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JP5760160B2 - 熱収縮性フィルム - Google Patents

熱収縮性フィルム Download PDF

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JP5760160B2 JP2009280140A JP2009280140A JP5760160B2 JP 5760160 B2 JP5760160 B2 JP 5760160B2 JP 2009280140 A JP2009280140 A JP 2009280140A JP 2009280140 A JP2009280140 A JP 2009280140A JP 5760160 B2 JP5760160 B2 JP 5760160B2
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Description

本発明は、熱収縮性フィルムに関する。より詳しくは、シュリンクラベルとして用いた場合に、熱収縮時に層間剥離が発生することが無く、外観、収縮加工性に優れた熱収縮性フィルムに関する。
近年、お茶や清涼飲料水等の飲料用容器として、ポリエチレンテレフタレート製ボトル(PETボトル)などのプラスチック製ボトルが広く利用されている。これらの容器では、使用した素材を効率よく再利用するため、ボトル本体に直接印刷したり接着剤を用いてラベルを貼付したりすることが極力避けられている。そのため、商品としての必要な表示(商品名や取扱説明など)や装飾をボトルに施すためには、該表示や装飾を一旦熱収縮性フィルム(「シュリンクフィルム」とも称する)に印刷し、該熱収縮性フィルムをシュリンクラベルに仕立てた後にボトルに装着し、加熱収縮(シュリンク加工)させてボトルに固定する方法が一般的である。
上記用途においては、熱収縮性フィルムは印刷特性に優れ、また、収縮処理に適する熱収縮特性を持つ事が必須であり、加えて、ラベルとしての諸機械的特性(機械特性)も具備しなければならない。しかしながら、これらの要求特性全てを同時に満足する事は甚だ難しい。
例えば、ポリスチレン系樹脂(特にスチレン・ブタジエンブロック共重合体)からなる熱収縮性フィルムは、良好な収縮(熱収縮)特性(例えば、比較的収縮が急激でなく、収縮が穏やかである)に加え、優れた外観や耐熱性を示し、さらに、共重合におけるモノマー処方、化合物における材料処方の自由度が高く、延伸フィルムとしての剛性や収縮挙動の調整が容易であるため、シュリンクラベル用の素材として扱い易いという利点がある。しかしながら、耐溶剤性に劣るため、場合によっては印刷に際して特殊なインクを必要するなどの問題があった。
また、ポリエステル系樹脂(特に非晶性ポリエステル系樹脂)からなる熱収縮性フィルムは、良好な機械特性、優れた耐薬品性、高い収縮率(熱収縮率)を示すなどの利点がある。また、廃棄処理に際してPETボトルとの分別を必要とせず好ましい場合がある。しかし、耐熱性に劣るため自然収縮しやすく、また、収縮速度と収縮応力が大きいため収縮の均等性が損なわれ、収縮後の収縮班やシワが発生しやすいという欠点がある。
また、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂からなる熱収縮性フィルムは、成形性(成型性)、延伸性に優れ、比重が小さいため廃棄に際して比重分離が容易であるなどの利点がある。特に、メタロセン触媒によるプロピレンとα−オレフィンとの共重合体からなる熱収縮性フィルムは比較的良好な収縮特性を示す利点がある。しかし、収縮率が小さい、印刷性や溶剤によるセンターシール性に劣る、剛性が不足する、引き裂き性が悪いなどの問題点がある。上記ポリオレフィン系樹脂の中でも、環状オレフィン系樹脂の場合は、高い収縮率を示し、剛性も十分であり、溶剤によるセンターシール性も良いため、より使い易いものである。しかし、前記環状オレフィン系樹脂からなる熱収縮性フィルムは脆いため、単独では皮膜としての機械特性に劣るという問題点がある。
近年、熱収縮性フィルムに求められる特性が複合化し、例えば、柔軟性と寸法安定性、優れた印刷性と耐薬品性、腰の強さ(剛性)と耐衝撃性というような、単一の樹脂では満足しえないような特性が組み合わされて求められている。かかる要求を満たすためには、要求される特性ごとに対応しうる素材を選択し、これらを層別に複合化させた積層フィルムを以て対応することが一般的である(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、上記ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などの異種材料からなる積層フィルムは、収縮特性の異なる層を組み合わせているため、加熱収縮処理に際して層間剥離を招くことが多い。このような剥離は、シュリンクラベル用途に用いた時には熱収縮処理に際してセンターシールした部分(接着部分)の付近で発生することが多く、センターシール部で重畳するフィルムの外側の層のエッジ部が外側に捲れ上がるような形態で発生する場合が多い。層毎の収縮挙動が大きく異なる場合には、エッジ部に剥離による空洞が発生する。この剥離による空洞がセンターシール部に多発すると、ボトル全体の外観を大きく損ね、商品価値を著しく落とすこととなる。
上記問題への対策として、剥離の進行しやすい層間に接着剤層を設ける試みが多く試されており、エチレン−酢酸ビニル系樹脂などの接着剤層が知られている(例えば、特許文献2参照)。
しかし、上記のように接着剤層を設ける方法はフィルムの層構成を複雑にし、生産を難しくするばかりか、コストも大幅に上昇させる場合が多い。加えて、接着剤層を設けることで、接着剤層自体の技術上の課題が本来のフィルムの課題に複合化される場合がある。例えば、接着剤層を介して積層された熱収縮性フィルムは、接着剤層を形成する工程が必要であることから、製造工程が複雑になり且つ多層の積層が可能な装置が必要となるため、製造コストが高くなるという問題を有している。また、透明性が要求される熱収縮性フィルムにおいては、接着剤層によって透明性が阻害され、特に、高収縮時(例えば、熱収縮率が30%以上)において、接着剤層がフィルムの収縮に追従できずムラが発生して、光学特性(透明性)が低下するという問題が生じる場合もある。また、接着剤層がフィルムの収縮に追従できないことによりフィルム自体の収縮率が低下する問題も生じている。更に、接着剤層の効果により、熱収縮加工(シュリンク加工)前では、比較的高い層間強度を有するものでも、加熱収縮工程で軟化し、接着剤層(接着剤)としての機能を失う(接着剤層を設けているから剥離進行する)例もある。
特開2002−351332号公報 国際公開2009/084212号パンフレット
そこで、上記従来の問題点に鑑み、本発明の目的は、接着力が比較的低い互いに異なる樹脂を積層して得られた熱収縮性フィルムであっても、シュリンク(加熱収縮)時の層間剥離を防止することができ、外観が良く、しかも低コストで簡易に製造することができる熱収縮性フィルムを提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、互いに異なる樹脂からなる樹脂層を積層して得られた熱収縮性フィルムにおいて、隣接する樹脂層の熱収縮挙動をある特定の範囲内に近接させる事により、接着剤層を設けなくても、収縮時の層間剥離が発生することが無く、外観が良い熱収縮性フィルムが得られることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、互いに隣接して積層された樹脂層(A層)及び樹脂層(B層)を有する熱収縮性フィルムであって、以下の(1’)〜(6)の全てを満たすことを特徴とする熱収縮性フィルムを提供する。(1’)A層及びB層は、ポリエステル系樹脂又は共役ジエンの含有量が単量体成分の全重量に対して5〜30重量%であるスチレン−共役ジエン共重合体を主成分とする樹脂層である。ただし、前記ポリエステル系樹脂は、ジカルボン酸成分とジオール成分とで構成されるポリエステル系樹脂、又は、ジカルボン酸成分とジオール成分と、オキシカルボン酸、モノカルボン酸、多価カルボン酸、1価アルコール、及び多価アルコールからなる群より選ばれた1種以上の成分とで構成されるポリエステル系樹脂である。(2)A層とB層とは異種の樹脂を主成分とする樹脂層である。(3)T型剥離試験における、A層とB層の接着強度が2.5N/15mm以下である。(4’)熱収縮性フィルムの主配向方向の熱収縮率(80℃、30秒)が40〜85%である。(5)前記主配向方向における、A層の熱収縮率(80℃、30秒)とB層の熱収縮率(80℃、30秒)の差の絶対値、A層の熱収縮率(90℃、30秒)とB層の熱収縮率(90℃、30秒)の差の絶対値、及び、A層の熱収縮率(98℃、30秒)とB層の熱収縮率(98℃、30秒)の差の絶対値のうち、少なくとも1つが10%以下である。(6)A層及びB層が共押出により積層されており、かつ、延伸処理が施されている。
さらに、本発明は、前記スチレン−共役ジエン共重合体において、スチレン系単量体の含有量が、単量体成分の全重量に対して、60〜95重量%であり、共役ジエンの含有量が、単量体成分の全重量に対して、5〜40重量%である前記の熱収縮性フィルムを提供する。
さらに、本発明は、前記ポリエステル系樹脂のガラス転移温度が60〜100℃であり、前記スチレン−共役ジエン共重合体のガラス転移温度が60〜120℃である前記の熱収縮性フィルムを提供する。
さらに、本発明は、前記A層を形成する原料及び前記B層を形成する原料が、周波数10Hzの動的粘弾性測定において測定された複素弾性率の絶対値(|E * |)が、80〜120℃の温度領域で、30〜300MPaとなる部分がある前記の熱収縮性フィルムを提供する。
なお、本明細書では、互いに隣接して積層された樹脂層(A層)及び樹脂層(B層)を有する熱収縮性フィルムであって、以下の(1)〜(5)の全てを満たすことを特徴とする熱収縮性フィルムについても説明する。(1)A層及びB層は、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂及びポリオレフィン系樹脂(環状ポリオレフィン系樹脂を含む)からなる群より選ばれた1種の樹脂を主成分とする樹脂層である。(2)A層とB層とは異種の樹脂を主成分とする樹脂層である。(3)T型剥離試験における、A層とB層の接着強度が2.5N/15mm以下である。(4)熱収縮性フィルムの主配向方向の熱収縮率(80℃、30秒)が20%以上である。(5)前記主配向方向における、A層の熱収縮率(80℃、30秒)とB層の熱収縮率(80℃、30秒)の差の絶対値、A層の熱収縮率(90℃、30秒)とB層の熱収縮率(90℃、30秒)の差の絶対値、及び、A層の熱収縮率(98℃、30秒)とB層の熱収縮率(98℃、30秒)の差の絶対値のうち、少なくとも1つが10%以下である。
本発明の熱収縮性フィルムは、接着剤層を介さずに互いに異なる樹脂を積層していても、加熱収縮時において層間剥離が発生することがない。このため、優れた外観を有し、しかも低コストで簡易に製造することができる。また、互いに異なる樹脂層が積層されるため、異なる機能が複合化された熱収縮性フィルムを得ることができる。
[本発明の熱収縮性フィルム]
本発明の熱収縮性フィルムは、互いに隣接して積層された、一の樹脂層(A層)及びA層と異なる他の一の樹脂層(B層)を有する。なお、上記の「互いに隣接して積層された」とは、A層の表面上に、接着剤層などの他の層を介さずに、B層が直接積層されている状態をいう。本発明の熱収縮性フィルムは、上記のA層とB層が他の層を介さずに積層されたA/Bの積層構造を少なくとも有していればよく、複数のA層やB層を有していてもよく、本発明の効果を損なわない範囲であれば、さらにA層及びB層以外の層(「C層」と称する場合がある)を有していてもよい。なお、本明細書において、A層及びB層は、それぞれ単一の樹脂層を意味する。
上記のA層及びB層は、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂及びポリオレフィン系樹脂(環状ポリオレフィン系樹脂を含む)からなる群より選ばれた1種の樹脂を主成分とする樹脂層である。なお、本明細書において、「主成分」とは、当該樹脂層中に70重量%以上含まれる成分を意味する。即ち、上記のA層及びB層は、それぞれ、ポリエステル系樹脂を70重量%以上含有する樹脂層(以下、「ポリエステル系樹脂層」と称する場合がある)、ポリスチレン系樹脂を70重量%以上含有する樹脂層(以下、「ポリスチレン系樹脂層」と称する場合がある)及びポリオレフィン系樹脂(環状ポリオレフィン系樹脂を含む)を70重量%以上含有する樹脂層(以下、「ポリオレフィン系樹脂層」と称する場合がある)の3種の樹脂層から選ばれたいずれか1種の樹脂層である。
また、A層とB層とは異種の樹脂を主成分とする樹脂層である。即ち、A層とB層の組合せ[(A層,B層)]は、(ポリエステル系樹脂層,ポリスチレン系樹脂層)、(ポリエステル系樹脂層,ポリオレフィン系樹脂層)、(ポリスチレン系樹脂層,ポリエステル系樹脂層)、(ポリスチレン系樹脂層,ポリオレフィン系樹脂層)、(ポリオレフィン系樹脂層,ポリエステル系樹脂層)、(ポリオレフィン系樹脂層,ポリスチレン系樹脂層)のいずれかである。本発明は、互いに異なる特性を有する、異種の樹脂を主成分とする樹脂層同士を積層できることを特徴としている。
(ポリエステル系樹脂層)
上記のポリエステル系樹脂層は、樹脂層の総重量に対して、ポリエステル系樹脂を70重量%以上(例えば、70〜100重量%)含有する樹脂層である。上記ポリエステル系樹脂の含有量は、90〜100重量%が好ましい。上記ポリエステル系樹脂としては、ジカルボン酸成分とジオール成分とで構成される種々のポリエステルが挙げられる。
上記ジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,5−ジメチルテレフタル酸、5−t−ブチルイソフタル酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、トランス−3,3’−スチルベンジカルボン酸、トランス−4,4’−スチルベンジカルボン酸、4,4’−ジベンジルジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、2,2,6,6−テトラメチルビフェニル−4,4’−ジカルボン酸、1,1,3−トリメチル−3−フェニルインデン−4,5−ジカルボン酸、1,2−ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、2,5−アントラセンジカルボン酸、2,5−ピリジンジカルボン酸、及びこれらの置換体等の芳香族ジカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸、ノナデカン二酸、イコサン二酸、ドコサン二酸、1,12−ドデカンジオン酸、及びこれらの置換体等の脂肪族ジカルボン酸;1,4−デカヒドロナフタレンジカルボン酸、1,5−デカヒドロナフタレンジカルボン酸、2,6−デカヒドロナフタレンジカルボン酸、シス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、トランス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、及びこれらの置換体等の脂環式ジカルボン酸などが挙げられる。これらのジカルボン酸成分は、単独で又は二以上を組み合わせて使用できる。
上記ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,8−オクタンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2,4−ジメチル−1,3−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の脂肪族ジオール;1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール等の脂環式ジオール;2,2−ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシジフェニル)プロパン、ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン等のビスフェノール系化合物のエチレンオキシド付加物、キシレングリコール等の芳香族ジオールなどが挙げられる。これらのジオール成分は単独で又は二以上を組合せて使用できる。
上記ポリエステル系樹脂は、上記以外にも、p−オキシ安息香酸、p−オキシエトキシ安息香酸等のオキシカルボン酸;安息香酸、ベンゾイル安息香酸等のモノカルボン酸;トリメリット酸等の多価カルボン酸;ポリアルキレングリコールモノメチルエーテル等の1価アルコール;グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の多価アルコールなどの構成単位を含んでいてもよい。
本発明においては、上記ポリエステル系樹脂のなかでも、芳香族ポリエステル系樹脂が好ましく用いられる。なお、上記芳香族ポリエステル系樹脂とは、全ジカルボン酸成分中の50モル%以上(好ましくは70モル%以上)が芳香族ジカルボン酸、及び/又は、全ジオール成分中の50モル%以上(好ましくは70モル%以上)が芳香族ジオールであるポリエステル系樹脂である。さらに、芳香族ジカルボン酸を含むジカルボン酸と脂肪族ジオールを含むジオールとの縮合反応による重合体、共重合体、またはこれらの混合物である芳香族ポリエステル系樹脂が好ましい。さらに、該ポリエステル系樹脂が単一の繰り返し単位から構成されているのではなく、変性成分(共重合成分)を含んでいる変性芳香族ポリエステル系樹脂が特に好ましい。例えば、ジカルボン酸成分又はジオール成分の少なくとも一方が二以上の成分から構成される、即ち、主成分の他に変性成分を含んでいる変性芳香族ポリエステル系樹脂が好ましい。
上記の芳香族ポリエステル系樹脂としては、特に限定されないが、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を用い、ジオール成分としてエチレングリコール(EG)を用いたポリエチレンテレフタレート(PET);ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を用い、ジオール成分としてエチレングリコールを主成分、1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)を共重合成分として用いた変性芳香族ポリエステル系樹脂(「CHDM共重合PET」と称する場合がある);ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を用い、ジオール成分としてエチレングリコールを主成分、2,2−ジアルキル−1,3−プロパンジオールを共重合成分として用いた変性芳香族ポリエステル系樹脂(「2,2−ジアルキル−1,3−プロパンジオール共重合PET」と称する場合がある)が好ましいものとして例示される。さらに、2,2−ジアルキル−1,3−プロパンジオール共重合PETの中では、特に、ネオペンチルグリコール(NPG)を共重合成分として用いた変性芳香族ポリエステル系樹脂(「NPG共重合PET」と称する場合がある)が、コストや生産性の観点で、特に好ましい。さらに、低温収縮性向上の観点で、ジエチレングリコールを共重合していてもよい。
上記の変性芳香族ポリエステル系樹脂において、変性に用いる共重合成分の共重合比率(全ジカルボン酸成分に対する共重合ジカルボン酸成分の比率、または、全ジオール成分に対する共重合ジオール成分の比率)は、層間剥離の防止又は抑制の観点から、15モル%以上(例えば、15〜40モル%)が好ましい。中でも、例えば、CHDM共重合PETの場合、CHDMの共重合の割合は、ジオール成分中(即ち、テレフタル酸100モル%に対して)、20〜40モル%(EGが60〜80モル%)が好ましく、さらに好ましくは25〜35モル%(EGが65〜75モル%)である。また、2,2−ジアルキル−1,3−プロパンジオール共重合PETの場合、2,2−ジアルキル−1,3−プロパンジオールの割合は、ジオール成分中、15〜40モル%(EGが60〜85モル%)が好ましい。また、さらにEG成分の一部(好ましくは、ジオール成分中、1〜10モル%)をジエチレングリコールに置き換えてもよい。
上記ポリエステル系樹脂は、実質的に非晶性のポリエステル系樹脂(特に、非晶性の飽和ポリエステル系樹脂)であることが好ましい。ポリエステルを非晶性とすることにより、良好な延伸特性や収縮特性が得られるため好ましい。従って、熱収縮時における積層された樹脂層の層間剥離を防止又は抑制することができる。芳香族ポリエステル系樹脂は、上述のように変性することによって、結晶化しにくくなるため、変性によって実質的に非晶性とすることができる。
上記ポリエステル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、溶融挙動や収縮特性、延伸特性の観点から、15000〜90000が好ましく、より好ましくは30000〜80000である。
上記ポリエステル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、収縮特性、延伸特性の観点からから、60〜100℃が好ましく、より好ましくは70〜85℃である。上記Tgは、ポリエステルの種類や変性に用いる共重合成分(変性成分)の種類や共重合比率により制御できる。なお、上記Tgは、示差走査熱量測定(DSC)にて測定することができる。
上記ポリエステル系樹脂としては、市販品を用いることも可能であり、例えば、Eastman Chemical社製「EMBRACE 21214」、「EMBRACE LV」(以上、CHDM共重合PET)や、(株)ベルポリエステルプロダクツ製「ベルペット E02」(NPG共重合PETなど)等が市場で入手できる。
上記ポリエステル系樹脂層は、必要に応じて、その他の添加剤、例えば、滑剤、充填剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、着色剤、ピニング剤(アルカリ土類金属)等を含んでいてもよい。
(ポリスチレン系樹脂層)
上記のポリスチレン系樹脂層は、樹脂層の総重量に対して、ポリスチレン系樹脂を70重量%以上(例えば、70〜100重量%)含有する樹脂層である。上記ポリスチレン系樹脂の含有量は、90〜100重量%が好ましい。上記ポリスチレン系樹脂としては、スチレンの単独重合体である一般ポリスチレン(GPPS)などのスチレン系単量体の単独重合体又は共重合体;合成ゴムにスチレンをグラフト重合させた高衝撃性ポリスチレン(HIPS);スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBS)に代表される、スチレン系単量体とブタジエンやイソプレン等のジエン系単量体(共役ジエン)からなる共重合体(特に、ブロック共重合体)であるスチレン−共役ジエン共重合体;スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル系単量体などの共重合体であるスチレン−重合性不飽和カルボン酸エステル共重合体;スチレン−共役ジエン−重合性不飽和カルボン酸エステル共重合体;スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル系単量体との共重合体をグラフト重合させた透明・高衝撃性ポリスチレン(グラフトTIPS)等が挙げられる。本発明においては、なかでも、スチレン−共役ジエン共重合体が好ましい。スチレン−共役ジエン共重合体は、スチレン系単量体及び共役ジエンを必須の単量体成分として構成される共重合体である。
上記スチレン系単量体としては、特に限定されないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、p−イソブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、クロロメチルスチレンなどが挙げられる。中でも、強度、成型性などの物性の観点から、スチレンが特に好ましい。なお、これらスチレン系単量体は、単独で用いてもよいし、二以上を併用してもよい。
上記共役ジエンとしては、特に限定されないが、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン(2−メチル−1,3−ブタジエン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、クロロプレンなどが挙げられる。中でも、脆性改良、柔軟性付与の観点から、1,3−ブタジエン、イソプレンが特に好ましい。なお、これら共役ジエンは、単独で用いてもよいし、二以上を併用してもよい。
上記スチレン−共役ジエン共重合体において、上記スチレン系単量体の含有量は、単量体成分の全重量に対して、60〜95重量%が好ましく、より好ましくは70〜85重量%である。一方、上記共役ジエンの含有量は、単量体成分の全重量に対して、5〜40重量%が好ましく、より好ましくは15〜30重量%である。スチレン系単量体の含有量が60重量%未満の場合(共役ジエンの含有量が40重量%を超える場合)には、フィルムに腰がなくなる場合や自然収縮が大きくなる場合があり、共役ジエンの含有量が5重量%未満の場合(スチレン系単量体の含有量が95重量%を超える場合)には、フィルムが脆くなる場合や伸度が低くなる場合がある。
上記スチレン−共役ジエン共重合体の共重合の形態としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体など特に限定されないが、ブロック共重合体が好ましく、スチレン(S)−共役ジエンブロック(D)型、S−D−S型、D−S−D型、S−D−S−D型等が挙げられる。
上記スチレン−共役ジエン共重合体としては、具体的には、例えば、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−ブタジエン−イソプレンブロック共重合体(SBIS)、スチレン−エチレン−ブチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン共重合体(SEPS)などが例示される。中でも、最も好ましくは、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBS)、スチレン−ブタジエン−イソプレンブロック共重合体(SBIS)である。
上記ポリスチレン系樹脂のTgは、収縮特性の観点から、60〜120℃が好ましく、より好ましくは75〜95℃である。なお、上記Tgは、示差走査熱量測定(DSC)にて測定することができる。
上記ポリスチレン系樹脂の密度は、1.00〜1.05g/cm3が好ましい。
上記ポリスチレン系樹脂のビカット軟化点(JIS K 7206に準拠)は、70〜90℃が好ましく、より好ましくは70〜85℃である。
上記ポリスチレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)(JIS K 7210に準拠;温度200℃/荷重49N)は、1〜15g/10分が好ましく、より好ましくは3〜10g/10分である。
上記ポリスチレン系樹脂としては、市販品を用いてもよく、例えば、旭化成ケミカルズ(株)製「アサフレックス 830」、電気化学工業(株)製「クリアレン 730L」などが挙げられる。
上記ポリスチレン系樹脂層は、必要に応じて、その他の添加剤、例えば、滑剤、充填剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、着色剤、ピニング剤(アルカリ土類金属)等を含んでいてもよい。
(ポリオレフィン系樹脂層)
上記のポリオレフィン系樹脂層は、樹脂層の総重量に対して、ポリオレフィン系樹脂を70重量%以上(例えば、70〜100重量%)含有する樹脂層である。なお、上記ポリオレフィン系樹脂には、環状ポリオレフィン系樹脂(環状オレフィン系樹脂)が含まれる。上記ポリオレフィン系樹脂の含有量は、90〜100重量%が好ましい。本発明において、ポリオレフィン系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィンの単独重合体(例えば、ホモポリプロピレンなど);エチレン−α−オレフィン共重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体等の共重合体(オレフィン系エラストマーを含む);環状オレフィンとα−オレフィン(エチレン、プロピレン等)との共重合体又はそのグラフト変性物、環状オレフィンの開環重合体若しくはその水添物又はそれらのグラフト変性物等の非晶性環状オレフィン系重合体等が挙げられる。上記の中でも、ホモポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン共重合体(特に、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体)、エチレン−α−オレフィン共重合体が好ましい。さらに、ポリオレフィン系樹脂は、メタロセン触媒により重合して得られたポリオレフィン系樹脂(特に、メタロセン触媒により重合して得られた直鎖状ポリオレフィン系樹脂)が好ましく、特に好ましくはメタロセン触媒により重合して得られたポリプロピレン(メタロセン触媒系ポリプロピレン)、プロピレン−α−オレフィン共重合体(特に、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体)である。また、これらのポリオレフィン系樹脂は単独で又は二以上を混合して使用できる。
上記プロピレン−α−オレフィン共重合体の共重合成分として用いられるα−オレフィンとしては、エチレンや、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどの炭素数4〜20程度のα−オレフィンが挙げられる。これらの共重合成分は単独で又は二以上を混合して使用できる。プロピレン−α−オレフィン共重合体の中でも好ましいものとしては、エチレンを共重合成分とするエチレン−プロピレンランダム共重合体である。
上記ポリオレフィン系樹脂としては、市販品を用いてもよく、日本ポリプロ(株)製「ウィンテック WFX6」(メタロセン触媒系ポリプロピレン)、三菱化学(株)製「ゼラス ♯7000、♯5000」(プロピレン−α−オレフィン共重合体)、日本ポリエチレン(株)製「カーネル」などが市販品として入手可能である。
上記ポリオレフィン系樹脂層は、必要に応じて、その他の添加剤、例えば、滑剤、充填剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、着色剤、ピニング剤(アルカリ土類金属)等を含んでいてもよい。
本発明の熱収縮性フィルムは、前述のとおり、A層及びB層以外の層(C層)を有していてもよい。上記のC層としては、特に限定されないが、例えば、プライマーコート層、アンカーコート層、易接着層、帯電防止剤層等の樹脂層(コーティング層や共押出により積層された樹脂層)などが挙げられる。
本発明の熱収縮性フィルムは、A層及びB層が他の層を介さずに積層された積層構造(A層/B層)を少なくとも有している。本発明の熱収縮性フィルムの積層構成としては、特に限定されないが、好ましい積層構成として、A層/B層の2種2層積層構成;A層/B層/A層、B層/A層/B層の2種3層積層構成が挙げられる。2種3層積層構成の場合、特に、耐薬品性や印刷適性などの観点から、両外層としてはポリエステル系樹脂層が好ましく用いられ、中心層としてはポリスチレン系樹脂層やポリオレフィン系樹脂層が好ましく用いられる。
本発明の熱収縮性フィルムにおいては、収縮特性の観点から、A層及びB層は、1軸又は2軸に配向した樹脂層であることが好ましい。さらに、好ましくは、A層及びB層が同様に1軸又は2軸に配向している。A層及びB層が無配向の場合には、良好な収縮性を得ることができない。配向は1軸配向、2軸配向など特に限定されないが、フィルム幅方向(ラベルを筒状にした場合に周方向となる方向)に強く配向した、実質的に幅方向の1軸配向が好ましい。また、フィルムの長手方向(幅方向と直交する方向)に強く配向した実質的に長手方向の1軸配向であってもよい。
本発明の熱収縮性フィルムの厚み(総厚み)は、特に限定されないが、20〜80μmが好ましく、より好ましくは30〜60μmである。
本発明の熱収縮性フィルムにおける、A層及びB層の厚み(単層の厚み)は、特に限定されないが、3〜45μmが好ましく、より好ましくは5〜40μmである。
本発明の熱収縮性フィルムにおいて、T型剥離試験におけるA層とB層の接着強度は、2.5N/15mm以下であり、好ましくは2.0N/15mm以下、より好ましくは1.5N/15mm以下である。また、上記接着強度は、特に限定されないが、0.3N/15mm以上が好ましく、より好ましくは0.5N/15mm以上、さらに好ましくは1.0N/15mm以上である。上記接着強度は、JIS K 6854−3に準拠して、本発明の熱収縮性フィルムのA層とB層を、常温下、引張速度200mm/分の条件でT型剥離した際の剥離強度である。A層とB層の接着強度が2.5N/15mm以下であることは、A層およびB層が互いに難接着な樹脂層であることを意味する。本発明は、このような接着強度の小さい(接着しにくい)樹脂層同士を接着剤層を介さずに積層した熱収縮性フィルムであるにもかかわらず、シュリンク(熱収縮)加工の際に、層間剥離が生じないことを特徴としている。
本発明の熱収縮性フィルムの、主配向方向の、80℃、30秒間の条件における熱収縮率(「熱収縮率(80℃、30秒)」と称する場合がある)は、20%以上(例えば、20〜85%)であり、好ましくは40〜85%である。熱収縮性フィルムの主配向方向の熱収縮率(80℃、30秒)が20%以上であることにより、該フィルムを用いて作製したシュリンクラベルは、様々な形状の容器(特に、大径部と小径部を有し、大径部と小径部の径差の大きい容器)に用いることができ、美麗な仕上がりが得られる優れたシュリンクラベルとなる。また、このような高収縮の熱収縮性フィルムにおいて、シュリンク加工時の層間剥離を抑止しうることが本発明の特徴である。
本発明の熱収縮性フィルムの、主配向方向と直交する方向の熱収縮率(80℃、30秒)は、特に限定されないが、−3〜15%が好ましい。
本発明の熱収縮性フィルムにおけるA層及びB層の、主配向方向の熱収縮率(80℃、30秒)は、本発明の熱収縮性フィルムの主配向方向の熱収縮率(80℃、30秒)を上記の範囲に制御する観点から、20%以上(例えば、20〜85%)が好ましく、より好ましくは40〜85%である。
上記熱収縮率(80℃、30秒)は、測定サンプルを80℃の熱水中に30秒間浸漬する熱水浸漬試験により測定することができる。なお、上記「主配向方向」とは、熱収縮性フィルムの、主に延伸処理が施された方向(最も熱収縮率が大きい方向)を意味し、一般的には、フィルム製造時のフィルムの長手方向又は幅方向であり、例えば、幅方向に実質的に1軸延伸された熱収縮性フィルムの場合には幅方向である。
上記と同様に、本明細書においては、90℃、30秒間の条件における熱収縮率を「熱収縮率(90℃、30秒)」と称する場合がある。また、98℃、30秒間の条件における熱収縮率を、「熱収縮率(98℃、30秒)」と称する場合がある。上記熱収縮率(90℃、30秒)は、測定サンプルを90℃の熱水中に30秒間浸漬する熱水浸漬試験により測定することができる。上記熱収縮率(98℃、30秒)は、測定サンプルを98℃の熱水中に30秒間浸漬する熱水浸漬試験により測定することができる。
また、主配向方向におけるA層の熱収縮率(80℃、30秒)と主配向方向におけるB層の熱収縮率(80℃、30秒)の差の絶対値を、「熱収縮率差(80℃)」と称する場合がある。即ち、熱収縮率差(80℃)=|[主配向方向におけるA層の熱収縮率(80℃、30秒)]−[主配向方向におけるB層の熱収縮率(80℃、30秒)]|である。
上記と同様に、主配向方向におけるA層の熱収縮率(90℃、30秒)と主配向方向におけるB層の熱収縮率(90℃、30秒)の差の絶対値を、「熱収縮率差(90℃)」と称する場合がある。また、主配向方向におけるA層の熱収縮率(98℃、30秒)と主配向方向におけるB層の熱収縮率(98℃、30秒)の差の絶対値を、「熱収縮率差(98℃)」と称する場合がある。
本発明の熱収縮性フィルムにおいて、熱収縮率差(80℃)、熱収縮率差(90℃)及び熱収縮率差(98℃)のうち、少なくとも1つは10%以下(0〜10%)であり、好ましくは8%以下である。言い換えると、熱収縮率差(80℃)、熱収縮率差(90℃)及び熱収縮率差(98℃)の中の最小値は10%以下(0〜10%)であり、好ましくは8%以下である。上記は、80〜98℃の温度域(シュリンク加工に適した温度域)において、A層とB層の主配向方向における熱収縮率の差が10%以下(好ましくは8%以下)となる温度範囲が存在することを意味する。このような熱収縮性フィルムは、A層とB層の熱収縮率差が10%以下となる温度範囲でシュリンク加工を行い加熱収縮させれば、熱収縮時に層間剥離が発生しない。上記最小値が10%を超える場合には、熱収縮の際に、A層とB層の熱収縮挙動が大きく異なる(熱収縮挙動が大きく異なる熱収縮温度条件しかとれない)ため、層間剥離が発生しやすくなる。
[本発明の熱収縮性フィルムの製造方法]
本発明の熱収縮性フィルムは、多層押出(共押出)により未延伸フィルムを形成した後、該未延伸フィルムを延伸することにより製造されることが好ましい。即ち、本発明の熱収縮性フィルムは、A層及びB層が共押出により積層されており、かつ、延伸処理が施されていることが好ましい。
上記多層押出(共押出)においては、それぞれ所定の温度に設定した複数の押出機に、樹脂層(A層、B層など)を形成する原料(樹脂又は樹脂組成物)をそれぞれ投入し、Tダイ、サーキュラーダイなどから共押出する。この際、マニホールドやフィードブロックを用いて、所定の積層構成とすることが好ましい。また必要に応じて、ギアポンプを用いて供給量を調節してもよく、さらにフィルターを用いて、異物を除去するとフィルム破れが低減できるため好ましい。なお、押出温度は、用いる原料の種類によっても異なり、特に限定されないが、各原料の成型温度領域が近接していることが好ましい。具体的には、ポリエステル系樹脂層を形成する原料の押出温度は190〜240℃が好ましく、ポリスチレン系樹脂層を形成する原料の押出温度は180〜220℃が好ましく、ポリオレフィン系樹脂層を形成する原料の押出温度は180〜230℃が好ましい。また、各原料の合流部やダイの温度は190〜230℃とすることが好ましい。上記多層押出したポリマーを、冷却ドラム(冷却ロール)などを用いて急冷することにより、未延伸フィルム(未延伸積層フィルム)を得ることができる。
上記で得られた未延伸フィルムを延伸することにより本発明の熱収縮性フィルムを作製できる。延伸は、所望の配向に応じて選択でき、長手方向(縦方向;MD方向)および幅方向(横方向;TD方向)の2軸延伸でもよいし、長手、または、幅方向の1軸延伸でもよい。また、延伸方式は、ロール方式、テンター方式、チューブ方式の何れの方式を用いてもよい。上記延伸処理における延伸倍率は、熱収縮性フィルムの用途及び要求される熱収縮特性によって異なり、特に限定されない。例えば、実質的に1軸延伸された熱収縮性フィルムの場合には、主配向方向の延伸倍率は3〜6倍が好ましく、より好ましくは4〜5.5倍であり、主配向方向と直交する方向の延伸倍率は1.01〜1.5倍が好ましく、より好ましくは1.05〜1.3倍である。幅方向に実質的に1軸延伸された熱収縮性フィルムの場合、上記の主配向方向が幅方向、主配向方向と直交する方向が長手方向となる。
本発明の熱収縮性フィルムにおいて、A層とB層の熱収縮率差は、A層及びB層を形成する原料の組み合わせ、延伸温度、延伸倍率などにより調整することができる。中でも、原料の組み合わせ及び延伸温度が特に大きな影響を及ぼす。このため、A層とB層の熱収縮率差を制御し、熱収縮率差(80℃)、熱収縮率差(90℃)及び熱収縮率差(98℃)のうち、少なくとも1つを10%以下に制御するためには、特に、A層及びB層を形成する原料(樹脂又は樹脂組成物)の適切な組み合わせを選定すること、及び、選定した原料を適切な延伸温度で延伸することが重要となる。A層及びB層を形成する原料の適切な組み合わせの選定方法と、延伸温度の決定方法は、特に限定されないが、例えば、以下のように行うことができる。
(原料の選定)
A層を形成する原料(「A層原料」と称する場合がある)およびB層を形成する原料(「B層原料」と称する場合がある)の組み合わせの選定方法は、特に限定されないが、例えば、以下のようにして行うことができる。なお、上記A層原料及びB層原料は、それぞれ、単一の樹脂、又は、二以上の樹脂や添加剤を含む樹脂組成物である。
上記A層原料及びB層原料は、周波数10Hzの動的粘弾性測定(DMA)において測定された複素弾性率の絶対値(|E*|)が、80〜120℃の温度領域で、30〜300MPaとなる部分がある樹脂又は樹脂組成物であることが好ましい。上記の動的粘弾性測定は、より具体的には、以下のとおりである。まず、各層原料(A層原料又はB層原料)のみからなる未延伸シート[即ち、A層の未延伸シート(未延伸のA層)又はB層の未延伸シート(未延伸のB層)]を作製する。該シートの作製方法(成型方法)は、特に限定されないが、例えば、プレス成型や押出成型(単層押出)を用いることができる。また、多層押出(共押出)によりA層及びB層を有する未延伸フィルムを形成した後、未延伸フィルムを層間剥離して、A層の未延伸シート及びB層の未延伸シートをそれぞれ作製してもよい。次いで、得られたシートを試料として、周波数10Hz、昇温速度2℃/分の条件で動的粘弾性測定を行う。
A層原料及びB層原料の選定は、上記動的粘弾性測定により、|E*|の値を判断基準として行うことができる。
(延伸温度の決定)
本発明の熱収縮性フィルムの製造方法における、延伸温度(未延伸フィルムの延伸温度)の決定方法は、特に限定されないが、例えば、以下のようにして行うことができる。なお、本発明の熱収縮性フィルムを製造する際の、未延伸フィルムの延伸温度を、以下の「仮の延伸温度」と区別して「本製造時の延伸温度」と称する場合がある。また、本明細書において、「延伸温度」とは延伸時のフィルム温度を意味する。
まず、80〜120℃の温度範囲において、少なくとも3点(好ましくは4点)の温度を定める(以下、「仮の延伸温度」と称する)。上記の仮の延伸温度は、相互に5℃以上離れていることが好ましい。各々の仮の延伸温度の差の絶対値が5℃未満では、本製造時の延伸温度を決定する際の解析作業が困難となる場合がある。
次いで、A層の未延伸シートを上記の仮の延伸温度で1軸延伸(延伸倍率5倍)し、1軸延伸フィルムを得る(仮の延伸温度が3点であれば、3種類の1軸延伸フィルムが得られる)。上記の1軸延伸フィルムの主配向方向(1軸延伸方向)の熱収縮率(80℃、30秒)を測定し、横軸(x軸)を仮の延伸温度、縦軸(y軸)を熱収縮率(80℃、30秒)として、グラフ上にプロットし、A層についての、仮の延伸温度に対する熱収縮率(80℃、30秒)の関係を表すグラフを得る。グラフ上の各点(仮の延伸温度,熱収縮率(80℃、30秒))より、最小二乗法により、近似直線(「直線(A、80℃)」と称する場合がある)を得る。さらに、B層の未延伸シートについても同様にして、B層についての、仮の延伸温度に対する熱収縮率(80℃、30秒)の関係を表すグラフ、及び、近似直線(「直線(B、80℃)」と称する場合がある)を得る。
グラフの仮の延伸温度が80〜120℃の範囲において、上記で得られた直線(A、80℃)と直線(B、80℃)とを対比して、両直線における、同じxの値(仮の延伸温度)に対するyの値(熱収縮率(80℃、30秒))の差の絶対値が10%以下となるxの範囲を、本製造時の延伸温度として採用することができる。
直線(A、80℃)と直線(B、80℃)とが交わる場合には、両直線の交点のxの値(「Ts(80℃)」と称する場合がある)が本製造時の延伸温度として特に好ましい。さらに、直線(A、80℃)の勾配をa、直線(B、80℃)の勾配をbとすると、下記式を満たす温度tを本製造時の延伸温度として採用することができる。
Ts(80℃)−(10/|a−b|) ≦ t ≦ Ts(80℃)+(10/|a−b|)
さらに、熱収縮率(80℃、30秒)を熱収縮率(90℃、30秒)に変更(即ち、熱収縮温度を80℃から90℃に変更)して、上記と同様に、A層及びB層の未延伸シートについて、仮の延伸温度に対する熱収縮率(90℃、30秒)の関係を表すグラフ、及び、近似直線(直線(A、90℃)及び直線(B、90℃))を得る。直線(A、90℃)と直線(B、90℃)とを対比して、両直線における、同じxの値(仮の延伸温度)に対するyの値(熱収縮率(90℃、30秒))の差の絶対値が10%以下となるxの範囲を、本製造時の延伸温度として採用することができる。
さらに、熱収縮率(80℃、30秒)を熱収縮率(98℃、30秒)に変更(即ち、熱収縮温度を80℃から98℃に変更)して、上記と同様に、A層及びB層の未延伸シートについて、仮の延伸温度に対する熱収縮率(98℃、30秒)の関係を表すグラフ、及び、近似直線(直線(A、98℃)及び直線(B、98℃))を得る。直線(A、98℃)と直線(B、98℃)とを対比して、両直線における、同じxの値(仮の延伸温度)に対するyの値(熱収縮率(98℃、30秒))の差の絶対値が10%以下となるxの範囲を、本製造時の延伸温度として採用することができる。
即ち、熱収縮温度が80℃、90℃、98℃のいずれかの場合に、2本の近似直線がy軸方向において10%以内に近づくような関係にあれば、本発明の熱収縮性フィルムを製造しうる本製造時の延伸温度が得られる。
上記の延伸温度の決定方法における「仮の延伸温度」は、さらに好ましくは、以下の方法で定めることができる。前述の動的粘弾性測定において、80〜120℃の温度領域で、A層の未延伸シートの|E*|及びB層の未延伸シートの|E*|のいずれもが30〜300MPaとなる温度範囲を決定する。上記温度範囲の中で均等に4点の温度t1、t2、t3、t4をとる(t1は該温度範囲の下限温度、t4は上限温度であり、t2及びt3はそれぞれ該温度範囲を3等分する温度である)。なお、t1〜t4の各温度は少なくとも5℃以上離れている(例えば、t2−t1≧5℃)ことが好ましい。上記温度範囲の大きさが15℃より狭い場合には、上記温度範囲の中で均等に3点の温度t1〜t3をとってもよい(その場合、t1は該温度範囲の下限温度、t3は上限温度であり、t2は該温度範囲を2等分する温度である)。上記で定めたt1〜t4の4点(又はt1〜t3の3点)の温度を「仮の延伸温度」とすることができる。
本発明の熱収縮性フィルムの製造方法における、未延伸フィルムの延伸時の延伸の速度(延伸速度)は、一定であってもよく、延伸に伴い変化してもよく、特に限定されないが、平均0.1〜1/秒の歪速度(歪み速度)であることが好ましく、より好ましくは0.3〜0.7/秒の歪速度である。上記歪み速度により、A層、B層及び熱収縮性フィルムの熱収縮率を微調整することもできる。
本発明の熱収縮性フィルムの製造方法においては、上記の延伸工程の直後に緩和工程を設けても良い。緩和工程は、例えば、延伸倍率を保持したままフィルム温度を僅かに上げる、延伸温度を維持したまま延伸倍率を僅かに落とす、などの条件をとることにより行うことができる。これにより、フィルム内の応力を緩和させ、熱収縮性フィルムの寸法安定性を向上させることができる。上記緩和工程により、A層、B層及び熱収縮性フィルムの熱収縮率を微調整することもできる。
[シュリンクラベル]
本発明の熱収縮性フィルムを基材とし、その少なくとも片面側に印刷層を設けることにより、シュリンクラベルが得られる。上記シュリンクラベルには、印刷層の他にも、保護層、アンカーコート層、プライマーコート層、接着剤層(感圧性接着剤層、感熱性接着剤層等)などの樹脂層、コーティング層、不織布、紙等の層が設けられていてもよい。本発明のシュリンクラベルの具体的構成は、特に限定されないが、例えば、印刷層/熱収縮性フィルム、印刷層/熱収縮性フィルム/印刷層などの層構成が例示される。なお、本発明の熱収縮性フィルムは、印刷層を設けない場合にも、それ自体でシュリンクラベル用途として用いることも可能である。
上記シュリンクラベルは、少なくとも一方の表面に印刷層(例えば、商品名やイラスト、取り扱い注意事項等を表示した層)を有することが好ましい。上記印刷層は、印刷インキを塗布することにより形成される。塗布は、生産性、加工性などの観点から、フィルム製膜後に公知慣用の印刷手法を用いて塗布を行うオフラインコートが好ましい。印刷手法としては、公知慣用の方法を用いることができるが、グラビア印刷またはフレキソ印刷が好ましい。
上記印刷層の形成に用いられる印刷インキは、例えば、顔料、バインダー樹脂、溶剤、その他の添加剤等からなる。上記バインダー樹脂としては、特に限定されないが、例えば、アクリル系、ウレタン系、ポリアミド系、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合系、セルロース系、ニトロセルロース系などの樹脂を単独あるいは併用して使用できる。上記顔料としては、酸化チタン(二酸化チタン)等の白顔料、銅フタロシアニンブルー等の藍顔料、カーボンブラック、アルミフレーク、雲母(マイカ)、その他着色顔料等を用途に合わせて選択、使用できる。また、顔料として、その他にも、光沢調整などの目的で、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、シリカ、アクリルビーズ等の体質顔料も使用できる。上記溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどの有機溶媒や水など通常用いられるものを使用できる。
上記印刷層は、特に限定されないが、可視光、紫外線、電子線などの活性エネルギー線硬化性の樹脂層であってもよい。過剰の熱によるフィルムの変形を防ぐ場合などに有効である。
上記印刷層の厚みは、特に限定されないが、例えば、0.1〜10μmが好ましい。厚みが0.1μm未満では、印刷層を均一に設けることが困難である場合があり、部分的な「かすれ」が起こり、装飾性が損なわれる場合や、デザイン通りの印刷が困難となる場合がある。また、厚みが10μmを超えると、印刷インキを多量に消費するため、コストが高くなったり、均一に塗布することが困難となったり、印刷層がもろくなり剥離しやすくなったりする。また、印刷層の剛性が高くなり、シュリンク加工時にフィルムの収縮に追従しにくくなる場合がある。
上記シュリンクラベルは、例えば、基材(熱収縮性フィルム)の両端を溶剤や接着剤でシールし筒状にした後容器に外嵌装着されるタイプの筒状シュリンクラベルや、ラベルの一端を容器などの被着体に貼り付け、ラベルを巻回した後、他端を一端に重ね合わせて筒状にする巻き付け方式のシュリンクラベルとして好適に用いることができる。上記筒状シュリンクラベルのセンターシール強度は、2N/15mm以上が好ましい。シール強度が2N/15mm未満の場合には、加工工程や製品化した後に、シール部分がはがれて、生産性を低下させたり、ラベル脱落の原因となる場合がある。
上記筒状シュリンクラベルの製造方法は、特に限定されないが、例えば、下記の通りである。長尺状の幅方向に延伸された熱収縮性フィルムに印刷し印刷層を設けた後、所定の幅にスリットして、ラベルが長尺方向に複数個連なったラベル長尺体を得る。このラベル長尺体を、熱収縮性フィルムの主配向方向(つまり、幅方向)が円周方向となるように一方の側端部が他方の側端部の外側になるように筒状に形成し、該ラベル長尺体の一方の側端部に、長手方向に帯状に約2〜4mm幅で、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン(THF)などの溶剤や接着剤(以下溶剤等)を内面に塗布し、該溶剤等塗布部を、他方の側端部から5〜10mmの位置に重ね合わせて、他方の側端部外面に接着(センターシール)し、長尺筒状のラベル連続体(長尺筒状シュリンクラベル)を得る。この長尺筒状シュリンクラベルを幅方向に切断することで、1つの筒状シュリンクラベルを得ることができる。なお、ラベル切除用のミシン目を設ける場合は、所定の長さ及びピッチのミシン目を長手方向に形成する。ミシン目は慣用の方法(例えば、周囲に切断部と非切断部とが繰り返し形成された円板状の刃物を押し当てる方法やレーザーを用いる方法等)により施すことができる。ミシン目を施す工程段階は、印刷工程の後や、筒状加工工程の前後など、適宜選択できる。
上記シュリンクラベルを、容器に装着することでラベル付き容器が得られる。このような容器には、例えば、PETボトルなどのソフトドリンク用ボトル、宅配用牛乳瓶、調味料などの食品用容器、アルコール飲料用ボトル、医薬品容器、洗剤、スプレーなどの化学製品の容器、カップ麺容器などが含まれる。容器の形状としても、円筒状、角形のボトルや、カップタイプなど様々な形状が含まれる。また、容器の材質としても、PETなどのプラスチック製、ガラス製、金属製などが含まれる。
上記ラベル付き容器は、筒状シュリンクラベルを、所定の容器に外嵌装着し、加熱処理によって、ラベルを収縮、容器に追従密着させることによって作製できる。上記熱処理としては、例えば、80〜100℃のスチームで処理する(スチームおよび湯気が充満した加熱トンネルを通過させる)ことなどが例示される。
以下に、実施例に基づいて、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
実施例1〜3、比較例1
表層(A層)原料として、非晶性ポリエステル(PET)系樹脂(Eastman Chemical Company製、「Embrace LV」)を用いた。
中心層(B層)原料として、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBS)系樹脂(旭化成ケミカルズ株式会社製、「アサフレックス830」)を用いた。
上記の表層(A層)原料及び中心層(B層)原料を、それぞれ別個に3台の単軸の押出機に投入し、樹脂温度220℃で、フィードブロック付きのTダイにより押出した。次いで、40℃に温調された冷却ロールで冷却固化し、3層積層構成の未延伸シート(未延伸フィルム)を得た。未延伸シートは、厚みが300μmとなるように押出条件を調整した。
上記未延伸シートを、65℃に温調された延伸ロールを用い、1.2倍に長手(縦)方向に延伸し、次いで、横延伸機(テンター)に導き、所定の横延伸温度条件下で、延伸速度50%/秒(歪速度0.5/秒)で5倍に幅(横)方向に延伸し、空冷工程の後ロールに巻き取り、PET(A層)/SBS(B層)/PET(A層)の3層積層熱収縮性フィルム(実質的に幅方向に1軸延伸された熱収縮性フィルム)を得た。上記の熱収縮性フィルムは、厚み50μm、層厚み比[PET(A層)/SBS(B層)/PET(A層)]=1:2:1のフラット状態の熱収縮性フィルムであった。
上記の横延伸温度が85℃の場合を実施例1、90℃の場合を実施例2、95℃の場合を実施例3、80℃の場合を比較例1とした。
実施例4、実施例5、比較例2、比較例3
表層(A層)原料として、非晶性PET系樹脂(Eastman Chemical Company製、「Embrace 21214」)を用い、中心層(B層)原料として、SBS系樹脂(電気化学工業株式会社製、「クリアレン730L」)を用いた以外は、実施例1〜3及び比較例1と同様にして、厚み50μmのフラット状態の3層積層熱収縮性フィルムを得た。
横延伸温度が85℃の場合を実施例4、90℃の場合を実施例5、80℃の場合を比較例2、95℃の場合を比較例3とした。
実施例6〜9
表層(A層)原料として、非晶性PET系樹脂(株式会社ベルポリエステルプロダクツ製、「E02」)、中心層(B層)原料として、SBS系樹脂(電気化学工業株式会社製、「クリアレン730L」)を用い、横延伸温度を変更した以外は、実施例1〜3及び比較例1と同様にして、厚み50μmのフラット状態の3層積層熱収縮性フィルムを得た。
横延伸温度が85℃の場合を実施例6、90℃の場合を実施例7、95℃の場合を実施例8、100℃の場合を実施例9とした。
(評価)
実施例および比較例で得られた熱収縮性フィルムの、A層とB層の接着強度、熱収縮性フィルムの主配向方向の熱収縮率(80℃、30秒)、主配向方向におけるA層及びB層の熱収縮率(80℃、30秒)、熱収縮率(90℃、30秒)、熱収縮率(98℃、30秒)、熱収縮率差(80℃)、熱収縮率差(90℃)、熱収縮率差(98℃)、及び、収縮時の層間剥離抑止性(デラミネーション試験)を、以下の方法で評価した。評価結果を表1に示す。
なお、以下で、熱収縮性フィルムの長手方向とは、熱収縮性フィルムの製膜方向(ライン方向)である。一方、熱収縮性フィルムの幅方向とは、上記の長手方向に対して直交する方向をさす。実施例および比較例で得られた熱収縮性フィルムにおける主配向方向は幅方向である。
(1)A層とB層の接着強度(T型剥離試験)
実施例および比較例で作製した熱収縮性フィルムについて、A層とB層の接着強度(層間剥離強度)を測定した。
実施例および比較例で得られた熱収縮性フィルムを、長手方向(熱収縮性フィルムの製膜方向)に15mm、幅方向(製膜方向に対して直交方向)に200mmに裁断し、これを試験片とした。
上記試験片を用い、JIS K 6854−3に準拠して、下記の測定条件で、T型剥離試験を実施した。A層とB層の層間で剥離を行った。なお、試験片は剥離試験に供する前に、予め一方の端末部をA層とB層の層間に沿って、一定区間剥離した(事前剥離)。
剥離荷重の平均値をもって、A層とB層の接着強度(層間剥離強度)(N/15mm)とした。
(測定条件)
測定装置 : 島津製作所(株)製、オートグラフ(AG−IS:ロードセルタイプ500N)
測定温湿度条件 : 温度23±2℃、湿度50±5%RH(JIS K 7100、標準温度状態2級)とした。
試験片の事前剥離長さ : 50mm
初期チャック間隔(つかみ具間隔) : 50mm
引張速度(つかみ具移動速度) : 200mm/分
剥離試験設定ストローク : 150mm(破断した場合には中断し、その点までのデータを得た。)
測定方向 : 試験片の長さ方向(熱収縮性フィルムの幅方向)
試験回数(n数) : 3回
(2)熱収縮性フィルムの主配向方向の熱収縮率(80℃、30秒)
実施例および比較例で得られた熱収縮性フィルムを、長手方向に50mm、幅方向に50mmに裁断し、試験片を得た。
上記試験片を、80℃の湯浴に30秒間浸漬し、取り出した後、直ちに水冷した(熱水浸漬試験)。
熱水浸漬後の試験片の主配向方向の寸法を実測し、熱水浸漬前の試験片の主配向方向の寸法に対する熱収縮率を、以下の計算式で算出した。
熱収縮率(%) = (L0−L1)/L0×100
0 : 熱水浸漬前の主配向方向の寸法
1 : 熱水浸漬後の主配向方向の寸法
実施例及び比較例においては、主配向方向は熱収縮性フィルムの幅方向であり、L0は50mmである。
(3)主配向方向におけるA層の熱収縮率(80℃、30秒)、主配向方向におけるB層の熱収縮率(80℃、30秒)、熱収縮率差(80℃)
実施例および比較例で得られた熱収縮性フィルムを、A層とB層の層間を端末まで剥離させ、A層とB層とに分離した。次いで、各層(A層、B層)ごとに、長手方向に50mm、幅方向に50mmに裁断し、単独層の試験片(A層の試験片およびB層の試験片)を得た。
試験片として上記のA層の試験片を用いた以外は、上記(2)と同様にして熱収縮率を算出し、「A層の熱収縮率(80℃、30秒)」を得た。
また、試験片として上記のB層の試験片を用いた以外は、上記(2)と同様にして熱収縮率を算出し、「B層の熱収縮率(80℃、30秒)」を得た。
「A層の熱収縮率(80℃、30秒)」と「B層の熱収縮率(80℃、30秒)」の差の絶対値を算出し、「熱収縮率差(80℃)」を得た。
(4)主配向方向におけるA層の熱収縮率(90℃、30秒)、主配向方向におけるB層の熱収縮率(90℃、30秒)、熱収縮率差(90℃)
熱水浸漬試験において、試験片を90℃の熱水に30秒間浸漬した以外は、上記(3)と同様にして、A層の試験片及びB層の試験片の熱収縮率を算出し、「A層の熱収縮率(90℃、30秒)」及び「B層の熱収縮率(90℃、30秒)」を得た。また、「A層の熱収縮率(90℃、30秒)」と「B層の熱収縮率(90℃、30秒)」の差の絶対値を算出し、「熱収縮率差(90℃)」を得た。
(5)主配向方向におけるA層の熱収縮率(98℃、30秒)、主配向方向におけるB層の熱収縮率(98℃、30秒)、熱収縮率差(98℃)
熱水浸漬試験において、試験片を98℃の熱水に30秒間浸漬した以外は、上記(3)と同様にして、A層の試験片及びB層の試験片の熱収縮率を算出し、「A層の熱収縮率(98℃、30秒)」及び「B層の熱収縮率(98℃、30秒)」を得た。また、「A層の熱収縮率(98℃、30秒)」と「B層の熱収縮率(98℃、30秒)」の差の絶対値を算出し、「熱収縮率差(98℃)」を得た。
(6)デラミネーション試験
実施例および比較例で得られた熱収縮性フィルムを長手方向(熱収縮性フィルムの製膜方向)に104mm、幅方向(製膜方向に対して直交方向)に235mmに裁断し、フィルム片を得た。該フィルム片を幅方向が円周方向になるように筒状に丸めて(筒の円周:228mm)、溶剤でセンターシール(シール幅:4mm)し、筒状のシュリンクラベルに加工してこれを試験片とした。次いで、前記試験片(筒状シュリンクラベル)を、容器(胴部の円周219mm、高さ160mm、肉厚2mmのアルミニウム製の円筒体)に手で外嵌装着し、接着テープで上下二箇所を仮留めした後、所定温度に温調した湯浴に30秒間浸漬し、取り出した後、直ちに水冷した。水冷後、センターシール部のフィルム片の端末の状態を目視及び触診で観察し、以下の指標に沿って、◎、○、△、×の4段階に分類、評価した。
なお、上記湯浴の温度は、80℃、90℃、98℃の3条件でそれぞれ測定及び評価した。各実施例、比較例について、最もよい評価結果が得られた条件における評価結果を表1に記載した。
(デラミネーション評価)
収縮時の層間剥離抑止性に優れる (◎) : センターシール部において重畳するフィルム片の端末が、外観(目視)においても触診においても、湯浴浸漬前に比べ特段の変化が認められない。
収縮時の層間剥離抑止性が良好 (○) : センターシール部において重畳するフィルム片の端末の角部に、触診において稜線の生成を感じるが、外観上は剥離の進行が認められない。
使用可能なレベルの層間剥離抑止性(△) : センターシール部において重畳するフィルム片の端末の角部に、触診において表皮の持ち上がり或いは収縮が感じられ、その部位に外観上僅かな剥離が認められる(皮膜の浮き上がりが白い線になって見えるが、その線は不連続であり、その幅も300μm以下である)。
収縮時の層間剥離抑止性が不良 (×) : センターシール部において重畳するフィルム片の端末の角部に、明らかな剥離が認められる(皮膜の浮き上がりを示す白い線が連続して見え、その線幅は300μmを超えている)。
Figure 0005760160
本発明の規定範囲を満たす熱収縮性フィルム(実施例)は、A層とB層に異種の樹脂を用いており、A層とB層の接着強度が比較的低いにもかかわらず、熱収縮加工(シュリンク加工)時にデラミネーション(層間剥離)が生じない優れた特性を有していた。

Claims (4)

  1. 互いに隣接して積層された樹脂層(A層)及び樹脂層(B層)を有する熱収縮性フィルムであって、以下の(1’)〜(6)の全てを満たすことを特徴とする熱収縮性フィルム。
    (1’)A層及びB層は、ポリエステル系樹脂又は共役ジエンの含有量が単量体成分の全重量に対して5〜30重量%であるスチレン−共役ジエン共重合体を主成分とする樹脂層である。ただし、前記ポリエステル系樹脂は、ジカルボン酸成分とジオール成分とで構成されるポリエステル系樹脂、又は、ジカルボン酸成分とジオール成分と、オキシカルボン酸、モノカルボン酸、多価カルボン酸、1価アルコール、及び多価アルコールからなる群より選ばれた1種以上の成分とで構成されるポリエステル系樹脂である。
    (2)A層とB層とは異種の樹脂を主成分とする樹脂層である。
    (3)T型剥離試験における、A層とB層の接着強度が2.5N/15mm以下である。
    (4’)熱収縮性フィルムの主配向方向の熱収縮率(80℃、30秒)が40〜85%である。
    (5)前記主配向方向における、A層の熱収縮率(80℃、30秒)とB層の熱収縮率(80℃、30秒)の差の絶対値、A層の熱収縮率(90℃、30秒)とB層の熱収縮率(90℃、30秒)の差の絶対値、及び、A層の熱収縮率(98℃、30秒)とB層の熱収縮率(98℃、30秒)の差の絶対値のうち、少なくとも1つが10%以下である。
    (6)A層及びB層が共押出により積層されており、かつ、延伸処理が施されている。
  2. 前記スチレン−共役ジエン共重合体において、スチレン系単量体の含有量が、単量体成分の全重量に対して、60〜95重量%であり、共役ジエンの含有量が、単量体成分の全重量に対して、5〜40重量%である請求項1に記載の熱収縮性フィルム。
  3. 前記ポリエステル系樹脂のガラス転移温度が60〜100℃であり、前記スチレン−共役ジエン共重合体のガラス転移温度が60〜120℃である請求項1または2に記載の熱収縮性フィルム。
  4. 前記A層を形成する原料及び前記B層を形成する原料が、周波数10Hzの動的粘弾性測定において測定された複素弾性率の絶対値(|E*|)が、80〜120℃の温度領域で、30〜300MPaとなる部分がある請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱収縮性フィルム。
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