JP5610268B2 - 高張電解質溶液による生体組織の脱細胞化処理方法 - Google Patents
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Description
1.採取した生体組織を、凍結融解処理を行わないで、以下の工程を含む方法により処理することを特徴とする生体組織の脱細胞化方法:
1)採取した生体組織を高張電解質溶液で処理する工程;
2)上記高張電解質溶液処理後の生体組織を等張電解質溶液で処理する工程。
2.高張電解質溶液が、高張塩化ナトリウム溶液または高張塩化マグネシウム溶液である前項1に記載の生体組織の脱細胞化方法。
3.高張電解質溶液が、0.5〜2.5Mである前項1または2に記載の生体組織の脱細胞化方法。
4.採取した生体組織が、神経組織、血管組織または皮膚組織である、前項1〜3のいずれか1に記載の生体組織の脱細胞化方法。
5.採取した生体組織が、神経組織または血管組織である、前項1〜3のいずれか1に記載の生体組織の脱細胞化方法。
6.前項1〜5のいずれか1に記載の脱細胞化方法により脱細胞化された、脱細胞化生体組織スキャホールド。
7.前項6に記載の脱細胞化生体組織スキャホールドを担体として調製される生体組織再生材料。
8.生体組織再生材料が、人工神経用、人工血管用または人工皮膚用の再生材料である前項7に記載の生体組織再生材料。
1)採取した生体組織を高張電解質溶液で処理する工程。
2)上記高張電解質溶液処理後の生体組織を等張電解質溶液で処理する工程。
神経組織の場合は、例えばヒト由来の場合は、同意を得た個体の各部位、例えば伏在神経・外側前腕皮神経・横隔神経などより採取した神経組織を、高張電解質溶液で処理するまでの間、例えば生理食塩水中で保存することができる。また、異種動物由来の場合は、例えばブタの各部位より採取した神経組織を高張電解質溶液で処理するまでの間、生理食塩水中で保存することができる。いずれも採取する神経組織の長さは、必要に応じて適宜決定することができ、特に限定されない。生理食塩水中に保存した神経組織は、高張電解質溶液で処理するまでの間は冷蔵保存とする。
Wistar系ラットから採取した坐骨神経を、各濃度のNaCl溶液で処理したときの神経組織での脱細胞化効果を確認した。ラットを腹臥位とし、大腿部背面より切開を行い、坐骨神経を同定した。その後、中枢側に神経根のレベルまで坐骨神経を求め切断し、約5cmの坐骨神経を得た。
実施例1と同手法により採取した神経組織を、各濃度のMgCl2溶液で処理したときの脱細胞化効果を確認した。0.5M、1.0M、1.5Mおよび2.0Mの各濃度のMgCl2溶液を用いたほかは、実施例1と同様に高張電解質溶液処理および等張電解質溶液処理を行った。
実施例1と同手法により採取した神経組織を、実施例1と同手法にて1.0MのNaCl溶液を用いて高張電解質溶液処理した後、等張電解質溶液処理を行った。
その結果、正常神経組織に類似する組織形態が確認された。また、炎症細胞の浸潤は縫合糸を中心に認められ、その他の移植神経内には殆ど認められなかった。
実施例3と同手法により高張電解質溶液処理および等張電解質溶液処理を行って得た脱細胞化神経組織スキャホールドを、別個体のラットに移植した。移植2ヶ月後の神経組織を採取し、神経組織再生の確認を行った。実施例1と同手法により組織切片を作製し、マウス抗S-100抗体またはマウス抗神経細繊維(Neurofilament)抗体(Chemicon社製)を一次抗体として用い、二次抗体にはビオチン化抗マウスIgG抗体を用いた。Vector社製ABC(Avidin-Biotin Complex)キットを用いて反応を行った後、DABを基質としてペルオキシダーゼによる酵素免疫組織法により染色を行った。免疫染色した組織標本を作製した(図5AB)。
その結果、組織切片上、神経細繊維(Neurofilament)およびそれを取り巻くシュワン細胞を認め、神経組織の再生が確認された。
実施例3と同手法により高張電解質溶液処理および等張電解質溶液処理を行って得た脱細胞化神経組織スキャホールドを、別個体のラットに移植し、約2ヶ月の生存期間をおいた。その後、移植神経よりも中枢側に神経トレーサー物質であるFluoro-Rubyを微量注入した。1週間の生存期間をおいた後、移植神経と正常神経とを一塊にして採取し、蛍光顕微鏡下で観察を行った。図6Aは、移植した脱細胞化神経組織スキャホールド内を蛍光標識された再生軸索が通過していることを示し(矢頭)、図6Bは、移植した脱細胞化神経組織スキャホールドと正常神経の境界部分を示した。図6Bでは、正常神経部分より伸展した再生軸索が脱細胞化神経組織スキャホールドを通過していることが確認された(矢頭)。このことから、脱細胞化神経組織スキャホールドは、生体組織再生材料となりうることが、確認された。
Wistar系ラットを腹臥位にし、腹部正中切開により腹部大動脈に到達させ、顕微鏡下に血管周囲の剥離を進め、遠位は両側総腸骨動脈を含め、近位は腎動脈分岐部付近までとし、切断を行い血管組織を採取した。採取したラットの腹部大動脈を、試験管にとり、1.0MのNaCl溶液で実施例1と同手法にて高張電解質溶液処理し、さらに血管内腔に灌流針を固定し、1.0MのNaCl溶液を血管内腔にも注入した。次に、PBS溶液にて実施例1と同手法にて等張電解質溶液処理を行い、さらに血管内腔に灌流針を固定し、血管内腔部を積極的に洗浄した。
実施例6と同手法により作製した脱細胞化血管組織すなわち脱細胞化血管組織スキャホールドを、Wistar系ラットの腹部大動脈に約1cmの欠損を作製した後に顕微鏡下で10-0黒ナイロン糸を用いて吻合・移植した。移植後約1週に再開創し、移植された脱細胞化血管の拍動を確認した。移植された脱細胞化血管組織を採取し、実施例6と同手法にて凍結切片を作製した。血管内皮細胞のマーカーであるvWFに対する抗体(Sigma社製)を一次抗体とし、二次抗体にはAlexa488により標識された抗ラビットIgG抗体を用いた。DAPIにより核染色を行い、また、Evans Blueにより対比染色を行った血管組織の再生を確認した(図8)。図8Aは、移植直後正常の血管組織を示し、図8Bは移植約1週後の血管組織を示す。図8CおよびDは、各々A,Bの部分拡大図である。このことから、移植1週後には、移植された脱細胞化血管組織スキャホールドに、血管内皮細胞が既に定着していることが確認された。
実施例6と同手法により作製した脱細胞化血管組織スキャホールドを、実施例7と同手法によりWistar系ラットの腹部大動脈に移植した。移植直後および移植約5週後に再開創し、拍動を確認後に取り出した血管組織を、Evans BlueやDAPIによる染色を行い、血管組織の再生を確認した(図9)。図9Aは、正常および移植約5週後の血管組織のHE染色組織を示し、図9Bは、抗vWF抗体によりラベルされた血管内皮細胞を示し、図9Cは抗α-SMA抗体によりラベルされた血管平滑筋細胞を示す。図9において、vFW陽性細胞は血管内皮細胞を示し、SMA陽性細胞は血管平滑筋細胞を示す。DAPIにより核染色を行い、Evans Blueにより対比染色を行った。このことから、移植5週後には、血管内皮細胞と血管平滑筋細胞が正常構造を模した三次元構造を示す層構築を再形成しており、いわゆる組織再生が行われていることが確認された。
ヒト頭皮から採取した皮膚組織を、高張のNaCl溶液で処理したときの脱細胞化効果を確認した。採取した皮膚組織を滅菌試験管にとり、実施例1と同手法にて1.0Mおよび1.5Mの各濃度のNaCl溶液を用いて処理し、PBS溶液にて等張電解質溶液処理を行った。
Wistar系ラットを腹臥位にし、腹部正中切開により腹部大動脈に到達させ、顕微鏡下に血管周囲の剥離を進め、遠位は両側総腸骨動脈を含め、近位は腎動脈分岐部付近までとし、切断を行い血管組織を採取した。採取したラットの腹部大動脈を、試験管にとり、1MのNaCl溶液で実施例1と同手法にて高張電解質溶液処理し、さらに血管内腔に灌流針を固定し、1MのNaCl溶液を血管内腔にも注入した。次に、PBS溶液にて実施例1と同手法にて等張電解質溶液処理を行い、さらに血管内腔に灌流針を固定し、血管内腔部を積極的に洗浄した。
実施例1と同手法により採取した神経組織を、1MのNaCl溶液で処理したときの脱細胞化効果を確認した。実施例1と同様に高張電解質溶液処理および等張電解質溶液処理を行った。
Claims (7)
- 採取した生体組織を、凍結融解処理を行わないで、以下の工程を含む方法により処理することを特徴とする生体組織の脱細胞化方法:
1)採取した生体組織を、0.5〜2Mの塩化ナトリウム溶液または0.5〜2Mの塩化マグネシウム溶液の高張電解質溶液で、14〜42℃の温度条件で処理する工程;
2)上記高張電解質溶液処理後の生体組織を、等張電解質溶液で、14〜42℃の温度条件で処理する工程。 - 上記1)の工程において、0.5〜2Mの塩化ナトリウム溶液または0.5〜2Mの塩化マグネシウム溶液の高張電解質溶液での処理条件が、80〜160回転/分の振盪条件で、12〜48時間処理する、請求項1に記載の生体組織の脱細胞化方法。
- 上記2)の工程において、等張電解質溶液での処理条件が、80〜160回転/分の振盪条件で、120〜188時間処理する、請求項1または2に記載の生体組織の脱細胞化方法。
- 採取した生体組織が、神経組織、血管組織または皮膚組織である、請求項1〜3のいずれか1に記載の生体組織の脱細胞化方法。
- 請求項1〜4のいずれか1に記載の生体組織の脱細胞化方法を用いる、脱細胞化生体組織スキャホールドの作製方法。
- 生体組織再生材料の担体として、請求項5に記載の方法で作製される脱細胞化生体組織スキャホールドを担体とし、調製される生体組織再生材料の調製方法。
- 生体組織再生材料が、人工神経用、人工血管用または人工皮膚用の再生材料である請求項6に記載の生体組織再生材料の調製方法。
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