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JP5688700B2 - 移動体制御装置及び移動体制御装置を搭載した移動体 - Google Patents

移動体制御装置及び移動体制御装置を搭載した移動体 Download PDF

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Description

本発明は、移動体に取り付けられて利用される制御装置であって、超音波センサと赤外線センサとを組み合わせることで自律移動などに寄与する制御装置に関する。
近年、無人移動体の活躍が期待されている。無人移動体とは、例えば、無人航空機、無人陸上車両、無人潜水艇などが挙げられる。これらの無人移動体は、人が立ち入れない危険な場所等にも進入することができるため様々な場面で活用されている。特に無人航空機は、三次元的移動能力を有することから、災害状況の情報収集などに用いることができる。無人航空機は多様に存在し、例えば、大型のものでは軍事用の無人航空機がよく知られており、5000mを超える飛行高度と数十時間に及ぶ飛行持続時間を可能とするものがある。その一方で、比較的小型のものでは、農薬散布などに用いられる産業用無人ヘリコプタなどがある。このように、無人航空機は、用途等に応じて機体の大きさをはじめとして種々の設計が施される。
無人移動体には自律的な移動能力が求められるが、この能力を実現するための各種制御装置と、移動体が備えるペイロード(有効積載量)との兼ね合いが設計上重要な問題となる。上述した大型の無人航空機の例では、200kgのペイロードを備え、各種センサ類、撮像カメラ、測距装置、GPS(Global Positioning System)装置、各種情報処理装置などと、これらを駆動するためのバッテリ等を十分に搭載することが可能である。このようにペイロードの制約が比較的緩い場合においては、自律飛行を可能とするための各種の装備を搭載することができる。
しかし、機体の小型化を図る場合には、ペイロードの制約がより厳しくなってくる。そのような制約の下、自律制御によるプログラムフライト行う無人ヘリコプタに関して、GPS情報を受信するアンテナと、受信したGPS情報を演算処理してデジタルデータ信号を送出するGPS受信機とを一体化することにより自律制御装置の小型軽量化を図る技術が開示されている。
特開2007−106269号公報
ところで、近年、従来にはないより小型の無人航空機の研究が盛んになっている。例えば、米国においては、国防総省防衛研究計画局(DARPA)が提唱した超小型飛翔体(MAV:Micro Air Vehicle)の研究が行われている。DARPAが定義したMAVは大きさが15〜30cm以下、重量が10〜100g程度で20m/s前後の飛行速度を有する無人航空機とされている。このような、超小型の無人航空機は、従来の無人航空機では進入できないような空間での情報収集などの活躍が期待されている。例えば、倒壊した建造物の内部や原子力プラントに配設されているダクトの内部などのように、危険で狭小な空間での活動に期待が寄せられているのである。
上述した先行技術では、このような超小型の無人航空機を実現することが難しいという問題がある。すなわち、まず、ペイロードの制約が大変厳しいため、技術進歩により軽量化されたGPS装置ですら搭載することが困難である。さらに、より重要なことは、GPS装置では、上述した狭小な空間で高精度の自律飛行ができないということである。これは、GPSの原理に起因するものである。すなわち、GPSは衛星からの電波を用いて受信者の位置(緯度、経度、高度)を知るものであるが、倒壊した建造物の内部などでは衛星からの電波を受信することができないため位置情報を得ることができない。また、その位置情報には数十センチに及ぶ誤差が生じてしまう。補正を行うことで精度を高めることは可能であるが、そのための装置をさらに搭載することはペイロードとの兼ね合いにより困難である。また、GPSでは周囲に存在する物体を検知することができず、また、その物体がどのような形なのかを検知することもできない。したがって、障害物の回避や平坦な場所への着陸などのような自律飛行を行うための制御に用いることができない。
そこで、GPS装置を用いずに、障害物の回避や平坦な場所への着陸などを行えるように、移動体の周辺に存在する物体などを検知し、その物体との距離や、その物体の輪郭を検知するための技術が必要となる。
上記課題を解決するための手段として、以下の発明などを提供する。すなわち、第一の発明として、移動体に取り付けられて利用される移動体制御装置であって、指向性の弱い超音波を利用して、近接する周辺物体までの距離を計測し、その計測結果である近接情報を出力するための超音波センサ部と、振動することで移動体からみて所定のスコープ内に赤外線センサから赤外線を繰り返し射出し、前記所定スコープ内の物体の輪郭と輪郭までの距離を計測し、その計測結果である輪郭情報を出力するための赤外線センサ部と、を有する移動体制御装置を提供する。
第二の発明として、近接情報と、輪郭情報とを用いて移動体の移動制御情報を計算する移動制御情報計算部をさらに有する第一の発明に記載の移動体制御装置を提供する。
第三の発明として、第一または第二の発明に記載の移動体制御装置を搭載した移動体であって、輪郭情報を蓄積する輪郭情報蓄積部を有する移動体を提供する。
第四の発明として、第二の発明に記載の移動体制御装置を搭載した第三の発明に記載の移動体であって、赤外線センサ部は、赤外線を繰り返し射出する所定スコープを切り替えるスコープ切換手段を有する移動体を提供する。
第五の発明として、移動体は移動手段として電池駆動モータを利用したロータを備えた小型軽量無人飛行ロボットである第三または第四の発明に記載の移動体を提供する。
本発明により、移動体の周辺に存在する物体などを検知し、その物体との距離や、その物体の輪郭を計測するための情報を得られる移動体制御装置を提供することができる。
4発ロータ型ヘリコプタの動作を説明するための概念図 4発ロータ型ヘリコプタの動作を説明するための概念図 超音波センサと赤外線センサの検出範囲を示す概念図 着陸目標と機体座標とを示す概念図 角の検出を説明するための図 角の検出を説明するための図 角の検出を説明するための図 機体の位置の計測を説明するための図 機体の位置の計測を説明するための図 機体の移動制御の演算処理を行うためのブロック図 機体の移動制御の演算処理を行うためのブロック図 機体と着陸目標との位置関係を示す概念図 ホバリング時の機体の水平座標の実験結果 ホバリング時の水平座標の実験結果を2次元プロットした図 着陸までの機体の水平座標の実験結果
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明は、これらの実施形態に何ら限定されるべきものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得る。
実施形態1は、主に請求項1、5について説明する。実施形態2は、主に請求項2、5について説明する。実施形態3は主に請求項3、5について説明する。実施形態4は、主に請求項4、5について説明する。
<実施形態1>
<実施形態1 概要>
本実施形態の移動体制御装置は、超音波センサと赤外線センサとを組み合わせて用いるものである。超音波センサで移動体の周辺に近接して存在する物体との距離を計測するとともに、赤外線センサを振動させて走査することで物体の輪郭を抽出するものである。このような構成を採用することにより少ない部品点数で外界の情報を得ることができ、制御装置の軽量化を図ることが可能となる。
<実施形態1 構成>
本実施形態の移動体制御装置は移動体に取り付けられて利用されるものである。「移動体」とは、移動する物体である。すなわち、何らかの動力により推進するとともに、進路および速度を変更することができる物体である。進路は移動体の移動能力によって異なる。例えば、車両であれば、その進路は主に陸上となる。船舶または潜水艇であれば、その進路は水上または水中となる。航空機であれば、その進路は空中となる。
「移動体に利用される」とは、移動体にとって有益となるように用いられることをいう。何が有益となるかは、移動体に応じたものとなる。移動体が自動車などの車両であれば、衝突防止、自動運転、車庫入れなどのために用いられることにより有益となり得る。また、航空機であれば、衝突回避、自動航行、所定位置でのホバリング、所定位置への着陸、マッピング(地図作成)などのために用いられることにより有益となり得る。
移動体制御装置は、「超音波センサ部」と「赤外線センサ部」とを有する。「超音波センサ部」は、指向性の弱い超音波を利用して、近接する周辺物体までの距離を計測し、その計測結果である近接情報を出力するための機能を有する。
「超音波センサ」は、超音波のパルスを物体に射出し、反射して超音波センサに帰ってくるまでの所要時間から物体との距離を計測するものである。超音波センサは初めに受信した反射波から距離を求めるため、超音波センサと最も近接する物体までの距離が計測される。この計測結果が近接情報である。移動体が移動しているときに、近接情報の値が徐々に小さくなるとすれば、移動体と物体との相対距離が縮まっているということが分かり、すなわち、衝突する可能性が高いことが分かる。このような場合には、進路を変えるなどして近接情報の値がそれ以上小さくならないようにすることで、衝突を回避することができる。すなわち、近接情報は移動体が安全に移動し続けることに寄与する。また、所定の位置に着陸を行うような場合には、近接情報の値が緩やかに小さくなるように推進力や進路を制御することにより安全に着陸することができる。
また、超音波は指向性が弱く、初めに受信した反射波から距離を求めることから、超音波センサを搭載した移動体の姿勢変化の影響が出にくく、物体との距離を安定的に計測することができるという効果が得られる。なお、超音波センサの計測範囲は機種により異なるものであるが、移動体の用途などに応じて要求される計測範囲を有する超音波センサを選択すればよい。
超音波センサ部を設置する方向は、移動体の移動能力及び、その用途等に応じて定めることができるが、一般的には進行方向に向けておくことが有用である。すなわち、移動体の移動を制御するためには、進行方向に存在する物体をいち早く検知するとともに、その物体と移動体との距離を計測することが、障害物回避などを行う移動制御をするために重要だからである。また、超音波センサ部を複数設置することにより計測の精度を高めることは有益ではあるが、一方で重量増加を招いてしまう。後述する赤外線センサ部によっても物体との距離を計測することができるので、移動体のペイロードに応じて両者のバランスを図り設置することが好ましい。
「赤外線センサ部」は、振動することで移動体からみて所定のスコープ内に赤外線センサから赤外線を繰り返し射出し、前記所定スコープ内の物体の輪郭と輪郭までの距離を計測し、その計測結果である輪郭情報を出力するための機能を有する。「輪郭」とは一般的には物体の外形を形づくる線をいうが、本明細書においては、赤外線が照射される物体上の反射点の連なりをいう。後述するように、赤外線センサ部は、振動しながら赤外線を繰り返し射出する。この赤外線の照射を受ける物体上の反射点は、赤外線センサが動くにつれて位置を変えることになる。このように赤外線の照射を受ける反射点がたどる軌跡を輪郭という。
「赤外線センサ」は、赤外線を物体に射出して、その反射光を受信することにより物体の反射点との距離を測定するものである。赤外線センサと呼ばれるものの中には、人感センサのように自身では赤外線を射出せずに、物体から発せられた赤外線を受光して発信源を検知するものも存在するが、本実施形態においては、距離を計測するためのものなので、自身で赤外線を射出するものをいう。
「振動する」とは、揺り動かしたり振り動かしたりすることをいう。したがって、赤外線センサを何らかの動力により振り動かすことをいう。これは、赤外線センサから射出される方向を連続的に変化させることにより、一定の広がりを持つ領域からの反射光を受信するためである。例えば、赤外線センサを地面に向けて固定した場合には、赤外線は地面の一点にのみ射出されるため、その一点と赤外線センサとの距離しか測定することはできない。そこで、赤外線センサを振り子のように動かせば、地面に直線を描くように順次赤外線を射出することになり、振り子の振り幅に応じた長さの線として拡がる領域との距離を連続的に計測することができる。さらに、渦巻きや八の字などを描くように赤外線センサを動かせば、面として拡がる領域との距離を連続的に測定することができる。赤外線センサを振動させるための動力としては、例えば、サーボモータなどを挙げることができる。
「所定スコープ内」とは、赤外線センサにより計測しようとする所定の領域のことをいう。例えば、障害物回避を主な目的に計測する場合であれば、移動体の進行方向の所定の領域となる。赤外線は指向性が高いため、赤外線センサが向いている空間に存在する物体との距離を計測することができる。この所定スコープは、赤外線センサを設置する位置、設置する向き、赤外線センサを動かす振り幅等により定まる。所定のスコープをどのように定めるかは、移動体やその用途に応じたものとなる。
「輪郭情報」は、所定スコープ内の物体の輪郭と輪郭までの距離を計測した計測結果である。輪郭情報は、振動する赤外線センサにより物体との距離を計測し、あるいは、必要に応じて計測された距離を演算することにより得ることができる。その物体が最も近接する周辺物体である場合などでは、超音波センサ部により計測される近接情報を、上述した演算にさらに用いてもよい。
赤外線センサ部は、所定スコープ内に存在する物体の反射点からの距離を連続的に計測することで、その物体の輪郭情報を出力する。つまり、移動体と所定スコープ内の物体との相対的な距離情報の集積を得ることができる。その一方で、所定スコープ外に存在する物体を検知することができない。赤外線センサを多数設置することにより検知可能範囲を広くすることもできるが、重量増を招いてしまう。そこで、超音波センサにより近接情報を計測することで、所定スコープ外の物体と衝突などしないように距離を保つことができる。このように超音波センサと赤外線センサとを相互に補完するように組み合わせて使用することで移動体制御装置の小型軽量化を図るのである。
以下に、具体例を挙げて輪郭情報を得るための演算等を説明する。この具体例では、移動体制御装置を搭載する移動体として、図1に示すような4発ロータ型ヘリコプタを用いる。このヘリコプタは、4枚のプロペラが一平面上に存在するものであり、X−3DBLというAscendingTechnologies社により開発されたラジコンヘリをベースにしたものである。機体姿勢のコントロールはロータ回転数の調節のみで行うことが可能である。ロール方向のコントロールは、図1(a)に示すように左右のロータの回転数を調節して行う。ロータに生じる揚力はその回転数の2乗に比例するため、左右のロータの回転数に差を与えると左右の揚力に差が生まれ、機体のロール方向にモーメントが生じて、機体はロール方向に傾く。同様に、ピッチ方向には図1(b)に示すように前後のロータの回転数の差から生じるモーメントによって傾けることができる。
ヨー方向(方位角)は、各ロータが機体に与える反トルクによって操作する。反トルクとはロータを回転させるモーメントの反作用力で、機体はロータの回転方向と逆向きのモーメントを受けている。シングルロータヘリでは、メインロータによって発生する反トルクをテールロータが生み出すモーメントで相殺することによって方位角を保っている。これに対し、4発ロータヘリコプタでは図2(a)のように前後・左右で異なる方向に回転
するロータを用いることで反トルクの相殺を行っている。機体をヨー方向に回転させたいときは、図2(b)のように前後ロータと左右ロータの回転数に差を与える。
図3は、機体に取り付けた超音波センサと赤外線センサ、および、それらのセンサの検出範囲を示したものである。超音波センサは約6mまで±25度程度の範囲内で距離を計測できるもので、機体の下側に下へ向けて取り付けている。また、赤外線センサは、サーボモータによって約120度の範囲で自由に計測方向を変えることができ、約5.5m程度の範囲内で計測できるものを、機体の前後左右の4方向に取り付けている。なお、赤外線射出部から約1mの範囲内では正確な計測はできないものである。これらのセンサおよび通信装置、各種演算処理等のためのマイコンなどを搭載した機体の詳細を表1に示す。
Figure 0005688700
上述したヘリコプタを用いて平坦面を有するテーブルの上に着陸させる実験を行った。この実験を例として、輪郭情報の計測などを説明する。まず、各種演算等を行うための座標系を設定しておく。機体固定座標系は機体前後方向をX軸、機体左右方向をY軸、機体上下方向をZ軸とし、原点は機体の重心とする。また、地面固定の座標系は着陸対象であるテーブルの上に定義し、図4のようにx、y、z軸の方向を定める。姿勢角は、地面固定座標系に対する機体固定座標系のオイラー角とし、X軸周りの回転をロール角φ、Y軸周りの回転をピッチ角θ、Z軸周りの回転をヨー角ψと定義する。
この実験は、防災車両の屋根あるいは、GPSの届かない屋内などに設置された箱型の人工物への着陸を想定しており、位置計測のために適度な大きさの凸形状の地形を必要とする。そこで、前提としてある程度形の整った四角形の物体が着陸対象として着陸地点にあるものとする。仮定した環境には、直接水平位置を計測できる壁などの物体は存在しない。そこで、着陸対象の角を検出することによって位置を求めることを考える。着陸対象の角が検出できれば着陸対象の角の方向α'求めることができるので、地面との相対高度hを計測することにより、図5に示すような着陸対象と機体の位置関係から次のような機体の位置Lを求めることができる。
Figure 0005688700
ここで、ωはスキッドの幅である。また、hは超音波センサによって計測する。
機体が図6のような位置にあるとき、赤外線センサの方向を少しずつ変えていくと赤
外線のビームが着陸対象の角(エッジ)を越えた時点で距離計の計測値が急激に変化する。このような性質を利用してエッジの検出を行う。ただし赤外線センサは一点までの距離しか測ることができないので、センサを常に動かし続ける必要がある。そこで、エッジの方向α'を定めるために簡単なルールによってサーボモータの角度αを増減させ、計測距離が急変化する点でサーボモータの運動が拘束されるようにする。例えば、図7のように、赤外線センサのビームのスポットが着陸対象上にあるときはモータの角度を増加させ、スポットが着陸対象の外にあるときはモータの角度を減少させるようにすればエッジ近傍でモータの運動を拘束することができる。そこで、次のようにサーボモータへ与える目標角度αrefを決定する。
Figure 0005688700
ここで、kは計算ステップの数を表す。またVは回転速度を決めるための任意定数、Tは制御周期(20ms)、α"はサーボモータの推定角度、sgnは符号関数、dはモータの回転方向を決めるための閾値、dは赤外線センサによって計測された距離である。式の右辺第二項におけるcosα"(k)/h(k)は、サーボモータの角度や機体の高度の影響によって着陸地点上にある赤外線のスポットの移動速度がVから変化しないようにするためのものである。ここで用いているサーボモータは現在の角度を出力することができないため推定値α"を求め、真値の代わりとして計算に使用する。推定値は1次遅れと仮定したサーボモータの伝達関数を離散化し、αrefを入力して得られた出力とする。この計算は20msの制御周期とは異なる周期で非同期に行っており、サーボモータのパルス生成周期の18.5ms間隔で行っている。そのため、ステップ毎の開始時点における推定値を読み込んでα"としている。
閾値であるdと計測値dの差がサーボモータの回転方向を決める。図7のように機体の下方h+aの距離に地面と平行な平面を仮定し、赤外線距離センサのビームの射線と平面が交わる点までの距離をdとすると、次のように求められる。
Figure 0005688700
エッジの方向を指しているときのサーボモータの角度をα'とし、これを位置の計算に用いる。この値は、dとdの大小関係が反転したときにはその時点での推定角度α"で更新し、切り替わらなかったときは過去の値を保持する。式で表すと、以下のようになる。
Figure 0005688700
以上のルールによってエッジの検出と追跡が可能となるが,dとdの大小関係が反転したときのみ数式2の代わりに、
Figure 0005688700
を用いて目標角度を更新すれば、より素早くエッジを追跡できるようになる。式中のcは任意の定数である。以上は、輪郭情報を得るための演算処理の一例であるが、このようにして、輪郭情報としてテーブルの角の検出などができる。
以上のようにエッジを検出することで、さらに機体の位置を測定することができる。この実験で用いられているヘリコプタは、前方、右方、後方、左方の計4方向に取り付けられた赤外線センサそれぞれでエッジの検出を行うので、4方向でエッジからの距離を計測することができる。そこで、方向によって異なる計測値には図4のように機体の前方から時計回りに1〜4の添え字をつけて区別する。いま、着陸地点の中心(原点)からxの距離に機体中心があると考える。このとき、数式1によりエッジから機体中心までの距離L、Lを求めると図8のような位置関係から数式6および数式7が得られる。
Figure 0005688700
Figure 0005688700
そして、Wを消去することによって機体の座標を求める式が得られる。yに関しても同様であり、地面固定座標系における機体中心の座標を求める式は以下のようになる。
Figure 0005688700
Figure 0005688700
着陸対象の幅Wが含まれないので、着陸対象の大きさによらず機体の位置を求めることができる。
しかしながら式8や式9は、機体の姿勢を無視しておりhが大きくなるにつれて影響が無視できなくなる。実際、機体姿勢を無視した場合は位置制御が不安定になる傾向があった。そこで、機体姿勢を考慮して位置を求める。ただ、厳密な式は複雑すぎるため、機体の姿勢角が小さいと仮定して簡単化する。また、ヨー角ψは常に0とする。なお、超音波センサは計測範囲にあるときは傾けても計測値がほとんど変化しないのでhは姿勢に影響されないと仮定する。以上より、機体姿勢を考慮したときの機体中心の座標は、以下のようになる。
Figure 0005688700
Figure 0005688700
この演算処理に使用した定数の値は表2に示すとおりである。
Figure 0005688700
<実施形態1 効果>
本発明により、移動体の周辺に存在する物体などを検知し、その物体との距離や、その物体の輪郭を計測することが可能となる。
<実施形態2>
<実施形態2 概要>
本実施形態は、実施形態1を基本とし、近接情報と輪郭情報とを用いて移動体の移動制御情報を計算することにより、その計算結果を移動体の自律的な移動などに寄与させるものである。
<実施形態2 構成>
本実施形態の移動体制御装置は、実施形態1の移動体制御装置の構成に、さらに、近接情報と輪郭情報とを用いて移動体の移動制御情報を計算する移動制御情報計算部を有するものである。
「移動制御情報」とは、移動体の移動を制御するための情報である。この情報は、障害物の回避や、所定場所への着陸などのような自律的な移動を行うために重要な情報であり、例えば、移動体の姿勢、位置、高度、方位などを示す位置情報などである。
以下に、実施形態1において説明した実験を例に挙げて移動体制御情報計算部における演算処理などについて説明する。制御対象のヘリコプタは本来多入力多出力系であるが、連成の影響は小さいものとし、本実験では一つの入力ごとに一つの制御系を設計する。本ヘリコプタには制御系が4つ存在し、姿勢角θ、φ、および、θ、φによって運動が決定されるx、yに関するθ−x、φ−y制御系、姿勢角ψに関する方位制御系、高度zに関する高度制御系がある。θ−xとφ−yの制御系は、4発ロータ型ヘリコプタの対称性により同一の構造となる。
まず、x、θおよび、y、φの制御に関しては、図10のように内側に姿勢角・姿勢角速度をフィードバックする姿勢制御ループを作ったうえで、外側に位置・姿勢角・姿勢角速度をフィードバックする位置制御ループを作る。次に、高度zや方位ψは、図11のように単一のフィードバックループで制御する。なお、本システムでは機体の姿勢角を図10や図11(a)に示す姿勢方位基準システム(Attitude and Heading Reference Systems:AHRS)によって求めている。
姿勢モデル(θ、φ)については、機体へ入力した制御入力から、ジャイロセンサによって計測される姿勢角速度までの伝達関数を2次遅れと仮定する。また、姿勢角速度から姿勢角までは1つの積分器であるため、制御入力から姿勢角までの伝達関数は以下のようになる。
Figure 0005688700
位置モデル(x、y)については、まず、機体の姿勢は図10の姿勢制御によって安定化され、姿勢角目標値の入力に対して出力の姿勢角が遅れて追従するような系になっていると考える。姿勢制御の閉ループ系はそのままでは次数が高いので、代表根を用いて姿勢角目標値から姿勢角までの伝達関数を構成する。代表根は、共役な複素根で−Re±jImになっているとし、以下の式を姿勢応答の伝達関数とする。
Figure 0005688700
次に、姿勢角から位置までの伝達関数は、機体上方に発生している揚力mgの水平方向成分が水平方向の推力となるモデルを線形化した以下のものを用いる。
Figure 0005688700
ただし、gは重力加速度である。状態量はx、y、θ、φ、dθ/dt、dφ/dt、が測定可能である。
高度モデル(z)については、機体へ入力した制御入力から、加速度までの伝達関数を1次遅れと仮定する。加速度から位置までは2つの積分器とみなして、以下の式を高度の伝達関数とする。状態量は、z、dz/dtが測定可能である。
Figure 0005688700
方位モデル(ψ)については、機体へ入力した制御入力から、ジャイロセンサによって計測される角加速度dψ/dtまでの伝達関数を、実根を持つ2次遅れと仮定する。角速度から角度までは1つの積分器であるから、以下の式を方位の伝達関数とする。状態量は、ψ、dψ/dtが測定可能である。
Figure 0005688700
制御は全軸において最適状態フィードバック制御系を構成する。また、制御対象のモデルの状態空間表現dx/dt=Ax+Bu、y=Cxに対し、目標値rと定常偏差を0にしたい出力y=Cxの差の積分x=∫(r−y)dtを状態変数に加え、以下の式のような拡大系を構成する。
Figure 0005688700
これに対し最適制御理論を適用し、yの定常偏差を0にするようなフィードバックゲインFを求める。状態フィードバックによる制御であるため、全状態量をフィードバックする必要があるが、本システムではすべての状態量を測定することができないので測定できない状態量はプラントのモデルと測定可能な状態量からカルマンフィルタによって推定する。
上述した演算処理などを用いて、さらに、自律制御によるホバリング飛行実験および自動着陸の実験を行った。本実験では測位システムの計測対象として一辺52cmのテーブルを使用した。テーブルと飛行体の位置関係は図12のようになる。座標系の原点はテーブルの中心とした。
まず手動操縦によって機体をテーブルの中央付近で飛行させ、機体の方位ψを図12のようにテーブルの方位と合わせる。次に可動式外界センサが正しくエッジを捕捉しているのを確認したのち、自律制御に切り替えた。本実験では水平位置x、yは常に0を保つように制御し、高度zおよび方位ψは制御切り替え時の初期状態を保つように制御を行った。
図13に示す実験結果は、測位ユニットによって計測された機体の水平座標である。本計測装置は赤外線センサをスイングさせて計測を行うため、計測値には5〜6Hz帯域のノイズが含まれている。制御ではカルマンフィルタによってこの帯域の成分をフィルタリングするため、このノイズの制御性能への影響は少ない。ホバリング飛行はほぼ±20cmの精度で概ね実現できている。
図14は、図13に示したデータに対してカルマンフィルタを適用し、2次元プロットしたものである。図中の円は全データの95%がその内部に収まるように描いたもので、その半径は17.9cmである。また、*印で示される円の中心はデータの平均値をとったものでx=5mm、y=8mmの位置にある。平均値は0に近い値となっていることから原点を中心としたホバリングができたことが分かる。なお、ホバリング飛行実験におけるテーブルとの相対飛行高度は超音波センサのデータによると平均85cmであった。
自動着陸では水平位置と方位の制御はホバリングと同様に行い、高度目標値の与え方のみを変えて行った。実験の結果得られた水平位置の応答を図15に示す。半径約±10cmの範囲で飛行できており、降下中でも飛行精度を保って着陸できたことが分かる。
以上のとおり、本実施形態の移動体制御装置は、種々ある移動体の中でも、具体例に挙げたヘリコプタのような、移動手段として電池駆動モータを利用したロータを備えた小型軽量無人飛行ロボットに搭載される場合にとくに有用に機能する。
<実施形態2 効果>
本実施形態の移動体制御装置により、自律的な移動などを行うための移動制御情報を得ることができる。
<実施形態3>
<実施形態3 概要>
本実施形態は、実施形態1または2に係る移動体制御装置を搭載した移動体であって、輪郭情報等を蓄積することができるものである。倒壊した建物の内部など人が立ち入ることのできない環境の情報を収集するためには、カメラ等の撮像装置やこれを駆動するためのバッテリなどを移動体に搭載しなければならない。しかし、MAVなどのペイロードの制約が厳しい移動体においては、撮像装置等をさらに搭載する余裕がない場合もある。そこで、赤外線センサ部により得られた輪郭情報を、情報収集などに利用するために蓄積しておくものである。
<実施形態3 構成>
本実施形態の移動体は、実施形態1又は2に係る移動体制御装置を搭載した移動体であって、輪郭情報を蓄積する輪郭情報蓄積部を備える。
「輪郭情報蓄積部」は、輪郭情報を蓄積する機能を有する。移動体および輪郭情報については、実施形態1などにおいて説明を行っているので、ここでの説明は省略する。輪郭情報の蓄積は、移動体にDRAMやフラッシュメモリなどの記録装置を備えることにより蓄積してもよいし、あるいは、送信装置などを用いて移動体から移動体の基地等に送信することにより受信側にて蓄積してもよい。記録装置および送信装置のいずれにおいても軽量で小型のものが好ましい。
蓄積された輪郭情報は、例えば、マッピング(地図作成)などに用いることができる。輪郭情報は移動体制御装置を基準とする距離の計測値である。すなわち、移動体と周辺物体との相対的な距離を計測した結果であり、そのままでは地図として再現することはできない。そこで、輪郭情報を固定された基準地点との距離と置きかえることができれば再現し得る。例えば、移動体を停止させた状態において得られた輪郭情報であれば再現性は高まる。また、移動体制御装置は、すでに述べたように移動体の位置情報を計測することができる。そこで、移動体の位置情報を固定された基準地点に基づく情報として蓄積しておけば、移動体との相対距離としての輪郭情報を、当該基準地点に基づく情報として取り扱うことができ、これに基づき地図として再現し得る。基準地点は、例えば、移動体の基地や移動開始地点、計測開始地点などとすることができる。
<実施形態3 効果>
本実施形態の移動体により、輪郭情報を蓄積しておくことで情報収集などに利用することができる。
<実施形態4>
<実施形態4 概要>
本実施形態は、赤外線を射出する所定スコープを切り替えることができる。所定スコープを広く設定すれば計測可能な領域は拡大するが、その反面、計測精度の低下を招くおそれがある。赤外線センサの数を増やせば精度低下を招くことなく計測可能な領域を拡大することができる。しかし、この方法は重量の増加や装置構成の複雑化などを生じさせてしまう。そこで、所定スコープを切り替えることができるようにして、状況に応じた計測ができるようにするものである。
<実施形態4 構成>
本実施形態は、実施形態2の移動体制御装置を搭載した移動体であって、赤外線センサ部が、赤外線を繰り返し射出する所定スコープを切り替えるスコープ切換手段を有するものである。
「スコープ切替手段」は、赤外線を繰り返し射出する所定スコープを切り替える機能を有する。「所定スコープを切り替える」とは、赤外線センサにより計測しようとする範囲を切り替えることをいう。先のヘリコプタを例に挙げると、上昇する際には機体の水平方向から上方を所定スコープとし、着陸する際には所定スコープを機体の下方に切り替えることで、いずれの場合においても機体の制御に必要な計測結果を得ることができる。
所定スコープの切り替えは、例えば、赤外線センサを動かす振り幅を変えたり、赤外線センサを設置する位置や設置する向きを変えたりすることにより可能となる。また、複数の赤外線センサを備える場合には、個々の赤外線センサ単位で所定スコープの切り替えができるようになっていてもよいし、全体として切り替えられるものであってもよい。また、任意に切り替えができてもよいし、設定された切り替えモードの中で切り替えられるものであってもよい。
<実施形態4 効果>
本実施形態により、移動体制御装置の重量増を抑えつつ、計測可能な範囲を切り替えることが可能となる。

Claims (4)

  1. 小型軽量無人飛行ロボットに取り付けられて利用される小型軽量無人飛行ロボット制御装置であって、
    指向性の弱い超音波を利用して、近接する周辺物体までの距離を計測し、その計測結果である近接情報を出力するための超音波センサ部と、
    振動することで小型軽量無人飛行ロボットからみて所定のスコープ内に赤外線センサから赤外線を繰り返し射出し、前記所定スコープ内の前記周辺物体エッジ当該エッジまでの距離を計測し、その計測結果である輪郭情報をそれぞれ出力する複数の赤外線センサ部と、
    前記近接情報と、前記複数の輪郭情報とを用いて、着陸地点、小型軽量無人飛行ロボットの位置及び小型軽量無人飛行ロボットと前記着陸地点との距離を計算する移動制御情報計算部と、を有する小型軽量無人飛行ロボット制御装置。
  2. 指向性の弱い超音波を利用して、近接する周辺物体までの距離を計測し、その計測結果である近接情報を出力するための超音波センサ部と、
    振動することで所定のスコープ内に赤外線センサから赤外線を繰り返し射出し、前記所定スコープ内の前記周辺物体エッジ当該エッジまでの距離を計測し、その計測結果である輪郭情報をそれぞれ出力する複数の赤外線センサ部と、
    駆動モータを利用したロータを備える移動手段と、
    前記近接情報と、前記複数の輪郭情報とを用いて、着陸地点、自己の位置及び自己の位置と前記着陸地点との距離を計算する移動制御情報計算部と、を有する小型軽量無人飛行ロボット。
  3. 輪郭情報を蓄積する輪郭情報蓄積部を有する請求項2記載の小型軽量無人飛行ロボット。
  4. 前記赤外線センサ部は、赤外線を繰り返し射出する所定スコープを切り替えるスコープ切換手段を有する請求項2記載の小型軽量無人飛行ロボット
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