以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は本実施形態に係る磁気共鳴画像診断装置(MRI装置)100の構成を示す図である。MRI装置100は、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源3、寝台4、寝台制御部5、コイルユニット6a,6b、送信部7、クロック信号生成部8、高周波パルス・傾斜磁場制御部9、ドライバ10、無線ユニット11、システム再構成フロントエンド15、再構成システム20、記憶部21、表示部22、入力部23、主制御部24およびデータ信号生成部25を具備する。なお、これらの各部のうち、コイルユニット6b以外の各部は、コイルユニット6bとは別体のメインユニットに備えられる。なおメインユニットは、ガントリと処理ユニットとに分けられることも有る。この場合は例えば、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源3、寝台4、寝台制御部5、コイルユニット6a、送信部7、高周波パルス・傾斜磁場制御部9および無線ユニット11がガントリに備えられ、クロック信号生成部8、ドライバ10、システム再構成フロントエンド15、再構成システム20、記憶部21、表示部22、入力部23および主制御部24が処理ユニットに備えられる。かくして、メインユニットあるいは処理ユニットは、制御ユニットとしての機能を備える。
静磁場磁石1は、中空の円筒形をなし、内部の空間に一様な静磁場を発生する。この静磁場磁石1としては、例えば永久磁石、超伝導磁石等が使用される。
傾斜磁場コイル2は、中空の円筒形をなし、静磁場磁石1の内側に配置される。傾斜磁場コイル2は、互いに直交するX,Y,Zの各軸に対応する3種のコイルが組み合わされている。傾斜磁場コイル2は、上記の3種のコイルが傾斜磁場電源3から個別に電流供給を受けて、磁場強度がX,Y,Zの各軸に沿って傾斜する傾斜磁場を発生する。なお、Z軸方向は、例えば静磁場方向と同方向とする。X,Y,Z各軸の傾斜磁場は、例えば、スライス選択用傾斜磁場Gs、位相エンコード用傾斜磁場Geおよびリードアウト用傾斜磁場Grにそれぞれ対応される。スライス選択用傾斜磁場Gsは、任意に撮影断面を決めるために利用される。位相エンコード用傾斜磁場Geは、空間的位置に応じて磁気共鳴信号の位相を変化させるために利用される。リードアウト用傾斜磁場Grは、空間的位置に応じて磁気共鳴信号の周波数を変化させるために利用される。
被検体200は、寝台4の天板4aに載置された状態で傾斜磁場コイル2の内部の空間(撮像空間)内に挿入される。寝台4は、寝台制御部5の制御の下に、天板4aをその長手方向(図1中における左右方向)および上下方向に移動させる。通常、この長手方向が静磁場磁石1の中心軸と平行になるように寝台4が設置される。
コイルユニット6aは、1つまたは複数のコイルを円筒状のケースに収容して構成される。コイルユニット6aは、傾斜磁場コイル2の内側に配置される。コイルユニット6aは、送信部7から高周波パルス(RFパルス)の供給を受けて、高周波磁場を発生する。
コイルユニット6bは、天板4a上に載置されたり、天板4aに内蔵されたり、あるいは被検体200に装着される。そして撮影時には、被検体200とともに撮像空間内に挿入され、被検体200から電磁波として放射される磁気共鳴信号を受けて電気的な磁気共鳴信号を得る。コイルユニット6bとしては、様々なタイプのものが任意に装着可能である。また受信用のコイルユニットは、2つ以上が装着されても良い。コイルユニット6bは、電気的な信号として得た磁気共鳴信号をデジタル無線送信する機能を備える。
送信部7は、ラーモア周波数に対応するRFパルスをコイルユニット6aに供給する。
クロック信号生成部8は、所定周波数の第1のクロック信号を発生する。この第1のクロック信号は、MRI装置100の全体の動作タイミングの基準となるシステムクロックとしても使用されても良い。
高周波パルス・傾斜磁場制御部9は、主制御部24の制御の下に、所要のパルスシーケンスに従って各傾斜磁場を変化させるとともにRFパルスを送信するように傾斜磁場電源3および送信部7を制御する。なお高周波パルス・傾斜磁場制御部9には、第1のクロック信号がそのレベルがドライバ10によって適切に調整された上で与えられる。高周波パルス・傾斜磁場制御部9は、この第1のクロック信号に同期してパルスシーケンスを進める。
無線ユニット11は、コイルユニット6bからデジタル無線送信された磁気共鳴信号を受信する。無線ユニット11は、受信したデジタル状態の磁気共鳴信号をデジタル復調した上でシステム再構成フロントエンド15へと出力する。また無線ユニット11は、第1のクロック信号および変復調クロック信号をコイルユニット6bに無線送信する。さらに無線ユニット11は、データ信号生成部25が出力するデータ信号で第1のクロック信号を変調することにより、第1のクロック信号とともにデータ信号を無線送信する。
システム再構成フロントエンド15は、無線ユニット11から与えられる磁気共鳴信号に対し、ゲイン制御、周波数変換、ならびに直交検波を施す。さらにシステム再構成フロントエンド15は、コイルユニット6bにおける振幅圧縮の復元処理を磁気共鳴信号に対し施す。
再構成システム20は、システム再構成フロントエンド15で処理された後の磁気共鳴信号の少なくとも一方に基づいて、被検体200に関する画像を再構成する。
記憶部21は、再構成システム20で再構成された画像を示す画像データなどの各種のデータを記憶する。
表示部22は、再構成システム20で再構成された画像や、MRI装置100をユーザが操作するための各種の操作画面などの各種の情報を主制御部24の制御の下に表示する。表示部22としては、液晶表示器などの表示デバイスを利用可能である。
入力部23は、オペレータからの各種指令や情報入力を受け付ける。入力部23としては、マウスやトラックボールなどのポインティングデバイス、モード切替スイッチ等の選択デバイス、あるいはキーボード等の入力デバイスを適宜に利用可能である。
主制御部24は、図示していないCPUやメモリ等を有しており、MRI装置100を総括的に制御する。
データ信号生成部25は、コイルユニット6bの動作状態を指示するためのデータ信号を主制御部24の指示の下に生成する。
図2は図1中のコイルユニット6bおよび無線ユニット11のブロック図である。
コイルユニット6bは、クロック受信アンテナ31、検波部32、クロック再生部33、搬送波生成部35、複数のコイル36、カップリング回路37、セレクタ38、LOGアンプ39、デジタル変換部40、開始信号付加部41、変調処理部42、ドライバ43、共鳴信号送信アンテナ44、データ検出部45および制御部46を含む。また無線ユニット11は、変調部51、キャリア信号生成部52、振幅変調部53、ドライバ54、クロック送信アンテナ55、変復調用信号生成部56および復調処理部63を含む。
変調部51は、クロック信号生成部8から出力された第1のクロック信号を、データ信号生成部25から出力されたデータ信号で変調することによって変調信号を生成する。
キャリア信号生成部52は、変調信号を無線伝送するための所定周波数のキャリア信号を生成する。キャリア信号の周波数は、磁気共鳴周波数の整数分の1の周波数を避けた値に設定する。
振幅変調部53は、変調信号によりキャリア信号を振幅変調することで、クロック伝送信号を生成する。
ドライバ54は、クロック伝送信号を無線送信するのに適するレベルに調整する。
かくしてキャリア信号生成部52、振幅変調部53、ドライバ54およびクロック送信アンテナ55は、変調信号を含んだクロック伝送信号を生成するクロック伝送信号生成部を構成する。
クロック送信アンテナ55は、ドライバ54から出力される電気的なクロック伝送信号が供給されると、これを電磁波として空間に放射する。
クロック受信アンテナ31は、クロック送信アンテナ55から放射されたものを含んだ電磁波を受けて、それに対応した電気信号を出力する。
検波部32は、クロック送信アンテナ55から出力される電気信号に含まれたクロック伝送信号から変調信号を検波する。
クロック再生部33は、検波部32で検波された変調信号に含まれる第1のクロック信号の成分に同期した第2のクロック信号を生成する。
変復調用信号生成部56は、所定周波数の復調用信号を生成する。
搬送波生成部35は、クロック再生部33で再生された第2のクロック信号を使用して搬送波を生成する。搬送波の周波数は、磁気共鳴周波数の整数分の1の周波数を避け、かつキャリア信号の周波数とは異なる値に設定する。そして搬送波生成部35は、再生した搬送波のレベルを適切に調整した上で変調処理部42へと供給する。
コイル36は、少なくとも2つが設けられる。図2では2つのみを図示しているが、3つ以上が設けられていても良い。そしてこれら複数のコイル36は、フェイズドアレイコイル(PAC)を形成している。コイル36はそれぞれ、被検体200から電磁波として放射された磁気共鳴信号を受けて、それに対応した電気的な磁気共鳴信号を出力する。
カップリング回路37は、複数のコイル36のうちの2つの間のカップリング/デカップリングを切り替える。カップリング回路37は、カップリング/デカップリングの切り替えに例えばPINダイオードを用いる。カップリング回路37は、コイル36が3つ以上設けられている場合には、2つ以上のカップリング回路37がコイル36の異なる組み合わせのそれぞれに対して設けられても良い。
セレクタ38は、制御部46の制御の下に複数のコイル36のいずれかを選択することで、その選択したコイル36を有効化する。セレクタ38は、選択したコイル36が出力する磁気共鳴信号をLOGアンプ39に入力する。なおセレクタ38は、複数のコイル36の全て、または一部の少なくとも2つのコイル36を同時に選択可能としても良い。例えば、複数のコイル36がいくつかのセクションに分けられて各セクションに少なくとも2つのコイル36が属しているならば、セレクタ38は同一のセクションに属している少なくとも2つのコイル36を同時に選択する。
LOGアンプ39は、セレクタ38から入力される磁気共鳴信号の振幅を予め定められた対数関数に応じて圧縮する。
デジタル変換部40は、LOGアンプ39から出力されるアナログ状態の磁気共鳴信号をデジタル化する。デジタル変換部40は、上記のデジタル化のための磁気共鳴信号のサンプリングをクロック再生部33から供給される第2のクロック信号に同期して行う。
開始信号付加部41は、制御部46の制御の下に、デジタル変換部40でデジタル化されたのちの磁気共鳴信号に対してエコー信号の開始タイミングを示す開始信号を付加する。
変調処理部42は、開始信号を付加した後の磁気共鳴信号に対し、デジタル送信のための符号化を施す。この符号化には、例えば畳み込み符号、リードソロモン符号、ターボ符号、あるいはLDCP符号などを適用可能である。さらに変調処理部42は、符号化した後の磁気共鳴信号により、搬送波生成部35から供給される搬送波を変調することによって伝送用信号を得る。
ドライバ43は、変調処理部42から出力される伝送用信号を無線送信するのに適するレベルに調整した上で共鳴信号送信アンテナ44に供給する。
かくして搬送波生成部35、変調処理部42およびドライバ43は、共鳴信号送信部を構成している。
共鳴信号送信アンテナ44は、ドライバ43から供給される電気的な伝送用信号を電磁波として空間に放射する。
アンテナ62は、共鳴信号送信アンテナ44から放射されたものを含んだ電磁波を受けて、それに対応した電気信号を出力する。
復調処理部63は、アンテナ62から出力される電気信号を、変復調用信号生成部56から供給される搬送波を用いてデジタル状態の磁気共鳴信号を復調する。
図3は検波部32、クロック再生部33およびデータ検出部45のブロック図である。
検波部32は、包絡線検波部32aおよびフィルタ32bを含む。
包絡線検波部32aは、クロック送信アンテナ55から出力される電気信号に含まれたクロック伝送信号に対して包絡線検波を行って変調信号に相当する信号成分を抽出する。
フィルタ32bは、包絡線検波により抽出された信号成分から帯域制限によって所望帯域外の信号を抑圧することによって、変調信号を抽出する。
クロック再生部33は、位相比較器33a、ループフィルタ33bおよび発振器(以下、VCOと称する)33cを含む。
位相比較器33aは、検波部32から与えられる変調信号とVCO33cが出力する第2のクロック信号との位相を比較してクロック位相差信号を出力する。
ループフィルタ33bは、クロック位相差信号を帯域制限することによりVCO33cの制御電圧を生成する。
VCO33cは、第2のクロック信号を発振する。VCO33cは、ループフィルタ33bから与えられる制御信号の電圧に応じて発振周波数を変更する。
データ検出部45は、サンプリング部45aおよび検出部45bを含む。
サンプリング部45aは、検波部32から与えられる変調信号をクロック再生部33から与えられる第2のクロック信号に同期してサンプリングする。
検出部45bは、サンプリング部45aで得られた符号列をデータ信号としてあらかじめ定められたデータパターンと比較することでデータ信号を検出する。
制御部46は、データ検出部45で検出されたデータ信号に基づいて、カップリング回路37、セレクタ38、LOGアンプ39、デジタル変換部40、開始信号付加部41、変調処理部42およびドライバ43の動作状態を後述するように制御する。
次に以上のように構成されたMRI装置100の動作について説明する。ただし、エコー信号を被検体200で生じさせ、エコー信号を収集し、この収集したエコー信号に基づいて被検体200に関する画像を再構成する動作などのような既存のMRI装置と同様な動作については説明を省略し、MRI装置100の特徴的な動作を中心に説明することとする。
コイルユニット6bでは、例えば次のような各項目について動作状態の変更が可能である。
(1) セレクタ38でのコイル36の選択状態。
(2) カップリングモード/デカップリングモードの選択状態。
(3) 磁気共鳴信号への開始信号の付加。
(4) 磁気共鳴信号の送信/非送信。
そしてこれらの動作状態は、主制御部24において決定される。
主制御部24はコイルユニット6bにおける何らかの動作状態を変更する必要が生じたならば、そのような動作状態の変更を指示するためのデータ信号を生成するようにデータ信号生成部25に指示する。この指示を受けるとデータ信号生成部25は、主制御部24から指定されたデータ信号を生成する。データ信号は、“0”または“1”を配列した系列により表され、指示する内容に応じて系列のパターンが異なる。上記のような動作状態の各項目にそれぞれ対応付けて互いに異なるデータパターンを予め割り付けておく。そしてデータ信号生成部25は、主制御部24から指示された項目に応じたデータパターンを持った系列のデータ信号を生成する。
データ信号生成部25で生成されたデータ信号は変調部51に与えられる。このようにデータ信号が与えられると変調部51は、クロック信号生成部8から与えられる第1のクロック信号をデータ信号で変調して変調信号を得る。この変調には、例えばOOK(ON-OFF-Keying)やASK(Amplitude-shift-Keying)が使用可能である。
図4,5,6は変調信号の一例をそれぞれ示す図である。
これらの図4,5,6において、区間301,401,501は第1のクロック信号の周期を表している。そして図4,5,6の例では、この第1のクロック信号の周期の単位で振幅を変化させることによってデータ信号を多重している。例えば、第1のクロック信号の振幅をそのままにした場合を“1”、小さくした場合を“0”としている。かくして区間302,402,502には、“10010110”、“01001011”、“01001110”なる系列を持ったデータ信号がそれぞれ多重されている。
変調部51でこのようにして得られた変調信号は、振幅変調部53においてキャリア信号生成部52で生成されたキャリア信号を振幅変調するために使用される。そして振幅変調部53で得られたクロック伝送信号は、ドライバ54を介してクロック送信アンテナ55へと供給されて、このクロック送信アンテナ55より空間へと電波として放射される。この電波が空間を伝播してクロック受信アンテナ31に到達すると、クロック受信アンテナ31によりクロック伝送信号は電気信号状態に戻される。そしてクロック伝送信号が検波部32で検波されることによって、クロック伝送信号から変調信号が抽出される。この変調信号は、クロック再生部33およびデータ検出部45にそれぞれ与えられる。
クロック再生部33では、変調信号に同期した第2のクロック信号が生成されることによって、変調信号に含まれている第1のクロック信号が擬似的に再生される。データ検出部45では、クロック再生部33で生成された第2のクロック信号に同期して変調信号をサンプリングし、さらにこのサンプリングで得られた符号列をあらかじめ定められたデータパターンと比較することでデータ信号が検出される。そしてデータ信号そのもの、またはデータ信号が示す指示に関連付けられたコマンドがデータ検出部45から制御部46に与えられる。
このようにして、コイルユニット6bにおける何らかの動作状態の変更に関する指示が、第1のクロック信号に重畳した状態でコイルユニット6bの制御部46へと無線にて送られる。
制御部46はこのようにして与えられた指示に応じて、上記の各項目に関しての動作状態の変更を次のように行う。
(1) 複数のコイル36のうちで有効とするべきコイル36の変更が指示されたならば制御部46は、新たに有効とするべきコイル36を選択するようにセレクタ38を制御する。
(2) カップリングモードの設定が指示されたならば制御部46は、カップリング回路37をカップリング状態とし、デカップリングモードの設定が指示されたならばカップリング回路37をデカップリング状態とする。
(3) 磁気共鳴信号への開始信号の付加が指示されたならば制御部46は、開始信号を磁気共鳴信号に付加するように開始信号付加部41を制御する。
(4) 制御部46は、磁気共鳴信号の送信が指示されたならばLOGアンプ39、デジタル変換部40、変調処理部42およびドライバ43を動作させ、非送信が指示されたならばLOGアンプ39、デジタル変換部40、変調処理部42およびドライバ43を停止させる。
なお本実施形態においては、データ信号はトリガ信号として取り扱うこととする。すなわち、主制御部24は、コイルユニット6bにおける何らかの動作状態を変更する必要が生じたタイミングでデータ信号生成部25にデータ信号を生成させる。そして制御部46は、データ信号がデータ検出部45により検出されたことに応じて、動作状態を変更する。ただし、図7に示すように、第1の動作状態から第2の動作状態へと切り替えるタイミングのみをデータ信号により指示し、第2の動作状態をあらかじめ定められた期間に渡り継続したのちに、データ信号での指示に依らずに第1の動作状態に切り替えるようにしても良いし、図8に示すように、第1の動作状態から第2の動作状態へと切り替えるタイミングおよび第2の動作状態から第1の動作状態へと切り替えるタイミングのいずれにおいてもデータ信号により指示しても良い。なお後者の場合にはさらに、第1の動作状態から第2の動作状態へと切り替えるタイミングと第2の動作状態から第1の動作状態へと切り替えるタイミングとでデータ信号のデータパターンを異ならせても良い。
上記(1)の動作状態の変更に関しては、図8に示す形態が一般的には適する。上記(2)の動作状態の変更に関しては、カップリングモードの変更シーケンスに応じて、図7に示す形態および図8に示す形態のいずれかが適し得る。すなわち、一定期間のみいずれか一方のモードを設定され、他の期間には他方のモードを設定するような変更シーケンスが採用されるならば図7に示す形態が適するし、両モードを設定する期間が変更され得るような変更シーケンスが採用されるならば図8に示す形態が適する。上記(3)の動作状態の変更に関しては、開始信号付加部41は所定の開始信号を磁気共鳴信号に付加し終えれば処理を停止すべきであるので、図7に示す形態が一般的には適する。上記の(4)の動作状態の変更に関しては、磁気共鳴信号を非送信とする目的に応じて、図7に示す形態および図8に示す形態のいずれかが適し得る。磁気共鳴信号を非送信とする目的としては、コイルユニット6aから高周波磁場を発生する際(90度パルスの送信時や180度パルスの送信時)の混信を回避することが考えられる。この目的にあっては、高周波磁場を発生する期間が一定であるならば図7に示す形態が利用可能であるが、高周波磁場を発生する期間が変化するならば図8に示す形態を利用すべきである。さらには、撮像のための一連の動作が行われない期間には、磁気共鳴信号を非送信とする動作状態とすることによって、LOGアンプ39、デジタル変換部40、変調処理部42およびドライバ43の動作によるバッテリの消耗を抑えることが考えられる。
このように本実施形態によれば、コイルユニット6bにおける動作状態をメインユニットから制御できるが、その制御のためのデータ信号はクロック信号に重畳して伝送されるので、データ信号を伝送するための無線チャネルを確保する必要がない。この結果、コイルユニット6bとメインユニットとの間で情報伝送するための無線チャネル数を低減し、これにより無線信号の送受信のための回路規模を縮小することができる。
ところでクロック再生部33には、周知のPLLを利用することが可能である。PLLは、入力クロック信号と出力クロック信号の位相を比較して、両クロック信号の位相差が小さくなるように出力クロック信号の周波数を調整することで、入力クロック信号に位相同期した出力クロック信号を生成するものである。ただしここでいうクロック信号とは、CW(Continuous Wave)や矩形波のように、信号の立ち上がりおよび立ち下がりが周期的に発生する信号のことを表している。
PLLとしては、例えば特許文献2に開示されたものが知られている。このPLLでは、信号の立ち上がりエッジ(ポジティブエッジ)の出現タイミングに限定して位相差信号を出力する位相比較器と、信号の立ち下がりエッジ(ネガティブエッジ)の出現タイミングに限定して位相差信号を出力する位相比較器とを備え、これら2つの位相比較器のそれぞれから出力された位相差信号を加算して得られる信号をローパスフィルタ(LPF)を通すことによってVCOの制御電圧を得ている。
しかしながら本実施形態のクロック再生部33への入力信号は、第1のクロック信号をOOKやASKなどによってデータ信号で変調した変調信号である。この変調信号では、第1のクロック信号の振幅を一部的に小さくしてあるために、第1のクロック信号における一部のエッジを検出することが困難である。このため、クロック再生部33に特許文献2に開示されるようなPLLを適用した場合には、第2のクロック信号の位相が大きく遅延しているかのように誤って検出されてしまい、第2のクロック信号の位相雑音が増加してしまうおそれがある。
そこでクロック再生部33としては、以下に示すいくつかの実施形態のいずれかの構成を採用することが望ましい。
(第1の実施形態)
図9はクロック再生部33の第1の実施形態におけるブロック図である。なお、図9において図3と同一部分には同一符号を付する。
第1の実施形態のクロック再生部33における位相比較器33aは、ポジティブエッジ位相比較器(POS位相比較器)71、ネガティブエッジ位相比較器(NEG位相比較器)72および位相差合成器73を含む。
検波部32から出力された変調信号およびVCO33cから出力された第2のクロック信号は、ポジティブエッジ位相比較器71およびネガティブエッジ位相比較器72にそれぞれ入力される。
ポジティブエッジ位相比較器71は、変調信号および第2のクロック信号のそれぞれのポジティブエッジを観測し、その位相差に応じたポジティブ位相差信号を出力する。具体的には、ポジティブエッジ位相比較器71は、第2のクロック信号のポジティブエッジを変調信号のポジティブエッジよりも先に検出した場合には、第2のクロック信号のポジティブエッジから変調信号のポジティブエッジまでの期間にポジティブ位相差信号を第1のレベルとする。ポジティブエッジ位相比較器71は、変調信号のポジティブエッジを第2のクロック信号のポジティブエッジよりも先に検出した場合には、変調信号のポジティブエッジから第2のクロック信号のポジティブエッジまでの期間にポジティブ位相差信号を第2のレベルとする。そしてそれ以外の期間にポジティブエッジ位相比較器71は、ポジティブ位相を第3のレベルとする。
ネガティブエッジ位相比較器72は、変調信号および第2のクロック信号のそれぞれのネガティブエッジを観測し、その位相差に応じたネガティブ位相差信号を出力する。具体的には、ネガティブエッジ位相比較器72は、第2のクロック信号のネガティブエッジを変調信号のネガティブエッジよりも先に検出した場合には、第2のクロック信号のネガティブエッジから変調信号のネガティブエッジまでの期間にネガティブ位相差信号を第1のレベルとする。ネガティブエッジ位相比較器72は、変調信号のネガティブエッジを第2のクロック信号のネガティブエッジよりも先に検出した場合には、変調信号のネガティブエッジから第2のクロック信号のネガティブエッジまでの期間にネガティブ位相差信号を第2のレベルとする。そしてそれ以外の期間にネガティブエッジ位相比較器72は、ネガティブ位相を第3のレベルとする。
かくして、ポジティブ位相差信号およびネガティブ位相差信号は、第1のレベルであるときには第2のクロック信号のほうが変調信号よりも位相が進んでいることを示し、第2のレベルであるときには第2のクロック信号のほうが変調信号よりも位相が遅れていることを示し、第3のレベルであるときには位相差が検出できない状態であることを示す。そしてこれら第1乃至第3のレベルは、例えばそれぞれある定数値Xをもって表される+X[V]、−X[V]、0[V]のような電圧値とする。あるいは逆の値をもって−X[V]、+X[V]、0[V]としても良い。また+X[V]、0[V]、+X/2[V]のように全て0以上の値としても良い。また論理値を使ってそれぞれ10、01、00のような2ビット値をとってもよい。なお、以下においては、第1乃至第3のレベルを+X[V]、−X[V]、0[V]とする。
位相差合成器73は、ポジティブ位相差信号およびネガティブ位相差信号がいずれも第3のレベルである場合にはクロック位相差信号を第3のレベルとし、ポジティブ位相差信号およびネガティブ位相差信号のいずれか一方のみが第3のレベルである場合にはクロック位相差信号をポジティブ位相差信号およびネガティブ位相差信号のそれぞれのレベルの和とする。つまり、第3のレベルを0[V]とする場合には、位相差合成器73はポジティブ位相差信号とネガティブ位相差信号との排他的論理和を求め、その結果をクロック位相差信号として出力する。この位相差合成器73が出力するクロック位相差信号が、ループフィルタ33bへと与えられる。
次に以上のような第1の実施形態におけるクロック再生部33の動作について説明する。
図10は第1の実施形態における位相比較器33aの動作の一例におけるタイミング図である。
変調信号に第1のクロック信号の成分のみが表れる(以下、「欠けがない」と記す)場合、ポジティブエッジ位相差信号およびネガティブ位相差信号に第1のレベルまたは第2のレベルが表れるタイミングは、図10に示すように第2のクロック信号の周期の約半分だけずれる。すなわち、変調信号と第2のクロック信号との位相がある程度あっている状況では、ポジティブエッジ位相差信号およびネガティブ位相差信号に第1のレベルまたは第2のレベルが同時に表れることはない。一方、第1のクロック信号の成分に欠けがあり、第1のクロック信号に存在するべきエッジが検出できなかった場合、図10における期間701〜704のように、第1のレベルまたは第2のレベルが第2のクロック信号の1周期以上の期間に渡って生じることが起こり得る。そして期間701および期間703が重複する期間705や、期間702および期間704が重複する期間706などのように、ポジティブエッジ位相差信号およびネガティブ位相差信号に第1のレベルまたは第2のレベルが同時に表れる。このことから、ポジティブエッジ位相差信号およびネガティブ位相差信号に第1のレベルまたは第2のレベルが同時に表れる場合は、第1クロック信号成分に欠けがあることによってポジティブエッジ位相差信号およびネガティブ位相差信号が誤っている可能性が高いということができる。このようにポジティブエッジ位相差信号およびネガティブ位相差信号に第1のレベルまたは第2のレベルが同時に表れる期間705,706には、ポジティブエッジ位相差信号およびネガティブ位相差信号の排他的論理和は第3のレベルとなり、それ以外の期間にはポジティブエッジ位相差信号およびネガティブ位相差信号の排他的論理和はポジティブエッジ位相差信号およびネガティブ位相差信号のそれぞれのレベルの和となる。そしてこのようなレベル変化をもった例えば図10に示すようなクロック位相差信号が生成される。
このようにして位相比較器33aで生成されたクロック位相差信号は、ループフィルタ33bに入力されて帯域制限された上で、制御電圧としてVCO33cに与えられる。
VCO33cは、クロック位相差信号が第1のレベルであるときには、第2のクロック信号の周波数を低下させる。クロック位相差信号が第1のレベルであるときは、第2のクロック信号のほうが変調信号よりも位相が進んでいることから、この位相差が第2のクロック信号の周波数が低下されることで減じられることになる。VCO33cは、クロック位相差信号が第2のレベルであるときには、第2のクロック信号の周波数を上昇させる。クロック位相差信号が第2のレベルであるときは、変調信号のほうが第2のクロック信号よりも位相が進んでいることから、この位相差が第2のクロック信号の周波数が上昇されることで減じられることになる。VCO33cは、クロック位相差信号が第3のレベルであるときには、第2のクロック信号の周波数を変化させない。かくして、このような第2のクロック信号の周波数の調整が繰り返されることにより、第2のクロック信号が変調信号に含まれた第1のクロック信号の成分に位相同期する。
引用文献2に開示された従来のPLLであれば、期間705,706においてもクロック位相差信号は第1のレベルとされ、これに応じて第2のクロック信号の周波数が過剰に変更されることになってしまうのに対して、第1の実施形態におけるクロック再生部33では期間705,706においてポジティブエッジ位相比較器71およびネガティブエッジ位相比較器72で検出される位相ずれを無視して第2のクロック信号の周波数が調整されるので、第2のクロック信号の位相雑音が従来のPLLを用いる場合に比べて低減される。
(第1の実施形態の第1の変形例)
図11はクロック再生部33の第1の実施形態の第1の変形例における構成を示すブロック図である。なお、図11において図3および図9と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
本変形例のクロック再生部33における位相比較器33aは、ポジティブエッジ位相比較器71、ネガティブエッジ位相比較器72、位相差合成器73および停止器74を含む。
停止器74には、ポジティブエッジ位相比較器71から出力されたポジティブ位相差信号が入力されるとともに、位相差合成器73から出力された信号が停止制御信号として入力される。そして停止器74の出力信号が、クロック位相差信号としてループフィルタ33bに与えられる。停止器74は、停止制御信号が第1のレベルまたは第2のレベルである期間にはポジティブ位相差信号をそのまま出力し、それ以外の期間にはポジティブ位相差信号の出力を停止することによってクロック位相差信号を生成する。すなわち停止器74は、停止制御信号が第1のレベルまたは第2のレベルである期間にはポジティブ位相差信号のレベルを有し、それ以外の期間には第3のレベルを有した図12に示すような信号としてクロック位相差信号を生成する。
このようにすれば、第1のクロック信号の成分の欠けの影響で期間707,708に生じているネガティブ位相差信号における誤りがクロック位相差信号に反映されなくなるので、第2のクロック信号得の位相雑音がさらに低減される。ただし、クロック位相差信号に反映される位相差検出の回数は第1の実施形態の基本構成に半減する。
(第1の実施形態の第2の変形例)
図13はクロック再生部33の第1の実施形態の第2の変形例における構成を示すブロック図である。なお、図13において図3、図9および図11と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
本変形例のクロック再生部33における位相比較器33aは、ポジティブエッジ位相比較器71、ネガティブエッジ位相比較器72、位相差合成器73および停止器74を含む。
停止器74には、ネガティブエッジ位相比較器72から出力されたネガティブ位相差信号と、位相差合成器73から出力された信号が停止制御信号として入力される。そして停止器74の出力信号が、クロック位相差信号としてループフィルタ33bに与えられる。停止器74は、停止制御信号が第1のレベルまたは第2のレベルである期間にはネガティブ位相差信号をそのまま出力し、それ以外の期間にはネガティブ位相差信号の出力を停止することによってクロック位相差信号を生成する。すなわち停止器74は、停止制御信号が第1のレベルまたは第2のレベルである期間にはネガティブ位相差信号のレベルを有し、それ以外の期間には第3のレベルを有した図14に示すような信号としてクロック位相差信号を生成する。
このようにすれば、第1のクロック信号の成分の欠けの影響で期間709,710に生じているポジティブ位相差信号における誤りがクロック位相差信号に反映されなくなるので、第2のクロック信号得の位相雑音がさらに低減される。ただし、クロック位相差信号に反映される位相差検出の回数は第1の実施形態の基本構成に比べて半減する。
なお、ポジティブエッジまたはネガティブエッジの位相差のみを検出する位相比較器を有する従来のPLLに置き換えて本実施形態のクロック再生部33を採用するのであるならば、図11または図13に示す構成を適用すれば、第1のクロック信号の成分に欠けがない期間には従来と同様の性能を得ることができる。また特許文献2に開示されるような従来のPLLに置き換えて本実施形態のクロック再生部33を採用するのであるならば、図9に示す構成を適用すれば、第1のクロック信号の成分に欠けがない期間には従来と同様の性能を得ることができる。
(第2の実施形態)
図15はクロック再生部33の第2の実施形態におけるブロック図である。なお、図15において図3および図9と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
第2の実施形態のクロック再生部33における位相比較器33aは、ポジティブエッジ位相比較器71、ネガティブエッジ位相比較器72および位相差合成器75を含む。すなわち第2の実施形態においては、第1の実施形態における位相差合成器73に代えて位相差合成器75を備える。
位相差合成器75は、ポジティブ位相差信号およびネガティブ位相差信号がいずれもが第3のレベル以外のレベルとなった時点から規定時間が経過するまでの出力停止期間にはクロック位相差信号を第3のレベルとし、それ以外の期間にはクロック位相差信号をポジティブ位相差信号およびネガティブ位相差信号のそれぞれのレベルの和とする。つまり、第3のレベルを0[V]とする場合には、位相差合成器75はポジティブ位相差信号とネガティブ位相差信号とのOR合成値およびAND合成値をそれぞれ求め、基本的にはOR合成値をクロック位相差信号として出力するが、AND合成値が第1または第2のレベルとなった時点から規定時間が経過するまでの期間に限ってクロック位相差信号を第3のレベルとする。この位相差合成器75が出力するクロック位相差信号が、ループフィルタ33bへと与えられる。
次に以上のような第2の実施形態におけるクロック再生部33の動作について説明する。
図16は第2の実施形態における位相比較器33aの動作の一例におけるタイミング図である。なお、図16の例は図10に示す例と同様な状況に関し、同一の期間には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
期間701および期間703が重複する期間705や、期間702および期間704が重複する期間706などのように、ポジティブエッジ位相差信号およびネガティブ位相差信号に第1のレベルまたは第2のレベルが同時に表れる期間には、AND合成値が第1または第2のレベルになる。そしてこのようにAND合成値が第1または第2のレベルになったタイミング711,712から規定時間が経過するまでの出力停止期間713,714には第3のレベルとされ、それ以外の期間にはOR合成値とされた例えば図16に示すようなクロック位相差信号が生成される。
位相差合成器75での出力停止期間を求めるための規定時間の測定は、例えば第2のクロック信号または変調信号を使って駆動したカウンタを用いて行うことができる。ただし、第2のクロック信号はVCO33cで生成された信号であり、欠けが生じる可能性が低いため、変調信号を用いるよりも第2のクロック信号を用いる場合の方が精度よく規定時間を測定することができる。ただし、規定時間の測定の精度が若干悪くても、第2のクロック信号の位相雑音を従来のPLLを用いる場合に比べて低減できる効果は得られるので、変調信号を用いて規定時間を測定しても良い。さらには、第2のクロック信号を使って駆動したカウンタと変調信号を使って駆動したカウンタの両方で経過時間を測定し、先にどちらか一方のカウンタが規定時間に達したときに出力停止期間が終了したと判定しても良い。このようにすると、クロックに欠けがなかった場合には、第2のクロック信号と変調信号の両方で測定をすることによりさらに精度よく期間を測定することが可能となり、また変調信号に欠けがあった場合でも、カウンタを1つだけ使った場合と同程度の精度で測定を行うことができる。
なお、第1のクロックの成分に欠けが生じた部分で、変調信号と第2のクロック信号とのどちらのエッジが先に生じるかは、データ信号を多重する方式によって定まる。例えば図4〜6に示したような多重を施した場合は、信号の立ち上がりから立ち下がりにかけての期間を1周期として信号振幅を変化させているため、第1のクロック信号の成分に欠けが生じる期間ではポジティブエッジが先に検出される。
(第2の実施形態の第1の変形例)
図17はクロック再生部33の第2の実施形態の第1の変形例における構成を示すブロック図である。なお、図17において図3および図15と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
本変形例のクロック再生部33における位相比較器33aは、ポジティブエッジ位相比較器71、ネガティブエッジ位相比較器72、位相差合成器76および停止器77を含む。
位相差合成器76は、ポジティブ位相差信号とネガティブ位相差信号とに基づいて停止制御信号を生成する。具体的には位相差合成器76は、ポジティブ位相差信号とネガティブ位相差信号とのAND合成値を求め、このAND合成値が第1または第2のレベルとなった時点から規定時間が経過するまでの期間に限って停止を表した信号として停止制御信号を生成する。
停止器77には、ポジティブエッジ位相比較器71から出力されたポジティブ位相差信号と、位相差合成器76から出力された停止制御信号とが入力される。そして停止器77の出力信号が、クロック位相差信号としてループフィルタ33bに与えられる。停止器77は、停止制御信号が停止を表す期間にはポジティブ位相差信号をそのまま出力し、それ以外の期間にはポジティブ位相差信号の出力を停止することによってクロック位相差信号を生成する。すなわち停止器77は、停止制御信号が停止を表す期間には第3のレベルを有し、それ以外の期間にはポジティブ位相差信号のレベルを有した図18に示すような信号としてクロック位相差信号を生成する。
このようにすれば、第1のクロック信号の成分の欠けの影響で期間715に生じているネガティブ位相差信号における誤りがクロック位相差信号に反映されなくなるので、第2クロック信号得の位相雑音がさらに低減される。ただし、クロック位相差信号に反映される位相差検出の回数は第2の実施形態の基本構成に半減する。
(第2の実施形態の第2の変形例)
図19はクロック再生部33の第2の実施形態の第2の変形例における構成を示すブロック図である。なお、図19において図3、図15および図17と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
本変形例のクロック再生部33における位相比較器33aは、ポジティブエッジ位相比較器71、ネガティブエッジ位相比較器72、位相差合成器76および停止器77を含む。
停止器77には、ネガティブエッジ位相比較器72から出力されたネガティブ位相差信号と、位相差合成器76から出力された停止制御信号とが入力される。そして停止器77の出力信号が、クロック位相差信号としてループフィルタ33bに与えられる。停止器77は、停止制御信号が停止を表す期間にはネガティブ位相差信号をそのまま出力し、それ以外の期間にはネガティブ位相差信号の出力を停止することによってクロック位相差信号を生成する。すなわち停止器77は、停止制御信号が停止を表す期間には第3のレベルを有し、それ以外の期間にはネガティブ位相差信号のレベルを有した図20に示すような信号としてクロック位相差信号を生成する。
このようにすれば、第1のクロック信号の成分の欠けの影響で期間709,710に生じているポジティブ位相差信号における誤りがクロック位相差信号に反映されなくなるので、第2のクロック信号得の位相雑音がさらに低減される。ただし、クロック位相差信号に反映される位相差検出の回数は第2の実施形態の基本構成に半減する。
なお、ポジティブエッジまたはネガティブエッジの位相差のみを検出する位相比較器を有する従来のPLLに置き換えて本実施形態のクロック再生部33を採用するのであるならば、図17または図19に示す構成を適用すれば、第1のクロック信号の成分に欠けがない期間には従来と同様の性能を得ることができる。また特許文献2に開示されるような従来のPLLに置き換えて本実施形態のクロック再生部33を採用するのであるならば、図15に示す構成を適用すれば、第1のクロック信号の成分に欠けがない期間には従来と同様の性能を得ることができる。
ところで第2の実施形態における出力停止期間は、データ信号の信号系列の長さと同じにすることが望ましい。なぜならば、信号系列よりも短い期間とした場合には出力停止期間から再開したあとに第1のクロックの成分に欠けが発生する可能性が高くなるし、信号系列よりも長い期間とした場合には有効な位相比較を行える機会を減らしてしまいPLLがロックするまでの時間を長くしてしまう可能性があるからである。ここでいう信号系列の長さとは、図4〜6の期間302,402,502で表されるようにデータ信号が第1のクロック信号に多重されている期間のことを表している。ただし、信号系列が予め分かっている場合には、第1のクロック信号の成分に実際に欠けがでる期間としてもよい。例えば図3〜5の例では、期間303,403,503である。このようにすることで、出力停止期間の長さを最小限に抑えることができる。しかし、信号系列の長さだけが分かっていて信号系列の数値が分かっていない場合、あるいは複数のデータ信号のそれぞれで第1のクロック信号の成分に実際に欠けがでる期間が変化する場合には期間302,402,502を用いることが望ましい。このようにすることで、信号系列の値によらず、停止期間から再開したあとにクロックに欠けが発生する状態を避けることができる。一方、信号系列の多重による以外の、例えばノイズといった原因によって信号の系列長と比べて短い期間のクロックの欠けが起こる可能性がある場合には、停止期間を信号系列長よりも短くしても良い。こうすることで、ノイズなどの影響で停止してしまった場合でも、より短い時間で停止期間から復帰でき、有効に位相比較を行うことができる。
図21〜23は、図15,17,19のそれぞれの構成において出力停止期間の長さをデータ信号の信号系列の長さと同じに設定した場合における位相比較器33aの動作の一例におけるタイミング図であり、いずれも出力停止期間716においてクロック位相差信号を第3のレベルとしている。
(第3の実施形態)
図24はクロック再生部33の第3の実施形態におけるブロック図である。なお、図24において図3および図9と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
第3の実施形態のクロック再生部33における位相比較器33aは、ポジティブエッジ位相比較器78、ネガティブエッジ位相比較器79、位相差合成器80およびリセット器81を含む。
ポジティブエッジ位相比較器78およびネガティブエッジ位相比較器79は、基本的にはポジティブエッジ位相比較器71およびネガティブエッジ位相比較器72と同様にしてポジティブ位相差信号およびネガティブ位相差信号を出力する。ただしポジティブエッジ位相比較器78およびネガティブエッジ位相比較器79は、リセット器81からの制御の下に動作状態を初期状態にリセットする機能を備える。
位相差合成器80は、ポジティブ位相差信号およびネガティブ位相差信号のいずれかが第1または第2のレベルであるときにクロック位相差信号を第1または第2のレベルとする。この位相差合成器80から出力されるクロック位相差信号がループフィルタ33bに与えられる。また位相差合成器80は、ポジティブ位相差信号およびネガティブ位相差信号がいずれもが第3のレベル以外のレベルとなったことに応じてリセット信号をリセット器81へ出力する。つまり、第3のレベルを0[V]とする場合には、位相差合成器80はポジティブ位相差信号とネガティブ位相差信号とのOR合成値を求め、これをクロック位相差信号として出力する。また位相差合成器80はポジティブ位相差信号とネガティブ位相差信号とのAND合成値を求め、これをリセット信号として出力する。
リセット器81は、位相差合成器80からリセット信号が与えられたことに応じて、ポジティブエッジ位相比較器78およびネガティブエッジ位相比較器79を初期状態にリセットする。ポジティブエッジ位相比較器78およびネガティブエッジ位相比較器79の初期状態とは、それまでにおけるいずれかのエッジの検出結果をリセットし、先のエッジが変調信号または第2のクロック信号のいずれかから検出されるのを待つ状態を表している。またリセットによって、ポジティブ位相差信号およびネガティブ位相差信号も第3のレベルに戻される。
次に以上のような第3の実施形態におけるクロック再生部33の動作について説明する。
図25は第3の実施形態における位相比較器33aの動作の一例におけるタイミング図である。なお、図25の例は図10に示す例と同様な状況に関し、同一の期間には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
ポジティブ位相差信号とネガティブ位相差信号とがいずれも第3のレベル以外のレベルとなった時点717,718,719のそれぞれにおいて、AND合成値が第1レベルまたは第2レベルとなるので、これに応じてリセット器81にリセット信号が与えられる。そうするとリセット器81は、ポジティブエッジ位相比較器78およびネガティブエッジ位相比較器79を初期状態にリセットする。
かくして、ポジティブ位相差信号とネガティブ位相差信号とがいずれも第3のレベルに戻され、それらがいずれも第3のレベル以外のレベルである状態が解消される。この結果、第1のクロック信号の成分の欠けに起因して誤って検出された位相差に基づいての第2のクロックの周波数の調整が係属して行われることが防止され、第2のクロック信号の位相雑音が低減される。特にこの第3の実施形態では、ポジティブ位相差信号とネガティブ位相差信号に第3のレベル以外のレベルが同時に現れる度にリセットが行われるため、第1のクロック信号の成分の欠けが散発的に発生する場合に特に効果的に誤って出力される位相差を低減することができる。
なお、ポジティブ位相差信号およびネガティブ位相差信号をそれぞれリセット器81に入力し、リセット器81においてAND合成値を算出しても良い。
(第3の実施形態の第1の変形例)
図26はクロック再生部33の第3の実施形態の第1の変形例における構成を示すブロック図である。なお、図26において図3および図24と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
本変形例のクロック再生部33における位相比較器33aでは、ポジティブ位相差信号をそのままクロック位相差信号としてループフィルタ33bへ与える。
図27は第3の実施形態の第1の変形例における位相比較器33aの動作の一例におけるタイミング図である。
(第3の実施形態の第2の変形例)
図28はクロック再生部33の第3の実施形態の第2の変形例における構成を示すブロック図である。なお、図28において図3および図24と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
本変形例のクロック再生部33における位相比較器33aでは、ネガティブ位相差信号をそのままクロック位相差信号としてループフィルタ33bへ与える。
図29は第3の実施形態の第2の変形例における位相比較器33aの動作の一例におけるタイミング図である。
この実施形態は、次のような種々の変形実施が可能である。
(第3の実施形態の第3の変形例)
図30はクロック再生部33の第3の実施形態の第3の変形例におけるブロック図である。なお、図30において図3および図24と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
本変形例のクロック再生部33では、位相比較器33a、ループフィルタ33b、VCO33cおよびポジティブエッジ位相比較器(POS位相比較器)33dを含む。位相比較器33aは、ポジティブエッジ位相比較器78、ネガティブエッジ位相比較器79、位相差合成器80およびリセット器81を含む。
変調信号は、位相比較器33aの他にポジティブエッジ位相比較器33dに与えられる。ポジティブエッジ位相比較器33dは、ポジティブエッジ位相比較器78と同様にポジティブ位相差信号を生成する。そしてこのポジティブエッジ位相比較器33dが生成するポジティブ位相差信号が、クロック位相差信号としてループフィルタ33bに与えられる。さらにポジティブエッジ位相比較器33dは、リセット器81からの制御の下に動作状態を初期状態にリセットする機能を備える。
かくして、本変形例においても第3の実施形態の第2の変形例と同様な第2のクロック信号が生成される。そして本変形例によれば、ループフィルタ33b、VCO33cおよびポジティブエッジ位相比較器33dによって周知のPLL回路が構成されるから、そのような既存のPLL回路に位相比較器33aを付加することによって簡易に実現することが可能である。
(第3の実施形態の第4の変形例)
図31はクロック再生部33の第3の実施形態の第4の変形例におけるブロック図である。なお、図31において図3および図24と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
本変形例のクロック再生部33では、位相比較器33a、ループフィルタ33b、VCO33cおよびネガティブエッジ位相比較器(NEG位相比較器)33eを含む。位相比較器33aは、ポジティブエッジ位相比較器78、ネガティブエッジ位相比較器79、位相差合成器80およびリセット器81を含む。
変調信号は、位相比較器33aの他にネガティブエッジ位相比較器33eに与えられる。ネガティブエッジ位相比較器33eは、ネガティブエッジ位相比較器79と同様にネガティブ位相差信号を生成する。そしてこのネガティブエッジ位相比較器33eが生成するネガティブ位相差信号が、クロック位相差信号としてループフィルタ33bに与えられる。さらにネガティブエッジ位相比較器33eは、リセット器81からの制御の下に動作状態を初期状態にリセットする機能を備える。
かくして、本変形例においても第3の実施形態の第3の変形例と同様な第2のクロック信号が生成される。そして本変形例によれば、ループフィルタ33b、VCO33cおよびネガティブエッジ位相比較器33eによって周知のPLL回路が構成されるから、そのような既存のPLL回路に位相比較器33aを付加することによって簡易に実現することが可能である。
図32は第3の実施形態の第3および第4の変形例を、既存のPLL91に位相比較器33aを接続することにより実現する概念を示す図である。
コイルユニット6bは、RF送信にも使用されても良い。そしてこの場合には、磁気共鳴信号を受信する動作状態とRF送信をする動作状態とをデータ信号によって主制御部24から制御することができる。
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。