JP5700274B2 - リチウム二次電池用活物質、リチウム二次電池用電極、リチウム二次電池及びその製造方法 - Google Patents
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また、上記の固溶体を活物質としたリチウム二次電池は、後述の比較例にあるように、高率放電時の容量が得られないという問題があった。
Coz O2+b (x+y+z=1,1.00<a<1.3,0≦b<0.3)なる化学組成を持つ層状構造のリチウム・ニッケル・マンガン・コバルト複合酸化物。」(請求項1)が記載され、「CuKα線を用いた粉末X線回折のミラ−指数hklにおける(003)面及び(104)面の回折ピ−ク角2θがそれぞれ18.65°,44.50°よりも小さいと、相間隔が減少し、リチウムイオンの拡散が阻害され、充・放電特性が劣化する。また、これらの面の回折ピ−ク半価幅がそれぞれ0.18°より大きいと、結晶の成長が足りないかもしくは組成のばらつきが大きいため充・放電特性は劣化する。」(段落[0017])と記載されているが、(003)面及び(104)面の回折ピ−ク半価幅(半値幅)と高率放電特性との関係は示されていない。
特許文献5には、「空間群R−3mに帰属でき、(104)面に相当するX線回折ピークの半値幅が0.06〜0.15°の範囲内であって、かつ下記(1)式で算出される形状係数SF1の平均値が1より大きく、3.3以下の範囲内であるリチウム含有金属複合酸化物粒子を含むことを特徴とする正極活物質。・・・」(請求項1)の発明が記載され、また、リチウム含有金属複合酸化物粒子の結晶構造は、空間群R−3mに帰属し、かつ(104)面に相当するX線回折ピークの半値幅が0.06〜0.15°の範囲内にある場合に、高い放電負荷特性(高率放電特性)が得られること、半値幅が0.15°を超えると、リチウム含有金属複合酸化物の結晶性が低下して高い高率放電特性を得ることが困難になることが示されている(段落[0025])が、リチウム含有金属複合酸化物にMgを含有させることについては全く記載がなく、Mgを含有するリチウム含有金属複合酸化物の回折ピークの半値幅を特定範囲とすることにより、高率放電特性が顕著に向上することは示唆されていない。
Li[Liz/(2+z){(LixNi(1-3x)/2Mn(1+x)/2)(1-y)Coy}2/(2+z)]O2・・・(I)
(ただし、0.01≦x≦0.15 0≦y≦0.35
0.02(1−y)(1−3x)≦z≦0.15(1−y)(1−3x))」(請求項6)の発明が記載され、Li量が化学量論組成より若干リッチな範囲にあることが重要であり、これにより電池性能(特にレート特性や出力特性)が向上することが示されている(段落[0014]及び[0015])が、リチウムニッケルマンガンコバルト系複合酸化物がマグネシウムを含有する特定組成である場合に、放電容量が顕著に向上し、高率放電特性が顕著に向上することは示唆されていない。
なお、本発明に係る前記固溶体のエックス線回折図は、空間群P3112に帰属可能なものであるが、これを空間群R3−mに帰属することも不可能ではない。このとき、空間群P3112に帰属した場合における前記(114)面の回折ピークは、空間群R3−mに帰属した場合には「(104)面の回折ピーク」と読み替える必要がある。ここで、空間群の表記に関し、「R3−m」は、本来は「3」の上にバー“−”を付して表記すべきところ、本明細書では、便宜上、“R3−m”と表記することとする。
上記のように、好ましい焼成温度は、活物質の酸素放出温度により異なるから、一概に焼成温度の好ましい範囲を設定することは難しいが、好ましくは900から1100℃、より好ましくは950から1050℃であれば高い特性を発揮することができる。
また、高率放電特性を向上させるためにも、結晶子サイズはできるだけ大きいことが好ましく、後述の実施例1〜10に示されるように180nmとすることが好ましい。
硫酸マンガン5水和物と硫酸ニッケル6水和物と硫酸コバルト7水和物と硫酸マグネシウム7水和物をCo、Ni、Mn、Mgの各元素が0.12500:0.18375:0.68750:0.00375の比率となるようイオン交換水に溶解させ混合水溶液を作製した。その際に、その合計濃度が0.667mol/l、体積が180mlとなるようにした。次に、1リットルのビーカーに600mlのイオン交換水を準備し、湯浴を用いて50℃に保ち、8NのNaOHを滴下することでpHを12.0に調整した。その状態でArガスを30minバブリングさせ、溶液内の溶存酸素を十分取り除いた。ビーカー内を回転速度700rpmで攪拌させ、先程の硫酸塩の混合水溶液を3ml/minのスピードで滴下した。その間、湯浴を用いて温度を一定に保ち、8NのNaOHを断続的に滴下することでpHを一定に保った。同時に、還元剤として濃度2.0mol/lのヒドラジン水溶液50mlを0.83ml/minのスピードで滴下した。両方の滴下が終了した後、攪拌を止めた状態で12h以上静止することで共沈水酸化物を十分粒子成長させた。
また、2θ:18.6±1°における回折ピークから(003)面の回折ピークの半値幅を求めたところ、0.14°であり、2θ:44.1±1°における回折ピークから(114)面の回折ピークの半値幅を求めたところ、0.23°であった。段落[0032]に記載されているように、前記空間群P3 1 12に帰属されるエックス線回折図は、空間群R3−mに帰属することもでき、このとき、空間群P3 1 12に帰属した場合における前記(114)面の回折ピークは、空間群R3−mに帰属した場合には「(104)面の回折ピーク」と読み替えるものであるから、実施例1において、(104)面の回折ピークの半値幅は0.23°となる。以下の実施例及び比較例においても、(114)面の回折ピークは、(104)面の回折ピークと読み替える。
共沈水酸化物前駆体が含有する金属元素の組成及び水酸化リチウム一水和物の混合量について、表1の実施例2〜10に示す組成式に沿って変更した他は、実施例1と同様にして、本発明に係る活物質を合成した。
また、2θ:18.6±1°における回折ピークから(003)面の回折ピークの半値幅を求めたところ、0.14°〜0.15°であり、2θ:44.1±1°における回折ピークから(114)面の回折ピークの半値幅を求めたところ、0.23°〜0.25°であった。
共沈水酸化物前駆体が含有する金属元素からMgを除き、表1の比較例1〜4に示す組成式に沿って変更し、比較例1〜4について、焼成温度をそれぞれ1000℃、900℃、800℃、700℃に変更した他は、実施例1と同様にして、比較例に係る活物質を合成した。
比較例5〜7について、焼成温度をそれぞれ700℃、800℃、900℃に変更した他は、実施例1と同様にして、比較例に係る活物質を合成した。
比較例8〜10は、実施例2〜4と同じ固溶体の組成とし、比較例11〜14は、実施例7〜10と同じ固溶体の組成とし、焼成温度を900℃に変更した他は、実施例1と同様にして、比較例に係る活物質を合成した。
共沈水酸化物前駆体が含有する遷移金属元素の組成及び水酸化リチウム一水和物の混合量について、表1の比較例15、16に示す組成式に沿って変更した他は、実施例1と同様にして、比較例に係る活物質を合成した。
活物質としての特性を本発明のものと比較するために、Mgの代わりにAlを含有する固溶体Li1.2Co0.1Ni0.144Al0.012Mn0.544O2を合成した。
硫酸マンガン5水和物と硫酸ニッケル6水和物と硫酸コバルト7水和物をCo、Ni、Mnの各元素が12.69:18.28:69.03の比率となるようイオン交換水に溶解させ混合水溶液を作製した。その際に、その合計濃度が0.667mol/l、体積が180mlとなるようにした。次に、1リットルのビーカーに600mlのイオン交換水を準備し、湯浴を用いて50℃に保ち、8NのNaOHを滴下することでpHを12.0に調整した。その状態でArガスを30minバブリングさせ、溶液内の溶存酸素を十分取り除いた。ビーカー内を回転速度700rpmで攪拌させ、先程の硫酸塩の混合水溶液を3ml/minのスピードで滴下した。その間、湯浴を用いて温度を一定に保ち、8NのNaOHを断続的に滴下することでpHを一定に保った。同時に、還元剤として濃度2.0mol/lのヒドラジン水溶液50mlを0.83ml/minのスピードで滴下した。両方の滴下が終了した後、攪拌を止めた状態で12h以上静止することで共沈水酸化物を十分粒子成長させた。
活物質としての特性を本発明のものと比較するために、Mgの代わりにAlを含有する固溶体Li1.2Co0.1Ni0.1395Al0.021Mn0.5395O2を合成した。
共沈水酸化物前駆体が含有する遷移金属元素の組成と水酸化リチウム一水和物及び水酸化アルミニウムの混合量について、表1の比較例18に示す組成式に沿って変更した他は、比較例17と同様にして比較例に係る活物質を合成した。
活物質としての特性を本発明のものと比較するために、Mgの代わりにTiを含有する固溶体Li1.2Co0.1Ni0.15Ti0.03Mn0.52O2を合成した。
共沈水酸化物前駆体が含有する遷移金属元素の組成と水酸化リチウム一水和物及び二酸化チタンの混合量について、表1の比較例19に示す組成式に沿って変更した他は、比較例17と同様にして比較例に係る活物質を合成した。
活物質としての特性を本発明のものと比較するために、Mgの代わりにTiを含有する固溶体Li1.2Co0.1Ni0.15Ti0.05Mn0.5O2を合成した。
共沈水酸化物前駆体が含有する遷移金属元素の組成と水酸化リチウム一水和物及び二酸化チタンの混合量について、表1の比較例20に示す組成式に沿って変更した他は、比較例17と同様にして比較例に係る活物質を合成した。
実施例1〜10及び比較例1〜20のそれぞれの活物質をリチウム二次電池用正極活物質として用いて以下の手順でリチウム二次電池を作製し、電池特性を評価した。
比較例5〜7は、実施例1と上記の金属元素比率は同一であるが、焼成温度がそれぞれ700℃、800℃、900℃であり、実施例1の1000℃より低いため、(003)面の回折ピークの半値幅がそれぞれ0.31°、0.21°、0.17°と実施例1の0.14°よりも大きくなり、(114)面の回折ピークの半値幅もそれぞれ0.45°、0.31°、0.28°と実施例1の0.24°よりも大きくなった。
また、結晶子サイズは、実施例1では180nmであるのに対して、比較例5〜7ではそれぞれ80nm、110nm、140nmであり、焼成温度が低い程、結晶子サイズが小さくなることが分かる。
また、結晶子サイズは、実施例2〜4では180〜200nmであるのに対して、比較例8〜10では130〜140nmであり、結晶子サイズが小さくなった。
比較例11〜14は、実施例7〜10と上記の金属元素比率は同一であるが、焼成温度が900℃であり、実施例7〜10の1000℃より低いため、(003)面の回折ピークの半値幅が0.16°〜0.17°と大きくなり、(114)面の回折ピークの半値幅も0.28°〜0.29°と大きくなった。
また、結晶子サイズは、実施例7〜10では180〜200nmであるのに対して、比較例11〜14では130〜140nmであり、結晶子サイズが小さくなった。
また、比較例1の活物質は、(003)面の回折ピークの半値幅が0.15゜以下、かつ、(114)面の回折ピークの半値幅が0.25゜以下であり、すなわち、本発明の範囲内であり、上記の半値幅が本発明の範囲外である比較例2〜4の活物質と比較して0.1Cの放電容量は向上しているが、レート比率の向上は認められないから、固溶体がMgを含有しない場合、(003)面と(114)面の回折ピークの半値幅を小さくするだけでは、高率放電特性が向上するとはいえない。
これに対して、比較例2〜14の活物質は、半値幅が大きいことに伴い、結晶子サイズは140nm以下と小さく、高率放電特性が向上しない。
また、比較例1の活物質は、半値幅が実施例1〜10と同程度に小さいため、結晶子サイズは180nm以上であるが、固溶体がMgを含有していないため、高率放電特性は向上しない。
比較例15の活物質はMgを含んでおり、結晶子サイズは180nm以上であるが、遷移金属サイトにLi+を含んでおらず、0.1Cの放電容量、レート比率(高率放電特性)ともに向上しない。
比較例16の活物質は、結晶子サイズは180nm以上であり、高率放電特性は優れるものの、遷移金属サイトにLi+を含んでおらず、0.1Cの放電容量が向上しない。
したがって、高い放電容量を維持しつつ、高率放電特性を向上させるためには、固溶体が上記の金属元素比率を満たすようにすると共に、結晶子サイズを180nm以上とすることが好ましい。
Claims (7)
- α−NaFeO2型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物の固溶体を含有するリチウム二次電池用活物質であって、前記固溶体が含有する金属元素の組成比率が、Li1+(x/3)Co1−x−y−zNiy/2Mgz/2Mn(2x/3)+(y/2)+(z/2)(x>0、y>0、z>0、x+y+z<1)を満たし、空間群P3112又は空間群R3−mに帰属可能なエックス線回折パターンを有し、ミラー指数hklにおける(003)面の回折ピークの半値幅が0.15°以下であり、かつ、(114)面又は(104)面の回折ピークの半値幅が0.25°以下であることを特徴とするリチウム二次電池用活物質。
- 前記リチウム遷移金属複合酸化物の固溶体が含有する金属元素の組成比率が、1/3<x<2/3、0<y<2/3、0<z<0.3であることを特徴とする、請求項1に記載のリチウム二次電池用活物質。
- 前記リチウム遷移金属複合酸化物の固溶体は、Li[Li1/3Mn2/3]O2、LiNi1/2Mn1/2O2、LiCoO2及びLiMg1/2Mn1/2O2の4つの成分の固溶体から構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載のリチウム二次電池用活物質。
- 前記リチウム遷移金属複合酸化物の固溶体は、構成されるそれぞれの元素の価数が、Li1+,Mn4+,Ni2+,Co3+,Mg2+であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用活物質。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用活物質を含有するリチウム二次電池用電極。
- 請求項5に記載のリチウム二次電池用電極を備えたリチウム二次電池。
- 充電時の正極の最大到達電位が4.3V(vs.Li/Li+)以下である充電方法が採用される請求項6に記載のリチウム二次電池を製造するための製造方法であって、4.3V(vs.Li/Li+)を超え4.8V(vs.Li/Li+)以下の正極電位範囲に出現する、電位変化が比較的平坦な領域に少なくとも至る充電を行う工程を含むことを特徴とするリチウム二次電池の製造方法。
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