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JP5612427B2 - トレッド用ゴム組成物及び空気入りタイヤ - Google Patents

トレッド用ゴム組成物及び空気入りタイヤ Download PDF

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JP5612427B2
JP5612427B2 JP2010226842A JP2010226842A JP5612427B2 JP 5612427 B2 JP5612427 B2 JP 5612427B2 JP 2010226842 A JP2010226842 A JP 2010226842A JP 2010226842 A JP2010226842 A JP 2010226842A JP 5612427 B2 JP5612427 B2 JP 5612427B2
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Description

本発明は、トレッド用ゴム組成物、及びそれを用いて作製したトレッドを有する空気入りタイヤに関する。
空気入りタイヤのトレッド用ゴム組成物には、通常、シリカ、カーボンブラック等の充填剤が配合される。シリカは、カーボンブラックと比較して、転がり抵抗を低減できることが知られている。シリカを配合するトレッド用ゴム組成物の場合、ゴム成分100質量部に対して、硫黄を1〜2質量部、亜鉛華(酸化亜鉛)を0.5〜3質量部程度配合するとともに、TBBS、CBS、DPG等の加硫促進剤を適宜配合することが一般的である。
上記亜鉛華は、難分散性の無機物であり、耐摩耗性を損なうため、減量することが望ましい。しかしながら、亜鉛華を減量すると、複素弾性率Eが低下し、操縦安定性が悪化する傾向があるため、実用上亜鉛華の含有量を0質量部にすることは困難であった。
上記硫黄としては、一般的に、粉末のS8硫黄、不溶性硫黄等が使用される。これらは、スチレンブタジエンゴム、天然ゴム、ブタジエンゴム等のタイヤ用ポリマー(ゴム成分)よりも極性が大きく、自己凝集性を持つため、該ポリマー中での分散が困難であり、均一なポリマー間架橋を形成し難いという問題があった。これを解決するために、バイエル社製のKA9188、フレキシス社製のPK900、デグッサ社製のSi69等のハイブリッド架橋助剤が、硫黄の一部と置換して使用されている。また、特許文献1には、ハイブリッド架橋助剤として、田岡化学工業(株)製のタッキロールV200が使用されている。
このように、硫黄を、分子量が大きく、かつ分散性に優れたハイブリッド架橋助剤に置き換える事は、均一な架橋を形成する上である程度有効である。しかしながら、従来のハイブリッド架橋助剤では、亜鉛華や硫黄を減量した場合に、充分なEを確保することが困難であった。
また、ブタジエンゴムを天然ゴムに置換すると、ウェットグリップ性能及び破断時伸びEBは改善されるが、耐摩耗性が悪化する傾向があった。
特開2009−114427号公報
本発明は、上記課題を解決し、ウェットグリップ性能、操縦安定性及び破断時伸びを確保しながら、転がり抵抗特性及び耐摩耗性を改善できるトレッド用ゴム組成物、及びそれを用いて作製したトレッドを有する空気入りタイヤを提供することを目的とする。
第一の本発明は、ゴム成分100質量部に対して、下記式(I)で表される化合物(1)の含有量が0.2〜15質量部であるトレッド用ゴム組成物に関する。
Figure 0005612427
(式中、xは1以上の数である。R〜Rはそれぞれ独立に炭素数1〜18の直鎖若しくは分岐鎖アルキル基、又は炭素数5〜12のシクロアルキル基を表す。)
第一の本発明のゴム組成物は、上記ゴム成分100質量部に対して1.0質量部以下の酸化亜鉛を含むことが好ましい。
第二の本発明は、ゴム成分100質量部に対して、下記式(II)で表される化合物(2)の含有量が0.2〜15質量部であり、硫黄の含有量が1.1質量部以下であるトレッド用ゴム組成物に関する。
Figure 0005612427
(式中、R〜Rはそれぞれ独立に炭素数1〜18の直鎖若しくは分岐鎖アルキル基、又は炭素数5〜12のシクロアルキル基を表す。)
第三の本発明は、ゴム成分100質量部に対して、上記化合物(1)の含有量が0.2〜15質量部であり、上記化合物(2)の含有量が0.2〜15質量部であるトレッド用ゴム組成物に関する。
第三の本発明のゴム組成物は、上記ゴム成分100質量部に対して、酸化亜鉛の含有量が1.0質量部以下であり、ジフェニルグアニジンの含有量が0.5質量部以下であることが好ましい。
本発明はまた、上記ゴム組成物を用いて作製したトレッドを有する空気入りタイヤに関する。
本発明によれば、上記化合物(1)を所定量配合するゴム組成物(第一の本発明)、上記化合物(2)を所定量配合するとともに、硫黄の含有量が特定値以下であるゴム組成物(第二の本発明)、又は、上記化合物(1)及び(2)を所定量配合するゴム組成物(第三の本発明)であるので、これをトレッドに使用することにより、ウェットグリップ性能、操縦安定性、破断時伸び、転がり抵抗特性及び耐摩耗性のバランスに優れた空気入りタイヤを提供できる。
第一の本発明のゴム組成物は、上記式(I)で表される化合物(1)を所定量配合する。化合物(1)は、リン原子と硫黄原子の相乗効果により、極めて有効な架橋促進作用を発揮する。これにより、架橋助剤である亜鉛華を減量することが可能となる。化合物(1)としては、例えば、ラインケミー社製のSDT−50、SDT/Sや、これらに類似する化合物(例えば、R〜Rがn−ブチル基のもの)等を使用することができる。
第二の本発明のゴム組成物は、上記式(II)で表される化合物(2)を所定量配合するとともに、硫黄の含有量が特定値以下である。化合物(2)は、その構造の中心に亜鉛原子を保持しており、化合物(1)よりも優れた架橋促進作用を発揮する。これにより、亜鉛華だけでなく、架橋剤である硫黄を減量することが可能となる。化合物(2)としては、例えば、ラインケミー社製のTP−50、ZBOP−S、ZBOP−50や、これらに類似する化合物(例えば、R〜Rがn−プロピル基、iso−プロピル基又はn−オクチル基のもの)等を使用することができる。
このように、第一及び第二の本発明のゴム組成物によれば、性能に悪影響を及ぼす亜鉛華や硫黄等を減量することが可能となるため、ウェットグリップ性能、操縦安定性及び破断時伸びを確保しながら、転がり抵抗特性及び耐摩耗性を改善することができる。
化合物(1)、(2)による架橋促進作用が発揮される機構については明らかではないが、以下のa)〜c)の機構が考えられる。
a)化合物(1)又は(2)がシランカップリング剤と結合し、該シランカップリング剤とシリカとの結合を仲介する。
b)化合物(1)又は(2)が加硫(架橋)促進剤と結合し、該加硫促進剤とゴム成分との結合を仲介する。
c)上記a)及びb)の両方。
加硫促進剤であるDPGが上記a)の作用を発揮することは知られており、また、化合物(1)又は(2)をDPGと置換した場合、DPGを上回る性能を示すことから、上記a)の機構である可能性が高い。更に、化合物(1)又は(2)を配合すると、加硫促進剤を減量しても同程度のEを確保することができることから、上記b)の機構である可能性もある。化合物(1)及び(2)は、適度な長さの分子鎖を有するとともに、極性が低いため、シランカップリング剤や加硫促進剤と接近し易い構造である。上記効果は化合物(1)及び(2)のこのような構造に起因するものであると推測される。
化合物(2)は化合物(1)よりも優れた架橋促進作用を有している。しかし、化合物(2)を使用しただけでは、亜鉛華、硫黄とともに、環境負荷が大きいジフェニルグアニジン(DPG)を減量しながら、良好な加硫速度を確保するという点では改善の余地がある。化合物(2)は、ゴム中の硫黄を取り込んで化合物(1)に類似した構造を形成すると推測される。これにより、硫黄や亜鉛と化合物(1)又は(2)との反応で形成される中間体の生成が遅くなることが、加硫速度を遅くする要因であると考えられる。また、化合物(1)は、ゴム中の亜鉛を取り込んで化合物(2)に類似した構造を形成すると推測されるが、化合物(1)を使用しただけでは、この過程が効率良く進行できないと考えられる。
これに対し、第三の本発明のゴム組成物は、上記化合物(1)及び(2)を所定量配合するため、化合物(1)及び(2)の架橋促進作用が相乗的に発揮され、良好な加硫速度を得ることができる。これにより、亜鉛華、硫黄とともにDPGを減量しても、良好な加硫速度を確保することが可能となる。また、第一及び第二の本発明のゴム組成物と比較して、各性能の改善効果を高めることができる。
(化合物(1))
上記式(I)において、R〜Rはそれぞれ独立に炭素数1〜18の直鎖若しくは分岐鎖アルキル基、又は炭素数5〜12のシクロアルキル基を表す。R〜Rが表す直鎖若しくは分岐鎖アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、4−メチルペンチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、オクタデシル基等が挙げられ、一方、シクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等が挙げられる。なかでも、ゴム組成物中で分散し易く、かつ製造が容易であるという点から、R〜Rは、炭素数2〜8の直鎖若しくは分岐鎖アルキル基であることが好ましく、2−エチルヘキシル基、n−ブチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−オクチル基であることがより好ましい。
上記式(I)において、xは1以上の数である。充分な硫黄をゴム組成物中に供給でき、かつ熱安定性に優れているという点から、xは2以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましい。また、xの上限は特に限定されないが、好ましくは10以下程度である。
第一の本発明のゴム組成物において、化合物(1)の含有量(有効成分の含有量)は、ゴム成分100質量部に対して、0.2質量部以上、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上である。0.2質量部未満の場合、化合物(1)を配合することによる効果が充分に得られない傾向がある。また、該含有量は、15質量部以下、好ましくは6質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。15質量部を超えると、スコーチタイムが短くなり、加工性が悪化する傾向がある。
第三の本発明のゴム組成物において、化合物(1)の含有量(有効成分の含有量)は、ゴム成分100質量部に対して、0.2質量部以上、好ましくは0.3質量部以上、より好ましくは0.4質量部以上である。0.2質量部未満の場合、化合物(1)を配合することによる効果が充分に得られない傾向がある。また、該含有量は、15質量部以下、好ましくは6質量部以下、より好ましくは2質量部以下である。15質量部を超えると、スコーチタイムが短くなり、加工性が悪化する傾向がある。
(化合物(2))
上記式(II)において、R〜Rはそれぞれ独立に炭素数1〜18の直鎖若しくは分岐鎖アルキル基、又は炭素数5〜12のシクロアルキル基を表す。R〜Rが表す直鎖若しくは分岐鎖アルキル基、又はシクロアルキル基の具体例としては、R〜Rの場合と同様のものが挙げられる。なかでも、ゴム成分中で分散し易く、かつ製造が容易であるという点から、R〜Rは、炭素数2〜8の直鎖若しくは分岐鎖アルキル基であることが好ましく、n−ブチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−オクチル基であることがより好ましい。
第二の本発明のゴム組成物において、化合物(2)の含有量(有効成分の含有量)は、ゴム成分100質量部に対して、0.2質量部以上、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上である。0.2質量部未満の場合、化合物(2)を配合することによる効果が充分に得られない傾向がある。また、該含有量は、15質量部以下、好ましくは8質量部以下、より好ましくは6質量部以下である。15質量部を超えると、スコーチタイムが短くなり、加工性が悪化する傾向がある。
第三の本発明のゴム組成物において、化合物(2)の含有量(有効成分の含有量)は、ゴム成分100質量部に対して、0.2質量部以上、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上である。0.2質量部未満の場合、化合物(2)を配合することによる効果が充分に得られない傾向がある。また、該含有量は、好ましくは15質量部以下、より好ましくは4質量部以下、更に好ましくは2.5質量部以下である。15質量部を超えると、スコーチタイムが短くなり、加工性が悪化する傾向がある。
第三の本発明のゴム組成物において、化合物(1)及び(2)の合計含有量(有効成分の合計含有量)は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.4質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上、更に好ましくは1.5質量部以上である。0.4質量部未満の場合、化合物(1)及び(2)の併用による効果が充分に得られない傾向がある。また、該合計含有量は、好ましくは30質量部以下、より好ましくは12質量部以下、更に好ましくは8質量部以下である。30質量部を超えると、スコーチタイムが短くなり、加工性が悪化する傾向がある。
(ゴム成分)
第一〜第三の本発明に配合するゴム成分としては、例えば、天然ゴム(NR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等を使用することができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、カーボンブラック、シリカ、オイル、架橋剤を分散させ易く、かつ耐疲労性及びウェットグリップ性能に優れるという点から、SBR、BRが好ましく、SBRがより好ましい。
SBRとしては特に限定されず、例えば、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E−SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S−SBR)等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。また、ウェットグリップ性能及び転がり抵抗特性に優れるという理由から、変性剤で末端を変性したSBR(変性SBR)を好適に使用できる。
SBRの変性に使用する変性剤としては、例えば、3−アミノプロピルジメチルメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルエチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、ポリマーとの結合性がよく、かつフィラーとの親和性が高いという点から、3−アミノプロピルトリメトキシシランが好適である。
変性剤によるSBRの変性方法としては、特公平6−53768号公報、特公平6−57767号公報等に記載されている方法等、従来公知の手法を用いることができる。例えば、SBRと変性剤とを接触させればよく、SBR溶液中に変性剤を添加して反応させる方法等が挙げられる。
変性SBRのスチレン含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは15質量%以上である。5質量%未満の場合、耐摩耗性が悪化する傾向がある。また、該スチレン含有量は、好ましくは45質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。45質量%を超えると、転がり抵抗特性が悪化する傾向がある。
なお、本明細書において、スチレン含有量は、H−NMR測定によって算出される。
ゴム成分100質量%中の変性SBRの含有量は、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは60質量%以上である。40質量%未満であると、変性SBRを配合した効果が充分に得られない傾向がある。また、該含有量は、100質量%であってもよいが、他のゴム成分との併用によって各性能をバランス良く改善するため、好ましくは95質量%以下、より好ましくは85質量%以下である。
BRとしては特に限定されず、例えば、日本ゼオン(株)製のBR1220、宇部興産(株)製のBR130B、BR150B等の高シス含有量のBR、宇部興産(株)製のVCR412、VCR617等のシンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR等を使用できる。
ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上である。5質量%未満であると、BRを配合した効果が充分に得られない傾向がある。また、該含有量は、好ましくは60質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。60質量%を超えると、相対的に変性SBRの含有量が減少するため、好ましくない。
(亜鉛華)
化合物(1)は、亜鉛華と併用することにより、架橋促進作用を高めることができる。これは、製造工程において、化合物(1)と亜鉛華とを混練りすることにより、化合物(1)と亜鉛華中の亜鉛とが結合し、化合物(2)に類似した構造が形成されるためではないかと推測される。
第一の本発明のゴム組成物において、亜鉛華の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.08質量部以上、更に好ましくは0.1質量部以上である。0.05質量部未満の場合、化合物(1)の架橋促進作用を充分に高めることができない傾向がある。また、該含有量は、好ましくは1.0質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下、更に好ましくは0.4質量部以下、特に好ましくは0.3質量部以下である。1.0質量部を超えると、耐摩耗性が悪化する傾向がある。
化合物(2)は、化合物(1)よりも優れた架橋促進作用を有していることから、特に亜鉛華と併用しなくてもよい。したがって、第二及び第三の本発明のゴム組成物において、亜鉛華の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1.0質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下、更に好ましくは0.3質量部以下、特に好ましくは0.1質量部以下、最も好ましくは0質量部(含有しない)である。これにより、耐摩耗性をより改善することができる。
(硫黄)
化合物(2)は、化合物(1)よりも優れた架橋促進作用を有していることから、架橋剤である硫黄を減量し、耐摩耗性及び破断時伸びをより改善することができる。第二の本発明のゴム組成物において、硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、1.1質量部以下、好ましくは0.8質量部以下、より好ましくは0.1質量部以下、更に好ましくは0質量部(含有しない)である。同様に、第三の本発明のゴム組成物において、硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1.4質量部以下、更に好ましくは1.2質量部以下、特に好ましくは1.0質量部以下である。
なお、第一の本発明のゴム組成物において、硫黄の含有量は、従来と同程度(ゴム成分100質量部に対して1〜2質量部程度)であればよい。
(加硫促進剤)
第一〜第三の本発明のゴム組成物は、一般的な加硫促進剤(TBBS、CBS、DPG、TBZTD)を配合してもよい。しかしながら、化合物(1)及び(2)は活性が高いため、配合すると混練り工程でゴム焼け(変色)が発生し易く、かつ架橋密度が高くなる傾向がある。したがって、第一〜第三の本発明のゴム組成物は、一般的な加硫促進剤を減量することが好ましい。具体的には、第一〜第三の本発明のゴム組成物において、一般的な加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下、更に好ましくは1質量部以下である。また、第二及び第三の本発明のゴム組成物は、化合物(1)よりも活性が高い化合物(2)を含有しているため、一般的な加硫促進剤を少量含むのみでよい。
DPGは動物実験での発癌性が研究機関により指摘されており、使用量の削減が求められているが、従来は、良好な加硫速度を確保しながら、DPGを減量することは困難であった。これに対し、第三の本発明のゴム組成物は、化合物(1)及び(2)を併用しているため、DPGを減量しても、良好な加硫速度を確保することができる。第三の本発明のゴム組成物において、DPGの含有量は、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.2質量部以下、更に好ましくは0.1質量部以下、特に好ましくは0質量部(含有しない)である。
(シリカ)
第一〜第三の本発明のゴム組成物は、シリカを含有することが好ましい。これにより、補強性を高めながら、転がり抵抗特性をより改善することができる。シリカとしては、例えば、湿式法で製造されたシリカ、乾式法で製造されたシリカなどが挙げられるが、特に制限はない。
シリカのチッ素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは80m/g以上、より好ましくは120m/g以上、更に好ましくは150m/g以上である。80m/g未満であると、充分な補強性が得られないおそれがある。また、シリカのNSAは、好ましくは280m/g以下、より好ましくは260m/g以下、更に好ましくは250m/g以下である。280m/gを超えると、未加硫ゴム組成物の粘度が高くなり、加工性が悪化する傾向がある。
なお、シリカのNSAは、ASTM D3037−81に準じてBET法で測定される値である。
シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは30質量部以上、より好ましくは40質量部以上、更に好ましくは50質量部以上である。30質量部未満の場合、充分な補強性が得られないおそれがある。また、該含有量は、好ましくは150質量部以下、より好ましくは120質量部以下、更に好ましくは110質量部以下である。150質量部を超えると、シリカが分散しにくくなり、転がり抵抗特性が悪化する傾向がある。
第一〜第三の本発明のゴム組成物は、シリカとともにシランカップリング剤を配合することが好ましい。シランカップリング剤としては、ゴム工業において、従来からシリカと併用される任意のシランカップリング剤を使用することができ、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、等のスルフィド系加硫促進剤等が挙げられる。なかでも、安価である点、入手が容易な点から、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドが好ましい。これらのシランカップリング剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上である。1質量部未満では、未加硫ゴム組成物の粘度が高くなり、加工性が悪化する傾向がある。また、該含有量は、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下である。20質量部を超えると、コストの増加に見合った効果が得られない傾向がある。
(製造方法)
第一〜第三の本発明のゴム組成物は、一般的な方法で製造される。すなわち、バンバリーミキサー、ニーダー、オープンロール等の混練機で上記各成分を混練りし、その後加硫する方法等により製造できる。
第一〜第三の本発明のゴム組成物は、空気入りタイヤのトレッドとして用いられるものである。特に、多層構造を有するトレッドの表面層であるキャップトレッドに好適に使用できる。例えば、2層構造〔表面層(キャップトレッド)及び内面層(ベーストレッド)〕からなるトレッドの表面層に好適である。
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法で製造される。
すなわち、前記成分を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でトレッドの形状にあわせて押出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することにより、本発明の空気入りタイヤを製造することができる。
本発明の空気入りタイヤは、乗用車、トラック、バス等に好適に使用できる。
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
BR:宇部興産(株)製のBR150B
変性S−SBR:JSR(株)製のHPR355(3−アミノプロピルトリメトキシシランを用いて変性、スチレン含有量:27質量%)
NR:TSR20
シリカ:デグッサ社製のウルトラシルVN3(NSA:175m/g)
カーボンブラック:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN220
オイル:(株)ジャパンエナジー製のTDAEオイル
ワックス:大内新興化学工業(株)製のサンノックN
老化防止剤6PPD:住友化学(株)製のアンチゲン6C
老化防止剤TMQ:FLEXSYS(株)製のFLECTOL TMQ
ステアリン酸:日油(株)製の椿
亜鉛華:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
シランカップリング剤:デグッサ社製のSi266(ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
硫黄:鶴見化学工業(株)製の5%オイル含有粉末硫黄(以下に示す表1〜3では、硫黄分のみの質量を記載)
加硫促進剤TBBS:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)
加硫促進剤DPG:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(N,N−ジフェニルグアニジン)
架橋助剤SDT−50:ラインケミー社製のSDT−50(式(I)で表される化合物(1)、R〜R:2−エチルヘキシル基、x:1以上、有効成分50質量%)
架橋助剤SDT−50類似品:試作品(式(I)で表される化合物(1)、R〜R:n−ブチル基、x:1以上、有効成分50質量%)
架橋助剤TP−50:ラインケミー社製のTP−50(式(II)で表される化合物(2)、R〜R:n−ブチル基、有効成分50質量%)
架橋助剤ZBOP−50:ラインケミー社製のZBOP−50(式(II)で表される化合物(2)、R〜R:アルキル基、有効成分50質量%)
実施例1〜22及び比較例1〜12
表1〜3の配合処方に従い、バンバリーミキサーを用いて、配合量の2/3のシリカと、硫黄、加硫促進剤及び架橋助剤以外の薬品とを排出温度150℃の条件で混練りした後、シリカの残部を添加し、排出温度150℃の条件で更に混練りし、混練り物を得た。次に、2軸オープンロールを用いて、得られた混練り物に硫黄、加硫促進剤及び架橋助剤を添加し、100℃の条件下で5分間混練りし、未加硫ゴム組成物を得た。
得られた未加硫ゴム組成物を170℃の条件下で12分間プレス加硫することにより、加硫ゴム組成物を得た。
また、得られた未加硫ゴム組成物をトレッド形状に加工し、他のタイヤ部材と貼り合わせ、170℃の条件下で12分間加硫することで試験用タイヤ(タイヤサイズ:195/65R15)を得た。
なお、加硫促進剤の量は、各配合で硬度(Hs)が同程度となるように調節した。
得られた加硫ゴム組成物及び試験用タイヤを用いて、以下の評価を行った。その結果を表1〜3に示す。
(粘弾性試験)
(株)岩本製作所製の粘弾性スペクトロメーターを用いて、初期歪10%、動歪2%及び周波数10Hzの条件下で、40℃における上記加硫ゴム組成物の複素弾性率E及び損失正接tanδを測定した。なお、Eが大きいほど、操縦安定性に優れることを示し、tanδが小さいほど、転がり抵抗特性に優れる(転がり抵抗が低い)ことを示す。
(ウェットグリップ性能試験)
上記試験用タイヤを車両(国産FF2000cc)の全輪に装着して、湿潤アスファルト路面において、速度100km/hでブレーキをかけた地点からの制動距離を測定した。そして、比較例1の制動距離を100とし、下記計算式により、各配合のウェットグリップ性能を指数表示した。ウェットグリップ性能指数が大きいほど、ウェットグリップ性能に優れることを示す。
(ウェットグリップ性能指数)=(比較例1の制動距離)/(各配合の制動距離)×100
(引張試験)
上記加硫ゴム組成物からなる3号ダンベル型試験片を用いて、JIS K 6251「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」に準じて引張試験を実施し、破断時伸びEB(%)を測定した。EBが大きいほど、耐チップカット性に優れることを示す。
(耐摩耗性試験)
上記試験用タイヤを車両(国産FF2000cc)の全輪に装着してテストコースを実車走行させ、約30000km走行した後のパターン溝深さの減少量を求めた。そして、比較例1の減少量を100とし、下記計算式により指数表示した。数値が大きいほど耐摩耗性が良好であることを示す。
(耐摩耗性指数)=(比較例1の減少量)/(各配合の減少量)×100
Figure 0005612427
Figure 0005612427
Figure 0005612427
表1〜3より、化合物(1)又は(2)を配合した実施例は、比較例1と比較して、ウェットグリップ性能、操縦安定性及び耐チップカット性を確保しながら、転がり抵抗特性及び耐摩耗性が改善した。
一方、化合物(1)及び(2)を配合しなかった比較例は、実施例よりも各性能が劣る傾向があった。
比較例8〜10は、化合物(2)を配合しているが、硫黄の含有量が多いため、不均一な架橋構造が形成され、実施例よりも各性能が劣る傾向があった。比較例8及び9は、亜鉛華の含有量も多いため、耐摩耗性が若干劣る傾向があった。比較例10は、Eが高くなり過ぎ、EBも低かった。
表3より、化合物(1)及び(2)を併用した実施例は、他の実施例と比較して、各性能の改善効果が大きい傾向があった。

Claims (7)

  1. ゴム成分100質量部に対して、
    下記式(I)で表される化合物(1)の含有量が0.2〜15質量部であり、
    酸化亜鉛の含有量が1.0質量部以下であるトレッド用ゴム組成物。
    Figure 0005612427
    (式中、xは1以上の数である。R〜Rはそれぞれ独立に炭素数1〜18の直鎖若しくは分岐鎖アルキル基、又は炭素数5〜12のシクロアルキル基を表す。)
  2. シリカを含む請求項記載のトレッド用ゴム組成物。
  3. 前記ゴム成分が、変性スチレンブタジエンゴムを含む請求項1又は2記載のトレッド用ゴム組成物。
  4. 変性スチレンブタジエンゴムを含むゴム成分100質量部に対して、
    下記式(II)で表される化合物(2)の含有量が0.2〜15質量部であり、
    硫黄の含有量が1.1質量部以下であり、
    酸化亜鉛の含有量が0.5質量部以下であるトレッド用ゴム組成物。
    Figure 0005612427
    (式中、R 〜R はそれぞれ独立に炭素数1〜18の直鎖若しくは分岐鎖アルキル基、又は炭素数5〜12のシクロアルキル基を表す。)
  5. ゴム成分100質量部に対して、
    前記化合物(1)の含有量が0.2〜15質量部であり、
    前記化合物(2)の含有量が0.2〜15質量部であるトレッド用ゴム組成物。
  6. 前記ゴム成分100質量部に対して、
    酸化亜鉛の含有量が1.0質量部以下であり、
    ジフェニルグアニジンの含有量が0.5質量部以下である請求項記載のトレッド用ゴム組成物。
  7. 請求項1〜のいずれかに記載のゴム組成物を用いて作製したトレッドを有する空気入りタイヤ。
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