JP5775476B2 - 高炉羽口からの還元性ガス吹き込み方法及び吹き込みランス - Google Patents
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Description
ここで、炭素が主成分であるコークス及びPCに替わり、水素とメタンを大量に含むコークス炉ガス(以下、COGと記す。)、天然ガス(以下、LNGと記す。)、又は、COGを改質した水素ガス等を高炉に吹き込むことにより、高炉から排出される二酸化炭素の低減が期待できる。
転炉における上吹きランスは、多重管ランスから酸素、PC及びLNG等を転炉内の溶湯表面に吹き付けるものであり、底吹きランスは、多重管ランスから酸素、PC及びLNG等を転炉内の溶湯内に吹き込むものである。
これに対し、本発明が課題とする高炉へのCOG、LNG、又は、水素ガスの吹き込みは、高炉への熱風吹き込み管であるブローパイプに還元性ガス吹き込みパイプを挿入し、狭い羽口、およびレースウェイを通してCOG、LNG、又は、水素ガス等を還元ガスとして炉内に吹き込むことを目的とする。従って、高炉へのCOG、LNG、又は、水素ガスの吹き込みは、前記転炉における酸素、PC及びLNG等の吹き込みとは、産業上の利用分野が相違し、解決すべき課題も相違する。
又、高炉羽口からPCと共にCH4やH2などの還元性ガスを吹き込む場合、還元性ガス、送風空気中の酸素と接触すると、ガス−ガス反応となるため微粉炭に先行して燃焼してしまい、ガスはCO2やH2Oに酸化されて還元性を失う。一方、微粉炭はガスの方に酸素を取られて燃焼不足となり未燃チャーが残るなどの現象が起こる。そこで、吹き込まれた還元性ガスと送風中の酸素との接触をできるだけ避けて、送風中の酸素は、微粉炭との燃焼に優先させ、還元性ガスは、燃焼することなく還元性を保ったままレースウェイを抜けて高炉炉内に入ることが可能なランス構造が望ましい。
本発明の目的は、還元性ガスの還元性を保ったまま高炉炉内に入ることを可能にする高炉羽口からの還元性ガス吹き込み方法及び吹き込みランスを提供することである。
中心部管から還元性ガス、中間部管から窒素ガス、さらにその外側の外周部管から酸素富化した空気を吹き込むことを特徴とする高炉羽口からの還元性ガス吹き込み方法。
(2)前記3重管ランスの外周部管に合流する微粉炭吹き込み単管から微粉炭を吹き込むことを特徴とする(1)に記載の高炉羽口からの還元性ガス吹き込み方法。
(3)前記還元性ガスに対する前記窒素ガスの体積流量比率が1.25以上であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の高炉羽口からの還元性ガス吹き込み方法。
(4)高炉羽口から還元性ガスを吹き込む3重管ランスであって、前記3重管ランスの先端が羽口とすりあわされて接続されており、
中心部管から還元性ガス、中間部管から窒素ガス、さらにその外側の外周部管から酸素富化した空気を吹き込むことを特徴とする高炉羽口からの還元性ガス吹き込みランス。
(5)前記還元性ガス吹き込み用ランスの外周部管内に微粉炭吹き込みノズルを合流させることを特徴とする(4)に記載の高炉羽口からの還元性ガス吹き込みランス。
(6)前記還元性ガスに対する前記窒素ガスの体積流量比率が1.25以上であることを特徴とする(4)又は(5)に記載の高炉羽口からの還元性ガス吹き込みランス。
高炉羽口から3重管ランスを用いて還元性ガスを吹き込む実施形態である。中心部から還元性ガス、中間部から窒素、さらにその外側(外周部)から酸素富化した空気を吹き込む。還元性ガスとしては、COG、LNG、水素ガス又はメタンガス等がある。
図1に還元性ガス吹き込みの3重管ランスの一例を示す。還元性ガスは、中心部管1から吹き込まれ、窒素は、中間部管2から吹き込まれ、酸素富化した送風は、外周部管3から高炉内に吹き込まれる。中心部管1から吹き込まれた還元性ガスと、酸素富化した送風は、中間部管2から吹き込まれた窒素により遮断されているため、還元性ガスが早期に燃焼することは無い。そこで、還元性ガスは還元性を保ったままレースウェイを抜けて高炉炉内に入ることが可能となる。
[第二の実施形態]
高炉羽口から3重管ランスを用いて還元性ガスとPCを吹き込む実施形態である。中心部から還元性ガス、その中間部から窒素、さらにその外側(外周部)から酸素富化した空気を吹き込み、PCは、別の単管から吹き込む。PCの吹き込み量が多い場合は、PC吹き込み単管は、複数本になる。
図2にPC及び還元性ガス吹き込みの3重管ランスの一例を示す。還元性ガスは、中心部管1から吹き込まれ、窒素は、中間部管2から吹き込まれ、酸素富化した送風は、外周部管3から高炉内に吹き込まれ、PCは、PC吹き込み単管4から吹き込まれる。中心部管1から吹き込まれた還元性ガスと、酸素富化した送風は、中間部管2から吹き込まれた窒素により遮断されているため、還元性ガスが早期に燃焼することは無い。還元性ガスは還元性を保ったままレースウェイを抜けて高炉炉内に入ることが可能となる。そして、PCの燃焼は、酸素濃度が高い雰囲気で行われ、その結果、微粉炭のCが燃え残って炉芯に蓄積する量が減少する。
図4にレースウェイ模擬燃焼実験装置の温度計の配置を示す。(A)は側面図、(B)は平面図を示す。温度計9は、上下2段の合計10箇所を測定する。
(実施例1)
メタン及び水素から成る還元性ガスを羽口から吹き込む実験を行った。吹き込みの条件を表1に示す。比較例1(A)は、送風のみで、還元性ガス吹き込みが無い場合である。比較例2(B)は、送風ブローパイプの中にあるガス吹き込み単管から還元性ガスを吹き込む場合である。実施例1(C)は、本願請求項1に係る発明の3重管により、還元性ガスを吹き込む場合である。
実施例1(C)では、図2に示す還元性ガス吹き込みの3重管ランスを用いた。中心部管1から還元性ガス、中間部管2から窒素、外周部管3から酸素富化した空気を吹き込んだ。
まず、比較例1(A)について述べる。比較例1(A)で、酸素富化した送風によりコークスだけを燃焼させる場合は、次の反応が起きる。
C+O2→CO2 (1)
CO2+C→2CO (2)
コークスは、(1)式の発熱反応により燃焼し、燃焼による発熱でレースウェイ内のガス温度が上昇する。O2がほとんどなくなると(2)式の吸熱反応が起こって温度が低下するが、この反応は、比較的緩やかに起こる。その結果、図5のAに示すレースウェイ内の温度が測定された。
CH4+2O2→CO2+2H2O (4)
H2+1/2O2→H2O (5)
H2O+C→H2+CO (3)
CH4+CO2→ CO+2H2 (6)
吹き込まれたCH4、H2ガスは、コークスの燃焼に先行して、(4)式、(5)式の反応により燃焼発熱し、その後、(1)式によるコークスの燃焼も加速して高温になる。レースウェイ内の最高温部は、早期に燃焼する還元性ガスにより、比較例1(A)の場合よりも羽口側に移動する。最高温部より先のレースウェイ奥側では、(2)式、(3)式の吸熱反応が開始する。(2)式、(3)式の反応で生成した還元性ガス(CO,H2)およびレースウェイで昇温されたN2ガスは、(2)式、(3)式が吸熱反応であること、燃焼生成ガスから周囲のコークスに伝熱すること及び炉壁からの熱損失によりガス温度は低下していく。その結果、図5のBに示すレースウェイ内の温度が測定された。
中心部管1から吹き込まれた還元性ガス(CH4,H2)は、中間部管2から吹き込まれた窒素ガスにより、外周部管3から吹き込まれた酸素富化空気(熱風)との接触が妨げられ燃焼が遅れる。その結果、コークスと酸素富化空気(熱風)の燃焼が先行し、比較例1(A)に近い温度分布となる。一部の吹き込みガスが酸素富化空気と反応するのでわずかに比較例1(A)から比較例2(B)のパターンに近づくが、比較例2(B)に比べると最高温部はかなり奥側に戻り、レースウェイ奥での温度降下も緩和されている。したがって、吹き込まれたH2は多くが(5)式から(3)式の反応経路を経ることなく未反応のH2のまま昇温し、CH4は(4)式から(2)式、(3)式の経路を経ることなくレースウェイ奥側で(6)式の反応により還元性ガスになっていると考えられる。
このためガスからのヒートロスが少なくなり、ボッシュガス((2)式(6)式の反応で生成した還元性ガス(CO,H2)および吹き込まれたH2ガスおよびレースウェイで昇温されたN2)の顕熱が多く確保できる。以上のことより、図5のCに示すレースウェイ内の温度が測定された。
メタン及び水素から成る還元性ガスとPCを羽口から吹き込む実験を行った。吹き込みの条件を表2に示す。比較例3(D)は、PCのみの吹き込みであり、還元性ガス吹き込みが無い場合である。比較例4(E)は、送風ブローパイプの中にある2重管の内管からPCを、外管から還元性ガスを吹き込む場合である。実施例2(F)は、本願請求項2に係る発明の3重管により、還元性ガスを吹き込む場合である。図2に示すPC及び還元性ガス吹き込みの3重管ランスを用いた。中心部管1から還元性ガス、中間部管2から窒素、さらに外周部管3から酸素富化した空気を吹き込み、PCは、別のPC吹き込み単管から吹き込む。中心部管1から吹き込まれた還元性ガスは、外周部管3から吹き込まれた酸素富化した送風と、中間部管2から吹き込まれた窒素により遮断されているため、還元性ガスが早期に燃焼することは無い。従って、PCの燃焼は、還元性ガスにより送風中の酸素がとられることが無いため、還元性ガスに先行して行われると考えられる。
PC+XO2→YCO2+ZH2O (7)
CO2+C→2CO (8)
H2O+C→H2+CO (9)
まずPCは、(7)式の反応で燃焼し、発熱によりガス温度が上昇する。O2がほとんどなくなると(8)式(9)式の吸熱反応が起こって温度が低下するが、この反応は、比較的緩やかに起こる。その結果、図6のDに示すレースウェイ内の温度が測定された。
CH4+2O2→CO2+2H2O (10)
H2+(1/2)O2→H2O (11)
吹き込まれた還元性ガス(CH4、H2)は、(10)式、(11)式の発熱反応で先行的に燃焼発熱し、(7)式によるPCの燃焼も加速して高温になる。レースウェイ内の最高温部は、比較例3(D)の場合よりも羽口側に移動する。最高温部より先のレースウェイ奥側では、(8)式、(9)式の吸熱反応が開始する。(8)式、(9)式の反応で生成した還元性ガス(CO,H2)およびレースウェイで昇温されたN2ガスは、(8)式、(9)式が吸熱反応であること、燃焼生成ガスから周囲のコークスに伝熱すること及び炉壁からの熱損失によりガス温度は低下していく。羽口からの距離が遠いレースウェイ奥側では比較例3(D)より温度が下がってしまう。その結果、図6のEに示すレースウェイ内の温度が測定された。
また、実験終了後に装置を解体してレースウェイ奥(炉芯)のコークス部位に残っていた未燃チャーを採取した。図7に微粉炭及び還元性ガス吹き込み時の未燃チャーの炉芯内残留量を示す。
比較例4(E)では、比較例3(D)に比べて多量の未燃チャーが残存していた。これは(10)式、(11)式の反応で酸素がガスの燃焼に先に消費されため、PCを燃やすための酸素が不足し、続いて起こる(8)式、(9)式の反応では、PC中のCより高温のコークスのCが先行して使われるため、PCのCが燃え残って炉芯に蓄積したものと推定される。
実験終了後に装置を解体してレースウェイ奥(炉芯)のコークス部位に残っていた未燃チャーを採取した。図7に示す実施例2(F)のFに示す未燃チャーは、比較例4(E)のEに比べて少なく、ほぼ比較例3(D)のDに近い量であった。微粉炭の燃焼が還元性ガスに酸素を取られて妨げられることなく、燃焼できたことを示している。
Claims (6)
- 高炉羽口から3重管ランスを用いて還元性ガスを吹き込む方法であって、前記3重管ランスの先端が羽口とすりあわされて接続されており、
中心部管から還元性ガス、中間部管から窒素ガス、さらにその外側の外周部管から酸素富化した空気を吹き込むことを特徴とする高炉羽口からの還元性ガス吹き込み方法。 - 前記3重管ランスの外周部管に合流する微粉炭吹き込み単管から微粉炭を吹き込むことを特徴とする請求項1に記載の高炉羽口からの還元性ガス吹き込み方法。
- 前記還元性ガスに対する前記窒素ガスの体積流量比率が1.25以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の高炉羽口からの還元性ガス吹き込み方法。
- 高炉羽口から還元性ガスを吹き込む3重管ランスであって、前記3重管ランスの先端が羽口とすりあわされて接続されており、
中心部管から還元性ガス、中間部管から窒素ガス、さらにその外側の外周部管から酸素富化した空気を吹き込むことを特徴とする高炉羽口からの還元性ガス吹き込みランス。 - 前記還元性ガス吹き込みランスの外周部管内に微粉炭吹き込み用ノズルを合流させることを特徴とする請求項4に記載の高炉羽口からの還元性ガス吹き込みランス。
- 前記還元性ガスに対する前記窒素ガスの体積流量比率が1.25以上であることを特徴とする請求項4又は5に記載の高炉羽口からの還元性ガス吹き込みランス。
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