JP5636727B2 - 溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Y/X≧4 (1)
Y≧5 (2)
これらの本発明に係る溶融亜鉛めっき鋼板では、残留オーステナイトを3.0面積%以上15面積%以下含有する鋼組織を有することが好ましい。
冷延鋼板に、700℃以上780℃以下の温度域の平均加熱速度:A(℃/秒)と冷延鋼板のSi含有量:Si(質量%)と冷延鋼板のBi含有量:Bi(質量%)とが下記式(3)を満足し、かつ、700℃以上780℃以下の温度域の露点が−30℃以上である条件下で加熱を施し、次いで、還元雰囲気で再結晶焼鈍を施し、その後に溶融亜鉛めっきを施す連続溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
80/A×(0.6Si+2.1×Bi0.25+1)≧25 (3)
1.化学組成
はじめに、本発明に係る溶融亜鉛めっき鋼板の好ましい化学組成を上述のように規定した理由を説明する。
Cは、強度向上に寄与する元素であり、鋼板の引張強度を590MPa以上にするために、0.03%以上含有させる。しかし、0.20%を超えてCを含有させると溶接性が劣化する。このため、C含有量は0.03%以上0.20%以下とする。なお、C含有量は好ましくは0.06%以上であり、このようにすることによって引張強度を980MPa以上にすることが容易になる。
Siは、延性をさほど劣化させることなく、あるいは延性を向上させて、強度向上に寄与する元素であり、本発明では0.005%以上含有させる。ただし、2.0%を超えてSiを含有させると、めっきの濡れ性やめっきの密着性が劣化する。このため、Si含有量は、0.005%以上2.0%以下とする。ここで、Siは不均一変形を助長する元素であるが、後述するように、焼鈍条件を最適化させることによって、このようなSiの悪影響が緩和され、曲げ性および加工部耐食性の劣化が抑制されて、強度向上が達成される。なお、0.3%以上のSiを含有させると、TRIP効果によって延性が一層向上する。このため、Si含有量は0.3%以上とすることが好ましい。
Mnは、強度向上に寄与する元素であり、鋼板の引張強度を590MPa以上にするために1.2%以上含有させる。ただし、3.0%を超えてMnを含有させると、転炉における鋼の溶解や精錬が困難になるだけでなく、溶接性が劣化する。このため、Mn含有量は1.2%以上3.0%以下とする。ここで、Mnは不均一変形を助長する元素であるが、後述するように、焼鈍条件を最適化させることによって、このようなMnの悪影響が緩和され、曲げ性および加工部耐食性の劣化が抑制されて、強度向上が達成される。なお、引張強度を980MPa以上にするには、Mnを2.0%以上含有させることが好ましい。
Pは、一般には不可避的に含有される不純物であるが、固溶強化元素でもあり、鋼板の強化に有効であるので、積極的に含有させてもかまわない。しかしながら、P含有量が0.1%超となると溶接性の劣化が著しくなる。このため、P含有量は0.1%以下とする。より確実に鋼板を強化するには、P含有量を0.005%以上とすることが好ましい。
Sは、鋼に不可避的に含有される不純物であり、曲げ性および溶接性の観点からは低いほど好ましい。このため、S含有量は0.01%以下とする。好ましくは0.005%以下である。さらに好ましくは0.003%以下である。
Alは、鋼を脱酸させるために添加される元素であり、Ti等の炭窒化物形成元素の歩留まりを向上させるのに有効に作用する元素でもあるので、sol.Al含有量は0.001%以上とする。ただし、sol.Al含有量が1.0%を超えると、溶接性が劣化するとともに、酸化物系介在物が増加するために表面性状が劣化する。このため、sol.Al含有量は0.003%以上1.0%以下とする。なお、好ましくは0.02%以上0.2%以下である。
Nは、鋼に不可避的に含有される不純物であり、曲げ性の観点からは低いほど好ましい。そのため、N含有量は0.01%以下とする。好ましくは0.006%以下である。
Biは、脱炭を加速し、SiおよびMnを多量に含有させても、曲げ性の劣化を抑制する元素であり、必要に応じて含有させることができる任意元素である。ただし、0.05%を超えてBiを含有させると、熱間加工性が劣化し、熱間圧延が困難になる。このため、B含有量は0.05%以下とすることが好ましい。上記効果をより確実に得るには、0.0001%以上含有させることが好ましく、0.0005%以上含有させることがさらに好ましい。
Ti、NbおよびVは、いずれも、強度向上に寄与する元素であり、必要に応じて含有させることができる任意元素である。980MPa以上の引張強度を確保するには、Ti、NbおよびVの1種または2種以上を含有させることが有効である。ただし、それぞれ0.5%を超えて含有させると、Ti、NbやVを含む介在物が増加するために表面性状が劣化する。このため、Ti、NbおよびVの含有量はそれぞれ0.5%以下とすることが好ましい。上記効果をより確実に得るには、Ti、NbおよびVの何れかの元素を0.003%以上含有させることが好ましい。
Cr、Mo、CuおよびNiは、いずれも、強度向上に寄与する元素であり、必要に応じて含有させることができる任意元素である。980MPa以上の引張強度を確保するには、Cr、Mo、CuおよびNiの1種または2種以上含有させることが有効である。ただし、それぞれ1%を超えてCr、Mo、CuおよびNiを含有させても上記効果が飽和してしまい、経済的に無駄であるだけでなく、熱延鋼板が硬質となって冷間圧延を行うことが困難となる。このため、Cr、Mo、CuおよびNiの1種または2種以上を上記の量で含有することが好ましい。上記効果をより確実に得るには、いずれかの元素を0.01%以上含有させることが好ましい。
Ca、Mg、REMおよびZrは、いずれも、介在物制御、特に介在物の微細分散化に寄与し、曲げ性をさらに向上させる元素であり、必要に応じて含有させることができる任意元素である。しかし、過剰に含有させると表面性状を劣化させるため、それぞれの元素の含有量を0.01%以下とすることが好ましい。上記効果をより確実に得るには、いずれかの元素を0.001%以上含有させることが好ましい。
ここで、REMは、Sc、Yおよびランタノイドの合計17元素を指し、上記REMの含有量は、これらの元素の合計含有量を意味する。ランタノイドの場合、工業的にはミッシュメタルの形で添加される。
Bは、強度向上に寄与する元素であり、必要に応じて含有させることができる任意元素である。980MPa以上の引張強度を確保するには、Bを含有させることが有効である。ただし、0.01%を超えてBを含有させると、熱延鋼板が硬質となって冷間圧延を行うことが困難となる。このため、B含有量は0.01%以下とすることが好ましい。上記効果をより確実に得るには、0.0005%以上含有させることが好ましい。
次に、本発明に係る溶融亜鉛めっき鋼板を構成する鋼板の鋼組織の限定理由について説明する。
Y/X≧4 (1)
Y≧5 (2)
続いて、本発明に係る溶融亜鉛めっき鋼板の好適な製造方法を説明する。
上記した鋼組成を有する溶鋼を転炉、電気炉等の通常公知の溶製方法で溶製し、連続鋳造法でスラブ等の鋼素材とするのが好ましい。なお、連続鋳造法に代えて、造塊法、薄スラブ鋳造法などを採用してもよい。
熱間圧延は、鋳造された鋼素材を室温まで冷却せず温片のまま加熱炉に装入して加熱した後に圧延する直送圧延、あるいは、わずかの保熱を行った後、直ちに圧延する直接圧延を行うか、あるいは、一旦、鋼素材を冷却した後に再加熱して圧延を行ってもよい。このとき、粗圧延後、仕上圧延前の粗バーに対して、誘導加熱等により全長の温度均一化を図ると、特性変動を抑制することができるので好ましい。
熱間圧延に供するスラブには、1200℃以上1350℃以下の温度域に20分間以上保持する均質化処理を施すことが好ましい。熱間圧延に供するスラブを1200℃以上の温度域に20分間以上保持することにより、Mnの偏析に起因する不均一組織がさらに解消され、さらに曲げ性を向上させることができる。なお、均質化処理温度は1350℃以下とすることが、スケールロスの抑制、加熱炉損傷の防止および生産性の向上といった観点から好ましい。また、均質化処理時間を3時間以下とすることも、スケールロスの抑制、生産性の向上といった観点から好ましい。
仕上温度は800℃以上950℃以下とすることが好ましい。仕上温度を800℃以上とすることにより、熱間圧延時の変形抵抗が小さくなり、操業をより容易に行うことができる。また、仕上温度を950℃以下とすることにより、スケールによる疵をより確実に抑制することができ、良好な表面性状を確保することができる。
巻取温度は400℃以上750℃以下とすることが好ましい。巻取温度を400℃以上とすることにより、硬質なベイナイトやマルテンサイトの生成が抑制され、その後の冷間圧延が容易になる。また、巻取温度を750℃以下とすることにより、鋼板表面の酸化が抑制され、良好な表面性状を確保することができる。
なお、連続焼鈍後の鋼板の組織を均一にするには、冷間圧延の圧下率は30%以上とすることが好ましい。また、酸洗の前もしくは後に、圧下率5%以下の軽度の圧延を施して形状を修正すると平坦確保の観点から好ましい。また、このような軽度の圧延を酸洗の前に施すと、酸洗性が向上し、表面濃化元素の除去が促進され、表面性状を向上させることができる。
700℃以上780℃以下の温度域の平均加熱速度:A(℃/秒)、Si含有量:Si(質量%)およびBi含有量:Bi(質量%)が下記式(3)を満足し、かつ、700℃以上780℃以下の温度域の露点を−30℃以上とすることが好ましい。
80/A×(0.6Si+2.1×Bi0.25+1)≧25 (3)
焼鈍温度は、800℃以上950℃以下とすることが好ましい。焼鈍温度を800℃以上とすることにより、未再結晶の残存が抑制され、均一な組織を確実に得ることができ、さらに曲げ性を向上させることができる。また、焼鈍温度を950℃以下とすることにより、焼鈍炉の損傷を抑制して、生産性を向上させることができる。
合金化処理を施す場合には、めっき浴浸漬後に430℃以上600℃以下の温度域で行う。合金化処理温度が430℃未満では、合金化未処理部のムラが発生し、鋼板の表面性状が劣化する。一方、合金化処理温度が600℃を超えると、大部分の硬質第二相が焼き戻り、所望の引張強度が得られない。なお、合金化処理温度が580℃を超えると、オーステナイトの分解が促進され、所望のオーステナイト分率が得られない。さらに、合金化処理温度を500℃以上530℃以下とし、かつ合金化処理時間を10秒間以上60秒間以下とすれば、合金化度(めっき層のFe含有量)を8質量%以上13質量%以下として、めっきの密着性を向上させることが容易になるので好ましい。
Y/X≧4 (1)
Y≧5 (2)
表1に示す化学組成を有する鋼を転炉で溶製し、厚みが245mmのスラブを作製した。さらに、表2に示す条件にて熱間圧延を施し、その後酸洗を施し、さらに表2に示す条件にて冷間圧延を施し、板厚が1.2mmの冷延鋼板とした。
上記の冷間圧延により得られた冷延鋼板から熱処理用試験材を採取し、表3に示される連続溶融亜鉛めっき設備におけるヒートパターンに相当する焼鈍を施した。冷却停止温度で保持した後の熱処理は、想定めっき浴温を460℃として、この温度まで5秒間かけて冷却し、この温度で10秒間保持し、その後10℃/sの冷却速度で室温まで冷却した。合金化処理を模擬するものは、上記想定めっき浴温に保持したのちに、さらに5秒間かけて合金化処理温度まで昇温し、この温度で10秒間保持し、その後10℃/sの冷却速度で室温まで冷却した。
(内部酸化層の最大深さ)
各種焼鈍板の圧延方向から試験片を採取し、内部酸化物をEPMAで確認した。具体的には、断面の一領域をEPMAによりO(酸素)のマッピング画像を測定するとともに、断面における同じ領域を光学顕微鏡あるいは電子顕微鏡により観察して画像を得た。これらの画像を対比して、酸化物が粒界に形成された組織を特定し、特定された組織による領域である内部酸化層の深さを光学顕微鏡あるいは電子顕微鏡による画像により測定した。この作業を視野長さが200μmの範囲において実施し、その範囲における内部酸化層の最大深さを測定した。
各種焼鈍板の圧延方向から試験片を採取し、圧延方向断面の組織を光学顕微鏡あるいは電子顕微鏡で撮影した。画像解析によりフェライトの面積率を測定し、その面積率が80面積%以上含有する鋼組織を有する領域の平均厚みを測定した。
各種焼鈍板に板厚の(1/4)分減厚するための化学研磨を施し、化学研磨後の表面に対しX線回折を施し、得られたプロファイルを解析し、残留オーステナイトの面積率を測定した。
各種焼鈍板から、圧延方向に対して直角方向からJIS5号引張試験片を採取し、引張強度(TS)と全伸び(El)を測定した。
各種焼鈍板から、曲げ稜線が圧延方向となるように、圧延方向に対して直角方向が長手方向となる曲げ試験片(幅40mm×長さ100mm×板厚1.2mm)を採取した。4.8mmの鋼板を挟んだ180゜曲げ試験を実施し、割れの有無を目視にて確認した。割れが無い試験片に対して、前回より1.2mmだけ薄い3.6mmの鋼板を挟んだ180゜曲げ試験を実施し、同様に割れの有無を確認した。さらに、割れが無い試験片に対して、前回より1.2mmだけ薄い2.4mmの鋼板を挟んだ180゜曲げ試験を実施し、同様に割れの有無を確認した。さらに、割れが無い試験片に対して、前回より1.2mmだけ薄い1.2mmの鋼板を挟んだ180゜曲げ試験を実施し、同様に割れの有無を確認した。さらに、割れが無い場合、さらに、鋼板を挟まない密着曲げを行い、同様に割れの有無を確認した。
なお、表1〜4において下線を付された数値は、その数値により示される含有量、条件、または機械特性が本発明の範囲外であることを示している。
供試材No.5、8、11と26は、上記(3)式の範囲から外れ、上記(1)または(2)式を満たさないので、曲げ性が悪かった。
供試材No.32は、露点が本発明で規定する範囲の上限を超えるため、めっき性が悪かった。
Claims (8)
- 鋼板の表面に溶融亜鉛めっき層を備える引張強度が590MPa以上の溶融亜鉛めっき鋼板において、前記鋼板が、質量%で、C:0.03%以上0.20%以下、Si:0.005%以上2.0%以下、Mn:1.2%以上3.0%以下、P:0.1%以下、S:0.01%以下、sol.Al:0.001%以上1.0%以下、N:0.01%以下、Bi:0.05%以下、残部Feおよび不純物を含有する化学組成を有するとともに、前記溶融亜鉛めっき層と前記鋼板との界面から前記鋼板側に形成される内部酸化層の最大深さ:X(μm)と前記界面から前記鋼板側に形成されるフェライトを80面積%以上含有する鋼組織を有する領域の平均厚み:Y(μm)とが下記式(1)および(2)を満足することを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板。
Y/X≧4 (1)
Y≧5 (2) - 前記化学組成が、質量%で、Ti:0.5%以下、Nb:0.5%以下およびV:0.5%以下からなる群から選ばれた1種または2種以上をさらに含有する、請求項1に記載の溶融亜鉛めっき鋼板。
- 前記化学組成が、質量%で、Cr:1%以下、Mo:1%以下、Cu:1%以下およびNi:1%以下からなる群から選ばれた1種または2種以上をさらに含有する、請求項1または請求項2に記載の溶融亜鉛めっき鋼板。
- 前記化学組成が、質量%で、Ca:0.01%以下、Mg:0.01%以下、REM:0.01%以下およびZr:0.01%以下からなる群から選ばれた1種または2種以上をさらに含有する、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の溶融亜鉛めっき鋼板。
- 前記化学組成が、質量%で、B:0.01%以下をさらに含有する、請求項2から請求項4までのいずれか1項に記載の溶融亜鉛めっき鋼板。
- 前記鋼板が、残留オーステナイトを3.0〜15面積%含有する鋼組織を有する、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の溶融亜鉛めっき鋼板。
- 冷延鋼板に、700℃以上780℃以下の温度域の平均加熱速度:A(℃/秒)と前記冷延鋼板のSi含有量:Si(質量%)および前記冷延鋼板のBi含有量:Bi(質量%)とが下記式(3)を満足し、かつ、700℃以上780℃以下の温度域の露点が−30℃以上である条件下で加熱を施し、次いで還元雰囲気で再結晶焼鈍を施し、その後に溶融亜鉛めっきを施すことを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載された溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
80/A×(0.6Si+2.1×Bi0.25+1)≧25 (3) - 請求項7に記載の製造方法により得られた溶融亜鉛めっき鋼板に430℃以上600℃以下の温度域で合金化処理を施すことを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
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