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JP5787700B2 - 不織布の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、嵩高な不織布の製造方法に関する。
湿潤紙力増強剤を添加した繊維懸濁液を抄紙原料供給ヘッドから繊維シート形成ベルト上に供給して繊維シート形成ベルト上に繊維を堆積させて、ウエット状態の繊維シートを形成し、吸引ボックスを使用して繊維シートを脱水して繊維シートの水分率を繊維シートの重量に対して50〜85重量%にした後、吸引によって開孔パターン構造体に繊維シートを押しつけて繊維シートに所定のパターンを付与し、その後、繊維シートを乾燥する嵩高紙の製造方法が従来技術として知られている(たとえば、特許文献1)。この嵩高紙の製造方法によれば、嵩高性および吸収性に富んだ嵩高紙を得ることができる。
特開2000−34690号公報
しかしながら、特許文献1に記載されているような嵩高紙の製造方法では、50〜85重量%という非常に高い水分率を有する繊維シートに所定のパターンを形成するので、パターンを繊維シートに形成した後の乾燥工程で、繊維シートの乾燥のために多大なエネルギーが必要となる場合がある。この場合、乾燥工程で使用する乾燥設備の設備規模を大きくする必要がある。
本発明は、上述の従来の課題を解決するものであり、嵩高であり、かつ柔軟性を有する不織布を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するため、以下の構成を採用した。
すなわち、本発明の不織布の製造方法は、水分を含んだ抄紙原料を支持体上に供給して、該支持体上に繊維シートを形成する工程と、繊維シートを乾燥する工程と、繊維シートを乾燥する工程によって乾燥した繊維シートの一部に、繊維シートを乾燥する工程によって乾燥した繊維シートの水分率よりも高い水分率に水分率を上昇させた領域を形成する工程と、繊維シートの水分率を上昇させた領域に高圧水蒸気を噴射する工程とを含む。
本発明の他の不織布の製造方法は、ウェブを支持体上に供給して、該支持体上に繊維シートを形成する工程と、繊維シートの一部に、繊維シートの水分率よりも高い水分率に水分率を上昇させた領域を形成する工程と、繊維シートの水分率を上昇させた領域に高圧水蒸気を噴射する工程とを含み、水分率を上昇させた領域を形成する工程は、前記繊維シートの水分率を上昇させた領域における繊維シートの水分率を、10%以上、80%以下とする
本発明によれば、所定のパターンを繊維シートに形成した後の乾燥に、多大なエネルギーを要しないようにすることができる。
図1は、本発明の一実施形態における不織布の製造方法に使用する不織布製造装置を説明するための図である。 図2は、本発明の一実施形態における不織布の製造方法に使用する不織布製造装置の高圧水流ノズルの一例を示す図である。 図3は、高圧水流によって繊維シートの繊維同士が交絡する原理を説明するための図である。 図4は、本発明の一実施形態における不織布の製造方法に使用する不織布製造装置の高圧水流ノズルの穴の配置の一例を示す図である。 図5は、高圧水流が噴射された繊維シートの幅方向の断面図である。 図6は、本発明の一実施形態における不織布の製造方法に使用する不織布製造装置のスプレーの一例を示す図である。 図7は、本発明の一実施形態における不織布の製造方法に使用する不織布製造装置の蒸気ノズルの一例を示す図である。 図8は、高圧水蒸気によって、繊維シートの繊維がほぐれ、繊維シートの嵩が高くなる原理を説明するための図である。 図9は、高圧水蒸気が噴射された繊維シートの幅方向の断面図である。 図10は、本発明の一実施形態における不織布の製造方法に使用する不織布製造装置の蒸気ノズルの穴の配置の一例を示す図である。 図11は、水または水溶液を間欠的に放射できるスプレーを使用して作製した繊維シートの一例を示す図である。 図12は、本発明の一実施形態における不織布の製造方法における水分率を上昇させた領域を形成する方法の変形例を説明するための図である。 図13は、本発明の一実施形態における不織布の製造方法における水分率を上昇させた領域を形成する方法の変形例を説明するための図である。 図14は、本発明の一実施形態における不織布の製造方法に使用する不織布製造装置の変形例を説明するための図である。
以下、図を参照して本発明の一実施形態の不織布の製造方法をより詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態における不織布の製造方法に使用する不織布製造装置1を説明するための図である。
まず、繊維懸濁液などの水分を含んだ抄紙原料を作製する。抄紙原料に用いる繊維としては、繊維長20mm以下の短繊維が好ましい。このような短繊維としては、たとえば針葉樹や広葉樹の化学パルプ、半化学パルプおよび機械パルプなどの木材パルプ、これら木材パルプを化学処理したマーセル化パルプおよび架橋パルプ、麻や綿などの非木材系繊維ならびにレーヨン繊維などの再生繊維のようなセルロース系繊維、ならびにポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維およびポリアミド繊維のような合成繊維などが挙げられる。抄紙原料に用いる繊維は、とくに木材パルプ、非木材パルプ、レーヨン繊維などのセルロース系繊維が好ましい。
抄紙原料は、原料供給ヘッド11によって繊維シート形成コンベア16の繊維シート形成ベルト上に供給され、繊維シート形成ベルト上に堆積する。繊維シート形成ベルトは、蒸気が通過可能な通気性を有する支持体であることが好ましい。たとえば、ワイヤーメッシュおよび毛布などを繊維シート形成ベルトに用いることができる。
繊維シート形成ベルト上に堆積した抄紙原料は吸引ボックス15により適度に脱水され、繊維シート24が形成する。繊維シート24は、繊維シート形成ベルト上に配置された2台の高圧水流ノズル12と、繊維シート形成ベルトを挟んで高圧水流ノズル12に対向する位置に配置された、高圧水流ノズル12から噴射された水を回収する2台の吸引ボックス15との間を通過する。このとき、繊維シート24は、高圧水流ノズル12から高圧水流を噴射され、上面(高圧水流ノズル12側の面)に溝部が形成される。
高圧水流ノズル12の一例を図2に示す。高圧水流ノズル12は、繊維シート24の幅方向(CD)に並んだ複数の高圧水流31を繊維シート24に向けて噴射する。その結果、繊維シート24の上面には、繊維シート24の幅方向(CD)にならび、機械方向(MD)に延びる複数の溝部32が形成される。
また、繊維シート24が高圧水流を受けると、上述のように繊維シート24に溝部32が形成されるとともに繊維シート24の繊維同士が交絡し、繊維シート24の強度が高くなる。繊維シート24が高圧水流を受けると、繊維シート24の繊維同士が交絡する原理を、図3を参照して説明するが、この原理は本発明を限定するものではない。
図3に示すように、高圧水流ノズル12が高圧水流31を噴射すると、高圧水流31は繊維シート形成ベルト41を通過する。これにより繊維シート24の繊維は、高圧水流31が繊維シート形成ベルト41を通過する部分42を中心に引き込まれることになる。その結果、繊維シート24の繊維が、高圧水流31が繊維シート形成ベルト41を通過する部分42に向かって集まり、繊維同士が交絡することになる。
繊維シート24の繊維同士が交絡することにより繊維シート24の強度が高くなることによって、後の工程で、高圧水蒸気が繊維シート24に噴射されても穴が開いたり、破れたり、および吹き飛んだりすることが少なくなる。また、抄紙原料に紙力増強剤を添加しなくても繊維シート24の湿潤強度を増加させることができる。
高圧水流ノズル12の穴径は90〜150μmであることが好ましい。高圧水流ノズル12の穴径が90μmよりも小さいと、ノズルが詰まりやすいという問題が生じる場合がある。また、高圧水流ノズル12の穴径が150μmよりも大きいと、処理効率が悪くなるという問題が生じる場合がある。
高圧水流ノズル12の穴ピッチ(隣接する穴の中心間の距離)は0.5〜1.0mmであることが好ましい。高圧水流ノズル12の穴ピッチが0.5mmよりも小さいと、ノズルの耐圧が低下し、破損するという問題が生じる場合がある。また、高圧水流ノズル12の穴ピッチが1.0mmよりも大きいと、繊維交絡が不十分となるという問題が生じる場合がある。
図4に、高圧水流ノズル12の穴の配置の一例を示す。高圧水流ノズル12には、繊維シート24の幅方向(CD)に一列に並んだ複数の穴121が設けられている。穴径は、たとえば92μmであり、穴ピッチは、たとえば0.5mmである。
2台の高圧水流ノズル12と、2台の吸引ボックス13との間を通過した後の位置(図1の符号25の位置)の繊維シート24の幅方向の断面を図5に示す。高圧水流によって繊維シート24の上面に溝部32が形成される。
その後、図1に示すように、繊維シート24は、吸引ピックアップ17によって繊維シート搬送コンベア18に転写される。この転写のとき、繊維シート24は厚み方向に圧力を受け、繊維シート24の嵩は低くなる。さらに、繊維シート24は繊維シート搬送コンベア19に転写される。この転写のときも、繊維シート24は厚み方向に圧力を受け、繊維シート24の嵩は低くなる。次に、乾燥ドライヤー20に転写される。この転写のときも、繊維シート24は厚み方向に圧力を受け、繊維シート24の嵩は低くなる。乾燥ドライヤー20は、たとえば、ヤンキードライヤーであり、蒸気により約120℃に加熱されたドラムに繊維シート24を付着させて、繊維シート24を乾燥させる。
この乾燥ドライヤー20による乾燥によって繊維シート24の水分率は、10%未満にすることが好ましく、8%以下にすることがより好ましい。ここで、水分率とは、乾燥した繊維シート24の質量を100%としたときの繊維シートに含有している水の量である。繊維シート24の水分率が10%よりも大きいと、繊維シート24の繊維間の水素結合力が弱くなり、繊維間の交絡が弱くなるので、繊維シート24に必要な強度が得られない場合がある。本発明の一実施形態における不織布の製造方法では、後の工程で、強度が小さい領域が、繊維シート24の一部に後の工程で形成されるので、繊維シート24の強度を高くしておく必要がある。
次に、繊維シート24は、スプレー23の下方に移動し、スプレー23から水を適用される。図6に示すように、スプレーのノズル231は繊維シート24の幅方向(CD)に並べて配置されている。また、スプレー23から放射された水232が繊維シート24の一部のみに適用されるように、スプレー23は、繊維シート24に近接して配置されている。これにより、水が適用された複数の領域241、すなわち、水分率を上昇させた複数の領域241が繊維シート24の一部に形成される。水分率を上昇させた複数の領域241は、繊維シート24の幅方向(CD)に並び、繊維シート24の機械方向に延びている。
繊維シート24の水分率を上昇させた領域241の水分率は、乾燥ドライヤー20によって乾燥した繊維シート24の水分率よりも高ければとくに限定されないが、10%以上、80%以下であることが好ましい。繊維シート24の水分率が10%よりも小さいと、繊維シート24の繊維間の水素結合力が強くなり、後述の高圧水蒸気によって繊維シート24の繊維をほぐすために必要なエネルギーが非常に高くなる。一方、繊維シート24の水分率が80%よりも大きくなると、繊維シート24から水が垂れてしまう場合がある。
なお、繊維シート24の水分率を上昇させることができれば、スプレー23から放射される液体は、水に限定されない。たとえば、水に他の化合物を溶解させた水溶液をスプレー23から放射してもよい。
水分率を上昇させた領域241では、繊維シート24の繊維間の水素結合力が弱くなっているので、繊維間の交絡が弱くなっている。このため、水分率を上昇させた領域241では、繊維シート24の繊維を容易にほぐすことができ、繊維シート24の加工が容易になる。
繊維シートの水分率が高い場合、繊維間の水素結合が弱く、繊維間の交絡が弱いので、繊維シートの強度は弱い。このため、上述の引用文献1に記載の繊維シートのように繊維シート全体の水分率が50〜85重量%である場合、繊維シートの強度は弱くなり、製造工程のラインテンションを上げたり、ラインスピードを上げたりすることができない。このため、不織布の製造効率は低下する。しかし、本発明の一実施形態の不織布の製造方法では、スプレー23から放射された水232は繊維シート24の一部のみに適用されるので、水分率を上昇させない領域が繊維シート24に残る。水分率を上昇させない領域では、繊維シート24の繊維間の水素結合が強く、繊維間の交絡も強いので、繊維シート24の強度は高い。したがって、本発明の一実施形態の本発明の一実施形態の不織布の製造方法では、この水分率を上昇させない領域のお陰で、製造工程のラインテンションを上げたり、ラインスピードを上げたりすることができ、不織布の製造効率を高めることができる。
後述の蒸気ノズル14から噴射された高圧水蒸気が繊維シート24に当たる位置および範囲に基づいて、スプレー23の穴径はおよび穴ピッチは適宜選択される。たとえば、スプレー23の穴径および穴ピッチを、後述の蒸気ノズル14の穴径および穴ピッチと合わせてもよい。
次に、繊維シート24は、円筒状のサクションドラム13におけるメッシュ状の外周面上に移動する(図1参照)。このとき、サクションドラム13の外周面の上方に配置された1台の蒸気ノズル14から高圧水蒸気が繊維シート24の水分を上昇させた領域に噴射される。なお、2台以上の蒸気ノズルから高圧水蒸気が繊維シート24の水分を上昇させた領域に噴射されるようにしてもよい。サクションドラム13は吸引装置を内蔵しており、蒸気ノズル14から噴射された高圧水蒸気は吸引装置によって吸引される。蒸気ノズル14から噴射された高圧水蒸気によって、繊維シート24の上面(蒸気ノズル14側の面)に溝部が形成される。
蒸気ノズル14から噴射される高圧水蒸気は、100%の水からなる水蒸気でもよいし、空気などの他の気体を含んだ水蒸気でもよい。しかし、蒸気ノズル14から噴射される高圧水蒸気は、100%の水からなる水蒸気であることが好ましい。
サクションドラム13の上方に配置された蒸気ノズル14の一例を図7に示す。蒸気ノズル14は、繊維シート24の幅方向(CD)に並んだ複数の高圧水蒸気51を繊維シート24の水分率を上昇させた領域241に向けて噴射する。その結果、繊維シート24の上面には、繊維シート24の幅方向(CD)にならび、機械方向(MD)に延びる複数の溝部52が形成される。繊維シート24には、上述の高圧水流によって形成された溝部も存在するが、高圧水蒸気51によって形成された溝部52を見えやすくするために、図7では高圧水流によって形成された溝部を省略している。
繊維シート24の水分率を上昇させた領域241に高圧水蒸気が噴射されると、水分率を上昇させた領域241のおける繊維シート24の繊維はほぐれる。そして、ほぐれた繊維は、高圧水蒸気が噴射された部分の幅方向の両側に、高圧水蒸気によって移動する。これにより、繊維シート24の嵩が高くなる。この繊維シート24の嵩が高くなる原理を、図8を参照して詳細に説明するが、この原理は本発明を限定するものではない。
図8に示すように、蒸気ノズル14が高圧水蒸気51を噴射すると、高圧水蒸気51はサクションドラム13にあたる。高圧水蒸気51は、大部分はサクションドラム13にはね返される。これにより繊維シート24の繊維は、巻き上がり、そしてほぐされる。とくに、水分率を上昇させた領域では、繊維間の水素結合が弱いため、繊維間の交絡が弱い。このため、水分率を上昇させた領域では、繊維は巻き上がりやすくなっており、これにより繊維はほぐされやすくなっている。
また、高圧水蒸気によって繊維シート24中の水は急激に蒸発する。水分率を上昇させた領域では、繊維シート24の水分率が高くなっているので、この水の急激な蒸発による水蒸気の膨張も大きくなる。これによって、繊維間に隙間が大きくなり、繊維はほぐれやすくなる。
繊維シート24の繊維は、さらに高圧水蒸気51によってかき分けられ、かき分けられた繊維は、高圧水蒸気51がサクションドラム13にあたる部分53の幅方向両側に移動して集まり、繊維シート24の嵩の高い部分である高嵩部54が形成される。
繊維シート24は、高圧水蒸気51によって部分的に繊維を吹き寄せて賦型されるので、繊維間の交絡は強い。このため、繊維シートの嵩高の状態を維持するために繊維シート24に可塑性繊維を配合しなくてもよい。また、後述の巻き取りによって繊維シートの嵩がつぶれることが少ない。さらに、製造された不織布を湿潤の状態で使用しても不織布の嵩がつぶれることが少ない。
水分率を上昇させていない領域では、繊維シート24の水分率が低いので、繊維間の水素結合が強い。このため、水分率を上昇させていない領域に高圧水蒸気51を噴射しても繊維シート24の嵩はあまり高くならない。したがって、本発明の一実施形態の不織布の製造方法では、水分率を上昇させた領域を繊維シート24に形成し、その領域に、高圧水蒸気51を噴射することによって、繊維シート24の嵩をとても高くすることができる。
水分率を上昇させていない領域では、高圧水流によって繊維シート24の強度は高められている。このため、高圧水蒸気51を繊維シート24に噴射するとき、繊維シート24が高圧水蒸気51によって吹き飛んでしまうのを防ぐためのネットを繊維シート24の上に設ける必要がない。したがって、高圧水蒸気51による繊維シート24の処理効率が上がる。また、上記ネットを設ける必要がないので、不織布製造装置1のメンテナンスおよび不織布の製造コストを抑えることができる。
高圧水蒸気の温度は、130〜220℃であることが好ましい。これにより、高圧水蒸気を繊維シート24に噴射しているときも繊維シート24の乾燥は進むことになり、繊維シート24は、嵩が高くなるのと同時に乾燥する。繊維シート24が乾燥すると繊維シート24の繊維同士の水素結合が強くなるので、繊維シート24の強度は高くなり、繊維シート24の高くなった嵩はつぶれにくくなる。また、繊維シート24の強度は高くなることによって、高圧水蒸気の噴射により繊維シート24に穴が開いたり、切れたりすることが防止される。
蒸気ノズル14から噴射される高圧水蒸気の蒸気圧力は0.3〜1.5MPaであることが好ましい。高圧水蒸気の蒸気圧力が0.3MPaよりも小さいと、繊維シート24の嵩が、高圧水蒸気によってあまり高くならない場合がある。また、高圧水蒸気の蒸気圧力が1.5MPaよりも大きいと、繊維シート24に穴が開いたり、繊維シート24が破れたり、および吹き飛んだりする場合がある。
サクションドラム13には、蒸気ノズル14から噴射された蒸気を吸引する吸引装置が内蔵されている。この吸引装置によって、サクションドラム13が繊維シート24を吸引する吸引力は、−1〜−12kPaであることが好ましい。サクションドラム13の吸引力が−1kPaよりも小さいと蒸気を吸いきれず吹き上がりが生じ危険であるという問題が生じる場合がある。また、サクションドラム13の吸引力が−12kPaよりも大きいとサクション内への繊維脱落が多くなるという問題が生じる場合がある。
蒸気ノズル14の先端と繊維シート24の上面との間の距離は1.0〜10mmであることが好ましい。蒸気ノズル14の先端と繊維シート24の上面との間の距離が1.0mmよりも小さいと、繊維シート24に穴が開いたり、繊維シート24が破れたり、吹き飛んだりするという問題が生じる場合がある。また、蒸気ノズル14の先端と繊維シート24の上面との間の距離が10mmよりも大きいと、高圧水蒸気における繊維シート24の表面に溝部を形成するための力が分散してしまい、繊維シート24の表面に溝部を形成する能率が悪くなる。
蒸気ノズル14の穴径は、高圧水流ノズル12の穴径よりも大きいことが好ましく、かつ蒸気ノズル14の穴ピッチは、高圧水流ノズル12の穴ピッチよりも大きいことが好ましい。これにより、図9に示すように、高圧水流ノズル12から噴射された高圧水流によって形成された溝部32を残しながら、蒸気ノズル14から噴射された高圧水蒸気によって、繊維シート24に溝部52を形成することができる。
図9は、高圧水蒸気を噴射した後(図1の符号26の位置)の繊維シート24の幅方向の断面を示す図である。繊維シート24のうち、高圧水流によって形成された溝部32が複数存在する領域55は、水分を上昇させなかった領域に対応し、繊維シート24の強度が高い領域である。高圧水蒸気によって形成された溝部53および高嵩部54が存在する領域56は、水分率を上昇させた領域に対応し、上記領域55に比べて強度が若干低められている領域である。このように、強度は高いが嵩は高くない領域55と、強度が低いが嵩は高い領域56とを繊維シート24に形成すことによって、繊維シート24における強度と嵩高とのバランスをとることができる。また、繊維シート24の嵩が高くなることによって、繊維シート24の保水性が改善されるとともに、繊維シート24の湿潤強度も改善される。さらに、高圧水蒸気による繊維シート24の強度低下を抑えながら、高圧水蒸気によって繊維シート24に溝部を形成することができる。
汚れを拭き取る不織布として繊維シートを使用する場合、繊維シート24における溝部53および高嵩部54が存在する領域56で汚れをかき取って、溝部32が複数存在する領域55でかき取った汚れを吸収することができる。したがって、この2つの領域55,56の存在によって繊維シートの拭き取り性能が向上する。
蒸気ノズル14の穴径は150〜600μmであることが好ましい。蒸気ノズル14の穴径が150μmよりも小さいと、高圧水蒸気のエネルギーが不足し、十分に繊維をかき分けられないという問題が生じる場合がある。また、蒸気ノズル14の穴径が600μmよりも大きいと、高圧水蒸気のエネルギーが大き過ぎてしまい、高圧水蒸気による繊維シート24へのダメージが大きくなり過ぎるという問題が生じる場合がある。
蒸気ノズル14の穴ピッチ(隣接する穴の中心間の距離)は1.0〜10.0mmであることが好ましい。蒸気ノズル14の穴ピッチが1.0mmよりも小さいと、蒸気ノズル14の耐圧性が低下し、蒸気ノズル14が破損する恐れが生じる場合がある。また、蒸気ノズル14の穴ピッチが10.0mmよりも大きいと、繊維シートにおける高圧水蒸気によって処理を受けた部分の割合が小さくなり、繊維シートに対する高圧水蒸気による効果が小さくなる場合がある。
蒸気ノズル14の穴は、繊維シート24の幅方向(CD)に一列に並んでいてもよいし、二列以上に並んでいてもよい。また、幅方向(CD)に並んだ2つ以上の蒸気ノズル14の穴を一組として、蒸気ノズル14の穴の組が、所定の穴ピッチで幅方向(CD)に並んでいてもよい。この場合、隣接する、穴の組の中心間の距離が、蒸気ノズル14の穴ピッチとなる。
図10に、蒸気ノズル14の穴の配置の一例を示す。蒸気ノズル14では、繊維シート24の幅方向(CD)に並んだ2つの穴141からなる穴の組142が二列で幅方向(CD)に並んでいる。穴径は、たとえば300μmであり、穴ピッチ、すなわち、穴141の組142の隣接する穴の中心間の距離は、たとえば2.0mmであり、隣接する穴141の組142の中心間の距離143は、たとえば6.0mmである。
高圧水蒸気を噴射した後の繊維シート24の水分率が、高圧水蒸気を噴射する前の繊維シート24の水分率よりもできるだけ大きくならないようにするため、高圧水蒸気の温度は、乾燥ドライヤー20の温度よりも高いことが好ましい。たとえば、高圧水蒸気の温度は、130〜220℃であることが好ましい。これにより、高圧水蒸気を繊維シート24に噴射しているときも繊維シート24の乾燥は進むことになり、繊維シート24は、嵩が高くなるのと同時に乾燥する。繊維シート24が乾燥すると繊維シート24の繊維同士の水素結合が強くなるので、繊維シート24の強度は高くなり、繊維シート24の高くなった嵩はつぶれにくくなる。また、繊維シート24の強度は高くなることによって、高圧水蒸気の噴射により繊維シート24に穴が開いたり、切れたりすることが防止される。
高圧水蒸気を噴射した後の繊維シート24の水分率は、35%以下であることが好ましい。高圧水蒸気を噴射した後の繊維シート24の水分率が35%よりも大きいと、後述の乾燥ドライヤーによる乾燥によって繊維シート24の水分率を5%以下にすることができない場合がある。この場合、さらに追加の乾燥が必要であり、不織布の製造効率が悪くなる。
高圧水蒸気によって繊維シート24の上面に溝部が形成されるとともに、繊維シート24の下面(繊維シート24のサンクションドラム側の面)にサクションドラム13の外周面のパターンに対応した不図示の凹凸が形成される。
その後、図1に示すように、乾燥ドライヤー20とは別の乾燥ドライヤー22に転写される。乾燥ドライヤー22は、たとえば、ヤンキードライヤーである。乾燥ドライヤー22のドラムは蒸気により約150℃に加熱され、そのドラムに繊維シート24を付着させて、繊維シート24を乾燥させる。乾燥ドライヤー22を通過した後の繊維シート24は十分に乾燥していることが必要であり、具体的には、乾燥ドライヤー22を通過した後の繊維シート24の水分率は5%以下であることが好ましい。
上述したように、特許文献1に記載されているような嵩高紙の製造方法では、50〜85重量%という非常に高い水分率を有する繊維シートに所定のパターンを形成するので、パターンを繊維シートに形成した後の乾燥工程で、繊維シートの乾燥のために多大なエネルギーが必要となる場合がある。一方、本発明の一実施形態の不織布の製造方法では、繊維シートの水分率が高い領域は、繊維シートの一部でしかないので、繊維シートの乾燥のために多大なエネルギーを必要としない。また、繊維シートの一部でしかない水分率が高い領域に、さらに高圧水蒸気が噴射されるので、水分率が高い領域の水分率はさらに小さくなり、繊維シートの乾燥のために多大なエネルギーをさらに必要としない。
乾燥した繊維シート24は、不織布として巻き取り機21に巻き取られる。
以上の一実施形態による不織布の製造方法を以下のように変形することができる。
(1)繊維シートに適用する水または水溶液の量を変えて、水分率を上昇させた領域の水分率を場所によって変えられるようにしてもよい。繊維シートの水分率が高い場所ほど、繊維シートの繊維間の水素結合が弱くなり、繊維間の交絡が弱くなるので、高嵩部の高さを高くすることができる。したがって、水分率を上昇させた領域の水分率を場所によって変えることによって、高嵩部の高さを場所によって変えることができ、繊維シート24の表面の設計の自由度が上がる。
(2)水分率を上昇させた領域を繊維シートに形成するために使用したスプレーに電磁弁などを設けて、スプレーは水または水溶液を間欠的に放射できるようにしてもよい。これにより、水分率を上昇させた領域を間欠的に形成することができる。上述したように、水分率を上昇させた領域では、繊維間の水素結合が弱く、繊維間の交絡は弱いので、高圧水蒸気を噴射すると、繊維シート24に溝部52および高嵩部54が形成される。しかし、水分率を上昇させていない領域では、繊維シート24の水分率が非常に小さいので、繊維間の水素結合が強く、繊維間の交絡は強いため、高圧水蒸気を噴射しても、繊維シート24に溝部52および高嵩部54はほとんど形成されない。したがって、水または水溶液を間欠的に放射できるスプレーを使用することによって、高圧水蒸気を連続的に噴射した場合であっても、図11に示す繊維シート24Aのように、幅方向(CD)に並び、機械方向(MD)に間欠的に延びている溝部52Aおよび高嵩部54Aを形成することができる。すなわち、水分率を上昇させた領域を部分的に形成することによって、高圧水蒸気を連続的に噴射した場合であっても、部分的に溝部および高嵩部を形成することができる。
また、スプレーによる水または水溶液の放射の間隔を制御することによって、繊維シート24に溝部52および高嵩部54のパターンを変更することができる。これにより、溝部52および高嵩部54のパターンを変更するためのコストを低減することができる。一方、引用文献1に記載の繊維シートの製造方法では、繊維シートに形成されるパターンを変更するためには、開孔パターン構造体、吸引サンクションドラムおよび蒸気ノズルを取り替えなくてはならないので、繊維シートに形成されるパターンを変更するのに費用がかかる。
(3)図12に示すように、水または水溶液が入っている管23Bの水または水溶液を吐出する開口部231Bに繊維シート24Bを近接させることによって、水分率を上昇させた領域241Bを繊維シート24Bの一部に形成するようにしてもよい。簡単な設備で水分率を上昇させた領域241Bを繊維シート24Bの一部に形成することができる。これにより、高圧水蒸気を連続的に噴射した場合であっても、水分率を上昇させた領域241Bのみに溝部および高嵩部を形成することができる。
(4)図13に示すように、水分付与ロール23Cに繊維シート24Cを通すことによって、水分率を上昇させた領域241Cを繊維シート24Cの一部に形成するようにしてもよい。水分付与ロール23Cは、水または水溶液をしみ出すパターン部233Cを外周面に有する上段ロール231Cと、平滑な外周面を有する下段ロール232Cとからなる。なお、水分付与ロールは、平滑な外周面を有する上段ロールと、水または水溶液をしみ出すパターン部を外周面に有する下段ロールとからなるようにしてもよい。また、水分付与ロールの上段ロールおよび下段ロールは、ともに水または水溶液をしみ出すパターン部を外周面に有していてもよい。パターン部233Cは多孔質体で構成され、上段ロール231Cの内部に供給された水または水溶液は、パターン部233Cを通って上段ロール231Cの外周面上に供給される。これにより、繊維シート24Cが水分付与ロール23Cを通過すると、パターン部233Cと同じ大きさおよび形状の水分率を上昇させた領域241Cを繊維シート23C形成することができる。パターン部233Cの大きさおよび形状を変えることによって、繊維シート23Cに形成される水分率を上昇させた領域241Cの大きさおよび形状を自由に変更できるので便利である。これにより、高圧水蒸気を連続的に噴射した場合であっても、大きさおよび形状を自由に変更できる領域241Cのみに溝部および高嵩部を形成することができる。
(5)高圧水蒸気は、繊維シート中の水分を蒸発させることができる。したがって、高圧水蒸気のエネルギーを高くすることによって、高圧水蒸気噴射後の繊維シートの水分率を5%以下にすることができる。この場合、繊維シートをさらに乾燥する必要はないので、図14に示す不織布製造装置1Dのように、蒸気ノズル14と巻き取り機21との間に乾燥ドライヤーを設けないようにしてもよい。
(6)以上の本発明の一実施形態における不織布の製造方法は、湿式による不織布の製造方法であった。しかし、本発明の不織布の製造方法は、乾式による不織布の製造方法に適用することができる。たとえば、ウェブを支持体上に供給して、支持体上に繊維シートを形成し、繊維シートの一部に、繊維シートの水分率よりも高い水分率に水分率を上昇させた領域を形成し、繊維シートの水分率を上昇させた領域に高圧水蒸気を噴射するようにしてもよい。また、高圧水蒸気を繊維シートに噴射したとき、繊維シートが高圧水蒸気によって吹き飛んでしまうのを防ぐために、高圧水蒸気を繊維シートに噴射する前に高圧水流を繊維シートに噴射してもよい。
実施形態と変形例の一つ、もしくは複数を組み合わせることも可能である。変形例同士をどのように組み合わせることも可能である。
以上の説明はあくまで一例であり、発明は、上記の実施形態に何ら限定されるものではない。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
実施例および比較例において、蒸気吹付け前繊維シート水分率、繊維シート目付、繊維シート厚み、乾燥引張強度、乾燥引張伸度、湿潤引張強度および湿潤引張伸度を、以下のようにして測定した。
(蒸気吹付け前繊維シート水分率)
図1に示す不織布製造装置1において、スプレー23から水を放射された繊維シート24をサンプリングし、サンプリングした繊維シート24の中から、水が放射された領域を切り出した後、切り出したサンプル片の質量(W1)を測定した。その後、サンプル片を105℃の恒温槽に1時間静置し、さらに乾燥させた後、サンプル片の質量(D1)を測定した。そして、下記の式を用いて蒸気吹付け前繊維シート水分率を算出した。
蒸気吹付け前繊維シート水分率=(W1−D1)/W1×100(%)
10個のサンプル片の蒸気吹付け前繊維シート水分率の平均値をそのサンプル片に対応する実施例または比較例の蒸気吹付け前繊維シート水分率とした。
(繊維シート目付)
乾燥ドライヤー20で乾燥された繊維シート24をサンプリングし、30cm×30cmのサイズに切り出して、サンプル片を作製した。その後、サンプル片を105℃の恒温槽に1時間静置し、さらに乾燥させた後、サンプル片の質量を測定した。そして、測定したサンプル片の質量をサンプル片の面積で割り算して繊維シート目付を算出した。
10個のサンプル片の繊維シート目付の平均値をそのサンプル片に対応する実施例または比較例の繊維シート目付とした。
(繊維シート厚み)
15cm2の測定子を備えた厚み計((株)大栄化学精器製作所製 型式FS-60DS)を使用して、3g/cm2の測定荷重の測定条件で、製造した不織布の厚みを測定した。1つの測定用試料について3ヶ所の厚みを測定し、3ヶ所の厚みの平均値をその不織布に対応する実施例または比較例の繊維シート厚みとした。
(乾燥引張強度)
製造した不織布から、長手方向が繊維シートの機械方向(MD)である25mm幅の短冊状の試験片と、長手方向が繊維シートの幅方向(CD)である25mm幅の短冊状の試験片とを切り取ることによって測定用試料を作製した。3つの機械方向(MD)の測定用試料および3つの幅方向(CD)の測定用試料のそれぞれの引張強度を、最大荷重容量が50Nであるロードセルを備えた引張試験機(島津製作所(株)製、オートグラフ 型式AGS-1kNG)を使用して、100mmのつかみ間距離および100mm/分の引張速度の条件で測定した。3つの測定用試料の引張強度の平均値をその測定用試料に対応する実施例または比較例の乾燥引張強度とした。
(乾燥引張伸度)
製造した不織布から、長手方向が繊維シートの機械方向(MD)である25mm幅の短冊状の試験片と、長手方向が繊維シートの幅方向(CD)である25mm幅の短冊状の試験片とを切り取ることによって測定用試料を作製した。3つの機械方向(MD)の測定用試料および3つの幅方向(CD)の測定用試料のそれぞれの引張伸度を、最大荷重容量が50Nであるロードセルを備えた引張試験機(島津製作所(株)製、オートグラフ 型式AGS-1kNG)を使用して、100mmのつかみ間距離および100mm/分の引張速度の条件で測定した。ここで、引張伸度とは、引張試験機で測定用試料を引っ張ったときの最大の伸び(mm)をつかみ間距離(100mm)で割り算した値である。3つの測定用試料の引張伸度の平均値をその測定用試料に対応する実施例または比較例の乾燥引張伸度とした。
(湿潤引張強度)
製造した不織布から、長手方向が繊維シートの機械方向(MD)である25mm幅の短冊状の試験片と、長手方向が繊維シートの幅方向(CD)である25mm幅の短冊状の試験片とを切り取り、切り取った試験片の質量の2.5倍の水をその試験片に含浸させる(含水倍率、250%)ことによって測定用試料を作製した。3つの機械方向(MD)の測定用試料および3つの幅方向(CD)の測定用試料のそれぞれの引張強度を、最大荷重容量が50Nであるロードセルを備えた引張試験機(島津製作所(株)製、オートグラフ 型式AGS-1kNG)を使用して、100mmのつかみ間距離および100mm/分の引張速度の条件で測定した。3つの測定用試料の引張強度の平均値をその測定用試料に対応する実施例または比較例の湿潤引張強度とした。
(湿潤引張伸度)
製造した不織布から、長手方向が繊維シートの機械方向(MD)である25mm幅の短冊状の試験片と、長手方向が繊維シートの幅方向(CD)である25mm幅の短冊状の試験片とを切り取り、切り取った試験片の質量の2.5倍の水をその試験片に含浸させる(含水倍率、250%)ことによって測定用試料を作製した。3つの機械方向(MD)の測定用試料および3つの幅方向(CD)の測定用試料のそれぞれの引張伸度を、最大荷重容量が50Nであるロードセルを備えた引張試験機(島津製作所(株)製、オートグラフ 型式AGS-1kNG)を使用して、100mmのつかみ間距離および100mm/分の引張速度の条件で測定した。3つの測定用試料の引張伸度の平均値をその測定用試料に対応する実施例または比較例の湿潤引張伸度とした。
以下、実施例および比較例の作製方法について説明する。
(実施例1)
図1に示す本発明の一実施形態における不織布製造装置1を使用して実施例1を作製した。70重量%の針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)と、繊度が1.1dtexであり、繊維長が7mmである30重量%のレーヨン(ダイワボウレーヨン(株)製、コロナ)とを含む抄紙原料を作製した。抄紙原料の坪量は45g/m2であった。そして、原料ヘッド11を使用して繊維シート形成ベルト16(日本フィルコン(株)製 OS80)上に抄紙原料を供給し、吸引ボックス15を使用して抄紙原料を脱水して繊維シート24を形成した。このときの繊維シート24の繊維シート水分率は80%であった。その後、2台の高圧水流ノズル12を使用して高圧水流を繊維シート24に噴射した。2台の高圧水流ノズル12を使用して繊維シート24に噴射した高圧水流の高圧水流エネルギーは0.46kW/m2であった。ここで、高圧水流エネルギーは下記の式から算出される。
高圧水流エネルギー(kW/m2)=1.63×噴射圧力(kg/cm2)×噴射流量(m3/min)/処理速度(m/min)
ここで、噴射圧力(kg/cm2)=750×オリフィス開孔総面積(m2)×噴射圧力(kg/cm2)×0.495
また、高圧水流ノズル12の先端と繊維シート24の上面との間の距離は10mmであった。さらに、高圧水流ノズル12の穴径は92μmであり、穴ピッチは0.5mmであった。
繊維シート24は、2台の繊維シート搬送コンベア18,19に転写された後、120℃に加熱されたヤンキードライヤー20に転写され、繊維シート24の水分率が8%以下になるように乾燥された。
次に、スプレー23から繊維シート24へ水を放射することによって、繊維シート24の一部に水分率を上昇させた複数の領域を形成した。スプレー23の穴径は200μmであり、スプレー23の穴ピッチは6mmであった。水分率を上昇させた領域における繊維シート24の蒸気吹付け前繊維シート水分率は40%であった。
次に、2台の蒸気ノズル14を使用して高圧水蒸気を繊維シート24の水分率を上昇させた領域に噴射した。このときの高圧水蒸気の蒸気圧力は0.7MPaであり、蒸気温度は190℃であった。また、蒸気ノズル14の先端と繊維シートの上面との間の距離は2mmであった。さらに、蒸気ノズルの穴の配置は、図10に示す穴の配置であり、蒸気ノズルの穴径は300μmであり、穴ピッチは2.0mmであった。また、サクションドラム13が繊維シートを吸引する吸引力は、−1kPaであった。サクションドラム13の外周にはステンレス製の18メッシュ開孔スリーブを使用した。高圧水蒸気を繊維シート24に噴射した後の水分率を上昇させた領域における繊維シート24の水分率は35%であった。
そして、繊維シート24は、150℃に加熱されたヤンキードライヤー22に転写され、繊維シート24の水分率が5%以下になるように乾燥された。乾燥した繊維シート24が実施例1となる。実施例1を製造するときのラインスピードは50m/minであった。
(実施例2)
実施例2は、スプレー23から繊維シート24へ放射される水の量を調整して、水分率を上昇させた領域における繊維シート24の蒸気吹付け前繊維シート水分率を60%とした点を除いて、実施例1の製造方法と同様な方法によって製造された。
(実施例3)
実施例3は、スプレー23から繊維シート24へ放射される水の量を調整して、水分率を上昇させた領域における繊維シート24の蒸気吹付け前繊維シート水分率を80%とした点を除いて、実施例1の製造方法と同様な方法によって製造された。
(比較例1)
比較例1は、スプレー23から繊維シート24へ水を放射しなかった点を除いて、実施例1の製造方法と同様な方法によって製造された。
(実施例4〜8)
実施例4〜8は、蒸気ノズル14の台数を1台とした点およびラインスピードを変更した点を除いて実施例1の製造方法と同様な方法によって製造された。
(実施例9〜13)
実施例9〜13は、蒸気ノズル14の台数を1台とした点、スプレー23から繊維シート24へ放射される水の量を調整して、水分率を上昇させた領域における繊維シート24の蒸気吹付け前繊維シート水分率を60%とした点およびラインスピードを変更した点を除いて実施例1の製造方法と同様な方法によって製造された。
(実施例14〜18)
実施例14〜18は、蒸気ノズル14の台数を1台とした点、スプレー23から繊維シート24へ放射される水の量を調整して、水分率を上昇させた領域における繊維シート24の蒸気吹付け前繊維シート水分率を80%とした点およびラインスピードを変更した点を除いて実施例1の製造方法と同様な方法によって製造された。
(実施例19〜22)
実施例19〜22は、ラインスピードを変更した点を除いて実施例1の製造方法と同様な方法によって製造された。
(実施例23〜26)
実施例23〜26は、スプレー23から繊維シート24へ放射される水の量を調整して、水分率を上昇させた領域における繊維シート24の蒸気吹付け前繊維シート水分率を60%とした点およびラインスピードを変更した点を除いて実施例1の製造方法と同様な方法によって製造された。
(実施例27〜30)
実施例27〜30は、スプレー23から繊維シート24へ放射される水の量を調整して、水分率を上昇させた領域における繊維シート24の蒸気吹付け前繊維シート水分率を80%とした点およびラインスピードを変更した点を除いて実施例1の製造方法と同様な方法によって製造された。
(実施例31,32)
実施例31,32は、蒸気ノズル14の台数を1台とし、さらに上下の位置関係を反対にした蒸気ノズル14とサンクションドラム13とをさらに設けた点、スプレー23から繊維シート24へ放射される水の量を調整して、水分率を上昇させた領域における繊維シート24の蒸気吹付け前繊維シート水分率を80%とした点およびラインスピードを変更した点を除いて実施例1の製造方法と同様な方法によって製造された。
以上の実施例および比較例の詳細な製造条件を表1〜3に示す。
Figure 0005787700
Figure 0005787700
Figure 0005787700
以上の実施例および比較例の、繊維シート厚み、乾燥引張強度、乾燥引張伸度、湿潤引張強度および湿潤引張伸度を表4〜6に示す。
Figure 0005787700
Figure 0005787700
Figure 0005787700
実施例1〜32のすべての繊維シート厚みは、比較例1の繊維シート厚みよりも大きい。また、実施例1〜32のすべての湿潤引張伸度は、比較例1の繊湿潤引張伸度よりも大きい。これより、本発明による不織布の製造方法によれば、嵩高であり、かつ湿潤の状態で柔軟性を有する不織布を製造できることがわかる。
さらに、繊維シート全体の水分率を40%にした試料(比較例2)を作製し、水蒸気を噴射した後の繊維シート全体の水分率を測定した。その結果、比較例1の水分率は31%であった。また、繊維シートの一部の領域の水分率が40%である実施例1に水蒸気を噴射した後の繊維シート全体の水分率を測定した。その結果、実施例1の水分率は18%であった。これより、本発明によって繊維シートの乾燥のために多大なエネルギーが必要とならないようにできることがわかる。
本発明の不織布の製造方法により製造された不織布は、クッキングペーパー、ペーパータオル、ティッシュ、濡れティッシュおよび掃除用不織布製品などとして好適に使用され得る。
1,1D 不織布製造装置
11 原料供給ヘッド
12 高圧水流ノズル
13 サクションドラム
14 蒸気ノズル
15 吸引ボックス
16 繊維シート形成コンベア
17 吸引ピックアップ
18,19 繊維シート搬送コンベア
20,22 乾燥ドライヤー
21 巻き取り機
23 スプレー
24 繊維シート
31 高圧水流
32 溝部
41 繊維シート形成ベルト
51 高圧水蒸気
52 溝部
54 高嵩部
241 水分率を上昇させた領域

Claims (7)

  1. 水分を含んだ抄紙原料を支持体上に供給して、該支持体上に繊維シートを形成する工程と、
    前記繊維シートを乾燥する工程と、
    前記繊維シートを乾燥する工程によって乾燥した繊維シートの一部に、前記繊維シートを乾燥する工程によって乾燥した繊維シートの水分率よりも高い水分率に水分率を上昇させた領域を形成する工程と、
    前記繊維シートの水分率を上昇させた領域に高圧水蒸気を噴射する工程とを含む、不織布の製造方法。
  2. 前記繊維シートを乾燥する工程の前に、高圧水流を繊維シートに噴射する工程をさらに含む請求項1に記載の不織布の製造方法。
  3. 前記繊維シートの水分率を上昇させた領域における繊維シートの水分率は、10%以上、80%以下である請求項1又は請求項2に記載の不織布の製造方法。
  4. 前記水分率を上昇させた領域を形成する工程は、スプレーを使用して水または水溶液を前記繊維シートに適用することによって、前記水分率を上昇させた領域を前記繊維シートの一部に形成する請求項1〜のいずれか1項に記載の不織布の製造方法。
  5. 前記スプレーは、水または水溶液を間欠的に放射できる請求項に記載の不織布の製造方法。
  6. 前記水分率を上昇させた領域を形成する工程は、水または水溶液が入っている管の水または水溶液を吐出する開口部に前記繊維シートを近接させることによって、前記水分率を上昇させた領域を前記繊維シートの一部に形成する請求項1〜のいずれか1項に記載の不織布の製造方法。
  7. 前記水分率を上昇させた領域を形成する工程は、外周面に水または水溶液をしみ出すパターン部を有するロールを含む水分付与ロールに前記繊維シートを通すことによって、前記水分率を上昇させた領域を前記繊維シートの一部に形成する請求項1〜のいずれか1項に記載の不織布の製造方法。
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