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JP5609234B2 - ビスカルバゾール化合物及びその用途 - Google Patents

ビスカルバゾール化合物及びその用途 Download PDF

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Description

本発明は、新規なビスカルバゾール化合物及びそれを用いた有機EL素子に関するものである。
有機EL素子は、有機薄膜を1対の電極で狭持した面発光型素子であり、薄型軽量、高視野角、高速応答性といった特徴を有し、各種表示素子への応用が期待されている。また最近では、携帯電話のディスプレイ等、一部実用化も始まっている。有機EL素子とは、陽極から注入された正孔と、陰極から注入された電子とが発光層で再結合する際に発する光を利用した素子であり、その構造は正孔輸送層、発光層、電子輸送層等を積層した多層積層型が主流である。ここで、正孔輸送層や電子輸送層といった電荷輸送層は、それ自体は発光するわけではないが、発光層への電荷注入を容易にし、また、発光層に注入された電荷や発光層で生成した励起子のエネルギーを閉じ込めるといった役割を果たしている。従って、電荷輸送層は、有機EL素子の低駆動電圧化及び発光効率を向上させる上で非常に重要である。
正孔輸送材料には、適当なイオン化ポテンシャルと正孔輸送能を有するアリールアミン化合物が用いられ、例えば、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル] ビフェニル(以下、NPDと略す)がよく知られている。しかしながら、NPDはガラス転移温度が低く、高温条件下で容易に結晶化してしまうため、素子の耐久性に課題がある。また、NPDを正孔輸送層に用いた素子の駆動電圧、発光効率は十分ではなく、新しい材料の開発が求められている。
このような背景から、最近では分子内にカルバゾール環を導入したアリールアミン化合物が報告されている。カルバゾール環は平面性が高く、剛直な骨格であることから、カルバゾール環を導入したアリールアミン化合物は、ガラス転移温度と正孔輸送性の向上が期待できる。しかしながら、これまでに報告されているカルバゾール環を導入したアリールアミン化合物は、カルバゾール環の3位及び6位に窒素原子が結合した分子構造である(例えば、特許文献1〜3参照)。カルバゾール環の3位及び6位は、電子ドナー性である窒素原子のパラ位となるため、3位及び6位に置換されたアリールアミノ基はカルバゾール環の窒素原子によって活性化されることになる。即ち、カルバゾール環の3位及び6位にアリールアミノ基を導入した化合物は、イオン化ポテンシャルが通常のアリール化合物に比較して低くなってしまう。従って、これまでに報告されているカルバゾール環を有するアリールアミン化合物を正孔輸送層に用いた場合、発光層への正孔の注入障壁が大きくなり、有機EL素子の駆動電圧が高くなるという問題があった。
また、カルバゾール環を有する化合物としては、ガラス転移温度の改善を目的として、カルバゾール環を多量化したカルバゾール誘導体が記載されている(例えば、特許文献4〜6参照)。
特許文献4には、カルバゾール環を2量化若しくは3量化させた構造が開示されているが、分子内にアリールアミノ基を有していないため、正孔輸送性が十分ではない。
特許文献5には、3,3’−ビスカルバゾール骨格の6,6’位に9−カルバゾール基を置換させた化合物が開示されている。しかしながら、6,6’位に9−カルバゾール基を導入した構造では、共役の広がりが十分ではなく、有機EL素子の正孔輸送材料に使用した場合、十分な特性は得られない。
特許文献6には、3,3’−ビスカルバゾール骨格の9,9’位にアミノ基を有する置換基若しくは縮合芳香環基を導入した化合物が開示され、有機EL素子の発光ホストとしての使用が推奨されている。これらの3,3’−ビスカルバゾール誘導体は、9,9’位に立体的に嵩高い置換基を有するため、分子間での分子軌道の重なりが小さくなり、正孔の受け渡しに不利な構造となっている。従って、有機EL素子の正孔輸送材料に使用した場合の正孔輸送特性は十分ではない。
特開2006−151979公報 特開2006−298895公報 特開2008−044923公報 特許第3139321号公報 特許第3335985号公報 特開2008−135498公報
本発明の目的は、7,7’位にアリールアミノ基を導入し、正孔輸送性を向上させた3,3’−ビスカルバゾール化合物、更には発光効率が高く、耐久性に優れた有機EL素子を提供することを目的とする。
本発明者らは鋭意検討した結果、下記一般式(1)で示されるビスカルバゾール化合物が正孔輸送特性に優れ、該化合物を正孔輸送層に用いた有機EL素子は駆動電圧が低く、更に発光効率及び耐久性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、一般式(1)
Figure 0005609234
(式中、Ar〜Arは各々独立して炭素数6〜50の置換基を有していても良いアリール基、又は炭素数4〜50の置換基を有していても良いヘテロアリール基を表す。なお、ArとAr及びArとArは互いに結合して環を形成しても良い。R及びRは各々独立して炭素数1〜12の直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基、又は置換基を有していても良いフェニル基、ビフェニル基若しくはターフェニル基を表し、R〜R14は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12の直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基、炭素数1〜12の直鎖、分岐若しくは環状のアルコキシ基、炭素数6〜50の置換基を有していても良いアリール基、又は炭素数4〜50の置換基を有していても良いヘテロアリール基を表す。但し、Ar〜Arはカルバゾリル基を除き、R及びRは置換基としてアミノ基を有しない。)
で表されるビスカルバゾール化合物及びその用途に関するものである。
以下、本発明に関し詳細に説明する。
本発明の一般式(1)で表されるビスカルバゾール化合物において、Ar〜Arは各々独立して炭素数6〜50の置換基を有していても良いアリール基、又は炭素数4〜50の置換基を有していても良いヘテロアリール基を表す。
Ar〜Arで表される炭素数6〜50の置換基を有していても良いアリール基としては、置換若しくは無置換のフェニル基、ビフェニリル基、ターフェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、アントリル基、フルオレニル基、ベンゾフルオレニル基、ジベンゾフルオレニル基、フルオランテニル基、ペリレニル基、ピレニル基、ピセニル基、クリセニル基が好ましく、具体的にはフェニル基、4−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、2−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、3−エチルフェニル基、2−エチルフェニル基、4−n−プロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、2−イソプロピルフェニル基、4−n−ブチルフェニル基、4−イソブチルフェニル基、4−sec−ブチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−n−ペンチルフェニル基、4−イソペンチルフェニル基、4−ネオペンチルフェニル基、4−n−ヘキシルフェニル基、4−n−オクチルフェニル基、4−n−デシルフェニル基、4−n−ドデシルフェニル基、4−シクロペンチルフェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、4−トリチルフェニル基、3−トリチルフェニル基、4−トリフェニルシリルフェニル基、3−トリフェニルシリルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、2,5−ジメチルフェニル基、3,4−ジメチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、2,3,5−トリメチルフェニル基、2,3,6−トリメチルフェニル基、3,4,5−トリメチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、2−メトキシフェニル基、4−エトキシフェニル基、3−エトキシフェニル基、2−エトキシフェニル基、4−n−プロポキシフェニル基、3−n−プロポキシフェニル基、4−イソプロポキシフェニル基、2−イソプロポキシフェニル基、4−n−ブトキシフェニル基、4−イソブトキシフェニル基、2−sec−ブトキシフェニル基、4−n−ペンチルオキシフェニル基、4−イソペンチルオキシフェニル基、2−イソペンチルオキシフェニル基、4−ネオペンチルオキシフェニル基、2−ネオペンチルオキシフェニル基、4−n−ヘキシルオキシフェニル基、2−(2−エチルブチル)オキシフェニル基、4−n−オクチルオキシフェニル基、4−n−デシルオキシフェニル基、4−n−ドデシルオキシフェニル基、4−n−テトラデシルオキシフェニル基、4−シクロヘキシルオキシフェニル基、2−シクロヘキシルオキシフェニル基、4−フェノキシフェニル基、2−メチル−4−メトキシフェニル基、2−メチル−5−メトキシフェニル基、3−メチル−4−メトキシフェニル基、3−メチル−5−メトキシフェニル基、3−エチル−5−メトキシフェニル基、2−メトキシ−4−メチルフェニル基、3−メトキシ−4−メチルフェニル基、2,4−ジメトキシフェニル基、2,5−ジメトキシフェニル基、2,6−ジメトキシフェニル基、3,4−ジメトキシフェニル基、3,5−ジメトキシフェニル基、3,5−ジエトキシフェニル基、3,5−ジ−n−ブトキシフェニル基、2−メトキシ−4−エトキシフェニル基、2−メトキシ−6−エトキシフェニル基、3,4,5−トリメトキシフェニル基、4−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、2−フルオロフェニル基、2,3−ジフルオロフェニル基、2,4−ジフルオロフェニル基、2,5−ジフルオロフェニル基、2,6−ジフルオロフェニル基、3,4−ジフルオロフェニル基、3,5−ジフルオロフェニル基、4−(1−ナフチル)フェニル基、4−(2−ナフチル)フェニル基、3−(1−ナフチル)フェニル基、3−(2−ナフチル)フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、4−メチル−1−ナフチル基、6−メチル−2−ナフチル基、4−フェニル−1−ナフチル基、6−フェニル−2−ナフチル基、2−アントリル基、9−アントリル基、10−フェニル−9−アントリル基、2−フルオレニル基、9,9−ジメチル−2−フルオレニル基、9,9−ジエチル−2−フルオレニル基、9,9−ジ−n−プロピル−2−フルオレニル基、9,9−ジ−n−オクチル−2−フルオレニル基、9,9−ジフェニル−2−フルオレニル基、9,9’−スピロビフルオレニル基、9−フェナントリル基、2−フェナントリル基、ベンゾフルオレニル基、ジベンゾフルオレニル基、フルオランテニル基、ピレニル基、クリセニル基、ペリレニル基、ピセニル基、4−ビフェニリル基、3−ビフェニリル基、2−ビフェニリル基、p−ターフェニル基、m−ターフェニル基、o−ターフェニル基等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
また、Ar〜Arで表される炭素数4〜50の置換基を有していても良いヘテロアリール基としては、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子のうち少なくとも一つのヘテロ原子を含有する芳香族基であり、例えば、4−キノリル基、4−ピリジル基、3−ピリジル基、2−ピリジル基、3−フリル基、2−フリル基、3−チエニル基、2−チエニル基、2−オキサゾリル基、2−チアゾリル基、2−ベンゾオキサゾリル基、2−ベンゾチアゾリル基、ベンゾチオフェニル基、ベンゾイミダゾリル基、ジベンゾチオフェニル基等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
更に、有機EL素子作製時の蒸着温度を低くすることができ、蒸着速度を高速化することも可能であることから、置換基を有していても良いアリール基の炭素数は6〜30、置換基を有していても良いヘテロアリール基の炭素数は4〜30であることが好ましい。
なお、ArとAr及びArとArは互いに結合して環を形成してもよい。ArとAr及びArとArが互いに結合して形成される環としては、カルバゾール環、フェノキサジン環、フェノチアジン環等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
一般式(1)で表されるビスカルバゾール化合物において、R及びRは各々独立して炭素数1〜12の直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基、又は置換基を有していても良いフェニル基、ビフェニル基若しくはターフェニル基を表す。但し、分子構造が嵩高くなることから、R及びRは置換基としてアミノ基を有することはない。
及びRで表される炭素数1〜12の直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、シクロプロピル基、シクロヘキシル基等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
また、R及びRで表される置換基を有していても良いフェニル基、ビフェニル基若しくはターフェニル基としては、前記Ar〜Arで例示した置換若しくは無置換のフェニル基、ビフェニル基若しくはターフェニル基が挙げられる。
一般式(1)で表されるビスカルバゾール化合物において、R〜R14は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12の直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基、炭素数1〜12の直鎖、分岐若しくは環状のアルコキシ基、炭素数6〜50の置換基を有していても良いアリール基、又は炭素数4〜50の置換基を有していても良いヘテロアリール基を表す。
〜R14で表されるハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素原子が挙げられる。
〜R14で表される炭素数1〜12の直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基としては、前記R及びRで例示した置換基が挙げられる。
〜R14で表される炭素数1〜12の直鎖、分岐若しくは環状のアルコキシ基としては、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
〜R14で表される炭素数6〜50の置換基を有していても良いアリール基及び炭素数4〜50の置換基を有していても良いヘテロアリール基としては、前記Ar〜Arで例示した置換基が挙げられる。
以下に好ましい化合物を例示するが、これらの化合物に限定されるものではない。
Figure 0005609234
Figure 0005609234
Figure 0005609234
Figure 0005609234
Figure 0005609234
前記一般式(1)で表されるビスカルバゾール化合物は、例えば公知の方法(Tetrahedron Letters,1998年,第39巻,2367頁)によって合成することができる。具体的には、7位及び7’位がハロゲン化された3,3’−ビスカルバゾール化合物とアミン化合物とを塩基の存在下、銅触媒又はパラジウム触媒を用いて反応させ、合成することができる。
本発明の前記一般式(1)で表されるビスカルバゾール化合物は、有機EL素子の発光層、正孔輸送層又は正孔注入層として使用することができる。
特に、前記一般式(1)で表されるビスカルバゾール化合物は正孔輸送能に優れることから、正孔輸送層及び/又は正孔注入層として使用した際に、有機EL素子の低駆動電圧化、高発光効率化及び耐久性の向上を実現することができる。
前記一般式(1)で表されるビスカルバゾール化合物を有機EL素子の正孔注入層及び/又は正孔輸送層として使用する際の発光層には、従来から使用されている公知の発光材料を使用することができる。発光層は1種類の発光材料のみで形成されていても、ホスト材料中に1種類以上の発光材料がドープされていても良い。
近年、高い発光効率を実現できることから、発光材料として燐光材料を使用した有機EL素子が注目されているが、前記一般式(1)で表されるビスカルバゾール化合物は燐光材料とも組み合わせて使用することができる。
前記一般式(1)で表されるビスカルバゾール化合物からなる正孔注入層及び/又は正孔輸送層を形成する際には、必要に応じて2種類以上の材料を含有若しくは積層させてもよく、例えば、酸化モリブデン等の酸化物、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン、2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン、ヘキサシアノヘキサアザトリフェニレン等の公知の電子受容性材料を含有若しくは積層させても良い。
前記一般式(1)で表されるビスカルバゾール化合物を有機EL素子の発光層として使用する場合には、カルバゾール化合物を単独で使用、公知の発光ホスト材料にドープして使用、又は公知の蛍光若しくは燐光材料をドープして使用することができる。
前記一般式(1)で表されるビスカルバゾール化合物を含有する正孔注入層、正孔輸送層又は発光層を形成する方法としては、例えば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法等の公知の方法を適用することができる。
本発明による一般式(1)で表されるビスカルバゾール化合物は、従来材料以上の高い正孔輸送特性と高いガラス転移温度を有するため、有機EL素子の低駆動電圧化、高発光効率化、耐久性の向上を実現することができる。
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
H−NMR及び13C−NMR測定は、バリアン社製 Gemini200を用いて行った。
FDMS測定は、日立製作所製 M−80Bを用いて行った。
元素分析は、パーキンエルマー製の全自動元素分析装置(2400II)を用い、酸素フラスコ燃焼−IC測定法で行った。
ガラス転移温度の測定は、マックサイエンス製 DSC−3100を用い、10℃/分の昇温条件下にて行った。
イオン化ポテンシャルは、北斗電工製のHA−501及びHB−104を使用したサイクリックボルタンメトリーで評価した。
有機EL素子の電流−電圧特性及び発光特性は、ケースレーインスツルメンツ社製のソースメータ(2400)及びTOPCON社製の輝度計(BM−9)を用いて評価した。
合成例1 (2−(4−クロロフェニル)ニトロベンゼンの合成[下記(2)式参照])
窒素気流下、500mlの三口フラスコに、o−ブロモニトロベンゼン 25.0g(123.0mmol)、p−クロロフェニルボロン酸 21.1g(135.3mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム 0.71g(0.61mmol)、テトラヒドロフラン 100ml、20wt%の炭酸カリウム水溶液 162g(307.5mmol)を加え、8時間加熱還流した。室温まで冷却した後、水層と有機層を分液し、有機層を飽和塩化アンモニウム水溶液と飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下に濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン)で精製し、2−(4−クロロフェニル)ニトロベンゼンを27.2g単離した(収率94%)。
化合物の同定は、H−NMR測定及び13C−NMR測定により行った。
H−NMR(CDCl);7.87(d,1H),7.36−7.66(m,5H),7.21−7.27(m,2H)
13C−NMR(CDCl);148.98,135.85,135.12,134.37,132.45,131.79,129.23,128.84,128.53,124.21
合成例2 (2−クロロカルバゾールの合成[下記(2)式参照])
窒素気流下、200mlのナス型フラスコに、合成例1で得られた2−(4−クロロフェニル)ニトロベンゼン 10.0g(42.7mmol)を仕込み、亜リン酸トリエチルを50ml加えた後、150℃で24時間攪拌した。減圧下に亜リン酸トリエチルを留去し、残渣にo−キシレンを加えて再結晶することにより、2−クロロカルバゾールの白色粉末を5.1g(25.6mmol)単離した(収率60%)。
化合物の同定は、H−NMR測定及び13C−NMR測定により行った。
H−NMR(Acetone−d);10.46(br−s,1H),8.10(d,2H),7.37−7.55(m,3H),7.15−7.24(m,2H)
13C−NMR(Acetone−d);141.35,141.15,131.33,126.70,123.17,122.64,121.92,120.84,120.09,119.78,111.81,111.43
Figure 0005609234
合成例3 (2−クロロ−9−メチルカルバゾールの合成)
窒素気流下、200mlの三口フラスコに、合成例2で得られた2−クロロカルバゾール 10.0g(49.5mmol)、ヨードメタン 8.4g(59.4mmol)、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド 11.2g(49.5mmol)、ジメチルスルホキシド 100mlを加え、攪拌下、48%水酸化ナトリウム水溶液を6.1g添加した。70℃で2時間反応後、室温まで冷却し、100gの純水に反応液を加えた。析出した沈殿を濾取し、得られた白色固体を純水で洗浄した。減圧乾燥した後、エタノールで再結晶し、2−クロロ−9−メチルカルバゾールの白色粉末を6.5g(30.2mmol)単離した(収率61%)。
化合物の同定は、H−NMR測定及び13C−NMR測定により行った。
H−NMR(CDCl);7.99(d,1H),7.90(d,1H),7.12−7.49(m,5H),3.70(s,3H)
13C−NMR(CDCl);141.44,141.18,131.39,125.93,122.21,121.31,121.02,120.22,119.36,119.26,108.61,29.17
合成例4 (7,7’−ジクロロ−9,9’−ジメチル−3,3’−ビスカルバゾールの合成)
窒素気流下、300mlの三口フラスコに、合成例3で得られた2−クロロ−9−メチルカルバゾール 5.7g(26.4mmol)を150mlのジクロロメタンに溶解させた。そこに、塩化鉄(無水)を12.8g(79.2mmol)添加し、室温で10時間攪拌した。反応液にメタノールを100ml添加し、析出した生成物を濾取した。回収した粗生成物を純水及びメタノールで洗浄した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエンとヘキサンの混合溶媒)で精製後、更にo−キシレンで再結晶し、7,7’−ジクロロ−9,9’−ジメチル−3,3’−ビスカルバゾールの黄色粉末を5.0g(11.6mmol)単離した(収率87%)。
化合物の同定は、FDMS測定及び元素分析測定により行った。
FDMS;428
元素分析(計算値)C=72.7,H=4.2,Cl=16.5,N=6.5
(実測値)C=72.5,H=4.1,Cl=16.6,N=6.3
合成例5 (2−クロロ−9−フェニルカルバゾールの合成)
窒素気流下、300mlの三口フラスコに、合成例2で得られた2−クロロカルバゾール 20.0g(99.1mmol)、ブロモベンゼン 18.5g(119.0mmol)、炭酸カリウム 19.1g(138.8mmol)、o−キシレン 100mlを加え、スラリー状の反応液に酢酸パラジウム 222mg(0.99mmol)、トリ(tert−ブチル)ホスフィン 700mg(3.4mmol)を添加して、130℃で24時間攪拌した。室温まで冷却後、水 80mlを加え、有機層を分離した。有機層を水及び飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下に濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエンとヘキサンの混合溶媒)で精製し、無色オイル状の2−クロロ−9−フェニルカルバゾールを25.6g(92.3mmol)単離した(収率93%)。
化合物の同定は、H−NMR測定及び13C−NMR測定により行った。
H−NMR(CDCl);8.08(d,1H),8.01(d,1H),7.16−7.64(m,10H)
13C−NMR(CDCl);141.40,141.20,137.04,131.66,130.01,127.85,127.06,126.19,122.72,121.88,121.11,120.36,120.23,109.94,109.87
合成例6 (7,7’−ジクロロ−9,9’−ジフェニル−3,3’−ビスカルバゾールの合成)
窒素気流下、300mlの三口フラスコに、合成例5で得られた2−クロロ−9−フェニルカルバゾール 8.0g(28.8mmol)を160mlのジクロロメタンに溶解させた。そこに、塩化鉄(無水)を14.0g(86.4mmol)添加し、室温で10時間攪拌した。反応液にメタノールを100ml添加し、析出した生成物を濾取した。回収した粗生成物を純水及びメタノールで洗浄した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエンとヘキサンの混合溶媒)で精製後、更にo−キシレンで再結晶し、7,7’−ジクロロ−9,9’−ジフェニル−3,3’−ビスカルバゾールの茶色粉末を7.3g(13.2mmol)単離した(収率92%)。
化合物の同定は、FDMS及び元素分析測定により行った。
FDMS;552
元素分析(計算値)C=78.1,H=4.0,Cl=12.8,N=5.0
(実測値)C=78.1,H=4.2,Cl=12.7,N=5.1
実施例1 (化合物(A1)の合成と薄膜安定性の評価)
窒素気流下、50mlの三口フラスコに、合成例4で得られた7,7’−ジクロロ−9,9’−ジメチル−3,3’−ビスカルバゾール 1.1g(2.5mmol)、ジフェニルアミン 0.90g(5.3mmol)、ナトリウム−tert−ブトキシド 722mg(7.5mmol)、o−キシレン 10mlを加え、スラリー状の反応液に酢酸パラジウム 12mg(0.05mmol)、トリ(tert−ブチル)ホスフィン 37mg(0.18mmol)を添加して、130℃で10時間攪拌した。室温まで冷却後、純水を10g添加した後に、生成物を濾取した。回収した粗生成物を純水及びエタノールで洗浄した。o−キシレンで再結晶し、化合物(A1)の淡黄色粉末を0.6g(0.86mmol)単離した(収率33%)。
化合物の同定は、FDMS測定及び元素分析測定により行った。
FDMS;694
元素分析(計算値)C=86.4,H=5.5,N=8.0
(実測値)C=86.4,H=5.4,N=8.1
真空蒸着法によってガラス板上に形成した薄膜は、室温下1ヶ月間放置しても白濁(凝集及び結晶化)は見られなかった。また、ガラス転移温度は143℃であり、従来材料であるNPDのガラス転移温度(96℃)と比較して高い結果であった。
実施例2 (化合物(A12)の合成と薄膜安定性の評価)
窒素気流下、100mlの三口フラスコに、合成例6で得られた7,7’−ジクロロ−9,9’−ジフェニル−3,3’−ビスカルバゾール 8.0g(14.4mmol)、ジフェニルアミン 5.3g(31.7mmol)、ナトリウム−tert−ブトキシド 3.8g(40.4mmol)、o−キシレン 50mlを加え、スラリー状の反応液に酢酸パラジウム 64mg(0.28mmol)、トリ(tert−ブチル)ホスフィン 204mg(1.0mmol)を添加して、130℃で11時間攪拌した。室温まで冷却後、純水を30g添加した後に、生成物を濾取した。回収した粗生成物を純水及びエタノールで洗浄した。o−キシレンで再結晶し、化合物(A12)の淡黄色粉末を5.8g(7.0mmol)単離した(収率48%)。
化合物の同定は、FDMS測定及び元素分析測定により行った。
FDMS;818
元素分析(計算値)C=87.9,H=5.1,N=6.8
(実測値)C=87.8,H=5.1,N=6.9
実施例1と同様の方法でガラス板上に薄膜を形成したところ、室温下1ヶ月間放置しても白濁(凝集及び結晶化)は見られなかった。また、ガラス転移温度は144℃であり、従来材料であるNPDのガラス転移温度(96℃)と比較して高い結果であった。
実施例3 (化合物(A1)のイオン化ポテンシャルの評価)
過塩素酸テトラブチルアンモニウムの濃度が0.1mol/lである無水ジクロロメタン溶液に、化合物(A1)を0.001mol/lの濃度で溶解させ、サイクリックボルタンメトリーでイオン化ポテンシャルを測定した。作用電極にはグラッシーカーボン、対極に白金線、参照電極にAgNOのアセトニトリル溶液に浸した銀線を用いた。標準物質としてフェロセンを用い、フェロセンの酸化還元電位を基準とした際の化合物(A1)のイオン化ポテンシャルは0.39V vs.Fc/Fcであった。この値は、従来から正孔輸送材料として知られているNPDのイオン化ポテンシャル(0.31V vs.Fc/Fc)と同等であった。
実施例4 (化合物(A12)のイオン化ポテンシャルの評価)
実施例3と同様の方法で化合物(A12)のイオン化ポテンシャルを評価したところ、0.38V vs.Fc/Fcであり、従来から正孔輸送材料として知られているNPDのイオン化ポテンシャル(0.31V vs.Fc/Fc)と同等であった。
実施例5 (化合物(A1)の素子評価)
厚さ200nmのITO透明電極(陽極)を積層したガラス基板を、アセトン及び純水による超音波洗浄、イソプロピルアルコールによる沸騰洗浄を行なった。更に、紫外線オゾン洗浄を行ない、真空蒸着装置へ設置後、1×10−4Paになるまで真空ポンプにて排気した。まず、ITO透明電極上にNPDを蒸着速度0.3nm/秒で蒸着し、20nmの正孔注入層とした。引続き、化合物(A1)を蒸着速度0.3nm/秒で30nm蒸着した後、燐光ドーパント材料であるトリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(Ir(ppy))とホスト材料である4,4’−ビス(N−カルバゾリル)ビフェニル(CBP)を重量比が1:11.5になるように蒸着速度0.25nm/秒で共蒸着し、20nmの発光層とした。次に、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(BCP)を蒸着速度0.3nm/秒で蒸着し、10nmのエキシトンブロック層とした後、更に、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム錯体(Alq)を0.3nm/秒で蒸着し、30nmの電子輸送層とした。引続き、電子注入層として沸化リチウムを蒸着速度0.01nm/秒で0.5nm蒸着し、更に、アルミニウムを蒸着速度0.25nm/秒で100nm蒸着して陰極を形成した。窒素雰囲気下、封止用のガラス板をUV硬化樹脂で接着し、評価用の有機EL素子とした。このように作製した素子に20mA/cmの電流を印加し、駆動電圧及び外部量子効率を測定した。結果を表1に示す。
実施例6 (化合物(A12)の素子評価)
化合物(A1)を化合物(A12)に変更した以外は実施例5と同様の方法で有機EL素子を作製した。20mA/cmの電流を印加した際の駆動電圧及び外部量子効率を表1に示す。
比較例1
化合物(A1)をNPDに変更した以外は実施例5と同様の方法で有機EL素子を作製した。20mA/cmの電流を印加した際の駆動電圧及び外部量子効率を表1に示す。
Figure 0005609234

Claims (2)

  1. 一般式(1)
    Figure 0005609234
    (式中、Ar〜Arは各々独立して炭素数6〜50の置換基を有していても良いアリール基、又は炭素数4〜50の置換基を有していても良いヘテロアリール基を表す。なお、ArとAr及びArとArは互いに結合して環を形成しても良い。R及びRは各々独立して炭素数1〜12の直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基、又は置換基を有していても良いフェニル基、ビフェニル基若しくはターフェニル基を表し、R〜R14は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12の直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基、炭素数1〜12の直鎖、分岐若しくは環状のアルコキシ基、炭素数6〜50の置換基を有していても良いアリール基、又は炭素数4〜50の置換基を有していても良いヘテロアリール基を表す。但し、Ar〜Arはカルバゾリル基を除き、R及びRは置換基としてアミノ基を有しない。)
    で表されるビスカルバゾール化合物。
  2. 請求項1に記載のビスカルバゾール化合物を発光層、正孔輸送層及び正孔注入層の少なくともいずれか一層に用いることを特徴とする有機EL素子。
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