以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、「上」「下」の語は、図面の上下方向に対応するものであり便宜的なものである。
図1は、本発明の一実施形態に係る燃料電池システムの一部を示す概略ブロック図である。図1に示すように、水素製造装置(FPS:Fuel Processing System)1は、例えば家庭用の燃料電池システム100において水素供給源として利用されるものである。ここでの水素製造装置1は、原燃料として石油系炭化水素が用いられ、水素を含有する改質ガスをセルスタック(燃料電池スタック)20に供給する。
なお、原燃料としては、アルコール類、エーテル類、バイオ燃料、天然ガス、都市
ガスを用いてもよい。また、石油系炭化水素としては、灯油、LPガスのほか、ナフサ、軽油などを原燃料として使用することができる。また、セルスタック20としては、固体高分子形、アルカリ電解質形、リン酸形、溶融炭酸塩形或いは固体酸化物形等の種々のものを用いてもよい。
図2は、図1の水素製造装置を示す概略正面端面図である。ただし、当該水素製造装置1は一例であり、異なる構成のものを採用してもよい。図1,2に示すように、水素製造装置1は、中心軸を軸Gとする円筒状外形の脱硫部2と、中心軸を軸Gとする円柱状外形の本体部3と、を備え、これらが筐体4に収容されている。また、筐体4内において脱硫部2及び本体部3の周囲には、粉状の断熱材(不図示)が充填されて断熱されている。脱硫部2は筐体4の外に設置されてもよく、設けられていなくてもよい。
脱硫部2は、外部から導入された原燃料を脱硫触媒によって脱硫して硫黄分を除去し、この原燃料を後述のフィード部5へ供給する。脱硫部2は、筐体4の側板4xにパイプで固定され、本体部3の上部を所定の隙間を有して囲繞するよう保持されている。本体部3は、フィード部5、改質部6、シフト反応部7、選択酸化反応部8及び蒸発部9を備え、これらが一体で構成されている。この本体部3は、筐体4の床板4yに筒状のステーにより固定され保持されている。
フィード部5は、脱硫部2で脱硫した原燃料及び水蒸気(スチーム)を混合し、これらを改質部6に供給する。具体的には、フィード部5は、原燃料及び水蒸気を合流・混合させて混合ガス(混合流体)を生成する混合部5xと、混合ガスを改質部6へ流通させる混合ガス流路5yと、を含んでいる。
改質部(SR:Steam Reforming)6は、フィード部5により供給された混合ガスを改質触媒6xによって水蒸気改質して改質ガスを生成し、この改質ガスをシフト反応部7へ供給する。改質部6は、中心軸を軸Gとする円筒状外形を呈し、脱硫部2の筒内に位置するよう本体部3の上端側に設けられている。この改質部6にあっては、水蒸気改質反応が高温を必要としかつ吸熱反応であるため、改質部6の改質触媒6xを加熱するための熱源としてバーナ10を利用している。
バーナ10では、起動時は外部から原燃料がバーナ燃料として供給されて燃焼される。このバーナ10は、本体部3の上端部に設けられ軸Gを中心軸とする燃焼筒11に、バーナ10による火炎が取り囲まれるよう取り付けられている。なお、バーナ10においては、脱硫部2で脱硫した原燃料の一部が、バーナ燃料として供給されて燃焼される場合もある。
シフト反応部7は、改質部6から供給された改質ガスの一酸化炭素濃度(CO濃度)を低下させるためのものであり、改質ガス中の一酸化炭素をシフト反応させて水素及び二酸化炭素に転換する。ここでのシフト反応部7は、シフト反応を2段階に分けて行うことも可能であり、高温(例えば400°C〜600°C)でのシフト反応である高温シフト反応を行う高温シフト反応部(HTS:High Temperature Shift)12と、高温シフト反応の温度よりも低温(例えば150°C〜350°C)でのシフト反応である低温シフト反応を行う低温シフト反応部(LTS:LowTemperature Shift)13と、を有している。ただし、高温シフト反応部12は、必ずしも設けなくともよい。
高温シフト反応部12は、改質部6から供給された改質ガス中の一酸化炭素を高温シフト触媒12xによって高温シフト反応させ、改質ガスのCO濃度を低下させる。高温シフト反応部12は、中心軸を軸Gとする円筒状外形を呈しており、高温シフト触媒12xが改質触媒6xの下端部を囲繞するよう改質部6の径方向外側に隣接配置されている。この高温シフト反応部12は、CO濃度を低下させた改質ガスを低温シフト反応部13へ供給する。
低温シフト反応部13は、高温シフト反応部12で高温シフト反応させた改質ガス中の一酸化炭素を低温シフト触媒13xによって低温シフト反応させ、改質ガスのCO濃度を低下させる。低温シフト反応部13は、中心軸を軸Gとする円筒状外形を呈しており、本体部3の下端側に配設されている。この低温シフト反応部13は、CO濃度を低下させた改質ガスを改質ガス配管14xを介して選択酸化反応部8へ供給する。
選択酸化反応部(PROX:Preferential Oxidation)8は、低温シフト反応部13で低温シフト反応させた改質ガス中のCO濃度をさらに低下させる。これは、セルスタック20に高濃度の一酸化炭素を供給すると、セルスタック20の触媒が被毒して大きく性能低下するためである。この選択酸化反応部8は、具体的には、改質ガス中の一酸化炭素と空気配管15を介して導入される空気とを選択酸化触媒8xで反応させて、改質ガス中の水素を酸化させることなく、一酸化炭素を選択的に酸化し、二酸化炭素に転換する。選択酸化反応部8は、中心軸を軸Gとする円筒状外形を呈しており、本体部3の下端から所定長上端側に該本体部3の最外周側を構成するよう配設されている。
この選択酸化反応部8は、CO濃度をさらに低下させた改質ガスを、熱交換部16が設けられた改質ガス配管14yを介して外部へ導出する。熱交換部16は、改質ガス配管14y内を流通する改質ガスと、外部から水配管17xを介して導入された水との間で熱交換を行うと共に、この水を蒸発部9に水配管17yを介して供給する。
蒸発部9は、熱交換部16から供給された水を内部に貯留させると共に、この水をバーナ10からの排ガスによる熱、低温シフト反応部13及び選択酸化反応部8から移動させた(低温シフト反応部13及び選択酸化反応部8を冷却して得た)熱で気化させて水蒸気を生成する。蒸発部9は、ジャケット型のものであり、中心軸を軸Gとする円筒状を呈している。この蒸発部9は、高温シフト反応部12及び低温シフト反応部13の径方向外側で且つ選択酸化反応部8の径方向内側(つまり、シフト反応部7と選択酸化反応部8との間)に位置するよう配設されている。この蒸発部9は、生成した水蒸気をフィード部5の混合部5xに水蒸気配管17zを介して供給する。
このような水素製造装置1では、まず、バーナ燃料及びセルスタック20からのオフガス(セルスタック20で反応に使用されない残ガス)の少なくとも一方と空気とがバーナ10に供給されて燃焼され、かかる燃焼によって改質触媒6xが加熱される。そして、バーナ10の排ガスが排ガス流路及びガス配管18を流通して外部へ排気される。
これと共に、脱硫部2で脱硫された原燃料と蒸発部9からの水蒸気とが混合部5xで混合され、混合ガスが生成される。この混合ガスは、混合ガス流路5yを介して改質部6に供給されて改質触媒6xで水蒸気改質され、これにより、改質ガスが生成される。そして、生成された改質ガスは、シフト反応部7によってその一酸化炭素濃度が例えば数千ppm程度まで低下され、選択酸化反応部8によってその一酸化炭素濃度が10ppm程度以下まで低下された後、熱交換部16で冷却され、後段のセルスタック20へ導出される。
なお、本実施形態においては、例えば各触媒6x,12x,13x,8xにて触媒反応を好適に行うため、次のように各部位の温度が設定されている。すなわち、改質部6に流入する混合ガスの温度が約300〜550℃とされ、改質部6から流出する改質ガスの温度が550℃〜800℃とされ、高温シフト反応部12に流入する改質ガスの温度が400℃〜600℃とされ、高温シフト反応部12から流出する改質ガスの温度が300℃〜500℃とされている。また、低温シフト反応部13に流入する改質ガスの温度が150℃〜350℃とされ、低温シフト反応部13から流出する改質ガスの温度が150℃〜250℃とされ、選択酸化反応部8に流入する改質ガスの温度が90℃〜210℃(120℃〜190℃)とされている。
ここで、本実施形態に係る燃料電池システム100は、水素製造装置1で発生した改質ガスをバーナ10へ戻すバイパスラインL1と、バイパスラインL1に取り付けられた凝縮水回収装置40と、改質ガスをセルスタック20へ供給するスタックラインL2とを有している。燃料電池システム100は、通常運転時においては改質ガスをスタックラインL2へ供給することでセルスタック20へ供給し、水素製造装置1に関するエラー以外のエラーが発生したときは改質ガスをバイパスラインL1のみに供給することで改質ガスの全量をバーナ10へ供給し、更に、当該エラーが解消したら改質ガスを再びスタックラインL2へ供給することでセルスタック20へ供給する。バイパスラインL1のみに改質ガスを供給しているとき、水素製造装置1で発生した改質ガスの全てが水素製造装置1に戻されるため、水素製造装置1は自立した状態となる(以下の説明においては、このような状態を自立運転状態と称して説明する)。また、バイパスラインL1に流通している改質ガス中の水分が凝縮した際は、凝縮水回収装置40によりシステム内の水タンクなどへ排出され、再度原料水として利用される。本実施形態に係る燃料電池システム100は、システム内に水素製造装置1に関するエラー以外のエラーが生じたときに自立運転状態にて水素製造装置1の運転を続行するように制御すると共に、このような水素製造装置1の自立運転状態を長時間維持できるように制御する機能を有している。このような機能を実現するため、燃料電池システム100は、原燃料供給ポンプ110、水供給ポンプ120、バーナ燃料供給ポンプ130、バーナ空気供給ポンプ140、選択酸化用空気供給ポンプ150、火炎状態検出センサ160、バイパスバルブ170、スタック側バルブ180、エラー検出センサCE、及び制御部200を備えている。なお、図においては、電気的な接続関係を省略している。なお、火炎状態検出センサ160は必須の要素ではなく、設けられていなくともよい。
原燃料供給ポンプ(原燃料供給量制御手段、S/C制御手段)110は、改質部6へ原燃料を供給するポンプである。水供給ポンプ(S/C制御手段)120は、水配管17xや蒸発部9を介して改質部6へ水を供給するポンプである。バーナ燃料供給ポンプ130は、バーナ10にバーナ燃料を供給するポンプである。バーナ空気供給ポンプ140は、バーナ10に空気を供給するポンプである。選択酸化用空気供給ポンプ150は、選択酸化反応部8へ選択酸化用空気を供給するポンプである。各ポンプは、制御部200と電気的に接続されており、制御部200から入力された制御信号に基づいて駆動する。なお、各ポンプの配置は、図1及び図2に示す位置に限定されない。
バイパスバルブ(改質ガス供給先設定手段)170は、バイパスラインL1の流路を開閉する機能を有している。また、スタック側バルブ(改質ガス供給先設定手段)180は、スタックラインL2の流路を開閉する機能を有している。バイパスバルブ170及びスタック側バルブ180は制御部200と電気的に接続されており、制御部200から入力された制御信号に基づいて開閉を行う。バイパスバルブ170が閉となり、スタック側バルブ180が開となっているときは、水素製造装置1からの改質ガスは、スタックラインL2のみを流通し、セルスタック20のみへ供給される。一方、バイパスバルブ170が開となり、スタック側バルブ180が閉となっているときは、水素製造装置1からの改質ガスは、バイパスラインL1のみを流通し、バーナ10のみへ供給される。ただし、各バルブの開閉度を調節することでバーナ10とセルスタック20の両方に改質ガスを供給することも可能である。
エラー検出センサ(エラー検出手段)CEは、燃料電池システム100内のエラーを検出することができ、燃料電池システム100内の任意の場所に設置された種々のセンサによって構成されている。エラー検出センサは、制御部200と電気的に接続されており、検出結果を制御部200へ出力する機能を有している。燃料電池システム100内のエラーとしては、例えば、燃料電池スタック20での発電状態が不安定となること、燃料電池スタック20での電圧が下がりすぎること、瞬間的な制御センサの異常値を検出すること、瞬間的な通信異常を検出することなどが挙げられる。エラー検出センサCEは、水素製造装置1に関するエラーも検出することができる。水素製造装置1に関するエラーとは、例えば、触媒温度が適正範囲外になることや、圧力が適正範囲外になるなどが挙げられる。
凝縮水回収装置40は、バイパスラインL1を流通する改質ガスに含まれる水分を回収して系外に排出する機能を有している。この凝縮水回収装置40で水分を回収することによって、プロセス水が改質部6へ供給された後に、バーナ10に水分が入ってしまうことを防止できる。具体的には、凝縮水回収装置40は、熱交換器40Aと、ドレイン回収器40Bを備えている。熱交換器40Aは、改質ガスと所定の流体とを熱交換することによって当該改質ガスを冷却して水蒸気を水(液体)とする。なお、熱交換用の所定の流体は、例えば温水回収用の水である。ドレイン回収器40Bは、凝縮した水を回収すると共に、システム内の水タンクなどへ排出され、再度原料水として利用される。なお、改質ガスが冷却されて、水分をドレイン回収器40Bで除去できればよく、熱交換器40Aが設けられていなくともよい。
制御部(運転制御手段、エラー検出手段、改質ガス供給先設定手段、原燃料供給量制御手段、S/C制御手段)200は、燃料電池システム100及び水素製造装置1全体の制御を行う機能を有しており、例えば電子制御を行うデバイス(例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、および入出力インターフェイスを含んで構成されたデバイス)によって構成されている。制御部200は、燃料電池システム100内のすべての機器の運転を制御することができ、水素製造装置1における各機器、セルスタック20、あるいは図示されない機器に電気的に接続され、運転及び停止の制御を行うことができる。制御部200は、原燃料供給ポンプ110、水供給ポンプ120、バーナ燃料供給ポンプ130、バーナ空気供給ポンプ140、及び選択酸化用空気供給ポンプ150の各ポンプにおける供給量を設定すると共に当該供給量が得られるように各ポンプに制御信号を出力する機能を有している。また、制御部200は、バイパスバルブ170及びスタック側バルブ180へ制御信号を出力することによって、改質ガスの供給先をバーナ10、あるいはセルスタック20に設定することができる。制御部200は、水素製造装置1に関するエラー以外のエラーが発生したときにおいては改質ガスの供給先をバーナ10のみに設定することができ、エラーが発生していない通常運転時においては改質ガスの供給先をセルスタック20に設定することができる。また、制御部200は、エラー検出センサCEからの検出結果に基づいてシステム内のエラーの発生を検出することができる。更に、制御部200は、検出したエラーの内容を特定すると共に、当該エラーが水素製造装置1に関するエラーであるか否かの判定を行うことができる。また、制御部200は、エラー検出手段からの信号を繰り返し取得することによって、一度エラーを検出した後も繰り返し検出を行い続けることによって、エラーの解消を監視することができる。制御部200は、特定のエラーを検出した後に、当該エラーの検出回数をカウントすることができる。
また、制御部200は、改質部6へ供給される原燃料の供給量を、水素製造装置1が自立運転を長時間行えるようにするために適切な供給量に制御することができる。また、制御部200は、水素製造装置1が自立運転を長時間行えるようにするために適切なS/Cに制御することができると共に、自立運転状態からセルスタック20での発電を行うために適切な値にS/Cを変更することもできる。ここで、S/Cとは、改質部6に供給される原燃料中のカーボンに対する、改質部6に供給される水蒸気のモル比率である。また、制御部200は、バーナ10に対するバーナ空気比を適切な値に制御することができる。バーナ空気比は、バーナ10に供給される燃料を全て完全に燃焼できる空気量(理論空気量)に対するバーナ10に供給される空気量の比率である。水素製造装置1の自立運転状態においては、バーナ10には燃料として改質ガスが供給されるため、バーナ空気比は、水素製造装置1による改質ガス中の可燃性ガスを完全に燃焼できる空気量に対するバーナ空気供給ポンプ140による空気量の比率で定義される。一方、バーナ10がバーナ燃料によって運転されているときは、バーナ空気比は、バーナ燃料供給ポンプ130により供給されるバーナ燃料を全て完全燃焼できる空気量に対するバーナ空気供給ポンプ140による空気量の比率で定義される。
次に、図3、図4、図5及び図6を参照して、本実施形態に係る燃料電池システム100による制御処理について説明する。図3は、燃料電池システム100による水素製造装置1の起動時における制御処理の内容を示すフローチャートである。図4は、原燃料供給量と水素製造効率との関係を示すグラフである。図5は、水供給量及び原燃料供給量の変化を示すタイムチャートの一例である。図6は、水供給量及び原燃料供給量の変化を示すタイムチャートの他の例である。図3に示す制御処理は、制御部200内において所定のタイミングで繰り返し実行される。
図3に示す制御処理は、燃料電池システム100の運転中にシステム内の所定のエラーを検出した場合における制御である。この制御処理では、検出されたエラーが水素製造装置1に関するエラー以外のものであった場合に、水素製造装置1を自立運転状態とすることによって、再度システムの運転を開始するときに、早期に発電を行うことを可能とすると共に、エネルギー効率の低下を抑制することができる。この処理は、エラー検出センサCEが何らかのエラーを検出したタイミングで実行される。図3に示すように、制御部200は、エラー検出センサCEの検出結果に基づいて燃料電池システム100内で発生したエラーの検出を行う(ステップS10:エラー検出ステップ)。次に、制御部200は、S10で検出されたエラーが、水素製造装置1に関するエラーではないか否かの判定を行う(ステップS20)。S20において、エラーが水素製造装置1に関するエラーであると判定された場合は、制御部200は水素製造装置1及びその他のシステム内の機器の運転を停止し(ステップS160)、エラー解消のための制御処理を実行する。S160が実行されると図3に示す制御処理は終了し、次にエラーが検出された場合に再びS10から処理が開始される。
一方、S20において、検出されたエラーが水素製造装置に関するエラーではないと判定された場合、制御部200は、バイパスバルブ170を開とすると共にスタック側バルブ180を閉とすることによって、改質ガスの供給先をバーナ10のみに設定する(ステップS30:改質ガス供給先設定ステップ)。これによって、水素製造装置1で生成された改質ガスは、全量がバイパスラインL1を流通し、バーナ10へ供給される。すなわち、水素製造装置1は自立運転状態に移行する。次に、制御部200は、少なくとも水素製造装置1の運転は続行すると共に、エラーに関わる機器の運転は停止する(ステップS40:運転制御ステップ)。次に、制御部200は、バーナ空気供給ポンプ140を制御し、バーナ10に対するバーナ空気の供給量を変更する(ステップS50)。このとき、制御部200は、バーナ空気比を自立運転を行うのに最適な値となるように制御を行なう。具体的には、制御部200は、バーナ空気比が1.1以上、2.5以下となるように制御を行う。
次に、制御部200は、水供給ポンプ120を制御することで改質部6に対する水供給量を変更する。(ステップS60:S/C制御ステップ)。更に、制御部200は、原燃料供給ポンプ110を制御することで改質部6に対する原燃料供給量を変更する(ステップS70:原燃料供給量制御ステップ、S/C制御ステップ)。このとき、制御部200は、自立運転状態を維持するために適切な供給量となるように、最適な原燃料の供給量を設定すると共に最適なS/Cを設定し、当該設定値となるように原燃料供給ポンプ110及び水供給ポンプ120を制御する。ここで、制御部200は、自立運転状態を維持するために最適な原燃料供給量として、水素製造効率が最大となる供給量に対して1/4以下となる原燃料供給量を設定することができる。図4に示すように、水素製造装置1の水素製造効率(改質プロセス効率)は、原燃料供給量を増加させると共に上昇し、原燃料供給量が所定の量となった時点で最大値となり、それ以上原燃料供給量を増加させると下がってゆく。水素製造効率が最大となる原燃料供給量は、図4においてP1で示されており、以下の説明ではこのときの原燃料供給量を最大効率供給量P1と称する。S70において、制御部200は、原燃料供給量として、最大効率供給量P1に対して1/4以下となるような値を設定する(図4においてFVで示す範囲内の原燃料供給量)。なお、原燃料供給量が少なすぎると熱量不足により改質触媒温度が所定温度よりも低くなりすぎるため、原燃料の供給量の下限として最大効率供給量P1に対して1/20以上とすることが好ましい。また、制御部200は、S/Cとして6.0以上の値を設定するともに、当該値が得られるように原燃料供給ポンプ110を制御する。なお、設定したS/Cとなるように必要に応じて水供給ポンプ120も制御してもよい。なお、なお、水供給量が多すぎると水素製造装置1内の蒸発部9で水の完全蒸発ができなくなるために、S/Cの上限として20以下とすることが好ましい。これによって、水素製造装置1は熱的に自立することが可能となり、エラーが解消するまで自立運転状態を長時間維持することができる。このとき改質触媒温度があらかじめ決められた温度になるように原燃料供給量を調整する制御方法をとることもできる。また、自立運転状態において選択酸化用空気の供給量を変更してもよい。
水素製造装置1が自立運転状態となった後、制御部200は、エラー検出センサCEからの検出結果に基づいて、S10で検出されたものと同じ内容についてのエラーの検出を再び行う(ステップS80)次に、制御部200は、S80による検出結果に基づいて、所定条件を満たしているか否かを判定し(ステップS90)、これによって、エラーが解消して燃料電池システム100を再び起動できる状態になっているかどうかの判断を行う。ここで、所定条件として、燃料電池システム100での現状におけるすべてのエラーが発生していないこととや、エラー発生後の時間が所定時間以上となっていることや、エラーが発生していない継続時間が所定時間以上となっていることなどを判定することができる。
S90において条件を満たしていないと判定された場合、燃料電池システム100の再起動ができない状態であるため、引き続き水素製造装置1の自立運転状態を続行する。このとき、制御部200は、エラー検出の回数のカウンタを一つ増加させると共に、当該エラー検出のカウント数が所定の閾値以上となっているか否かの判定を行う(ステップS150)。S150においてエラー検出のカウント数が閾値以上となっていると判定された場合、制御部200は水素製造装置1及びその他のシステム内の機器の運転を停止する(ステップS160)。水素製造装置1は、エラーが解消されるまで運転を中止して待機する状態となる。S160が実行されると図3に示す制御処理は終了し、次にエラーが検出された場合に再びS10から処理が開始される。一方、S150においてエラー検出のカウント数が閾値より小さいと判定されると、再びS80へ移行し繰り返しエラー検出を行う。
S90において条件を満たしていると判定された場合、制御部200は、自立運転状態から発電準備状態へ移行する。発電準備状態とは、セルスタック20へ改質ガスを供給することで発電を行うことが可能な状態である発電開始状態へ移行するための準備段階である。なお、発電準備状態でも改質ガスの全量はバーナ10へ供給されているため、実質的には自立運転状態が継続されている状態である。具体的に、制御部200は、発電を効率よく行うために最適な原燃料供給量及び最適なS/Cとなるように、水供給ポンプ120による水供給量を変更する(ステップS100)と共に、原燃料供給ポンプ110による原燃料供給量を変更する(ステップS110)。なお、このタイミングでバーナ空気比を通常運転時の値に変更してもよい。また、選択酸化用空気の供給量を変更してもよい。このとき、制御部200は、水供給量と原燃料供給量を増加させるが、水供給量に比して原燃料供給量を大きく増加させることでS/Cを低くする。また、制御部200は、原燃料供給量を増加させるとき、図5に示すようにスロープ状に増加させてもよく、図6に示すようにステップ状に段階的に増加させてもよい。制御部200は、最終的な原燃料供給量及びS/Cの目標値を設定する前段階において、複数段階の目標値を設定しておき、徐々に原燃料供給量を増加させると共に徐々にS/Cを低下させている。最終的なS/C、すなわちセルスタック20で発電を開始することができる発電開始状態におけるS/Cは、4.5以下に設定することが好ましい。これによって、セルスタック20で発電を行う際の確実性が向上する。また、最終的な原燃料供給量は、特に限定されないが、例えばセルスタック20の最小発電量相当の水素発生量を確保できる程度の原燃料供給量とすることができる。
S100、S110において、原燃料供給量及びS/Cが目標値となると、原燃料供給ポンプ110による原燃料供給量と、水供給ポンプ120による水供給量とを一定とすることによって、セルスタック20で発電を行うための発電開始状態へ移行する。発電開始状態へ移行すると、制御部200は、停止中の機器の運転を再開する(ステップS120)。また、制御部200は、スタック側バルブ180を開とする(ステップS130)と共に、バイパスバルブ170を閉とすることによって(ステップS140)、改質ガスの供給先をセルスタック20に設定する。これによって、燃料電池システム100全体の運転が再開され、セルスタック20にて発電が行われる。なお、S140の処理が終了すると、図3に示す処理が終了し、次にエラーが検出された場合に再びS10から処理が開始される。
図5及び図6を参照して、図3のS60及びS70の処理が終了した後からS130及びS140の処理によって発電が再開されるまでの間における水供給量及び原燃料供給量の変化の様子を説明する。まず、自立運転状態においては、S60及びS70において水供給量及び原燃料供給量の変更が完了した後、水供給量が一定に維持され、原燃料供給量が最大効率供給量に対する1/4以下の供給量とされた状態で一定に維持される。これによって、S/Cも6.0以上に維持されており、安定して自立運転状態を維持することができる。この状態でS80、S90、S150の処理が繰り返される。次に、時間t1のタイミングでS100、S110の水供給量及び原燃料供給量の変更処理が行われる。すなわち、時間t1のタイミングで自立運転状態から発電準備状態へ移行する。時間t1以降の発電準備状態では、水供給量及び原燃料供給量は、図5に示すように複数段階の傾斜をなすようにスロープ状に増加する。これによって、原燃料供給量を急激に増加させることなくスロープ状に徐々に増加させることができるため、水素製造装置1での改質を安定して行えると共に、水素発生が安定した状態の改質ガスをセルスタック20へ供給することができる。原燃料供給量の増加率は水供給量に比して大きい。あるいは、図6に示すように水供給量は時間t1のタイミングで目標供給量まで一度に増加し、原燃料供給量は複数段の階段状をなすようにステップ状に増加する。これによって、原燃料供給量を急激に増加させることなくステップ状に段階的に増加させることができるため、水素製造装置1での改質を安定して行えると共に、水素発生が安定した状態の改質ガスをセルスタック20へ供給することができる。時間t2において、原燃料供給量が目標供給量となると共に、S/Cが目標とする値になり、それ以降は水供給量及び原燃料供給量は一定に維持される。時間t2のタイミングで発電準備状態から発電開始状態へ移行する。なお発電開始状態へ移行した後、速やかにS130、S140の改質ガス供給先をセルスタックへ変更する処理を行ってもよく、発電開始状態となって一定時間経過後にS130、S140を実行してもよい。なお、図5のスロープ状の増加が何段階で行われるかや図6のステップ状の増加が何段階で行われるかは特に限定されない。
次に、本実施形態に係る燃料電池システム100の作用・効果について説明する。
本実施形態に係る燃料電池システム100によれば、制御部200が、改質ガスの供給先をバーナ10、あるいはセルスタック20に設定することができるため、水素製造装置1で発生した改質ガスの全てをバイパスラインL1を用いてバーナ10へ戻すことによって、水素製造装置1の自立運転を行うことが可能である。ここで、水素製造装置1に関するエラー以外のエラーが検出された場合とは、システム内における水素製造装置1以外の部分でエラーが起こっている状態なので、水素製造装置1自体は自立運転を続行してもエラー解消のための処理に影響を及ぼすことはない。そこで、本実施形態においては、水素製造装置1に関するエラー以外のエラーが検出された場合、制御部200が、改質ガスの供給先をバーナ10のみに設定すると共に、少なくとも水素製造装置1の運転を続行することによって、水素製造装置1を自立運転状態とすることができる。これによって、システム内においてエラーが起こっている部分に対しては当該エラーを解消するための処理を行いつつも、当該エラーに関与しない水素製造装置1については運転を停止することなく自立運転状態として待機させ、システム再起動の際に起動のためのエネルギーや時間を要することなく速やかにセルスタック20へ改質ガスを供給することが可能となる。以上によって、システム内にエラーが発生した場合であっても、早期に発電を再開することを可能とすると共に、CO2排出量の増加及びエネルギー効率の低下を抑制することができる。
また、本実施形態に係る燃料電池システム100において、制御部200は、改質ガスの供給先がバーナ10のみに設定されている場合、原燃料供給量が最大効率供給量P1に対して1/4以下となるように制御し、S/Cが6.0以上となるように制御することができる。これによって、改質ガスの供給先をバーナ10のみに設定することで水素製造装置1を自立運転状態とする一方で、制御部200は、原燃料供給量が最大効率供給量P1に対して1/4以下となるように制御することで、原燃料の供給量を自立運転に最適な量とすることができる。更に、制御部200は、S/Cが6.0以上となるように制御することで、S/Cを自立運転に最適な値とすることができる。このように、原燃料供給量及びS/Cを最適化することによって水素製造装置1を熱的に自立させることが可能となる。これによって、水素製造装置1の自立運転に伴う問題(例えばバーナの故障や、容器の変形など)を起こすことなく、改質ガスの全量をバーナ10に供給する状態を長時間維持することが可能となる。このように、水素製造装置1を長時間自立運転状態とすることができるため、エラーの解消に時間を要する場合であっても、水素製造装置1の運転を停止させることなく自立運転状態としながら待機させることができる。
ここで、図7を用いて、原燃料供給量及びS/Cが自立運転を行うための最適条件を満たす場合と、満たさない場合の比較を行う。ただし、本発明では最適条件を満たさない条件で制御を行うことも可能であり、ここで説明する最適条件を行うことで、自立運転状態を一層長時間の間維持できることを説明するものである。図7の下段には、改質部6へ供給される原燃料供給量及び水供給量の変化を示すタイムチャートが示されている。なお、グラフ中のSL1は、最大効率供給量P1に対する1/4の供給量を示す基準線である。図7の上段には、水素製造装置1の各部位における温度の変化を示すタイムチャートが示されている。具体的には、バーナ10の火炎温度、改質部6の出口温度、低温シフト反応部13の触媒温度、選択酸化反応部8の触媒温度が示されている。グラフ中のSL2,SL3,SL4,SL5は、改質部6の出口温度、低温シフト反応部13の触媒温度、選択酸化反応部8の触媒温度のそれぞれの基準温度を示している。基準温度より低い温度を継続的に維持することができれば、水素製造装置1の安定した自立運転が可能となる。図7に示すように、時間t10〜t11の間では、原燃料供給量は最大効率供給量P1の1/4以下の供給量となっており、水供給量もS/C>6.0を満たす供給量で維持されている。このように本実施形態に係る条件を満たしている状態では、バーナ10の火炎温度、改質部6の出口温度、低温シフト反応部13の触媒温度、選択酸化反応部8の触媒温度は、何れも基準温度SL2,SL3,SL4,SL5よりも低い状態が維持されている。従って、原燃料供給量を最大効率供給量P1の1/4以下とすると共に、S/Cを6.0以上とすることによって、水素製造装置1の各部分の温度が適切な温度にバランスよく保たれ、安定した自立運転が可能となることが理解される。
一方、時間t11〜t12において水供給量を減らすことによって、S/Cが6.0よりも低い値になるように水供給ポンプ120を制御した。このとき、バーナ10の火炎温度、改質部6の出口温度、低温シフト反応部13の触媒温度、選択酸化反応部8の触媒温度は、何れも温度が上昇してしまい基準温度SL2,SL3,SL4,SL5より高い温度となった。このような場合、水素製造装置1の各部分の温度が高くなりすぎてしまい、自立運転を維持することのできる時間が短くなる。従って、S/Cを6.0以上とすることで、一層自立運転状態を長時間行えることが理解される。更に、時間t13〜t14において原燃料供給量を増やすことによって、当該原燃料供給量が最大効率供給量P1の1/4より多くなるように原燃料供給ポンプ110を制御した。このとき、バーナ10の火炎温度、改質部6の出口温度、低温シフト反応部13の触媒温度、選択酸化反応部8の触媒温度は、何れも温度が上昇してしまい基準温度SL2,SL3,SL4,SL5より高い温度となった。このような場合、水素製造装置1の各部分の温度が高くなりすぎてしまい、自立運転を維持することのできる時間が短くなる。従って、原燃料供給量を最大効率供給量P1の1/4以下とすることで、一層自立運転状態を長時間行えることが理解される。
また、本実施形態に係る燃料電池システム100において、制御部200は、少なくともS10で検出されていたエラーが解消した後、改質ガスの供給先をセルスタック20に設定することができる。このように、検出されていたエラーが解消した後でセルスタック20に改質ガスを供給することで、エラー解消後に速やかに発電を行うことができる。
また、本発明に係る燃料電池システム100において、制御部200は、改質ガスの供給先がバーナ10のみに設定された後、S10で検出されたエラーを繰り返し検出し、当該エラー検出の回数が閾値以上となった場合、水素製造装置1の運転を停止することができる。すなわち、システム内のエラーの解消に所定以上の時間を要する場合は、自立運転状態にある水素製造装置1の運転を停止することができる。これによって、例えば、自立運転を続けるよりも水素製造装置1を停止しておいた方がエネルギーのロスが少なくなるような状況においては、水素製造装置1を停止しておくことができる。
また、本実施形態に係る燃料電池システム100の制御方法によれば、ステップS30(改質ガス供給先設定ステップ)において、改質ガスの供給先をバーナ10とセルスタック20のうち、バーナ10のみに設定することができるため、水素製造装置1で発生した改質ガスの全てをバイパスラインL1を用いてバーナ10へ戻すことによって、水素製造装置1の自立運転を行うことが可能である。ここで、ステップS10(エラー検出ステップ)において水素製造装置1に関するエラー以外のエラーが検出される場合とは、システム内における水素製造装置1以外の部分でエラーが起こっている状態なので、水素製造装置1自体は自立運転を続行してもエラー解消のための処理に影響を及ぼすことはない。そこで、本実施形態においては、S10において水素製造装置1に関するエラー以外のエラーが検出された場合、ステップS30において改質ガスの供給先がバーナ10のみに設定されると共に、ステップS40(運転制御ステップ)において少なくとも水素製造装置1の運転が続行されることによって、水素製造装置1を自立運転状態とすることができる。これによって、システム内においてエラーが起こっている部分に対しては当該エラーを解消するための処理を行いつつも、当該エラーに関与しない水素製造装置1については運転を停止することなく自立運転状態として待機させ、システム再起動の際に起動のためのエネルギーや時間を要することなく速やかにセルスタック20へ改質ガスを供給することが可能となる。以上によって、システム内にエラーが発生した場合であっても、早期に発電を再開することを可能とすると共に、CO2排出量の増加及びエネルギー効率の低下を抑制することができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明に係る燃料電池システム及び制御方法は、各実施形態に係る上記燃料電池システム及び制御方法に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
例えば、上記実施形態で示された水素製造装置の構成は、一例であり、各構成要素の構成は特に限定されず、各流路や配管や構成要素の位置関係や構成を適宜変更してもよい。例えば、改質部6は、原燃料及び水蒸気を改質するものであればよく、構造が異なるものを採用してもよい。また、脱硫部2がなくともよい。更に、上記実施形態は、改質ガス中の一酸化炭素をシフト反応させるものとして高温シフト反応部12及び低温シフト反応部13を備えているが、低温シフト反応部13のみ備えていてもよい。
また、図3において例示した制御処理も一例であり、水素製造装置1に関するエラー以外のエラーが検出されたときに水素製造装置1を自立運転状態とする処理を行うことを除く部分は適宜変更することが可能である。例えば、本実施形態ではS60やS70の処理における最適条件を満たすことで水素製造装置1の自立運転状態を一層長時間行うことができるという点でより効果的であるが、当該最適条件を満たさない条件で制御を行うことも(例えば、S150での閾値を小さくして自立運転状態を短くすることで)可能である。最適条件を満たさない制御を行う場合、図3に示すS50、S60、S70、S100、S110の処理を省略してもよい。