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JP5699128B2 - イソシアネートの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、アミンとホスゲンを場合により不活性媒体の存在下において反応させることによりイソシアネートを製造する方法に関する。アミンとホスゲンは、最初に混合されて反応器内でイソシアネートに変換する。反応器から出るイソシアネート及び塩化水素を含む反応ガスは、反応ガス及び生成物流の混合物としての急冷媒体を形成するための液状急冷媒体が付与されて急冷される。
アミンをホスゲン化することによってイソシアネートを製造する方法は、原則として、液相または気相のホスゲン化によって実現される。気相ホスゲン化は、高い選択性、有毒なホスゲンの低い滞留性及び要求されるエネルギーの減少量の点において注目に値する。
気相ホスゲン化では、アミン含有反応物流及びホスゲン含有反応物流がそれぞれ気相状態で混合される。アミン及びホスゲンは、イソシアネートを得るために放出される塩化水素(HCI)と反応される。アミン含有反応物流は一般的に液相に存在し、気化せしめられ、及び任意的にホスゲン含有流と混合される前に過熱される。
気相でイソシアネートを製造する関連の方法は、例えば、EP−A1319655またはEP−A1555258で開示される。
他の反応を回避すべく、反応の終了後に反応混合物を冷却することが必要である。この目的を達成するためには、例えば、液体急冷部が用いられる。このような液体急冷部は、例えば、EP−A1403248またはDE−A10 2006 058 634で開示される。冷却用に添加される急冷媒体は、50〜200℃の範囲の温度を有する。液流は、反応ガスに冷却状態で吹き付けられ、温度がおよそ100〜200℃に急速に達する。これは、高濃度イソシアネート液相及び低イソシアネート気相を備えた二相性混合物を形成する。この二つの相は、共通の分離工程または場合により分離工程に送られる。例えば、一方では塩化水素及びホスゲンを分離する蒸留工程、他方では、イソシアネートを分離する蒸留工程である。
EP−A1319655 EP−A1555258 EP−A1403248 DE−A10 2006 058 634
例えば、EP−A1403248またはDE−A10 2006 058 634で開示された液体急冷部の欠点は、液体湿潤度の低い壁領域が液体急冷部内で発生し、または壁領域の液状膜が分解し、液滴化された凝縮物が十分に速く流下しなくなることである。長い滞留時間のために、結果として、好ましくない他の反応が発生したり、液体急冷部の壁に固体が沈殿したりすることとなる。これにより、歩留損が発生し、プラントの運転時間に悪影響を及ぼすこととなる。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、他の反応の発生及び固体沈殿の発生を抑制しまたは大幅に削減する、アミンとホスゲンを反応させてイソシアネートを製造する方法を提供することにある。
本発明の目的は、アミンとホスゲンを場合により不活性媒体の存在下において気相と反応させることによりイソシアネートを製造する方法によって達成され、アミンとホスゲンを最初に混合して反応器内でイソシアネートに変換させる工程、反応器から出るイソシアネート及び塩化水素を含む反応ガスに液状急冷媒体を添加して反応ガスを急冷部内で冷却し、反応ガス及び急冷媒体との混合物を生成物流として形成する工程、急冷部の壁部を液体で本質的に全体的にぬらす(湿潤化する工程を有することを特徴とする製造方法により達成される。
急冷部の壁部を液体で全体的にぬらす(湿潤させることで、液滴化された凝縮物が過度に緩やかに流下することを防止する。従って、壁部で、他の反応が生じたり固体が沈殿したりすることが抑制される。壁部を液体でぬらした(湿潤させた結果、壁部で凝縮された反応混合物は、液体とともに急冷部から排出される。これにより、急冷部の壁部には固体が付着しないこととなる。
本発明において、“本質的に全体的にぬらす(湿潤化する”とは、反応混合物と接触しうる液体急冷部の全ての壁部が、液体でぬらされている(湿潤化されていることを意味する。ぬらされなくともよいのは、反応混合物によってぬらされない(湿潤化されない急冷部の領域のみである。
イソシアネートを製造するために、好ましくは、ホスゲンとアミンは最初に、反応物質に添加するために混合されたアミンとホスゲンの混合領域に供給される。続いて、イソシアネートへの変換がなされる反応器に反応混合物が供給される。反応器内でのアミンとホスゲンの変換は、気相で行われることが好ましい。このため、反応器中の絶対圧力は、好ましくは0.3〜3バールの範囲内、より好ましくは0.8〜3.0バールである。温度は、好ましくは250〜550℃の範囲内、特に300〜500℃の範囲内である。
気相で反応を実行するために、気相の形態でアミンとホスゲンを添加することが好ましい。このため、アミンは、200〜400℃の範囲内の温度を有することが好ましい。添加されるアミンの絶対圧力は、0.05〜3バールの範囲内であることが好ましい。添加されるホスゲンの温度は、250〜450℃の範囲内であることが好ましい。このため、ホスゲンは、当業者に知られた手法によって、添加する前に一般的に加熱される。
ホスゲン及びアミンを加熱するため、及びアミンを気化させるために、例えば、電気加熱または燃料の燃焼による直接または間接加熱が用いられる。用いられる燃料は、典型的には燃料ガス、例えば天然ガスである。しかし、アミンの圧力を低下させて沸騰温度を低下させるためには、例えば、蒸気による加熱も可能である。蒸気の圧力は、アミンの沸騰温度に従って選択される。蒸気の好適な蒸気圧力は、例えば、40〜100バールの範囲内である。これにより、蒸気の温度は250〜311℃の範囲内で生ぜしめられる。しかし、アミンを気化させるためには、311℃以上の温度の蒸気を用いることも可能である。
一般的に、複数の段階において、アミンを反応温度まで加熱することが必要である。一般的に、この目的で、アミンは最初に予備加熱され、気化され過熱される。一般的に、気化には、最も長い滞留時間を費やすことで、アミンの分解に導く。これを最小にするために、例えば、低圧によって生じる低温下での気化が有効である。気化したアミンを過熱して気化後に反応温度とするためには、一般的には、蒸気による加熱では不十分である。従って、過熱のためには、電気加熱または燃料の燃焼による直接または間接加熱が典型的に用いられる。
アミンの気化に対して、一般的に、ホスゲンは極めて低温で気化する。このため、ホスゲンは、一般的に、蒸気を用いて気化させることが可能である。しかし、ホスゲンを反応温度まで熱するために必要な過熱は、一般的に、電気加熱、または燃料の燃焼による直接または間接加熱のみによって可能となる。
イソシアネートを製造するためにアミンをホスゲン化することに用いられる反応器は、当業者に知られているものである。一般に、用いられる反応器は、管状の反応器である。反応器では、アミンとホスゲンが反応し、イソシアネート及び塩化水素が得られる。典型的には、反応器で形成される反応ガスが、形成されるイソシアネート及び塩化水素と同様に、ホスゲンを含むように、ホスゲンが過度に添加される。
管状の反応器を用いることに加えて、立方体状の反応チャンバを用いることも可能である。例えば、プレート状の反応器である。あらゆる所望の断面形状を有する反応器を用いることが可能である。
イソシアネートを製造するために用いることができるアミンは、モノアミン、ジアミン、トリアミンまたは多官能価アミンである。モノアミンまたはジアミンを用いることが好ましい。用いられるアミンによれば、モノイソシアネート、ジイソシアネート、トリイソシアネートまたは多官能価イソシアネートが得られる。本発明に係る方法では、モノイソシアネートまたはジイソシアネートを用いることが好ましい。
アミン類及びイソシアネート類は、脂肪族、脱環式または芳香族化合物である。アミン類は、好ましくは脂肪族または脱環式、より好ましくは脂肪族化合物である。
脂環式イソシアネートは、少なくとも1つの脂環式環系を含むものである。
脂肪族イソシアネートは、イソシアネート基だけを直鎖状または分枝鎖状に結合しておくものである。
芳香族イソシアネートは、少なくとも1つの芳香族環系と結合した少なくとも1つのイソシアネート族を含むものである。
「(環式)脂肪族イソシアネート」の語は、ここでは、脂環式及び/または芳香族イソシアネートの意で用いられている。
芳香族モノ−及びジイソシアネートの例は、例えば、フェニールイソシアネート、モノマー2,4’−及び/または4,4’−メチレンジ(フェニールイソシアネート)(MDI)、2,4−及び/または2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)及び1,5−または1,8−ナフチルジイソシアネート(NDI)といった6〜20個の炭素原子を有するものが好ましい。
(環式)脂肪族イソシアネートの例は、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(1,6−ジイソシアネートヘキサン)、1,8−オクタメチレンジイソシアネート、1,10−デカメチレンジイソシアネート、1,12−ドデカメチレンジイソシアネート、1,14−テトラデカメチレンジイソシアネート、1,5−ジイソシアネートペンタン、ネオペンタンジイソシアネート、2−メチル−1、5−ジイソシアナトペンタン、リシンイソシアネートの誘導体、テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)、トリメチルヘキサンジイソシアネートまたはテトラメチルヘキサンジイソシアネート、及び3(または4)、8(または9)−bis(イソシアネートメチル)トリシクロ−[5.2.1.02,6]デカン異性体混合物、及び1,4−、1,3−または1,2−ジイソシアネートシクロヘキサン、4,4’−または2,4’−ジ(イソシアネートシクロヘキシル)メタン、1−イソシアネート−3,3,5−トリメチル−5−(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート)、1,3−または1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、2,4−または2,6−ジイソシアネート−1−メチルシクロヘキサンのような脂環式ジイソシアネートが好ましい。
好適な(環式)脂肪族ジイソシアネートは、1,6−ジイソシアネートヘキサン、1−イソシアネート−3,3,5−トリメチル−5−(イソシアネートメチル)シクロヘキサン及び4,4’−ジ(イソシアネートシクロヘキシル)−メタンが挙げられる。特に好適なのは、1,6−ジイソシアネートヘキサン、1,5−ジイソシアネートペンタン、1−イソシアネート−3,3,5−トリメチル−5−(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、及び4,4’−ジ(イソシアネートシクロヘキシル)メタンである。
イソシアネートを得る反応に用いられる本方法で用いられるアミンは、中間物及びイソシアネートが選択された反応状態の下でガス状のフォーム中に存在するアミンである。反応状態の下で反応の持続時間を超えて2モル%以下程度まで分解するアミンが好適であり、より好適には1モル%以下であり、最も好適なのは0.5モル%以下である。特に好適なアミンは、2〜18個の炭素原子を有する脂肪族または脂環式炭化水素ベースのジアミンである。このジアミンの例としては、1,6−ジアミノヘキサン、1,5−ジアミノペンタン、1,3−bis(アミノメチル)シクロヘキサン、1−アミノ−3,3,5−トリメチル−5−アミノメチルシクロヘキサン(IPDA)、及び4,4−ジアミノシクロヘキシルメタンが挙げられる。1,6−ジアミノヘキサン(HDA)を用いることが好適である。
本発明の方法には、大掛かりな分解工程を経ることなくガス状態に変換される芳香族アミンを、同様に用いることができる。好適な芳香族アミンの例は、2,4−または2,6異性体またはその混合物(例えば80:20〜65:35(モル/モル)混合物)としてのトリレンジアミン(TDA)、ジアミノベンゼン、2,6−キシリジン、ナフチルジアミン(NDA)及び2,4’−または4,4’−メチレン(ジフェニルジアミン)(MDA)、またはそれらの混合物、好ましくはジアミン、特に好ましくは2,4−及び/または2,6−TDAまたは2,4’−及び/または4,4−MDAが挙げられる。
モノイソシアネートを製造するために、脂肪族、脂環式または芳香族アミン、典型的にはモノアミンを用いることができる。好適な芳香族モノアミンは、特にアニリンである。
気相ホスゲン化では、反応の過程で生じた混合物、例えば反応物(アミン及びホスゲン)、中間物(特に中間物として形成されるモノ−及びジカルバモイルクロライド)、最終製品(ジイソシアネート)、及び計測されたあらゆる不活性混合物が、反応状態の下で気相中に残存する。これら、または他の成分が気相から付着、例えば反応炉壁または装置の他の構成要素に付着すると、これらの付着物は、作用を受ける装置等の構成要素における熱伝導または流動性に不具合を生じさせることとなる。遊離アミノ基と塩化水素から生じるアミン塩酸塩の発生にとって、これは特にあてはまることである。生じたアミン塩酸塩は付着しやすく、再度気化するのが困難だからである。
副生成物の生成を防止するために、ホスゲンを過度に供給することが好ましい。反応に最低限必要な割合のアミンを供給するために、アミンに不活性ガスを混合することが可能である。アミン中の不活性ガスの割合は、アミンとホスゲンのための供給オリフィスの所定の形状に供給されるアミンの量を調節するようにすることができる。添加される不活性媒体は、反応チャンバ内で気相の形態で存在し、反応の過程で生じた混合物と反応しない。用いられる不活性媒体は、例えば、窒素、ヘリウムやアルゴンといった希ガス、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、トルエン、キシレン、クロロナフタレン、デカヒドロナフタレン、二酸化炭素または一酸化炭素といった芳香族炭化水素である。しかし、不活性媒体として、窒素及び/またはクロロベンゼンを用いることが好ましい。
しかし、一方で、例えば、ホスゲンの過剰量化を回避するために、ホスゲンに不活性媒体を添加することも可能である。
一般に、アミンまたはホスゲンへの不活性媒体のガス容量の比率が0.0001〜30より少ない、好ましくは0.01〜15より少ない及びより好ましくは0.1〜5より少なくなる量で、不活性媒体が添加される。
望まれない副生成物の形成を減少または妨げるため、及び生成されたイソシアネートの分解を抑制するために、反応ガスは、反応後に直ちに急冷される。このため、好適な液状の急冷媒体が添加される。急冷媒体の気化の結果、熱の吸収及び反応ガスが急速に冷却される。
本発明によれば、急冷媒体は、急冷部で冷却された生成物流の一部を含む。これは、冷却に用いられる溶媒、及び反応器で生成されたイソシアネートを含む。
パイプライン、調節装置及び他の器具部材、特に急冷部の噴霧器で形成する付着物の発生を防ぐために、急冷媒体中の任意の固形粒子が、急冷部へ加えられる前に除去される。
液体で急冷部の壁部を湿潤化するために、第1の実施の形態では、壁部を湿潤化する液体を、ノズルで壁部に噴射する。一方、例えば、オーバーフローまたは孔や溝といった任意のフィードを介して、液体で供給して壁部を湿潤化することも可能である。
壁部をぬらす液体をノズル(噴射部)で壁部に噴射する際には、頂部から、及び/または底部から急冷部内に液体を噴射することができる。
例えば、頂部から急冷部内に液体を噴射する場合、噴射される液体は、反応ガスの流れ方向の速度成分、及び反応ガスの流れ方向に対して直交する速度成分を有する。液体が底部から噴射された場合は、壁部の湿潤化した急冷部内に噴射される液体は、反応ガスの流れ方向に対して直交する速度成分、及び反応ガスの流れの逆方向の速度成分を有する。
液体で急冷部の壁部を完全にぬらすことを可能にするために、液体の一部のみが急冷部内で気化し、そして壁部を完全にぬらすのに十分に多い部分が気化しないように、噴射される液体の量が設定される
ノズルを介して壁部に液体を噴射すると、壁部を湿潤化する液体と急冷媒体とを同じノズルで噴射するために用いることができる。壁部を湿潤化する液体と急冷媒体とは、同じノズルを介して混合物としてクエンチ部に噴射することができる。しかし、例えば、初めに、壁部を湿潤化する液体を噴射し、次に、二物質ノズルを用いて急冷物質を噴射するようにしてもよい。急冷媒体及び壁部を湿潤化する液体が同じノズルまたは二物質ノズルを介して噴射される場合は、これらは頂部から噴射されることが好ましい。しかし、急冷媒体及び壁部を湿潤化する液体は、異なったノズルを用いて噴射することが好ましい。
加えて、壁部を湿潤化する液体は、急冷部の頂部及び底部から噴射することもできる。この場合、例えば、ノズルを介して頂部から液体を噴射し、同時に、急冷媒体を噴射し、かつ、ノズルを介して底部から液体及び壁部を湿潤化する液体を噴射する。しかし、ここで、底部から液体を噴射するノズルを介して、急冷媒体を付加的に噴射することも可能である。
急冷媒体及び壁部を湿潤化させる液体は、異なった方向から噴射することが可能である。急冷媒体及び壁部を湿潤化させる液体は、反応ガスの流れ方向に沿って、流れの逆方向に沿って、または反応ガスの流れ方向に対して任意の角度から噴射することができる。
均質な液体湿潤及び壁部における液体被覆の十分な厚みは、壁部の液体の蓄積のために好適な表面構造によって促進される。
更なる他の実施の形態では、湿潤化される壁部は多孔質構造を備え、壁部を湿潤化する液体は壁部の細孔を通過せしめられる。例えば、液体は、外部の貯蔵容器から高圧で細孔を通過せしめられる。壁部をアウタジャケットとして構成することが可能であり、かつ壁部の細孔を通してアウタジャケットに液体を通過せしめることも可能である。細孔への液体の強制通過は、壁部を液体で本質的に完全に湿潤化するという作用を達成する。多孔質壁部を介した液体の強制通過は選択的であり、ノズル、オーバフローまたは他の供給手段を加えて行ってもよい。
一の実施の形態では、壁部を湿潤化する液体は、少なくとも一種の低沸点物及び/または少なくとも一種の相対的に高沸点な液体を含み、この相対的に高沸点な液体は、壁部を湿潤化させるために用いることができ、かつ完全には気化しない任意の液体であることを意味する。
液体が低沸点物を含む場合は、低沸点物と急冷媒体とが同じ液体であることが好ましい。より好適には、低沸点物及び急冷媒体は、イソシアネート及び/または少なくとも一種の溶媒を含む。
低沸点物と急冷媒体とが異なる場合は、例えば、低沸点物として一種の溶媒、及び急冷媒体としてイソシアネート及び任意の少なくとも一種の溶媒を含む液体を用いることができる。
低沸点物及び/または急冷媒体がイソシアネートを含む場合は、低沸点物または急冷媒体に存在するイソシアネートは、反応で生成されたイソシアネートとして同じであることが好ましい。イソシアネートが低沸点物及び/または急冷媒体に存在する場合は、反応で生成されたイソシアネートが急冷部及び任意の下流の冷却段階で最初に冷却され、冷却後に、副流が壁部を湿潤化する液体または急冷媒体として用いられることが特に好ましい。
壁部を湿潤化する液体または低沸点物として、急冷部を出た物質の混合物の一部を用いることも可能である。これは、イソシアネートと同様に、用いられた付加的な任意の溶媒、及び場合によってはホスゲンと塩化水素の残留物を含んでいてもよい。
壁部を湿潤化する液体とは別に急冷媒体が使用される場合、あるいは急冷媒体及び壁部を湿潤化する液体以外の急冷媒体が、異なる付加要素を介して供給される場合には、急冷部内の反応ガスの急速な冷却を達成するために液状の急冷媒体が添加されることが好適である。急冷媒体の温度は、0〜250℃の範囲、特に20〜220℃の範囲が好適である。高温の反応ガス中に急冷媒体を噴射することは、急冷媒体を加熱し、及び/または気化させる。急冷媒体の加熱と気化に必要な熱は、反応ガスから得られ、反応ガスはこのようにして冷却される。反応ガスが冷却される温度は、例えば、添加された急冷媒体の量及び温度により調整される。
急冷部に添加される急冷媒体の温度を設定するためには、急冷媒体は熱交換器を通過させることが好ましい。熱交換器における急冷媒体の入り口温度に応じて、急冷媒体は熱交換器内で加熱または冷却することが可能である。例えば、急冷媒体として用いられる生成物流の一部が急冷部の下流から直接的に取り出される場合は、冷却が要求される。例えば、急冷媒体として用いられる生成物流の一部が加工領域の終端部分から取り出され、急冷部に加えられるべき急冷媒体の温度が望ましい温度よりも低い場合は、加熱が生じる。しかし、一般的に、急冷部に加えられる前に急冷媒体を冷却することが必要となる。
添加される、壁部を湿潤する液体の温度は、好適には0〜250℃の範囲、特に20〜220℃の範囲である。壁部を湿潤化する液体が反応混合物の一部を含む場合は、急冷媒体として用いられた反応混合物の部分と同様に処理される。例えば、目的の使用温度に対する初期加熱または冷却も行うことが可能である。
急冷媒体及び/または壁部を湿潤化する液体が溶媒を含む場合、溶媒を急冷部に添加する前に、急冷媒体または壁部を湿潤化する液体に溶媒を添加することが好ましい。これは、壁部を湿潤化する液体中または調整のとれた急冷媒体中の溶媒の損失を許容する。急冷媒体中に存在する好適な溶媒または壁部を湿潤化する液体に存在する好適な溶媒は、例えば、任意にハロゲン置換された炭化水素である。
急冷媒体中または壁部を湿潤化する液体中に存在する溶媒は、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、ヘキサン、ベンゼン、1,3,5−トリメチルベンゼン、ニトロベンゼン、アニゾール、クロロトルエン、o−ジクロロベンゼン、ジエチルイソフタレート、ジメチルイソフタレート、テトラヒドロフラン、ジメチルフォルムアミド、キシレン、クロロナフタレン、デカヒドロナフタレン及びトルエンからなる群から選択されることが好ましい。
イソシアネートが、壁部を湿潤する液体または急冷媒体中に含まれる場合において、イソシアネートの割合は、0〜100%の範囲内である。例えば、純低沸点物の急冷部の場合のイソシアネートの割合は、一般的に0%である。対応して、壁部を湿潤化する液体中のイソシアネートの割合は、低沸点物のみが用いられる場合は、およそ0%である。これとは対照的に、例えば、純高沸点急冷部の場合は、イソシアネートの割合は100%である。しかし、一方、高沸点急冷部では、高沸点溶媒、またはイソシアネートを含む溶媒混合物を用いることも可能である。壁部を湿潤化する液体中のイソシアネートの割合は、高沸点物のみを含む場合は、およそ100%である。しかし、壁部を湿潤化する液体では、イソシアネートに対して択一的にまたは付加的に存在する高沸点溶媒または溶媒混合物を用いることが可能である。
しかし、イソシアネートは、低沸点急冷部の急冷媒体中にも存在しうる。イソシアネートの割合は、一般的には、低沸点急冷部に対して高沸点急冷部のほうが高い。
しかし、急冷媒体及び壁部を湿潤化する液体の両方には、あらゆる所望の溶媒成分及びイソシアネートを用いることが可能である。これら成分は、例えば、急冷媒体または壁部を湿潤化する液体として用いられる反応混合物流の部分が分岐する工程位置に依存している。
急冷媒体と壁部を湿潤化する液体とが異なった液体である場合、例えば溶媒といった低沸点物を含んだ急冷媒体を用いることが可能であり、壁部を湿潤化する液体は、例えば、純イソシアネートといった、急冷媒体として用いられる低沸点物よりも高沸点の物質である。壁部の湿潤化には、相対的に高沸点な溶媒またはイソシアネートを含み得る溶媒混合物を用いることが好ましい。
例えば、用いられる高沸点物は上記した溶媒であり、好ましくはイソシアネートとの混合物である。
好適な実施の形態では、更なる処理のために、急冷部の下流には、反応ガスを冷却する更なる段階が続く。更に、冷却のための個々の段階において、生成物流は、例えば、生成物流が後続の後処理へ送出される際に所望の温度となるように、個々の段階で冷却される。急冷部で用いられる生成物流は、好適には、急冷部を出た全体の流れであり、急冷媒体、反応混合物及び壁部を湿潤化する液体を含む。
急冷部の下流に続く冷却のための更なる段階は、例えば、当業者に知られた、冷却のための急冷部または凝縮器または他の作業の段階である。好ましくは、急冷部の下流に続く生成物流を冷却する少なくとも一つの段階は、凝縮器である。好適な凝縮器は、当業者に知られた凝縮器の形態であれば、どんなものであってもよい。典型的には、用いられる凝縮器は、冷却媒体が流れる熱交換器である。用いられる冷却水は、例えば、水または冷却された溶媒である。この場合、気体は、凝縮器の壁部で、少なくとも部分的に外部へ凝縮する。このように、生じる液体は、流れ落ち、かつ集められて、凝縮器から取り出される。
生成物流の凝縮は、一般的に、処理工程に続くものである。例えば、凝縮された混合物は、溶媒中でこすり洗浄される。用いられる溶媒は、例えば、急冷媒体として用いられる物質と同じものである。
生成物流の冷却に代えて、急冷部を離れた後に、生成物流を分離工程に供給することも可能である。しかし、一方、適正な分離工程は、例えば、凝縮器の後に続く。しかし、好ましくは、分離工程は急冷部の後に続く。例えば、好適な分離工程は、蒸留カラムまたはスクラバである。
分離工程がスクラバの場合、急冷部を離れた生成物流は、好ましくは、上述したように、溶媒で洗浄される。これは、イソシアネートを任意に洗浄溶液へと変化させる。洗浄は、好ましくは精留によって、分離に続くこととなる。
分離工程が蒸留カラムの場合、気相の生成物流が、精留カラムに供給される。精留カラムは、精留カラムの最高温度が生成物流の沸騰温度よりも低くなるように操作されることが好ましい。このように、生成物流の個々の成分は、精留カラムで選択的に凝縮され、カラムの頂点及び側部を通ってカラムの底部から取り出される。
分離工程がスクラバの場合、好適な装置は、形成されたイソシアネートが、不活性溶媒内の凝縮によってガス状の生成物流から除去されるスクラブカラムが特に好適である。一方、過度のホスゲン、塩化水素及びより正確には不活性媒体が、ガス状のフォーム内のスクラブカラムを通過する。不活性溶媒の温度は、選択された洗浄媒体においてアミンに対するカルバモイルクロライドの溶解温度を維持することが好適である。特に好ましくは、アミンに対するカルバモイルクロライドの溶解温度を上回って、不活性溶媒の温度を維持することである。
好適なスクラバは、当業者に知られたスクラバであれば、いかなるものであってもよい。例えば、撹拌容器または他の従来の装置、例えば、分離管またはミキサセトラ装置を用いることができる。
急冷部を離れた後の、反応ガスの混合物及び急冷媒体、及び洗浄されかつ壁部の湿潤化に作用する液体は、一般的に、例えば、国際公開2007−028715で開示される。
生成物流の加工に凝縮器が用いられる場合、凝縮器から急冷媒体または壁部を湿潤化する液体を取り出すことが好ましい。精留による加工の場合、急冷媒体または壁部を湿潤化する液体として用いられる溶媒を除去することが好ましい。この場合、溶媒はイソシアネートの断片を未だ含有している。このように除去された溶媒及びイソシアネートの混合物は、急冷媒体または壁部を湿潤化する液体として用いられる。
生成物流の一部が急冷媒体または壁部を湿潤化する液体として用いられる場合、例えば、冷却後に、生成物流からこの一部を分岐することが可能となる。一方、急冷媒体または壁部を湿潤化する液体も、急冷部に続く後処理の後に、任意の所望の流れから分岐することが可能となる。

Claims (13)

  1. アミンとホスゲンを場合により不活性媒体の存在下において反応させることによりイソシアネートを製造する方法において、
    ホスゲンとアミンを最初に混合して反応器内でイソシアネートに変換する工程と、
    急冷部内で反応器から出るイソシアネート及び塩化水素を含む反応ガスに液状の急冷媒体を添加することによって反応ガスを冷却し、反応ガス及び急冷媒体との混合物を生成物流として形成する工程と、
    急冷部の壁部を液体でぬらす工程と、
    を有し、
    反応混合物と接触する液体急冷部の全ての壁部が、前記液体でぬらされることを特徴とする方法。
  2. 壁部をぬらす液体を、ノズルで壁部に噴射することを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 壁部をぬらす液体を、頂部及び/または底部から急冷部内に噴射することを特徴とする請求項2に記載の方法。
  4. 壁部をぬらす液体及び急冷媒体を、同じノズルで混合物として急冷部内に噴射することを特徴とする請求項2または3に記載の方法。
  5. 急冷媒体及び壁部をぬらす液体を、二物質ノズルまたは異なったノズルで急冷部内に噴射することを特徴とする請求項2または3に記載の方法。
  6. 壁部をぬらす液体を、オーバーフロー、孔又は溝を介して供給することを特徴とする請求項1に記載の方法。
  7. 壁部をぬらす液体は、少なくとも一種の低沸点物及び/または少なくとも一種の高沸点物を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
  8. 壁部をぬらす液体と急冷媒体とが同じ液体であることを特徴とする請求項7に記載の方法。
  9. 壁部をぬらす液体がイソシアネート及び/または少なくとも一種の溶媒を含むことを特徴とする請求項7または8に記載の方法。
  10. 壁部をぬらす液体中に存在するイソシアネートが、反応で生成されたイソシアネートと同じであることを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載の方法。
  11. 反応ガスを急冷部及び下流の任意の冷却段階で最初に冷却して生成物流に凝縮し、冷却後に、副流を、壁部をぬらす液体として用いることを特徴とする請求項10に記載の方法。
  12. 少なくとも1種の溶媒が、急冷媒体中及び/または壁部をぬらす液体中に存在し、前記溶媒は、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、ヘキサン、ベンゼン、1,3,5−トリメチルベンゼン、ニトロベンゼン、アニゾール、クロロトルエン、o−ジクロロベンゼン、ジエチルイソフタレート、テトラヒドロフラン、ジメチルフォルムアミド、キシレン、クロロナフタレン、デカヒドロナフタレン及びトルエンからなる群から選択されることを特徴とする請求項7〜11のいずれか1項に記載の方法。
  13. 壁部をぬらす液体は、所定の噴射部から壁部に噴射することで急冷部に供給され、この液体の噴射量は、前記液体の一部のみが急冷部内で気化し、かつ壁部を完全にぬらすために十分な量の液体が気化しない量に設定されていることを特徴とする請求項1〜12の何れか1項に記載の方法。
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