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JP5629658B2 - 静電潜像現像用トナー、トナーセット、及び静電潜像現像用トナーの製造方法 - Google Patents

静電潜像現像用トナー、トナーセット、及び静電潜像現像用トナーの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、静電潜像現像用トナー、トナーセット、及び静電潜像現像用トナーの製造方法に関する。
一般に電子写真法においては、光導電性感光体等よりなる潜像担持体をコロナ帯電等により帯電し、潜像担持体をレーザー、LED等により露光し、形成された静電潜像をトナー等の現像剤を用い、可視化して高品質な画像を得ている。一般にこれらの現像法に適用するトナーとしてはバインダーとしての熱可塑性樹脂に着色剤や帯電制御剤としての染料、顔料や離型剤を混合し、例えば、混練、粉砕、分級等の方法により小粒子径の粒子とされたトナーが用いられている。そして、一般的にはトナーに流動性を付与したり、トナーの帯電制御を行ったり、クリーニング性を向上させたりするためにシリカや酸化チタン等の無機微粉末が添加される。
そして、近年の高画質化に対する要望の高まりから、トナーの粒子径は、例えば5〜10μm程度まで小粒子径化されている。トナーを小粒子径化することで、細線再現性は向上する。
高画質化に対する要望に加えて、画像形成装置の高速化や省エネルギー化に伴って、低温定着性に優れたトナーが望まれている。そして、低温定着性に優れたトナーを調製する場合、ポリエステル樹脂がバインダー(結着樹脂)として広く用いられており、結着樹脂としてポリエステル樹脂を用いた小粒子径のトナーが広く用いられている。
しかし、小粒子径のトナーには、小径の粒子が、クリーニング部が備える、例えば弾性ブレード等の、潜像担持体上の転写残トナーを除去するための装置をすり抜けやすい問題がある。転写残トナーが上記装置をすり抜けた場合、画像不良の原因となる。
結着樹脂としてポリエステル樹脂を用いた小粒子径のトナーのかかる課題を解決するために、例えば、アスペクト比が0.8〜0.9であるトナーが提案されている(特許文献1)。
特開2009−134079号公報
たしかに、特許文献1に記載のトナーによれば、トナーのアスペクト比が低めに設定されているため、潜像担持部表面でトナー粒子が転がりにくく、転写残トナーのクリーニング部のすり抜けの問題は生じにくい。しかし、特許文献1に記載のトナーでは、トナーのアスペクト比が低いために、トナー粒子が潜像担持体表面から剥離しにくい場合がある。
かかる場合、形成画像に「中抜け」と呼ばれる画像不良が発生しやすい。
また、特許文献1に記載のトナーは、粒子径が小さいために比表面積が大きい。このため、特許文献1に記載のトナーでは離型剤がトナー粒子の表面に露出しやすい。ここで、離型剤は、定着ローラーと画像が形成された被記録媒体との離型性を改良する目的で結着樹脂中に配合されるものであり、離型剤の使用量を多くするほど離型性に優れるトナーが得られる。ところが、粒子径が小さいトナーでは、トナー表面に露出している離型剤の量が多いため、トナーの製造時に加わる衝撃等によりトナー表面から離型剤が脱落しやすい。このため、粒子径が小さいトナーには、結着樹脂の離型剤の含有量を安定させたり、結着樹脂中に離型剤を高充填したりしにくい問題がある。このため、特許文献1に記載のトナーは、離型性に劣る場合がある。
さらに、トナー表面に離型剤が多く露出した小粒子径のトナーには、トナー製造時に乾燥や、粉砕時の摩擦熱等により加わる熱によって離型剤が軟化・溶融し、結着樹脂中からトナー表面に離型剤が染み出しやすい問題がある。離型剤の染み出しが生じた場合、トナーを高温で保存した場合に、凝集等が生じたり、画像を形成する際に、トナーの現像スリーブへの付着による画像不良が形成画像に生じたりする。
これらの離型剤による問題は、結着樹脂と、着色剤や離型剤等の種々の成分とを混合・混練したのちに、混練物を粉砕、分級して得られる、いわゆる粉砕トナーにおいてより顕著である。粉砕トナーでは、粉砕工程において、大きな機械的なストレスや、多量の摩擦熱が加わるためである。
また、静電潜像現像用トナーによりカラー画像を形成する場合、通常、黒色の静電潜像現像用トナーと、例えば、イエロー色、シアン色、及びマゼンタ色の3色のカラートナーとからなるトナーセットが使用される。しかし、結着樹脂としてポリエステル樹脂を用いた小粒子径のトナーでは、前述の問題により、結着樹脂中に含まれる離型剤の含有量を安定させにくい。このため、従来のトナーセットを用いて画像を形成する場合、結着樹脂中の離型剤の含有量が異なる4色のトナーにより形成された画像を同一の温度で定着させることにより、色によって定着後の画像の光沢(グロス)がバラついてしまい、グロスむらによる形成画像の画質低下が起こりやすい。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、定着ローラーと画像が形成された被記録媒体との離型性に優れ、形成画像における、現像スリーブへのトナーの付着による画像不良や、クリーニング部でのトナーのすり抜けによる画像不良や、中抜け等の画像不良を抑制できる、結着樹脂としてポリエステル樹脂を用いた小粒子径の静電潜像現像用トナーを提供することを目的とする。
また、本発明は、グロスむらによる形成画像の画質低下を抑制できる、前述の静電潜像現像用トナーを含むトナーセットを提供することを目的とする。
さらに、本発明は、前述の静電潜像現像用トナーの製造方法として好適な、静電潜像現像用トナーの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、結着樹脂中に、少なくとも着色剤、及び離型剤を含む静電潜像現像用トナー(以下、トナーともいう)であり、結着樹脂がポリエステル樹脂であり、トナーの平均円形度が0.960〜0.975であり、トナーにおける、示差走査熱量計により測定される前記離型剤の融解時の吸熱量が10.0〜15.0J/gであり、走査型電子顕微鏡によるトナーの観察により確認される、前記離型剤が表面に染み出したトナーの粒子の数が少ない、静電潜像現像用トナーにより、上述のトナーに関する課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
また、本発明者等は、4色のトナーからトナーセットにおいて、トナーセットに含まれる4種のトナーにおける、示差走査熱量計により測定される前記離型剤の融解時の吸熱量の最大値と最小値との差が0.5J/g以下とすることにより、上述のカラー画像を形成するためのトナーセットに関する課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
さらに、本発明者らは、結着樹脂、及び少なくとも着色剤と離型剤とを、混合した後に溶融混練し、得られた溶融混錬物を所定の径に粗粉砕した後に、粗粉砕物に熱処理を施し、熱処理された粗粉砕物を微粉砕することにより、上述のトナーに関する課題を解決できる静電潜像現像用トナーが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
より具体的には、本発明は以下のものを提供する。
(1) 結着樹脂中に、少なくとも、着色剤、及び離型剤を含む静電潜像現像用トナーであって、
前記結着樹脂がポリエステル樹脂であり、
前記静電潜像現像用トナーの平均円形度が0.960〜0.975であり、
前記静電潜像現像用トナーにおける、示差走査熱量計により測定される前記離型剤の融解時の吸熱量が10.0〜15.0J/gであり、
走査型電子顕微鏡により倍率3000倍で撮影された画像に含まれる100個以上の前記静電潜像現像用トナーの粒子について、倍率10000倍で撮影された画像を観察して確認される、前記離型剤が表面に染み出した前記静電潜像現像用トナーの粒子数の、観察対象の前記静電潜像現像用トナーの粒子数に対する比率が、10個数%以下である、静電潜像現像用トナー。
(2) 以下の工程(I)〜(IV)を含む方法により製造された、(1)記載の静電潜像現像用トナー:
(I)結着樹脂、及び少なくとも着色剤と離型剤とを、混合した後に溶融混練する工程;
(II)工程(I)で得られた溶融混練物を、粗粉砕して体積平均粒子径15〜25μmの粗粉砕物を得る工程;
(III)前記粗粉砕物を熱処理する工程;及び
(IV)熱処理された前記粗粉砕物を、微粉砕した後に分級して、体積平均粒子径5〜10μmのトナーを得る工程。
(3) 前記着色剤が黒色、及び黒色の他の3種の色相の着色剤であって、それぞれ異なる色相である4種の(1)又は(2)記載の静電潜像現像用トナーを含むトナーセットであり、
前記トナーセットに含まれる4種の前記静電潜像現像用トナーにおける、示差走査熱量計により測定される前記離型剤の融解時の吸熱量の最大値と最小値との差が0.5J/g以下である、トナーセット。
(4) 結着樹脂中に、少なくとも、着色剤、及び離型剤を含む静電潜像現像用トナーの製造方法であって、
前記結着樹脂がポリエステル樹脂であり、
以下の工程(I)〜(IV)を含む、静電潜像現像用トナーの製造方法:
(I)結着樹脂、及び少なくとも着色剤と離型剤とを、混合した後に溶融混練する工程;
(II)工程(I)で得られた溶融混練物を、粗粉砕して体積平均粒子径15〜25μmの粗粉砕物を得る工程;
(III)前記粗粉砕物を熱処理する工程;及び
(IV)熱処理された前記粗粉砕物を、微粉砕した後に分級して、体積平均粒子径5〜10μmのトナーを得る工程。
本発明によれば、定着ローラーと画像が形成された被記録媒体との離型性に優れ、形成画像における、現像スリーブへのトナーの付着による画像不良や、クリーニング部でのトナーのすり抜けによる画像不良や、中抜け等の画像不良を抑制できる、結着樹脂としてポリエステル樹脂を用いた小粒子径の静電潜像現像用トナーと、当該静電潜像現像用トナーの製造方法とが提供される。
また、本発明によれば、グロスむらによる形成画像の画質低下を抑制できる、前述の静電潜像現像用トナーを含むトナーセットが提供される。
トナーのDSC曲線の典型例を示す図である。 画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨を限定するものではない。
[第1実施形態]
第1実施形態にかかる静電潜像現像用トナーは、結着樹脂中に、少なくとも着色剤、及び離型剤を含み、結着樹脂がポリエステル樹脂であり、トナーの平均円形度が0.960〜0.975であり、トナーにおける、示差走査熱量計により測定される前記離型剤の融解時の吸熱量が10.0〜15.0J/gであり、走査型電子顕微鏡によるトナーの観察により確認される、離型剤が表面に染み出した前記離型剤が表面に染み出したトナーの粒子の数が少ない、静電潜像現像用トナーである。
第1実施形態にかかる静電潜像現像用トナーは、結着樹脂中に、所望により、電荷制御剤、及び磁性粉を含んでいてもよい。また、第1実施形態にかかる静電潜像現像用トナーは、結着樹脂に対して、種々の成分が配合されたトナー母粒子の表面に、所望により、外添剤を付着させたものであってもよい。さらに、第1実施形態にかかる静電潜像現像用トナーは、所望によりキャリアと混合して2成分現像剤として用いることもできる。以下、第1実施形態にかかる静電潜像現像用トナーについて、結着樹脂、着色剤、離型剤、電荷制御剤、磁性粉、及びキャリアと、静電潜像現像用トナーの製造方法と、静電潜像現像用トナーを用いる画像形成方法とについて順に説明する。
〔結着樹脂〕
第1実施形態にかかる静電潜像現像用トナーでは、結着樹脂としてポリエステル樹脂を用いる。結着樹脂としてポリエスエテル樹脂を用いる場合、低温で良好に定着でき、発色性に優れるトナーを調製しやすい。結着樹脂として使用するポリエステル樹脂は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、従来トナー用の結着樹脂として使用されているポリエステル樹脂から適宜選択できる。
以下、ポリエステル樹脂の具体例について説明する。ポリエステル樹脂は、アルコール成分とカルボン酸成分との縮重合ないし共縮重合によって得られるものを使用することができる。ポリエステル系樹脂を合成する際に用いられる成分としては、以下の2価又は3価以上のアルコール成分や2価又は3価以上のカルボン酸成分が挙げられる。
2価又は3価以上のアルコール成分の具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のジオール類;ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールA等のビスフェノール類;ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等の3価以上のアルコール類が挙げられる。
2価又は3価以上のカルボン酸成分の具体例としては、マレイン酸、フマール酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、あるいはn−ブチルコハク酸、n−ブテニルコハク酸、イソブチルコハク酸、イソブテニルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、イソドデシルコハク酸、イソドデセニルコハク酸等のアルキル又はアルケニルコハク酸等の2価カルボン酸;1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール三量体酸等の3価以上のカルボン酸等が挙げられる。これらの2価又は3価以上のカルボン酸成分は、酸ハライド、酸無水物、低級アルキルエステル等のエステル形成性の誘導体として用いてもよい。ここで、「低級アルキル」とは、炭素原子数1から6のアルキル基を意味する。
結着樹脂がポリエステル樹脂である場合の、ポリエステル樹脂の軟化点は、80〜150℃であることが好ましく、90〜140℃がより好ましい。
ポリエステル樹脂には、本発明の目的を阻害しない範囲で、架橋剤や熱硬化性樹脂を添加することができる。結着樹脂であるポリエステル樹脂の内部に一部架橋構造を導入することにより、定着性を低下させることなく、トナーの保存安定性、形態保持性、耐久性等を向上させることができる。
ポリエステル樹脂と共に使用できる熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂やシアネート系樹脂が好ましい。好適な熱硬化性樹脂の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ポリアルキレンエーテル型エポキシ樹脂、環状脂肪族型エポキシ樹脂、シアネート樹脂等が挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は、2種以上を組み合わせて使用できる。
結着樹脂のガラス転移点(Tg)は、50〜65℃が好ましく、50〜60℃がより好ましい。結着樹脂のガラス転移点が低すぎる場合、画像形成装置の現像部の内部でトナー同士が融着したり、トナーの保存安定性の低下により、トナー容器の輸送時や倉庫等での保管時にトナー同士が一部融着したりする場合がある。また、結着樹脂のガラス転移点が高すぎる場合、結着樹脂の強度が低下し、潜像担持部にトナーが付着しやすい。結着樹脂のガラス転移点が高すぎる場合、トナーが低温で良好に定着しにくい傾向がある。
なお、ポリエステル樹脂のガラス転移点は、示差走査熱量計(DSC)を用いて、比熱の変化点から求めることができる。より具体的には、測定装置としてセイコーインスツルメンツ株式会社製示差走査熱量計DSC−6200を用い、吸熱曲線を測定することで求めることができる。測定試料10mgをアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを使用し、測定温度範囲25〜200℃、昇温速度10℃/minで常温常湿下にて測定して得られた吸熱曲線よりガラス転移点を求めることができる。
〔着色剤〕
静電潜像現像用トナーは、結着樹脂中に着色剤を含む。静電潜像現像用トナーに含まれる着色剤は、トナー粒子の色に合わせて、公知の顔料や染料を用いることができる。トナーに添加する好適な着色剤の具体例としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、アニリンブラック等の黒色顔料;黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ等の黄色顔料;赤口黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジGK等の橙色顔料;ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウオッチングレッドカルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B等の赤色顔料;マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ等の紫色顔料;紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBC等の青色顔料;クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG等の緑色顔料;亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛等の白色顔料;バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイト等の体質顔料が挙げられる。これらの着色剤は、トナーを所望の色相に調整する目的等で2種以上を組み合わせて用いることもできる。
着色剤の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。具体的には、結着樹脂100質量部に対して、1〜10質量部が好ましく、3〜7質量部がより好ましい。
〔離型剤〕
第1実施形態にかかる静電潜像現像用トナーは、定着ローラーと画像が形成された被記録媒体との離型性を改良し、形成画像におけるオフセットや像スミアリング(画像をこすった際の画像周囲の汚れ)の発生を抑制する目的で、離型剤を含む。
離型剤の融点は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されないが、60〜90℃が好ましい。離型剤の融点が高すぎる場合、定着温度によっては、トナーを被記録媒体に良好に定着させにくい場合がある。離型剤の融点が低すぎる場合、離型剤がトナー表面に染み出しやすく、高温で保存する場合にトナーの凝集が生じたり、現像スリーブへのトナーの付着による形成画像における画像不良が発生しやすくなったりする。
離型剤としてはワックスが好ましく、ワックスの例としては、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、フッ素樹脂系ワックス、フィッシャートロプシュワックス、パラフィンワックス、エステルワックス、モンタンワックス、ライスワックス等が挙げられる。これらの離型剤は2種以上を組み合わせて使用できる。かかる離型剤をトナーに添加することにより、形成画像におけるオフセットや像スミアリング(画像をこすった際の画像周囲の汚れ)の発生をより効率的に抑制することができる。
第1実施形態にかかるトナーは、結着樹脂中のワックスの充填量を高めているため、定着ローラーと画像が形成された被記録媒体との離型性に優れるものである。所定の量の離型剤が、結着樹脂中に分散されているか否かは、トナーを試料に用いる示差走査熱量計(DSC)によるトナーに含まれる離型剤の融解時の吸熱量(J/g)の測定と、走査型電子顕微鏡(SEM)による、トナーにおける、離型剤が表面に染み出したトナー粒子の存在量の確認とにより知ることができる。
DSCにより測定される、トナーに含まれる離型剤の融解時の吸熱量が、10.0〜150J/gである場合、定着ローラーと画像が形成された被記録媒体との離型性に優れるトナーを得るために十分な量の離型剤がトナーに含まれている。トナーに含まれる離型剤の融解時の吸熱量が過多である場合、トナー同士の融着により保存安定性が低下したり、トナー表面への離型剤の染み出しにより、トナーの現像スリーブへの付着に起因する形成画像における画像不良が発生したりする傾向がある。
ただし、トナーに含まれる離型剤の融解時の吸熱量が上述の好適な範囲であるとしても、トナーにおいて離型剤のトナー表面への染み出しが生じている場合、トナーに含まれる離型剤の全量がトナーの離型性の改良に寄与するわけではなく、所望の離型性を備えるトナーが得られない場合がある。
このため、結着樹脂中に所定の量の離型剤を充填して、所望の離型性を備えるトナーを調製するためには、トナーにおける、トナー表面への離型剤の染み出しを抑制する必要がある。
トナーに含まれる離型剤の融解時の吸熱量は、通常、トナーに含まれる離型剤の量によって変動する。このため、トナーを調製する際の離型剤の使用量を増減させることにより、トナーに含まれる離型剤の融解時の吸熱量を調整することができる。離型剤の使用量は、トナーに含まれる離型剤の融解時の吸熱量を所定の範囲の値にできれば特に限定されないが、典型的には、トナーの全質量を100質量部とした場合に、5〜8質量部であるのが好ましい。離型剤の使用量が過少である場合、オフセット性や像スミアリング等を効率的に防止することができない傾向があり、一方、8質量部を超えると、トナー同士が融着してしまい、保存安定性が低下する傾向がある。
また、後述する第1実施形態にかかるトナーの好適な製造方法によれば、熱処理された円形度の高い粗粉砕物を微粉砕するため、粉砕中に粒子間に過度の摩擦が生じ難く、トナー表面の離型剤の脱落や、離型剤の軟化・溶融によるトナー表面への離型剤の染み出しを抑制できる。
なお、トナーに含まれる離型剤の融解時の吸熱量に関するDSC測定方法と、SEMによる離型剤の染み出しの確認方法は以下の通りである。
<DSC測定方法>
示差走査熱量計(DSC6200(セイコーインスツルメンツ株式会社製))を用いてサンプル(トナー)を170℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で30℃までサンプルを一旦冷却し、その後、再びサンプルを昇温速度10℃/分で170℃まで加熱して、再加熱時の測定によりDSC曲線を得る。サンプル量は10mgとする。トナーのDSC曲線の典型例を、図1に示す。得られたDSC曲線から、吸熱開始温度(TB)、及び吸熱終了温度(TE)を求める。具体的には、トナーのガラス転移点(Tg、点A)が観測された後のDSC曲線のベースラインと、最初の吸熱ピークにおける下降曲線の最も低温側の変曲点における接線との交点の温度をTBとする。また、2つ目の吸熱ピークの後のDSC曲線のベースラインと、2つ目の吸熱ピークにおける上昇曲線の最も高温側の変曲点における接線との交点の温度をTEとする。DSC曲線上の、温度TBに相当する点を点Bとし、温度TEに相当する点を点Eとする。DSC曲線上の、点Bと点Eとを結ぶ直線と、DSC曲線とにより囲まれる部分の面積よりトナーの吸熱量(J/g)を求める。
<SEM観察方法>
走査型電子顕微鏡により倍率3000倍で撮影された画像に含まれる、100個以上、好ましくは100〜150個のトナー粒子について、倍率10000倍で撮影された画像により、目視によりトナー表面への離型剤の染み出しを確認する。トナー表面に離型剤が染み出している場合、トナー表面に突起状の離型剤のブロックが観察される。なお、電子顕微鏡画像において、トナー表面の、外添剤と、トナー表面に染み出した離型剤とは、形状により容易に識別可能である。観察対象のトナー粒子の個数に対する、トナー表面に離型剤が染み出したトナー粒子の個数%が、10個数%以下である場合を離型剤の染み出し無しとし、10個数%超である場合を離型剤の染み出し有りとする。
〔電荷制御剤〕
静電潜像現像用トナーは、結着樹脂中に電荷制御剤を含んでいてもよい。電荷制御剤は、トナーの帯電レベルや、所定の帯電レベルに短時間でトナーを帯電可能か否かの指標となる帯電立ち上がり特性を向上させ、耐久性や安定性に優れたトナーを得る目的で使用される。トナーを正帯電させて現像を行う場合、正帯電性の電荷制御剤が使用され、トナーを負帯電させて現像を行う場合、負帯電性の電荷制御剤が使用される。
電荷制御剤の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、従来よりトナーに使用されている電荷制御剤から適宜選択できる。正帯電性の電荷制御剤の具体例としては、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、オルトオキサジン、メタオキサジン、パラオキサジン、オルトチアジン、メタチアジン、パラチアジン、1,2,3−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,3,5−トリアジン、1,2,4−オキサジアジン、1,3,4−オキサジアジン、1,2,6−オキサジアジン、1,3,4−チアジアジン、1,3,5−チアジアジン、1,2,3,4−テトラジン、1,2,4,5−テトラジン、1,2,3,5−テトラジン、1,2,4,6−オキサトリアジン、1,3,4,5−オキサトリアジン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン等のアジン化合物;アジンファストレッドFC、アジンファストレッド12BK、アジンバイオレットBO、アジンブラウン3G、アジンライトブラウンGR、アジンダークグリ−ンBH/C、アジンディ−プブラックEW、及びアジンディーブラック3RL等のアジン化合物からなる直接染料;ニグロシン、ニグロシン塩、ニグロシン誘導体等のニグロシン化合物;ニグロシンBK、ニグロシンNB、ニグロシンZ等のニグロシン化合物からなる酸性染料;ナフテン酸又は高級脂肪酸の金属塩類;アルコキシル化アミン;アルキルアミド;ベンジルメチルヘキシルデシルアンモニウム、デシルトリメチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩が挙げられる。これらの正帯電性の電荷制御剤の中では、より帯電の迅速な立ち上がり性が得られる点で、ニグロシン化合物が特に好ましい。これらの正帯電性の電荷制御剤は、2種以上を組み合わせて使用できる。
4級アンモニウム塩、カルボン酸塩、又はカルボキシル基を官能基として有する樹脂も正帯電性の電荷制御剤として使用できる。より具体的には、4級アンモニウム塩を有するスチレン系樹脂、4級アンモニウム塩を有するアクリル系樹脂、4級アンモニウム塩を有するスチレン−アクリル系樹脂、4級アンモニウム塩を有するポリエステル系樹脂、カルボン酸塩を有するスチレン系樹脂、カルボン酸塩を有するアクリル系樹脂、カルボン酸塩を有するスチレン−アクリル系樹脂、カルボン酸塩を有するポリエステル系樹脂、カルボキシル基を有するポリスチレン系樹脂、カルボキシル基を有するアクリル系樹脂、カルボキシル基を有するスチレン−アクリル系樹脂、カルボキシル基を有するポリエステル系樹脂等の1種又は2種以上が挙げられる。これらの樹脂の分子量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、オリゴマーであってもポリマーであってもよい。
正帯電性の電荷制御剤として使用できる樹脂の中では、帯電量を所望の範囲内の値に容易に調節することができる点から、4級アンモニウム塩を官能基として有するスチレン−アクリル系共重合樹脂がより好ましい。4級アンモニウム塩を官能基として有するスチレン−アクリル系共重合樹脂において、スチレン単位と共重合させる好ましいアクリル系コモノマーの具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸iso−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸iso−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸n−ブチル、メタアクリル酸iso−ブチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
また、4級アンモニウム塩としては、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、ジアルキル(メタ)アクリルアミド、又はジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドから第4級化の工程を経て誘導される単位が用いられる。ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、ジアルキル(メタ)アクリルアミドの具体例としてはジメチルメタクリルアミドが挙げられ、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドの具体例としては、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドが挙げられる。また、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等のヒドロキシ基含有重合性モノマーを重合時に併用することもできる。
負帯電性の電荷制御剤の具体例としては、例えば、有機金属錯体、キレート化合物等が挙げられる。有機金属錯体、及びキレート化合物としては、アルミニウムアセチルアセトナートや鉄(II)アセチルアセトナート等のアセチルアセトン金属錯体、及び、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸クロム等のサリチル酸系金属錯体又はサリチル酸系金属塩が好ましく、サリチル酸系金属錯体又はサリチル酸系金属塩がより好ましい。これらの負帯電性の電荷制御剤は、2種以上を組み合わせて使用できる。
正帯電性又は負帯電性の電荷制御剤の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。正帯電性又は負帯電性の電荷制御剤の使用量は、典型的には、トナー全量を100質量部とした場合に、1.5〜15質量部が好ましく、2.0〜8.0質量部がより好ましく、3.0〜7.0質量部が特に好ましい。電荷制御剤の使用量が過少である場合、所定の極性にトナーを安定して帯電させ難いため、形成画像の画像濃度の低下や、画像濃度を長期にわたって維持することが困難になることがある。また、かかる場合、電荷制御剤が均一に分散し難く、形成画像にかぶりが生じやすくなったり、潜像担持部の汚染が起こりやすくなったりする。電荷制御剤の使用量が過多である場合、耐環境性の悪化による、高温高湿下での帯電不良に起因する形成画像における画像不良や、潜像担持部の汚染等が起こりやすくなる。
〔磁性粉〕
第1実施形態にかかるトナーは、所望により、結着樹脂中に磁性粉を配合することができる。トナーに配合する磁性粉の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。好適な磁性粉の例としては、フェライト、マグネタイト等の鉄;コバルト、ニッケル等の強磁性金属;鉄、及び/又は強磁性金属を含む合金;鉄、及び/又は強磁性金属を含む化合物;熱処理等の強磁性化処理を施された強磁性合金;二酸化クロムが挙げられる。
磁性粉の粒子径は、本発明の目的を阻害しない範囲で限定されない。具体的な磁性粉の粒子径は、0.1〜1.0μmが好ましく、0.1〜0.5μmがより好ましい。かかる範囲の粒子径の磁性粉を用いる場合、結着樹脂中に磁性粉を均一に分散させやすい。
磁性粉は、結着樹脂中での分散性を改良する目的等で、チタン系カップリング剤やシラン系カップリング剤等の表面処理剤により表面処理されたものを使用できる。
磁性粉の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。具体的な磁性粉の使用量は、トナーを1成分現像剤として使用する場合、トナー全量を100質量部とした場合に、35〜60質量部が好ましく、40〜60質量部がより好ましい。磁性粉の使用量が過多である場合、長期間にわたり印刷する場合に画像濃度が低下しやすかったり、定着性が極度に低下したりする場合がある。磁性粉の使用量が過少である場合、かぶりが発生しやすかったり、長期間にわたり印刷する場合に画像濃度が低下しやすかったりする場合がある。また、トナーを2成分現像剤として使用する場合、磁性粉の使用量は、トナー全量を100質量部とした場合に、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましい。
〔キャリア〕
第1実施形態にかかる静電潜像現像用トナーは、所望のキャリアと混合して2成分現像剤として使用することもできる。2成分現像剤を調製する場合、磁性キャリアを用いるのが好ましい。
本発明の静電潜像現像用トナーを2成分現像剤とする場合の好適なキャリアとしては、キャリア芯材が樹脂により被覆されたものが挙げられる。キャリア芯材の具体例としては、鉄、酸化処理鉄、還元鉄、マグネタイト、銅、ケイ素鋼、フェライト、ニッケル、コバルト等の粒子や、これらの材料とマンガン、亜鉛、アルミニウム等との合金の粒子、鉄−ニッケル合金、鉄−コバルト合金等の粒子、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化銅、酸化マグネシウム、酸化鉛、酸化ジルコニウム、炭化ケイ素、チタン酸マグネシウム、チタン酸バリウム、チタン酸リチウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛、ニオブ酸リチウム等のセラミックスの粒子、リン酸二水素アンモニウム、リン酸二水素カリウム、ロッシェル塩等の高誘電率物質の粒子、樹脂中に上記磁性粒子を分散させた樹脂キャリア等が挙げられる。
キャリア芯材を被覆する樹脂の具体例としては、(メタ)アクリル系重合体、スチレン系重合体、スチレン−(メタ)アクリル系共重合体、オレフィン系重合体(ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリカーボネート、セルロース樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等)、フェノール樹脂、キシレン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリアセタール樹脂、アミノ樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は2種以上を組み合わせて使用できる。
キャリアの粒子径は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されないが、電子顕微鏡により測定される粒子径で、20〜120μmが好ましく、25〜80μmがより好ましい。
キャリアの見掛け密度は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。見掛け密度は、キャリアの組成や表面構造によって異なるが、典型的には、2.0〜2.5g/cmが好ましい。
静電潜像現像用トナーを2成分現像剤として用いる場合、トナーの含有量は、2成分現像剤の質量に対して、1〜20質量%が好ましく、3〜15質量%が好ましい。2成分現像剤におけるトナーの含有量をかかる範囲とすることにより、形成画像における適度な画像濃度を維持し、トナー飛散の抑制によって画像形成装置内部の汚染や転写紙等へのトナーの付着を抑制できる。
〔静電潜像現像用トナーの製造方法〕
第1実施形態にかかる静電潜像現像用トナーの製造方法は、結着樹脂であるポリエステル樹脂中に、少なくとも、着色剤と、離型剤とが配合され、トナーの平均円形度と、トナーにおける、示差走査熱量計により測定される前記離型剤の融解時の吸熱量とを所定の値とすることができ、トナー表面への離型剤の染み出しを抑制できる限り、特に限定されない。
第1実施形態にかかる静電潜像現像用トナーの好適な製造方法としては、以下の(I)〜(IV)の工程を含む方法が挙げられる。以下、(I)〜(IV)の工程について順に説明する。
(I)結着樹脂、及び少なくとも着色剤と離型剤とを、混合した後に溶融混練する工程;
(II)工程(I)で得られた溶融混練物を、粗粉砕して体積平均粒子径15〜25μmの粗粉砕物を得る工程;
(III)前記粗粉砕物を熱処理する工程;及び
(IV)熱処理された前記粗粉砕物を、微粉砕した後に分級して、体積平均粒子径5〜10μmのトナーを得る工程。
工程(I)は、結着樹脂に、必須成分である着色剤、及び離型剤と、必要に応じ、電荷制御剤、及び磁性粉等とを、混合した後に、得られた混合物を溶融混練して溶融混練物を取得する工程である。結着樹脂と、着色剤、離型剤等の成分とを混合する方法は、これらの材料を均一に混合できる方法であれば、特に限定されない。好ましい混合方法の具体例としては、ヘンシェルミキサー等の混合機を用いる方法が挙げられる。得られた混合物を溶融混練する方法は、結着樹脂を溶融させた状態で、混合物を十分に混練できる方法であれば特に限定されない。混合物を溶融混練する好適な方法としては、一軸又は二軸押出機等の混練装置を用いる方法が挙げられる。工程(I)で得られる溶融混練物は、冷却された後、工程(II)に供される。
工程(II)は、工程(I)で得られた溶融混練物を粗粉砕して、体積平均粒子径15〜25μmの粗粉砕物を得る工程である。溶融混練物を粗粉砕する方法は、従来から粉砕法によるトナー製造方法における粗粉砕工程で採用される方法から適宜選択できる。好適な粗粉砕方法としては、例えばロートプレックス粉砕機等の機械式粉砕機を用いる方法が挙げられる。粗粉砕物の体積平均粒子径は、回転数等の機械式粉砕機の運転条件や、粗粉砕の処理時間を調整することにより調整できる。また、粗粉砕後には、粗粉砕物の体積平均粒子径や、粒子径分布を調整する目的で、分級処理を行ってもよい。粗粉砕物の体積平均粒子径は、例えば、コールターカウンターマルチサイザー3(ベックマンコールター社製)を用いて測定できる。
工程(II)で取得される粗粉砕物の体積平均粒子径が過大である場合、続く工程(III)で粗粉砕物を熱処理して球形化しても粗粉砕物の粒子が大きいために、工程(IV)での微粉砕において、熱処理されていない粗粉砕物と同様の過程で粉砕が進行しやすく、得られるトナーの平均円形度が小さくなりやすい。粗粉砕物の体積平均粒子径が過小である場合、工程(III)で熱処理された粗粉砕物の粒子が小さいために、工程(IV)での微粉際において、丸さを保った状態で粉砕が進行しやすく、得られるトナーの平均円形度が大きくなりやすい。
工程(III)は、工程(II)で得られた粗粉砕物を、熱処理して粗粉砕物を球形化する工程である。粗粉砕物をそのまま微粉砕する場合、いびつな形状の粗粉砕物が粉砕されていくため微粉砕された粉体も円形度の低い粒子になりやすい。一方、粗粉砕物を球形化する場合、粗粉砕物の粒子の表面が球状に近いため、微粉砕された粒子に丸みを持たせやすくなり、微粉砕により円形度の高い粒子を得やすい。熱処理により球形化された粗粉砕物を微粉砕する場合、丸さを保った状態で、粗粉砕物の粉砕が進行する。この場合、粉砕中の粒子間の摩擦が軽減され、粒子表面からの離型剤の脱落や、離型剤の軟化・溶融による、トナー表面への離型剤の染み出しが抑制される。
工程(III)における熱処理条件は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。典型的には、熱処理条件は、温度に関して200〜400℃が好ましく、250〜350℃がより好ましい。熱処理は、粗粉砕物の溶融や、粗粉砕物同士の融着を避けるため、通常、瞬間的に行われる。粗粉砕物の熱処理方法は、粗粉砕物を球形化できれば特に限定されない。好適な、熱処理方法としては、サフュージョン(日本ニューマチック工業株式会社製)等の熱処理装置を用いる方法が挙げられる。
工程(IV)は、工程(III)で得られた熱処理された粗粉砕物を微粉砕した後に分級して、体積平均粒子径5〜10μmのトナーを取得する工程である。熱処理された粗粉砕物を微粉砕する方法は、従来から粉砕法によるトナー製造方法における微粉砕工程で採用される方法から適宜選択できる。好適な微粉砕方法の具体例としては、ターボミル(ターボ工業株式会社製)等の機械式粉砕機を用いる方法が挙げられる。微粉砕された粉体を分級する方法は、トナーの体積平均粒子径を所望の径に調整できる限り特に限定されない。好適な分級方法の具体例としては、エルボージェット(日鉄鉱業株式会社製)等の気流式分級機を用いる方法が挙げられる。トナーの体積平均径は、粗粉砕物の体積平均径と同様にして測定することができる。
また、第1実施形態にかかるトナーの平均円形度は0.960〜0.975である。工程(III)において、粗粉砕物を熱処理することにより、微粉砕によってかかる平均円形度のトナーを得ることができる。また、トナーの平均円形度は、工程(IV)における微粉砕の条件により調整することができる。具体的には、1回の粉砕操作で微粉砕を行う場合、トナーの平均円形度は低めになり、微粉砕を2回以上の複数回に分けて行う場合、粉砕回数を増やすことによりトナーの平均円形度を高めることができる。
機械式粉砕機により、1回で所望の粒子径まで粉砕する場合、粉砕工程の初期では、トナー粒子の角や周囲が削られることによる粒子径変化が主に起こるが、粉砕工程の後期では、トナー粒子の角が取れているためトナー粒子の割れによる粒子径変化が主に生じ、平均円形度が低めのトナー粒子が得られると思われる。一方、機械式粉砕機により、複数回に分けて粉砕を行う場合、トナー粒子の割れによる平均円形度の低下を抑制しつつ、粒子の角が削れることによる粒子径変化の比率を高めることができ、平均円形度が比較的大きなトナー粒子が得られると考えられる。
トナーの平均円形度は、以下の方法に従って測定することができる。
<平均円形度測定方法>
フロー式粒子像分析装置(FPIA−3000(シスメックス株式会社製))を用いてトナーの円形度を測定する。23℃、60%RHの環境下において、円相当径0.60〜400μmの範囲の粒子について、粒子像と同じ投影面積を持つ円の円周の長さ(L)と、粒子投影像の外周の長さ(L)とを測定し、下式により円形度を求める。円相当径3〜10μmの粒子の円形度の総和を、円相当径3〜10μmの粒子の全粒子数で除した値を平均円形度とする。
(円形度算出式)円形度=L/L
トナーの平均円形度が過大である場合、トナーが真球に近づくため、トナーがクリーニング部や潜像担持部表面と接触した場合に転がりやすく、トナーのクリーニング部のすり抜けが生じやすい。トナーの平均円形度が過小である場合、トナーが長径方向に沿った面において、潜像担持部表面に強固に付着する場合があり、中抜けの画像不良が発生しやすい。
第1実施形態のトナーは、トナーの流動性、保存安定性、クリーニング性等を改良する目的で、その表面に外添剤が付着したものであってもよい。外添剤を含むトナーを製造する場合、上述の(I)〜(IV)の工程の後に、トナー表面に外添剤を付着させる工程を行う。
外添剤の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、従来からトナー用に使用されている外添剤から適宜選択できる。好適な外添剤の具体例としては、シリカや、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等の金属酸化物が挙げられる。これらの外添剤は、2種以上を組み合わせて使用できる。
外添剤の粒子径は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、典型的には0.01〜1.0μmが好ましい。
外添剤の体積固有の抵抗値は、外添剤の表面に酸化スズ及び酸化アンチモンからなる被覆層を形成し、被覆層の厚さや、酸化スズと酸化アンチモンとの比率を変えることにより調整できる。
外添剤のトナー母粒子に対する使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。外添剤の使用量は、典型的には、外添剤により処理される前のトナー母粒子100質量部に対して0.1〜10質量部が好ましく、0.2〜5質量部がより好ましい。かかる範囲の量で外添剤を使用する場合、流動性、保存安定性、クリーニング性に優れるトナーを得やすい。
外添剤をトナー粒子の表面に付着させる方法は特に限定されず、例えば、ヘンシェルミキサーやナウターミキサー等の混合機により、外添剤がトナー粒子に埋め込まれないように混合条件を調整して、トナー粒子と外添剤とを混合する方法が挙げられる。
〔画像形成方法〕
以上説明した第1実施形態にかかる静電潜像現像用トナーを用いて画像を形成する際に使用する画像形成装置は、良好な画像を形成できる限り特に限定されず、従来から使用される画像形成装置から適宜選択される。第1実施形態の静電潜像現像用トナーにより画像を形成する際に用いる画像形成装置は、後述するような、複数色のトナーを用いるタンデム方式のカラー画像形成装置が好ましい。ここでは、タンデム方式のカラー画像形成装置による画像形成方法について説明する。
なお、以下に説明するタンデム方式のカラー画像形成装置は、各潜像担持部の表面上にそれぞれ異なった各色のトナーによるトナー像を形成させるために、所定方向に並設された、複数の潜像担持部と、各潜像担持部に対向して配置され、表面にトナーを担持して搬送し、搬送されたトナーを、各潜像担持部の表面にそれぞれ供給するローラー(現像スリーブ)を備えた複数の現像部とを備え、現像部において、第1実施形態の静電潜像現像用トナーを潜像担持部に供給する。
図2は、好適な画像形成装置の構成を示す概略図である。ここでは、画像形成装置として、カラープリンター1を例に挙げて説明する。
このカラープリンター1は、図2に示すように、箱型の機器本体1aを有している。この機器本体1a内には、用紙Pを給紙する給紙部2と、この給紙部2から給紙された用紙Pを搬送しながら当該用紙Pに画像データ等に基づくトナー像を転写する画像形成部3と、この画像形成部3で用紙P上に転写された未定着トナー像を用紙Pに定着する定着処理を施す定着部4とが設けられている。さらに、機器本体1aの上面には、定着部4で定着処理の施された用紙Pが排紙される排紙部5が設けられている。
給紙部2は、給紙カセット121、ピックアップローラー122、給紙ローラー123,124,125、及びレジストローラー対126を備えている。給紙カセット121は、機器本体1aから挿脱可能に設けられ、用紙Pを貯留する。ピックアップローラー122は、給紙カセット121の図2に示す左上方位置に設けられ、給紙カセット121に貯留されている用紙Pを1枚ずつ取り出す。給紙ローラー123,124,125は、ピックアップローラー122によって取り出された用紙Pを用紙搬送路に送り出す。レジストローラー126は、給紙ローラー123,124,125によって用紙搬送路に送り出された用紙Pを一時待機させた後、所定のタイミングで画像形成部3に供給する。
また、給紙部2は、機器本体1aの図2に示す左側面に取り付けられる不図示の手差しトレイとピックアップローラー127とをさらに備えている。このピックアップローラー127は、手差しトレイに載置された用紙Pを取り出す。ピックアップローラー127によって取り出された用紙Pは、給紙ローラー123,125によって用紙搬送路に送り出され、レジストローラー126によって、所定のタイミングで画像形成部3に供給される。
画像形成部3は、画像形成ユニット7と、この画像形成ユニット7によってその表面(接触面)にコンピューター等から電送された画像データに基づくトナー像が1次転写される中間転写ベルト31と、この中間転写ベルト31上のトナー像を給紙カセット121から送り込まれた用紙Pに2次転写させるための2次転写ローラー32とを備えている。
画像形成ユニット7は、中間転写ベルト31の移動方向の上流側(図2では右側)から下流側に向けて順次配設されたブラック用ユニット7Kと、イエロー用ユニット7Yと、シアン用ユニット7Cと、マゼンタ用ユニット7Mとを備えている。各ユニット7K,7Y,7C及び7Mは、それぞれの中央位置に像担持体であるドラム型の潜像担持部37が矢符(時計回り)方向に回転可能に配置されている。そして、各潜像担持部37の周囲には、帯電部39、露光部38、現像部71、クリーニング部8、及び除電器等が、潜像担持部37の回転方向上流側から順に各々配置されている。
帯電部39は、矢符方向に回転されている潜像担持部37の周面を均一に帯電させる。帯電部39は、潜像担持部37の周面を均一に帯電させることができれば特に制限されず、非接触方式であっても接触方式であってもよい。帯電部の具体例としては、コロナ帯電装置、帯電ローラー、帯電ブラシ等が挙げられる。
潜像担持部37の表面電位(帯電電位)は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。現像性と潜像担持部37の帯電能力とのバランスを考慮すると、表面電位は+200〜+500Vであるのが好ましく、+200V〜+300Vであるのがより好ましい。表面電位が低すぎる場合、現像電界が不十分となり、形成画像の画像濃度を確保し難くなる。表面電位が高すぎる場合、感光層の膜厚によっては帯電能力が不足、潜像担持部37の絶縁破壊、オゾンの発生量が増加する等の問題が起こりやすくなる。
潜像担持部37としては、アモルファスシリコン等の無機感光体;導電性基体上に電荷発生剤、電荷輸送剤、結着樹脂等を含有する単層又は積層の感光層が形成された有機感光体等が挙げられる。
露光部38は、いわゆるレーザー走査ユニットであり、帯電部39によって均一に帯電された潜像担持部37の周面に、上位装置であるパーソナルコンピューター(PC)から入力された画像データに基づくレーザー光を照射し、潜像担持部37上に画像データに基づく静電潜像を形成する。現像部71は、静電潜像が形成された潜像担持部37の周面に第1実施形態のトナーを供給し、画像データに基づくトナー像を形成させる。第1実施形態のトナーを用いることにより、現像部71が備える現像ローラー(スリーブ)へのトナーの付着を抑制することができ、良好な画像を形成することができる。現像部71の構成は、現像剤の種類、及び現像方式によって適宜変更される。現像部71により潜像担持部37の周面に形成されたトナー像は、中間転写ベルト31に1次転写される。
中間転写ベルト31へのトナー像の1次転写が終了した後、潜像担持部37の周面に残留しているトナーをクリーニング部8により清掃する。クリーニング部8は、弾性ブレード81を備え、弾性ブレード81により潜像担持部37の周面に残留するトナーを除去する。弾性ブレードはウレタン系ゴムやエチレン−プロピレン系ゴム等により構成される。第1実施形態にかかるトナーを用いる場合、トナーのクリーニング部8のすり抜けが生じ難く、画像不良の発生を抑制できる。
除電器は、1次転写が終了した後、潜像担持部37の周面を除電する。クリーニング部8及び除電器によって清浄化処理された潜像担持部37の周面は、新たな帯電処理のために帯電部39へ向かい、新たな帯電処理が行われる。
中間転写ベルト31は、無端状のベルト状回転体であって、表面(接触面)側が各潜像担持部37の周面にそれぞれ当接するように駆動ローラー33、従動ローラー34、バックアップローラー35、及び1次転写ローラー36等の複数のローラーに架け渡されている。また、中間転写ベルト31は、各潜像担持部37と対向配置された1次転写ローラー36によって潜像担持部37に押圧された状態で、複数のローラーによって無端回転するように構成されている。駆動ローラー33は、不図示のステッピングモータ等の駆動源によって回転駆動し、中間転写ベルト31に無端回転させるための駆動力を与える。従動ローラー34、バックアップローラー35、及び1次転写ローラー36は、回転自在に設けられ、駆動ローラー33による中間転写ベルト31の無端回転に伴って従動回転する。これらのローラー34,35,36は、駆動ローラー33の主動回転に応じて中間転写ベルト31を介して従動回転すると共に、中間転写ベルト31を支持する。
1次転写ローラー36は、1次転写バイアスを中間転写ベルト31に印加する。そうすることによって、各潜像担持部37上に形成されたトナー像は、各潜像担持部37と1次転写ローラー36との間で、駆動ローラー33の駆動により矢符(反時計回り)方向に周回する中間転写ベルト31に重ね塗り状態で順次転写(1次転写)される。
2次転写ローラー32は、2次転写バイアスを用紙Pに印加する。そうすることによって、中間転写ベルト31上に1次転写されたトナー像は、2次転写ローラー32とバックアップローラー35との間で用紙Pに2次転写され、これによって、用紙Pにカラーの転写画像(未定着トナー像)が転写される。
定着部4は、画像形成部3で用紙Pに転写された転写画像に定着処理を施すものであり、通電発熱体により加熱される加熱ローラー41と、この加熱ローラー41に対向配置され、周面が加熱ローラー41の周面に押圧当接される加圧ローラー42とを備えている。
そして、画像形成部3で2次転写ローラー32により用紙Pに転写された転写画像は、当該用紙Pが加熱ローラー41と加圧ローラー42との間を通過する際の加熱及び加圧からなる定着処理で用紙Pに定着される。そして、定着処理の施された用紙Pは、排紙部5へ排紙されるようになっている。また、本実施形態のカラープリンター1では、定着部4と排紙部5との間の適所に複数の搬送ローラー対6が配設されている。
排紙部5は、カラープリンター1の機器本体1aの頂部が凹没されることによって形成され、この凹没した凹部の底部に排紙された用紙Pを受ける排紙トレイ51が形成されている。
カラープリンター1は、以上のような画像形成動作によって、用紙P上に画像形成を行う。そして、第1実施形態のトナーを用いて画像を形成することにおり、定着ローラーと画像が形成された被記録媒体との分離を良好に行い、形成画像における、現像スリーブへのトナーの付着による画像不良、クリーニング部でのトナーのすり抜けによる画像不良や、及び中抜け等の画像不良を抑制できる。
[第2実施形態]
第2実施形態は、第1実施形態の静電潜像現像用トナーからなるトナーセットであって、着色剤が黒色、及び黒色の他の3種の色相の着色剤であって、それぞれ異なる色相である4種の静電潜像現像用トナーを含むトナーセットである。また、第2実施形態にかかるトナーは、トナーセットに含まれる4種のトナーにおける、示差走査熱量計により測定される離型剤の融解時の吸熱量の最大値と最小値との差が0.5J/g以下である。
第2実施形態にかかるトナーセットに含まる各トナーの色相は、黒色トナーを含み、良好な色相のカラー画像を形成できることができれば特に限定されない。典型的には、第2実施形態にかかるトナーセットは、黒色、イエロー、シアン、マゼンタの4色のトナーから構成される。
第1実施形態のトナーであれば、結着樹脂中に所定量の離型剤を高充填しやすい。また、第1実施形態のトナーである、黒色、及び黒色の他の3種の色相の着色剤を含む4色のトナーによりトナーセットを構成する場合、各色のトナーにおける結着樹脂中の離型剤の含有量のバラツキが小さくなる。このため、第2実施形態にかかるトナーセットでは、トナーセットに含まれる4種のトナーにおける、示差走査熱量計により測定される離型剤の融解時の吸熱量の最大値と最小値との差が0.5J/g以下となる。
よって、第2実施形態のトナーセットによれば、4色のトナーにより形成された画像を同一の温度で定着させる場合の、各色のトナー間での定着後の画像の光沢(グロス)のバラツキが少なく、グロスむらによる形成画像の画質低下が起こりにくい。
[第3実施形態]
第3実施形態は、結着樹脂中に、少なくとも、着色剤、及び離型剤を含む静電潜像現像用トナーの製造方法であって、結着樹脂がポリエステル樹脂であり、以下の(I)〜(IV)の工程を含む静電潜像現像用トナーの製造方法に関する。第3実施形態にかかるトナーの製造方法における、工程(I)〜(IV)は、第1実施形態のトナーの製造方法における工程(I)〜(IV)と同一の工程である。
第3実施形態にかかる静電潜像現像用トナーの製造方法によれば、トナー表面への離型剤の染み出しを抑制しつつ、結着樹脂中に高充填できる。また、第3実施形態にかかる静電潜像現像用トナーの製造方法によれば、中抜け等の画像不良が生じにくく、且つ、クリーニング部でのトナーのすり抜けの問題が生じにくい、好適な平均円形度を有するトナーを得ることができる。なお、平均円形度の好適な範囲は典型的には、0.960〜0.975である。
このため、第3実施形態にかかる静電潜像現像用トナーの製造方法によれば、定着ローラーと画像が形成された被記録媒体との離型性に優れ、形成画像における、現像スリーブへのトナーの付着による画像不良や、クリーニング部でのトナーのすり抜けによる画像不良や、中抜け等画像不良を抑制できる、結着樹脂としてポリエステル樹脂を用いた小粒子径の静電潜像現像用トナーを製造することができる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。
〔調製例1〕
(ポリエステル樹脂の製造)
実施例、及び比較例において結着樹脂として用いるポリエステル樹脂を以下の方法に従い製造した。
ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物1960g、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物780g、ドデセニル無水コハク酸257g、テレフタル酸770g、及び酸化ジブチル錫4gを反応容器に仕込み、窒素雰囲気下に、撹拌しながら235℃まで昇温した。次いで、同温度にて8時間反応を行った後、反応容器内を8.3kPaに減圧して1時間反応を行った。その後、反応混合物を180℃に冷却し、所望の酸価となるようにトリメリット酸無水物を反応容器に添加した。次いで、10℃/時間の速度で反応混合物を210℃まで昇温し同温度で反応を行った。反応終了後、反応容器の内容物を取り出し、冷却してポリエステル樹脂を得た。
〔実施例1〕
調製例1で得たポリエステル樹脂100質量部、カルナバワックス(カルナバワックス1号(加藤洋行株式会社製))7質量部、電荷制御剤(P−51(オリヱント化学工業株式会社製))2質量部、及びカーボンブラック(MA100(三菱化学株式会社製))5質量部を、混合機により混合した後に、混合物を2軸押出機により溶融混練して混練物を得た。混練物を、粉砕機(ロートプレックス(株式会社東亜機械製作所製))により粗粉砕して体積平均粒子径(D50)20μmの粗粉砕物を得た。得られた粗粉砕物を、熱処理装置(サフュージョン(日本ニューマチック工業株式会社製))により、処理量15kg/h、350℃にて熱処理して、粗粉砕物に球形化処理を施した。球形化処理された粗粉砕物を、粉砕機(ターボミル(ターボ工業株式会社製))により3段階に分けて徐々に粉砕した後、気流式分級機(エルボージェット(日鉄鉱業株式会社製))により分級を行い、体積平均粒子径(D50)が6.8μmのトナー母粒子を得た。
得られたトナー母粒子に100質量部に対して、疎水性シリカ(REA200(日本アエロジル株式会社製))1.8質量部、及び酸化チタン(EC−100(チタン工業株式会社製))1.0質量部を加え、ヘンシェルミキサー(三井鉱山株式会社製)により、回転周速度30m/秒の条件で5分間、撹拌・混合して、ブラックトナーを得た。
カーボンブラックを、イエロー顔料(C.Iピグメントイエロー180)、シアン顔料(C.Iピグメントブルー15−3)、又はマゼンタ顔料(C.Iピグメントレッド238)に変えることの他は、ブラックトナーと同様にして、イエロートナー、シアントナー、マゼンタトナーを得た。なお、イエロートナー母粒子、シアントナー母粒子、及びマゼンタトナー母粒子の体積平均粒子径(D50)は、何れも6.8μmであった。
ブラックトナー、イエロートナー、シアントナー、及びマゼンタトナーの平均円形度、及び、離型剤由来の吸熱ピークの吸熱量を、以下の方法により測定した。ブラックトナー、イエロートナー、シアントナー、及びマゼンタトナーの平均円形度、及び離型剤由来の吸熱ピークの吸熱量を表1に記す。また、ブラックトナー、イエロートナー、シアントナー、及びマゼンタトナーの平均円形度、及び、4色のトナーにおける離型剤由来の吸熱ピークの吸熱量のうちの、最大値と最小値との差を表1に記す。なお、平均円形度の測定と、吸熱量の測定は、以下の方法に従って行った。
<平均円形度測定方法>
フロー式粒子像分析装置(FPIA−3000(シスメックス株式会社製))を用いてトナーの円形度を測定した。23℃、60%RHの環境下において、円相当径0.60〜400μmの範囲の粒子について、粒子像と同じ投影面積を持つ円の円周の長さ(L)と、粒子投影像の外周の長さ(L)とを測定し、下式により円形度を求めた。円相当径3〜10μmの粒子の円形度の総和を、円相当径3〜10μmの粒子の全粒子数で除した値を平均円形度とした。
(円形度算出式)円形度=L/L
<DSC測定方法>
示差走査熱量計(DSC6200(セイコーインスツルメンツ株式会社製))を用いてサンプル(トナー)を170℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で30℃までサンプルを一旦冷却し、その後、再びサンプルを昇温速度10℃/分で170℃まで加熱して、再加熱時の測定によりDSC曲線を得た。サンプル量は10mgとした。得られたDSC曲線から、吸熱開始温度(TB)、及び吸熱終了温度(TE)を求めた。具体的には、トナーのガラス転移点(Tg、点A)が観測された後のDSC曲線のベースラインと、最初の吸熱ピークにおける下降曲線の最も低温側の変曲点における接線との交点の温度をTBとした。また、2つ目の吸熱ピークの後のDSC曲線のベースラインと、2つ目の吸熱ピークにおける上昇曲線の最も高温側の変曲点における接線との交点の温度をTEとした。DSC曲線上の、温度TB相当する点を点Bとし、温度TEに相当する点を点Eとし、DSC曲線上の、点Bと点Eとを結ぶ直線と、DSC曲線とにより囲まれる部分の面積よりトナーの吸熱量(J/g)を求めた。
Figure 0005629658
また、実施例1で調製した4色のトナーについて、下記の方法に従い、画像品質(スリーブ付着)、転写性(中抜け)、定着分離性、クリーニング性、離型剤の染み出し、グロス、及びグロスむらの評価を行った。実施例1のトナーの評価結果を表2に記す。
<画像品質評価(スリーブ付着評価)>
プリンター(FS−C5016(京セラミタ株式会社製))用の現像剤に使用されているキャリアと実施例1のトナーとを、キャリア100質量部に対してトナー10質量部の割合で混合して2成分現像剤を得た。画像品質の評価には、プリンター(FS−C5016(京セラミタ株式会社製))を用いた。2成分現像剤を現像器に充填し、また、トナーをプリンターのトナーコンテナに充填し、23℃60%RHの環境下において、印字速度16枚/分、印字率5%の条件にて5000枚連続して印字し、5000枚印字後に画像評価パターンを出力した。5000枚印字後のベタ画像、50%ハーフ画像、及び現像スリーブの状態を目視により観察し、以下の基準に従って画像品質を評価した。スリーブ付着の評価を4色のトナーについてそれぞれ単色で実施し、各色のトナーで同一の評価結果が得られた。なお、評価5を合格とした。
5:現像スリーブ上に付着物は見られず、ベタ画像、50%ハーフ画像共に良好である。
4:現像スリーブ上に少量の付着物が見られるが、ベタ画像、50%ハーフ画像共に良好である。
3:現像スリーブ上に多量の付着物が見られ、ベタ画像、50%ハーフ画像に現像スリーブの周長のピッチで画像欠損(スリーブ層ムラ)がわずかに発生している。
2:現像スリーブ上に多量の付着物が見られ、ベタ画像、50%ハーフ画像に現像スリーブの周長のピッチで画像欠損(スリーブ層ムラ)が多数発生している。また、5000枚の耐久印刷の途中から現像スリーブ上の付着物の影響による画像不良が発生し始める。
1:現像スリーブ上に多量の付着物が見られ、ベタ画像、50%ハーフ画像に現像スリーブの周長のピッチで画像欠損(スリーブ層ムラ)が多数発生している。また、初期画像形成時から現像スリーブ上の付着物の影響による画像不良が確認される。
<転写性評価(中抜け評価)>
プリンター(FS−C5016(京セラミタ株式会社製))を用いて評価した。画像品質評価で用いた2成分現像剤を現像器に充填し、細線画像を形成した。細線画像上の中抜けの有無をルーペにより観察して、下記の基準により転写性を評価した。転写性評価を4色のトナーについてそれぞれ単色で実施し、各色のトナーで同一の評価結果が得られた。なお、評価5を合格とした。
5:中抜け未発生。
4:極わずかに中抜けが発生。
3:少量の中抜けが発生。
2:局所的に多くの中抜けが発生。
1:広範囲にわたり顕著に中抜けが発生。
<定着分離性評価(分離可能トナー載り量評価)>
プリンター(FS−C5016(京セラミタ株式会社製))の定着装置(定着部)に、定着評価用に、外部駆動装置、及び定着温度制御装置を取り付けた定着試験機を用いた。プリンター(FS−C5016(京セラミタ株式会社製))にて、先端マージン3mmのベタの未定着画像を得、得られた未定着画像を、紙上のトナー載り量をはかりながら、定着温度180℃、線速97mm/秒で定着試験機を通した。0.1mg/cm刻みで、トナー載り量を変化させ、紙が定着ローラーに巻きつかないトナー載り量(mg/cm)を分離可能トナー載り量とした。下記の基準により定着分離性を評価した。定着分離性評価を4色のトナーについてそれぞれ単色で実施し、各色のトナーで同一の評価結果が得られた。なお、評価は○を合格とした。
○:トナー載り量2.0mg/cm以上。
△:トナー載り量1.5mg/cm異常2.0mg/cm未満。
×:トナー載り量1.5mg/cm未満。
<クリーニング性評価>
プリンター(FS−C5016(京セラミタ株式会社製))を用いて評価した。ベタ画像を形成した直後に白紙画像を形成し、トナーすり抜けの状態を目視により観察して評価した。クリーニング性評価を4色のトナーについてそれぞれ単色で実施し、各色のトナーで同一の評価結果が得られた。なお、評価3を合格とした。
3:白紙画像中にトナーすり抜けによる黒筋は確認されない。
2:白紙画像中にトナーすり抜けによる黒筋がわずかに確認される。
1:白紙画像中に多量のトナーすり抜けによる黒筋が確認される。
<離型剤の染み出しの評価>
走査型電子顕微鏡により倍率3000倍で撮影された画像に含まれる、100個以上、好ましくは100〜150個のトナー粒子について、倍率10000倍で撮影された画像により、目視によりトナー表面への離型剤の染み出しを確認した。トナー表面に離型剤が染み出している場合、トナー表面に突起状の離型剤のブロックが観察される。なお、電子顕微鏡画像において、トナー表面の、外添剤と、トナー表面に染み出した離型剤とは、形状により容易に識別可能である。観察対象のトナー粒子の個数に対する、トナー表面に離型剤が染み出したトナー粒子の個数%が、10個数%以下である場合を離型剤の染み出し無しとし、10個数%超である場合を離型剤の染み出し有りとした。
<グロス、及びグロスむらの評価>
プリンター(FS−C5016(京セラミタ株式会社製))を用いて評価した。被記録媒体として、A4サイズの用紙(C2紙、70g紙(富士ゼロックス株式会社製))を用い、短辺を搬送方向とした。3cm×3cmのサイズの3つのベタ画像を、ベタ画像の中心が用紙の短辺の中点を結ぶ線上に位置し、中央のベタ画像の中心が用紙の中心上に位置し、ベタ画像の中心間の間隔が10cmとなるように形成し、これを評価用画像とした。ベタ画像を形成する際のトナー量は0.7mg/cmとした。ベタ画像1個につき3箇所のグロスを測定し、評価用画像5枚におけるベタ画像のグロスの平均値を、各トナーのグロスの値とした。グロスの測定は、グロスメーター(PG−1M(日本電色工業株式会社製))を用い、JIS−Z8741に記載の60度鏡面光沢度測定法に準じて、入射角60度において測定した。
単色の3つのベタ画像を横に並べ、且つ各色を縦に並べた画像を出力して、グロスむらを目視により評価した。グロスむらの評価基準は以下の通りである。評価5を合格とした。
5:グロスむらがない。
4:グロスむらが一部に存在する。
3:グロスむらが多く存在し、光沢部と非光沢部とが分かり、画像がやや見えにくい。
2:グロスむらが多く存在し、光沢部と非光沢部とが明確に判別でき、画像が見えにくい。
1:グロスむらが多く存在し、光沢部と非光沢部とが明確に判別でき、画像が非常に見えにくい。
〔実施例2〕
球形化処理された粗粉砕物の粉砕の粉砕回数を3段階から1段階に変えることの他は、実施例1と同様にして、ブラックトナー、イエロートナー、シアントナー、及びマゼンタトナーを調製した。実施例2で得られたトナーの体積平均粒子径は、何れも6.8μmであった。実施例2のトナーの平均円形度、トナーにおける離型剤の融解時の吸熱量、及び4色のトナーの離型剤の融解時の吸熱量のうちの最大値と最小値との差を表1に記す。
また、実施例2のトナーについて、実施例1と同様にして、画像品質(スリーブ付着)、転写性(中抜け)、定着分離性、クリーニング性、グロス、及びグロスむらの評価を行った。なお、画像品質(スリーブ付着)、転写性(中抜け)、定着分離性、及びクリーニング性の評価結果について、各色トナーの評価結果は同一であった。実施例2のトナーの評価結果を表2に記す。
〔実施例3〕
カルナバワックスの使用量を7質量部から5質量部に変えることの他は、実施例1と同様にして、ブラックトナー、イエロートナー、シアントナー、及びマゼンタトナーを調製した。実施例3で得られたトナーの体積平均粒子径は、何れも6.8μmであった。実施例3のトナーの平均円形度、トナーにおける離型剤の融解時の吸熱量、及び4色のトナーの離型剤の融解時の吸熱量のうちの最大値と最小値との差を表1に記す。
また、実施例3のトナーについて、実施例1と同様にして、画像品質(スリーブ付着)、転写性(中抜け)、定着分離性、クリーニング性、グロス、及びグロスむらの評価を行った。なお、画像品質(スリーブ付着)、転写性(中抜け)、定着分離性、及びクリーニング性の評価結果について、各色トナーの評価結果は同一であった。実施例3のトナーの評価結果を表2に記す。
〔実施例4〕
カルナバワックスの使用量を7質量部から9質量部に変えることの他は、実施例1と同様にして、ブラックトナー、イエロートナー、シアントナー、及びマゼンタトナーを調製した。実施例4で得られたトナーの体積平均粒子径は、何れも6.8μmであった。実施例4のトナーの平均円形度、トナーにおける離型剤の融解時の吸熱量、及び4色のトナーの離型剤の融解時の吸熱量のうちの最大値と最小値との差を表1に記す。
また、実施例4のトナーについて、実施例1と同様にして、画像品質(スリーブ付着)、転写性(中抜け)、定着分離性、クリーニング性、グロス、及びグロスむらの評価を行った。なお、画像品質(スリーブ付着)、転写性(中抜け)、定着分離性、及びクリーニング性の評価結果について、各色トナーの評価結果は同一であった。実施例4のトナーの評価結果を表2に記す。
〔比較例1〕
粗粉砕品の熱処理を行わないことの他は、実施例1と同様にして、ブラックトナー、イエロートナー、シアントナー、及びマゼンタトナーを調製した。比較例1で得られたトナーの体積平均粒子径は、何れも6.8μmであった。比較例1のトナーの平均円形度、トナーにおける離型剤の融解時の吸熱量、及び4色のトナーの離型剤の融解時の吸熱量のうちの最大値と最小値との差を表1に記す。
また、比較例1のトナーについて、実施例1と同様にして、画像品質(スリーブ付着)、転写性(中抜け)、定着分離性、クリーニング性、グロス、及びグロスむらの評価を行った。なお、画像品質(スリーブ付着)、転写性(中抜け)、定着分離性、及びクリーニング性の評価結果について、各色トナーの評価結果は同一であった。比較例1のトナーの評価結果を表2に記す。
〔比較例2〕
粗粉砕品の熱処理を行わないことの他は、実施例2と同様にして、ブラックトナー、イエロートナー、シアントナー、及びマゼンタトナーを調製した。比較例2で得られたトナーの体積平均粒子径は、何れも6.8μmであった。比較例2のトナーの平均円形度、トナーにおける離型剤の融解時の吸熱量、及び4色のトナーの離型剤の融解時の吸熱量のうちの最大値と最小値との差を表1に記す。
また、比較例2のトナーについて、実施例1と同様にして、画像品質(スリーブ付着)、転写性(中抜け)、定着分離性、クリーニング性、グロス、及びグロスむらの評価を行った。なお、画像品質(スリーブ付着)、転写性(中抜け)、定着分離性、及びクリーニング性の評価結果について、各色トナーの評価結果は同一であった。比較例2のトナーの評価結果を表2に記す。
〔比較例3〕
カルナバワックスの使用量を7質量部から4質量部に変えることの他は、実施例1と同様にして、ブラックトナー、イエロートナー、シアントナー、及びマゼンタトナーを調製した。比較例3で得られたトナーの体積平均粒子径は、何れも6.8μmであった。比較例3のトナーの平均円形度、トナーにおける離型剤の融解時の吸熱量、及び4色のトナーの離型剤の融解時の吸熱量のうちの最大値と最小値との差を表1に記す。
また、比較例3のトナーについて、実施例1と同様にして、画像品質(スリーブ付着)、転写性(中抜け)、定着分離性、クリーニング性、グロス、及びグロスむらの評価を行った。なお、画像品質(スリーブ付着)、転写性(中抜け)、定着分離性、及びクリーニング性の評価結果について、各色トナーの評価結果は同一であった。比較例3のトナーの評価結果を表2に記す。
〔比較例4〕
カルナバワックスの使用量を7質量部から10質量部に変えることの他は、実施例1と同様にして、ブラックトナー、イエロートナー、シアントナー、及びマゼンタトナーを調製した。比較例4で得られたトナーの体積平均粒子径は、何れも6.8μmであった。比較例4のトナーの平均円形度、トナーにおける離型剤の融解時の吸熱量、及び4色のトナーの離型剤の融解時の吸熱量のうちの最大値と最小値との差を表1に記す。
また、比較例4のトナーについて、実施例1と同様にして、画像品質(スリーブ付着)、転写性(中抜け)、定着分離性、クリーニング性、グロス、及びグロスむらの評価を行った。なお、画像品質(スリーブ付着)、転写性(中抜け)、定着分離性、及びクリーニング性の評価結果について、各色トナーの評価結果は同一であった。比較例4のトナーの評価結果を表2に記す。
〔比較例5〕
粗粉砕物の熱処理を行わないこと、及び微粉砕物を熱処理装置(サフュージョン(日本ニューマチック工業株式会社製))により、処理量15kg/h、350℃にて熱処理することの他は、実施例1と同様にして、ブラックトナー、イエロートナー、シアントナー、及びマゼンタトナーを調製した。比較例5で得られたトナーの体積平均粒子径は、何れも6.8μmであった。比較例5のトナーの平均円形度、トナーにおける離型剤の融解時の吸熱量、及び4色のトナーの離型剤の融解時の吸熱量のうちの最大値と最小値との差を表1に記す。
また、比較例5のトナーについて、実施例1と同様にして、画像品質(スリーブ付着)、転写性(中抜け)、定着分離性、クリーニング性、グロス、及びグロスむらの評価を行った。なお、画像品質(スリーブ付着)、転写性(中抜け)、定着分離性、及びクリーニング性の評価結果について、各色トナーの評価結果は同一であった。比較例5のトナーの評価結果を表2に記す。
〔比較例6〕
カルナバワックスの使用量を、ブラックトナー、イエロートナー、シアントナー、マゼンタトナーについて、それぞれ、5質量部、6質量部、7質量部、及び8質量部とすることの他は、実施例1と同様にして、ブラックトナー、イエロートナー、シアントナー、及びマゼンタトナーを調製した。比較例6で得られたトナーの体積平均粒子径は、何れも6.8μmであった。比較例6のトナーの平均円形度、トナーにおける離型剤の融解時の吸熱量、及び4色のトナーの離型剤の融解時の吸熱量のうちの最大値と最小値との差を表1に記す。
また、比較例6のトナーについて、実施例1と同様にして、画像品質(スリーブ付着)、転写性(中抜け)、定着分離性、クリーニング性、グロス、及びグロスむらの評価を行った。なお、画像品質(スリーブ付着)、転写性(中抜け)、定着分離性、及びクリーニング性の評価結果について、各色トナーの評価結果は同一であった。比較例4のトナーの評価結果を表2に記す。
Figure 0005629658
実施例1〜4のトナーは、何れも、トナーにおける離型剤の融解時の吸熱量が10.0〜15.0J/gであり、且つ、SEM観察によりトナー表面への離型剤の染み出しが観察されないものである。このため、実施例1〜4のトナーは、トナーの現像スリーブへの付着による画像不良を抑制でき、良好な定着分離性を備える。
また、実施例1〜4のトナーは、0.960〜0.975の範囲の平均円形度を有するため、潜像担持部表面から剥離しやすく、且つ、クリーニング部におけるすり抜けの問題も生じにくい。このため、実施例1〜4のトナーは、良好な転写性とクリーニング性とを備える。
さらに、実施例1〜4のトナーでは、多色のトナーを調製しても結着樹脂中の離型剤の含有量がバラツキにくい。このため、実施例1〜4で得た、ブラックトナー、イエロートナー、シアントナー、及びマゼンタトナーをトナーセットとする場合、形成される画像にグロスむらが生じにくい。
比較例1、及び2のトナーは、それぞれ、粗粉砕物の熱処理を行わない他は、実施例1、及び実施例2と同様にして調製されたトナーである。よって、比較例1、及び2のトナーは、平均円形度が0.960未満であり、わずかに離型剤の染み出しが観察されている。このため、比較例1、及び2のトナーは、転写性にやや劣り、トナーの現像スリーブへの付着による画像不良がやや生じやすい。また、比較例1、及び2のトナーは、トナー表面への離型剤の染み出しが生じやすいため、ブラックトナー、イエロートナー、シアントナー、及びマゼンタトナーにおける、離型剤の融解時の吸熱量の最大値と最小値との差が0.5J/gを超えている。このため、比較例1、及び2で得たブラックトナー、イエロートナー、シアントナー、及びマゼンタトナーを用いる場合、わずかにグロスむらが生じている。
比較例3のトナーは、4質量部と実施例より少量のカルナバワックスを使用して調製したものであるため、トナーにおける離型剤の融解時の吸熱量が10.0J/g未満である。よって、
比較例3のトナーは、定着分離性に劣るものとなった。
比較例4のトナーは、10質量部と多量のカルナバワックスを使用して調製したものであるため、トナーにおける離型剤の融解時の吸熱量が15.0J/gを超えている。よって、比較例4のトナーは、実施例1と同様の工程で製造されているにもかかわらず、トナー表面への離型剤の染み出しが生じやすい。このため、比較例4のトナーは、現像スリーブへのトナー付着に伴う画像不良が生じやすい。
比較例5のトナーは、粗粉砕物を熱処理せず、微粉砕物を熱処理して製造したものである。このため、比較例5のトナーは、平均円形度が0.975を超えており、平均円形度が高すぎるためにクリーニングブレードをすり抜けやすく、クリーニング性の結果が劣っている。また、比較例5のトナーは、比表面積の大きな微粉砕物に対して熱処理を行っているため、トナー表面への離型剤の染み出しが生じている。このため、比較例5のトナーは、現像スリーブへのトナーの付着による画像不良がやや生じやすい。
比較例6では、それぞれ、離型剤の含有量が大きく異なる、ブラックトナー、イエロートナー、シアントナー、及びマゼンタトナーを調製している。このため、比較例6で得た4色のトナーをトナーセットとして用いる場合、著しいグロスむらが生じることが分かる。
1 カラープリンター
1a 機器本体
2 給紙部
3 画像形成部
37 潜像担持部
38 露光部
39 帯電部
4 定着部
6 搬送ローラー
5 排紙部
7 画像形成ユニット
71 現像部
8 クリーニング部
81 弾性ブレード
P 用紙

Claims (3)

  1. 結着樹脂中に、少なくとも、着色剤、及び離型剤を含む静電潜像現像用トナーであって、
    前記結着樹脂がポリエステル樹脂であり、
    前記静電潜像現像用トナーの平均円形度が0.960〜0.975であり、
    前記静電潜像現像用トナーにおける、示差走査熱量計により測定される前記離型剤の融解時の吸熱量が10.0〜15.0J/gであり、
    走査型電子顕微鏡により倍率3000倍で撮影された画像に含まれる100個以上の前記静電潜像現像用トナーの粒子について、倍率10000倍で撮影された画像を観察して確認される、前記離型剤が表面に染み出した前記静電潜像現像用トナーの粒子数の、観察対象の前記静電潜像現像用トナーの粒子数に対する比率が、10個数%以下であり、以下の工程(I)〜(IV)を含む方法により製造される、静電潜像現像用トナー
    (I)結着樹脂、及び少なくとも着色剤と離型剤とを、混合した後に溶融混練する工程;
    (II)工程(I)で得られた溶融混練物を、粗粉砕して体積平均粒子径15〜25μmの粗粉砕物を得る工程;
    (III)前記粗粉砕物を熱処理する工程;及び
    (IV)熱処理された前記粗粉砕物を、微粉砕した後に分級して、体積平均粒子径5〜10μmの前記静電潜像現像用トナーを得る工程。
  2. 前記着色剤が黒色、及び黒色の他の3種の色相の着色剤であって、それぞれ異なる色相である4種の請求項1記載の静電潜像現像用トナーを含むトナーセットであり、
    前記トナーセットに含まれる4種の前記静電潜像現像用トナーにおける、示差走査熱量計により測定される前記離型剤の融解時の吸熱量の最大値と最小値との差が0.5J/g以下である、トナーセット。
  3. 請求項1記載の静電潜像現像用トナーの製造方法であって、以下の工程(I)〜(IV)を含む、静電潜像現像用トナーの製造方法:
    (I)結着樹脂、及び少なくとも着色剤と離型剤とを、混合した後に溶融混練する工程;
    (II)工程(I)で得られた溶融混練物を、粗粉砕して体積平均粒子径15〜25μmの粗粉砕物を得る工程;
    (III)前記粗粉砕物を熱処理する工程;及び
    (IV)熱処理された前記粗粉砕物を、微粉砕した後に分級して、体積平均粒子径5〜10μmの前記静電潜像現像用トナーを得る工程。
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