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JP5762887B2 - イリジウム錯体及び光学活性化合物の製造方法 - Google Patents

イリジウム錯体及び光学活性化合物の製造方法 Download PDF

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JP5762887B2
JP5762887B2 JP2011187741A JP2011187741A JP5762887B2 JP 5762887 B2 JP5762887 B2 JP 5762887B2 JP 2011187741 A JP2011187741 A JP 2011187741A JP 2011187741 A JP2011187741 A JP 2011187741A JP 5762887 B2 JP5762887 B2 JP 5762887B2
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Description

本発明はイリジウム錯体及び光学活性化合物の製造方法に関する。
光学活性化合物を合成する方法として触媒的不斉水素化反応による合成法が現在も盛んに研究されている。不斉水素化反応用の触媒としては、おもにロジウム、ルテニウム、イリジウムを有する錯体が用いられるが、中でもイリジウムを有する錯体はロジウム、ルテニウムとは異なる基質適用範囲を有しており、合成上有用な触媒である。
イリジウム錯体においては、添加剤を加えることにより、しばしば触媒活性、選択性の向上が見られるため、様々な添加剤が提案されている。たとえば、非特許文献1では、ヨウ素が、非特許文献2では臭化テトラブチルアンモニウムが、非特許文献3ではヨウ化ビスマスが、非特許文献4ではフタルイミドが、非特許文献5ではピペリジン塩酸塩が、非特許文献6では、ベンジルアミン等のプロトン性アミンが、それぞれ触媒活性、選択性を向上させる添加剤として有効である報告されている。しかしながら、これらの添加剤を使用しても、基質によっては十分な触媒活性、不斉収率を与えることができないという問題があった。
Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 1996, 35, 1475 Chem. Pharm. Bull. 1994, 42, 1951 Synlett 1995, 748 Tetrahedron: Asymmetry 1998, 9, 2415 Adv. Synth. Catal. 2009, 351, 2549 Chem. Lett. 1995, 955
本発明は、新規イリジウム錯体を提供することを目的とし、エナンチオ選択性、触媒活性等の点で優れた性能を有する新規な触媒を提供することを目的とする。また、本発明は、不斉合成反応、特に不斉水素化反応の触媒として、優れた能力を示すものである。
本発明者等は、新規なイリジウム錯体及びそれを用いた不斉合成反応の開発について鋭意検討した結果、一般式(1)で示されるイリジウム錯体を見出し、さらにそれを用いた反応において不斉誘起が可能となることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、以下の[1]〜[11]の内容を含むものである。
[1]
下記一般式(1)のイリジウム錯体。
IrHZ2(PP)(Q)m (1)
(式中、Zはハロゲン原子を示し、PPはビスホスフィンを示し、Qはアミンを示す。mは1又は2を示す。)
[2]
一般式(1)のPPが光学活性ビスホスフィンである、前記[1]に記載のイリジウム錯体。
[3]
一般式(1)のQが下記一般式(2)で表されるアミンである、前記[2]に記載のイリジウム錯体。
NR123 (2)
(式中、R1、R2及びR3は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を示す。)
[4]
一般式(1)のQが下記一般式(3)で表されるアミンである、前記[3]に記載のイリジウム錯体。
Figure 0005762887
(式中、R4、R5、R6、R7及びR8は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基又はシアノ基を示し、R9及びR10は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を示す。nは0又は1を示す。)
[5]
一般式(1)の光学活性ビスホスフィンが下記式(4)又は(5)で示される光学活性ビスホスフィンである、前記[2]〜[4]に記載のイリジウム錯体。
Figure 0005762887
(式中、R11、R12、R13及びR14は、それぞれ独立して、アルキル基及びアルコキシ基から選ばれる置換基で置換されていてもよいフェニル基を示す。)
Figure 0005762887
(式中、R15、R16、R17及びR18は、それぞれ独立して、アルキル基及びアルコキシ基から選ばれる置換基で置換されていてもよいフェニル基を示す。R19、R20、R21、R22、R23及びR24は、同一であっても又は異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、ハロアルキル基又はジアルキルアミノ基を示し、R20とR21及びR22とR23が置換基を有していてもよいメチレン鎖又は置換基を有していてもよい(ポリ)メチレンジオキシ基を形成していてもよい。また、R21とR22とで置換基を有していてもよいメチレン鎖又は置換基を有していてもよい(ポリ)メチレンジオキシ基を形成していてもよい。ただし、R21とR22は水素原子ではない。)
[6]
下記一般式(1*)のイリジウム錯体の製造法であって、
IrHZ2(PP*)(Q)m (1*)
(式中、Zはハロゲン原子を示し、PP*は光学活性ビスホスフィンを示し、Qはアミンを示す。mは1又は2を示す。)
下記一般式(6)で示されるイリジウム錯体に対して1当量以上のアミン又はその塩を反応させることを特徴とする製造法。
[{IrH(PP*)}2(μ−Z)3]Z (6)
(式中、Zはハロゲン原子を示し、PP*は光学活性ビスホスフィンを示す。)
[7]
下記一般式(1*)のイリジウム錯体の製造法であって、
IrHZ2(PP*)(Q)m (1*)
(式中、Zはハロゲン原子を示し、PP*は光学活性ビスホスフィンを示し、Qはアミンを示す。mは1又は2を示す。)
下記一般式(7)で示されるイリジウム錯体に対して1当量以上のアミン又はその塩、続いて1当量以上のハロゲン化水素HZ(Zはハロゲン原子を示す。)又はその水溶液を反応させることを特徴とする製造法。
[IrZ(PP*)]2 (7)
(式中、Zはハロゲン原子を示し、PP*は光学活性ビスホスフィンを示す。)
[8]
前記アミンが下記一般式(2)で表されるアミンである、前記[6]又は[7]に記載の製造法。
NR123 (2)
(式中、R1、R2及びR3は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を示す。)
[9]
前記アミンが下記一般式(3)で表されるアミンである、前記[6]又は[7]に記載の製造法。
Figure 0005762887
(式中、R4、R5、R6、R7及びR8は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基又はシアノ基を示し、R9及びR10は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を示す。nは0又は1を示す。)
[10]
前記[2]〜[5]に記載のイリジウム錯体を含む不斉水素化触媒。
[11]
プロキラルな炭素−炭素二重結合、プロキラルな炭素−酸素二重結合及び/又はプロキラルな炭素−窒素二重結合を有する化合物又は(複素)芳香環化合物を不斉水素化することを含む光学活性化合物の製造方法であって、
不斉水素化を、下記一般式(6)で示されるイリジウム錯体、及び
[{IrH(PP*)}2(μ−Z)3]Z (6)
(式中、Zはハロゲン原子を示し、PP*は光学活性ビスホスフィンを示す。)
下記一般式(3)で表されるアミン又はその塩の存在下で行うことを特徴とする製造方法。
Figure 0005762887
(式中、R4、R5、R6、R7及びR8は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基又はシアノ基を示し、R9及びR10は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を示す。nは0又は1を示す。)
本発明で規定するイリジウム錯体を触媒とすることによって、高収率又は高立体選択的な反応を行うことができ、光学活性化合物を得ることができる。これら光学活性化合物は様々な化合物の合成中間体として有用である。
以下、本発明について説明する。
本発明のイリジウム錯体は、一般式(1)で示されるようにイリジウム原子に二つのハロゲン原子、水素原子、アミン及びビスホスフィンが配位した錯体である。
一般式(1)中、Zで表されるハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
PPで表されるビスホスフィンとしては、例えば下記一般式(8)で表されるビスホスフィンが挙げられる。
P1P2P−Q1−PRP3P4 (8)
(式中、RP1、RP2、RP3及びRP4はそれぞれ独立して、アルキル基、アリール基又は複素環基を表し、Q1は二価基を表す。)
一般式(8)で表されるビスホスフィンにおけるアルキル基としては、直鎖状、分岐状又は環状でもよい、例えば炭素数1〜15、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基が挙げられ、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、2−ペンチル基、tert−ペンチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、2,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、2−メチルペンタン−3−イル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロペンチル基及びメチルシクロヘキシル基等が挙げられる。
また、一般式(8)で表されるビスホスフィンにおけるアリール基としては、例えば炭素数6〜14のアリール基が挙げられ、具体的にはフェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ビフェニル基等が挙げられる。これらアリール基は置換基を有してもよい。ここで、置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、ジアルキルアミノ基又はアルキレンジオキシ基等が挙げられる。具体的なアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基及びシクロヘキシル基等の直鎖又は分岐状もしくは環状の炭素数1〜10のアルキル基が挙げられる。また、アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、tert−ブトキシ基及びシクロヘキシルオキシ基等の直鎖又は分岐状もしくは環状の炭素数1〜10のアルコキシ基が挙げられる。ハロゲン化アルキル基としては、例えば直鎖又は分岐状の炭素数1〜10のハロゲン化アルキル基が挙げられ、好ましくはパーフルオロアルキル基であり、例えばトリフルオロメチル基及びペンタフルオロエチル基等が挙げられる。ジアルキルアミノ基としては、例えばそのアルキル基が直鎖又は分岐状の炭素数1〜10のアルキル基であるジアルキルアミノ基であり、例えばジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基が挙げられる。アルキレンジオキシ基としては、例えばそのアルキレン基が炭素数1〜10のアルキレン基であるアルキレンジオキシ基であり、例えばメチレンジオキシ基、エチレンジオキシ基及びイソプロピリデンジオキシ基等が挙げられる。
また、一般式(8)で表されるビスホスフィンにおける複素環基としては、脂肪族又は芳香族複素環基が挙げられる。脂肪族複素環基としては、例えば炭素数2〜14で、異種原子として少なくとも1個のヘテロ原子(例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等)を含んでいる単環の脂肪族複素環基(好ましくは5〜8員、より好ましくは5又は6員)、又は多環若しくは縮合環の脂肪族複素環基が挙げられる。脂肪族複素環基の具体例としては、例えばピロリジル−2−オン基、ピペリジノ基、ピペラジニル基、モルホリノ基、テトラヒドロフリル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロチエニル基等が挙げられる。芳香族複素環基としては、例えば炭素数2〜15で、異種原子として少なくとも1個のヘテロ原子(例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等)を含んでいる単環式ヘテロアリール基(好ましくは5〜8員、より好ましくは5又は6員)、又は多環式若しくは縮合環式のヘテロアリール基が挙げられる。芳香族複素環基の具体例としては、例えばフリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリミジル基、ピラジル基、ピリダジル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリル基、フタラジル基、キナゾリル基、ナフチリジル基、シンノリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基等が挙げられる。
また、一般式(8)で表されるビスホスフィンにおける二価基としては、アルキレン基、フェニレン基、ビフェニルジイル基及びビナフタレンジイル基等が挙げられる。アルキレン基としては、例えば炭素数1〜6のアルキレン基、具体的にはメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基及びヘキサメチレン基が挙げられ、これらのアルキレン基は、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基等の前記したような直鎖又は分岐状もしくは環状の炭素数1〜10のアルキル基、フェニル基、ナフチル基等の前記したような炭素数6〜14のアリール基、又はピペリジノ基、モルホリノ基、フリル基、ピリジル基等の前記したような複素環基で置換されてもよい。フェニレン基としては、o、m又はp−フェニレン基であり、該フェニレン基はメチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基等の前記したような直鎖又は分岐状もしくは環状の炭素数1〜10のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、tert−ブトキシ基、シクロヘキシルオキシ基等の前記したような直鎖又は分岐状もしくは環状の炭素数1〜10のアルコキシ基、水酸基、アミノ基、又はジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基(そのアルキル基は直鎖又は分岐状の炭素数1〜10のアルキル基である)等で置換されていてもよい。ビフェニルジイル基及びビナフタレンジイル基としては、1,1’−ビアリール−2,2’−ジイル型の構造を有するものが好ましく、該ビフェニルジイル基及びビナフタレンジイル基は、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基等の前記したような直鎖又は分岐状もしくは環状の炭素数1〜10のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、tert−ブトキシ基、シクロヘキシルオキシ基等の前記したような炭素数1〜10のアルコキシ基、アセトキシ基、プロパノイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等のアシルオキシ基、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等のハロゲン原子、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基等のハロアルキル基、水酸基、アミノ基、又はジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基(そのアルキル基は直鎖又は分岐状の炭素数1〜10のアルキル基である)等で置換されてもよい。
PPで表されるビスホスフィンとしては、光学活性体又は非光学活性体を用いることができるが、光学活性体が好ましい。
光学活性ビスホスフィンとしては、例えば本出願前公知の光学活性ビスホスフィンが挙げられ、その一つとして好ましくは一般式(4)で表されるビスホスフィンが挙げられる。
Figure 0005762887
(式中、R11、R12、R13及びR14は、それぞれ独立して、アルキル基及びアルコキシ基から選ばれる置換基で置換されていてもよいフェニル基を示す。
一般式(4)で表されるビスホスフィンの具体例としては、2,2’−ビス−(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(以下、BINAPという)、2,2’−ビス−(ジ−p−トリルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(以下、Tol−BINAPという)、2,2’−ビス−(ジ−m−トリルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(以下、DM−BINAPという)、2,2’−ビス(ジ−p−ターシャリーブチルフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジ−p−メトキシフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジ−p−クロロフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジシクロペンチルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(Cp−BINAP)、2,2’−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(Cy−BINAP)等が挙げられる。
さらに、本発明で用いられる好ましい光学活性ビスホスフィンの一つとしては下記一般式(5)で表されるビスホスフィンが挙げられる。
Figure 0005762887
(式中、R15、R16、R17及びR18は、それぞれ独立して、アルキル基及びアルコキシ基から選ばれる置換基で置換されていてもよいフェニル基を示す。R19、R20、R21、R22、R23及びR24は、同一又は異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、ハロアルキル基又はジアルキルアミノ基を示し、R20とR21及びR22とR23が置換基を有していてもよいメチレン鎖又は置換基を有していてもよい(ポリ)メチレンジオキシ基を形成していてもよい。また、R21とR22とで置換基を有していてもよいメチレン鎖又は置換基を有していてもよい(ポリ)メチレンジオキシ基を形成していてもよい。ただし、R21とR22は水素原子ではない。)
一般式(5)で表されるビスホスフィンの具体例としては、ビスホスフィンとしては例えば、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1、1’−ビナフチル(以下、H8−BINAPという)、2,2’−ビス(ジ−p−トリルホスフィノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジ−m−トリルホスフィノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1、1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1、1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジ−p−ターシャリーブチルフェニルホスフィノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジ−p−メトキシフェニルホスフィノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジ−p−クロロフェニルホスフィノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジシクロペンチルホスフィノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビナフチル、((4,4’−ビ−1,3−ベンゾジオキソール)−5、5’−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)(SEGPHOS)、(4,4’−ビ−1,3−ベンゾジオキソール)−5、5’−ジイル)ビス(ビス(3,5−キシリル)ホスフィン)(DM−SEGPHOS)、((4,4’−ビ−1,3−ベンゾジオキソール)−5、5’−ジイル)ビス(ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−メトキシフェニル)ホスフィン)(DTBM−SEGPHOS)、((4,4’−ビ−1,3−ベンゾジオキソール)−5、5’−ジイル)ビス(ビス(4−メトキシフェニル)ホスフィン)、((4,4’−ビ−1,3−ベンゾジオキソール)−5、5’−ジイル)ビス(ジシクロヘキシルホスフィン)(Cy−SEGPHOS)、((4,4’−ビ−1,3−ベンゾジオキソール)−5、5’−ジイル)ビス(ビス(3,5−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフィン)、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−4,4’,6,6’−テトラメチル−5,5’−ジメトキシ−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビス(ジ−p−メトキシフェニルホスフィノ)−4,4’,6,6’−テトラメチル−5,5’−ジメトキシ−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−4,4’,6,6’−テトラ(トリフルオロメチル)−5,5’−ジメチル−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−4,6−ジ(トリフルオロメチル)−4’,6’−ジメチル−5’−メトキシ−1,1’−ビフェニル、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’−ジフェニルホスフィノ−4,4’,6,6’−テトラメチル−5,5’−ジメトキシ−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−6,6’−ジメチル−1,1−ビフェニル、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−4,4’,6,6’−テトラメチル−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−3,3’,6,6’−テトラメチル−1,1’−ビフェニル)、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−4,4’−ジフルオロ−6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−4,4’−ビス(ジメチルアミノ)−6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビス(ジ−p−トリルホスフィノ)−6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビス(ジ−o−トリルホスフィノ)−6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビス(ジ−m−フルオロフェニルホスフィノ)−6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル、1,11−ビス(ジフェニルホスフィノ)−5,7−ジヒドロベンゾ[c,e]オキセピン、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−6,6’−ジメトキシ−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−5,5’,6,6’−テトラメトキシ−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビス(ジ−p−トリルホスフィノ)−6,6’−ジメトキシ−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−4,4’,5,5’,6,6’−ヘキサメトキシ−1,1’−ビフェニル等が挙げられる。
さらに用いることのできる他の光学活性ビスホスフィンとしては、N,N−ジメチル−1−[1’,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルアミン、2,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1−シクロヘキシル−1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、2,3−O−イソプロピリデン−2,3−ジヒドロキシ−1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,2−ビス{(o−メトキシフェニル)フェニルホスフィノ}エタン、1,2−ビス(2,5−ジアルキルホスホラノ)ベンゼン、1,2−ビス(2,5−ジアルキルホスホラノ)エタン、1−(2,5−ジアルキルホスホラノ)−2−(ジフェニルホスフィノ)ベンゼン、1−(2,5−ジアルキルホスホラノ)−2−(ジ(アルキルフェニル)ホスフィノ)ベンゼン、5,6−ビス(ジフェニルホスフィノ)−2−ノルボルネン、N,N’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−N,N’−ビス(1−フェニルエチル)エチレンジアミン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、2,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ペンタン等が挙げられる。しかしながら、もちろん本発明に用いることができる光学活性ビスホスフィンはこれらに何ら限定されるものではない。
Qで表されるアミンとしては、例えば下記一般式(2)で表されるものが挙げられる。
NR123 (2)
(式中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は置換基を有してもよいアリール基を示す。)
一般式(2)で表されるアミンにおけるアルキル基としては、直鎖状、分岐状又は環状でもよい、例えば炭素数1〜6のアルキル基であり、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、2−ペンチル基、tert−ペンチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、2,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、2−メチルペンタン−3−イル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロペンチル基及びメチルシクロヘキシル基等が挙げられる。
また、一般式(2)で表されるアミンにおけるアリール基としては、例えば炭素数6〜14のアリール基であり、具体的にはフェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ビフェニル基等が挙げられる。これらアリール基は置換基を有してもよく、該置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン化アルキル基及びハロゲン原子等が挙げられる。該アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基及びシクロヘキシル基等の直鎖又は分岐状もしくは環状の炭素数1〜10のアルキル基が挙げられる。また、該アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、tert−ブトキシ基及びシクロヘキシルオキシ基等の直鎖又は分岐状もしくは環状の炭素数1〜10のアルコキシ基が挙げられる。該ハロゲン化アルキル基としては、例えばトリフルオロメチル基及びペンタフルオロエチル基等の直鎖又は分岐状の炭素数1〜10のハロゲン化アルキル基が挙げられる。ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、フッ素原子が挙げられる。
Qで表される好ましいアミンとしては、例えば下記一般式(3)で表されるアミンが挙げられる。
Figure 0005762887
(式中、R4、R5、R6、R7及びR8は各々独立して水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基又はシアノ基を示し、R9及びR10はそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を示す。nは0又は1を示す。)
具体的なアミンとしては、例えばアニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、トルイジン、N−メチルトルイジン、N,N−ジメチルトルイジン、p−アニシジン、N−メチル−p−アニシジン、N,N−ジメチル−p−アニシジン、ベンジルアミン、N−メチルベンジルアミン、1−フェニルエチルアミン等があげられる。
本発明の一般式(1)で表されるイリジウム錯体の合成前駆体である一般式(6)及び(7)で表されるイリジウム錯体における、ハロゲン原子及び光学活性ビスホスフィンとしては、一般式(1)のイリジウム錯体の説明で示したものと同様のものが挙げられる。
一般式(6)で表されるイリジウム錯体は、Organometallics 2006, 25, 2505等に記載の方法で合成することができる。例えば、[{IrH(binap)}2(μ−Cl)3]Clはジ−μ−クロロテトラキス(シクロオクテン)二イリジウム([IrCl(coe)22)とBINAPをトルエン中で攪拌した後、塩酸を加えることにより合成できる。
一般式(7)で表されるイリジウム錯体は、Chemistry Letters 1997, 12, 1215等に記載の方法で合成することができる。例えば、[IrCl(binap)]2は、例えばジ−μ−クロロテトラキス(シクロオクテン)二イリジウム([IrCl(coe)22)とBINAPをトルエン中で攪拌することにより合成できる。
なお、このようにして得られた、式(6)又は式(7)で表されるイリジウム錯体は、そのままの溶液の形態で用いても、さらに精製してから用いてもよい。
式(6)又は式(7)で表されるイリジウム錯体を形成するために用いることができるイリジウム化合物としては、例えばジ−μ−クロロテトラキス(シクロオクテン)二イリジウム([IrCl(coe)22)、ジ−μ−ブロモテトラキス(シクロオクテン)二イリジウム([IrBr(coe)22)、ジ−μ−ヨードテトラキス(シクロオクテン)二イリジウム([IrI(coe)22)、ジ−μ−クロロビス(1,5−シクロオクタジエン)二イリジウム([IrCl(cod)]2)、ジ−μ−ブロモビス(1,5−シクロオクタジエン)二イリジウム([IrBr(cod)]2)、ジ−μ−ヨードビス(1,5−シクロオクタジエン)二イリジウム([IrI(cod)]2)、ジ−μ−クロロビス(ビシクロ[2,2,1]ヘプタ−2,5−ジエン)二イリジウム([IrCl(nbd)]2)、ジ−μ−ブロモビス(ビシクロ[2,2,1]ヘプタ−2,5−ジエン)二イリジウム ([IrBr(nbd)]2)及びジ−μ−ヨードビス(ビシクロ[2,2,1]ヘプタ−2,5−ジエン)二イリジウム([IrI(nbd)]2)等が挙げられる。
本発明の一般式(1*)のイリジウム錯体は、一般式(6)で表されるイリジウム錯体とアミン(Q)又はその塩を反応させることにより調製できる。アミンの塩としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、炭酸塩が挙げられより好ましくは塩酸塩、臭化水素酸塩である。アミン(Q)又はその塩の量は、好ましくはイリジウム錯体のイリジウム原子に対して1〜100当量であり、1〜10当量とすることにより好ましい結果を得ることができる。
また、本発明の一般式(1*)のイリジウム錯体は、一般式(7)で表されるイリジウム錯体にアミン(Q)又はその塩を加えた後、ハロゲン化水素、又はその水溶液で処理することによっても調製できる。アミン(Q)又はその塩の量は、好ましくはイリジウム錯体のイリジウム原子に対して1〜10当量であり、1〜5当量とすることにより好ましい結果を得ることができる。
これらの反応は溶媒中で行うことが好ましい。溶媒の具体例としては、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素溶媒、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素溶媒、塩化メチレンなどのハロゲン含有炭化水素溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル系溶媒、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどの有機溶媒が挙げられ、これらの溶媒は単独で、あるいは二種以上の混合溶媒として用いることができる。
上記ハロゲン化水素又はハロゲン化水素酸としては、例えば塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素等のハロゲン化水素、塩酸、臭化水素酸及びヨウ化水素酸等のハロゲン化水素酸が挙げられるが、取り扱いの点からハロゲン化水素酸が好ましい。これらハロゲン化水素又はハロゲン化水素酸の使用量は、イリジウム原子に対してほぼ10当量程度までの範囲内とすることが好ましい。
また、一般式(1)において、m=1の場合、下記一般式(1a)で表されるイリジウム錯体となる。
IrHZ2(PP)(Q) (1a)
(式中、Zはハロゲン原子を示し、PPはビスホスフィンを示し、Qはアミンを示す。)
上記一般式(1a)で表されるイリジウム錯体の具体例としては、IrHCl2(dm−segphos)(p−アニシジン)、IrHCl2(binap)(N−Me−p−アニシジン)等が挙げられる。
また、一般式(1)において、m=2の場合、下記一般式(1b)で表されるイリジウム錯体となる。
[IrHZ(PP)(Q)2]Z (1b)
(式中、Zはハロゲン原子を示し、PPはビスホスフィンを示し、Qはアミンを示す。)
上記一般式(1b)で表されるイリジウム錯体の具体例としては、[IrHCl(dm−segphos)(N−Me−p−アニシジン)2]Cl、[IrHCl(dm−binap)(N−Me−p−アニシジン)2]Cl等が挙げられる。
なお、上記一般式(1a)及び(1b)において、ハロゲン原子、ビスホスフィン配位子及びアミンは一般式(1)のイリジウム錯体の説明で示したものと同様のものが挙げられる。
このようにして得られた本発明の一般式(1)のイリジウム錯体、特に光学活性配位子を有するイリジウム錯体は、光学活性化合物の製造方法への使用に好適である。具体的な反応としては、不斉1,4−付加反応、不斉ヒドロホルミル化反応、不斉ヒドロシアノ化反応、不斉ヒドロアミノ化反応、不斉ヘック(Heck)反応及び不斉水素化反応に用いられ、特に有利には不斉水素化反応に用いられる。
不斉水素化反応の例としては、プロキラルな炭素−炭素二重結合を有する化合物、例えばプロキラルなエナミン、オレフィン、エノールエーテルの不斉水素化;(複素)芳香環化合物の不斉水素化;プロキラルな炭素−酸素二重結合を有する化合物、例えばプロキラルなケトンの不斉水素化;プロキラルな炭素−窒素二重結合を有する化合物、例えばプロキラルなイミンの不斉水素化である。
炭素−炭素二重結合を有する化合物としては、例えば一般式(9)で表されるオレフィン化合物が挙げられる。
Figure 0005762887
(式中、R24、R25、R26及びR27は、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよい(ヘテロ)アリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、置換カルバモイル基、シアノ基、アシルアミノ基又はアミノ基を表すが、R24とR25とは相異なり、R26とR27とは相異なる。また、R24とR26、R24とR27又はR26とR27が一緒になって全体で非対称環式構造を形成してもよい。)
(複素)芳香環化合物としては、例えば一般式(10)で表される(複素)芳香環化合物があげられる。
Figure 0005762887
(式中、X1は窒素原子又はCR28を表し、X2は窒素原子又はCR29を表し、X3は窒素原子又はCR30を表し、X4は窒素原子又はCR31を表し、X5は窒素原子又はCR32を表し、X6は窒素原子又はCR33を表す。R28、R29、R30、R31、R32及びR33は、各々独立して、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよい(ヘテロ)アリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、置換カルバモイル基、シアノ基、アシルアミノ基、水酸基、アミノ基又はハロゲン原子を表す。ただし、X1、X2、X3、X4、X5及びX6のすべてが窒素原子であることはない。)
また、(複素)芳香環化合物の一つの例としては、一般式(11)で表される(複素)芳香環化合物があげられる。
Figure 0005762887
(式中、X7は窒素原子又はCR38を表し、X8は窒素原子又はCR39を表し、X9は窒素原子又はCR40を表し、X10は窒素原子又はCR41を表す。R34、R35、R36、R37、R38、R39、R40及びR41は、各々独立して、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよい(ヘテロ)アリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、置換カルバモイル基、シアノ基、アシルアミノ基、水酸基、アミノ基又はハロゲン原子を表す。ただし、X7、X8、X9及びX10のすべてが窒素原子であることはない。)
また、(複素)芳香環化合物としては、例えば一般式(12)で表される(複素)芳香環化合物があげられる。
Figure 0005762887
(式中、X11は窒素原子又はCR42を表し、X12は窒素原子又はCR43を表し、X13は窒素原子又はCR44を表し、X14は窒素原子又はCR45を表し、X15は、酸素原子、硫黄原子又はNR46を表す。R42、R43、R44及びR45は、各々独立して、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよい(ヘテロ)アリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、置換カルバモイル基、シアノ基、アシルアミノ基、水酸基、アミノ基又はハロゲン原子を表す。R46は、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよい(ヘテロ)アリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基又は置換カルバモイル基を表す。ただし、X11、X12、X13及びX14のすべてが窒素原子であることはない。)
また、(複素)芳香環化合物のひとつの例としては、一般式(13)で表される(複素)芳香環化合物があげられる。
Figure 0005762887
(式中、R47、R48、R49及びR50は、各々独立して、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよい(ヘテロ)アリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、置換カルバモイル基、シアノ基、アシルアミノ基、水酸基、アミノ基又はハロゲン原子を表す。X17は窒素原子又はCR51を表し、X18は窒素原子又はCR52を表す。X16は、酸素原子、硫黄原子又はNR53を表す。R51及びR52は、各々独立して、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよい(ヘテロ)アリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、置換カルバモイル基、シアノ基、アシルアミノ基、水酸基、アミノ基又はハロゲン原子を表す。R53は、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよい(ヘテロ)アリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基又は置換カルバモイル基を表す。ただし、X17、X18の両方が窒素原子であることはない。)
一般式(9)、(10)、(11)、(12)、(13)で示される化合物のR24〜R27、R28〜R33、R34〜R41、R42〜R46、R47〜R53におけるアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、tert−ペンチル基及びn−ヘキシル基等の炭素数1〜8のアルキル基が挙げられる。アルキル基が有することができる置換基としては、フッ素原子等のハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基等が挙げられる。(ヘテロ)アリール基としては、例えばフェニル、ナフチル、ピリジル、ピリミジニル、フリル、チエニルなどが挙げられ、その置換基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基,n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、tert−ペンチル基及びn−ヘキシル基等の炭素数1〜6のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基,n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、tert−ペンチルオキシ基及びn−ヘキシルオキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子等のハロゲン原子等が挙げられる。アラルキル基のアルキルとしては炭素数1〜12のものが挙げられる。アラルキル基が有することができる置換基としては、メチル基、エチル基等の炭素数1〜6のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子等が挙げられる。アシル基としては、例えばアセチル基、プロパノイル基、ブチリル基、ピバロイル基、ベンゾイル基等が挙げられる。アルコキシカルボニル基としては、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基等が挙げられる。置換カルバモイル基としては、例えばジメチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、ジベンジルカルバモイル基等が挙げられる。アシルアミノ基としては、例えばアセチルアミノ基、tert−ブトキシカルボニルアミノ基、ベンジルオキシカルボニルアミノ基等が挙げられる。また、R24とR26、R24とR27又はR26とR27が一緒になって全体で非対称環式構造を形成する場合の構造としては、5員環又は6員環構造が好ましい。
多重結合を有する有機化合物において、炭素−酸素二重結合を有する化合物としては、例えば一般式(14)で示されるケトン化合物が挙げられ、
Figure 0005762887
(式中、R54及びR55は相異なり、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよい(ヘテロ)アリール基又は置換基を有していてもよいアラルキル基を示す。また、R54とR55が一緒になって全体で非対称環式ケトンを形成していてもよい。)
炭素−窒素二重結合を有する化合物としては一般式(15)で示されるイミン化合物が挙げられる。
Figure 0005762887
(式中、R56及びR57は相異なり、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよい(ヘテロ)アリール基又は置換基を有していてもよいアラルキル基を示し、式中R58は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよい(ヘテロ)アリール基又は置換基を有していてもよいアラルキル基を示す。また、R56とR57、R56とR58又はR57とR58が一緒になって全体で非対称環式イミンを形成してもよい。)
上記一般式(14)で表される化合物のR54及びR55並びに一般式(15)で示される化合物のR56、R57及びR58のアルキル基としては、例えば炭素数1〜8の炭素数のアルキル基が挙げられる。アルキル基が有することができる置換基としては、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基等が挙げられる。(ヘテロ)アリール基としては、フェニル、ナフチル、ピリジル、ピリミジニル、フリル、チエニルなどが挙げられ、置換基としては、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。アラルキル基のアルキルとしては炭素数1〜12のものが挙げられる。アラルキル基が有することができる置換基としては、メチル基、エチル基等の炭素数1〜6のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子等が挙げられる。
54とR55が一緒になって全体で非対称環式ケトンを形成している場合の一般式(14)で示される置換されていてもよい環式ケトンとしては、例えば炭素数1〜8のシクロアルケノン骨格を有する化合物、1−インダノン骨格を有する化合物、2−インダノン骨格を有する化合物、1−テトラロン骨格を有する化合物、2−テトラロン骨格を有する化合物、1−ベンゾスベロン骨格を有する化合物等が挙げられる。置換基としては、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子及びアリール基等が挙げられる。
56とR57、R56とR58又はR57とR58が一緒になって全体で非対称環式イミンを形成している場合の一般式(15)で示される置換されていてもよい環式イミンとしては、例えば3,4−ジヒドロ−2H−ピロール骨格を有する化合物、2,3,4,5−テトラヒドロピリジン骨格を有する化合物、3H−インドール骨格を有する化合物、3,4−ジヒドロキノリン骨格を有する化合物、3,4−ジヒドロイソキノリン骨格を有する化合物等が挙げられる。置換基としては、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子及びアリール基等が挙げられる。
上記一般式(10)〜(15)で示される化合物の具体例としては、アセトフェノン、プロピオフェノン、ブチロフェノン、イソブチロフェノン、クロロメチルフェニルケトン、ブロモメチルフェニルケトン、2−アセチルピリジン、3−アセチルピリジン、(o―メトキシ)アセトフェノン、(o―エトキシ)アセトフェノン、(o−プロポキシ)アセトフェノン、(o−ベンジルオキシ)アセトフェノン、α−アセトナフトン、p−クロロフェニルメチルケトン、p−ブロモフェニルメチルケトン、p−シアノフェニルメチルケトン、フェニルベンジルケトン、フェニル(o−トリルメチル)ケトン、フェニル(m−トリルメチル)ケトン、フェニル(p−トリルメチル)ケトン、2−ブタノン、2−ペンタノン、2−ヘキサノン、2−ヘプタノン、2−オクタノン、2−ノナノン、2−デカノン、シクロヘキシルメチルケトン、シクロヘキシルエチルケトン、シクロヘキシルベンジルケトン、t−ブチルメチルケトン、3−キヌクリジノン、1−インダノン、2−インダノン、1−テトラロン、2−テトラロン、ベンジル(2−ピリジル)ケトン、ベンジル(3−ピリジル)ケトン、ベンジル(2−チアゾリル)ケトン、2−メチルキノリン、2−フェニルキノリン、2−フェニルキノキサリン、2,6−ジメチルキノリン、3,4−ジヒドロ−5−フェニル−2H−ピロール、2,3,4,5−テトラヒドロ−6−フェニルピリジン、1−メチル−3,4−ジヒドロイソキノリン、6,7−ジメトキシ−1−メチル−3,4−ジヒドロイソキノリン、1−フェニル−3,4−ジヒドロイソキノリン、1−メチル−3,4−ジヒドロ−9H−ピリド[3,4−b]インドール、α−メチルベンジリデンベンジルアミン、2−メチルベンゾフラン、2−イソプロピルベンゾフラン、2-フェニルベンゾチオフェン等が挙げられる。
本発明の一般式(1)で表されるイリジウム錯体は、有機化合物の多重結合の還元、特に炭素−炭素二重結合を有する化合物、芳香族化合物及び炭素−ヘテロ原子二重結合を有する化合物の還元触媒として有用である。更には、配位子であるビスホスフィンを光学活性体とすることにより、不斉水素化反応の触媒としても有用である。本発明の一般式(1)で表されるイリジウム錯体を触媒として用いる場合は、前記イリジウム錯体合成の反応後に、例えば濃縮、減圧濃縮、溶媒抽出、洗浄、再結晶などの手法により錯体の純度を高めてから使用してもよいが、錯体を精製することなく還元反応触媒として使用してもよい。
また、前記のように予めイリジウム錯体を合成することなく、反応系内に一般式(6)又は(7)で表されるイリジウム錯体、アミン又はその塩及び不斉水素化基質を加え、不斉水素化を行うこともできる(in situ法)。
前記不斉水素化は、水素化される基質を、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール溶媒やテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、塩化メチレン、アセトン、酢酸エチル、ベンゼン、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリル又はこれらの混合溶媒などの不斉水素化反応を阻害しない溶媒に溶解し、基質に対して1/10〜1/10,000、好ましくは約1/50〜1/3,000モル当量の触媒を加え、水素圧約1〜10MPa、好ましくは約3〜7MPa、温度約−20〜100℃、好ましくは約20〜80℃で、約5〜30時間、好ましくは約10〜20時間で行われる。
以下に実施例を挙げ、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。なお、実施例中において下記の分析機器を用いた。
核磁気共鳴スペクトル(NMR);MERCURY300−C/H(VARIAN)
融点(mp);MP−500D(Yanako)
赤外吸収スペクトル(IR);FT/IR−230(JASCO Corp.)
ガスクロマトグラフィー(GLC);GC−14A(Shimadzu Corp.)
(実施例1)
IrHCl2((R)−dm−segphos)(p−アニシジン)の合成
窒素置換をしたシュレンク管に[{IrH((R)dm―segphos)}2(μ−Cl)3]Cl50mg(0.051mmol)、p−アニシジン6.2mg(0.05mmol)、塩化メチレン2mlを加え、室温下1時間攪拌した。反応液を濃縮し44mg(収率80%)の表題化合物を得た。
1H NMR (CD2Cl2): δ 7.7-6.55 (m, 12H), 7.25 (dd, J = 8.4, 11.5 Hz, 1H), 6.65 (dd, J = 1.1, 8.4 Hz, 1H), 6.50 (d, J = 8.9 Hz, 2H), 6.37 (d, J = 8.9 Hz, 2H), 6.21
(dd, J = 1.5, 8.4 Hz, 1H), 6.01 (dd, J = 8.4, 11.8 Hz, 1H), 6.00-5.90 (m, 1H), 5.88 (d, J = 1.1 Hz, 1H), 5.75 (d, J = 1.1 Hz, 1H), 5.67 (d, J = 1.1 Hz, 1H), 5.60 (d, J = 1.1 Hz, 1H), 4.50-4.30 (m, 1H), 3.67 (s, 3H), 2.30 (s, 6H), 2.29 (s, 6H), 2.24 (s, 6H), 2.14 (brs, 3H), 2.05 (brs, 3H), -20.41 (dd, J = 13.9, 21.4 Hz, 1H).
31P NMR (CD2Cl2): δ -0.17 (br), -6.79 (br).
HRMS (ESI): m/z calced for C53H53NO5P2ClIr [M-Cl]+ 1074.2789; m/z found 1074.2778.
(実施例2)
IrHCl2((R)―binap)(N−Me−p−アニシジン)の合成
窒素置換したシュレンク管に[IrCl(coe)22200mg(0.45mmol)、(R)−BINAP308mg(0.49mmol)、トルエン10mlを加え、室温下1時間攪拌した。続いて、N−メチル−p−アニシジン102mg(0.74mmol)を加え同温にて30分攪拌した。さらに、濃塩酸160μl(2.10 mmol)を加え4時間攪拌後、析出物をろ過して淡黄色な表題錯体270mgを得た。収率59.6%。
1H NMR (C6D6): δ 8.70-6.20 (m, 36H), 3.12 (s, 3H), 2.82 (s, 3H), -20.26 (dd, J = 14.1, 19.5 Hz, 1H);
31P NMR (C6D6): δ-0.18 (m), -3.57 (m).
(実施例3)
IrHCl2((R)―binap)(N−Me−p−アニシジン)の合成
窒素置換したシュレンク管に[{IrH((R)―binap)}2(μ−Cl)3]Cl50mg(0.056mmol)、N−メチル−p−アニシジン塩酸塩24mg(0.138mmol)、トルエン5mlを加え、室温下1時間攪拌した後に、析出物をろ過して淡黄色な表題錯体57mgを得た。収率99.2%。
(実施例4)
[IrHCl((R)―dm−segphos)(N−Me−p−アニシジン)2]Clの合成
窒素置換したシュレンク管に[{IrH((R)―dm−segphos)}2(μ−Cl)3]Cl72.8 mg(0.037mmol)、N−メチル−p−アニシジン塩酸塩64.1 mg(0.37mmol)、THF3mlを加え、室温下1時間攪拌した後に、不溶物をろ過して表題錯体88mgを得た。収率95%。
1H NMR (C6D6): δ 8.18 (s, 1H),8.15 (s, 1H), 8.10-7.40 (m, 4H), 7.74 (d, J = 8.4
Hz, 4H), 7.61 (dd, J = 8.4, 11.6 Hz, 1H), 7.65-7.50 (m, 2H), 6.82 (s, 1H), 6.78
(s, 1H), 6.75 (s, 1H), 6.70-6.60 (m, 1H), 6.66 (s, 1H), 6.54 (d, J = 8.4 Hz, 4H), 6.38 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 6.02 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 5.41 (s, 1H), 5.29 (s, 1H), 5.27 (s, 1H), 5.21 (s, 1H), 3.16 (s, 6H), 2.90 (s, 6H), 2.20-1.95 (m, 24H), -20.5 (dd, J = 14.5, 19.2 Hz, 1H).
31P NMR (C6D6): δ0.17 (m), -4.37 (m).
(実施例5)
[IrHCl((R)―dm−binap)(N−Me−p−アニシジン)2]Clの合成
窒素置換したシュレンク菅に[{IrH((R)―dm−binap)}2(μ−Cl)3]Cl200mg(0.100mmol)、N−メチル−p−アニシジン塩酸塩173.6mg(1.00mmol)、THF10mLを加え、室温下1時間攪拌した後に、析出物をろ過して表題錯体233mgを得た。収率92%。
1H NMR (C6D6): δ 8.55-6.55 (m, 26H), 6.47 (d, J = 9.0 Hz, 4H), 6.20-6.05 (m, 2H), 3.12 (s, 6H), 2.85 (s, 6H), 2.20 (s, 6H), 2.12 (s, 6H), 1.78 (s, 6H), 1.68 (s, 6H), -20.84 (dd, J = 15.0, 19.2 Hz, 1H).
31P NMR (C6D6): δ -0.89 (m), -6.51 (m).
(実施例6)
2−メチルキノリンの不斉水素化反応
100mlステンレス製オートクレーブにIrHCl2((R)―binap)(N−Me−p−アニシジン)21.6mg(0.021mmol)を加え、窒素置換後、塩化メチレン5.0ml、2−メチルキノリン60.1mg(0.420 mmol)を加えた。続いて、5.0MPaの圧力で水素を導入し、80℃にて18時間攪拌した。冷却後、反応物をGCにて分析したところ、転化率は96%、不斉収率は49%eeであった。
(実施例7)
2−メチルキノリンの不斉水素化反応(in situ法)
100mlステンレス製オートクレーブに[{IrH((R)−binap)}2(μ−Cl)3]Cl18.4mg(0.010mmol)、N−メチル−p−アニシジン28.6mg(0.208mmol)を加え、窒素置換後、塩化メチレン5.0ml、2−メチルキノリン60.6mg(0.423mmol)を加えた。続いて、5.0MPaの圧力で水素を導入し、80℃にて18時間攪拌した。冷却後、反応物をGCにて分析したところ、転化率は95%、不斉収率は56%eeであった。
(実施例8)
2−メチルキノリンの不斉水素化反応(in situ法)
100mlステンレス製オートクレーブに[{IrH((R)−binap)}2(μ−Cl)3]Cl18.6mg(0.010mmol)、N−メチル−p−アニシジン塩酸塩36.5mg(0.210mmol)を加え、窒素置換後、塩化メチレン5.0ml、2−メチルキノリン60.1mg(0.420mmol)を加えた。続いて、5.0MPaの圧力で水素を導入し、80℃にて18時間攪拌した。冷却後、反応物をGCにて分析したところ、転化率は96%、不斉収率は65%eeであった。
(比較例1)
2−メチルキノリンの不斉水素化反応(アミンなし)
100mlステンレス製オートクレーブに[{IrH((S)−binap)}2(μ−Cl)3]Cl18.6mg(0.010mmol)を加え、窒素置換後、塩化メチレン5.0ml、2−メチルキノリン60.9mg(0.425mmol)を加えた。続いて、5.0MPaの圧力で水素を導入し、80℃にて18時間攪拌した。冷却後、反応物をGCにて分析したところ、転化率は96%、不斉収率は38%eeであった。
(実施例9)
2−メチルキノリンの不斉水素化反応
100mlステンレス製オートクレーブに[IrHCl((R)―dm−segphos)(N−Me−p−アニシジン)2]Cl11.8mg(0.0094mmol)を加え、窒素置換後、塩化メチレン2.5ml、2−メチルキノリン30.1mg(0.210 mmol)を加えた。続いて、5.0MPaの圧力で水素を導入し、80℃にて18時間攪拌した。冷却後、反応物をGCにて分析したところ、転化率は92%、不斉収率は64%eeであった。
(実施例10)
2−メチルキノリンの不斉水素化反応(in situ法)
実施例7において、[{IrH((R)−binap)}2(μ−Cl)3]Clを[{IrH((R)−dm−segphos)}2(μ−Cl)3]Clに代えた以外は実施例7と同様の操作を行った結果、転化率は92%、不斉収率は72%eeであった。
(実施例11)
2−メチルキノリンの不斉水素化反応(in situ法)
実施例10において、溶媒を塩化メチレンからテトラヒドロフランに代えた以外は実施例10と同様の操作を行った結果、転化率は99%、不斉収率は75%eeであった。

Claims (5)

  1. 下記一般式(1a)又は(1b)のイリジウム錯体。
    IrHZ 2 (PP)(Q) (1a)
    [IrHZ(PP)(Q) 2 ]Z (1b)
    (式(1a)及び(1b)中、Zはハロゲン原子を示し、PPは下記式(4)
    Figure 0005762887
    (式中、R 11 、R 12 、R 13 及びR 14 は、それぞれ独立して、炭素数1〜10のアルキル基及び炭素数1〜10のアルコキシ基から選ばれる置換基で置換されていてもよいフェニル基を示す。)
    又は下記式(5)
    Figure 0005762887
    (式中、R 15 、R 16 、R 17 及びR 18 は、それぞれ独立して、炭素数1〜10のアルキル基及び炭素数1〜10のアルコキシ基から選ばれる置換基で置換されていてもよいフェニル基を示す。R 19 及びR 24 は水素原子を示し、R 20 とR 21 及びR 22 とR 23 がメチレンジオキシ基を形成する。)
    で示される光学活性ビスホスフィンを示し、
    Qは下記一般式(3)
    Figure 0005762887
    (式中、R 4 、R 5 、R 6 、R 7 及びR 8 は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基又はシアノ基を示し、R 9 及びR 10 は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示す。nは0を示す。)
    で表されるアミンを示す。)
  2. 下記一般式(1a)又は(1b)のイリジウム錯体の製造法であって、
    IrHZ 2 (PP)(Q) (1a)
    [IrHZ(PP)(Q) 2 ]Z (1b)
    (式(1a)及び(1b)中、Zはハロゲン原子を示し、PPは下記式(4)
    Figure 0005762887
    (式中、R 11 、R 12 、R 13 及びR 14 は、それぞれ独立して、炭素数1〜10のアルキル基及び炭素数1〜10のアルコキシ基から選ばれる置換基で置換されていてもよいフェニル基を示す。)
    又は下記式(5)
    Figure 0005762887
    (式中、R 15 、R 16 、R 17 及びR 18 は、それぞれ独立して、炭素数1〜10のアルキル基及び炭素数1〜10のアルコキシ基から選ばれる置換基で置換されていてもよいフェニル基を示す。R 19 及びR 24 は水素原子を示し、R 20 とR 21 及びR 22 とR 23 がメチレンジオキシ基を形成する。)
    で示される光学活性ビスホスフィンを示し、Qは下記一般式(3)
    Figure 0005762887
    (式中、R 4 、R 5 、R 6 、R 7 及びR 8 は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基又はシアノ基を示し、R 9 及びR 10 は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示す。nは0を示す。)
    で表されるアミンを示す。)
    下記一般式(6)で示されるイリジウム錯体に対して1当量以上のアミン又はその塩を反応させることを特徴とする製造法。
    [{IrH(PP)}2(μ−Z)3]Z (6)
    (式中、Zはハロゲン原子を示し、PPは式(4)又は(5)で示される光学活性ビスホスフィンを示す。)
  3. 下記一般式(1a)又は(1b)のイリジウム錯体の製造法であって、
    IrHZ 2 (PP)(Q) (1a)
    [IrHZ(PP)(Q) 2 ]Z (1b)
    (式(1a)及び(1b)中、Zはハロゲン原子を示し、PPは下記式(4)
    Figure 0005762887
    (式中、R 11 、R 12 、R 13 及びR 14 は、それぞれ独立して、炭素数1〜10のアルキル基及び炭素数1〜10のアルコキシ基から選ばれる置換基で置換されていてもよいフェニル基を示す。)
    又は下記式(5)
    Figure 0005762887
    (式中、R 15 、R 16 、R 17 及びR 18 は、それぞれ独立して、炭素数1〜10のアルキル基及び炭素数1〜10のアルコキシ基から選ばれる置換基で置換されていてもよいフェニル基を示す。R 19 及びR 24 は水素原子を示し、R 20 とR 21 及びR 22 とR 23 がメチレンジオキシ基を形成する。)
    で示される光学活性ビスホスフィンを示し、Qは下記一般式(3)
    Figure 0005762887
    (式中、R 4 、R 5 、R 6 、R 7 及びR 8 は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基又はシアノ基を示し、R 9 及びR 10 は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示す。nは0を示す。)
    で表されるアミンを示す。)
    下記一般式(7)で示されるイリジウム錯体に対して1当量以上のアミン又はその塩を反応させ、続いて1当量以上のハロゲン化水素HZ(Zはハロゲン原子を示す。)又はその水溶液を反応させることを特徴とする製造法。
    [IrZ(PP)]2 (7)
    (式中、Zはハロゲン原子を示し、PPは式(4)又は(5)で示される光学活性ビスホスフィンを示す。)
  4. 請求項に記載のイリジウム錯体を含む不斉水素化触媒。
  5. プロキラルな炭素−炭素二重結合、プロキラルな炭素−酸素二重結合及び/又はプロキラルな炭素−窒素二重結合を有する化合物又は(複素)芳香環化合物を不斉水素化することを含む光学活性化合物の製造方法であって、
    不斉水素化を、下記一般式(6)で示されるイリジウム錯体、及び
    [{IrH(PP)}2(μ−Z)3]Z (6)
    (式中、Zはハロゲン原子を示し、PPは下記式(4)
    Figure 0005762887
    (式中、R 11 、R 12 、R 13 及びR 14 は、それぞれ独立して、炭素数1〜10のアルキル基及び炭素数1〜10のアルコキシ基から選ばれる置換基で置換されていてもよいフェニル基を示す。)
    又は下記式(5)
    Figure 0005762887
    (式中、R 15 、R 16 、R 17 及びR 18 は、それぞれ独立して、炭素数1〜10のアルキル基及び炭素数1〜10のアルコキシ基から選ばれる置換基で置換されていてもよいフェニル基を示す。R 19 及びR 24 は水素原子を示し、R 20 とR 21 及びR 22 とR 23 がメチレンジオキシ基を形成する。)
    で示される光学活性ビスホスフィンを示す。)
    下記一般式(3)で表されるアミン又はその塩の存在下で行うことを特徴とする製造方法。
    Figure 0005762887
    (式中、R4、R5、R6、R7及びR8は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基又はシアノ基を示し、R9及びR10は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示す。nは0を示す。)
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