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JP5699574B2 - 車体前部構造 - Google Patents

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本発明は、フロントピラーとその下方に配置されたダッシュサイドパネルおよびサイドボディパネルを有する車体前部構造に関するものである。
従来から、フロントウィンドウの下方の両側方に配置された左右一対のカウルサイドメンバを有する自動車の構造は、カウルサイドメンバがサイドボディパネルに結合する構造になっている。このカウルサイドメンバにより、車体の前面衝突時にエネルギーを吸収し、サイドボディパネルにエネルギーを分散させることにより、ダッシュパネルの変形量を低減して乗員に加わる荷重値を下げる効果がある。
また、前面衝突時の衝撃吸収性能をより向上させたい場合は、衝突エネルギーをカウルサイドメンバを介してフロントピラーの上側方向に効率よく分散させることが重要である。しかし、一般的に衝突エネルギーの入力方向とフロントピラーの延設方向が異なることから、フロントピラーが折れる方向に衝突エネルギーが作用してしまう。このため、フロントピラーに、より多くの衝突エネルギーを負担させることができなかった。
特に、フロントピラーガラスを有する自動車の場合、一般的にフロントピラーがガラス部分で前側ピラーと後側ピラーに分岐しているため、その分岐位置周辺において前側ピラーのピラー太さを急激に変化させて衝撃吸収性能を維持している。このため、ピラー太さが急変している箇所に応力集中が発生し、折れ易い構造となっている。この場合、単に前側ピラーのピラー太さを太くしただけでは、衝突エネルギーの入力方向とフロントピラーの延設方向が相違するため、フロントピラーによる衝撃吸収性能が低下してしまう。
これに対し、例えば、特許文献1には、フロントピラーの折れを防止するために、該当部に複数のリーンフォースパネル(reinforce panel 補強パネル)を設定する等の対策を施した点が開示されている。
特開2003−237622号公報
しかしながら、特許文献1では、複数のリーンフォースパネルを設定するために部品点数の増加および作業工数の増加を招く等、多くの費用が発生してしまうという課題があった。このため、従前からフロントピラーによる衝撃吸収性能を維持しつつ、簡単な構成で特定の構成部材(例えばサイドボディパネル)への応力集中を防止することのできる車体構造の提案が要望されている。
本発明は、このような課題に鑑み、簡単な構成で前面衝突時におけるサイドボディパネルへの応力集中を防ぎフロントピラーにも衝突エネルギーの分散を図り得る車体前部構造を提供することを目的としている。
上記課題を解決するために、本発明にかかる車両用外装部材の取付け構造の代表的な構成は、フロントウィンドウの両側方に配設され内側にインナパネルを有する左右一対のフロントピラーと、フロントピラーの下方に配置された左右一対のダッシュサイドパネルおよびサイドボディパネルとを有する車体前部構造において、ダッシュサイドパネルと、ダッシュサイドパネルとサイドボディパネルとの間に配置された補強パネルと、を閉断面構造に接合して形成された第1の中空部と、第1の中空部内にフロントピラーから延設されたインナパネルと補強パネルとを閉断面構造に接合して形成された第2の中空部と、第2の中空部を形成している補強パネル部分に固定部材で固定され、フロントウィンドウの両側下方に配置された左右一対の補強メンバとを有することを特徴とする。
本発明によれば、第1の中空部内に延設されたフロントピラーのインナパネルと補強パネルとを閉断面構造に接合して第2の中空部を形成したことで、この第2の中空部を形成している補強パネル部分と補強メンバとを一体的に固定することが可能となる。このため、前面衝突時に補強メンバから伝達された衝突エネルギーは、補強パネルと補強パネルに接合されたインナパネルとに効率的に伝達される。こうして、衝突エネルギーを、補強パネル(サイドボディパネル)のみでなくフロントピラーのインナパネルにも負担させることが可能となる。
また、インナパネルは、第1の中空部の車体前方寄りの接合部近傍にまで延設されているのが好ましい。
この構成により、第2の中空部は可及的に車体前方寄りに形成されるため、この車体前方寄りの位置から補強パネルを介してインナパネルが接続され、このインナパネルに前面衝突時の衝突エネルギーを負担させることが可能となる。
さらに、補強メンバは、補強パネルとの固定部側がインナパネルに向けて延設されているとよい。
このように、補強メンバの固定部側(後端側)をインナパネルに向けて延設させることで、補強メンバとインナパネルとが固定部付近で寸法的に重複し、その結果、補強メンバとインナパネルとは一体的かつ確実に固定される。こうして、補強メンバから伝達された衝突エネルギーの多くが、補強パネルのみでなくフロントピラーにも伝達されることになる。
本発明によれば、簡単な構成で前面衝突時におけるサイドボディパネルへの応力集中を防ぎフロントピラーにも衝突エネルギーの分散を図り得る車体前部構造を提供することができる。
本実施形態の車体前部構造が適用された車両の要部斜視図である。 図1の断面側面図である。 図2の拡大断面側面図である。 図3にカウルサイドメンバを追加した拡大断面側面図である。 図4のV−V線に沿う断面図である。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。
なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。また、本実施形態において、説明の便宜上、「上」は鉛直上方、「下」は鉛直下方、「左右」は車幅方向とする。
図1は、本実施形態の車体前部構造が適用された車両の要部斜視図であり、図2は、その断面側面図である。
図1および図2において、車体100の前部は、フロントウィンドウ110の両側方に配設される左右一対のフロントピラー112と、このフロントピラー112の下方に配置された左右一対のダッシュサイドパネル116およびサイドボディパネル118とを有している。
ダッシュサイドパネル116は、エンジンルームと車室とを仕切るダッシュパネル114の車体幅方向の両端に配置されている。また、ダッシュサイドパネル116およびサイドボディパネル118の間には、ヒンジピラー補強パネル120が介装されている。
サイドボディパネル118の車体前部には、カウルサイドメンバ(補強メンバ)122が一体的に接合されている。なお、車体左右の前端にはフロントバンパ124が設けられている。
フロントピラー112は、車体前後に分岐された前側ピラー112aと後側ピラー112bとを有している。前側ピラー112aと後側ピラー112bとの間には、ピラーガラス113が装着されている。
図3は、図2の拡大断面側面図であり、図4は、図3にカウルサイドメンバ122を追加した拡大断面側面図、図5は、図4のV−V線に沿う断面図である。
図3および図4に示すように、フロントピラー112の前側ピラー112aはフロントピラーインナパネル(インナパネル)126を有し、このフロントピラーインナパネル126と不図示のフロントピラーアウタパネルとは閉断面構造に接合されている。なお、この閉断面構造により、前側ピラー112aには内側に中空部(空洞部)が形成されるため、高剛性を有するという特徴を有している。
ここで、本実施形態では、図5に示すように、ダッシュサイドパネル116と、該ダッシュサイドパネル116とサイドボディパネル118との間に配置されたヒンジピラー補強パネル(補強パネル)120とを閉断面構造に接合して第1の中空部128が形成されている。また、この第1の中空部128内に延設されたフロントピラーインナパネル126とヒンジピラー補強パネル120とを閉断面構造に接合して、第2の中空部130が形成されている。この第2の中空部130を形成しているヒンジピラー補強パネル120部分には、ボルト(固定部材)132を用いて共締めにより一体的に固定されたカウルサイドメンバ(補強メンバ)122が設けられている。
なお、カウルサイドメンバ122は、エンジンフード(図示せず)とフロントウィンドウ110の間の車体両側部にそれぞれ配置された補強部材である。
フロントピラーインナパネル126は、第1の中空部128の内側空間を区画するようにフロントピラー112から車体下方に向けて延設されている(図3参照)。
なお、ヒンジピラー補強パネル120は、主としてサイドボディパネル118に加わる衝撃エネルギー(衝撃荷重)を負担するため、サイドボディパネル118に近接して配置されるのが好ましい。
こうして、図3〜図5に示すように、前側ピラー112aを構成しているフロントピラーインナパネル126の形状を変更して(すなわち、下方に延ばして)、第1の中空部128内に別の第2の中空部130を形成したものである。このとき、フロントピラーインナパネル126の下端を略鉛直下方に垂下させ(図3参照)、閉断面構造を下方に延ばして、サイドボディパネル118の先端部(車体前方寄り)にまで延設させている。
このように、第2の中空部130は可及的に車体前方寄りに形成されている。こうして、第2の中空部130が車体前方寄りに形成されると、前面衝突時にカウルサイドメンバ122から伝達された衝突エネルギーは、車体前方寄りの位置でフロントピラー112側に伝達される。こうして、車室に伝達される前に衝撃エネルギーが吸収される。
本実施形態によれば、第2の中空部130を形成しているヒンジピラー補強パネル120(およびサイドボディパネル118)の車体前方寄りの部分に、カウルサイドメンバ122をボルト132により共締めして一体的に固定している。これにより、カウルサイドメンバ122から伝達された衝突エネルギーを、ヒンジピラー補強パネル120とヒンジピラー補強パネル120に接合されたフロントピラーインナパネル126とに効率的に分散させることができる。なお、固定手段はボルト132に限らず溶接等であってもよい。
こうして、前面衝突時の衝突エネルギーを、ヒンジピラー補強パネル120(およびサイドボディパネル118)のみでなくフロントピラーインナパネル126にも負担させることが可能となる。これは、ヒンジピラー補強パネル120とフロントピラーインナパネル126とは、閉断面構造に一体的に接合されているからである。
こうして、前面衝突時におけるサイドボディパネル118への応力集中を防止して、フロントピラーインナパネル126にも多くの衝突エネルギーを負担させることができる。これにより、フロントピラー112による衝撃吸収性能を維持しつつ前側ピラー112aと後側ピラー112bとの分岐部分における急激な断面積の変化をなくすことができる。
なお、本実施形態において、ダッシュサイドパネル116とヒンジピラー補強パネル120とは、ダッシュサイドパネル116の後端(車体後方寄り)のフランジ部116aとヒンジピラー補強パネル120の前端(車体前方寄り)のフランジ部120aとが、スポット溶接等により接合されて第1の中空部128が形成されている。
また、フロントピラーインナパネル126とヒンジピラー補強パネル120とは、第1の中空部128の車体前方において、フロントピラーインナパネル126の後端のフランジ部126aと前端のフランジ部126bとが、スポット溶接等により接合されて第2の中空部130が形成されている。
また、サイドボディパネル118とヒンジピラー補強パネル120とは、サイドボディパネル118の後端のフランジ部118aと前端のフランジ部118bとが、スポット溶接等により接合されている。
さらに、図4に示すように、カウルサイドメンバ122は、ヒンジピラー補強パネル120との固定部側(後端側)がフロントピラーインナパネル126に向けて延設されている。すなわち、カウルサイドメンバ122は、ヒンジピラー補強パネル120との固定部側に延設部122aを有していて、この延設部122aがフロントピラー112に向けて後端側が高くなるように傾斜している。そして、この延設部122aがフロントピラーインナパネル126にボルト132により固定されている。
このように、カウルサイドメンバ122の固定部側(後端側)をフロントピラーインナパネル126に向けて延設させたことで、カウルサイドメンバ122とフロントピラーインナパネル126の延設された下端(図3参照)とが固定部付近で寸法的に重複し、その結果、両者を一体的かつ確実に固定することができる。こうして、カウルサイドメンバ122から伝達された衝突エネルギーの多くを、ヒンジピラー補強パネル120(およびサイドボディパネル118)とフロントピラーインナパネル126とに伝達することができる。
以上のように構成された本実施形態の作用について、前述した図2を参照しながら説明する。
図2において、車両が前面衝突した際、衝突エネルギーは、矢印A方向にフロントバンパ(図示せず)からフロントバンパ124に伝達され、さらに、矢印B方向にカウルサイドメンバ122に伝達される。また、カウルサイドメンバ122に伝達された衝突エネルギーは、ボルト132で固定されたフロントピラーインナパネル126を介して、矢印C方向に前側ピラー112aに伝達されるとともに、矢印D方向に、ボルト132で共締めされたヒンジピラー補強パネル120(およびサイドボディパネル118)に伝達される。
このように、本実施形態によれば、前面衝突時にフロントピラー112による衝撃吸収性能を維持しつつ、簡単な構成でフロントバンパ124から入力された衝突エネルギーを、フロントピラーインナパネル126とヒンジピラー補強パネル120とに効率的に分散させることができる。これにより、前面衝突時の衝撃エネルギーによるサイドボディパネル118への応力集中を防止することができる。
[変形例]
以上の本実施形態では、前側ピラー112aのフロントピラーインナパネル126を下方に延ばして第2の中空部130を形成した場合について説明したが、これに限らない。
例えば、図示しないが、後側ピラー112bのインナパネルを下方に延ばして、このインナパネルとヒンジピラー補強パネル120とを閉断面構造に接合して、第2の中空部(130に相当)を形成するようにしてもよい。この場合は、第2の中空部(130に相当)を、前述したように可及的に車体前方寄りに形成するのが望ましい。
さらに、この第2の中空部(130に相当)を形成しているヒンジピラー補強パネル120部分に、サイドボディパネル118およびカウルサイドメンバ122をボルト132で共締め固定する。なお、この場合は、カウルサイドメンバ122の延設部122aは、後側ピラー112bのインナパネルに向けて延設するとよい。
本変形例によっても、前面衝突時に、簡単な構成でサイドボディパネル118への応力集中を防ぎ、フロントピラー112に衝突エネルギーの分散を図ることができる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
本発明は、カウルサイドメンバを有する自動車のフロントピラー構造に利用することができる。
100・・・車体、110・・・フロントウィンドウ、112・・・フロントピラー、112a・・・前側ピラー、112b・・・後側ピラー、113・・・ピラーガラス、114・・・ダッシュパネル、116・・・ダッシュサイドパネル、116a・・・フランジ部、118・・・サイドボディパネル、118a・・・フランジ部、118b・・・フランジ部、120・・・ヒンジピラー補強パネル、120a・・・フランジ部、122・・・カウルサイドメンバ、122a・・・延設部、124・・・フロントバンパ、126・・・フロントピラーインナパネル、126a・・・フランジ部、126b・・・フランジ部、128・・・第1の中空部、130・・・第2の中空部、132・・・ボルト

Claims (2)

  1. フロントウィンドウの両側方に配設され内側にインナパネルを有する左右一対のフロントピラーと、該フロントピラーの下方に配置された左右一対のダッシュサイドパネルおよびサイドボディパネルとを有する車体前部構造において、
    前記ダッシュサイドパネルと、該ダッシュサイドパネルと前記サイドボディパネルとの間に配置された補強パネルと、を閉断面構造に接合して形成された第1の中空部と、
    前記第1の中空部内に前記フロントピラーから延設された前記インナパネルと前記補強パネルとを閉断面構造に接合して形成された第2の中空部と、
    前記第2の中空部を形成している前記補強パネル部分に固定され、前記フロントウィンドウよりも前方に配置された左右一対の補強メンバとを有し、
    前記インナパネルは、前記第1の中空部の車体前方寄りの接合部近傍にまで延設されていて、
    前記補強メンバはその後端側で前記補強パネルに固定され、
    前記補強メンバは、前記後端側に位置し前記インナパネルを前後方向に跨いでいる延設部を有することを特徴とする車体前部構造。
  2. 前記インナパネルは、前記補強メンバの前記延設部の高さまで延設されていることを特徴とする請求項1に記載の車体前部構造。
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