JP5794528B2 - 免制震構造 - Google Patents
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Description
すなわち、一般的には層間せん断変形角は下層階や上層階よりも中層階において大きくなるのであるが、従来の免震構造では下層階に設置した免震装置のみで地震時の建物全体の地震エネルギーを吸収しているため、中層階から上層階での層間せん断変形角の分布に見合った効率的なエネルギー吸収はできないものである。
また、本体部とコア部との間の水平方向の相対振動をクリアランスの範囲内で許容したうえでそれらの間に中間部制震装置を多段に設けているので、地震時や強風時には中間部制震装置が効率的に作動して地震エネルギーを有効に吸収し優れた制震効果が得られる。
しかも、中間部制震装置として可変剛性ダンパーを用いて、変位センサーにより検知される本体部の振動状況に応じて可変剛性ダンパーの剛性を最適制御することにより、本体部の中間部をそれら中間部制震装置を介してコア部により支持して変位を有効に拘束し後揺れを速やかに収束させることができる。
図1は本発明の免制震構造による高層ないし超高層の建物の立断面を模式的に示すもので、符号1は基礎底盤、1aは杭、2は基礎底盤1に剛結して自立状態で構築したコア部、3はコア部2を取り囲んでその周囲に構築した平面視環状の本体部である。
この本体部3は構造的にはコア部2に比較して相対的に低剛性とされ(換言すると、コア部2は本体部3に比較してより高剛性とされる)、したがって本体部3とコア部2とは異なる振動特性を呈するものであって地震時にはそれらの間で水平方向の相対振動が生じるようになっており、その相対振動を許容するためのクリアランス4がコア部2と本体部3との間に全周にわたって確保されている。
また、コア部2は基礎底盤1上に剛結された状態で自立状態で設置されているのに対し、本体部3はその全体が基礎底盤1上に積層ゴム等の底部免震装置5により免震支持されて設置され、また本体部3の頂部とコア部2の頂部構造体2aとの間にも同じく積層ゴム等の頂部免震装置6が介装されている。
そして、そのような制御を行うために、本体部3の底部と基礎底盤1との間および本体部3の頂部とコア部2の頂部構造体2aとの間には、それぞれ変位センサー8,9が設置されていて、それら変位センサー8,9により検知される本体部3の振動状況に応じて上記の各中間部制震装置7の剛性が刻々と最適に制御されるようになっている。
具体的には、上記の制御装置にはこの建物全体の地震動数学モデルが予め入力されていて、変位センサー8,9からの入力信号により検知される本体部3の揺れの方向と強さに応じて本体部3全体の振動状況を刻々と演算処理し、それに基づき各中間部制震装置7に制御信号を出力することにより、それぞれの中間部制震装置7をそれぞれに作用する変位に対して反対方向に最適な摩擦力や反力を発生させるようにそれぞれの剛性を最適に調整し、以て本体部3全体の振動を最も効果的に抑制するように構成されている。
これにより、たとえば巨大地震発生により中間部制震装置7に大きな変位が生じる際には、各中間部制震装置7の剛性を小さくしてそれらを確実に作動せしめて振動エネルギーを十分に吸収し、振動が収束段階となったら所定の中間部制震装置7の剛性を段階的に高めていって本体部3の変位を拘束するといった制御を行うことにより、本体部3の振動を速やかに低減させて後揺れが長く続くことを防止することが可能である。
また、本体部3とは独立に構築したコア部2の頂部から頂部免震装置6を介して本体部3の頂部も免震支持することによって本体部3を上方からも押さえ込むような構造であり、さらに本体部3の中間部も多段の中間部制震装置7(可変剛性ダンパー)を介してコア部2により支持可能であるので、本体部3およびコア部2の双方に作用する転倒モーメントは底部免震装置5、頂部免震装置6、中間部制震装置7を介して相互に伝達されてそれらが相互に支持し合ってそれらの全体が自ずと転倒し難いものとなり、したがって建物全体が充分に安定な構造となって、底部免震装置5に対する引き抜き耐力や転倒防止のためのフェイルセーフ機構を省略ないし軽減することも可能である。
この場合、中間部制震装置7は層間せん断変形角の大きい中層階の範囲に集約して設置しているので、それら中間部制震装置7は下層階や上層階に設置される場合に比べて効率的に作動して地震エネルギーを充分に吸収でき、その結果、本体部3への地震力を最小限としてその躯体の所要断面を充分に軽減することができる。
しかも、中間部制震装置7として可変剛性ダンパーを用いてそれらの剛性を変位センサー8,9により検知される本体部3の振動状況に応じて刻々と最適制御することにより、本体部3の変位を十分に抑制できるし後揺れを速やかに収束させることができる。
これは、本体部3を外周チューブ架構10と内周チューブ架構11とを各階の繋ぎ梁12により連結したダブルチューブ架構により構成し、内周チューブ架構11の内側に全周にわたる回廊13を設け、その内側にコア部2との間にクリアランス4を確保したものである。
また、コア部2は高剛性のコアウォールあるいはトラス構造体により構成し、その頂部に一体に設ける頂部構造体2aを本体部3の上方に張り出す高剛性の大断面ハットトラスとしたものである。
また、本体部3の中間部には複数階おき(図示例では5階おき)に中間部制震装置7としての可変剛性ダンパーを設置している。その中間部制震装置7は、図5(b)に示すように内周チューブ架構11とコア部2の各四隅部に対して水平2方向を向くように2本ずつ(したがって各段に8台ずつ)設置されている。
さらに、図2に示すように、本体部3の底部と基礎底盤1との間には変位センサー8が設置され、本体部3の頂部とコア部2の頂部構造体2aとの間には変位センサー9が設置されている。
1a 杭
2 コア部
2a 頂部構造体
3 本体部
4 クリアランス
5 底部免震装置
6 頂部免震装置
7 中間部制震装置(可変剛性ダンパー)
8,9 変位センサー
10 外周チューブ架構
11 内周チューブ架構
12 繋ぎ梁
13 回廊
16 ボイド空間
17,18 設置台
20 低層部建物
Claims (1)
- 高層ないし超高層の建物を対象とする免制震構造であって、
当該建物をチューブ架構による平面視環状の本体部と該本体部とは独立にその中心位置に構築するコア部とにより構成して、それら本体部とコア部との間に水平方向の相対振動を許容するためのクリアランスを確保し、
前記本体部を基礎構造体上に底部免震装置により免震支持して設置し、
前記コア部を前記本体部よりも相対的に高剛性として前記基礎構造体に剛結して自立状態で設置するとともに、該コア部の頂部と前記本体部との間に頂部免震装置を介装し、
前記本体部の高さ方向中間部と前記コア部との間に中間部制震装置としての可変剛性ダンパーを上下方向に間隔をおいて多段に介装し、
前記本体部の底部と前記基礎構造体との間、および前記本体部の頂部と前記コア部との間に、それらの間で生じる水平方向の相対変位を検知する変位センサーをそれぞれ設置して、前記変位センサーの検知結果に基づいて前記中間部制震装置としての可変剛性ダンパーの剛性を制御可能に構成してなることを特徴とする免制震構造。
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