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JP5608909B2 - 室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物 - Google Patents

室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物 Download PDF

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JP5608909B2
JP5608909B2 JP2010002751A JP2010002751A JP5608909B2 JP 5608909 B2 JP5608909 B2 JP 5608909B2 JP 2010002751 A JP2010002751 A JP 2010002751A JP 2010002751 A JP2010002751 A JP 2010002751A JP 5608909 B2 JP5608909 B2 JP 5608909B2
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Description

本発明は、室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物に係り、さらに詳しくは、湿気の存在しない密封条件下では安定であり、空気中の水分と接触することにより室温で硬化してゴム状弾性体を生じ、弾性接着剤やシーリング材などとして有用なポリオルガノシロキサン組成物に関する。
従来から、分子鎖末端に水酸基を有するポリオルガノシロキサンに、アミノアルキル基を有するアルコキシシランおよび硬化触媒等を配合して成り、硬化途上で接触している各種基材に対して接着性を有するポリオルガノシロキサン組成物が知られている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、この組成物を硬化させてなるシリコーンゴムは、耐水接着性が低く、特にフロートガラス類に対して温水浸漬などの苛酷な環境下では、接着性が低下するという欠点があった。
また従来から、複層ガラス用のシーリング材として、前記ポリオルガノシロキサンに黒色顔料であるカーボンブラックを配合し、さらに炭酸カルシウム等の充填剤を配合してなる黒色の組成物が使用されている。そして、充填剤である炭酸カルシウムとしては、分散性を改善し機械的強度を向上させるために、ステアリン酸のような脂肪酸またはその塩で表面を処理したものが使用されている。しかし、脂肪酸をはじめとする有機酸で表面処理を施した炭酸カルシウムを配合した組成物は、炭酸カルシウムの分散性が改善されるため、加工性が向上しているものの、組成物の色が損なわれ黒色が退色しやすいという問題があった。さらに、カーボンブラックの配合により、経時的に硬化性が低下するなどの問題も有していた。
特公昭63−23226号公報
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、経時的に硬化性が低下することがなく、かつ黒色が退色するなど初期の色を損なうことのない室温硬化性ポリオルガノシロキサンを提供することを目的とする。
本発明者らは、前記した目的を達成するために鋭意検討した結果、着色剤である黒色顔料として、所定の物理化学特性を有するカーボンブラックを使用することによって、退色がなく安定した硬化性を有するオルガノポリシロキサン組成物が得られることを見出し、本発明を完成した。
本発明の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物は、(A)分子鎖末端が水酸基または加水分解性基で封鎖され、23℃における粘度が20〜1,000,000mPa・sであるポリオルガノシロキサン100重量部と、(B)充填剤として炭酸カルシウム1〜400重量部と、(C)架橋剤としてアルコキシ基を有するシラン化合物0.01〜20重量部と、(D)平均粒径が30〜80nmで、DBP吸油量が71〜200cc/100gであり、かつ蒸留水との混合液のpHが7以上のカーボンブラック0.1〜10重量部、および(E)硬化触媒として、スズ原子に結合した炭素数1〜8のブチル基以外のアルキル基を有する有機スズ化合物0.001〜10重量部をそれぞれ含み、個別に調製され保存される(a)主剤と(b)硬化剤とを配合してなる2成分型の組成物であり、前記(a)主剤は、前記(A)ポリオルガノシロキサンと、前記(B)充填剤である炭酸カルシウムの一部を含有し、前記(b)硬化剤は、前記(B)充填剤である炭酸カルシウムの残部と、前記(C)架橋剤であるアルコキシシランと、前記(D)カーボンブラック、および前記(E)硬化触媒をそれぞれ含有することを特徴とする。
本発明の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物は、黒色性に優れ良好な色味(黒色)を有し、初期の黒色が退色するなど色味が損なわれることがない。また、貯蔵安定性が良好であり、良好な硬化性が経時的に低下することがないうえに、硬さの発現が早く、加熱促進後も硬さの発現が遅くなることがない。さらに、本発明の組成物によれば、各種の基材に対して良好な接着性を示し、かつ機械的強度が良好で耐温水性に優れた硬化物を得ることができる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。実施形態の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物は、(A)分子鎖末端が水酸基または加水分解性基で封鎖され、粘度(23℃)が20〜1,000,000mPa・sであるポリオルガノシロキサンと、(B)充填剤として炭酸カルシウムと、(C)架橋剤としてアルコキシ基を有するシラン化合物と、(D)所定の物理化学特性を有するカーボンブラック(平均粒径30〜80nm、DBP吸油量25〜200cc/100g、蒸留水との混合液のpH7以上)、および(E)硬化触媒として、スズ原子に結合したブチル基以外のアルキル基(炭素数1〜8)を有する有機スズ化合物をそれぞれ含有する。以下、実施形態の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物の各成分について説明する。
(A)成分は、分子鎖末端が水酸基(ヒドロキシル基)または加水分解性基で封鎖されたポリオルガノシロキサンであり、本発明の室温硬化性組成物のベース成分である。(A)成分の粘度は、低すぎると硬化後のゴム弾性が乏しくなり、高すぎると作業性が低下することから、23℃における粘度が20〜1,000,000mPa・sの範囲が好ましく、100〜100,000mPa・sの範囲が好ましい。
また、このポリオルガノシロキサンの分子構造は、下記一般式(1)で示される直鎖状であることが好ましいが、一部分岐鎖を有する構造でもよい。
Figure 0005608909
式(1)中、Rは互いに同一でも異なっていてもよい置換または非置換の1価の炭化水素基を表し、Rは−ZSiR 3−aで表される1価の有機基を表す。ここで、Zは酸素(オキソ基)または2価の炭化水素基を表し、Rは互いに同一でも異なっていてもよい置換または非置換の1価の炭化水素基を表す。Xは水酸基(ヒドロキシル基)または加水分解性基を表し、aは1〜3の整数である。また、nは当該(A)成分の23℃における粘度を20〜1,000,000mPa・sの範囲とする数である。
としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基のようなアルキル基;ビニル基、アリル基のようなアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基のようなアリール基;2−フェニルエチル基、2−フェニルプロピル基のようなアラルキル基などが例示される。また、これらの炭化水素基の水素原子の一部が他の原子または基で置換されたもの、すなわちクロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基のようなハロゲン化アルキル基;3−シアノプロピル基のようなシアノアルキル基などの置換炭化水素基も挙げられる。合成が容易であり、かつ(A)成分が分子量の割に低い粘度を有し、硬化前の組成物に良好な押し出し性を与えること、および硬化後の組成物に良好な物理的性質を与えることから、R全体の85%以上がメチル基であることが好ましく、実質的にすべてのRがメチル基であることがより好ましい。
特に、耐熱性、耐放射線性、耐寒性または透明性を組成物に付与する場合には、Rの一部として必要量のフェニル基を、耐油性、耐溶剤性を付与する場合には、Rの一部として3,3,3−トリフルオロプロピル基や3−シアノプロピル基を、また塗装適性を有する表面を付与する場合には、Rの一部として長鎖アルキル基やアラルキル基を、それぞれメチル基と併用するなど、目的に応じて任意に選択することができる。
(A)成分の末端基Rは、式:−ZSiR 3−aで表され、ケイ素官能基である水酸基(ヒドロキシル基)または加水分解性基Xを少なくとも1個有するケイ素官能性シロキシ単位である。したがって、実施形態の(A)成分は、分子の両末端にそれぞれ水酸基(ヒドロキシル基)または加水分解性基Xを少なくとも1個有する。
末端基Rにおいて、ケイ素原子に結合するRは、互いに同一でも異なっていてもよい置換または非置換の1価の炭化水素基であり、前記したRと同様なものが例示される。Rと同一であっても異なっていてもよい。合成が容易であり、かつ加水分解性基Xの反応性に優れていることから、メチル基またはビニル基が好ましい。また、Zは2価の酸素(オキシ基)または2価の炭化水素基であり、2価の炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基のようなアルキレン基;フェニレン基などが例示される。合成が容易なことから、オキシ基またはエチレン基が好ましく、オキシ基が特に好ましい。
Xは、末端基であるRに少なくとも1個存在するケイ素官能基である水酸基(ヒドロキシル基)または加水分解性基である。加水分解性基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基のようなアルコキシ基;2−メトキシエトキシ基、2−エトキシエトキシ基のような置換アルコキシ基;イソプロペノキシ基のようなエノキシ基、メチルエチルケトオキシム基のようなケトキシマト基、アセトキシ基などが例示される。複数の水酸基または加水分解性基は、同一でも異なっていてもよい。合成の容易さ、硬化前の組成物の物性、保存中の安定性、硬化性、経済性、および広範囲の用途に用いられることから、アルコシキ基またはケトキシマト基であることが好ましい。
末端基Rにおいて、ケイ素官能基である水酸基または加水分解性基Xの数aは、1〜3個であることが好ましい。Xが水酸基であるケイ素官能性ポリジオルガノシロキサンは、例えば、オクタメチルシクロシロキサンのような環状ジオルガノシロキサン低量体を、水の存在下に酸性触媒またはアルカリ性触媒によって開環重合または開環共重合させ、直鎖状ポリジオルガノシロキサンの末端にケイ素原子に結合する水酸基を導入することにより得ることができる。
Xが加水分解性基であるケイ素官能性ポリジオルガノシロキサンは、例えば、末端に水酸基を有するポリオルガノシロキサンに、2個以上の任意の加水分解性基を有するシランを縮合させることによって合成することができる。この場合、シランの有する加水分解性基は、縮合反応によって1個が消費されるので、反応によって得られるポリオルガノシロサンの末端基RにおけるXの数は、用いられる加水分解性基含有シランが有する加水分解性基の数よりも1個少なくなる。
(A)成分の具体例としては、分子鎖末端が水酸基や加水分解性基(例えば、アルコキシル基)により封鎖されたジメチルポリシロキサン、メチルエチルポリシロキサン、メチルオクチルポリシロキサン、メチルビニルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)ポリシロキサン、ジメチルシロキサンとメチルフェニルシロキサンの共重合体、ジメチルシロキサンとメチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)シロキサンの共重合体などが挙げられる。
水酸基により封鎖された分子鎖末端としては、ジメチルヒドロキシシロキシ基、メチルフェニルヒドロキシシロキシ基などが例示され、アルコキシ基により封鎖された分子鎖末端としては、ビニルジメトキシシロキシ基、メチルジメトキシシロキシ基、トリメトキシシロキシ基、メチルジエトキシシロキシ基、トリエトキシシロキシ基などが例示される。さらに、ケトキシマト基により封鎖された分子鎖末端としては、メチルエチルケトキシマト基、ジメチルケトキシマト基、ジエチルケトキシマト基、メチルブチルケトキシマト基、メチルヘキシルケトキシマト基、エチルペンチルケトキシマト基などが例示される。
本発明の実施形態において、(B)成分である炭酸カルシウムは、補強性の充填剤であり、硬化前の組成物に高い流動性と粘稠性を付与し、耐スランプ性やチキソ性を付与する。また、この(B)成分の配合により、硬化物に高い機械的強度を付与することができる。
炭酸カルシウムとしては、重質炭酸カルシウムと合成(軽質)炭酸カルシウムの両方を使用することができる。炭酸カルシウムの粒径(平均粒径)は、0.01〜50μmの範囲であることが好ましい。炭酸カルシウムの平均粒径が50μmを超えると、硬化物の機械的特性が低下するばかりでなく、硬化物の伸張性が十分でなくなる。また、平均粒径が0.01μm未満の場合には、硬化前の組成物の粘度が著しく上昇し流動性が低下するため、好ましくない。なお、この平均粒径の値は、電子顕微鏡による画像解析によって測定された値であるが、比表面積から換算された平均粒径、粒度分布からの重量換算による50%径から求められた平均粒径、あるいはレーザー回折・散乱法で測定された平均粒径であってもよい。得られる硬化物の機械的強度の点から、炭酸カルシウムの平均粒径のより好ましい範囲は、電子顕微鏡により測定された値では0.01〜15μmの範囲、粒度分布の重量50%径からの値では0.01〜40μmの範囲、BET比表面積から換算された値では0.01〜20μmの範囲、空気透過法比表面積から換算された値では0.01〜25μmの範囲である。
このような炭酸カルシウムの表面を、ステアリン酸やパルミチン酸のような高級脂肪酸、樹脂(ロジン)酸、またはそれらの塩(ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩などの金属塩)で表面処理したものを用いてもよいし、表面未処理の炭酸カルシウムを使用してもよい。高級脂肪酸等で表面処理された炭酸カルシウムを使用した場合には、炭酸カルシウムの分散性が改善されるため、組成物の加工性が向上する。また、表面未処理の炭酸カルシウムを使用した場合は、得られた組成物の発色性(黒色)がよいという利点がある。
(B)成分である表面処理されたあるいは表面未処理の炭酸カルシウムの配合量は、前記(A)成分100重量部に対して1〜400重量部とする。(B)成分の配合量が1重量部未満では、組成物から得られる硬化物の硬さ、引張強度などの機械的強度が著しく劣り、400重量部を超えると、良好なゴム弾性を有する硬化物を得ることが困難になるばかりでなく、組成物の粘度が増大して作業が困難になる場合がある。
本発明の実施形態において、(C)成分であるアルコキシ基を有するシラン化合物は、架橋剤として働き組成物の硬化を促進する。アルコキシ基を有するシラン化合物としては、アミノアルキルアルコキシシラン、エポキシ基を含有するアルコキシシラン等を挙げることができる。
アミノアルキルアルコキシシランとしては、アミノメチルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−エチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)アミノメチルトリブトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アニリノプロピルトリエトキシシラン等が例示される。アミノアルキルアルコキシシランの配合量は、(A)成分であるポリオルガノシロキサン100重量部に対して0.05〜10重量部とすることが好ましく、より好ましくは0.05〜5重量部とする。このようなアミノアルキルアルコキシシランは、架橋剤として働き、組成物の硬化を促進するとともに、基材に対する接着性の向上、特に温水浸漬などの苛酷な条件下での接着耐久性の向上に効果を有する。
また、エポキシ基を含有するアルコキシシランとしては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシランなどが例示される。エポキシ基含有アルコキシシランの配合量は、前記(A)成分100重量部に対して10重量部以下とすることが好ましい。10重量部を超えると、硬化や接着性の発現が遅くなるばかりでなく、組成物の粘性が高くなって吐出性などの作業性が低下し、さらに硬化後のゴムが固くなりすぎることがある。
さらに、実施形態においては、架橋剤として、前記アミノアルキルアルコキシシランや前記エポキシ基含有アルコキシシランとは異なるアルコキシシランを添加することができる。そのようなアルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルセロソルブオルソシリケート、n−プロピルオルソシリケートなどの4官能アルコキシシラン類;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、2−エチルヘキシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシラン、ドデシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシラン、ドデシルトリエトキシシランなどの3官能アルコキシシラン類;メチルトリス(メチルエチルケトキシマト)シラン、メチルトリス(メチルエチルケトキシマト)シラン、ビニルトリス(メチルエチルケトキシマト)シラン、フェニルトリス(メチルエチルケトキシマト)シラン、メチルトリス(メチルブチルケトキシマト)シラン、ビニルトリス(メチルブチルケトキシマト)シラン、フェニルトリス(メチルブチルケトキシマト)シラン、テトラキス(メチルエチルケトキシマト)シラン、テトラキス(メチルブチルケトキシマト)シランなどのケトキシマトシラン類などが挙げられる。これらのアルコキシシランの部分加水分解物も使用することができる。これらのアルコキシシラン(部分加水分解物を含む。)の配合量は、前記(A)成分100重量部に対して0.1〜20重量部とすることが好ましい。
本発明の実施形態においては、(C)架橋剤として、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基のようなアルコキシ基を有するアルコキシ基含有シラン化合物を2種類以上選択して使用する場合、同種のアルコキシ基を有する化合物を用いることが好ましい。特に、同種のアルコキシ基を有する2種類以上のアルコキシシランをアミノアルキル基を有するシランと併用した場合には、組成物の硬化性がより良好となり、スナップタイム(可使時間)およびタックフリータイムの経時変化が少ないという利点がある。
本発明の実施形態において、(D)成分であるカーボンブラックは、平均粒径が30〜80nmでDBP吸油量が25〜200cc/100gであり、かつ蒸留水との混合液のpHが7以上のものである。ここで、平均粒径の値は、電子顕微鏡による画像解析によって求めた算術平均径であるが、比表面積から換算された平均粒径、粒度分布からの重量換算による50%径から求められた平均粒径、あるいはレーザー回折・散乱法で測定された平均粒径であってもよい。また、DBP吸油量は、カーボンブラック100gが吸収するDBP(ジブチルフタレート)の容量であり、JIS K6221に拠り測定された値である。さらに、pH値は、カーボンブラックと蒸留水との混合液のpHを、ガラス電極pHメーターを用いて測定した値である。pHが7未満であると、経時的に硬化性が低下する場合があり、得られる硬化物が所望の特性を示さないなどの問題を生じる。
これらの物理化学特性が前記範囲を外れたカーボンブラックを使用した場合には、初期の黒色が退色するなど色味が損なわれやすい。また、貯蔵安定性が低下し硬化性が経時的に低下する。
実施形態においては、平均粒径が30〜80nmのカーボンブラックの使用が好ましく、凝集しにくく分散しやすい点から、平均粒径が30〜55nmのものが特に好ましい。また、粒子形状が粒状であるカーボンブラックを使用することが好ましい。すなわち、粒状のカーボンブラックは、粉状物を造粒工程を経て粒状にしたものであり、粒状物と粉状物とでは見かけの密度が異なるだけで、特性上はなんら差異がない。そのうえ、粒状物には工程中での飛散を抑制する加工が施されているため、作業者の安全面や混練り・分散が容易で計量通りに仕込めるなどの利点がある。また、凝集しにくく分散が容易である。さらに、カーボンブラックの粒径(平均粒径)は、DBP給油量との兼ね合いで、選択することが重要であり、粒径が大きくかつDBP給油量が高いほうが好ましい。DBP給油量は、100〜200cc/100gの範囲が好ましく、150〜200cc/100gの範囲がより好ましい。DBP給油量が低すぎると、保存中にカーボンブラックが液分から分離しやすい。DBP給油量が高すぎる場合には、組成物の粘性が高くなりすぎるため、作業性が低下するばかりでなく、カーボンの配合量を増やすことができず、所望の黒色が得られないなどの問題を生じる。
実施形態の(E)成分である硬化触媒は、(A)成分の水酸基(ヒドロキシル基)および/または加水分解性基の縮合反応を促進し、組成物の硬化を進める働きをする触媒である。本発明の実施形態においては、硬化触媒として、ブチル基以外のアルキル基(炭素数1〜8)がスズ原子に結合した有機スズ化合物が使用される。具体的には、ジメチルスズジネオデカノエート、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズジネオデカノエート等が例示される。このような硬化触媒を使用することにより、ブチル基がスズ原子に結合した有機スズ化合物(例えば、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジネオデカノエート)を使用した場合に比べて、黒色の発色性を向上させることができる。
(E)成分である硬化触媒の配合量は、(A)成分100重量部に対して0.001〜10重量部とし、より好ましくは0.01〜5重量部とする。(E)成分が0.001重量部未満であると、硬化速度が遅すぎて実用に適さず、組成物を空気中に曝露した場合にタックフリーの被膜形成に長時間を要し、かつゴム強度の発現性が悪化することがある。また、(E)成分の配合量が10重量部を超えると、被膜形成時間が数秒間と極めて短くなるため、作業性が低下し、また耐熱性の低下などが生じることがある。
本発明の実施形態においては、これら(A)〜(E)の各成分とともに、有機溶剤、希釈剤(可塑剤)等を必要に応じて配合することができる。希釈剤としては、両末端がトリメチルシロキシ化されたポリジメチルシロキサンや、両末端がジメチルビニルシロキシ化されたポリジメチルシロキサンなどを使用することができる。また、公知の難燃剤、チクソ性付与剤、接着性向上剤(接着促進剤)、防カビ剤などを添加することも、本発明の目的を損わない限り差し支えない。
本発明の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物は、(A)〜(E)の各成分および前記したその他の成分の所定量を、乾燥雰囲気で均一に混合することにより、一液型の室温硬化性組成物として得ることができる。この組成物を空気中に暴露すると、湿分によって架橋反応が進行し、ゴム弾性体に硬化する。また、(A)成分と(B)成分を配合して成る(a)主剤と、(C)〜(E)の各成分およびその他の成分を配合して成る(b)硬化剤との二液型の室温硬化性組成物として、調製することもできる。二液型の組成物は、主剤と硬化剤を空気中で混合することにより一液型の室温硬化性組成物と同様に硬化し、ゴム弾性を有する硬化物が得られる。
さらに、二液型の組成物においては、(a)主剤が(A)成分であるポリオルガノシロキサンと(B)成分である炭酸カルシウムの一部を含有するように構成し、かつ(b)硬化剤が(B)成分である炭酸カルシウムの残量と、(C)架橋剤であるアルコキシ基含有シラン化合物と、(D)カーボンブラック、および(E)硬化触媒を含有するように構成することができる。そして、(b)硬化剤の調製において、まず(B)成分である炭酸カルシウムと(D)カーボンブラックとを混合し、炭酸カルシウムの表面にカーボンブラックを塗布した後、これを希釈剤(例えば、α,ω−ジビニルポリジメチルシロキサン)に加えて分散させた後、(C)架橋剤であるアルコキシ基含有シラン化合物と(E)硬化触媒とを加えて混合することが好ましい。このように調製することで、カーボンブラックの凝集を抑制し、カーボンブラック表面へのシラン類や硬化触媒の吸着を防止することができる。そして、このようなカーボンブラックの凝集抑制と吸着防止により、黒色の退色を低減することができるという利点がある。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中で「部」とあるのは「重量部」を、「%」とあるのは「重量%」をそれぞれ表す。また、粘度などの物性値は、全て23℃、相対湿度(RH)50%での測定値を示したものである。
実施例1
分子鎖両末端が水酸基で封鎖されたα,ω−ジヒドロキシポリジメチルシロキサン(粘度5,000mPa・s)50部に、ステアリン酸で表面処理された合成炭酸カルシウム(以下、合成炭酸カルシウムについては、単に炭酸カルシウムと示す。)であるカルファイン500(商品名;丸尾カルシウム(株)製)(電子顕微鏡法により測定された平均粒径0.05μm、BET比表面積17m/g)を添加して混合し、これを主剤とした。
また、重質炭酸カルシウムであるスーパー2000(商品名;丸尾カルシウム(株)製)(空気透過法比表面積2.0m/g、比表面積から換算された平均粒径1.1μm、粒度分布の重量50%径からの平均粒径1.7μm)12部と、表1に示す物理化学特性を有するカーボンブラック(1)20部とを混合し、重質炭酸カルシウム粒子の表面にカーボンブラック(1)を塗布したものを、両末端にビニルジメチルシリル基を有するα,ω−ジビニルポリジメチルシロキサン(粘度1,000mPa・s)の少量中に加えて分散させた後、前記α,ω−ジビニルポリジメチルシロキサンの残量(α,ω−ジビニルポリジメチルシロキサンの配合量はトータルで46.1部)、Silquest A-1630(商品名;(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製;メチルトリメトキシシランの部分加水分解物)10.6部、3−アミノプロピルトリメトキシシラン4部、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(以下、エポキシ基含有トリメトキシシランと示す。)5.3部、およびジオクチルスズジネオデカノエート2部をそれぞれ加えて混合し、これを硬化剤とした。
こうして得られた主剤と硬化剤とを100:10の重量比で混合し、ポリオルガノシロキサン組成物を得た。
実施例2〜20、比較例1〜10
実施例2〜20においては、配合する主剤各成分の種類および量を表2および表3に示すように変えるとともに、硬化剤各成分の種類および量を表4および表5に示すように変えた。それ以外は実施例1と同様にして、主剤および硬化剤をそれぞれ調製した。そして、主剤と硬化剤とを100:10の重量比で混合し、ポリオルガノシロキサン組成物を得た。
また、比較例1〜10においては、配合する主剤各成分の種類および量を表6に示すように変えるとともに、硬化剤各成分の種類および量を表7に示すように変えた。それ以外は実施例1と同様にして、主剤および硬化剤をそれぞれ調製した。そして、主剤と硬化剤とを100:10の重量比で混合し、ポリオルガノシロキサン組成物を得た。
なお、表2〜3および表6に示す主剤の組成において、ロジン酸で表面処理された炭酸カルシウムとしては、TDD(商品名;白石工業(株)製)(BET比表面積からの換算平均粒径0.14μm、BET比表面積16.0m/g)を、ロジン酸で表面処理された重質炭酸カルシウムとしては、マイクロパウダー2R(商品名;備北粉化工業(株)製)(粒度分布の重量50%径からの平均粒径1.1μm、空気透過法比表面積9.8m/g)を、未処理の重質炭酸カルシウムとしては、スーパー2000(商品名;丸尾カルシウム(株)製)(空気透過法比表面積2.0m/g、比表面積から換算された平均粒径1.1μm、粒度分布の重量50%径からの平均粒径1.7μm)をそれぞれ使用した。
また、表4〜5および表7に示す硬化剤の組成において、カーボンブラック(2)〜(9)としては、表1に示す物理化学特性を有する商品をそれぞれ使用した。また、テトラメトキシシランの部分加水分解物としてはメチルシリケート51(商品名;扶桑化学工業(株)製)を、エチルシリケート(テトラエトキシシラン)としては正珪酸エチル(多摩化学工業(株)製)を、メチルトリメトキシシランとしてはSilquest A-1630をそれぞれ使用した。さらに、エポキシ基含有トリエトキシシランは、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランを表す。
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次に、実施例1〜20および比較例1〜10で使用した硬化剤について、初期および加熱促進劣化(70℃に5日間放置)後の外観の良否を肉眼で調べた。また、実施例1〜20および比較例1〜10でそれぞれ得られたポリオルガノシロキサン組成物について、初期および加熱促進劣化(70℃に5日間放置)後の黒色度を肉眼で調べた。また、3時間後の硬さを、初期および加熱促進劣化(70℃に5日間放置)後の組成物について測定した。さらに、可使時間(スナップタイム)、タックフリータイムを測定するとともに、接着耐久性を測定・評価した。測定結果を表8〜10に示す。
なお、可使時間(スナップタイム)、タックフリータイム、および接着耐久性の測定は、それぞれ以下に示す方法で行なった。
<スナップタイムの測定>
主剤と硬化剤とを混ぜて得られたポリオルガノシロキサン組成物をヘラで混合し続け、この組成物が流動性を失い、ゴム弾性を示し始めるまでの時間を測定した。なお、測定温度は23℃であった。
<タックフリータイム>
組成物を23℃、50%RHの雰囲気中に押し出した後、指で押出し物の表面に接触して乾燥状態にあることを確認するに至る時間を測定した。
<接着耐久性の測定・評価>
JIS K5758建築用シーリング材に規定する方法に準じて、接着耐久性試験体を作成した。すなわち、主剤と硬化剤とを混合して得られたポリオルガノシロキサン組成物を2枚のフロートガラス板(JIS R3202に規定されたフロート板ガラス)の間に充填した後、温度23℃、湿度50%の条件で7日間放置し、組成物を硬化させた。こうして得られた試験体(H型試験体)について引張試験を行い、50%モジュラス(M50)、最大引張応力(Tmax)、最大荷重時の伸び(Emax)をそれぞれ調べた。合わせてシリコーンゴムの破断状態を観察し、接着性を調べた。さらに、同様の試験体を80℃の温水に14日間浸漬したものについてそれぞれ引張り試験を行い、50%モジュラス(M50)、最大引張応力(Tmax)、最大荷重時の伸び(Emax)および接着性をそれぞれ測定した。なお、破断状態におけるCFは凝集破壊(シリコーンゴム層で破壊)を、TCFは薄層破壊(ガラス板との界面でシリコーンゴムの薄層を残して破壊)を、AFは接着破壊(ガラス板とシリコーンゴムの界面で剥離)をそれぞれ表している。
Figure 0005608909
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表8〜表10の測定結果からわかるように、実施例1〜20で得られた室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物は、比較例1〜10で得られた組成物に比べて、良好な色味(黒色)を有し、加熱促進後も初期の黒色が退色することがないうえに、貯蔵安定性が良好であり、硬化性の経時的変化が少ない。さらに、硬さの発現が早く、かつ加熱促進後も硬さの発現が遅くなることが少ない。またさらに、各種の基材に対して良好な接着性を示し、かつ機械的強度が良好で耐温水性に優れた硬化物が得られている。

Claims (3)

  1. (A)分子鎖末端が水酸基または加水分解性基で封鎖され、23℃における粘度が20〜1,000,000mPa・sであるポリオルガノシロキサン100重量部と、
    (B)充填剤として炭酸カルシウム1〜400重量部と、
    (C)架橋剤としてアルコキシ基を有するシラン化合物0.01〜20重量部と、
    (D)平均粒径が30〜80nmで、DBP吸油量が71〜200cc/100gであり、かつ蒸留水との混合液のpHが7以上のカーボンブラック0.1〜10重量部、および
    (E)硬化触媒として、スズ原子に結合した炭素数1〜8のブチル基以外のアルキル基を有する有機スズ化合物0.001〜10重量部
    をそれぞれ含み、
    個別に調製され保存される(a)主剤と(b)硬化剤とを配合してなる2成分型の組成物であり、
    前記(a)主剤は、前記(A)ポリオルガノシロキサンと、前記(B)充填剤である炭酸カルシウムの一部を含有し、
    前記(b)硬化剤は、前記(B)充填剤である炭酸カルシウムの残部と、前記(C)架橋剤であるアルコキシシランと、前記(D)カーボンブラック、および前記(E)硬化触媒をそれぞれ含有することを特徴とする室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物。
  2. 前記(C)成分として、互いに同種のアルコキシ基を有する2種類以上のアルコキシ基含有シラン化合物を含有することを特徴とする請求項1記載の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物。
  3. 前記(E)硬化触媒が、スズ原子に結合した前記アルキル基がメチル基である有機スズ化合物であることを特徴とする請求項1または2記載の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物。
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