有機電界発光素子は、基板上に、少なくとも陽極、正孔注入層、正孔輸送層、発光層及び陰極を積層した有機電界発光素子において、前記正孔注入層及び正孔輸送層のうちの少なくとも1層が、本発明の有機電界発光素子用組成物を用いた湿式製膜法により形成されたことを特徴とする。
本発明の有機電界発光素子用組成物により形成される層が陽極に隣接された層である有機電界発光素子は、短絡やダークスポットが生じないという効果がある。その為、通常、本発明の有機電界発光素子用組成物により形成された層は、正孔注入層であることが好ましい。また、正孔注入層、正孔輸送層、及び発光層の全てが湿式成膜法で形成されることが好ましい。また、本発明の有機電界発光素子は、無機層を有していてもよい。
図1は本発明の有機電界発光素子の構造例を示す断面の模式図であり、図1において、1は基板、2は陽極、3は正孔注入層、4は正孔輸送層、5は発光層、6は正孔阻止層、7は電子輸送層、8は電子注入層、9は陰極を各々表す。
基板は有機電界発光素子の支持体となるものであり、石英やガラスの板、金属板や金属箔、プラスチックフィルムやシート等が用いられる。特にガラス板や、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホン等の透明な合成樹脂の板が好ましい。合成樹脂基板を使用する場合にはガスバリア性に留意する必要がある。基板のガスバリア性が小さすぎると、基板を通過した外気により有機電界発光素子が劣化することがあるので好ましくない。このため、合成樹脂基板の少なくとも片面に緻密なシリコン酸化膜等を設けてガスバリア性を確保する方法も好ましい方法の一つである。
陽極は発光層側の層への正孔注入の役割を果たすものである。
この陽極は、通常、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の金属、インジウム及び/又はスズの酸化物等の金属酸化物、ヨウ化銅等のハロゲン化金属、カーボンブラック、或いは、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子等により構成される。
陽極の厚みは、必要とする透明性により異なる。透明性が必要とされる場合は、可視光の透過率を、通常60%以上、好ましくは80%以上とすることが好ましい。この場合、陽極の厚みは通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下程度である。不透明でよい場合は陽極の厚みは任意であり、陽極は基板と同一でもよい。また、さらには、上記の陽極の上に異なる導電材料を積層することも可能である。
正孔注入層は、陽極から発光層へ正孔を輸送する機能を有する層であり、通常、陽極上に形成される。
本発明の有機電界発光素子用組成物を調製後、この組成物を湿式成膜により、正孔注入層の下層に該当する層(通常は、陽極)上に湿式成膜し、乾燥することにより正孔注入層を形成する。
湿式成膜における相対湿度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、通常0.01ppm以上、また通常80%以下である。
成膜後、通常加熱等により本発明の有機電界発光素子用組成物の膜を乾燥させる。乾燥する方法が加熱である場合、加熱手段は特に制限されないが、例えば、クリーンオーブン、ホットプレート、赤外線、ハロゲンヒーター、マイクロ波照射などが挙げられる。中でも、膜全体に均等に熱を与えるためには、クリーンオーブン及びホットプレートが好ましい。
上記の方法で形成した膜厚は、通常1nm以上、好ましくは5nm以上、また、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下である。
本発明の有機電界発光素子は通常正孔輸送層を有する。
本発明に係る正孔輸送層の形成方法は特に制限はないが、ダークスポット低減の観点から正孔輸送層を湿式成膜により形成することが好ましい。
正孔輸送層は、図1に示す構成の有機電界発光素子の場合は正孔注入層の上に形成することができる。
また、真空蒸着法により正孔輸送層を形成する場合の成膜条件等は下記の通りである。
正孔輸送層は架橋性化合物を架橋して形成される層であってもよい。架橋性化合物は、後述する架橋性基を有する化合物であって、架橋することにより網目状芳香族アミン系ポリマーを形成する。架橋性化合物は、モノマー、オリゴマー、ポリマーのいずれであってもよく、中でも芳香族アミン系ポリマーが好ましい。架橋性化合物は1種のみを有していてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で有していてもよい。
架橋性基の例を挙げると、オキセタン基、エポキシ基などの環状エーテル;ビニル基、トリフルオロビニル基、スチリル基、アクリル基、メタクリロイル基、シンナモイル基等の不飽和二重結合;ベンゾシクロブタン基などが挙げられる。
塗布液には、架橋性化合物の他、架橋反応を促進する添加物を含んでいてもよい。架橋反応を促進する添加物の例を挙げると、アルキルフェノン化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物、メタロセン化合物、オキシムエステル化合物、アゾ化合物、オニウム塩等の架橋開始剤及び架橋促進剤;縮合多環炭化水素、ポルフィリン化合物、ジアリールケトン化合物等の光増感剤;などが挙げられる。また、さらに、レベリング剤、消泡剤等の塗布性改良剤;電子受容性化合物:バインダー樹脂、などを含有していてもよい。
加熱及び活性エネルギー線照射は、実施後に層に含有する水分及び/または表面に吸着する水分の量を低減するために、窒素ガス雰囲気等の水分を含まない雰囲気で行うことが好ましい。同様の目的で、加熱及び/または活性エネルギー線照射を組み合わせて行う場合には、少なくとも発光層の形成直前の工程を窒素ガス雰囲気等の水分を含まない雰囲気で行うことが特に好ましい。
正孔注入層の上、又は正孔輸送層を設けた場合には正孔輸送層の上には発光層が設けられる。発光層は、電界を与えられた電極間において、陽極から注入された正孔と、陰極から注入された電子との再結合により励起されて、主たる発光源となる層である。
発光層は、その構成材料として、少なくとも、発光の性質を有する材料(発光材料)を含有するとともに、好ましくは、正孔移動の性質を有する化合物(正孔輸送材料)、あるいは、電子移動の性質を有する化合物(電子輸送材料)を含有する。発光材料については特に限定はなく、所望の発光波長で発光し、発光効率が良好である物質を用いればよい。また、電荷輸送材料を2成分以上含有していることが好ましい。更に、発光層は、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、その他の成分を含有していてもよい。なお、湿式成膜法で発光層を形成する場合は、何れもモノマー量の材料を使用することが好ましい。
発光材料としては、任意の公知の材料を適用可能である。例えば、蛍光発光材料であってもよく、燐光発光材料であってもよいが、内部量子効率の観点から、好ましくは燐光発光材料である。
なお、溶媒への溶解性を向上させる目的で、発光材料の分子の対称性や剛性を低下させたり、或いはアルキル基などの親油性置換基を導入したりすることが好ましい。
青色発光を与える蛍光色素(青色蛍光色素)としては、例えば、ナフタレン、ペリレン、ピレン、アントラセン、クマリン、クリセン、p−ビス(2−フェニルエテニル)ベンゼン及びそれらの誘導体等が挙げられる。
黄色発光を与える蛍光色素(黄色蛍光色素)としては、例えば、ルブレン、ペリミドン誘導体等が挙げられる。
赤色発光を与える蛍光色素(赤色蛍光色素)としては、例えば、DCM(4−(dicyanomethylene)−2−methyl−6−(p−dimethylaminostyryl)−4H−pyran)系化合物、ベンゾピラン誘導体、ローダミン誘導体、ベンゾチオキサンテン誘導体、アザベンゾチオキサンテン等が挙げられる。
周期表第7〜11族から選ばれる金属として、好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金等が挙げられる。
発光層における発光材料の割合は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.05重量%以上、好ましくは0.3重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、また、通常35重量%以下、好ましくは25重量%以下、更に好ましくは20重量%以下である。発光材料が少なすぎると発光ムラを生じる可能性があり、多すぎると発光効率が低下する可能性がある。なお、2種以上の発光材料を併用する場合には、これらの合計の含有量が上記範囲に含まれるようにする。
発光層には、その構成材料として、正孔輸送材料を含有させてもよい。ここで、正孔輸送材料のうち、モノマー量の正孔輸送材料の例としては、前述の正孔注入層における(モノマー量の正孔輸送材料)として例示した各種の化合物のほか、例えば、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニルに代表される、2個以上の3級アミンを含み2個以上の縮合芳香族環が窒素原子に置換した芳香族ジアミン(特開平5−234681号公報)、4,4’,4”−トリス(1−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン等のスターバースト構造を有する芳香族アミン化合物(Journal of Luminescence,1997年,Vol.72−74, pp.985)、トリフェニルアミンの四量体から成る芳香族アミン化合物(Chemical Communications,1996年,pp.2175)、2,2’,7,7’−テトラキス−(ジフェニルアミノ)−9,9’−スピロビフルオレン等のスピロ化合物(Synthetic Metals,1997年,Vol.91,pp.209)等が挙げられる。
発光層における正孔輸送材料の割合は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.1重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上、また、通常65重量%以下、好ましくは50重量%以下、更に好ましくは40重量%以下である。正孔輸送材料が少なすぎると短絡の影響を受けやすくなる可能性があり、多すぎると膜厚ムラを生じる可能性がある。なお、2種以上の正孔輸送材料を併用する場合には、これらの合計の含有量が上記範囲に含まれるようにする。
発光層には、その構成材料として、電子輸送材料を含有させてもよい。ここで、電子輸送材料のうち、モノマー量の電子輸送材料の例としては、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール(BND)や、2,5−ビス(6’−(2’,2”−ビピリジル))−1,1−ジメチル−3,4−ジフェニルシロール(PyPySPyPy)や、バソフェナントロリン(BPhen)や、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(BCP、バソクプロイン)、2−(4−ビフェニリル)−5−(p−ターシャルブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(tBu−PBD)や、4,4’−ビス(9−カルバゾール)−ビフェニル(CBP)等が挙げられる。なお、発光層において、電子輸送材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
には、これらの合計の含有量が上記範囲に含まれるようにする。
本発明に係る湿式成膜法により発光層を形成する場合は、上述の材料を適切な有機溶媒に溶解させて湿式成膜用組成物を調製し、それを用いて成膜工程、好ましくは乾燥工程を介して形成する。これらの工程の詳細は、先に説明した内容と同様である。なお、他の有機層を本発明に係る湿式成膜法で形成する場合は、発光層の形成に蒸着法、又はその他の方法を用いてもよい。
発光層を形成するための湿式成膜用組成物に対する発光層用有機溶媒の比率は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、また、通常70重量%以下、好ましくは60重量%以下、更に好ましくは50重量%以下の範囲である。なお、発光層用有機溶媒として2種以上の有機溶媒を混合して用いる場合には、これらの有機溶媒の合計がこの範囲を満たすようにする。
発光層と後述の電子注入層との間に、正孔阻止層を設けてもよい。正孔阻止層は、発光層の上に、発光層の陰極側の界面に接するように積層される層である。
この正孔阻止層は、陽極から移動してくる正孔を陰極に到達するのを阻止する役割と、陰極から注入された電子を効率よく発光層の方向に輸送する役割とを有する。
正孔阻止層の形成方法に制限はない。従って、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成できる。
正孔阻止層の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.3nm以上、好ましくは0.5nm以上、また、通常100nm以下、好ましくは50nm以下である。
発光層と後述の陰極の間に、通常電子輸送層を設ける。
電子輸送層は、素子の発光効率を更に向上させることを目的として設けられるもので、電界を与えられた電極間において陰極から注入された電子を効率よく発光層の方向に輸送することができる化合物より形成される。
電子輸送層の形成方法に制限はない。従って、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成することができる。
電子輸送層の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常1nm以上、好ましくは5nm以上、また、通常300nm以下、好ましくは100nm以下の範囲である。
電子輸送層と陰極の間に、電子注入層を設けることが好ましい。
電子注入層は、陰極から注入された電子を効率よく発光層へ注入する役割を果たす。電子注入を効率よく行なうには、電子注入層を形成する材料は、仕事関数の低い金属が好ましい。例としては、ナトリウムやセシウム等のアルカリ金属、バリウムやカルシウムなどのアルカリ土類金属等が用いられ、その膜厚は通常0.1nm以上、5nm以下が好ましい。
電子注入層の形成方法に制限はない。従って、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成することができる。
陰極は、発光層側の層(電子注入層又は発光層など)に電子を注入する役割を果たすものである。
陰極の膜厚は、通常、陽極と同様である。
さらに、低仕事関数金属から成る陰極を保護する目的で、この上に更に、仕事関数が高く大気に対して安定な金属層を積層すると、素子の安定性が増すので好ましい。この目的のために、例えば、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、クロム、金、白金等の金属が使われる。なお、これらの材料は、1種のみで用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
本発明に係る有機電界発光素子は、その趣旨を逸脱しない範囲において、別の構成を有していてもよい。例えば、その性能を損なわない限り、陽極と陰極との間に、上記説明にある層の他に任意の層を有していてもよく、また、任意の層が省略されていてもよい。
有していてもよい層としては、例えば、電子阻止層が挙げられる。
電子阻止層は、正孔注入層又は正孔輸送層と発光層との間に設けられ、発光層から移動してくる電子が正孔注入層に到達するのを阻止することで、発光層内で正孔と電子との再結合確率を増やし、生成した励起子を発光層内に閉じこめる役割と、正孔注入層から注入された正孔を効率よく発光層の方向に輸送する役割とがある。特に、発光材料として燐光材料を用いたり、青色発光材料を用いたりする場合は電子阻止層を設けることが効果的である。
電子阻止層の形成方法に制限はない。従って、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で
形成することができる。
更には、少なくとも一方が透明性を有する2枚の基板の間に、基板以外の構成要素を積層することにより、本発明に係る有機電界発光素子を構成することも可能である。
また、上述した各層には、本発明の効果を著しく損なわない限り、材料として説明した以外の成分が含まれていてもよい。
本発明の有機電界発光素子を用いて有機ELディスプレイを作製することができる。本発明の有機電界発光素子が適用される有機ELディスプレイの型式や構造については特に制限はなく、本発明の有機電界発光素子を用いて常法に従って組み立てることができる。
例えば、「有機ELディスプレイ」(オーム社、平成16年8月20日発行、時任静士、安達千波矢、村田英幸著)に記載されているような方法で、有機ELディスプレイを形成することができる。
本発明の有機電界発光素子を用いて有機EL照明を作製することができる。本発明の有機電界発光素子が適用される有機EL照明の型式や構造については特に制限はなく、本発明の有機電界発光素子を用いて常法に従って組み立てることができる。
なお、以下において「部」は「重量部」と表す。
[実施例1]
<有機電界発光素子用組成物1の調製>
下記式で表される繰り返し単位からなる芳香族アミン系ポリマー(P1)(重量平均分子量:30000)、下記構造式で表される電子受容性化合物(A1)、及び有機溶媒を含有する有機電界発光素子用組成物1を下記の配合で調製した。
溶質成分 化合物(P1) 15部
化合物(A1) 1.5部
有機溶媒 安息香酸n−ブチル 329部
ジフェニルエーテル 155部
<評価1:組成物の均一性>
上記の組成物調製の最終濾過の前に、溶解残渣が沈殿したり浮遊したりしていないかどうかを目視確認し、系の均一さを以下の基準で評価した。
○:溶解残渣は無く、均一
×:溶解残渣があり、不均一
評価1で均一であることが確認した後、最終的に得られた組成物について、スライドガラスの上に1滴液滴をスポットし、25℃の大気中で5時間静置した後、組成物液滴に流動性があるかを否か観察し、以下の基準で評価した。
○:被膜形成や結晶析出は見られず、スライドガラスを傾けると、スポットが流動す
る。
×:被膜形成又は溶質の析出により、流動性の無いスポットが形成されている。
評価1:組成物中に溶解しきれない溶質成分は見られず、均一な組成物が得られた。
評価2:スライドガラス上に液滴をスポットした後、6時間後にも、被膜形成や結晶析
出が見られず、スポットには流動性があった。
<有機電界発光素子用組成物2の調製>
有機溶媒の種類と割合を下記に変更した他は、実施例1と同様に有機電界発光素子用組成物2を調製し、同様に評価を行って、以下の評価結果を得た。
溶質成分 化合物(P1) 15部
化合物(A1) 1.5部
有機溶媒 安息香酸n−ブチル 300部
ジフェニルエーテル 184部
評価1:組成物中に溶解しきれない溶質成分は見られず、均一な組成物が得られた。
評価2:スライドガラス上に液滴をスポットした後、6時間後にも、被膜形成や結晶析
出が見られず、スポットには流動性があった。
<有機電界発光素子用組成物3の調製>
有機溶媒の種類と割合を下記に変更した他は、実施例1と同様に有機電界発光素子用組成物3を調製し、同様に評価を行って、以下の評価結果を得た。
溶質成分 化合物(P1) 15部
化合物(A1) 1.5部
有機溶媒 安息香酸n−ブチル 300部
ジフェニルメタン 184部
評価1:組成物中に溶解しきれない溶質成分は見られず、均一な組成物が得られた。
評価2:スライドガラス上に液滴をスポットした後、6時間後にも、被膜形成や結晶析
出が見られず、スポットには流動性があった。
<有機電界発光素子用組成物4の調製>
有機溶媒の種類と割合を下記に変更した他は、実施例1と同様に有機電界発光素子用組成物4を調製し、同様に評価を行って、以下の評価結果を得た。
溶質成分 化合物(P1) 15部
化合物(A1) 1.5部
有機溶媒 安息香酸n−ブチル 329部
ジフェニルメタン 155部
評価1:溶解しきれない溶質成分が沈殿し、均一な組成物が得られなかった。
評価2:均一な組成物が得られなかったため、耐乾燥性は評価できなかった。
<有機電界発光素子用組成物5の調製>
有機溶媒の種類と割合を下記に変更した他は、実施例1と同様に有機電界発光素子用組成物5を調製しし、同様に評価を行って、以下の評価結果を得た。
溶質成分 化合物(P1) 15部
化合物(A1) 1.5部
有機溶媒 安息香酸n−ブチル 484部
評価1:溶解しきれない溶質成分が沈殿し、均一な組成物が得られなかった。
評価2:均一な組成物が得られなかったため、耐乾燥性は評価できなかった。
<有機電界発光素子用組成物6の調製>
有機溶媒の種類と割合を下記に変更した他は、実施例1と同様に有機電界発光素子用組成物6を調製し、同様に評価を行って、以下の評価結果を得た。
溶質成分 化合物(P1) 15部
化合物(A1) 1.5部
有機溶媒 安息香酸エチル 484部
評価1:組成物中に溶解しきれない溶質成分は見られず、均一な組成物が得られた。
評価2:流動性の無い被膜状のスポットが形成されていた。
上記の実施例1〜3及び比較例1〜3で用いた有機溶媒の分子量、芳香族炭素及び脂肪族炭素の数と沸点は以下の通りである。
<実施例1>
溶媒(a):安息香酸n−ブチル 329部
溶媒(b):ジフェニルエーテル 155部
溶媒(a):溶媒(b)=(重量比)68:32
溶媒(a):溶媒(b)=(モル比)0.0038:0.0019
溶媒(a)の1分子中には、芳香族炭素は6個、脂肪族炭素は4個あるので、0.0038モル中の芳香族炭素は0.0038モル×6個、脂肪族炭素は0.0038モル×4個。
溶媒(b)の1分子中には、芳香族炭素は12個、脂肪族炭素は0個あるので、0.0019モル中の芳香族炭素は0.0019モル×12個、脂肪族炭素は0.0019モル×0個。
「溶媒(a)+溶媒(b)」中の芳香族炭素(ArC)/脂肪族炭素(AlC)は、
(0.0038モル×6個+0.0019モル×12個)/
(脂肪族炭素は0.0038モル×4個+0.0019モル×0個)=3
となる。
同様にして各実施例及び比較例におけるArC/AlC比を算出し、沸点及び有機電界発光素子用組成物の評価結果と共に、下記表にまとめる。
[実施例4]
<正孔注入層の形成>
洗浄処理したITO基板上に、上記有機電界発光素子用組成物1を用いて、スピンコート法にて正孔注入層を形成した。スピンコートは気温23℃、相対湿度50%の大気中で行ない、スピナ回転数は2750rpm、スピナ時間は30秒とした。塗布後、ホットプレート上で80℃で1分間加熱乾燥した後、オーブン大気中で230℃にて15分間ベークし、膜厚35nmの正孔注入層を形成した。
この基板を真空蒸着装置のチャンバー内に設置した。チャンバーはロータリーポンプで粗引きした後、クライオポンプにて減圧した。真空度は0.8×10−6Torrであった。基板には、所定の領域に、蒸着用マスクを配置し、チャンバーには予め必要な蒸着材料をそれぞれ別の磁器製坩堝に入れて配置しておいた。
次に、下記式C3で表される8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体(Alq3)を入れた磁器製坩堝を通電加熱し、正孔輸送層の上に蒸着した。蒸着時の真空度は0.7×10−6〜0.8×10−6Torr、蒸着速度は1.1〜1.4Å/sとし、発光層を兼ねた電子輸送層を膜厚60nmで形成した。
次に、基板を一旦大気中に取り出し、陰極蒸着用のマスクとして2mm幅のストライプ状シャドーマスクを、陽極のITOストライプと直交するように配置し、速やかに蒸着装置に設置した。チャンバーはロータリーポンプで粗引きした後、クライオポンプにて減圧した。真空度は1.5×10−4Paであった。陰極として、先ず、フッ化リチウム(LiF)を入れたモリブデン製ボートを通電加熱し、電子輸送層の上に蒸着した。蒸着条件は、蒸着時の真空度は1.7×10−4〜1.9×10−4Pa、蒸着速度は0.12〜0.13Å/sとし、膜厚0.5nmで成膜した。最後に、アルミニウムを入れたモリブデン製ボートを通電加熱して蒸着した。蒸着条件は、蒸着時の真空度は2.2×10−4〜2.5×10−4Pa、蒸着速度は1.2〜5.5Å/sとし、膜厚80nmで成膜した。
次に、基板を一旦大気中に取り出し、速やかに窒素置換されたグローブボックスに移した。窒素置換されたグローブボックス中では封止ガラス板の凹部に吸湿剤シートを貼り付け、封止ガラス板の凹部の周囲にUV硬化樹脂塗をディスペンサーにて塗布し、蒸着を行なった基板の蒸着領域を封止ガラス板で密封するように密着させ、UVランプにてUV光を照射してUV硬化樹脂を硬化させた。
この素子に通電したところ、発光欠陥の無い均一な発光面の緑色発光が得られた。
また、本発明の有機電界発光素子用組成物を用いて、湿式成膜法により形成された有機層を有する有機電界発光素子は、短絡やダークスポットを生じさせず、また駆動寿命が長い。
これより、本発明は、有機電界発光素子が使用される各種の分野、例えば、フラットパネル・ディスプレイ(例えばOAコンピュータ用や壁掛けテレビ)や面発光体としての特徴を生かした光源(例えば、複写機の光源、液晶ディスプレイや計器類のバックライト光源)、表示板、標識灯等の分野において、好適に使用することが出来る。
2 陽極
3 正孔注入層
4 正孔輸送層
5 発光層
6 正孔阻止層
7 電子輸送層
8 電子注入層
9 陰極
Claims (8)
- 有機電界発光素子の正孔注入層及び正孔輸送層のうちの少なくとも1層を形成するための有機電界発光素子用組成物であって、
正孔注入・輸送性材料と溶媒とを含有し、
前記正孔注入・輸送性材料が、繰り返し単位に少なくともトリアリールアミノ基を有する、重量平均分子量3000〜1000000の高分子化合物であり、
前記溶媒として、(a)沸点が240℃以上であり、アルキル基を有し、アリール基を1つ有する化合物(以下「溶媒(a)」と称す。)と、(b)沸点が240℃以上であり、アリール基を2つ以上有する化合物(以下「溶媒(b)」と称す。)とを含有し、
有機電界発光素子用組成物に含まれる溶媒(a)及び溶媒(b)の合計において、溶媒(a)及び溶媒(b)に含まれる芳香環を構成する炭素原子の合計数が、溶媒(a)及び溶媒(b)に含まれる脂肪族炭化水素基を構成する炭素原子の合計数に対して、2.7を超えることを特徴とする有機電界発光素子用組成物。 - 前記高分子化合物が、下記式(1)で表される繰り返し単位を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用組成物。
<連結基群X’>
- 電子受容性化合物を含有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用組成物。
- 基板上に、少なくとも陽極、正孔注入層、正孔輸送層、発光層及び陰極を積層した有機電界発光素子を製造する方法において、前記正孔注入層及び正孔輸送層のうちの少なくとも1層を、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用組成物を用いた湿式製膜法により形成することを特徴とする有機電界発光素子の製造方法。
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