以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態のパルスレーザ加工方法およびパルスレーザ加工用データ作成方法について説明する。
(第1の実施の形態)
本実施の形態のパルスレーザ加工方法は、被加工物の加工形状を表わす3次元形状データを、複数の画素で構成され画素毎に加工形状の深さ情報を有する2次元中間データに変換し、2次元中間データを変換してパルスレーザ加工用の加工フォーマットデータを生成し、基準クロック発振回路によりクロック信号を発生し、クロック信号に同期したパルスレーザビームをレーザ発振器より出射し、加工フォーマットデータに基づきクロック信号に同期してパルスピッカーによりパルスレーザビームの通過と遮断を切り替え、クロック信号に同期してレーザビームスキャナによりパルスレーザビームを被加工物表面に1次元方向に走査し、上記1次元方向にパルスレーザビームを走査した後に、上記1次元方向に直交する方向に被加工物を移動して、更にクロック信号に同期してレーザビームスキャナにより通過と遮断を切り替えてパルスレーザビームを被加工物表面に上記1次元方向に走査する。
また、本実施の形態のパルスレーザ加工用データ作成方法は、被加工物の加工形状を表わす3次元形状データを、複数の画素で構成され画素毎に加工形状の深さ情報を有する2次元中間データに変換し、2次元中間データを変換してパルスレーザ加工用の加工フォーマットデータを生成する。
本実施の形態のパルスレーザ加工方法は、レーザ発振器のパルス、レーザビームスキャナの走査、およびパルスレーザビームの通過と遮断を、同一のクロック信号に直接または間接的に同期させる。このように、レーザ系とビーム走査系の同期を維持することで、パルスレーザビームの照射スポットの位置決め精度を向上させる。また、本実施の形態のパルスレーザ加工方法およびパルスレーザ加工用データ作成方法によれば、画素毎に加工形状の深さ情報を有する2次元中間データを、3次元形状データからパルスレーザ加工用の加工フォーマットデータを生成する過程で生成する。これにより、パルスレーザ加工用の加工フォーマットデータを容易に生成することが可能となる。
そして、さらに、パルスレーザビームの光パルス数に基づき加工フォーマットデータを記述することで、容易にパルスレーザビームの通過と遮断を制御することを可能にする。これにより、レーザ発振器のパルス、レーザビームスキャナの走査、およびパルスレーザビームの通過と遮断の同期維持が容易になる。また、制御回路の構成が簡略化できる。本実施の形態のパルスレーザ加工装置は、パルスレーザビームの照射スポットの位置決め精度を一層向上させるとともに、大型の被加工物表面の安定した微細加工とその高速化を容易に実現する。
図13は、パルスレーザ加工の説明図である。図13(a)は3次元CADデータ、図13(b)は3次元CADデータの鳥瞰図、図13(c)は最終加工結果である。
まず、本実施の形態のパルスレーザ加工用データ作成方法では、被加工物の3次元形状データとして、例えば、図13(a)、(b)のような3次元CADのデータを作成する。この3次元形状データが2次元中間データを介して変換されることで、最終的にパルスレーザ加工用の加工フォーマットデータが作成される。そして、この加工フォーマットデータに基づきパルスレーザ加工が行われることで、図13(c)に示すような被加工物の加工結果が得られることになる。
ここで、まず、3次元形状データを、例えば、3次元データフォーマットであるSTLフォーマットのデータに変換する。次に、このSTLフォーマットのデータを、複数の画素で構成され画素毎に加工形状の深さ情報を有する2次元中間データに変換する。例えば、この2次元中間データはビットマップ形式である。
加工形状の深さ情報は、例えば、各画素に深さを数値化したビット情報として持たせることが可能である。また、加工形状の深さ情報をRGB(Red・Green・Blue)の輝度情報で記述することで、深さを含めた加工形状が2次元的に可視化できるため、好ましい。
そして、この2次元中間データを変換してパルスレーザ加工用の加工フォーマットデータを生成する。この加工フォーマットデータは、例えば、後に表1で示すように、パルスレーザビームの光パルス数で記述されるテーブル形式のデータである。そして、例えば、加工形状の深さ毎に分かれた複数のテーブル形式のデータである。
このように、パルスレーザビームの光パルス数で記述され、かつ、深さ毎に分かれた複数のテーブル形式のデータを作成する場合、深さ情報と位置情報がそれぞれ画素単位でデジタル化された中間データを作成することで、3次元形状データから加工フォーマットデータへのデータ変換が容易になる。
図1は、本実施の形態のパルスレーザ加工装置の構成図である。パルスレーザ加工装置10は、その主要な構成として、レーザ発振器12、パルスピッカー14、ビーム整形器16、レーザビームスキャナ18、XYステージ部20、パルスピッカー制御部22および加工制御部24を備えている。加工制御部24には所望のクロック信号S1を発生する基準クロック発振回路26が備えられている。
レーザ発振器12は、基準クロック発振回路26で発生するクロック信号S1に同期したパルスレーザビームPL1を出射するよう構成されている。このレーザ発振器12は、超短パルスであるps(ピコ秒)レーザビームあるいはfs(フェムト秒)レーザビームを発振するものが望ましい。
ここでレーザ発振器12から射出されるレーザ波長は被加工物の光吸収率、光反射率等を考慮して選択される。例えば、Cu、Ni、難削材であるSKD11等を含む金属材料あるいはダイヤモンドライク・カーボン(DLC)からなる被加工物の場合、Nd:YAGレーザの第2高調波(波長:532nm)を用いることが望ましい。
パルスピッカー14は、レーザ発振器12とレーザビームスキャナ18との間の光路に設けられる。そして、クロック信号S1に同期してパルスレーザビームPL1の通過と遮断(オン/オフ)を切り替えることで被加工物(ワークW)の加工と非加工を切り替えるよう構成されている。このように、パルスピッカー14の動作によりパルスレーザビームPL1は、被加工物の加工のためにオン/オフが制御され変調された変調パルスレーザビームPL2となる。
パルスピッカー14は、例えば音響光学素子(AOM)で構成されていることが望ましい。また、例えばラマン回折型の電気光学素子(EOM)を用いても構わない。
ビーム整形器16は、入射したパルスレーザビームPL2を所望の形状に整形されたパルスレーザビームPL3とする。例えば、ビーム径を一定の倍率で拡大するビームエクスパンダである。また、例えば、ビーム断面の光強度分布を均一にするホモジナイザのような光学素子が備えられていてもよい。また、例えばビーム断面を円形にする素子や、ビームを円偏光にする光学素子が備えられていても構わない。
レーザビームスキャナ18は、クロック信号S1に同期してパルスレーザビームPL4を、1次元方向のみに走査するよう構成されている。このように、クロック信号S1に同期してパルスレーザビームPL4を走査することにより、パルスレーザビームの照射スポットの位置決め精度が向上する。
また、1次元方向のみの走査とすることによっても、パルスレーザビームの照射スポットの位置決め精度の向上を図ることができる。なぜなら、2次元方向の走査を行うレーザビームスキャナは、構造上1次元方向のみ走査するレーザビームスキャナに対してビームの位置精度が劣化するためである。
レーザビームスキャナ18としては、例えば1軸スキャンミラーを備えたガルバノメータ・スキャナが挙げられる。図2は、ガルバノメータ・スキャナを用いたレーザビームスキャナの説明図である。
ガルバノメータ・スキャナは、1軸スキャンミラー28、ガルバノメータ30、レーザビームスキャナ制御部32を有している。ここで、ガルバノメータ30は、例えば走査角センサ36からのフィードバックによるサーボ制御のようなスキャンミラー回転の駆動機構を備えている。
加工制御部24からは、クロック信号S1に同期した走査指令信号S2が送られる。そして、ガルバノメータ30は、走査指令信号S2に基づくレーザビームスキャナ制御部32からの駆動信号S3により駆動制御されるよう構成されている。ガルバノメータ・スキャナは、1軸スキャンミラー28により全反射するパルスレーザビームPL3を、図2の矢印に示すようにスキャンミラーの回転運動(首振り)に従い走査する。
レーザビームスキャナ18には、走査角センサ36が備えられている。ガルバノメータ・スキャナの場合には、その1軸スキャンミラー28の回転位置をロータリエンコーダ等によって検出する構造になっている。そして、走査角センサ36は検出した走査角検出信号S4をレーザビームスキャナ制御部32に送り、ガルバノメータ30の駆動制御用として使用する。また、レーザビームスキャナ制御部32は、走査角検出信号S4に基づき走査位置信号である走査角信号S5を加工制御部24に送信する。
そして、上記1軸スキャンミラー28で反射したパルスレーザビームPL3は、fθレンズ34を通り、1次元方向に、例えば一定の速度Vで並行して走査される像高H=fθのパルスレーザビームPL4となる。そして、このパルスレーザビームPL4が、XYステージ部20上に保持される被加工物Wの表面を微細加工する照射パルス光として、被加工物W上に投射される。
レーザビームスキャナ18には、ガルバノメータ・スキャナの他に、例えば、ポリゴン・スキャナ、ピエゾ・スキャナ、またはレゾナント・スキャナ等を適用することも可能である。
上記いずれのレーザビームスキャナであっても、加工を行う範囲で一定の走査速度Vが確保できるように制御するよう構成されることが、加工精度を上げる観点から重要である。図3は、本実施の形態のパルスレーザ加工装置のレーザビームスキャナの走査を説明する図である。図3に示すように、スキャンミラーの走査角範囲の走査開始位置から走査終了位置に対応する位置範囲には、加速期間、安定域、減速期間がある。加工精度をあげるためには、実際の加工範囲が含まれる安定域内で走査速度Vが一定となるよう制御するよう装置が構成されることが重要である。
XYステージ部20は、被加工物Wを載置可能で、パルスレーザビームが走査される1次元方向に直交する方向を含むXY方向に自在に移動できるXYステージ、その駆動機構部、XYステージの位置を計測する例えばレーザ干渉計を有した位置センサ等を備えている。ここで、XYステージは、2次元の広範囲、例えば1m程度のX方向およびY方向の距離範囲で、連続移動あるいはステップ移動できるようになっている。そして、その位置決め精度および移動誤差がサブミクロンの範囲の高精度になるよう構成されている。
加工制御部24は、半導体集積回路からなるマイクロコンピュータ(MCU)、マイクロプロセッサ(MPU)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、半導体メモリ、回路基板等のハードウェアまたはこれらのハードウェアとソウトウェアとの組み合わせにより構成されている。パルスレーザ加工装置による加工を統合して制御する。
図4は、本実施の形態のパルスレーザ加工装置の加工制御部の説明図である。加工制御部24は、レーザ系・ビーム走査系制御部36、加工データ設定部38および加工パターン生成部40を備えている。
レーザ系・ビーム走査系制御部36は、レーザ発振器12やパルスピッカー14等のレーザ系およびレーザビームスキャナ18等のビーム走査系を制御する。レーザ系・ビーム走査系制御部36には、レーザ系やビーム走査系の条件を設定するレーザ・ビーム条件設定部68、レーザ系やビーム走査系の同期を維持するためのクロック信号S1を発生する基準クロック発振回路26を備えている。また、レーザ系やビーム走査系の同期を維持するために、位相同期処理回路42、レーザビームスキャナ制御回路32、同期位置設定部44、同期検出回路46等を備えている。
加工パターン生成部40では、例えば、外部から加工データ設定部40に入力される加工データを、実際の加工に即したパラメータのパルスレーザ加工用の加工フォーマットデータに変換する。加工データ設定部40に入力される加工データは、例えば、3次元形状の指定、寸法、形状の数、配置、ワークの材料名、ワークの寸法等で構成されている。例えば、この加工データが上述した、STLフォーマットのデータや、2次元中間データに相当する。
図5は、本実施の形態のパルスレーザ加工装置の加工パターン生成部の説明図である。加工パターン生成部40には、加工データ設定部38に入力される加工データを解析する加工データ解析部48が備えられる。また、加工データ解析部48での解析を基に、加工テーブルおよびステージ移動テーブルを生成するテーブル生成部49を備えている。加工テーブルは、加工パターンについて、待機長、加工長や非加工長をパルスレーザビームの光パルス数に基づき記載する。すなわち、テーブル生成部49は、加工データの加工長および非加工長と、パルスレーザビームのスポット径と、を基準に加工テーブルを生成する。ステージ移動テーブルは、加工パターンについて、XYステージ部の移動距離等を記載する。
また、加工パターン生成部40は、加工テーブルを備えるパルスピッカー加工テーブル部50を備えている。また、ステージ移動テーブルを備えるステージ移動テーブル部52を備えている。なお、加工テーブルやステージ移動テーブルについては、上記のように加工パターン生成部40の内部で生成される装置構成であっても、加工パターン生成部40やパルスレーザ加工装置10の外部で生成される装置構成であっても構わない。
そして、加工パターン生成部40には、パルスピッカー加工テーブル部50から出力される加工原点に関する情報が入力される加工原点(SYNC)レジスタ54(以下、単に加工原点レジスタとも記載)を備える。また、パルスピッカー加工テーブル部50から出力される待機長、加工長や非加工長に関する情報が入力される待機長レジスタ56、加工長レジスタ58、および非加工長レジスタ60が備えられている。
加工パターン信号生成部62には、加工原点レジスタ54、待機長レジスタ56、加工長レジスタ58、および非加工長レジスタ60の値が入力され、パルスピッカー制御部22へと送られる。移動信号生成部64は、ステージ移動テーブル部52からのデータに基づき、ステージ移動信号S15を生成し、ステージ制御部66へと出力するよう構成されている。
加工パターン生成部40で生成されたデータは、レーザ系・ビーム走査系制御部36へも出力され、レーザ系とビーム走査系の同期維持に用いられる。
図6は、本実施の形態のパルスレーザ加工装置の加工パターン信号生成部の説明図である。加工パターン信号生成部62は、加工原点カウンタ70、待機長カウンタ72、加工長カウンタ74、および非加工長カウンタ76を備えている。これらのカウンタは、タイミング形成回路88から出力されるカウンタ制御信号S8により、カウントを開始するよう構成されている。
また、レジスタとカウンタとの値を比較する機能を有する加工原点比較器80、待機長比較器82、加工長比較器84、および非加工長比較器86を備えている。これらの比較器は、レジスタとカウンタとの値が一致した場合は、一致信号a〜dをタイミング形成回路88へ出力するよう構成されている。
そして、タイミング形成回路88は、入力される同期検出信号S9、一致信号a〜d、走査終了コードに基づき、加工パターン出力回路90へ出力制御信号S10を出力するよう構成されている。
加工パターン出力回路90は、加工長比較器84からの出力と、タイミング形成回路88からの出力制御信号S10により加工パターン信号S7を発生するよう構成されている。
上記加工制御部24は、基準クロック発振回路において、パルスレーザビームの繰り返し周波数入力データに基づきレーザ発振器12に与える発振器クロック(クロック信号)S1を生成する。そして、レーザ発振器12は、その発振器クロックS1によりパルスレーザビームを生成する。すなわち、クロック信号に同期したパルスレーザビームが出射される。
加工開始指示が行われると、内蔵するシャッターを開にすることでパルスレーザビームPL1を出射する。このようにして、パルスレーザビームPL1が出射される際にはファーストパルスは存在せず、安定出力エネルギーが維持される。
また、加工制御部24は、上述した2次元加工データから加工パターン信号S7を生成する。そして、パルスピッカー制御部22は、この加工パターン信号S7に従い、クロック信号S1によりパルスレーザビームPL1との同期を確保したパルスピッカー駆動信号S6を、パルスピッカー14に供給する。このようして、クロック信号S1に同期して、パルスピッカー14が、パルスレーザビームの通過と遮断を切り替える。
また、加工制御部24は、レーザビームスキャナ18の走査開始時にクロック信号S1との同期を確保した走査指令信号S2を生成する。そして、レーザビームスキャナ18のレーザビームスキャナ制御部32が上記走査指令信号S2を受けてレーザビームスキャナ18の駆動制御を行う。このようにして、クロック信号に同期して、レーザビームスキャナ18がパルスレーザビームを1次元方向のみに走査する。
更に、加工制御部24は、レーザビームスキャナ18からの走査位置信号である走査角信号S5に基づいてX−Yステージ部20の移動タイミングを判定し、上記2次元加工データと上記移動タイミングによりステージ移動信号S15を生成する。この場合の走査角信号S5は、図3で説明した加工が終了する加工終端位置あるいはスキャナ走査が終了する走査終了位置を走査角センサ36で検出した走査角検出信号S4からのものである。そして、X−Yステージ部20は上記ステージ移動信号S15に指示されて動作する。
このように、X−Yステージは、レーザビームスキャナの走査位置信号に基づいて、例えば、レーザビームスキャナの走査方向とは直交する方向の移動制御がされる。これによって、次の走査への時間が短縮され、レーザビーム加工の更なる高速性が実現される。
そして、本実施の形態において、レーザビームスキャナからの走査位置信号に基づき、走査毎の加工原点位置を補正する補正機構を有することが望ましい。この補正機構を有することにより、各走査毎のレーザビームスキャナの加速期間(図3参照)における走査速度ばらつきが補償され、さらに高精度な加工が可能となるからである。
なお、図1において、加工制御部24がビーム整形器16も制御する構成になっていてもよい。この場合は、特に、ビーム整形器16においてビーム径を自動制御したりビーム断面の光強度分布を自動調整したりする場合に有効になる。
次に、パルスレーザ加工装置10の主要な動作について説明する。ワークWのレーザ加工動作においては、レーザ発振器12はその内蔵する制御部によりレーザ発振のほとんどが制御され自律して動作している。もっとも、上述した基準クロック発振回路26によりパルス発振のタイミング等の制御がなされる。これについて図7を参照して説明する。
レーザビームスキャナの例として図2に示したガルバノメータ・スキャナの1軸スキャン・ミラー28は、走査起動信号により図3で説明したような走査開始位置(走査原点)で走査起動する。この時、レーザビームスキャナ18は、図7(a)に示すようにクロック信号S1の例えば立ち上がり(立ち下りでもよい)に同期した走査指令信号S2により指示を受け、そのレーザビームスキャナ制御部32がガルバノメータ30の駆動制御を行う。ここで、走査指令信号S2は、XY2−100プロトコルに対応することで、例えば100kHz(Ts=10μsec)での絶対走査角指令に従う。
なお、図7(a)は、パルスレーザの発振周波数を500kHz(Tp=2μsec)、パルスレーザビームのビーム径を16μm、走査速度Vを4000mm/secとした場合の、走査起動時のクロック信号S1の立ち上がりに同期した走査指令信号S2の例を示している。このような動作が、パルスレーザビームの走査毎に行われる。
ここで、図3の加速期間では、スキャナ速度が早期に安定した走査速度Vになるように、走査指令信号S2によりレーザビームスキャナ制御部32はガルバノメータ30の駆動制御を行う。この時、最適条件での1軸スキャン・ミラー28の走査角繰り返し再現性は、安定領域では10μrad/p−p程度が経験的に得られることが確認されている。この値は、焦点距離が100mmのfθレンズとした場合、1μm/p−pの走査位置再現性になる。
しかし、上記加速期間の繰り返し安定性は、長期走査において10倍程度まで悪化するため、加工開始位置において走査ごとに変動が生じる。そこで、補正機構によって、レーザビームスキャナからの走査位置信号(走査角信号S5)に基づき、走査毎の加工原点位置を補正する。
例えば、加速期間終了後、充分な安定域(例えば、経験的には加速期間が1msec〜1.5msecで、焦点距離が100mmのfθレンズとした場合、その走査角範囲は約2.3度〜3.4度である)に達した後、図7(b)に示すように予め設定されている同期角(θsy)を検出信号として走査角センサ36により検出する時、走査指令信号(θo:走査開始位置からの走査角)との差分を位相差(θi)とし、この位相差により走査指令信号S2に対する加工原点までの距離を補正する。
上記加工原点までの距離補正値は、加工時の第1回目走査(i=1)を基準補正値として記憶し、以後のi=nとなる第n回目の走査開始位置からの走査の都度、位相差(θn)と位相差(θ1)の差分を第n回目走査の第1回目走査に対する走査指令信号に対する加工原点までの距離補正値として、第1回目走査時と第n回目走査時の加工原点位置を一致させる。
図8に示した加工パターン信号S7は、加工原点からの距離データを含め3次元ビットマップから与えられている。このため、走査毎に加工原点位置が一致すると、加工パターン信号S7の加工開始位置も一致し、パルスピッカー駆動信号S6も所望のタイミングで生成される。
レーザビームスキャナ18が図2に説明したガルバノメータ・スキャナからなる場合、スキャナクロック信号がレーザビームスキャナ制御部32からの駆動信号としてサーボ制御モータを駆動させる。しかし、レーザビームスキャナ18もその自律した動作によりその位相ズレが生じることがある。そこで、上記スキャン動作の繰り返し毎に発生する走査位置信号となる同期角検出信号により、発振パルス光の通過/遮断とビームのスキャン動作との同期化、すなわちタイミングを合わせることで、極めて安定したレーザ加工が可能になる。
走査毎の加工原点位置の補正は、走査位置信号に基づき、パルスピッカーにおけるパルスレーザビームの通過と遮断を制御することによることが望ましい。具体的には、例えば、補正機構が、走査位置信号(走査角信号S5)に基づき、パルスピッカーにおけるパルスレーザビームの通過と遮断を制御する。すなわち、上記スキャン・ミラーの回転位置の同期位置(角)検出の走査位置信号から検出した位相差に基づき、パルスピッカー14の駆動信号のタイミングを指定する。これによって、パルスレーザビームの走査毎の加工原点位置を補正する。
あるいは、例えば、補正機構が、走査位置信号から検出した位相差から得られる距離補正値を、走査開始位置からの走査角にθoに対するレーザビームスキャナへの走査指令信号以降の走査指令信号に与えることで、パルスレーザビームの走査毎の加工原点位置を補正する。
パルスピッカー動作によりパルスレーザビームはパルス周波数変調され所要の変調パルス光が生成される。これについて図8を参照して説明する。
図8に示すように、周波数Tpのクロック信号S1からのt1遅延のパルスレーザビームPL1は、パルスピッカー駆動信号S6により遮断/通過の動作がなされる。例えば、そのパルスピッカー駆動信号S6は、加工パターン信号S7をクロック信号S1の立ち上がりによりサンプリングし、クロック信号S1の一クロックの立ち上がりからt2時間遅延して立ち上がり、所要数クロック後の他クロックの立ち上がりからt3時間遅延して立ち下がるパターン信号になる。そして、このパルスピッカー駆動信号によりパルスピッカー14の動作がその遅延時間t4およびt5に従って生じ、その動作の間のパルスレーザビームPL1が変調パルスレーザビームPL2として抽出される。ここで、上記遅延時間t2、t3、t4およびt5はパルスピッカー14に合わせて設定される。
なお、パルスピッカー14が音響光学素子(AOM)を使用する場合、上記パルスピッカー駆動信号S6の反転パターン信号が、超音波発生制御部における発振のON/OFFを制御するドライバ信号となる。そして、この反転パターンのドライバ信号により所要の発振パルス光が抽出されることになる。
また、上述したようにレーザビームスキャナ18からの走査位置信号(走査角信号S5)、例えばそのスキャン・ミラーの回転位置における加工終端位置の走査位置信号が、X−Yステージ移動部20の移動タイミングを指示する。レーザビームスキャナ18の1次元走査方向をX軸方向とすると、上記移動タイミングにより、Y軸方向の所定幅のステップ移動あるいは連続移動がなされる。あるいは、X−YステージのX軸方向の所定距離の連続移動あるいはステップ移動が行われる。このようにして、X−Yステージの予め決められている移動パターンの移動制御が行われる。
例えば、パルスピッカー動作パターンにより生成された変調パルスレーザビームPL2は、各パルス光がビーム整形器16において所要の形状に整形される。そして、上記レーザビームスキャナ18によるX軸方向の走査とX−Yステージ部20によるワークW位置のY軸方向の移動によって、ワークWの所要位置に照射パルス光が投射され、ワークW表面の高精度の微細加工がなされる。パルスピッカー動作パターンにおける各パルスピッカー動作の時間幅および各動作の時間間隔はそれぞれ異なるようになっていてもよい。
次に、上記パルスレーザ加工装置10を用いたパルスレーザ加工方法について説明する。このパルスレーザ加工方法は、ステージに被加工物(ワーク)を載置し、基準クロック発振回路によりクロック信号を発生し、クロック信号に同期したパルスレーザビームをレーザ発振器より出射し、上述の加工フォーマットデータに基づきクロック信号に同期してパルスピッカーによりパルスレーザビームの通過と遮断を切り替え、被加工物表面に、上記クロック信号に同期してパルスレーザビームを1次元方向に走査し、1次元方向にパルスレーザビームを走査した後に、上記1次元方向に直交する方向にステージを移動して、更に上記クロック信号に同期してパルスレーザビームを上記1次元方向に走査するパルスレーザ加工方法である。そして、パルスレーザビームを上記1次元方向に走査する際に、パルスレーザビームの光パルス数に基づき、上記クロック信号に同期してパルスレーザビームの照射と非照射を切り替える。
図7は、本実施の形態のパルスレーザ加工装置のタイミング制御を説明する信号波形図である。ステージに載置されるワークWを加工する際、レーザ発振器12は内蔵する制御部によりレーザ発振の大半が制御され自律して動作する。もっとも、図7(a)に示すように基準クロック発振回路により生成される周期Tpのクロック信号S1により、パルス発振のタイミングの制御が行われ、クロック信号S1に同期した周期TpのパルスレーザビームPL1を出射する。
レーザビームスキャナ18は、走査起動信号S11に基づき図6に示す走査開始位置(走査原点)で走査起動する。この時、レーザビームスキャナ18は図7(a)に示すように、クロック信号S1の立ち上がり(立下りでもよい)に同期した、加工制御部24で生成される周期Tsの走査指令信号S2により指示を受ける。そして、この走査指令信号S2に基づき、レーザビームスキャナ制御部32がガルバノメータ30の駆動制御を行う。
このように、レーザビームスキャナ18により、クロック信号S1に同期してパルスレーザビームを1次元方向に走査する。この時、パルスレーザビームの照射と非照射を切り替えることで、ワークW表面にパターンを加工する。なお、走査指令信号S2は、XY2−100プロトコルに対応することで、例えば、100kHz(Ts=10μsec)での、ガルバノメータ30の走査角「0度」位置を基準とする絶対走査角指令に従う。
なお、図7(a)は、パルスレーザビームの発振周波数を500kHz(Tp=2μsec)、パルスレーザビームのビーム径を16μm、走査速度Vを4000mm/secとした場合の、走査起動時のクロック信号S1の立ち上がりに同期した走査指令信号S2の例を示している。
1次元方向にパルスレーザビームを走査した後に、上記1次元方向に直交する方向にステージを移動して、更に上記クロック信号に同期してパルスレーザビームを上記1次元方向に走査する。このように、パルスレーザビームの1次元方向の走査と、上記1次元方向に直交する方向にステージの移動が交互に行われる。
ここで、レーザビームスキャナ18からの走査位置信号である走査角信号S5が、XYステージ部の移動タイミングを指示する。レーザビームスキャナ18の1次元走査方向をX軸方向とすると、上記移動タイミングにより、Y軸方向の所定幅のステップ移動あるいは連続移動がなされる。その後、パルスレーザビームをX方向に走査する。
ここで、図3の加速期間では、走査速度が早期に安定した走査速度Vになるように、走査指令信号S2によるレーザビームスキャナ18の制御を行う。最適条件での1軸スキャンミラー28の走査角繰り返し再現性は、安定域では10μrad/p−p程度が得られることが経験的に明らかである。この値は、焦点距離が100mmのfθレンズとした場合、1μm/p−pの走査位置再現性になる。
もっとも、加速期間における走査速度Vの繰り返し安定性は、長期の走査において10倍程度まで悪化する。このため、図3における加工原点の位置が走査ごとに変動する恐れがある。そこで、加速期間終了後、充分に安定した領域で、パルスレーザビームPL1の発振と、ビーム走査との同期をとるための同期角(θsy)を設定する。充分に安定した領域に達するまでの走査角範囲は、例えば、加速期間が1msec〜1.5msecで、焦点距離が100mmのfθレンズとした場合、約2.3度〜3.4度である。
そして、図7(b)に示すように、この同期角を走査角センサ36が検出する。そして、同期角を検出する時に走査開始位置からの走査角θ0に対応する走査指令信号S2との位相差θiを求める。そして、この位相差θiに基づき、走査指令信号S2に対する加工原点までの距離を補正する。
上記加工原点までの距離の補正値は、加工時の第1回目の走査(i=1)を基準補正値として記憶させる。そして、以後のi=nとなる第n回目の走査開始位置からの走査の都度、位相差θnと位相差θ1の差分を第n回目走査の第1回目走査に対する走査指令信号S2に対する加工原点までの距離補正値とする。求められた距離補正値は、走査開始位置からの走査角θ0に対する走査指令信号(S2:絶対走査角指令)以降の走査指令信号(S2)に与えることで、加工原点位置が補正される。このようにして、レーザビームスキャナ18の加速期間における走査速度がばらついたとしても、第1回目走査時と第n回目走査時の加工原点位置を一致させることが可能となる。
以上のように、1次元方向にパルスレーザビームを走査した後に、上記1次元方向に直交する方向にステージを移動して、更に上記クロック信号S1に同期してパルスレーザビームを上記1次元方向に走査する場合において、走査ごとの加工原点位置が一致し、加工精度が向上する。
上記、1次元方向にパルスレーザビームを走査する際に、パルスレーザビームの光パルス数に基づき、上記クロック信号S1に同期してパルスレーザビームの照射と非照射を切り替える。パルスレーザビームの照射と非照射は、パルスピッカーを用いて行われる。
図3に示すように、
SL:同期角検出位置からワークまでの距離
WL:ワーク長
W1:ワーク端から加工原点まで距離
W2:加工範囲
W3:加工終端からワーク端までの距離
とする。
ここで、
加工原点=同期角検出位置+SL+W1
となり、ワークはステージ上に固定位置で設置されるため、SLも固定距離となる。更に、同期角検出位置を基準とするワーク上の加工原点(以下、加工原点(SYNC)とも表記)は、
加工原点(SYNC)=SL+W1
となる。この加工原点(SYNC)は、上述のような補正を行うことで管理され、走査ごとに常に安定した位置から加工が開始される。なお、図3に示すように、実加工は加工範囲(W2)に収まる範囲で行われる。
例えば、ビームスポット径D(μm)、ビーム周波数F(kHz)の加工条件で走査を行う場合、加工速度:V(m/sec)は、スポット径の1/nずつ、ビームの照射位置をずらす場合、
V=D×10−6×F×103/n
となる。
パルスピッカーにより光パルスを制御して加工を行う場合、パルスピッカーで作成するパルスピッカー駆動信号S6は、実際に加工を行う領域を加工長により定義し、繰り返し加工ピッチを非加工長により定義することが可能である。ここで、加工長をL1とし、非加工長をL2とすると、パルスレーザビームの光パルス数に基づき、加工長レジスタ設定は、
加工パルス数=(L1/(D/n))−1
非加工長レジスタ設定は、
非加工パルス数=(L2/(D/n))+1
とすることができる。
また、加工原点(SYNC)から実際に加工を開始する位置を待機長として定義することで、加工形状ごとの開始位置を設定する。ここで、待機長をLWとすると、加工原点(SYNC)レジスタ設定は、
加工原点(SYNC)光パルス数=(SL+W1)/(D/n)
待機長レジスタ設定は、
待機長光パルス数=LW/(D/n)
とすることができる。
なお、加工長、非加工長、待機長、加工原点(SYNC)に対する各レジスタへの設定値は、それぞれに対応する光パルス数である。そして、この光パルス数は、使用されるビームプロファイルに基づいて予め決定される補正のための光パルス数を加味した値となる。
上記のレジスタ設定値は、照射する光パルス数で管理される。また、同期角検出後の加工待機区間についても光パルス数で管理される。このようにパルスピッカーの管理を光パルス数で行うことにより、基準となるクロック信号S1とパルスピッカーとの同期を容易に維持でき、安定した繰り返し性が維持される。そして、クロック信号S1とパルスピッカー14との同期を維持することで、高精度なレーザ加工が簡易に実現される。
図8は、本実施の形態のパルスレーザ加工装置のパルスピッカー動作のタイミング制御を説明する信号波形図である。加工データから生成され、光パルス数で管理される加工パターン信号S7は、加工パターン信号生成部40の加工パターン出力回路62から出力される。
図8に示すように、周期Tpのクロック信号S1からt1遅延したパルスレーザビーム(PL1)は、パルスピッカー駆動信号S6に基づき遮断/通過が制御される。なお、レーザビームスキャナ18の走査と、パルスレーザビームの遮断/通過との同期は、走査角指令信号(S2)生成タイミングをクロック信号(S1)に同期させることで行っている。
例えば、パルスピッカー駆動信号S6は、加工パターン信号S7をクロック信号S1の立ち上がりによりサンプリングする。そして、クロック信号S1の一クロックの立ち上がりからt2時間遅延して立ち上がる。そして、所要のパルス数に相当するクロック数後、加工パターン信号S7がインアクティブとなった状態をクロック信号S1の立ち上がりでサンプリングし、t3時間遅延して立ち下がる。
そして、このパルスピッカー駆動信号S6により、パルスピッカー14の動作が遅延時間t4およびt5経過後に生ずる。このパルスピッカー14の動作により、パルスレーザビーム(PL1)が、変調パルスレーザビーム(PL2)として抽出される。
ここで、加工データは、例えば、3次元形状の指定、寸法、形状の数、配置位置、ワークの材料名、ワークの寸法等で構成されている。加工データは加工パターン生成部40の加工データ解析部48で解析される。そして、加工に使用されるレーザの発振器動作、ビーム走査条件である照射パルスエネルギー、ビームスポット径、繰り返し周波数、走査速度、ステージ送り量等の条件から単位光パルスの加工量が経験的に得られる。
上記条件を基に、更に3次元形状から2次元レイヤに分解し、各レイヤ毎のビットマップデータ等による2次元データに変換する。この2次元データからパルスピッカー14の動作データ(加工パルス数、非加工パルス数、待機長パルス数)に変換する。
例えば、Cu材に加工を行う場合、ビームスポット径D=15μm、繰り返し周波数F=500kHz、ビーム照射移動比n=2の加工条件で操作を行うとすると、加工速度Vは、V=3.75m/secとなる。また、照射パルスエネルギーを1μJ/パルスとすると、加工深さが0.1μmとなる。したがって、加工形状のレイヤ分解幅を0.1μmとすればよい。なお、このようにして分解されたレイヤの数をレイヤ数Rnと称する。
次に、レイヤ毎のパルスピッカー動作データ、すなわち、加工パルス数、非加工パルス数、待機長パルス数について説明する。図9は実施の形態のパルスレーザ加工装置による一加工例を示す図である。図10は図9の加工における特定の1次元方向の走査を示す図である。図11は図9の加工における特定のレイヤについての2次元加工を示す図である。
図9に示すように、例えば、LX1(横)×LY1(縦)×Dp(深さ)、具体的には、例えば、52.5μm×37.5μm×0.1RnμmのポケットをワークW上の9箇所に形成する。この加工例では、ビーム走査方向であるX方向については、LX1の加工長とLX2の非加工長の加工を行い、ステージ移動方向であるY方向については、LY1の加工長で、LY2、LY3の非加工長の加工を行う。
図10には、Y方向で、LY1に相当する領域内の1本のラインの1次元方向の走査を示す。同期角検出位置からSL+W1、光パルス数にして(SL+W1)/(D/n)離れた加工原点(SYNC)を基準にLw、光パルス数にしてLW/(D/n)の待機長をおいて、ワークへのパルスレーザビーム照射が行われる。この照射は光パルス数にして(LX1/(D/n))−1である。その後、光パルス数にして(LX2/(D/n))+1の間、非照射とし、更に、光パルス数で管理された照射と非照射を同一走査内で繰り返す。
1次元方向のみに走査されるレーザビームスキャナ18により、特定のX方向のライン走査が終了すると、ステージをX方向に直交するY方向に移動させて、更にレーザビームスキャナ18により、X方向の走査を行う。すなわち、レーザビームスキャナ18によるパルスレーザビームの1次元方向の走査と、この走査に続く1次元方向に直交する方向のステージの移動を交互に繰り返すことで、被加工物を加工する。
このようにして、図11に示すような特定のレイヤについての2次元加工が行われる。さらに、レイヤ分解により生成された別のレイヤについて、図11に占めすと同様な手法で2次元加工を行う。このようなレイヤ毎の加工を繰り返して、最終的に図9に示すような3次元のポケット加工が完了する。
次に、図5および図6を用いて、加工制御部24の動作について詳細に説明する。加工制御部24内の加工パターン生成部40では、位相同期回路42で同期検出を行った際に発生する同期検出信号S9がタイミング形成回路88に入力されると、パルスピッカー加工テーブル部50へテーブル選択信号S13「加工原点(SYNC)」が出力される。そして、パルスピッカー加工テーブル部50から加工原点の情報が出力され、加工原点レジスタ54へロードされる。併せて、加工原点(SYNC)カウンタ70(以下、単に加工原点カウンタとも記載)は、クロック信号S1の計数を開始する。
そして、比較器制御信号S14は加工原点(SYNC)比較器80(以下、単に加工原点比較器とも記載)をイネーブルとし、加工原点カウンタ70の値と加工原点レジスタ54の値を比較する。これらが一致すると、加工原点比較器80から一致信号aがタイミング形成回路88へ出力される。この時、パルスレーザビームが加工原点位置まで走査されていることになる。
次に、タイミング形成回路88は、カウンタ制御信号S8を出力し、加工原点カウンタ70の計数を停止させる。そして、タイミング形成回路88からパルスピッカー加工テーブル部50へテーブル選択信号S13「待機長」が出力される。パルスピッカー加工テーブル部50から待機長の情報が出力され、待機長レジスタ56へロードされる。併せて、カウンタ制御信号S8により、待機長カウンタ72はクロック信号S1の計数を開始する。
そして、比較器制御信号S14は待機長比較器82をイネーブルとし、待機長カウンタ72の値と待機長レジスタ56の値を比較する。これらが一致すると、待機長比較器82から一致信号bがタイミング形成回路88へ出力される。この時、パルスレーザビームが実加工開始位置まで走査されていることになる。
次に、タイミング形成回路88は、カウンタ制御信号S8を出力し、待機長カウンタ72の計数を停止させる。そして、タイミング形成回路88からパルスピッカー加工テーブル部50へテーブル選択信号S13「加工長」が出力される。パルスピッカー加工テーブル部50から加工長の情報が出力され、加工長レジスタ58へロードされる。併せて、カウンタ制御信号S8により、加工長カウンタ74はクロック信号S1の計数を開始する。
そして、比較器制御信号S14は加工長比較器84をイネーブルとし、加工長カウンタ74の値と加工長レジスタ58の値を比較する。これらが一致すると、加工長比較器84から一致信号cがタイミング形成回路88へ出力される。この時、パルスレーザビームが加工を終了する位置まで走査されていることになる。
次に、タイミング形成回路88は、カウンタ制御信号S8を出力し、加工長カウンタ74の計数を停止させる。そして、タイミング形成回路88からパルスピッカー加工テーブル部50へテーブル選択信号S13「非加工長」が出力される。パルスピッカー加工テーブル部50から非加工長の情報が出力され、非加工長レジスタ60へロードされる。併せて、カウンタ制御信号S8により、非加工長カウンタ76はクロック信号S1の計数を開始する。
そして、比較器制御信号S14は非加工長比較器86をイネーブルとし、非加工長カウンタ76の値と非加工長レジスタ60の値を比較する。これらが一致すると、非加工長比較器86から一致信号dがタイミング形成回路88へ出力される。この時、パルスレーザビームが非加工端部まで走査されていることになる。そして、実加工を開始する位置の1光パルス手前まで走査されたことになる。
次に、タイミング形成回路88は、カウンタ制御信号S8を出力し、非加工長カウンタ76の計数を停止させる。そして、タイミング形成回路88からパルスピッカー加工テーブル部50へテーブル選択信号S13「加工長」が出力される。パルスピッカー加工テーブル部50から加工長の情報が出力され、加工長レジスタ58へロードされる。併せて、カウンタ制御信号S8により、加工長カウンタ74はクロック信号S1の計数を開始する。
そして、比較器制御信号S14は加工長比較器84をイネーブルとし、加工長カウンタ74の値と加工長レジスタ58の値を比較する。これらが一致すると、加工長比較器84から一致信号cがタイミング形成回路88へ出力される。この時、パルスレーザビームが加工を終了する位置まで走査されていることになる。
次に、タイミング形成回路88は、カウンタ制御信号S8を出力し、加工長カウンタ74の計数を停止させる。そして、タイミング形成回路88からパルスピッカー加工テーブル部50へテーブル選択信号S13「非加工長」が出力される。パルスピッカー加工テーブル部50から非加工長の情報が出力され、非加工長レジスタ60へロードされる。併せて、カウンタ制御信号S8により、非加工長カウンタ76はクロック信号S1の計数を開始する。
そして、比較器制御信号S14は非加工長比較器86をイネーブルとし、非加工長カウンタ76の値と非加工長レジスタ60の値を比較する。これらが一致すると、非加工長比較器86から一致信号dがタイミング形成回路88へ出力される。この時、パルスレーザビームが非加工端部まで走査されていることになる。そして、実加工を開始する位置の1光パルス手前まで走査されたことになる。
上記過程の中で、加工パターン出力回路90は加工長比較器84の出力に従い、加工実施期間を認識し、更にタイミング形成回路88からの出力制御信号S10により、加工パターン信号S7を出力する。この加工パターン信号S7に基づくパルスピッカー動作のタイミング制御は図8に示すとおりである。
上述のように、加工パターン生成部40は、パルスピッカー加工テーブル部50内に備えられるパルスピッカー加工テーブルに従い、図10に示すようなパルスレーザビームの1次元走査を行う。パルスピッカー加工テーブル部50には、走査終了コードが設けられ、特定のビーム走査の終了後にタイミング形成回路88に出力される。
タイミング形成回路88が走査終了コードを認識すると、ステージ移動が行われ、ステージ移動テーブル部52からステージ移動量が読み出され、移動信号生成部64からステージ制御部66へ、ステージ移動量とステージ移動開始指令を含むステージ移動信号S15が出力される。ステージ移動へのプロセスに移ることで、当該ラインの加工が終了したことが認識される。
ラインの走査とは直交する方向へのステージ移動の終了と、次のラインのビーム走査の準備が完了した時点で、次ラインのビーム走査を開始する。上記と同様のプロセスに従い1次元方向のビーム走査による加工を実施する。所定数のビーム走査とステージ移動とが終了することで当該2次元レイヤの加工が終了する。
当該2次元レイヤの加工終了の判断は、ステージ移動テーブル部52に設けられている移動終了コードによる判断が行われる。移動終了コードが確認された時、ステージは第1ラインへ移動する様に制御される。
以上のように、ビーム走査とステージ移動が「パルスピッカー加工テーブル」と「ステージ移動テーブル」の各データに従って行われ各レイヤの加工が実行される。そして、Rnで与えられる所定レイヤ数の加工が行われる。
表1は、実施の形態の加工フォーマットデータであるテーブルの例である。表1は、パルスピッカー加工テーブルとステージ移動テーブルが同一テーブル内に記述される例である。表1において、待機長、加工長、非加工長は光パルス数で記述されている。なお、パルスピッカー加工テーブルとステージ移動テーブルが別個のテーブルとして存在しても構わない。
上記表1のようなテーブルのデータが深さ方向のレイヤ数分だけ作られることになる。すなわち、加工フォーマットデータが、加工形状の深さ毎に分かれた複数のテーブル形式のデータである。
上述のように、本実施の形態によれば、画素毎に加工形状の深さ情報を有する2次元中間データを生成し、この2次元中間データから各レイヤの、表1のようなパルスレーザ加工用の加工フォーマットデータを作成する。2次元中間データは、画素毎に加工形状の深さ情報を有するため、特定の位置においてのパルスのオン・オフ情報への変換が容易である。したがって、表1のようなテーブルを深さごとに作成することが容易となる。
(第2の実施の形態)
本実施の形態は、第1の実施の形態のパルスレーザ加工装置およびパルスレーザ加工方法を用いたマイクロレンズ用金型の製造方法、これを用いて製造されるマイクロレンズ用金型、および、このマイクロレンズ用金型を用いたマイクロレンズの製造方法である。
例えば、フラットパネルディスプレイに用いられるマイクロレンズは大面積と高い加工精度が求められる。そのため、金型を用いて、このマイクロレンズを製造する場合には、必然的に、その金型にも大面積と高い加工精度が要求される。図12は、本実施の形態の製造方法により形成される金型の加工例である。
図12に示すように、例えば、Cu材のワークに、直径R、深さDpのディンプルを、間隔Iで9箇所に形成する。レーザ加工については、第1の実施の形態と同様の方法による。加工テーブルとして、図12の3次元形状に即したテーブルを用いることで、図12の加工が実現できる。本実施の形態によれば、大面積かつ高精度のマイクロレンズ用金型の製造が可能となる。
また、このマイクロレンズ用金型は大面積かつ高精度のマイクロレンズを製造する上で有用である。そして、このマイクロレンズ用金型を用いたマイクロレンズの製造方法によれば、大面積かつ高精度のマイクロレンズを製造することが可能である。
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。パルスレーザ加工装置、パルスレーザ加工方法、パルスレーザ加工用データ作成方法等で、本発明の説明に直接必要としない部分については記載を省略したが、必要とされるパルスレーザ加工装置、パルスレーザ加工方法を適宜選択して用いることができる。その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全てのパルスレーザ加工方法およびパルスレーザ加工用データ作成方法は、本発明の範囲に包含される。
例えば、実施の形態では、ポケットやディンプルを加工する場合を例に説明したが、これらの形状に限られることなく、例えば、電子ペーパ用のリブを製造するための円錐形状、あるいは三角錐、四角錘、V溝、凹溝、R溝等の任意形状の加工、その組み合わせの形状の加工を行うパルスレーザ加工方法であっても構わない。
また、被加工物として、主にCu材を例に説明したが、例えば、Ni材、SKD11等の金属材、DLC材、高分子材料、半導体材、ガラス材等のその他の材料であっても構わない。
また、レーザ発振器としては、YAGレーザに限ることなく、被加工物の加工に適したその他の、例えば、Nd:YVO4レーザの第2高調波(波長:532nm)のような単一波長帯レーザあるいは複数波長帯レーザを出力するものであっても構わない。
さらに、実施の形態においては、被加工物がステージ上に載置され、ステージの移動により、1次元方向に直交する方向に被加工物を移動する方法を例に説明した。しかし、被加工物が金属ロールに巻き取られたフィルムであり、金属ロールの回転により、1次元方向に直交する方向に被加工物を移動する方法であってもかまわない。