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JP5771739B2 - スクロール圧縮機 - Google Patents

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Description

本発明は、スクロール圧縮機に関する。
本技術分野の背景技術として、特開平9−228968号公報(特許文献1)がある。この公報には、「旋回スクロールの鏡板背面部に高圧の油圧室と低圧室とをシール部を介して備え、旋回スクロールの鏡板背面部にシール部のシールリング幅より同等以下の孔径を有する孔を備え、該孔を有する旋回スクロールが旋回運動をするに伴い、油圧室の油が該孔に溜まって、前記シールリングをまたいで低圧室側にて排出される油漏れ手段が構成されていることを特徴とするスクロール圧縮機」と記載されている(請求項1参照)。
他の背景技術として、特開2011−58439号公報(特許文献2)がある。この公報には、「シール手段に対向する部分の旋回スクロール背面部あるいはフレームに小孔を設け、この小孔は旋回スクロールの旋回運動に伴いシール手段を跨いで高圧油圧室側と背圧室側の両方に交互に開口するようにして、高圧油圧室の油を背圧室側に供給する給油手段と、旋回スクロールあるいはフレームに設けられ、高圧油圧室と背圧室を連通し差圧で高圧油圧室の油を背圧室側に供給する給油路とを備えることを特徴とするスクロール圧縮機」と記載されている(請求項1参照)。
特開平9−228968号公報 特開2011−58439号公報
特許文献1、2の何れも背圧室と吐出圧力空間との差圧により背圧室に油供給を行うものであるため、低圧力比条件においては吐出圧力空間の圧力が小さくなることから、背圧と吐出圧力が同等となり吐出圧力空間から背圧室への給油ができなくなる虞がある。このように背圧室への給油ができないと、オルダムリングの摺動部の潤滑ができなくなるとともに、圧縮室のシールに必要な油量が確保できず、漏れ損失が増大して圧縮機効率が低下する。そこで、本発明は低圧力比条件においても背圧室への給油を行うことを可能とし信頼性の高いスクロール圧縮機を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、「固定側平板部と、該固定側平板部の一面に渦巻き形状を保持して立設される第1ラップと、を有する固定スクロールと、旋回側平板部と、該旋回側平板部の一面に渦巻き形状を保持して立設される第2ラップと、を有し、前記第2ラップと前記第1ラップとが噛み合いながら、前記固定スクロールに対して旋回することにより圧縮室を形成する旋回スクロールと、を備え、前記固定スクロールに対して前記旋回スクロールの背面側に該旋回スクロールを前記固定スクロールに押付けるための背圧室が形成されたスクロール圧縮機において、前記背圧室の圧力を調整する背圧弁又は背圧孔と、前記圧縮室からの圧縮冷媒が吐出される吐出圧力空間から前記背圧室へ油を供給する第1油供給手段と、前記背圧室から、前記圧縮室又は前記圧縮室の吸込側に形成される吸込室へ油を供給する第2油供給手段と、を設けたこと」を特徴とする。
本発明によれば、低圧力比条件においても背圧室への給油を行うことを可能とし信頼性の高いスクロール圧縮機を提供することができる。
本実施例のスクロール圧縮機の縦断面図。 旋回スクロールボス部に設けたスリットを示す図。 旋回スクロールボス部に設けた油穴を示す図。 背圧弁の拡大図。 背圧孔の拡大図。 固定スクロールと旋回スクロールとの噛み合い状態を表す平面図。 旋回スクロール鏡板面に設けたスリットを示す図。 本実施例を示す冷凍サイクルの概念図。
以下、実施例を図面を用いて説明する。
本実施例は、冷凍用や空調用などの冷凍サイクルに使用される冷媒圧縮機、或いは空気やその他のガスを圧縮するガス圧縮機として好適なスクロール圧縮機に関するものである。まず、スクロール圧縮機の基本的な構造について説明する。
図1は本実施例のスクロール圧縮機の縦断面図である。図に示すように、固定スクロール(固定スクロール部材)7は、円板状の固定側平板部7a(台板)と、この固定側平板部7aの上に渦巻き状に立設された第1ラップ7bと、固定側平板部7aの外周側に位置し、第1ラップ7bの先端面と連続する鏡板面を有して第1ラップ7bを囲む筒状の支持部7dとを有する。
第1ラップ7bが立設された固定側平板部7aの表面は、第1ラップ7bの間にあるため歯底7cと呼ばれる。また、支持部7dが、旋回スクロール(旋回スクロール部材)8の旋回側平板部8a(鏡板)と接する面は、固定スクロール7の鏡板面7eとなっている。固定スクロール7は、その支持部7dがボルト等によりフレーム17に固定され、固定スクロール7と一体となったフレーム17は溶接等の固定手段によりケース(密閉容器)9に固定されている。
前記旋回スクロール8は、固定スクロール7に対向して配置され、固定スクロールの第1ラップ7bと旋回スクロールの第2ラップ8bとが噛み合わされて、フレーム17内に旋回可能に設けられている。旋回スクロール8は、円板状の旋回側平板部8a、この旋回側平板部8aの表面である歯底8cから渦巻き形状を保持して立設される第2ラップ8b、及び旋回側平板部8aの背面中央に設けられたボス部8dとを有する。また、旋回側平板部8aの外周部の、固定スクロール7と接する表面が、旋回スクロール8の鏡板面8eとなっている。第2ラップ8bと第1ラップ7bとが噛み合いながら、固定スクロール7に対して公転することにより圧縮室13が形成されている。
ケース9は、固定スクロール7と旋回スクロール8からなるスクロール部、モータ部16(16a:回転子、16b:固定子)及び潤滑油などを内部に収納した密閉容器構造となっている。モータ部16の回転子16aと一体に固定されたシャフト(回転軸)10は、フレーム17に主軸受5を介して回転自在に支持され、固定スクロール7の中心軸線と同軸となっている。
シャフト10の先端にはクランク部10aが設けられており、このクランク部10aは旋回スクロール8のボス部8dに設けられた旋回軸受11に挿入され、旋回スクロール8はシャフト10の回転に伴い旋回可能に構成されている。旋回スクロール8の中心軸線は固定スクロール7の中心軸線に対して所定距離だけ偏心した状態となる。また、旋回スクロール8の第2ラップ8bは、固定スクロール7の第1ラップ7bに周方向に所定角度だけずらして重ね合わせられている。12は、旋回スクロール8を固定スクロール7に対して、自転しないように拘束しながら相対的に旋回運動させるためのオルダムリングである。
図6は固定スクロールと旋回スクロールとの噛み合い状態を示す平面図で、図に示すように、第1ラップ7b、8b間には三日月状の複数の圧縮室13(13a、13b)が形成され、旋回スクロール8を旋回運動させると、各圧縮室は中央部に移動するに従い連続的に容積が縮小される。即ち、旋回スクロール8の第2ラップ8bの内線側及び外線側に、それぞれ旋回内線側圧縮室13a及び旋回外線側圧縮室13bが形成される。20は吸込室で、流体を吸入している途中の空間である。この吸込室20は、旋回スクロール8の旋回運動の位相が進んで、流体の閉じ込みを完了した時点から圧縮室13となる。
吸込ポート14は、図1、図6に示すように、固定スクロール7に設けられている。この吸込ポート14は吸込室20と連通するように固定側平板部7aの外周側に穿設されている。また、吐出ポート15は、最内周側の圧縮室13と連通するように固定スクロール7の固定側平板部7aの渦巻き中心付近に穿設されている。
モータ部16によりシャフト10を回転駆動すると、シャフト10のクランク部10aから旋回軸受11を介して旋回スクロール8に伝えられ、旋回スクロール8は固定スクロール7の中心軸線を中心に、所定距離の旋回半径をもって旋回運動する。この旋回運動時に旋回スクロール8が自転しないように、オルダムリング12によって拘束される。
旋回スクロール8の旋回運動によって、各第1ラップ7b、第2ラップ8bの間にできる圧縮室13は中央に連続的に移動し、その移動に従って圧縮室13の容積が連続的に縮小する。これにより、吸込ポート14から吸込まれた流体(例えば、冷凍サイクルを循環する冷媒ガス)を各圧縮室13内で順次圧縮し、圧縮された流体は吐出ポート15からケース上部の吐出空間54に吐出される。吐出された流体は、吐出空間54からケース9内のモータ室52に入り、吐出パイプ6から圧縮機外、例えば冷凍サイクルに供給される。
潤滑油はケース9の底に貯留されており、シャフト10の下端には容積型または遠心式の給油ポンプ21を設けている。シャフトの回転とともに給油ポンプ21も回転させ、潤滑油を給油ポンプケース22に設けた潤滑油吸込口25から吸入して、給油ポンプの吐出口28から吐出する。吐出された潤滑油はシャフトに設けた貫通穴3を通って上部へ供給される。潤滑油の一部は、シャフト10に設けた横穴24を通って副軸受23を潤滑し、ケース底部の油溜り53に戻る。その他大部分の潤滑油は、貫通穴3を通ってシャフト10のクランク部10a上部に達し、クランク部10aに設けた油溝57を通って旋回軸受11を潤滑する。そして旋回軸受11の下部に設けた主軸受5を潤滑した後、排油穴26a及び排油パイプ26bを通ってケース底部へ戻る。ここで、油溝57、旋回軸受11で形成される空間および、主軸受5を収める空間(フレーム17、シャフト10、フレームシール56、旋回スクロール8のボス部8dに設けられたつば形状の旋回ボス部材34、シール部材32で形成された空間)をあわせて第1の空間33と呼ぶことにする。この第1の空間33は吐出圧力に近い圧力を有する空間である。主軸受5及び旋回軸受11の潤滑のために第1の空間33に流入した潤滑油の大部分は、排油穴26a及び排油パイプ26bを通ってケース底部へ戻るが、一部の潤滑油は、オルダムリング12の潤滑、固定スクロール7と旋回スクロール8との摺動部の潤滑及びシールに必要な最低限の量が、シール部材32の上端面と旋回ボス部材34の端面間の第1の油供給手段を介して第2の空間である背圧室18に入る。
シール部材32は、フレーム17に設けられた円環溝31に波状バネ(図示せず)と共に挿入されており、吐出圧力となっている第1の空間33と、吸込圧力と吐出圧力の中間の圧力となっている背圧室18とを仕切っている。
図2に示すように前記第1の油供給手段は、旋回ボス部材34に設けられた一つまたは複数の第1スリット60と前記シール部材32とで構成され、前記第1スリット60がシール部材32を跨ぐように配置する。つまり第1油供給手段は、旋回スクロール8の固定スクロール7に対して反対側の面に設けられた第1スリットにより構成され、該第1スリットは吐出圧力空間(54、52、33)と背圧室18とを常に連通する。これにより、第1の空間33と背圧室18の圧力差により、第1の空間33から背圧室18へ、微小すき間である第1スリット60を通って油が流入する。
この第1スリット60の配置は、常にシール部材32を跨ぐのではなく、旋回スクロール8の旋回運動に伴い間欠的に跨ぐようにしてもよい。つまり、第1スリット60は、旋回スクロール8の旋回に伴い吐出圧力空間(54、52、33)と背圧室18とを間欠的に連通するように構成してもよい。
図3に示すように、別の前記第1の油供給手段として、例えば旋回ボス部材34に設けられた複数の穴30と前記シール部材32とで構成され、前記複数の穴30は旋回スクロール8の旋回運動に伴いシール部材32を跨いだ円運動を行い、第1の空間33と背圧室18との間を移動する。これにより、第1の空間33の潤滑油を穴30に溜め、背圧室18に間欠的に移送して排出することにより、必要最小限の油を背圧室18に導くことができる。
背圧室18に入った潤滑油は、背圧が高くなると、背圧室18と吸込室20(または圧縮室13)を連通する背圧弁61を通って、吸込室20(または圧縮室13)へ入り、吐出ポート15から吐出される。吐出ポート15から吐出された油の一部は、例えば冷媒ガスと共に吐出パイプ6から冷凍サイクルへ吐出され、残りはケース9内で冷媒ガスと分離されてケース底の油溜り53に貯留される。
なお、上記で説明したように前記第1の空間33と背圧室18と第1の油供給手段を備えることで、各軸受部に必要な給油量と圧縮室に必要な給油量を独立に制御することができるため、圧縮室給油量の適正化が可能となり高効率な圧縮機を得ることができる。また、別の構成として、給油ポンプ21、第1の空間33、第1の油供給手段を設けず、吐出圧力である油溜り53の油を、軸受部の微小すき間での絞りを利用して減圧し、背圧室へ導入する構造でもよい。この場合は、軸受部を通過した油はすべて背圧室に入るため、軸受部と圧縮室への給油量を独立に制御することはできないが、給油ポンプ21やシール部材32などの部品が不要となり、構造が単純で低コストの圧縮機を提供できる。
次に背圧の詳細について述べる。スクロール圧縮機では、その圧縮作用により、固定スクロール7と旋回スクロール8を互いに引離そうとする軸方向の力が発生する。この軸方向の力により、両スクロールが引離される、いわゆる旋回スクロール8の離脱現象が生じると、圧縮室の密閉性が悪化して圧縮機の効率が低下する。そこで、旋回スクロール8の旋回側平板部の背面側に、吐出圧力と吸込圧力の間の圧力となる背圧室18を設け、その背圧により引離し力を打ち消すと共に、旋回スクロール8を固定スクロール7に押付けるようにしている。このとき、押付け力が大きすぎると旋回スクロール8の鏡板面8eと固定スクロール7の鏡板面7eとの摺動損失が増大し、圧縮機効率が低下する。つまり背圧には最適な値が存在し、小さすぎると圧縮室の密閉性が悪化して熱流体損失が増大し、大きすぎると摺動損失が増大する。よって、背圧を最適な値に維持することが、圧縮機の高性能化、高信頼性化において重要である。
この最適な背圧値を得るため、図1のスクロール圧縮機では、背圧弁61を備えている。
図4に示すように、背圧弁61は、背圧室18と通じている空間61aと、固定スクロール7に設けられた連通路61bにより吸込室20(または圧縮室13)に通じている空間61cを有し、両空間を仕切るようにバルブ61dが配置されている。バルブ61dは、ストッパ61eで固定された弾性体であるばね61fにより、空間61aに連通する開口部に押付けられている。バルブ61dは、空間61a内の圧力すなわち背圧が、連通路61bを介して導入される空間61c内の吸込室20(または圧縮室13)の圧力と、ばね61fの押付け力に対応する圧力の合計より高くなった場合に、上方へ移動して空間61aと空間61cを連通させる。つまり背圧弁61は、背圧室18内の圧力がある値よりも高くなった際に、背圧室18内の流体を吸込室20または圧縮室13に逃がすことで、背圧を適正値に調整するものである。なお、背圧弁61における背圧値は「吸込圧力+α(ばね61fの押付け力に対応する圧力)」となる。
最適な背圧値を得るために、背圧弁61の代わりに背圧孔35を用いてもよい。
図5に示すように、背圧孔35はコの字形の通路であり、圧縮室13と背圧室18を連通して圧縮室圧力に応じた圧力を背圧室18に導入する。圧縮室13の圧力は、クランク軸の回転にともない上昇する。この圧縮途中の圧縮室13のどの区間で背圧室18と連通するかで背圧の値が決定される。よって、この連通区間を調整することで最適な背圧値に設定することができる。なお、背圧孔35における背圧値は「吸込圧力×β(圧縮室13との連通区間により決定される圧縮比)」となる。
以上がスクロール圧縮機の基本的な構造である。本構造のデメリットとして、低圧力比条件において背圧が吐出圧力と同等以上になった場合に、背圧室18に油を供給できなくなることが挙げられる。低圧力比条件では、吐出圧力と吸込圧力との差が小さい。背圧の値は、上記したように背圧弁61または背圧孔35で決定され、それぞれ「吸込圧力+α」「吸込圧力×β」で表される。低圧力比条件の吐出圧力と吸込圧力の差が小さい場合には、これらの式で表される背圧値が、吐出圧力と同等か、吐出圧力より大きくなる場合もありうる。このとき、第1の空間33と背圧室18との給油差圧がなくなり、第1スリット60または油移送用の穴30での背圧室18への給油ができなくなる。
背圧室18への給油ができないと、オルダムリング12の摺動部の潤滑不良により信頼性が低下する。また、背圧室18を経由して圧縮室13に供給される油がなくなるため、圧縮室13の密閉性が低下して、漏れ損失が増大し、圧縮機の効率が低下する。
そこで図7に示すように、本実施例では、旋回スクロールの鏡板面8eまたは固定スクロールの鏡板面7eに一つまたは複数の第2スリット62を設けて第2の油供給手段とする。すなわち、上記した圧縮室13からの圧縮冷媒が吐出される吐出圧力空間(54、52、33)から背圧室18へ油を供給する第1油供給手段(第1スリット60)に加え、さらに背圧室18から、圧縮室13の圧縮初期段階の位置へ、又は圧縮室13への吸込側に形成される吸込室20へ油を供給する第2油供給手段(第2スリット62)と、を設けたものである。
より具体的には、第2油供給手段は、旋回側平板部8aの一面又は固定側平板部7aの一面に設けられた第2スリット62により構成され、該第2スリット62は、背圧室18と圧縮室13の圧縮初期段階の位置と、又は前記吸込室とを常に連通するように設けられる。あるいは、第2スリット62は旋回スクロール8の旋回に伴い、背圧室18と圧縮室13の圧縮初期段階の位置と、又は吸込室20とを間欠的に連通するように設けてもよい。このように構成することで、常時または間欠的に吸込室20に連通するように配置され、背圧室18から吸込室20(または圧縮室13の圧縮初期段階の位置)へ油を流出させる。これにより背圧は低下し、吸込室20に油が流出した分だけ、第1の空間33から背圧室18へ油が流入することになる。第2スリット62の代わりに、油移送用の穴を設けてもよい。
ここで背圧室18の圧力調整手段として背圧孔35を採用した場合、図5に示すように背圧孔35は背圧室18と、圧縮室13又は前記圧縮室の吸込側に形成される吸込室20とを常に又は間欠的に連通し、上記したように連通区間を調整することで最適な背圧値に設定している。しかし、低圧力比条件においては上記した通り、背圧室18の圧力「吸込圧力×β(圧縮室13との連通区間により決定される圧縮比)」が高くなり、吐出圧力空間と同等となることから、第1油供給手段(第1スリット60)による背圧室への油供給ができなく虞がある。
そこで本実施例では第2油供給手段(第2スリット62)により圧縮室13又は背圧室18へ油を供給する位置は、背圧孔35により圧縮室13又は背圧室18に連通する位置よりも外周側(吸込側)とすることで背圧室18の圧力を逃がすことができるため、これにより背圧室18の圧力を下げ、第1油供給手段(第1スリット60)による背圧室への油供給を可能とする。また、第2油供給手段(第2スリット62)の油供給流路の断面積は、背圧孔35の油供給流路の断面積よりも小さくなることが望ましい。
なお、一般的には固定スクロール鏡板面7eと旋回スクロール鏡板面8eの間に微小すき間が存在し、この流路での背圧室18から吸込室20または圧縮室13への油の漏れが生じている。この鏡板面での油の漏れを考慮すると、第2スリット62または油移送用の穴の流路抵抗は、旋回ボス部材34に設けた第1スリット60または油移送用の穴30の流路抵抗より大きくしておく方がよく、この場合、背圧の異常低下などの不具合を抑制できる。流路抵抗は、スリットの深さに大きく影響されるため、例えば旋回ボス部材34に設けた第1スリット60の深さより、旋回スクロール鏡板面8eに設けた第2スリット62の深さの方が浅くなるように設定すればよい。
また、旋回ボス部材34の第1スリット60を、旋回スクロール8の旋回運動に伴い間欠的に第1の空間33と背圧室18を連通するように設け、旋回スクロール鏡板面8eの第2スリット62も間欠的に背圧室18と吸込室20(または圧縮室13)を連通するように設け、両スリットがそれぞれ連通する区間を同等にするとなお良い。換言すると、第1スリット60及び第2スリット62のそれぞれの間欠的な連通のタイミングが同じになるようにする。例えば、旋回スクロール8が角度で360度旋回運動するうちの、90度のみ各スリットが各空間を連通するように設けることで、360度常時連通するスリットに対し、スリット深さを深くすることができ、スリットでの異物の詰りを抑制できるとともに加工が簡単となる。さらに上記の例において、第1スリット60および第2スリット62が90度連通する際の、連通開始角度(位相)を合わせておけば、背圧室18への油の流入と流出がほぼ同時になされるため、背圧の変動を小さく抑えることが可能となる。
なお、背圧調整機構として背圧孔35を用いる場合は、第2スリット62を設けることで背圧が低下した際に、第1の空間33から背圧室18へ油が流入する以外に、圧縮室13と背圧室18との圧力差も大きくなり、背圧孔35を通って冷媒ガスおよび油が背圧室18に流入してしまうため、本実施例の効果は背圧弁61を用いた場合より小さくなる。背圧弁61を用いる場合は、背圧が低下した際でも、背圧弁61が逆止弁の役割を果たすため、第1の空間33から背圧室18への油の流入のみによって背圧を高めることになり、本実施例の効果が増す。
図8に示すように、以上説明してきたスクロール圧縮機1を、該スクロール圧縮機1により圧縮された冷媒を凝縮する凝縮器40と、凝縮器40により凝縮された冷媒を減圧する減圧手段(膨脹弁41)と、減圧手段(膨脹弁41)により減圧された冷媒を蒸発させる蒸発器42と、該蒸発器42に対して送風を行う送風手段と、を備えた冷凍サイクル装置に採用することで、年間を通じた消費電力量が小さく、かつ運転範囲の広い使い勝手のよい空調機を提供することができる。
3 貫通穴
5 主軸受
6 吐出パイプ
7 固定スクロール(7a:固定側平板部、7b:第1ラップ、7c:歯底、7d:支持部、7e:鏡板面)
8 旋回スクロール(8a:旋回側平板部、8b:第2ラップ、8c:歯底、8d:ボス部、8e:鏡板面)
9 ケース(密閉容器)
10 シャフト(回転軸)(10a:クランク部)
11 旋回軸受
12 オルダムリング
13 圧縮室(13a:旋回内線側圧縮室、13b:旋回外線側圧縮室)
14 吸込ポート
15 吐出ポート
16 モータ部(16a:回転子、16b:固定子)
17 フレーム
18 背圧室
20 吸込室
21 給油ポンプ
23 副軸受
30 穴
32 シール部材
33 第1の空間
34 旋回ボス部材
35 背圧孔
52 モータ室
53 油溜り
54 吐出空間
60 旋回スクロールボス部に設けた第1スリット
61 背圧弁(61a:背圧室と通じている空間、61b:連通路、61c:吸込室または圧縮室と通じている空間、61d:バルブ、61e:ストッパ、61f:ばね)
62 旋回スクロール鏡板面に設けた第2スリット

Claims (11)

  1. 固定側平板部と、該固定側平板部の一面に渦巻き形状を保持して立設される第1ラップと、を有する固定スクロールと、
    旋回側平板部と、該旋回側平板部の一面に渦巻き形状を保持して立設される第2ラップと、を有し、前記第2ラップと前記第1ラップとが噛み合いながら、前記固定スクロールに対して旋回することにより圧縮室を形成する旋回スクロールと、を備え、
    前記固定スクロールに対して前記旋回スクロールの背面側に該旋回スクロールを前記固定スクロールに押付けるための背圧室が形成されたスクロール圧縮機において、
    前記背圧室の圧力を調整する背圧弁又は背圧孔と、
    前記圧縮室からの圧縮冷媒が吐出される吐出圧力空間から前記背圧室へ油を供給する第1油供給手段と、
    前記背圧室から、前記圧縮室又は前記圧縮室の吸込側に形成される吸込室へ油を供給する第2油供給手段と、を設け、
    該第2油供給手段は、前記旋回側平板部の前記一面又は前記固定側平板部の前記一面に設けられた第2スリットにより構成され、
    該第2スリットは、前記背圧室と前記圧縮室の圧縮初期段階の位置と、又は前記吸込室とを常に連通するように設けられたことを特徴とするスクロール圧縮機。
  2. 請求項1に記載のスクロール圧縮機において、
    前記背圧弁は、所定の条件が成立した場合に、前記背圧室と、前記圧縮室又は前記圧縮室の吸込側に形成される吸込室とを連通することを特徴とするスクロール圧縮機。
  3. 請求項2に記載のスクロール圧縮機において、
    前記背圧弁は、弾性体を有しており、
    前記所定の条件は、前記弾性体の押付け力と前記圧縮室又は前記吸込室の圧力との合計よりも前記背圧室の圧力が高くなった場合であることを特徴とするスクロール圧縮機。
  4. 請求項1に記載のスクロール圧縮機において、
    前記背圧孔は、前記背圧室と、前記圧縮室又は前記圧縮室の吸込側に形成される吸込室とを常に又は間欠的に連通し、
    前記第2油供給手段により前記圧縮室又は前記吸込室へ油を供給する位置は、前記背圧孔により前記圧縮室又は前記吸込室に連通する位置よりも外周側であることを特徴とするスクロール圧縮機。
  5. 請求項1に記載のスクロール圧縮機において、
    前記背圧孔は、前記背圧室と、前記圧縮室又は前記圧縮室の吸込側に形成される吸込室とを常に又は間欠的に連通し、
    前記第2油供給手段の油供給流路の断面積は、前記背圧孔の油供給流路の断面積よりも小さくなるように構成されることを特徴とするスクロール圧縮機。
  6. 請求項1に記載のスクロール圧縮機において、
    前記第1油供給手段は、前記旋回スクロールの前記固定スクロールに対して反対側の面に設けられた第1スリットにより構成され、該第1スリットは前記吐出圧力空間と前記背圧室とを常に連通するように設けられたことを特徴とするスクロール圧縮機。
  7. 請求項1に記載のスクロール圧縮機において、
    前記第1油供給手段は、前記旋回スクロールの前記固定スクロールに対して反対側の面に設けられた第1スリット又は複数の孔により構成され、該第1スリット又は複数の孔は、前記旋回スクロールの旋回に伴い前記吐出圧力空間と前記背圧室とを間欠的に連通するように設けられたことを特徴とするスクロール圧縮機。
  8. 固定側平板部と、該固定側平板部の一面に渦巻き形状を保持して立設される第1ラップと、を有する固定スクロールと、
    旋回側平板部と、該旋回側平板部の一面に渦巻き形状を保持して立設される第2ラップと、を有し、前記第2ラップと前記第1ラップとが噛み合いながら、前記固定スクロールに対して旋回することにより圧縮室を形成する旋回スクロールと、を備え、
    前記固定スクロールに対して前記旋回スクロールの背面側に該旋回スクロールを前記固定スクロールに押付けるための背圧室が形成されたスクロール圧縮機において、
    前記背圧室の圧力を調整する背圧弁又は背圧孔と、
    前記圧縮室からの圧縮冷媒が吐出される吐出圧力空間から前記背圧室へ油を供給する第1油供給手段と、
    前記背圧室から、前記圧縮室又は前記圧縮室の吸込側に形成される吸込室へ油を供給する第2油供給手段と、を設け、
    前記第2油供給手段の流路抵抗は、前記第1油供給手段の流路抵抗より大きいことを特徴とするスクロール圧縮機。
  9. 請求項10に記載のスクロール圧縮機において、
    前記第2油供給手段を構成するスリットの深さは、前記第1油供給手段を構成するスリットの深さより浅いことを特徴とするスクロール圧縮機。
  10. 固定側平板部と、該固定側平板部の一面に渦巻き形状を保持して立設される第1ラップと、を有する固定スクロールと、
    旋回側平板部と、該旋回側平板部の一面に渦巻き形状を保持して立設される第2ラップと、を有し、前記第2ラップと前記第1ラップとが噛み合いながら、前記固定スクロールに対して旋回することにより圧縮室を形成する旋回スクロールと、を備え、
    前記固定スクロールに対して前記旋回スクロールの背面側に該旋回スクロールを前記固定スクロールに押付けるための背圧室が形成されたスクロール圧縮機において、
    前記背圧室の圧力を調整する背圧弁又は背圧孔と、
    前記圧縮室からの圧縮冷媒が吐出される吐出圧力空間から前記背圧室へ油を供給する第1油供給手段と、
    前記背圧室から、前記圧縮室又は前記圧縮室の吸込側に形成される吸込室へ油を供給する第2油供給手段と、を設け、
    前記第1油供給手段は、前記旋回スクロールの前記固定スクロールに対して反対側の面に設けられた第1スリットにより構成され、該第1スリットは、前記旋回スクロールの旋回に伴い前記吐出圧力空間と前記背圧室とを間欠的に連通するように設けられ、
    前記第2油供給手段は、前記旋回側平板部の前記一面又は前記固定側平板部の前記一面に設けられた第2スリットにより構成され、該第2スリットは前記旋回スクロールの旋回に伴い、前記背圧室と、前記圧縮室又は前記吸込室とを間欠的に連通するように設けられ、
    前記第1スリット及び前記第2スリットのそれぞれの間欠的な連通のタイミングが同じになることを特徴とするスクロール圧縮機。
  11. 冷媒を圧縮する圧縮機と、
    該圧縮機により圧縮された冷媒を凝縮する凝縮器と、
    該凝縮器により凝縮された冷媒を減圧する減圧手段と、
    該減圧手段により減圧された冷媒を蒸発させる蒸発器と、
    該蒸発器に対して送風を行う送風手段と、を備えた冷凍サイクル装置において、
    前記圧縮機に請求項1〜7の何れかに記載のスクロール圧縮機を採用したことを特徴とする冷凍サイクル装置。
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