JP5772155B2 - 鋼板用化粧シート及びそれを用いた化粧鋼板 - Google Patents
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Description
本発明者らは、上記問題点に対して、鋼板にラミネートして曲げ加工を行っても、曲面部にクラックが入らず、高い成形加工性を有するとともに、耐汚染性及び耐擦傷性を有する鋼板用化粧シートとして、2軸延伸ポリエステルフィルムからなる基材上に、ウレタン系樹脂組成物からなるプライマー層と電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化させた表面保護層をこの順に積層した鋼板用化粧シートを提案した(特許文献3参照)。
表面保護層を構成する電離放射線硬化性樹脂(以下、EB樹脂と称することがある。)単体では、ホワイトボードとしての十分な消去性能を得ることができず、表面エネルギーを下げるために添加剤を加えることが必要である。
代表的な添加剤であるシリコーン系樹脂は、微量の添加で優れたマーカー消去性を得ることができるが、一部の海外製マーカー(日本製に比べ揮発しにくい溶剤を使用)を使用した際にマーカーがはじくという問題があった。
またEB樹脂中にフィラーを用いない樹脂系(クリアー樹脂)との配合ではシリコーン樹脂がリフティングしやすくなり、表面が柚子肌状となることから外観上好ましくないとともに、製造時の環境(温度、湿度など)に依存しやすく、表面意匠が安定しないという問題があった。
このような問題を解決するために、さらに研究を進めた結果、EB樹脂に対して、レベリング剤としてアクリル骨格を有する樹脂を特定の割合で配合することにより、ホワイトボードマーカー筆記消去性と表面意匠安定性に優れる鋼板用化粧シートが得られることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
[1]基材上に、少なくともプライマー層と表面保護層をこの順に有する鋼板用化粧シートであって、基材が2軸延伸ポリエステルフィルムからなり、プライマー層がウレタン系樹脂組成物からなり、表面保護層が電離放射線硬化性樹脂組成物の架橋硬化物であり、
(1)前記表面保護層が、レベリング剤としてアクリル骨格を有する樹脂を、電離放射線硬化性樹脂100質量部に対して0.1〜4.0質量部の割合で含有し、
(2)該アクリル骨格を有する樹脂の構成単位として、ヒドロキシ基を有しない(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含み、且つ(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル及び芳香族ビニル化合物の中から選ばれる少なくとも一種を含むポリ(メタ)アクリレートであることを特徴とする鋼板用化粧シート、及び
[2]上記[1]に記載の鋼板用化粧シートを鋼板上に有する化粧鋼板、
を提供するものである。
[鋼板用化粧シート]
本発明の鋼板用化粧シートは、基材上に、少なくともプライマー層と表面保護層をこの順に有する鋼板用化粧シートであって、基材が2軸延伸ポリエステルフィルムからなり、プライマー層がウレタン系樹脂組成物からなり、表面保護層が電離放射線硬化性樹脂組成物の架橋硬化物であり、
(1)前記表面保護層が、レベリング剤としてアクリル骨格を有する樹脂を、電離放射線硬化性樹脂100質量部に対して0.1〜4.0質量部の割合で含有し、
(2)該アクリル骨格を有する樹脂の構成単位として、ヒドロキシ基を有しない(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含み、且つ(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル及び芳香族ビニル化合物の中から選ばれる少なくとも一種を含むポリ(メタ)アクリレートであることを特徴とする。
本発明の化粧シート20における基材1は、少なくとも2軸延伸ポリエステルフィルムからなる。ここで用いられるポリエステル樹脂としては特に限定されず、化粧シートの分野で通常用いられているものが使用できる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」ということがある。)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリカーボネート、エチレンテレフタレート−イソフタレート共重合体、ポリアリレート等が挙げられる。この中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が好ましく、特にポリエチレンテレフタレートが好ましい。
2軸延伸されたポリエステル樹脂フィルムを基材1として用いることで、後に詳述する表面保護層4の伸びを抑制することができ、表面保護層4のクラック発生を抑制することができる。
また、基材1に用いられる2軸延伸されたポリエステル樹脂フィルムは、JIS C2151に準拠して測定した引張強度が150MPa以上であることが好ましい。
引張強度が150MPa以上であると、高剛性であるため、曲げ加工部において発生する局部的な伸びが抑制でき、その上層の表面保護層の伸びも抑制することができる。
これらの無機充填剤の含有量は、基材1に対して5〜60質量%の範囲が好ましい。
また、紫外線吸収剤及び光安定剤については、後に詳述する本発明の表面保護層4を構成する樹脂組成物に添加し得るものと同様のものを使用することができる。
この隠蔽層は、基材1が透明である場合及び基材1が隠蔽着色されている場合でも、隠蔽性を安定化するために形成することができる。
当該隠蔽層を構成するフィルム5の材質としては特に限定されず、塩化ビニル樹脂フィルム、オレフィンフィルム、ポリエステルフィルム等を用いることができる。これらのうち、表面保護層4のクラック発生を抑制する観点からは、基材1と同様の2軸延伸PETフィルム等のポリエステルフィルムを用いるのが好適である。また、隠蔽性、意匠性、クッション性、さらには環境を考慮すると、オレフィンフィルム、特にポリプロピレンフィルムが好ましい。
当該隠蔽層を構成するフィルム5の厚さとしては、特に制限はないが25〜100μmの範囲が好ましい。25μm以上であると十分な隠蔽効果が得られ、100μm以下であると曲率の関係で表面保護層4が必要以上に伸ばされることがなく、クラック発生をより抑制することができる。
接着剤層6の厚さは特に制限はないが、通常、乾燥後の厚さが3〜50μmの範囲である。
本発明の化粧シート20はウレタン系樹脂組成物からなるプライマー層3を有する。ウレタン系樹脂組成物は柔軟性、強靭性及び弾性を兼ね備えており、このようなウレタン系樹脂組成物を用いて軟質プライマー層3を設けることにより曲げ加工性が向上する。即ち、曲げ加工時に表面保護層4にかかる衝撃、引張力又はせん断力を緩和することができ、表面保護層4におけるクラックの発生を抑制することができる。これらの観点からプライマー層3は表面保護層4に隣接する層であることが好ましい。
ここで使用されるウレタン系樹脂組成物は、JIS K 6732に準拠して測定した、JIS K7100に規定する標準温度状態2級(23±2℃)における伸びが300%以上であることが好ましい。該伸びが300%以上であると、曲げ加工時に表面保護層4にかかる衝撃、引張力又はせん断力を十分に緩和することができる。以上の観点から、該伸びは400%以上がさらに好ましく、500%以上がさらに好ましい。また、ガラス転移点(Tg)は、鋼板用化粧シートに必要十分な柔軟性・強靭性・弾性に加えて、低温下での曲げ加工性を付与するとの観点から、−20℃以下であることが好ましい。
一方、耐水性が特に要求される場合などは、上記伸び率、Tgを満足しつつ、ある程度架橋構造を有するウレタン樹脂が好適であり、特に強靭性が要求される場合には、ポリエステルウレタン、ポリカーボネートウレタンが好適である。
ここで用いられるポリオールとしては、公知のポリオールを用いることができ、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリアルキレンポリオール及びポリカーボネートポリオール等が挙げられる。
ポリエステルポリオールとして、ポリ(エチレンアジペート)、ポリ(ブチレンアジペート)、ポリ(ネオペンチルアジペート)、ポリ(ヘキサメチレンアジペート)、ポリ(ブチレンアゼラエート)、ポリ(ブチレンセバケート)、ポリカプロラクトン等のポリエステルジオールが挙げられる。
上述したこれらのポリオールは、イソシアネート化合物との反応に際し、単独で用いられても良く、2種以上を混合して用いられても良い。
以上のように本発明で用いられるウレタン系樹脂としては、ポリカーボネートポリオールとジイソシアネートとの反応により得られるウレタンポリカーボネート、及びポリエステルポリオールとジイソシアネートとの反応により得られるポリエステルウレタンが最も好ましい態様である。
なお、化粧シートの生産工程におけるブロッキングを抑制するため、プライマー層3にシリカを含有させることもできる。シリカの含有量としては、ブロッキング性を防止しうる範囲で特に制限されないが、通常0.5〜10質量%程度である。
また、プライマー層3には、本発明の効果を阻害しない範囲で紫外線吸収剤を含んでも良い。紫外線吸収剤を含む場合は、経時による表面の変色を防止する点で望ましい。
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾエート系化合物、トリアジン系化合物などが好ましく挙げられる。
また、プライマー層3を形成するウレタン樹脂組成物の塗布量は、通常0.5〜10g/m2の範囲であり、より好ましくは1〜5g/m2の範囲である。
本発明においては、所望により、基材1とプライマー層3との間に中間層2を設けても良い。特に、プライマー層3に軟質プライマー層として高い伸びを付与するために、顔料などの着色剤を含有しない場合は、着色層として中間層2を設けることが好ましい。
中間層2に用いられる樹脂組成物は限定されないが、ウレタン系樹脂組成物であることが好ましい。また、着色剤を含有することができる。着色剤としては特に限定されず、基材1の着色に用いることのできるものと同様のもの、またカーボンブラックなどを挙げることができる。
本発明においては、中間層2は、チタン白などの無機顔料を含むウレタン系樹脂組成物からなる全面白色層であることが好ましい。この場合は、無機顔料の含有量としては、ウレタン系樹脂100質量部に対して5〜300質量部の範囲であることが好ましい。5質量部以上であると、無機顔料としての効果を十分に発揮することができる。一方、無機顔料の含有量が多すぎると、ウレタン系樹脂組成物の伸び率が低下するが、300質量部以下であれば、伸び率が低下しても十分な強靭性が保たれる。
無機顔料の粒径については、粒径が5μm以下であることが好ましい。5μm以下であると該無機粒子を起点としてクラックが入るという不具合がない。以上の点からさらに粒径は2μm以下であることが好ましい。
また、中間層2を形成する樹脂組成物の塗布量は、通常0.5〜10g/m2の範囲であり、より好ましくは1〜5g/m2の範囲である。
本発明の化粧シート20においては、基材1と中間層2の間、もしくは中間層2とプライマー層3の間、又は基材1と隠蔽層を構成するフィルム5との間に絵柄模様層を設けても良い(図示せず)。絵柄模様層は、化粧シート20及び化粧鋼板に所望の絵柄による意匠性を付与するものであり、絵柄の種類等は特に制限はない。
絵柄模様層の形成方法は特に限定されず、例えば、公知の着色剤(染料又は顔料)を公知の結着材樹脂とともに溶剤(又は分散媒)中に溶解(又は分散)させて得られる着色インキ、コーティング剤等を用いた印刷法などにより形成すれば良い。
絵柄模様層の形成に用いる印刷法としては、例えば、公知の各種印刷法や各種コーティング法が挙げられる。
絵柄模様層の厚さは特に限定されず、製品特性に応じて適宜設定できるが、乾燥後の層厚で0.1〜10μm程度である。
本発明の鋼板用化粧シート20において、前述したプライマー層3上に設けられる表面保護層4は、電離放射線硬化性樹脂組成物の架橋硬化物であって、レベリング剤としてアクリル骨格を有する樹脂を、電離放射線硬化性樹脂100質量部に対して0.1〜4.0質量部の割合で含有する。
ここで、レベリング剤とは、表面保護層の表面エネルギーを下げるために電離放射線硬化性樹脂組成物に加えられる添加剤を指し、電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋しうるエネルギー量子を有するものを意味し、通常紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるが、その他、X線、γ線などの電磁波、α線、イオン線などの荷電粒子線も使用可能である。また、電離放射線硬化性樹脂組成物とは、上記電離放射線を照射することにより、架橋、硬化する樹脂組成物を指す。具体的には、従来電離放射線硬化性樹脂として慣用されている重合性モノマー及び重合性オリゴマーないしはプレポリマーの中から適宜選択して用いることができる。
電離放射線硬化性樹脂とは、電磁波または荷電粒子線の中で分子を架橋、重合させ得るエネルギー量子を有するもの、すなわち、紫外線または電子線などを照射することにより、架橋、硬化する樹脂を指す。具体的には、従来電離放射線硬化性樹脂として慣用されている重合性モノマー及び重合性オリゴマーないしはプレポリマーの中から適宜選択して用いることができる。
代表的には、重合性モノマーとして、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート系モノマーが好適であり、中でも多官能性(メタ)アクリレートが好ましい。なお、ここで「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート又はメタクリレート」を意味し、他の類似するものも同様の意である。多官能性(メタ)アクリレートとしては、分子内にエチレン性不飽和結合を2個以上有する(メタ)アクリレートであればよく、特に制限はない。これらの多官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
さらに、重合性オリゴマーとしては、他にポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリレート基をもつ疎水性の高いポリブタジエン(メタ)アクリレート系オリゴマー、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーン(メタ)アクリレート系オリゴマー、小さな分子内に多くの反応性基をもつアミノプラスト樹脂を変性したアミノプラスト樹脂(メタ)アクリレート系オリゴマー、あるいはノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテル等の分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマーなどがある。
電離放射線硬化性樹脂組成物として紫外線硬化性樹脂組成物を用いる場合には、光重合用開始剤を樹脂組成物100質量部に対して、0.1〜5質量部程度添加することが望ましい。光重合用開始剤としては、従来慣用されているものから適宜選択することができ、特に限定されない。
また、本発明の鋼板用化粧シートでは、電離放射線硬化性樹脂組成物にイソシアネート系硬化剤を含有することが好ましい。イソシアネート系硬化剤を含有することで、プライマー層3との密着性が向上し、さらには電離放射線硬化性樹脂組成物相互間の接着性が向上するので、時間が経過しても、曲げ加工性、優れた耐汚染性及び耐擦傷性などの性能低下を抑制し得る。
ここで用いられるイソシアネート系硬化剤としては、ヘキサメチレンジイソシアネートHMDI系硬化剤が好ましい。また、上述したプライマー層3で用いられるのと同様に、末端イソシアネートプレポリマーも好ましく、さらにはウレタンポリカーボネートが好ましい。これらを用いることで、プライマー層3との密着性がより高くなる。
本発明の鋼板用化粧シート20において、表面保護層4に含まれるレベリング剤は、当該鋼板用化粧シート20を鋼板用ホワイトボード化粧シートとして用いる場合、優れた筆記消去性、特に繰り返し消去性と、表面意匠安定性を付与するために用いられる。
本発明においては、このレベリング剤として、アクリル骨格を有する樹脂であって、その構成単位として、ヒドロキシ基を有しない(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含み、且つ(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル及び芳香族ビニル化合物の中から選ばれる少なくとも一種を含むポリ(メタ)アクリレートを用いる。
本発明においては、アクリル骨格を有する樹脂の構成単位として、前記ヒドロキシ基を有しない(メタ)アクリル酸アルキルエステルに加えて、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル及び芳香族ビニル化合物の中から選ばれる少なくとも一種を含む。
また、アクリル骨格を有する樹脂の構成単位である芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン及びα−メチルスチレンなどを挙げることができる。
なお、上記数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定される標準ポリスチレン換算の値である。
また、表面保護層4における当該レベリング剤の含有量は、本発明の鋼板用化粧シート20を鋼板用ホワイトボード化粧シートとして用いる場合におけるマーカー消去性及び繰り返し消去性などの観点から、電離放射線硬化性樹脂100質量部に対して、0.1〜4.0質量部であることを要し、0.2〜2.0質量部であることが好ましい。
ここで、耐候性改善剤としては、紫外線吸収剤や光安定剤を用いることができる。紫外線吸収剤としては、例えばベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤等が挙げられる。一方、光安定剤としては、例えばヒンダードアミン系等が挙げられる。
ここで、引張試験方法は、厚さ90μmのポリプロピレンフィルムに電離放射線硬化性樹脂組成物を厚さ3.5μmとなるように塗布、硬化させた後、温度25℃、引張速度50mm/分で引張試験を行い破断する際の伸び率を測定する方法である。硬化条件としては、用いる電離放射線樹脂に応じ、完全硬化する条件を選択すれば良い。完全硬化とは、電離放射線硬化性樹脂中の電離放射線反応性基が全て反応し、電離放射線硬化性樹脂が完全に硬化した状態をいう。また、引張試験に用いる装置としては、例えば、ORIENTEC社製「RTC-1250A」を用いることができる。
前述した電子線硬化性樹脂である重合性モノマーや重合性オリゴマー、レベリング剤であるアクリル骨格を有する樹脂(ポリ(メタ)アクリレート)及び各種添加剤を、それぞれ所定の割合で均質に混合し、電子線硬化性樹脂組成物からなる塗布液を調製する。この塗布液の粘度は、後述の塗布方式により、基材の表面に未硬化樹脂層を形成し得る粘度であれば良く、特に制限はない。
本発明においては、このようにして調製された塗布液を、基材上に設けられたプライマー層3の表面に、硬化後の厚さが1〜20μm程度になるように、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコートなどの公知の方式、好ましくはグラビアコートにより塗布し、未硬化樹脂層を形成させる。
硬化後の好ましい膜厚は、1〜20μmの範囲で、用いる樹脂の種類に応じて適宜決定される。樹脂組成が硬い系で構成される場合は、膜厚は比較的薄い方が表面保護層のクラックは生じにくく、逆に樹脂組成が柔らかい系である場合には、膜厚は比較的厚い方が表面保護層のクラックは生じにくい。
なお、電子線の照射においては、加速電圧が高いほど透過能力が増加するため、基材として電子線により劣化する基材を使用する場合には、電子線の透過深さと樹脂層の厚みが実質的に等しくなるように、加速電圧を選定することにより、基材への余分の電子線の照射を抑制することができ、過剰電子線による基材の劣化を最小限にとどめることができる。
また、照射線量は、樹脂層の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5〜300kGyの範囲で選定される。
本発明の鋼板用化粧シート20は、折り曲げ加工しても最表層の表面保護層にクラックが発生しない上、表面保護層に、アクリル骨格を有する樹脂からなるレベリング剤を含有することで、優れた筆記消去性、特に繰り返し消去性と、表面意匠安定性が付与されてなる鋼板用ホワイトボード化粧シートとして好適なものになる。
[化粧鋼板]
本発明の化粧鋼板は、前述した本発明の化粧シート20を鋼板上に有することを特徴とする。被着体となる鋼板としては、鉄、アルミニウム、銅などの金属材料が挙げられ、これらは溶融亜鉛メッキ処理や電気亜鉛メッキ処理などの表面処理が施されていても良い。また、被着体の形状は特に限定されず、例えば、平板、曲面板、多角柱などの形状を任意に採用できる。
また、鋼板の厚さについては特に制限はないが、通常0.2〜1mm程度である。なお、被着体である鋼板は隠蔽性を付与するために、鋼板に直接着色してコーティング層を設けても良い。
また、架橋剤を添加することもでき、具体的にはイソシアネート系や金属キレート、エポキシ系、およびメラミン系が挙げられる。
該接着剤又は粘着剤の厚さについては、特に制限はないが、通常、1〜100μmの範囲である。
<化粧シートの評価方法>
(1)表面意匠性
化粧シートの表面意匠を下記基準にて判定した。
○:表面状態が平滑であり、表面意匠性に優れたもの。
△:表面が若干ユズ肌状になるが、表面意匠を損なうとまではいえないもの。
×:表面がユズ肌状になり、表面意匠性を大きく損なうもの
(2)マーカー筆記性(ハジキ)
ホワイトボードマーカーとしてサンフォード製「エキスポ ローオーダー 太字 黒」を用い、化粧シート表面に描画した後、マーカーのはじき(弾き)の程度を下記基準にて判定する。
○:化粧シート上にマーカーが弾かないもの
×:化粧シート上にマーカーが弾くもの
(3)マーカー消去性
ホワイトボードマーカーとして、ぺんてる株式会社製「ホワイトボードマーカー ノックル 太字丸芯 黒」を用い、化粧シート表面に描画した後、室温環境下で24時間乾燥させる。次にイレーサーとして株式会社マグエックス製「マグネットイレーサー」を用い、荷重20g/cm2にて2往復回消去した後のマーカーの残存状態について、下記基準にて判定する。
◎:化粧シート上のマーカー残存率が5%未満のもの
○:化粧シート上のマーカー残存率が5%以上10%以下未満のもの
△:化粧シート上のマーカー残存率が10%以上50%未満のもの
×:化粧シート上のマーカー残存率が50%以上のもの
(4)繰り返し消去性
ホワイトボードマーカーとして、ぺんてる株式会社製「ホワイトボードマーカー ノックル 太字丸芯 黒」を用い、化粧シート表面に描画した後、室温環境下で1分間乾燥させた後。イレーサーとして株式会社マグエックス製「マグネットイレーサー」を用い、荷重50g/cm2にて消去する。
この作業を200回繰り返した後の表面の汚染度合いについて、試験開始前の化粧シートをブランクとし、色差測定にて評価する。
○:ΔEが1.0未満のもの
×:ΔEが1.0以上のもの
(5)鋼板曲げ加工性
JIS K 6744に準拠し、試験温度25±5℃、外側半径1.50mmでの90度曲げ試験を実施した後の加工部分を観察する。
○:クラックが発生しないもの
×:クラックが発生するもの
東ソー(株)製高速GPC装置を用いた。用いたカラムは東ソー(株)製、商品名「TSKgel αM」であり、溶媒は、クロロホルムを用い、カラム温度40℃、流速0.5cm3/minで測定を行った。尚、本発明における分子量及び分子量分布は標準ポリスチレン換算を行った。
基材1として、厚さ50μmの2軸延伸透明PETフィルム(東洋紡績(株)製「コスモシャインA4300」)を用い、その裏側に接着剤であるポリエステルウレタン樹脂(大日精化工業(株)製「E−295L)」(商品名))6を介して、厚さ60μmの隠蔽層を構成するポリプロピレンフィルム(三菱化学MKV(株)製「PB−013」(商品名))5を貼付した積層フィルム10を用意した。
この積層フィルムの表面側に、ウレタン樹脂をバインダーとし、チタン白(酸化チタン、粒径0.2〜0.3μm)を50質量%含有させたインキ(DICグラフィックス(株)製 「ILPA白」(商品名))を塗布量2.1g/m2で塗布し、中間層2を形成した。
次にテレフタル酸、イソフタル酸、及びセバシン酸からなる多価カルボン酸とネオペンチルグリコール、エチレングリコールからなるポリオールを反応させて得られたポリエステルポリオール(大日精化工業(株)製「E−256−40」)100質量部、イソシアネート系硬化剤「C−55」3質量部、粒径5μmの未処理シリカ2質量部からなる樹脂を塗布量1.5g/m2で塗布してプライマー層3として軟質プライマー層を形成した。プライマー層3を構成するウレタン系樹脂組成物の標準温度状態2級(23±2℃)における伸びは710%であった。中間層2の厚さは1.2μmであり、プライマー層3の厚さは1.0μmであった。
次に、プライマー層(軟質プライマー層)3の上に3官能アクリレートモノマーであるエチレンオキサイド変性トリメチロールプロパンエチレンオキサイドトリアクリレートを60質量部と6官能アクリレートモノマーであるジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを40質量部(+希釈溶剤酢酸エチル33質量部)からなる電離線硬化性樹脂[EB樹脂](DICグラフィックス製「WBW−C」;樹脂分=75質量%、平均官能基数=3.6)に、構成単位として、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、スチレン及びα−メチルスチレンを有するレベリング剤のアクリル系樹脂(W−1)を0.2質量部、ヘキサメチレンジイソシアネートHMDI系硬化剤を3質量部添加してなる電子線硬化性樹脂組成物をグラビアダイレクトコータ法により2.0g/m2(層厚さ2.0μm)塗布した。塗布後、加速電圧165kV、照射線量50kGy(5Mrad)の電子線を照射して、電子線硬化性樹脂組成物を硬化させて、表面保護層4とした。次いで、70℃で24時間の養生を行い、本発明の化粧シートを得た。
該化粧シートをウレタン系の接着剤を用いて厚さ0.4mmの亜鉛メッキ鋼板に貼付し、本発明の化粧鋼板を得た。
第1表にレベリング剤のアクリル系樹脂(W−1)の性状として、樹脂の構成単位と共に、Mn、Mw及びMw/Mn比を示し、第2表に上記化粧シートの評価結果を示す。
レベリング剤として、第1表に示す性状を有するアクリル系樹脂(W−2)を用いた以外は、実施例1と同様な材料を用いて同様な操作を行い、本発明の化粧シート及び本発明の化粧鋼板を得た。
第2表に上記化粧シートの評価結果を示す。
レベリング剤として、第1表に示す性状を有するアクリル系樹脂(W−3)を用いた以外は、実施例1と同様な材料を用いて同様な操作を行い、本発明の化粧シート及び本発明の化粧鋼板を得た。
第2表に上記化粧シートの評価結果を示す。
レベリング剤として、第1表に示す性状を有するアクリル系樹脂(W−1)を用い、かつその添加量をEB樹脂の樹脂分100質量部に対して、2.0質量部とした以外は、実施例1と同様な材料を用いて同様な操作を行い、本発明の化粧シート及び本発明の化粧鋼板を得た。
第2表に上記化粧シートの評価結果を示す。
レベリング剤として、第1表に示す性状を有するポリエステルアクリレート(W−4)を用いた以外は、実施例1と同様な材料を用いて同様な操作を行い、化粧シート及び化粧鋼板を得た。
第2表に上記化粧シートの評価結果を示す。
レベリング剤として、第1表に示す性状を有するアクリル系樹脂(W−5)を用いた以外は、実施例1と同様な材料を用いて同様な操作を行い、化粧シート及び化粧鋼板を得た。
第2表に上記化粧シートの評価結果を示す。
レベリング剤として、シリコーン−酢酸ビニル共重合樹脂(W−6)を用いた以外は、実施例1と同様な材料を用いて同様な操作を行い、化粧シート及び化粧鋼板を得た。
第2表に上記化粧シートの評価結果を示す。
レベリング剤の添加量を、EB樹脂の樹脂分100質量部に対して、5.0質量部に変更した以外は、実施例1と同様な材料を用いて同様な操作を行い、化粧シート及び化粧鋼板を得た。
第2表に上記化粧シートの評価結果を示す。
レベリング剤を用いなかったこと以外は、実施例1と同様な材料を用いて同様な操作を行い、化粧シート及び化粧鋼板を得た。
第2表に上記化粧シートの評価結果を示す。
レベリング剤として、本発明の要件を満たすアクリル樹脂を用い、かつその添加量がEB樹脂100質量部に対して、0.1〜4.0質量部の範囲にある実施例1〜4の化粧シートの各評価結果は、いずれも「○」又は「◎」であり合格である。それに対し、レベリング剤として、本発明の要件を満たさない樹脂を用いた比較例1〜3、本発明の要件を満たすアクリル樹脂を用いているが、その添加量が4.0質量部を超える比較例4及びレベリング剤無添加の比較例5は、いずれも化粧シートの各評価結果の内の二つが「×」か「×」、「△」であり、不合格である。
[符号の説明]
10 積層フィルム
1 基材
2 中間層
3 プライマー層
4 表面保護層
5 隠蔽層を構成するフィルム
6 接着剤層
Claims (5)
- 基材上に、少なくともプライマー層と表面保護層をこの順に有する鋼板用化粧シートであって、基材が2軸延伸ポリエステルフィルムからなり、プライマー層がウレタン系樹脂組成物からなり、表面保護層が電離放射線硬化性樹脂組成物の架橋硬化物であり、
(1)前記表面保護層が、レベリング剤としてアクリル骨格を有する樹脂を、電離放射線硬化性樹脂100質量部に対して0.1〜4.0質量部の割合で含有し、
(2)該アクリル骨格を有する樹脂の構成単位として、ヒドロキシ基を有しない(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含み、且つ(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル及び芳香族ビニル化合物の中から選ばれる少なくとも一種を含むポリ(メタ)アクリレートであることを特徴とする鋼板用化粧シート。 - 前記プライマー層が、テレフタル酸、イソフタル酸、及びセバシン酸からなる多価カルボン酸とネオペンチルグリコール、エチレングリコールからなるポリオールを反応させて得られたポリエステルポリオール、イソシアネート系硬化剤及び粒径5μmの未処理シリカを含むウレタン系樹脂組成物からなる、請求項1に記載の鋼板用化粧シート。
- 前記表面保護層を構成する電離放射線硬化性樹脂組成物の架橋硬化物は、下記条件の引張試験により測定した破断伸び率が25〜45%である、請求項1又は2に記載の鋼板用化粧シート。
引張試験方法:厚さ90μmのポリプロピレンフィルムに電離放射線硬化性樹脂組成物を厚さ3.5μmとなるように塗布、硬化させた後、温度25℃、引張速度50mm/分で引張試験を行い破断する際の伸び率を測定する。 - 前記電離放射線硬化性樹脂の平均官能基数が3.1〜4.5である請求項1〜3のいずれかに記載の鋼板用化粧シート。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の鋼板用化粧シートを鋼板上に有する化粧鋼板。
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