図1は、本発明に係るカメラ10の概略的構成を示すブロック図である。本発明の実施の形態において、カメラ10は、撮影レンズ180を交換可能なフォーカルプレンシャッタ式のデジタル一眼レフレックスカメラであるものとして説明する。無論、他の形式のカメラ、例えばレフレックスミラーやペンタプリズム等は有していないものの、撮影レンズが交換可能な、いわゆるデジタル一眼カメラにも本発明は適用可能である。また、メーカから提供される様々な機能ユニットの中からユーザが使用目的に応じて選択したものを組み合わせてシステムを構築可能なユニット式カメラにも本発明を適用することが可能である。
カメラ10は、1回のレリーズスイッチの押下で1回の撮影が行われる一コマ撮影モードと、レリーズスイッチが押下されている間、撮影動作が繰り返し行われる連続撮影モードとを備えるものとする。
カメラ10は、システムコントローラ100と、操作スイッチ104と、不揮発性メモリ110と、DRAM116と、画像信号処理部(DSP)120と、表示制御部122と、画像表示部124と、アナログ・フロントエンド(図1中では「AFE」と表記されている)130と、タイミング・ジェネレータ(図1中では「TG」と表記されている)132とを備える。カメラ10はさらに、撮像素子134と、光学的ローパスフィルタ136と、シャッタ140と、先幕係止マグネット142と、後幕係止マグネット144と、シャッタチャージ機構146と、メインミラー150と、ミラー駆動・シャッタ係止機構152と、サブミラー154とを備える。カメラ10はまた、ペンタプリズム160と、接眼レンズ162と、測光部164と、フォーカシングスクリーン166と、焦点検出装置170と、手ぶれ補正装置190とを備える。カメラ10には撮影レンズ180および画像データ記録媒体126が着脱自在に装着される。
撮影レンズ180は、レンズエレメント181と、絞り装置182と、絞り駆動部183と、レンズCPU184と、レンズ駆動部185と、不揮発性メモリ186とを備える。不揮発性メモリ186には制御プログラム187と動作時間パラメータ188とが記憶される。不揮発性メモリ186はフラッシュメモリ等で構成される。
撮影レンズ180をカメラ10に装着してカメラ10の電源を投入するとカメラ10側から撮影レンズ180に電力が供給される。レンズCPU184は、不揮発性メモリ186内に記憶される制御プログラム187を読み込んで実行する。カメラ10の電源が投入されるとレンズCPU184はシステムコントローラ100と通信を開始する。そして、システムコントローラ100からの要求に応答して不揮発性メモリ186内に記憶される動作時間パラメータ188をシステムコントローラ100に送信する。
撮影準備動作時(ユーザがカメラ10を被写体に向けてレリーズボタンを半押しし、ファーストレリーズスイッチをオンにしている状態のとき)、レンズCPU184はシステムコントローラ100から制御信号を受信し、この制御信号に基づいてレンズ駆動部185に制御信号を発し、レンズエレメント181内の焦点調節用レンズの光軸方向の位置を調節する。露光動作開始時、レンズCPU184はシステムコントローラ100から絞り制御信号を受信する。レンズCPU184は、この絞り制御信号に基づいて絞り駆動部183内のアクチュエータに制御信号を発し、絞り装置182の開度(設定絞り値)を調節する。絞り込み動作の完了後、レンズCPU184は絞り込み動作完了を示す信号をシステムコントローラ100に出力する。
メインミラー150は図1の紙面に直交する方向に延在する回動軸Pを中心として回動可能に構成される、いわゆるクイックリターン式のレフレックスミラーである。メインミラー150の背面に設けられたサブミラー154は、同じく図1の紙面に直交する方向に延在する軸Qを中心として回動可能に構成される。撮影準備状態(ユーザが構図決定、焦点調節等の操作をしている状態)において、撮影レンズ180を透過してカメラ10内を進む被写体光の光路中にメインミラー150は位置している。ペンタプリズム160の入射面近傍には、撮像素子134の受光面と光学的に共役の位置にフォーカシングスクリーン166が配置されている。
撮影レンズ180を透過した被写体光の大半は、メインミラー150によってフォーカシングスクリーン166およびペンタプリズム(ペンタゴナルダハプリズム)160に向けて反射される。メインミラー150の一部(中央部分)は半透鏡となっている。メインミラー150が上述のようにカメラ10内を進む被写体光の光路中に位置しているとき、メインミラー150の上記半透鏡の部分を透過した一部の被写体光はサブミラー154によって反射され、焦点検出装置170に導かれる。
焦点検出装置170は、反射鏡、コンデンサレンズ、セパレータレンズ、小型イメージセンサ等を備える、いわゆる位相差検出式のものとすることができる。すなわち、撮影準備動作中に焦点検出装置170は撮影レンズ180の焦点調節状態を検出し、焦点ずれ量および焦点ずれ方向(前ピンまたは後ピン)に関する情報をシステムコントローラ100に出力する。
フォーカシングスクリーン166を透過した被写体光は、ペンタプリズム160に設けられる三つの反射面で反射されて接眼レンズ162に入射する。ユーザは、接眼レンズ162に眼をあてることにより、フォーカシングスクリーン166上に形成された被写体像を接眼レンズ162で拡大して観察することができる。また、ペンタプリズム160で反射されて導かれた被写体光の一部は、測光部164が備えるフォトセンサに入射し、被写体の輝度が測光部164によって計測される。
ところで、図1には示していないが、ペンタプリズム160の射出面近傍に配設されて被写体光を接眼レンズ162に向かう光と、他の方向に向かう光とに分割して導くビームスプリッタと、ビームスプリッタによって上記他の方向に導かれた光を集光し、フォーカシングスクリーン166上に形成される被写体像の2次像(これを2次被写体像と称する)を形成する結像光学系と、結像光学系によって形成される2次被写体像を受光するファインダ撮像素子とをカメラ10がさらに有していてもよい。
このファインダ撮像素子から読み出された画像信号に基づく画像を画像表示部124に表示することにより、メインミラー150がカメラ10内を進む被写体光の光路中に位置している状態でもライブビュー表示を行うことが可能となる。この場合、ユーザは接眼レンズ162に眼をあてることなく、画像表示部124に表示される画像を観ながら構図決定をすることが可能となる。また、この画像信号を処理して、被写体中に人や動物等の顔の存否および顔の位置を認識することも可能となる。なお、上記ビームスプリッタに代えて、ペンタプリズム160出射する光を接眼レンズ162および結像光学系のいずれかに導くように切り替え可能な可動式ミラー等を用いることも可能である。
ミラー駆動・シャッタ係止機構152は、メインミラー150およびサブミラー154を駆動し、これらのメインミラー150およびサブミラー154が被写体光の光路中に位置して被写体光をフォーカシングスクリーン166、ペンタプリズム160、および焦点検出装置170に導く状態、または被写体光の光路から退避して被写体光を撮像素子134の方へ導く状態に切り替える。
上記ミラー駆動・シャッタ係止機構152によってメインミラー150は駆動され、撮影動作時には軸Pを回動中心として、上記被写体光の光路から退避する位置に跳ね上げられる。このとき、サブミラー154もまた軸Qを回動中心として、上記被写体光の光路から退避する位置に跳ね上げられる。撮影動作終了時、これらのメインミラー150およびサブミラー154は上述した撮影準備状態の位置に戻される。
シャッタ140について説明する。本発明の実施の形態においてシャッタ140は、フォーカルプレンシャッタであるものとして説明をする。シャッタ140は、メインミラー150と撮像素子134との間に設けられ、撮影レンズ180の光軸に略直交する面に沿って走行可能に構成される先幕および後幕を備える。また、シャッタ140はいわゆる縦走り式のフォーカルプレンシャッタで、幕の走行方向は上から下に向かう方向であるものとする。すなわち、カメラ10を横位置で構えて撮影したときに、鉛直方向の上側から下側に向かって先幕、後幕が走行して露光動作が行われるものとする。無論、幕の走行方向は下側から上側に向かう方向であっても良く、また、いわゆる横走り式やロータリー式の遮光幕を備えるものであってもよい。
シャッタ140は、先幕と、後幕と、先幕を上下方向に走行させる機構部品と、後幕を上下方向に走行させる機構部品と、先幕係止機構と、後幕係止機構(以上、不図示)とを備える。シャッタ140はさらに、先幕係止マグネット142と、後幕係止マグネット144とを備える。シャッタ140はまた、先幕、後幕を走行させる際の駆動力を蓄える先幕用弾性部材および後幕用弾性部材等を備えていてもよい。なお、先幕、後幕を走行させる際の駆動力としては弾性力以外に電磁力等を用いるものであってもよい。
先幕係止マグネット142、後幕係止マグネット144は、電磁石、可動鉄片(アーマチュア)等で構成される。通電状態で電磁石に生じる磁力によって可動鉄片が電磁石に吸着され、先幕、後幕の係止状態が維持される。
シャッタ140の作動時、最初に先幕係止マグネット142への通電を解除すると、電磁石による吸着力が失われて可動鉄片が離反する。これにより、先幕係止状態が解除されて先幕が走行を開始する。その後、後幕係止マグネット144への通電を解除すると、上述したのと同様の作用によって後幕係止状態が解除されて後幕が走行する。先幕が走行してシャッタ140が開き始めるタイミングと後幕が走行してシャッタ140が閉じ始めるタイミングとを、上述した先幕係止マグネット142、後幕係止マグネット144それぞれへの通電解除タイミングを変えることによって所望のシャッタ秒時でシャッタ140を露光動作させることが可能となる。
シャッタチャージ機構146は、ミラー駆動・シャッタ係止機構152がメインミラー150およびサブミラー154を撮影準備状態の位置に戻す際に、シャッタ140の先幕および後幕を走行開始前の位置に戻す。本実施の形態において、シャッタチャージ機構146の駆動源(アクチュエータ)は、ミラー駆動・シャッタ係止機構152の駆動源と共用されるものとする。
シャッタチャージ機構146の動作により、上記の先幕用弾性部材、後幕用弾性部材が弾性変形されて蓄勢される。なお、シャッタチャージを終えた後、先幕係止マグネット142、後幕係止マグネット144には通電されておらず、吸着力を生じていない。しかし、メインミラー150およびサブミラー154が撮影準備状態の位置にある場合に、ミラー駆動・シャッタ係止機構152が先幕および後幕の係止状態を機械的に維持している。したがって、シャッタ140が意図しないタイミングで作動してしまうことは無い。そして、ミラー駆動・シャッタ係止機構152がメインミラー150およびサブミラー154を被写体光の光路から退避する位置へ駆動する寸前に先幕係止マグネット142、後幕係止マグネット144への通電が開始される。これにより電力の消費が抑制される。
光学的ローパスフィルタ136は、複屈折作用を有する光学部材や偏光作用を有する光学部材等を組み合わせて構成され、透過する被写体光中の高い空間周波成分を減じる。光学的ローパスフィルタ136の表面には、必要に応じて赤外光を遮断する特性を有する層(薄膜)が形成される。あるいは、赤外光を吸収する特性を有するフイルムやガラス基板等が別に設けられていてもよい。
撮像素子134は、CCDイメージセンサ、あるいはCMOSイメージセンサとすることが可能である。本発明の実施の形態において、撮像素子134はその受光面上にベイヤ配列のオンチップカラーフィルタが形成された単板式のCMOSカラーイメージセンサであるものとして説明をする。
アナログ・フロントエンド130は、撮像素子134から出力されるアナログ画像信号に対して相関二重サンプリング、増幅、AD変換等の処理を行い、デジタル画像信号を生成する。このアナログ・フロントエンド130は、撮像素子134中に設けられていてもよい。
タイミング・ジェネレータ132は、画像信号処理部120から出力される指令に基づいてタイミングパルスを生成し、撮像素子134に出力する。撮像素子134は、このタイミングパルスに同期して画像信号をアナログ・フロントエンド130に出力する。
DRAM116は、画像信号処理部120、システムコントローラ100の双方からアクセス可能に構成される揮発性メモリであり、上記画像信号処理部120、システムコントローラ100で後述する処理が行われる際の作業エリアとして用いられる。
不揮発性メモリ110は、フラッシュメモリ等で構成される。不揮発性メモリ110には、調整用パラメータ112、制御プログラム114等が記憶される。これらの調整用パラメータ112、制御プログラム114については後で説明する。
画像データ記録媒体126は、メモリカード、小型ハードディスクドライブ、あるいはフロッピー(登録商標)ディスク等で構成され、カメラ10に対して着脱自在に構成される。カメラ10で生成された画像データは、この画像データ記録媒体126に記録される。
画像表示部124は、TFT表示素子とバックライト装置、あるいは有機EL表示素子等で構成され、撮影して得られた画像をカラー表示することが可能に構成される。また、必要に応じてメニュー画面を表示したり、ユーザに情報を伝達するための文字表示やグラフィック表示をしたりすることも可能に構成される。
表示制御部122は、画像信号処理部120から出力される信号に基づいて画像を表示するように画像表示部124を制御する。
画像信号処理部120は、アナログ・フロントエンド130から出力されるデジタル画像信号を入力してDRAM116へ一時的に記憶する。画像信号処理部120は、DRAM116に記憶されるデジタル画像信号にデモザイク、ホワイトバランス補正、シェーディング補正、レベル補正、階調補正等の処理をして画像データを生成する。なお、本明細書中では、上記の処理をする前のものをデジタル画像信号と称し、処理をしたものをデジタル画像データと称する。画像信号処理部120は、デジタル画像データに対して必要に応じて圧縮処理をし、処理後の画像データを画像データ記録媒体126に記録する。
画像信号処理部120はまた、生成された画像データや、画像データ記録媒体126から読み出された画像データに基づき、表示用画像データを生成して表示制御部122に出力する。表示制御部122は、受信した表示用画像データに基づく画像を画像表示部124に表示する。
システムコントローラ100は、CPU、またはハードウェアロジック等で構成可能であるが、本実施の形態においてはCPUで構成されるものとする。システムコントローラ100と先幕係止マグネット142、後幕係止マグネット144、シャッタチャージ機構146、ミラー駆動・シャッタ係止機構152、絞り駆動部183、レンズ駆動部185等とはバス106等を介して電気的に接続されている。システムコントローラ100は、不揮発性メモリ110からDRAM116に転送された制御プログラム114を逐次読み込んで実行し、上述した各構成要素の動作を制御してカメラ10全体の動作を制御する。
調整用パラメータ112について説明する。カメラ10を構成する機械部品や電子部品には製造上のばらつきがある。それらのばらつきによって、同じ制御プログラムに基づいて個々のカメラ10を制御しても、動作や精度は個々のカメラごとに異なる場合がある。調整用パラメータ112は、このようなばらつきを減じるために製造・調整過程で個々のカメラ10に対応して書き込まれる。
調整用パラメータ112には、機械部品の動作ばらつきの補正、測光部164の測光精度調整、アナログ・フロントエンド130でのゲイン調整、あるいはAD変換に際してのレベルやリニアリティ等の調整をするための情報等、様々な調整用情報を記憶可能に構成される。
操作スイッチ104は、レリーズスイッチ、スライドスイッチ、ダイヤルスイッチ、プッシュスイッチ等、カメラ10に設けられる各種スイッチを総称したものである。ユーザが操作スイッチ104を用いて、絞り値、シャッタ速度、等価ISO感度、露出モード等の設定、カメラの動作モード(記録モード/再生モード等)の切り替え、メニュー選択、撮影動作の開始等の操作をすることが可能となる。
手ぶれ補正装置190は、手ぶれセンサ192と手ぶれ補正ユニット194とを備える。これらの手ぶれセンサ192および手ぶれ補正ユニット194は図2に示される。撮影動作中のカメラ10の揺れ(手ぶれ)を、ジャイロセンサ等によって構成される手ぶれセンサ192で検出し、システムコントローラ100に出力する。システムコントローラ100は、手ぶれセンサ192で検出された揺れによって撮像素子134の受光面上に形成される被写体像に生じるぶれ(像ぶれ)を導出する。この像ぶれは、手ぶれセンサ192で検出されたカメラ10の揺れの量と、撮影レンズ180の焦点距離(撮影レンズ180が可変焦点距離レンズである場合には現状で設定されている焦点距離)とを参照して導出される。このとき、必要に応じて撮影距離も参照することにより、像ぶれの量をより高精度に導出することが可能となる。
撮像素子134は、小型のXYテーブル状の装置により、撮像素子134の受光面に並行な面に沿って互いに直交する2方向に移動可能に保持されている。手ぶれ補正ユニット194は超音波モータ等のアクチュエータを2組備えていて、撮像素子134を上記2方向に沿って互いに独立して往復駆動可能に構成される。システムコントローラ100は、導出された像ぶれが減じられる方向に撮像素子134を動かすよう、手ぶれ補正装置190に制御信号を発する。
露光動作が完了すると、システムコントローラ100は手ぶれ補正装置190に制御信号を発し、撮像素子134を中立位置、すなわち撮像素子134の受光エリアの中心と撮影レンズ180の光軸とが略一致する位置に戻す。以下では撮像素子134を中立位置に戻す動作を「センタリング動作」と称する。
なお、像ぶれを補正するための手段としては、撮像素子134を上記のように駆動する他に、撮影レンズ180中のレンズエレメント181の一部または全部(これを「ぶれ補正レンズエレメント」と称する)をその光軸と直交する方向に移動可能とし、像ぶれが減じられる方向に駆動するものであってもよい。その場合にも、露光動作終了後にセンタリング動作をしてぶれ補正レンズエレメントの光軸と撮影レンズ180の光軸とを略一致させる。
本実施の形態において、手ぶれ補正装置190は、撮像素子134を駆動するものとする。ところで、像ぶれの量や、露光時間の長短、あるいはカメラ10に生じる揺れのパターンによって、露光動作完了時点における撮像素子134の位置は様々である。つまり、露光動作中、撮像素子134は像ぶれが減じられるように様々な方向に駆動され続けるので、露光動作完了時、撮像素子134の位置は、中立位置近傍にあることもあるし、撮像素子134の移動可能範囲の端部付近にあることもあるし、それらの間の位置にあることもある。したがって、センタリング動作を開始してから完了するまでに要する時間もまた様々である。不揮発性メモリ110の中には、調整用パラメータ112の一つとして、上記のセンタリング動作に要する時間(以下では「手ぶれ駆動時間」と称する)に関するパラメータが記憶されている。
手ぶれ駆動時間に関する情報として、露光動作完了時に撮像素子134がその移動可能範囲の最端部(中心から最も離れた位置)に位置していた場合であってもセンタリング動作を完了することのできる時間に関する情報が記憶されている。つまり、センタリング動作の開始から完了までに要する最長の時間(センタリング動作の完了が保証される時間)が手ぶれ駆動時間に関する情報として記憶されている。
カメラ10は、手ぶれ補正装置190を動作させる/させないについてユーザが設定可能に構成されているものとする。このとき、手ぶれ補正装置190を動作させない場合であっても露光動作前に撮像素子134の位置を初期化する動作が行われるものとする。この、撮像素子134の位置を初期化する動作は、何らかの原因で撮像素子134の位置がずれてしまっている場合に備えて撮像素子134の位置をいわばリフレッシュする動作である。この、撮像素子134の位置を初期化する動作に要する時間に関する情報は、手ぶれ補正オフ時の手ぶれ駆動時間に関する情報として記憶されている。
図2は、システムコントローラ100が備える処理部を説明するブロック図である。図2には、システムコントローラ100が、図1に示される構成要素中の一部の構成要素とともに示されている。システムコントローラ100は、露光量決定部200と、読み出し時間決定部202と、読み出し画素数決定部204と、画像信号読み出し制御部206と、手ぶれ補正制御部208と、レンズ制御部210とを備える。不揮発性メモリ110からDRAM116に転送された制御プログラム114をシステムコントローラ100が逐次読み込んで実行することにより、上述した各処理部が機能する。
露光量決定部200は、カメラ10で設定されている等価ISO感度、測光部164で検出された被写体輝度に基づき、露光量を決定する。例えば、カメラ10の露出モードが、シャッタ速度および絞り値の設定が自動的に行われるプログラムオートに設定されている場合、露光量決定部200は、決定された露光量に基づき、シャッタ速度および絞り値の組み合わせを決定する。
読み出し時間決定部202は、静止画の撮影を連続して行う連続撮影モードでの撮影動作シーケンス中、連写速度を所望の速さとする条件のもとで、撮像素子134からの画像信号読み出しのために割り当て可能な時間である信号読み出し時間を決定する。この読み出し時間決定部202について以下に詳しく説明する。
連写速度を高めるためには、一連の撮影動作シーケンス中の各動作要素を順次実行する際のスケジュールを、時間的な効率が高められるように定めることが大事である。動作要素としては、システムコントローラ100による測光、測距等の処理、焦点調節、ミラーアップ、絞り作動、シャッタ開閉(露光)、画像信号読み出し、ミラーダウン、シャッタチャージ、画像信号の処理、ポストビュー表示等、様々な物がある。一連の撮影動作シーケンス中では、動作速度を変える(動作に割り当てられる時間を変更する)ことのできない動作要素もあるし、撮影時の条件によっては割り当てられる時間を変更することが可能な、あるいは割り当てられる時間が変化する動作要素もある。
例えば、等価ISO感度を増して露光量を減じたり、絞りを開き気味にしたりしてシャッタ速度を速めることにより、一連の撮影動作シーケンス中での露光動作に割り当てられる時間を短縮することができる。この露光動作に係る時間については短縮すれば短縮する程、連写速度を速めることに寄与可能である。
しかしながら、一連の撮影動作シーケンス中における他の動作要素の中には、例えばシャッタチャージ機構146、ミラー駆動・シャッタ係止機構152によるシャッタチャージ動作やミラー駆動の動作等、割り当て可能な時間が変わらないものがある。あるいは、大容量電池パックをカメラ10に装着することにより、アクチュエータの出力を増大可能な場合には、上記の例においてシャッタチャージ機構146、ミラー駆動・シャッタ係止機構152によるシャッタチャージ動作、ミラー駆動の動作等に係る時間を短縮することも可能である。割り当て可能な時間を変えることのできない動作要素については、それらの動作要素の起動タイミングをできるだけ早めることが連写速度を速める上で重要となる。
また、複数の動作要素を同時並行的に動作させることも連写速度を増す上で有効である。しかし、ある動作の完了を待たなくては後続する動作シーケンスの開始をすることができない動作要素もある。例えば、シャッタ140が露光動作を完了するまでは、シャッタチャージ機構146、ミラー駆動・シャッタ係止機構152の駆動を開始することはできない。また、一連の動作シーケンス中で複数の動作要素が並行して実行される場合もあり、その場合には、これらのうちの一つの動作を早めてもカメラ全体としての動作時間の短縮にはつながらない場合がある。また、微弱のアナログ信号を扱う処理中にはノイズの影響を避けるため、大電流を必要とするアクチュエータ等の起動を避ける必要もある。
読み出し時間決定部202は、連続撮影モードにおける撮影動作シーケンス中、撮像素子134からの画像信号を読み出す時間を短縮することが連写速度を所望の速さとする上で効果を発揮可能な範囲で撮像素子134からの画像信号読み出しのために割り当て可能な時間(本明細書中ではこれを信号読み出し時間と称する)を決定する。つまり、撮像素子134からの画像信号の読み出しのために必要な時間が所望の連写速度を得る上でのボトルネック、あるいはクリティカルパスとならないように信号読み出し時間を決定する。この処理の詳細については後で詳しく説明する。
読み出し画素数決定部204は、撮像素子134から画像信号を読み出す際に、読み出し時間決定部202で決定された信号読み出し時間に基づき、全画素からの画像信号を読み出す第1の読み出しモード、すなわち全画素読み出しモードで読み出すか、第1の読み出しモードでの読み出し画素数よりも小さい読み出し画素数で画像信号を読み出す第2の読み出しモードで読み出すかを決定する。そして、第2の読み出しモードで読み出す決定がなされた場合に、撮像素子134から画像信号を読み出す際の読み出し画素数を、読み出し時間決定部202で決定された信号読み出し時間に基づいて決定する。
ここで、読み出し画素数とは、撮像素子134から読み出される画像信号の情報量を意味する。つまり、読み出し画素数は、撮像素子134から読み出された画像信号によって形成される画像の画素数(ピクセルサイズ)と定義することが可能である。例えば、第2の読み出しモードとして、間引き読み出しによって撮像素子134から4ライン中2ラインの信号を読み出すものとする場合、第1の読み出しモードでよみ出される場合の読み出し画素数に比して第2の読み出しモードで読み出される場合の読み出し画素数は半分となる。さらに、撮像素子134が水平、垂直の両方向に間引いて読み出しをすることが可能な場合、読み出し画素数をさらに減じることが可能となる。
また、加算読み出しの可能な撮像素子を用いれば、複数ラインの画像信号を加算して読み出すことを第2の読み出しモードで行い、第1の読み出しモードで読み出す場合に比して読み出し画素数を減じることが可能となる。このとき、水平、垂直の両方向に加算が可能な撮像素子であれば、読み出し画素数をさらに減じることが可能となる。
さらに、切り出し読み出しモードにより画像信号を読み出す場合にも、切り出し読み出しをする領域の大きさに応じて読み出し画素数を減じることが可能となる。切り出し読み出しモードは、撮像素子134の受光エリア内の一部のエリアの画素からの画像信号を読み出すモードである。
画像信号読み出し制御部206は、読み出し画素数決定部204で決定された読み出しモードおよび読み出し画素数に基づき、露光動作後に撮像素子134から画像信号を読み出すべく、撮像素子134および画像信号処理部120を制御する。
手ぶれ補正制御部208は、手ぶれ補正装置190内の手ぶれセンサ192から出力される信号と、レンズCPU184から出力される撮影レンズ180の焦点距離に関する信号とに基づき、撮像素子134の受光面上で生じる像ぶれを導出する。そして、導出された像ぶれを軽減するために必要な、撮像素子134の移動方向および移動量を導出する。この、撮像素子134の移動方向および移動量を指示する信号を手ぶれ補正装置190内の手ぶれ補正ユニット194に出力する。
レンズ制御部210は、撮影準備動作中に焦点検出装置170から出力される撮影レンズ180の焦点ずれ量に関する情報に基づき、撮影レンズ180に焦点調節制御信号を出力する。レンズCPU184は、レンズ制御部210から受信した焦点調節制御信号をもとにレンズ駆動部185を制御し、焦点調節用のレンズエレメントを移動させる。レンズ制御部210はまた、露光動作開始直前のタイミングにおいて露光量決定部200で決定された絞り値に対応する絞り制御信号を撮影レンズ180に出力する。この絞り制御信号を受信したレンズCPU184は、絞り駆動部183を制御し、絞り装置182の開度(開口径)を調節する。
撮影レンズ180内に記憶される動作時間パラメータ188の一つである絞り駆動時間パラメータ188Aについて図3を参照して説明する。絞り駆動時間パラメータ188Aとして、撮影レンズ180の絞り装置182を開放から所定の絞り値にまで絞り込む動作に要する時間と、所定の絞り値にまで絞り込まれている状態から開放状態にまで開く動作に要する時間とに関する情報が記憶されている。
図3は、絞り駆動時間パラメータ188Aとして記憶される情報を概念的に示す図である。図3においては、レンズAからレンズHまでの(これらのレンズAからレンズHは、互いに異なる種類の撮影レンズである)それぞれに対応する一覧表として示されているが、撮影レンズ180内に記憶されるのはその撮影レンズ180自体に対応するいずれかの情報のみである。
図3中、絞り駆動方向として絞り込み方向と開放方向とが示されている。絞り込み方向とは、絞り装置182を開放から絞り込む側へ駆動する際の駆動方向を示す。開放方向とは、絞り装置182を絞り込まれている状態から開放側へ駆動する際の駆動方向を示す。
絞り込み段数は、開放状態からの絞り込み段数を示し、例えば開放絞り値がF2であるとき、設定絞り値は、絞り込み段数が1段のときF2.8に、2段のときF4に、3段のときF5.6に、4段のときF8に、5段のときF11に、それぞれなる。図3に示される例において、レンズAは、開放から2段絞るのに要する時間は19ミリ秒である一方、2段絞られている状態から開放にまで開くのに要する時間は16ミリ秒となっている。同様に、レンズBでは、開放から5段絞るのに要する時間は35ミリ秒である一方、5段絞られている状態から開放にまで開くのに要する時間は32ミリ秒となっている。
図3に示される例では、ミリ秒を単位とする例が示されるが、時間の単位および時間の表現形態は任意のものとすることが可能である。また、絞り段数のステップが1段で5段分の情報を含む表が示されているが、ステップは1/4段、1/3段、2段、3段等、任意のものとすることが可能である。また、図3に例示される5段よりも少ない段数、または多い段数までの情報が含まれていても良い。あるいは、開放から設定可能な最小絞りに絞り込むまでに要する時間、最小絞りから開放まで開くのに要する時間のみが絞り駆動時間パラメータ188Aとして記憶されていて、補間演算等により任意の絞り段数に対応する時間を導出可能に構成されていてもよい。
図4には、カメラ10の不揮発性メモリ110内に記憶される調整用パラメータ112の一つである手ぶれ駆動時間パラメータ112Aの例が示される。図4では、手ぶれ補正をオンにしたときの手ぶれ駆動時間と、手ぶれ補正をオフにしたときの手ぶれ駆動時間とがミリ秒を単位として記憶される例が示されているが、時間の単位および時間の表現形態は任意のものとすることが可能である。
先にも説明したように、手ぶれ補正オン時の手ぶれ駆動時間は、カメラ10で手ぶれ補正がオンに設定されているとき、露光動作を完了した後に撮像素子134のセンタリング動作を開始してから完了するまでに要する時間である。同様に、手ぶれ補正オフ時の手ぶれ駆動時間は、カメラ10で手ぶれ補正がオフに設定されているとき、露光動作前に撮像素子134の位置を初期化する動作に要する時間である。手ぶれ補正オフ時の手ぶれ駆動時間の方が手ぶれ補正オン時の手ぶれ駆動時間よりも短い。
カメラ10に撮影レンズ180が装着されて電源が投入されると、動作時間パラメータ188がレンズCPU184を介してシステムコントローラ100に送出される。また、カメラ10の不揮発性メモリ110内に記憶される調整用パラメータ112がシステムコントローラ100によって読み出される。これらのパラメータのうち、絞り駆動時間パラメータ188Aと手ぶれ駆動時間パラメータ112Aとが、読み出し時間決定部202で後述する処理が行われる際に参照される。
ところで、手ぶれ補正をするための装置としては、撮像素子134を上述したように動かすのに代えて、あるいは加えて、撮影レンズ180内に配設されるものであってもよい。すなわち、撮影レンズ180内の一部または全部のレンズ(手ぶれ補正レンズ)を撮影レンズ180の光軸に直交する面にそってシフト可能な構成を設け、像ぶれが減じられる方向に手ぶれ補正レンズを駆動する。その場合にも、手ぶれ補正レンズをセンタリングする動作が必要となる。撮影レンズ180に手ぶれ補正の装置が組み込まれる場合、図4に例示される手ぶれ駆動時間パラメータは、撮影レンズ180内の動作時間パラメータ188中に記憶される。
図5および図6は1コマ分の静止画撮影シーケンスを概略的に示すタイミングチャートであり、図5は1コマ分の撮影動作に要する時間を短縮する処理前の、図6は1コマ分の撮影動作に要する時間を短縮する処理後のシーケンスをそれぞれ示す。図5に例示されるシーケンスでは、第1の読み出しモードでの画像信号読み出し、すなわち全画素読み出しモードでの画像信号読み出しが行われる。図6に例示されるシーケンスでは、第2の読み出しモードでの画像信号読み出し、すなわち第1の読み出しモードにおける読み出し画素数よりも小さい読み出し画素数での画像信号の読み出しが行われる。
カメラ10において静止画撮影動作が行われる際には、露光準備、露光、読み出しディレイ、メカ復帰、画像信号読み出し、ミラー・シャッタ用アクチュエータ駆動といった動作が行われるものとして以下の説明をする。
露光準備の動作は、システムコントローラ100がファームウェアを実行して測光、測距、露光量演算、設定シャッタ速度および絞り値の決定等を行う動作である。露光の動作は、ミラーアップ、レンズ絞り込み、シャッタ開閉等を行う動作である。
上記の露光の動作が完了するとメカ復帰の動作が開始される。メカ復帰の動作には、手ぶれリセット動作、すなわち撮像素子134のセンタリング動作(手ぶれ補正オンの場合)または撮像素子134の位置を初期化する動作(手ぶれ補正オフの場合)と、レンズ絞りリセット動作、すなわち撮影レンズ180の絞り装置182を開放状態に戻す動作とが含まれる。
読み出しディレイの動作は、露光を完了した撮像素子134から画像信号を読み出すタイミングを遅らせる動作であり、メカ復帰の動作を開始してから時間t1の経過を待つ動作である。この、メカ復帰の動作を開始してから時間t1が経過した後、画像信号読み出しの動作の開始が可能となる。
時間t1が経過した後に画像信号読み出しの動作が可能となる理由について説明する。メカ復帰の動作開始に際して、手ぶれ補正ユニット194および絞り駆動部183の各アクチュエータに電流が供給されたとき、突入電流を生じる。撮像素子134から画像信号を読み出す際には、微弱なアナログ信号の処理が行われるため、上述した突入電流はアナログ信号に対して無視できない影響を及ぼす場合がある。上記の時間t1は、手ぶれ補正ユニット194および絞り駆動部183のアクチュエータが動作を開始してから定常負荷状態に達し、突入電流が減衰して電流が略定常状態に安定して、撮像素子134からの画像信号読み出しに殆ど影響を及ぼさないことが保証可能な長さに設定される。
以上に説明した露光準備、読み出しディレイの動作に要する時間は、撮影シーケンス上変更することができない。また、露光動作については、先にも説明したように等価ISO感度の設定を高めたり、撮影レンズ180の絞り設定を開き気味にしたりすることにより、短縮することが可能であるが、本実施の形態においては連写速度を速めるための手段として露出パラメータを変更することはしないものとする。つまり、露光動作についても撮影シーケンス上、固定されているものとする。
読み出しディレイの動作後、画像信号読み出しの動作が開始される。すなわち、撮像素子134内のフォトダイオードに蓄積された電荷量に対応した画像信号を撮像素子134から読み出す動作が行われる。なお、画像信号読み出しの動作が開始される時点でメカ復帰動作が継続して行われているが、上述したように定常負荷状態での動作であるので、撮像素子134から読み出される画像信号に及ぼす影響は無視できる程度のものである。
画像信号読み出しの動作が完了するのに続き、ミラー・シャッタ用アクチュエータを駆動する動作が開始される。このミラー・シャッタ用アクチュエータの起動に際しても、突入電流を生じるので、画像信号読み出し動作の完了を待ってミラー・シャッタ駆動用アクチュエータの駆動が開始される。ミラー・シャッタ用アクチュエータを駆動する動作に要する時間もまた、撮影シーケンス上変更することができない。
図5に例示されるシーケンスでは、第1の読み出しモードで画像信号を読み出すためにt2の時間を要する様子が示されている。画像信号読み出しの動作に要する時間を短縮すれば、ミラー・シャッタ用アクチュエータを駆動する動作の開始タイミングを早めて、連続撮影動作中における1コマ分の静止画を撮影するシーケンスに要する時間を短縮することが可能となる。その結果、連写速度を増すことが可能となる。
読み出し時間決定部202は、メカ復帰の動作に要する時間t3を導出する。この時間t3には、手ぶれリセット動作およびレンズ絞りリセット動作が含まれるものとする。このとき、読み出し時間決定部202は、撮影レンズ180のレンズCPU184から受信した絞り駆動時間パラメータ188Aと、不揮発性メモリ110内に記憶される手ぶれ駆動時間パラメータ112Aとを参照する。すなわち、露光量決定部200で決定された絞り値と、絞り駆動時間パラメータ188Aとからレンズ絞りリセット動作に要する時間を導出し、手ぶれ補正のオン/オフ設定に対応して手ぶれリセット動作に要する時間を導出する。これらのレンズ絞りリセット動作、手ぶれリセット動作に要する時間に基づき、時間t3が導出される。
このとき、装着されている撮影レンズ180の種類や露光動作時の設定絞り値に対応して絞り駆動時間パラメータ188Aが参照され、時間t3が導出される。さらに、手ぶれリセット動作についても、手ぶれ補正のオン/オフに対応して手ぶれ駆動時間パラメータ112Aが参照されて時間t3が導出される。これにより、導出される時間t3をより実情に即したものとすることが可能となり、一連のシーケンス中の時間的無駄を抑制することが可能となる。なお、時間t3には、必要に応じて他の動作のために要する時間が含まれていてもよいし、機械的な動作のみならず、電気的な動作のために要する時間が含まれていてもよい。
読み出し時間決定部202は、上述のように導出された時間t3から、読み出しディレイにあてられる時間t1を差し引いて、高速連続撮影を可能とする条件のもとで撮像素子134からの画像信号読み出しのために割り当て可能な時間である信号読み出し時間t2’を決定する。つまり図6に示される例においては、t2’=t3−t1として信号読み出し時間t2’を決定する。その結果、図6に例示されるシーケンスでは、連続撮影動作中における1コマ分の静止画を撮影するシーケンスに要する時間をt2−t2’だけ短縮することが可能となり、結果として連写速度を増すことが可能となる。
図6に示される例においては、メカ復帰動作が完了しないとミラー・シャッタ用アクチュエータの駆動を開始することができない例が示されている。例えば、モータやプランジャ等のアクチュエータを駆動するためのドライブ回路や、カメラ10の電源(電池)の容量によっては、多くのアクチュエータを同時に駆動することができない場合がある。その場合、複数のアクチュエータの動作を同時には行わずに時分割の方式で行う必要がある。また、機構上や動作シーケンス上の制約等により、ある動作が完了してからでないと別の動作の開始をすることができない場合もある。図6に示す例では、このような制約があり、メカ復帰動作が完了しないとミラー・シャッタ用アクチュエータの駆動を開始することができないものとしている。このような制約が無ければ、図6においてミラー・シャッタ用アクチュエータ駆動開始のタイミングをさらに早めて連写速度を増すことも可能である。
つまり、撮像素子からの画像信号読み出し完了後に起動が可能となる動作(図6の例ではミラー・シャッタ用アクチュエータ駆動がこれに相当)の起動タイミングを繰り上げて1コマ分の静止画を撮影するシーケンスに要する時間を短縮し、それにより連写速度を増す。そのとき、上記のように撮像素子からの画像信号読み出し完了後に起動が可能となる動作の起動タイミングを早めた分、撮像素子からの画像信号読み出しに割り当てる時間(信号読み出し時間t2’)を短縮する。
ところで、上記の時間t3は、手ぶれ補正のオン/オフ、装着される撮影レンズ180の種類、露光時に設定される絞りによって変化する。したがって、t3−t1の減算によって導出される信号読み出し時間t2’は、時として第1の信号読み出しモードにおける信号読み出し時間t2よりも長い場合もある。そこで読み出し時間決定部202は、信号読み出し時間t2’の長さに応じて、画像信号の読み出しモードを第1の読み出しモードとするか、第2の読み出しモードとするかを決定する。そして、第2の読み出しモードで画像信号を読み出す決定がなされた場合、読み出し画素数決定部204は、読み出し時間決定部202で決定された信号読み出し時間に基づき、読み出し画素数を決定する。
図5、図6を参照して、連続撮影時の連写速度を可能な限り高速化する例について説明したが、連続撮影時に所望の連写速度を維持するようにすることも可能である。この例について図7を参照して説明する。図7は、予め設定された連写速度で連続撮影が行われるように信号読み出し時間t2’を導出する例を説明するタイミングチャートである。図7において、Tは1コマ分の静止画撮影シーケンスに与えられる時間を意味する。すなわち、T=1/設定連写速度である。設定連写速度は、コマ毎秒(fps)である。露光準備および露光の動作に要する時間をt0、読み出しディレイの動作に要する時間をt1、ミラー・シャッタ用アクチュエータの駆動時間をt4として、Tからt0、t1、およびt4を差し引いて信号読み出し時間t2’が導出される。すなわち、t2’=T−t0−t1−t4である。
読み出し時間決定部202は、上記のようにして決定した時間t2’の長さに応じて、画像信号の読み出しモードを第1の読み出しモードとするか、第2の読み出しモードとするかを決定する。そして、第2の読み出しモードで画像信号を読み出す決定がなされた場合、読み出し画素数決定部204は、読み出し時間決定部202で決定された信号読み出し時間t2’に基づき、読み出し画素数を決定する。
ところで、図7に示されるシーケンスにおいて、上述のようにして決定された信号読み出しモードおよび信号読み出し時間t2’で画像信号の読み出しが行われた場合、メカ復帰の動作に要する時間t3の長さによっては、画像信号の読み出しが完了しているのにメカ復帰動作は完了しておらず、したがってミラー・シャッタ用アクチュエータの駆動ができない場合があり得る。そのような可能性がある場合には、図6を参照して説明した、t3からt1を差し引いて導出した信号読み出し時間t2’(便宜上、これをt2’aと表す)と、Tからt0、t1、およびt4を差し引いて導出された信号読み出し時間t2’(便宜上、これをt2’bと表す)とを比較し、いずれか長い方の信号読み出し時間をt2’とすることが望ましい。
但し、t3からt1を差し引いて導出したt2’aの方が長い場合には、若干ではあるが設定連写速度を下回る可能性がある。その場合、特に警告等を発せずに連続撮影を実行してもよいし、そのときに得られる連写速度を表示してもよい。あるいは、警告表示のみをしてもよいし、警告表示とともに、ユーザに対して等価ISO感度を増したり、設定絞り値がより小さくなるように(絞り開口径が増すように)設定したりするようにアドバイスする表示をすることも、等価ISO感度を増したり絞り開口径を開き気味にしたりすることを自動的に行うことも可能である。
図8は、ユーザがカメラ10を用いて撮影操作をする際にシステムコントローラ100により実行される処理手順を説明するフローチャートである。図8Aに示される処理に続く処理が図8Bに示される。
S800において、設定操作受付の処理が行われる。すなわち、露光モードや1コマ撮影/連続撮影のドライブモード等をユーザが設定する操作を受け付ける処理が行われる。S802においてシステムコントローラ100は、ユーザによるファーストレリーズスイッチの操作(レリーズスイッチの半押し操作)を受け付ける処理を行う。すなわち、ファーストレリーズスイッチの操作が無い間はS800、S802の処理を繰り返し行い、ファーストレリーズスイッチの操作が検出されるとS804に進む。
S804においてシステムコントローラ100は、測光の処理を行い、シャッタ速度および設定絞り値を決定する。S806においてシステムコントローラ100は、現状で設定されているドライブモードが連続撮影モードであるか否かを判定し、この判定が肯定されると処理はS808に進む一方、否定されるとS822に進む。
ここで、カメラ10でユーザが設定可能な連写速度は、高速連写1、高速連写2、画質優先連写のいずれかであるものとする。本実施の形態において、高速連写1は連写速度を可能な限り高速化するモードである。すなわち、図6を参照して説明した、t3からt1を差し引いて導出して信号読み出し時間t2’を決定し、この信号読み出し時間に基づいて決定された読み出しモードで撮像素子134から画像信号の読み出しをする連続撮影モードである。
高速連写2は、図7を参照して説明した、予め設定された連写速度で連続撮影が行われるように信号読み出し時間t2’を決定し、この信号読み出し時間に基づいて決定された読み出しモードで撮像素子134から画像信号の読み出しをする連続撮影モードである。画質優先連写モードは、第1の読み出しモードで撮像素子134から画像信号の読み出しをしながら連続撮影を行うモードである。
S808においてシステムコントローラ100は、ユーザにより設定されている連写速度が、高速連写1、高速連写2、画質優先連写のうち、いずれであるかを判定する。S808での判定結果が高速連写1である場合はS818に、高速連写2である場合にはS810に、画質優先連写である場合にはS832(図8B)に、それぞれ処理は分岐する。
S808での判定結果が高速連写1である場合の分岐先であるS818においてシステムコントローラ100は、図6を参照して説明した方法に従い、メカ復帰動作の時間t3を導出し、続くS820で信号読み出し時間t2’を導出する。つまり、システムコントローラ100は、S804での測光動作によって決定された撮影レンズ180の設定絞り値と、手ぶれ補正のオン/オフ設定に対応し、レンズ絞りリセット動作に要する時間と手ぶれリセット動作に要する時間とを参照して時間t3を導出する。そして時間t3から読み出しディレイの時間t1を差し引き、信号読み出し時間t2’を導出する。
S808での判定結果が高速連写1である場合の処理における、S820よりも後の処理(図8BのS830以降の処理)の説明に先立ち、S808での判定結果が高速連写2である場合の処理について説明する。S808での判定結果が高速連写2である場合、処理はS810に進み、システムコントローラ100はメカ復帰動作の時間t3を導出する。S810での処理は、S818での処理と同じである。
S812、S814においてシステムコントローラ100は、図7を参照して説明した方法に従い、信号読み出し時間t2’a、t2’bをそれぞれ導出する。システムコントローラ100はS816において、S812、S814で導出されたt2’a、t2’bのうち、長い方を信号読み出し時間t2’とする。
以上に説明したS820の処理と、S812からS816の処理が、図2を参照して説明した読み出し時間決定部202で行われる処理に対応する。
S820またはS816の処理に続き、システムコントローラ100はS830(図8B)において信号読み出し時間t2’が第1の読み出しモードで撮像素子134から画像信号を読み出すのに要する時間(全画素読み出し時間)Tf以上であるか否かを判定する。S830での判定が否定される、すなわち信号読み出し時間t2’が全画素読み出し時間Tfよりも短い場合にはS834に進み、信号読み出しモードは第2の信号読み出しモードに設定される。
一方、S830の判定が肯定された場合には信号読み出し時間t2’は全画素読み出し時間Tf以上となってしまっていて時間短縮の効果は得られないので、S832の処理により信号読み出しモードは第1の信号読み出しモードに設定される。S808(図8A)での判定結果が画質優先連写である場合も、S832で第1の信号読み出しモードに設定される。
S830での判定が否定され、S834で第2の信号読み出しモードに設定されるのに続き、S836では読み出しライン数Nrを導出する処理が行われる。この読み出しライン数Nrは、全画素読み出しモード時の読み出しライン数をNfとして、Nr=Nf×t2’/Tfの式によって導出される。ここで、読み出しライン数Nr、Nfは水平ライン数であるので、撮像素子134から画像信号を読み出して得られる画像の垂直方向の画素数となる。
以上に説明したS830、S832、S834、そしてS836の処理が、図2を参照して説明した読み出し画素数決定部204で行われる処理に対応する。
S837においてシステムコントローラ100は、カメラ10が顔認識モードに設定されているか否かを判定する。この判定が肯定されるとS838に進む一方、否定されるとS850に分岐する。
S838においてシステムコントローラ100は、現状で顔認識の処理が成功しているか否かの判定をする。ところで、顔認識の処理とは、被写体中に人や動物等の顔が存在するか否かを判定し、存在する場合には撮影画面中において顔の存在する位置(顔エリア)を特定する処理である。例えばカメラ10が、先にも説明したようにファインダ光学系内に配置されるファインダ撮像素子を有するものとすることが可能である。その場合、ファインダ撮像素子によって撮像して得られたファインダ画像を処理し、顔認識の処理をすることが可能である。
あるいは、撮影シーケンスが図5、図6、および図7に示されるのとは異なったものとなるが、カメラ10をライブビューモードで動作させて、ライブビュー画像を解析して顔認識の処理をすることも可能である。すなわち、メインミラー50をアップし、シャッタ140を開放状態に維持して撮像素子134からライブビュー用の画像信号を逐次読み出すことにより、カメラ10をライブビューモードで動作させることが可能となる。カメラ10がレフレックスミラーやペンタプリズムを有しない一眼カメラである場合も、撮影準備動作中にライブビュー表示用の画像信号が撮像素子から読み出されるので、そのライブビュー用画像信号を解析して顔認識の処理を行うことが可能である。
また、顔認識の精度としては上述した方式のものに比して劣るものの、焦点検出装置170が撮影画面内における広い焦点検出領域を有し、かつ多くの(高い密度で)焦点検出ポイントを有するものである場合に、各焦点検出ポイントでの焦点検出状態に基づき、顔あるいは主要被写体が撮影画面内のどこにあるかを判定することも可能である。
S838での判定が肯定されると処理はS840に進み、S836で導出された読み出しライン数Nrと顔認識処理によって特定された撮影画面内の顔エリアとに基づき、顔エリアを含む領域が信号読み出し領域として設定される。ところで、撮像素子134は、その受光エリア内の任意の水平ライン数の画像信号を読み出し可能に構成され、これにより、受光エリアに形成される像中、上下方向のどの部分を切り出すかを決定することができるものとする。
図9(a)は、撮像素子134から全画素読み出しして得られる画像を概念的に示す図である。図9(a)には、縦方向に1から12の数字が付された12画素(12水平ライン)、横方向にAからPの符号が付された16画素の画素数を有するものとして示されている。この12水平ラインのうち、図9(b)では1から9の番号が付された9水平ラインの画像信号が読み出される様子が示されている。つまり、Nr/Nf=9/12となる場合の例が簡略化されて示されている。10から12の符号が付された3水平ラインについては読み出さずに撮像リセットがかけられる。このようにして、図9に示す例では画像信号の読み出しに要する時間を全画素読み出し時の3/4とすることが可能となる。実際には、水平ラインの数は数千であるので、全画素読み出し時の74%、81%などといった細かい値で読み出し時間を設定することが可能となる。つまり、所望の連写速度での連続撮影を可能にしつつ、画質の低下をできるだけ低下させないように読み出し画素数を設定することが可能となる。
図9(b)において、ハッチングの施された部分は、第1、第2の画像読み出しモードで読み出された画像信号に基づく画像のアスペクト比が同じとなるように、9水平ライン分の画像データ中、破棄する部分を示している。無論、読み出し水平ライン数に応じて異なるアスペクト比の画像が記録されるようにして、ハッチングの施された部分も含めた画像を記録してもよい。
本実施の形態においては、S840の処理により、顔エリアを含む領域(1から9の数字の付された水平ライン)が信号読み出し領域として設定され、かつ、第1、第2の画像読み出しモードで読み出された画像信号に基づく画像のアスペクト比が同じとなるように、ハッチングの施された部分の画像データが破棄される。このとき、顔エリアを含む領域(CからNの符号の付された部分)の画像データが保存されるように破棄する対象の画素が決定される。
図9(b)では左右均等に2画素ずつ破棄される例が示されているが、画面内における顔エリアの位置に応じて、左右で不均等の数の画素データが破棄されてもよいし、左右どちらか一方の側の画素データが破棄されてもよい。画像信号が読み出される水平ラインも、例えば4から11の数字の付された水平ラインの画像信号を読み出す等、上下方向の任意の位置、任意の水平ライン数の画像信号を読み出すことができる。一方、S838の判定が否定された場合、すなわち顔認識が成功しなかった場合にはS850の処理が行われて画像の中央領域が信号読み出し領域に設定される。図9(b)を例に説明すると、例えば4から9の番号が付された水平ラインから画像信号を読み出すように設定される。また、アスペクト比を一定に保つ必要がある場合には、A、B、C、D、M、N、O、Pの符号の付された列の画像信号が破棄される。
S842でシステムコントローラ100は信号読み出し領域表示の処理を行う。例えば、カメラ10のファインダ光学系中に透過型液晶表示装置が配置される場合、信号読み出し領域に対応する視野を画定する矩形の枠を表示することができる。ユーザがファインダを覗いたとき、枠内の撮影範囲では狭くなりすぎていると感じたときには撮影レンズ180の焦点距離を広角側に変更したり、被写体から離れる方向に移動したりすることが可能である。
あるいは、カメラ10がライブビュー表示モードで動作可能に構成される場合、上記のように設定された信号読み出し領域に対応する部分のライブビュー画像を画像表示部124に表示することも可能である。この場合においても、ユーザはライブビュー画像を観察し、必要に応じて構図の設定をし直すことが可能である。
S844においてシステムコントローラ100は、S840またはS850で設定した信号読み出し領域の画像信号が読み出されるように画像信号処理部120および撮像素子134に制御信号を出力して信号読み出し条件および領域の設定を行う。
S846においてシステムコントローラ100は、セカンドレリーズスイッチがオンであるか否か(全押しされたか否か)を判定し、この判定が肯定されるとS848で1コマ分の撮影を行う。その後再びS846に戻り、セカンドレリーズスイッチがオンである間、連続撮影動作を繰り返し行う。
なお、バッファメモリ(DRAM116)がフルになったり、画像データ記録媒体126の残り記憶容量が無くなったりしたときの場合に備えての処理等が連続撮影動作中に行われるが、本明細書では図示および説明を省略する。また、連続撮影中に被写体輝度が大きく変化するとシャッタ秒時や設定絞り値が変化して連写速度に影響を及ぼすことがある。その場合の処理について、図8のフローチャート中で示していないが、シャッタ秒時や設定絞りの変化に対応して信号読み出し時間t2’を更新することが望ましい。
S846での判定が否定される、すなわちユーザがセカンドレリーズスイッチをオフした場合、処理はS800に戻り、上述した処理が繰り返し行われる。
S806(図8A)の判定が否定された場合、すなわちドライブモードが1コマ撮影モードに設定されている場合には、処理はS822に進み、信号読み出しモードが第1の信号読み出しモードに設定される。
S824では、セカンドレリーズスイッチがオンしているか否かの判定が行われる。S824の判定が肯定されるとS826で1コマの撮影が行われ、処理はS800に戻る。S824の判定が否定された場合には撮影動作がスキップされて処理はS800に戻る。
以上では、撮像素子134から画像信号を読み出す際、信号読み出し時間を減じるために、画像信号を読み出す対象の水平ライン数(垂直方向の画素数)を減じる例について説明した。しかし、本発明はこの例に限られるものではない。すなわち、撮像素子の中には、受光エリア内における任意の矩形領域内に位置する画素のみから画像信号を読み出すことも可能なものがある。そのような撮像素子を用いた場合、必要な画像信号のみを撮像素子から読み出すことが可能となるので、同じ信号読み出し時間に対し、より大きな領域の画像を切り出すことが可能となる。何故なら、画像信号を撮像素子から読み出してから図9(b)のハッチング施した部分の画像信号を破棄する必要が無くなるからである。
撮像素子134が上述のように受光エリア内における任意の矩形領域内の画素から画像信号を読み出し可能に構成される場合、図8BのS836で読み出しライン数Nrを導出するのに代えて、横方向、縦方向の読み出し画素数Gh、Gvが導出される。
撮像素子134から第1の読み出しモードで画像信号を読み出す際の読み出し画素数をGfとし、第2の読み出しモードで画像信号を読み出す際の読み出し画素数をGrとする。また、画像のアスペクト比はH÷Vであるものとする。以上の条件のもとで、横方向、縦方向の読み出し画素数Gh、Gvは、以下の式により導出することが望ましい。
Gh=√(H/V×Gr)
Gv=√(V/H×Gr)
以上の式を用いて横方向、縦方向の読み出し画素数Gh、Gvを導出することにより、第1、第2の読み出しモードで読み出された画像のアスペクト比を等しくすることが可能となる。
以上、図8のフローチャートを参照して説明したように、ユーザがなるべく速い連写速度、あるいは所望の連写速度が得られることを希望する場合、ユーザの望む連写速度が得られる条件のもとで撮像素子からの画像信号読み出しのために割り当て可能な時間である信号読み出し時間t2’が導出される。
そして、信号読み出し時間t2’をもとに撮像素子134から画像信号を第1の読み出しモードで読み出すか、第2の読み出しモードで読み出すかが決定される。そして、第2の読み出しモードで読み出すことが決定されると、撮像素子134から画像信号を読み出す際の読み出し画素数が信号読み出し時間t2’に基づいて(画像信号の読み出しが、信号読み出し時間t2’で完了するように)決定される。
以上では、撮像素子134の受光エリアに形成される被写体像中の一部を切り出すようにして、より少ない読み出し画素数で撮像素子134から画像信号を読み出す例について説明した。以下では、より少ない読み出し画素数で撮像素子134から画像信号を読み出す別の例について説明する。
図10(a)は、撮像素子134から全画素読み出しで得られる画像を概念的に示す図である。図10(a)には、縦方向に1からnの符号が付されたn画素(n水平ライン)の画素数を有するものとして示されている。このn水平ラインのうち、図10(b)では、間引き読み出しによって読み出し画素数が半分に減じられている様子が示されている。このように読み出し画素数が半分に減じられているとき、間引き率は50%(1/2)となる。
図10(b)中、水平方向の太い線は、間引き読み出しによって実際に得られる画素データを、細い線は、補間処理によって生成される画素データを概念的に示している。補間処理については公知のニアレストネイバー、バイリニア、バイキュービック、NEDI(New Edge-Directed Interpolation)等の補間法を利用可能である。この補間処理については、一連の撮影動作中に行われてもよいし、後処理によって行われてもよい。補間処理が後処理で行われる場合、カメラ10以外の装置、たとえばPC等で行われても良い。
図10(b)においては、読み出し画素数が略半分になっているものの、図9(b)に例示されるもののように撮像素子134の受光エリアに形成される被写体像中の一部を切り出すように画像信号を読み出すことはしない。従って、読み出し画素数が減じられても撮影画角に変化を生じない。
図10(c)は、水平、垂直の両方向に間引き読み出しをして読み出し画素数が1/4に減じられている例を示す図である。このように読み出し画素数が1/4に減じられているとき、本明細書中では間引き率を25%(1/4)と定義する。すなわち、全画素読み出しによる読み出し画素数に対する、間引き読み出しによる読み出し画素数の比を間引き率と定義する。図10(c)中、網掛けのされた矩形のひとつ一つが間引き読み出しによって実際に得られる画素データを、網掛けのされていない部分が補間処理によって生成される画素を概念的に示している。
図10(c)の例で、読み出し画素数は略1/4になっているが、撮像素子134の受光エリアに形成される被写体像中の一部を切り出すように画像信号を読み出すことはしないので、撮影画角に変化を生じない。
ここで、全画素読み出しに要する信号読み出し時間をTf、間引き読み出しに要する信号読み出し時間をt2’、間引き率をDとすると、以下の式で間引き率Dを導出することが可能となる。
間引き率 D=t2’/Tf
このとき、水平、垂直の両方向に間引き読み出しをする際に、水平、垂直の両方向で同じ間引き率となるようにしても、互いに異なる間引き率となるようにしてもよい。
ここで、水平方向の間引き率をDh、垂直方向の間引き率をDvとし、水平、垂直の両方向で同じ間引き率となるようにすると、以下の式で間引き率を導出することが可能となる。
Dh=Dv=√(t2’/Tf)
このように水平方向、垂直方向の間引き率を等しくすることにより、間引き読み出しによって得られた画像を構成する画素の間隔(ピッチ)を水平方向、垂直方向で等しくすることが可能となる。
ところで、上述した間引き読み出し率D、Dh、Dvについては、撮像素子の仕様として設定可能な値が決まっている。従って、D=t2’/Tf、あるいはDh=Dv=√(t2’/Tf)で導出された間引き率の値は、必ずしも撮像素子134で設定可能な間引き率と等しくなる訳ではない。
導出された間引き率と撮像素子134で設定可能な間引き率とが等しくない場合には、撮像素子134で設定可能な間引き率のうち、導出された間引き率に最も近い間引き率を選択して設定すればよい。このとき、撮像素子134で設定可能な間引き率のうち、導出された間引き率以下の間引き率中で、導出された間引き率に最も近いものを選択して設定することにより、連写速度を高速化することが可能となる。しかし、撮像素子134で設定可能な間引き率と導出された間引き率との大小関係によらず、撮像素子134で設定可能な間引き率の中から、導出された間引き率に最も近いものを選択して設定することも可能である。
図11は、信号読み出し時間t2’を短縮するため、上述したように間引き読み出しの設定が可能なカメラ10を用いて撮影操作をする際にシステムコントローラ100により実行される処理手順を説明するフローチャートである。図11Aに示される処理に続く処理が図11Bに示される。
S1100において、露光モードや1コマ撮影/連続撮影のドライブモード等をユーザが設定する操作を受け付ける処理が行われる。S1102においてシステムコントローラ100は、ユーザによるファーストレリーズスイッチの操作(レリーズスイッチの半押し操作)を受け付ける処理を行う。ファーストレリーズスイッチの操作が無い間はS1100、S1102の処理を繰り返し行い、ファーストレリーズスイッチの操作が検出されるとS1104に進む。
S1104においてシステムコントローラ100は、測光の処理を行い、シャッタ速度および設定絞り値を決定する。S1106においてシステムコントローラ100は、現状で設定されているドライブモードが連続撮影モードであるか否かを判定し、この判定が肯定されると処理はS1108に進む一方、否定されるとS1120に進む。
ここで、カメラ10でユーザが設定可能な連写速度は、高速連写、画質優先連写のいずれかであるものとする。高速連写は、連写速度を可能な限り高速化するモードである。すなわち、図6を参照して説明した、t3からt1を差し引いて導出して信号読み出し時間t2’を決定し、この読み出し時間に基づいて決定された読み出しモード(全画素読み出しを行う第1の読み出しモード、または間引き読み出しを行う第2の読み出しモード)で撮像素子134から画像信号の読み出しをする連続撮影モードである。画質優先連写モードは、第1の読み出しモードで撮像素子134から画像信号の読み出しをしながら連続撮影を行うモードである。
S1108においてシステムコントローラ100は、ユーザにより設定されている連写速度が、高速連写、画質優先連写のうち、いずれであるかを判定する。S1108での判定結果が高速連写である場合はS1110に、画質優先連写である場合にはS1132(図11B)に、処理は分岐する。
S1108での判定結果が高速連写である場合の分岐先であるS1110においてシステムコントローラ100は、図6を参照して説明した方法に従い、メカ復帰動作の時間t3を導出し、続くS1112で信号読み出し時間t2’を導出する。つまり、システムコントローラ100は、S1104での測光動作によって決定された撮影レンズ180の設定絞り値と、手ぶれ補正のオン/オフ設定に対応し、レンズ絞りリセット動作に要する時間と手ぶれリセット動作に要する時間とを参照して時間t3を導出する。そして時間t3から読み出しディレイの時間t1を差し引き、信号読み出し時間t2’を導出する。
以上に説明したS1112の処理が、図2を参照して説明した読み出し時間決定部202で行われる処理に対応する。
S1112の処理に続き、システムコントローラ100はS1130(図11B)において信号読み出し時間t2’が全画素読み出し時間Tf以上であるか否かを判定する。S1130での判定が否定される、すなわち信号読み出し時間t2’が全画素読み出し時間Tfよりも短い場合にはS1134に進み、信号読み出しモードは第2の信号読み出しモード、すなわち図10を参照して説明した間引き読み出しモードに設定される。間引き読み出しの方法は、図10(b)、図10(c)を参照して説明した方法のうち、導出された間引き率や撮像素子134で設定可能な間引き読み出しモードに応じて決定することが可能である。
S1130の判定が肯定された場合には、信号読み出し時間t2’は全画素読み出し時間Tf以上となってしまっていて時間短縮の効果は得られないので、S1132において信号読み出しモードが第1の信号読み出しモードに設定される。S1108(図11A)での判定結果が画質優先連写である場合も、S1132で第1の信号読み出しモードに設定される。
S1130での判定が否定され、S1134で第2の信号読み出しモードに設定されるのに続き、S1136で間引き率Dを導出する処理が行われる。この間引き率Dは、図10を参照して先にも説明したように、D=t2’/Tfで導出される。あるいは、水平、垂直両方向に間引き読み出しをする場合には、水平方向の間引き率Dh、垂直方向の間引き率Dvがそれぞれ導出される。
S1138においてシステムコントローラ100は、撮像素子134で可能な設定のうち、S1136で導出された間引き率Dに最も近い間引き率となる間引き率を設定する。このとき、先にも説明したように、撮像素子134で設定可能な間引き率のうち、導出された間引き率以下の間引き率中で、導出された間引き率に最も近いものを選択して設定することができる。あるいは、撮像素子134で設定可能な間引き率と導出された間引き率との大小関係によらず、撮像素子134で設定可能な間引き率の中から、導出された間引き率に最も近いものを選択して設定することもできる。
以上に説明したS1130、S1132、S1134、S1136、そしてS1138の処理が、図2を参照して説明した読み出し画素数決定部204で行われる処理に対応する。
S1140においてシステムコントローラ100は、S1132またはS1138で設定された信号読み出しモードで画像信号が読み出されるように画像信号処理部120および撮像素子134に制御信号を出力し、センサ読み出し条件の設定を行う。
S1142においてシステムコントローラ100は、セカンドレリーズスイッチがオンであるか否か(全押しされたか否か)を判定し、この判定が肯定されるとS1144で1コマ分の撮影を行う。その後再びS1142に戻り、セカンドレリーズスイッチがオンである間、連続撮影動作を繰り返し行う。
バッファメモリがフルになったり、画像データ記録媒体126の残り記憶容量が無くなったりしたときの場合に備えての処理、シャッタ秒時や設定絞りの変化に対応して信号読み出し時間t2’を更新する処理等については図8のフローチャートを参照して説明したのと同様とすることができる。
S1142での判定が否定される、すなわちユーザがセカンドレリーズスイッチをオフした場合、処理はS1100に戻り、上述した処理が繰り返し行われる。
S1106(図11A)の判定が否定された場合、すなわちドライブモードが1コマ撮影モードに設定されている場合には、処理はS1120に進み、信号読み出しモードが第1の信号読み出しモードに設定される。
S1122では、セカンドレリーズスイッチがオンしているか否かの判定が行われる。S1122の判定が肯定されるとS1124で1コマの撮影が行われ、処理はS1100に戻る。S1122の判定が否定された場合には撮影動作がスキップされて処理はS1100に戻る。
以上、図11のフローチャートを参照して説明したように、ユーザの望む高速連続撮影が可能となる条件のもとで撮像素子からの画像信号読み出しのために割り当て可能な時間である信号読み出し時間t2’が導出される。
そして、信号読み出し時間t2’をもとに撮像素子134から画像信号を第1の読み出しモード(全画素読み出しモード)で読み出すか、第2の読み出しモード(間引き読み出しモード)で読み出すかが決定される。そして、第2の読み出しモードで読み出すことが決定されると、撮像素子134から画像信号を読み出す際の読み出し画素数が信号読み出し時間t2’に基づいて(画像信号の読み出しが、信号読み出し時間t2’で完了するように)決定される。
以上の説明では、カメラ10でユーザが設定可能な連写速度は高速連写、画質優先連写のいずれかであるものとしたが、図8のフローチャートを参照して説明したのと同様に高速連写1、高速連写2、画質優先連写等が設定可能に構成されていてもよい。
また、以上では所望の信号読み出し時間t2’で画像信号読み出しが完了するように、間引き読み出しをして読み出し画素数を小さくする例について説明したが、水平、垂直いずれかの画素加算読み出し、あるいは水平、垂直両方向の画素加算読み出しをするものであってもよい。
さらに、間引き読み出し、画素加算読み出しをするのに加えて、画像の切り出しによって読み出し画素数をさらに小さくするようにしてもよい。その場合、図8のフローチャートを参照して説明した顔認識結果判定の処理を図11のフローチャート中に追加することが望ましい。そして、顔が認識された場合には、撮影画面中において顔の認識された位置を含むように画像の切り出しを行い、認識されなかった場合には撮影画面の中央部から画像の切り出しを行うことが望ましい。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の改良・変更が可能であることは勿論である。