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JP5617182B2 - 鉄含有スラリーの処理方法 - Google Patents

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Description

本発明は、鉄を主成分とする粉粒物を含む鉄含有スラリーを遠心分離機等で脱水処理して濃縮するに当たり、脱水効率を改善すると共に、脱水により得られた濃縮スラリーの流動性、更には乾燥効率を改善する方法に関する。
本発明の鉄含有スラリーの処理方法は、製錬炉、精錬炉又は溶解炉において、湿式集塵ダストを含む鉄含有スラリーを炉の原材料(原料、副原料、還元剤など)として再利用する際の鉄含有スラリーの脱水効率の向上技術として有用である。
鉄鋼等の製錬炉、精錬炉又は溶解炉では、炉から排出されるガスに大量のダストが飛散し、このダストはベンチュリースクラバーなどにより湿式集塵された後、リサイクルされている。しかし、水分を多量に含む湿式集塵ダストをそのまま溶融還元炉等の湯面に供給した場合、ダストとともに投入される水分が炉の熱効率を低下させてしまう。
そこで従来では、このような湿式集塵されたダストをリサイクルする場合、集塵ダストをシックナー等で沈降分離して水分70%程度の高濃度スラリーとし、このスラリーをフィルタプレスや遠心分離機などの脱水機により濃縮した後、濃縮スラリーを乾燥し、更に、造粒、養生等の必要な処理を施した上で各々の炉にリサイクルしている。このように、スラリーの濃縮、乾燥を行うことは、鉄含有スラリーの減容化で取り扱い性や処理効率が向上するという効果も得られる。
従来、このような鉄含有スラリーの脱水効率の向上のために、高分子凝集剤を添加する方法が提案されている(特許文献1)。
しかしながら、鉄含有スラリーに高分子凝集剤を添加することにより、凝集フロックの形成で脱水効率は向上するものの、高分子凝集剤の添加でスラリーの粘性が上がることで、脱水後の濃縮スラリーの流動性が悪化し、次工程への移送が困難になるという問題があった。
また、通常、脱水濃縮されたスラリーは、次いで乾燥工程で乾燥処理されるが、スラリー粘度が上がると、乾燥用空気との接触効率が悪くなることで乾燥不良などの不具合が発生するという問題がある。
特開2002−136998号公報
本発明は上記従来の問題点を解決し、鉄含有スラリーを遠心分離機等で脱水処理する際の脱水効率を改善すると共に、脱水処理で得られた濃縮スラリーの流動性を高め、その後の乾燥効率をも改善することができる鉄含有スラリーの処理方法を提供することを目的とする。
本発明(請求項1)の鉄含有スラリーの処理方法は、鉄を主成分とする粉粒物を含むスラリーを脱水処理により濃縮する濃縮工程を備える鉄含有スラリーの処理方法において、該鉄含有スラリーは、製錬炉、精錬炉又は溶解炉で発生する湿式集塵ダストを含む鉄含有スラリーであり、該鉄含有スラリーに炭酸カリウムを添加して脱水処理することを特徴とする。
請求項2の鉄含有スラリーの処理方法は、請求項1において、前記脱水処理を遠心分離により行うことを特徴とする。
請求項3の鉄含有スラリーの処理方法は、請求項1又は2において、前記濃縮工程からの濃縮スラリーを乾燥工程に移送することを特徴とする
求項の鉄含有スラリーの処理方法は、請求項1ないしのいずれか1項において、前記乾燥工程からの乾燥物が、製錬炉、精錬炉又は溶解炉に装入されることを特徴とする。
本発明の鉄含有スラリーの処理方法では、鉄含有スラリーに炭酸塩及び/又は重炭酸塩(以下、これらを「(重)炭酸塩」と称す場合がある。)を添加することにより、一剤の薬剤添加で下記(1),(2)の効果を得ることができる。
(1) 遠心分離機等の脱水機の脱水効率を改善することができる。
(2) 脱水後の濃縮スラリーの流動性を、薬剤を添加しない場合に比べて改善することができる。
(重)炭酸塩添加により上記(1),(2)の効果が得られる作用機構の詳細は明らかではないが、(重)炭酸塩は、スラリー中のSSのゼータ電位をゼロに近づけ、微凝集を促進する結果、SSの沈降性が増し、脱水機での脱水分離効率が改善されると共に、SSの微凝集で濃縮スラリーの粘性が下がり、流動性が改善されるものと考えられる。
このため、本発明によれば、脱水処理で得られた濃縮スラリーを効率的に次工程に移送することができ、特に、次工程が乾燥工程である場合、濃縮スラリーの粘性が低いために乾燥用空気との接触効率が良くなることで、乾燥効率も向上する。
本発明の鉄含有スラリーの処理方法の実施の形態を示す系統図である。 実施例1及び比較例1の結果を示すグラフである。
以下に本発明の鉄含有スラリーの処理方法の実施の形態を詳細に説明する。
本発明の鉄含有スラリーの処理方法は、鉄を主成分とする粉粒物を含むスラリーを遠心分離機等により脱水処理して濃縮するに当たり、該鉄含有スラリーに(重)炭酸塩を添加して脱水処理することを特徴とする。
本発明で処理対象とする鉄含有スラリーは、代表的には、前述の製錬炉、精錬炉又は溶解炉等における湿式集塵ダストをシックナー等で濃縮して得られるスラリーであり、鉄を主成分とする粉粒物を高濃度で含むものである。ここで鉄を主成分とする粉粒物とは、Total Fe(全鉄)として40質量%以上含有する粉粒物を指し、鉄の存在形態としては、金属鉄である場合の他、酸化物としても存在する。
この鉄含有スラリーの水質としては、例えば、次のような水質が挙げられる。
SS濃度:10〜60質量%
pH:8〜13
このような鉄含有スラリーに添加する(重)炭酸塩としては特に制限はなく、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等の炭酸塩や重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム等の重炭酸塩を用いることができる。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
(重)炭酸塩の添加量は、処理対象とする鉄含有スラリーの水質(SS濃度)によっても異なるが、鉄含有スラリーに対して100〜2000mg/L、特に250〜500mg/Lとすることが好ましい。(重)炭酸塩添加量が少な過ぎると十分な脱水性の向上効果を得ることができず、多過ぎると添加薬剤費が高くつき好ましくない。
(重)炭酸塩の添加形態としては、粉末で添加しても、水に溶解させて液体として添加しても良いが、スラリーとの均一混合性の面から液状で添加することが効果的である。
液状で添加する場合、水に対する溶解度の高いものを用いて、高濃度溶液として添加することが好ましく、この観点から、炭酸カリウムを用いることが、薬剤コストの低減にも繋がり有利である。なお、(重)炭酸塩を水溶液として添加する場合、10〜50質量%程度の濃度の水溶液として添加することが好ましい。
また、(重)炭酸塩を鉄含有スラリーに添加するに当っては、撹拌を行って、(重)炭酸塩と鉄含有スラリーとを十分に均一に混合することが好ましい。この場合、混合時間が短か過ぎると十分な凝集効果が得られず、長過ぎると微凝集されたSSが破壊されてしまうことから、撹拌混合時間は1〜24時間程度とすることが好ましい。
本発明の鉄含有スラリーの処理方法は、前述の如く、製錬炉、精錬炉又は溶解炉等における湿式集塵ダストをシックナー等で濃縮して得られるスラリーを脱水し、更に乾燥処理して次工程に送給する場合に好適であり、この場合、例えば、図1(a)に示す如く、シックナー1で沈降分離して得られた濃縮スラリーを、脱水機3に移送する配管の途中部分に貯留槽2を設け、この貯留槽2で(重)炭酸塩を添加して撹拌混合して凝集性を改善し、(重)炭酸塩を添加混合した鉄含有スラリーを脱水機3を経て乾燥機4に送給するようにすることが好ましい。なお、図1(b)に示す如く、脱水機3からの濃縮スラリーを乾燥機4に移送する配管の途中部分にも滞留槽としての貯留槽5を設け、この貯留槽5で撹拌混合した後乾燥機4に送給するようにしても良い。
いずれも場合でも、鉄含有スラリーに(重)炭酸塩を添加混合することにより、脱水機3での脱水性を高め、また、得られた濃縮スラリーの流動性も高めてこの濃縮スラリーを円滑に乾燥機4に移送すると共に、乾燥機4において、効率的に乾燥処理することができる。
なお、(重)炭酸塩は、この貯留槽2の上流側の配管で添加して、貯留槽2で撹拌混合するようにしても良い。
また、本発明において、脱水機3としては、特に制限はなく、フィルタープレス等であっても良いが、(重)炭酸塩によるSSの微凝集による沈降性向上効果を有効に得ることができることから、遠心分離機であることが好ましい。
鉄含有スラリーは、脱水機3及び乾燥機4を経て脱水、乾燥された後、解砕、調湿、造粒、養生等の必要な処理を施した上で製錬炉、精錬炉又は溶解炉等に導入される。
本発明者らの知見では、本発明を適用した結果、乾燥機4における乾燥トラブルは従来の1/5程度に削減でき、乾燥量ひいては精錬炉等での鉄生産量は3質量%程度向上させることが可能であった。
ただし、本発明はこのような製錬炉、精錬炉又は溶解炉から回収され、製錬炉、精錬炉又は溶解炉で再利用される鉄含有スラリーの脱水処理に適用することができる。
以下に、実施例、比較例及び実験例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
[実施例1]
(重)炭酸塩の脱水性向上効果を確認するために、酸化鉄を主体とするSS濃度50質量%のシックナー排泥スラリー(pH:11.5(20℃))に、炭酸カリウムの50質量%水溶液を、炭酸カリウム濃度として500mg/L添加して10時間混合した後、遠心分離機(巴工業株式会社製「DMX型」)で遠心分離処理して濃縮する処理を2ヶ月間継続して行い、このときの脱水機入口スラリーと脱水機出口スラリーのSS濃度をそれぞれ測定し、脱水性向上効果を、脱水前スラリーのSS濃度に対するSS濃度差(=脱水後のスラリーのSS濃度−脱水前スラリーのSS濃度:この値は大きい程脱水性に優れる。)で調べ、結果を図2に示した。
[比較例1]
実施例1において、炭酸カリウムを添加せずに脱水を行ったこと以外は同様にして脱水前スラリーのSS濃度に対する脱水性向上効果を調べ、結果を図2に示した。
図2より、炭酸カリウムの添加で鉄含有スラリーの脱水性が向上することが分かる。
[実験例1〜10]
鉄含有スラリーへの薬剤添加により流動性の向上効果を調べるために、酸化鉄を主体とするSS濃度50質量%のシックナー排泥スラリー(pH:11.5(20℃))を脱水するに先立ち、該スラリーに、表1に示す各種薬剤を表1に示す添加濃度で添加後、1時間混合し(ただし、実験例4では薬剤無添加)、混合後のスラリーのAPI規格によるファンネル粘度(500/500)を測定した。
API規格(American Petroleum Institute(米国石油協会)による泥水性状の試験規格)によるファンネル粘度(500/500)は、API規格のファンネル粘度計により、スラリーをファンネル容器に入れ、スラリーの全量が流出し終わるまでに要する時間で表され、この値が小さい程粘性が低く、流動性に優れることを示す。
Figure 0005617182
表1より、(重)炭酸塩であれば、添加後のスラリーの粘性が低く、従って、このスラリーを脱水して得られる濃縮スラリーの粘性も低く、このため、脱水後の濃縮スラリーの流動性の改善効果が得られることが分かる。その結果、乾燥機へのスラリーの付着が減少するため、乾燥機の乾燥効率を向上させることができる。
1 シックナー
2,5 貯留槽
3 脱水機
4 乾燥機

Claims (4)

  1. 鉄を主成分とする粉粒物を含むスラリーを脱水処理により濃縮する濃縮工程を備える鉄含有スラリーの処理方法において、該鉄含有スラリーは、製錬炉、精錬炉又は溶解炉で発生する湿式集塵ダストを含む鉄含有スラリーであり、該鉄含有スラリーに炭酸カリウムを添加して脱水処理することを特徴とする鉄含有スラリーの処理方法。
  2. 請求項1において、前記脱水処理を遠心分離により行うことを特徴とする鉄含有スラリーの処理方法。
  3. 請求項1又は2において、前記濃縮工程からの濃縮スラリーを乾燥工程に移送することを特徴とする鉄含有スラリーの処理方法。
  4. 請求項1ないしのいずれか1項において、前記乾燥工程からの乾燥物が、製錬炉、精錬炉又は溶解炉に装入されることを特徴とする鉄含有スラリーの処理方法。
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