JP5754685B2 - 基板上でビルドアップ型コンビナトリアルライブラリーを合成する方法 - Google Patents
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Description
特許文献1及び2記載の方法は、重合度の異なる保護基により多くの水酸基を保護し、重合度の違いにより脱保護する順番を決定し、選択的に目的の水酸基を脱保護させることができるという手法である。それにより、樹脂ビーズ上で糖鎖ライブラリーを構築することができる。
しかし、この手法を基板上でのコンビナトリアルライブラリー合成に適応しようとすると、次のような問題があった。すなわち、基板のある部位のみに選択的に反応させる事が必要である為、当然、光による制御が必要になってくるが、光による反応を特許文献2記載の方法に組み合わせると非常に長い反応段階が必要になるということである。
図1において、特許文献2記載の方法の典型的な構造として、糖の水酸基がA−Y、A−YY(Aは酸性、遷移金属又は遷移金属有機錯体、光分解、又は酵素により脱離可能な保護基を示す。Yは−NR1−CR2R3−CO−、R1は炭素数1〜6のアルキル基又は水素原子、R2及びR3は水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜20のアルケニル基、炭素数6〜7のアリール基、又は炭素数7〜20のアリールアルキル基であり、同一でも異なっていても良い。)により保護された、(1)の構造を有する糖が表面に結合したガラスを想定する。Aはここでは酸性条件で脱離可能なBoc基(ターシャリー−ブトキシカルボニル基)とし、Yを−[(CH3CH2)2CH]N−CH2−CO−とする。RはAの脱離する条件及び、光反応・PITC化反応・TFA処理反応・再Boc化反応・縮合反応で脱離しない保護基、例えばBz基(ベンゾイル基)またはBn基(ベンジル基)とする。
まずはPITC(フェニルイソチオシアネート)を反応させ、次にTFA(トリフルオロ酢酸)により2重合を1重合に変換し(すなわち、YYをYに)、同時に1重合のYを除去し水酸基を脱保護する。最後に再Boc化を行い一連の反応を終了し基板(3)を得る。ここで選択的に脱保護された水酸基に次の糖を縮合させる。ここではGalを導入し、部位特異的にGalが導入された基板(4)を得る。
この操作を繰り返すことにより、基板の部位特異的に構造の異なる糖鎖を組み上げる(ビルドアップする)ことができる。しかし、1種類の糖を導入するのに、1.光によるBoc基の切断、2.PITC化、3.TFA処理、4.再Boc化、5.縮合、と5段階を必要とする。仮に異なる5種類の糖を導入しようとすると、5×5で25段階が必要であり、非常に多段階を必要とする。従って、この方法は、糖の種類を増やしていったときには実現が極めて困難となってしまう。
すなわち、本発明の目的は、2以上の水酸基を有する化合物を基板上でビルドアップ的に合成してコンビナトリアルライブラリーを合成する方法を提供することである。
本発明の他の目的は、糖類をビルドアップ的に合成して糖鎖チップ等を作製する方法を提供することである。
本発明のさらに他の目的は、病気や、毒素の診断薬・検査薬としてのニーズが高い糖鎖チップ等の基板を提供することである。
1.基板上に結合した、少なくとも2個の水酸基を有する化合物であって、そのすべての水酸基が、脱保護条件が相互に異なる少なくとも2種の保護基からなる群から選ばれる保護基で保護された化合物をアクセプターとして用い、該保護基を選択的に脱保護し、脱保護された水酸基に所望のドナー又はキャッピング基を選択的に導入して一枚の基板上でビルドアップ型コンビナトリアルライブラリーを合成する方法において、
(1)第1の保護された水酸基を選択的に脱保護する工程、
(2)脱保護された水酸基に、W基もしくはW(Z)基(Wは光分解により脱離可能な保護基を示し、ZはW基が脱離する光分解の条件でW基と同時に脱保護される基、もしくはW基が脱離する事により、活性化(もしくは不安定化)され、選択的に除去可能になる基を示す)を導入する工程、
(3)基板をn個(nは1以上の整数)の部位に分割し、該基板の第1の部位を選択的に露光し、露光部のW基もしくはW(Z)基を選択的に脱保護し、選択的に脱保護された水酸基に、所望の第1のドナー又はキャッピング基を選択的に導入する工程、
(4)nが2以上の整数である場合、工程(3)を第2の部位から所望の第nの部位まで繰り返し、各部位において、選択的に脱保護された水酸基に、所望の第2のドナー又はキャッピング基ないし所望の第nのドナー又はキャッピング基を選択的に導入する工程、
(5)第2の保護された水酸基について、工程(1)から(4)を繰り返し、第2の保護された水酸基を脱保護し、脱保護された水酸基に、W基もしくはW(Z)基を導入し、基板をn個(nは1以上の整数)の部位に分割し、該基板の第1の部位を選択的に露光し、露光部のW基もしくはW(Z)基を選択的に脱保護し、選択的に脱保護された水酸基に、所望の第1のドナー又はキャッピング基を選択的に導入し、上記工程を第2の部位から所望の第nの部位まで繰り返し、各部位において、選択的に脱保護された水酸基に、所望の第2のドナー又はキャッピング基ないし所望の第nのドナー又はキャッピング基を選択的に導入する工程、
(6)必要により、工程(5)を所望の、保護された水酸基について繰り返し、各水酸基の各部位において、選択的に脱保護された水酸基に、第1ないし第nのドナー又はキャッピング基を選択的に導入する工程を含み、
工程(1)〜(6)において、繰り返して使用する、W基もしくはW(Z)基、基板の分割部位の数n、ドナー又はキャッピング基は、同一でも異なっていても良い、
ことを特徴とする、ビルドアップ型コンビナトリアルライブラリー合成方法。
2.アクセプターの水酸基の保護基がA(Y)m基(Aは酸性、塩基性、遷移金属又は遷移金属有機錯体、光分解、又は酵素により脱離可能な保護基を示す。Yは−NR1−CR2R3−CO−、R1は炭素数1〜6のアルキル基又は水素原子、R2及びR3は水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜20のアルケニル基、炭素数6〜7のアリール基、又は炭素数7〜20のアリールアルキル基であり、同一でも異なっていても良く、mはYの重合度を示し、1以上の整数であり、mが2以上の整数の場合、各Y中のR1、R2、R3は、相互に同一でも異なっていても良い。)である上記1記載の方法。
3.第1の保護された水酸基を選択的に脱保護する工程が、A(Y)m基のY基中の酸アミド結合をN末端側から逐次切り離す方法により重合度の小さなY基を選択的に脱保護する工程を含む上記2記載の方法。
4.アクセプターの1個の水酸基の保護基がV基(Vは塩基性、酸化剤、フッ素化合物、光分解、又は酵素により脱離可能な保護基を示す。)であり、他の少なくとも1個の水酸基の保護基がA(Y)m基(Aは酸性、塩基性、遷移金属又は遷移金属有機錯体、光分解、又は酵素により脱離可能な保護基を示す。ただし、AがVと同一であることはなく、Vの脱離条件でAが脱離することはない。)であり、第1の保護された水酸基がV基で保護された水酸基である上記1又は2記載の方法。
5.ドナーがA(Y)m基により保護された少なくとも1個の水酸基を含み、工程(1)〜(6)を繰り返すことを特徴とする上記1〜4のいずれか1項記載の方法。
6.ドナーがV基により保護された少なくとも1個の水酸基を含む上記1〜5のいずれか1項記載の方法。
7.アクセプターが糖である上記1〜6のいずれか1項記載の方法。
8.保護基AがBoc基であり、保護基WがNPPOC基である上記1〜7のいずれか1項記載の方法。
9.アクセプターが、リンカーを介して基板に固定されている上記1〜8のいずれか1項記載の方法。
10.基板が、ガラスである上記1〜9のいずれか1項記載の方法。
本発明により製造された、化合物ライブラリーが結合した基板(具体的には糖鎖チップ)は、生物を扱うすべての分野に利用可能である。例えば、病気や、毒素の診断薬・検査薬等として極めて有用である。
糖鎖は遺伝子、蛋白質に継ぐ第3の生命鎖として重要であり、DNAチップ、プロテインチップに次ぐ糖鎖チップは生命科学に必須なツールである。本発明(基板上でのビルドアップ的糖鎖チップ作製手法)により、第3の生命鎖として重要な糖鎖を、基板上で効率よく作製することができると共に、様々な構造の糖鎖機能を一度に解析可能なツールである糖鎖チップを提供する事ができる。
本発明では、新たに、光で切断可能な水酸基の保護基(W基もしくはW(Z)基)を導入しているため、基板上の目的の部位を選択的に露光することにより、その部位にある水酸基を選択的に脱保護することができる。このため、その後、次の糖を縮合すれば、露光部の基板上で脱保護された水酸基のみに次の糖が縮合され、基板の部位選択的に目的の糖鎖構造を構築することができる。
図1と同じ基板(1)をスタート物質とする。基板としては、各種板状ガラス(例えば、ソーダ石灰ガラス、鉛ガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミナケイ酸塩ガラス、シリカガラス、リン酸塩系ガラス、亜テルル酸塩ガラス、ハロゲン化物ガラス、カルコゲナイドガラス等)、板状各種樹脂(例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、熱硬化性ポリイミド、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレート、アクリル樹脂、ABS樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルファイド、ポリスルホン等)、板状各種繊維、板状シリカ、セロファン等が挙げられる。これら基板に対して、APTES(3-aminopropyltriethoxysilane: 3-アミノプロピルトリエトキシシラン)処理や、紫外線処理、電子線処理、プラズマ処理、高圧処理、高温処理、酸処理、塩基処理等を行い、表面改質を行う。この様な処理により表面に現れる官能基としては例えば水酸基、アミノ基、カルボキシル基、アルデヒド基、アルケニル基、アルキニル基、ハロゲノ基等が挙げられる。基板の寸法は幅1mmから100mm、好ましくは5mmから50mm、長さは1mmから200mm、好ましくは10mmから100mm、厚みは0.01mmから20mm、好ましくは0.1mmから5mmである。
図2において、本発明ではまず、Y基の重合度を減少させる操作を行う。つまり、1.TFAによる脱Boc化、2.PITC化、3.TFA処理、4.再Boc化を行うと、Y基の重合度が一つずつ減少し、1重合のY基が選択的に脱保護される。その後、光切断保護基であるW基を導入する。1つの水酸基が選択的に脱保護されるため、W基も選択的に目的の水酸基に導入され、基板(8)が得られる。
基板の目的の部位を選択的に露光すると、その部位に存在するW基が脱離され、水酸基が脱保護された基板(9)が得られる。
そこに次の糖を縮合させる。ここではGalを導入して基板(10)を得ている。次に、基板(10)の別の部位を露光すると、露光部の水酸基が選択的に脱保護された基板(11)が得られる。基板(11)のこの水酸基に、また別の糖、ここではGlcを導入して基板(12)を得ている。
ここでは便宜上丸囲み数字1をGal、丸囲み数字2をGlc、四角囲み数字3をGlcNAcとしている。Galの各水酸基は以下のように保護されているとする。Galの2位水酸基は今後の反応で影響がない保護基により保護されている(例えばBz基、Bn基等)。3位水酸基はB’という特殊な条件で選択的に切断可能なBという保護基により保護されている。4位水酸基はA’という特殊な条件で選択的に切断可能なAという保護基により保護されている。6位水酸基はC’という特殊な条件で選択的に切断可能なCという保護基により保護されている。Galの3位、4位、および6位水酸基に、例としてそれぞれGlcとGlcNAcを導入する手法を示す。順列組み合わせで可能な全27種類の糖鎖の合成が、本発明を使えば短い反応段階で可能になる。
まずは、Aを選択的に脱離し、光切断保護基(星印)を導入する。こうして得られた基板の模式図を図4に示す。ここでは基板に均一に同じ化合物が結合している。
次に中央1/3を露光し、4位水酸基を脱保護し、そこに丸囲み数字2のGlcを選択的に導入し、基板図6を得る。
最後に右1/3を露光し、4位水酸基を脱保護し、そこに四角囲み数字3のGlcNAcを選択的に導入し、基板図7を得る。
次にBを選択的に脱保護し、3位水酸基に選択的に光切断保護基(星印)を導入する。こうして得られた基板の模式図を図8に示す。
最後にCを選択的に脱保護し、6位水酸基に選択的に光切断保護基(星印)を導入する。こうして得られた基板の模式図を図12に示す。
以上の手順により複雑な構造の糖鎖も簡単に、かつ正確、短工程で作り分けることが可能である(図16)。
Pd/C:パラジウム炭素、Pd nanoparticles:パラジウムナノパーティクル、TFA:トリフルオロ酢酸、DDQ: 2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-p-ベンゾキノン、NaOMe:ナトリウムメチラート、2°amine:2級アミン、acid:酸、TsOH:p-トルエンスルホン酸、tBuKO:カリウム ターシャリーブトキシド、Ir:イリジウム、Pd:パラジウム、Rh:ロジウム、Bu4NF:フッ化テトラ-n-ブチルアンモニウム、HF:フッ化水素、AcOH:酢酸、thiourea:チオウレア、NaHCO3:炭酸水素ナトリウム、NH2NH2:ヒドラジン。
ここで挙げた構造のみならず、W基が切断される事により活性化(もしくは不安定化)され、他の保護基に影響を与えない特殊な反応条件で選択的に切断され、脱保護される構造はいずれもZとして使用することができる。
等が挙げられる。
基板にリンカー又はアクセプターを結合する方法に特に限定はなく、例えばグリコシド結合、アミド結合、エステル結合、エーテル結合、アルキル結合等により容易に結合することができる。
2−(2−ニトロフェニル)プロピルオキシカルボニル(NPPOC)
二炭酸ジ-ターシャリー-ブチル(Boc2O)
N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)
4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)
ジクロロメタン(CH2Cl2、DCM)
N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)
フェニルイソチオシアネート(PITC)
N−メチルモルフォリン(NMM)
N−ヨードスクシンイミド(NIS)
トリフルオロメタンスルホン酸(TfOH)
安息香酸(BzOH)
トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル(TMSOTf)
テトラヒドロフラン(THF)
トリフルオロ酢酸(TFA)
tert(ターシャリー)−ブトキシカルボニル(Boc)
9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニル(Fmoc)
ベンゾイル(Bz)
ベンジル(Bn)
チオフェニル(SPh)
アリール(Ar)
室温(r.t.)
ガラクトース(Gal)
グルコサミン(GlcN)
グリシン(Gly)
2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル基(Troc)
ユニケモハイドロキシ保護基(UCHP)(特許文献1及び2記載のY基の総称)
この実施例では、一枚のガラス上に結合位置の異なる3種類の2糖を作りわけている。
実施例1A(アクセプターを基板に結合する工程)
ガラス(13)(シリカガラスを3-アミノプロピルトリエトキシシラン処理後、6−ヒドロキシヘキサン酸を結合させた物。これによりガラス表面に水酸基を有するリンカーが共有結合している)にFmocGlyを導入し、導入されたFmocの量を定量することにより水酸基のローディング量を0.0235mmol/gと決定した。
そのガラス(13)の全面にまず、3位水酸基がBocを持った1重合のY基(-[(CH3CH2)2CH]N-CH2-CO-)で保護され、4位水酸基がNPPOCで保護され、6位水酸基がBocを持った2重合のY基により保護されたグルコサミンドナー(15)を導入した。
ガラス(13)3枚((i)1.561g(2.7cm x 2.6cm x 0.1cm)、(ii)2.190g(5.0cm x 2.5cm x 0.1cm)、(iii)2.178g(5.0cm x 2.5cm x 0.1cm))に、グルコサミンドナー(15)(566mg)、モレキュラーシーブス4A(4.67g)、NIS(309mg)を加え、窒素雰囲気下、脱水ジクロロメタン(6ml)を加えて、-30℃で振盪した。そこにTfOH (122μl)を加え-30℃で1日振盪した。ガラスをNa2S2O3水溶液/アセトン、水、メタノール、DMFの順に洗浄後、縮合時に切断されたBoc基の再導入のため、DMF(6ml)、Boc2O(600μl)、飽和重曹水(600μl)を加え、室温にて4時間振盪した。ガラスを水/DMF、DMF、クロロホルムの順に洗浄後真空乾燥し、ガラス(16)を得た。
ガラス上の構造確認の為に、ガラス(16)を少々砕き玉尾酸化の条件にさらし、切り出しを行い、MS(MALDI-TOF)を測定し目的物(化合物17)を確認した。
化合物17:MALDI-TOF-MS, C59H95Cl3N6O20Na+ (M+Na)+の計算値:1335.56, 実測値:1336.5
Bzキャッピング後のガラスを4領域に区別する為にガラス切りで下記スキームに示すように十字の線を書いた。
まず、GlcNの4位水酸基を選択的に脱保護し、Galβ1-4GlcN構造を構築する為に、領域2だけに光を当てる。ガラスをアセトニトリル10ml、水10mlの混合溶媒中に浸し、360nmの光(9.19 mW/cm2)を領域2にだけ室温下30分照射した。水、アセトンの順にガラスを洗浄し、真空乾燥することにより、領域2に存在するGlcNの4位に結合したNPPOC基を脱離したガラス(18)を得た。
領域2のガラスを少々砕き玉尾酸化することにより選択的にNPPOCが脱離された化合物19を確認した。
化合物19:MALDI-TOF-MS, C49H86Cl3N5O16Na+ (M+Na)+の計算値:1128.50, 実測値:1129.1
ガラス上の構造確認の為に、ガラス(21)の領域2を少々砕き玉尾酸化の条件にさらし切り出しを行い、MS(MALDI-TOF)を測定し目的物(22)を確認した。
化合物22:MALDI-TOF-MS, C83H118Cl3N5O22Na+ (M+Na)+の計算値:1664.72, 実測値:1664.7
ガラスをアセトニトリル10ml、水10mlの混合溶媒中に浸し、360nmの光(9.19 mW/cm2)を領域1,3,4だけに室温下30分照射した。水、アセトンの順にガラスを洗浄し、真空乾燥することにより、領域1,3,4に存在するGlcNの4位に結合したNPPOC基を脱離したガラスを得た。その後、ガラスにBz2O(500mg)、DMAP(50mg)、ジクロロメタン(10ml)を加え室温にて1日振盪した。2N-塩酸水/アセトン、水、DMF、クロロホルムの順にガラスを洗浄し、真空乾燥した。このBzキャッピングを同条件で繰り返し、ガラス(23)を得た。
構造確認のため、領域1を玉尾酸化し、MSを測定した。その結果、GlcNの4位がBz化された化合物24を確認した。
化合物24:MALDI-TOF-MS, C56H90Cl3N5O17Na+ (M+Na)+の計算値:1232.53, 実測値:1233.5
構造確認のため、領域1のガラスを少々砕きピリジン(1ml)、無水酢酸(500μl)を加え室温にて1時間振盪し、DMF、クロロホルムの順に洗浄した後、玉尾酸化し、MSを測定した。その結果、GlcNの3位がAc化され(選択的に脱保護された3位水酸基にアセチル基が選択的に導入された)、6位が1重合のY基により保護された化合物26を確認した。
化合物26:MALDI-TOF-MS, C39H58Cl3N3O14Na+ (M+Na)+の計算値:920.29, 実測値:920.4
構造確認のため、領域1のガラスを少々砕き玉尾酸化し、MSを測定した。その結果、GlcNの3位がNPPOC化された化合物28を確認した。
化合物28:MALDI-TOF-MS, C47H65Cl3N4O17Na+ (M+Na)+の計算値:1085.33, 実測値:1085.3
領域3に選択的にGalβ1-3GlcN構造を構築するために、領域3のみ3位水酸基を脱保護し、他の領域はBz基にてキャッピングする必要がある。
まず、領域1,2,4に対して3位水酸基のBzキャッピングを行う。ガラス(27)をアセトニトリル10ml、水10mlの混合溶媒中に浸し、360nmの光(9.19 mW/cm2)を領域1,2,4にだけ室温下30分照射した。水、アセトンの順にガラスを洗浄し、真空乾燥することにより、領域1,2,4に存在するGlcNの3位に結合したNPPOC基を脱離したガラスを得た。その後、ガラスにBz2O(500mg)、DMAP(50mg)、ジクロロメタン(10ml)を加え室温にて1日振盪した。2N-塩酸水/アセトン、水、DMF、クロロホルムの順にガラスを洗浄し、真空乾燥した。このBzキャッピングを同条件で繰り返し、ガラス(29)を得た。
構造確認のため、領域1を玉尾酸化し、MSを測定した。その結果、GlcNの3位がBz化された化合物30を確認した。
化合物30:MALDI-TOF-MS, C44H60Cl3N3O14Na+ (M+Na)+の計算値:982.30, 実測値:982.3
領域3のガラスを少々砕き玉尾酸化することにより選択的にNPPOCが脱離された化合物32を確認した。
化合物32:MALDI-TOF-MS, C37H56Cl3N3O13Na+ (M+Na)+の計算値:878.28, 実測値:878.4
ガラス上の構造確認の為に、ガラス(33)の領域3を少々砕き玉尾酸化の条件にさらし切り出しを行い、MS(MALDI-TOF)を測定し目的物(34)を確認した。
化合物34:MALDI-TOF-MS, C71H88Cl3N3O19Na+ (M+Na)+の計算値:1414.50, 実測値:1414.5
構造確認のため、領域1のガラスを少々砕き玉尾酸化し、MSを測定した。その結果、GlcNの6位がNPPOC化された化合物36を確認した。
化合物36:MALDI-TOF-MS, C42H48Cl3N3O15Na+ (M+Na)+の計算値:962.20, 実測値:962.2
領域4に選択的にGalβ1-6GlcN構造を構築するために、領域4のみ6位水酸基を脱保護し、他の領域はBz基にてキャッピングする必要がある。まず、領域1,2,3に対して6位水酸基のBzキャッピングを行う。ガラス(35)をアセトニトリル10ml、水10mlの混合溶媒中に浸し、360nmの光(9.19 mW/cm2)を領域1,2,3のみに室温下30分照射した。水、アセトンの順にガラスを洗浄し、真空乾燥することにより、領域1,2,3に存在するGlcNの6位に結合したNPPOC基を脱離したガラスを得た。その後、ガラスにBz2O(500mg)、DMAP(50mg)、ジクロロメタン(10ml)を加え室温にて1日振盪した。2N-塩酸水/アセトン、水、DMF、クロロホルムの順にガラスを洗浄し、真空乾燥した。このBzキャッピングを同条件で繰り返し、ガラス(37)を得た。
構造確認のため、領域1を玉尾酸化し、MSを測定した。その結果、GlcNの6位がBz化された化合物38を確認した。
化合物38:MALDI-TOF-MS, C39H43Cl3N2O12Na+ (M+Na)+の計算値:859.18, 実測値:859.5
領域4のガラスを少々砕き玉尾酸化することにより選択的にNPPOCが脱離された化合物40を確認した。
化合物40:MALDI-TOF-MS, C32H39Cl3N2O11Na+ (M+Na)+の計算値:755.15, 実測値:756.3
化合物42:MALDI-TOF-MS, C39H43Cl3N2O12Na+ (M+Na)+の計算値:859.18, 実測値:859.7
化合物43:MALDI-TOF-MS, C66H71Cl3N2O17Na+ (M+Na)+の計算値:1291.37, 実測値:1292.5
化合物44:MALDI-TOF-MS, C66H71Cl3N2O17Na+ (M+Na)+の計算値:1291.37, 実測値:1291.7
化合物45:MALDI-TOF-MS, C66H71Cl3N2O17Na+ (M+Na)+の計算値:1291.37, 実測値:1291.8
すべての工程をMSにより追跡できた事、及び特許文献1及び2記載の方法により、Y基を用いた重合度の減少による水酸基の連続的脱保護は、選択的に進行することが証明されている事から、目的の領域に目的の化合物が合成できていることは確かであるが、念のため標品を用いたHPLCの保持時間の比較を行った。
領域2,3,4を玉尾酸化することにより得られる3種類の2糖、化合物(43)(Galβ1-4GlcN)、化合物(44)(Galβ1-3GlcN)、化合物(45)(Galβ1-6GlcN)に対して、メタノール中、NaOMeを作用してそれぞれ化合物(46)、(47)、(48)を得た。別途用意したこれら3種と同じ構造の化合物標品と、HPLCの保持時間を比較した。C-18HPLCカラムを用い、1ml/minの流速で流し、215nmでのUV吸収を検出した。最初アセトニトリル:水=30:70で10分流し、10分後直ちに40:60に変更した。その後50分かけて50:50に変わるようグラジェントをかけた。標品の保持時間は化合物(46)、(47)、(48)それぞれ46.232分、45.572分、40.230分であるのに対し、各領域から得られた2糖由来のピークはそれぞれ45.700分、45.023分、39.510分であり、正確に各結合が合成できていることが証明された。
ビルドアップ的に合成した糖鎖がレクチンにより認識されることを以下のようにして証明した。
リンカーを導入したガラス(49)に対し、実施例1に記載した方法に従いNPPOCを導入し、その後未反応のOH基をBzでキャッピングを行いガラス(50)を得た。そこに、星形に光を当てることにより星形にNPPOCが脱離し、星形に水酸基が脱保護されたガラス(51)を得た。
そこにガラクトースドナー(52)を縮合した。ガラス(51)(50mg)にガラクトースドナー(52)(10mg)、NIS(10mg)を加え窒素雰囲気下、無水ジクロロメタンを加え-30℃に冷却した。そこにTfOH(4μl)を加え、-30℃で1日振盪した。ガラスを飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液/アセトン、水、メタノール、DMF、クロロホルムの順に洗浄し、真空乾燥することによりガラス(53)を得た。すべての保護基を脱保護するために、ガラス(53)にメタノール(1ml)を加え、NaOMeをpH11になるまで加えた後、室温にて1日振盪した。ガラスを水、2N−塩酸水、水、DMF、クロロホルムの順に洗浄し真空乾燥することによりガラス(54)を得た。
溶液を除去したガラスにアビジン化されたAlexaFluor488(登録商標)(0.1mg)/(1%BSA/PBS(800μl))で覆い2時間室温にて軽く振盪した。溶液を除去した後上記洗いの操作を3回繰り返した。ガラスの蛍光を蛍光スキャナーで観察した。532nmレーザーを用い励起させ、蛍光フィルターとして526nmのバンドパスフィルターを用いて観察した結果、図17のように星形に光った。つまり、星形に光を当てて光切断保護基を脱離した所にガラクトースが導入され、その導入されたガラクトースをレクチンが認識したためである。これによりビルドアップ的にガラス上で合成した糖鎖をレクチンが認識可能であることが証明できた。
実施例1では光切断保護基としてW基を直接水酸基に結合させていたが、この実施例では光切断保護基としてW(Z)基でも可能であることを示す。
リンカーを導入したガラス(55)(5.59g、水酸基のローディング = 0.01652 mmol/g)に光切断保護基を持たないグルコサミン誘導体ドナー(56)(509mg)、モレキュラーシーブス4A(5g)、NIS(249g)を入れ窒素雰囲気下、無水ジクロロメタン(5ml)を入れ、−30℃に冷却した。−30℃にてTfOH(98μl)を入れそのまま1日振盪した。ガラスをDMF、チオ硫酸ナトリウム水溶液/アセトン、水、DMFの順で洗浄した。このガラスにDMF(12ml)、Boc2O(1ml)、飽和重曹水(1ml)を加え室温にて12時間振盪した。ガラスをDMF/水、DMF、クロロホルムの順で洗浄し真空乾燥し、ガラス(57)を得た。
ガラスに結合した化合物の構造確認の為に、ガラス(57)を少々砕き玉尾酸化の条件にさらし切り出しを行い、MS(MALDI-TOF)を測定し目的物(58)を確認した。目的通りグルコサミン誘導体がガラス上に導入された。
化合物58:MALDI-TOF-MS, C71H109Cl3N6O19Na+ (M+Na)+の計算値:1477.67, 実測値:1478.0
構造確認のため、ガラスを少々砕きピリジン(1ml)、無水酢酸(500μl)を加え室温にて3時間振盪し、DMF、クロロホルムの順に洗浄した後、玉尾酸化し、MSを測定した。その結果、GlcNの6位がAc化され(選択的に脱保護された6位水酸基にアセチル基が選択的に導入された)、3位が1重合のY基により保護された化合物60を確認した。
化合物60:MALDI-TOF-MS, C54H77Cl3N4O16Na+ (M+Na)+の計算値:1165.43, 実測値:1166.3
化合物63:MALDI-TOF-MS, C69H97Cl3N6O20Na+ (M+Na)+の計算値:1457.57, 実測値:1457.6
化合物64:MALDI-TOF-MS, C64H87Cl3N6O20Na+ (M+Na)+の計算値:1387.49, 実測値:1388.0
それぞれのガラスをTHF/水(10ml/10ml)に浸し、PITC(120μl)を加えしばらく振盪した後、360nm(8.6 mW/cm2)の光を室温にて30分間照射した。その後、水、アセトン、DMFの順にガラスを洗浄し、DMF(1.5ml)、PITC(500μl)、NMM(120μl)を加え室温にて30分間振盪した。ガラスをDMF、アセトン、DMF、クロロホルムの順に洗浄し真空乾燥することによりガラス(65)とガラス(66)をそれぞれ得た。
ガラス上の構造確認の為に、それぞれのガラスを少々砕き、構造確認を行った。ガラス(65、66)はそれぞれ玉尾酸化し、MSを測定した。その結果両方から同じ目的物(67、68)をそれぞれ確認した。ガラス(65)においては、念のため、遮光した部分のガラスを玉尾酸化の条件にさらし切り出しを行い、MS(MALDI-TOF)を測定した所、未反応体である化合物(63)を確認した。
化合物67:MALDI-TOF-MS, C52H75Cl3N4O15Na+ (M+Na)+の計算値:1123.42, 実測値:1123.4
化合物68:MALDI-TOF-MS, C52H75Cl3N4O15Na+ (M+Na)+の計算値:1123.42, 実測値:1123.7
化合物63:MALDI-TOF-MS, C69H97Cl3N6O20Na+ (M+Na)+の計算値:1457.57, 実測値:1458.0
光切断保護基W基の種類を検討した。
水酸基に対して光切断保護基として、Aqmoc基、NPPOC基、MNPPOC基を導入し、光により切断されるか検討した。3,4位水酸基が脱保護されたGal(69)に対してそれぞれの光切断保護基を導入し化合物70,71,72を得た。これらに各種溶媒中太陽光を照射して反応をTLCで追跡した。結果、いずれにおいてもTHF/水=1/1の溶液中で反応させると定量的に脱保護でき、化合物73を与える事が判明し、このような光切断保護基が本発明に使用可能である事がわかる。
ここで、compound:化合物、solvent:溶媒、product:生成物、by-product:副生成物、no solvent:溶媒なし、50% aq THF:50%THF水溶液、CH2Cl2:ジクロロメタン、2% DBU in CH2Cl2:2%DBU含有ジクロロメタン、2% DIPEA in CH2Cl2:2%DIPEA含有ジクロロメタン、CH3CN:アセトニトリル、1,4-dioxane:1,4−ジオキサン、50% aq MeOH:50%メタノール水溶液を示す。
分岐を有する4糖を合成した例
リンカーが結合したガラス(74)3.75g(ローディング0.0347mmol/g)に、ガラクトースドナー(75)(413mg)、NIS(263.7mg)、モレキュラーシーブス4A(2g)、脱水ジクロロメタン(6ml)を加え、−30℃に冷却した。−30℃にてTfOH(103.7μl)を加え、そのまま−30℃で3時間振盪した。DMF、チオ硫酸ナトリウム水溶液/アセトン、水、DMFで洗浄後、DMF(10ml)、Boc2O(1ml)、飽和重曹水(1ml)を加え室温にて6時間振盪した。水/DMF、DMFで洗浄後、もう一度同じようにBoc化を行った。構造確認のため、ガラスを少々砕き玉尾酸化し、MSを測定した。その結果、目的の化合物77を確認した。
化合物77:MALDI-TOF-MS, C63H81N3O16Na+ (M+Na)+の計算値:1158.55, 実測値:1158.9
化合物79:MALDI-TOF-MS, C51H67N3O17Na+ (M+Na)+の計算値:1016.44, 実測値:1016.6
化合物81:MALDI-TOF-MS, C41H58N2O13Na+ (M+Na)+の計算値:809.38, 実測値:810.0
化合物83:MALDI-TOF-MS, C48H62N2O14Na+ (M+Na)+の計算値:913.41, 実測値:913.3
化合物84:MALDI-TOF-MS, C41H58N2O13Na+ (M+Na)+の計算値:809.38, 実測値:809.3
化合物87:MALDI-TOF-MS, C75H90N2O19Na+ (M+Na)+の計算値:1345.60, 実測値:1345.7
化合物89:MALDI-TOF-MS, C36H41NO11Na+ (M+Na)+の計算値:686.26, 実測値:686.2
化合物90:MALDI-TOF-MS, C63H69NO16Na+ (M+Na)+の計算値:1118.45, 実測値:1118.3
化合物92:MALDI-TOF-MS, C46H50N2O15Na+ (M+Na)+の計算値:893.31, 実測値:893.3
化合物94:MALDI-TOF-MS, C43H45NO12Na+ (M+Na)+の計算値:790.28, 実測値:790.3
化合物95:MALDI-TOF-MS, C70H73NO17Na+ (M+Na)+の計算値:1222.48, 実測値:1222.5
化合物97:MALDI-TOF-MS, C36H41NO11Na+ (M+Na)+の計算値:686.26, 実測値:687.0
化合物100:MALDI-TOF-MS, C66H65Cl3N2O20Na+ (M+Na)+の計算値:1333.31, 実測値:1334.0
化合物102:MALDI-TOF-MS, C63H69NO16Na+ (M+Na)+の計算値:1118.45, 実測値:1118.7
化合物105:MALDI-TOF-MS, C124H117NO33Na+ (M+Na)+の計算値:2170.74, 実測値:2172.4
つまり、第1のアクセプターに第1のドナーを縮合させて第1の生成物を得、これを第2のアクセプターとし、これに第2のドナーを縮合させて第2の生成物を得る、という工程を順次必要な回数実施することにより、一枚の基板上で分岐構造及び/又は直鎖構造を有するコンビナトリアルライブラリーを効率よく合成することができる。
実施例1においてガラスの代わりに、板状PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂の表面に真空紫外光(VUV)を照射した後、APTES(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)処理により表面にアミノ基を導入した樹脂基板を用いても、同様に基板上での糖鎖の作り分けが可能であった。
実施例1のグルコサミンドナー(15)において、3位水酸基の保護基を、Bocで保護された1重合のY基(-[(CH3CH2)2CH]N-CH2-CO-)に代えて、Bu4NFで選択的に脱保護可能なTBDMS基(tert-butyldimethylsilyl group: ターシャリー−ブチルジメチルシリル基)にし、6位水酸基の保護基をBocで保護された2重合のY基(-[(CH3CH2)2CH]N-CH2-CO-)に代えて、DDQで選択的に脱保護可能なPMB基(p-methoxybenzyl group: パラメトキシベンジル基)にしたドナーを用いても同様に基板上での糖鎖の作り分けが可能であった。
Claims (8)
- 基板上に結合した、少なくとも2個の水酸基を有する化合物であって、そのすべての水酸基が、脱保護条件が相互に異なる少なくとも2種の保護基からなる群から選ばれる保護基で保護された化合物をアクセプターとして用い、該保護基を選択的に脱保護し、脱保護された水酸基に所望のドナー又はキャッピング基を選択的に導入して一枚の基板上でビルドアップ型コンビナトリアルライブラリーを合成する方法において、
前記アクセプター及びドナーは糖であり、
アクセプターの少なくとも1個の水酸基の保護基がA(Y)m基(Aは酸性、塩基性、遷移金属又は遷移金属有機錯体、光分解、又は酵素により脱離可能な保護基を示す。Yは−NR 1 −CR 2 R 3 −CO−、R 1 は炭素数1〜6のアルキル基又は水素原子、R 2 及びR 3 は水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜20のアルケニル基、炭素数6〜7のアリール基、又は炭素数7〜20のアリールアルキル基であり、同一でも異なっていても良く、mはYの重合度を示し、1以上の整数であり、mが2以上の整数の場合、各Y中のR 1 、R 2 、R 3 は、相互に同一でも異なっていても良い。)であり、
(1)第1の保護された水酸基を選択的に脱保護する工程、
(2)脱保護された水酸基に、W基もしくはW(Z)基(Wは光分解により脱離可能な保護基を示し、ZはW基が脱離する光分解の条件でW基と同時に脱保護される基、もしくはW基が脱離する事により、活性化(もしくは不安定化)され、選択的に除去可能になる基を示す)を導入する工程、
(3)基板をn個(nは1以上の整数)の部位に分割し、該基板の第1の部位を選択的に露光し、露光部のW基もしくはW(Z)基を選択的に脱保護し、選択的に脱保護された水酸基に、所望の第1のドナー又はキャッピング基を選択的に導入する工程、
(4)nが2以上の整数である場合、工程(3)を第2の部位から所望の第nの部位まで繰り返し、各部位において、選択的に脱保護された水酸基に、所望の第2のドナー又はキャッピング基ないし所望の第nのドナー又はキャッピング基を選択的に導入する工程、
(5)第2の保護された水酸基について、工程(1)から(4)を繰り返し、第2の保護された水酸基を脱保護し、脱保護された水酸基に、W基もしくはW(Z)基を導入し、基板をn個(nは1以上の整数)の部位に分割し、該基板の第1の部位を選択的に露光し、露光部のW基もしくはW(Z)基を選択的に脱保護し、選択的に脱保護された水酸基に、所望の第1のドナー又はキャッピング基を選択的に導入し、上記工程を第2の部位から所望の第nの部位まで繰り返し、各部位において、選択的に脱保護された水酸基に、所望の第2のドナー又はキャッピング基ないし所望の第nのドナー又はキャッピング基を選択的に導入する工程、
(6)必要により、工程(5)を所望の、保護された水酸基について繰り返し、各水酸基の各部位において、選択的に脱保護された水酸基に、第1ないし第nのドナー又はキャッピング基を選択的に導入する工程を含み、
工程(1)〜(6)において、繰り返して使用する、W基もしくはW(Z)基、基板の分割部位の数n、ドナー又はキャッピング基は、同一でも異なっていても良い、
ことを特徴とする、ビルドアップ型コンビナトリアルライブラリー合成方法。 - 第1の保護された水酸基を選択的に脱保護する工程が、A(Y)m基のY基中の酸アミド結合をN末端側から逐次切り離す方法により重合度の小さなY基を選択的に脱保護する工程を含む請求項1記載の方法。
- アクセプターの1個の水酸基の保護基がV基(Vは塩基性、酸化剤、フッ素化合物、光分解、又は酵素により脱離可能な保護基を示す。)であり、他の少なくとも1個の水酸基の保護基がA(Y)m基(Aは酸性、塩基性、遷移金属又は遷移金属有機錯体、光分解、又は酵素により脱離可能な保護基を示す。ただし、AがVと同一であることはなく、Vの脱離条件でAが脱離することはない。)であり、第1の保護された水酸基がV基で保護された水酸基である請求項1記載の方法。
- ドナーがA(Y)m基により保護された少なくとも1個の水酸基を含み、工程(1)〜(6)を繰り返すことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
- ドナーがV基により保護された少なくとも1個の水酸基を含む請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
- 保護基AがBoc基であり、保護基WがNPPOC基である請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
- アクセプターが、リンカーを介して基板に固定されている請求項1〜6のいずれか1項記載の方法。
- 基板が、ガラスである請求項1〜7のいずれか1項記載の方法。
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