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JP5680314B2 - 珪酸アルミニウムリチウム(las)ガラスセラミックスから成る可結晶化ガラス用ガラス溶融液の環境調和型溶融・清澄方法 - Google Patents

珪酸アルミニウムリチウム(las)ガラスセラミックスから成る可結晶化ガラス用ガラス溶融液の環境調和型溶融・清澄方法 Download PDF

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Description

本発明は珪酸アルミニウムリチウム(LAS)ガラスセラミックスから成る可結晶化ガラスに用いられるガラス溶融液の環境調和型溶融・清澄方法に関する。
ガラスの溶融に際しては、バッチ毎に出発原料の化学的変換の結果として相当量のガスが生ずる。従来におけるコスト効率的なバッチ混合物の場合、ガラス1kgを1回で製造するために約1.3kgの原料が必要とされる。このことは、各バッチ中に含まれる相当量のHO、O、CO、SO、NO、N及び空気等のガスが溶融過程において放出されることを意味している。ガラス溶融液から気泡を取り除く処理方法は清澄と称される。
バッチ相当原料を溶融タンク中へ投入する際、バッチ塊がガラス溶融液上に生じ、溶融タンク中へ様々な程度に亘って拡がって所謂バッチカーペットが形成される。
前記バッチが加熱されると、広範囲な反応が進行してガラス生成へ導かれる。これら反応の詳細については著書「ガラスに関する全般技術、溶融及び成形の基本」、Prof. Dr. H.A. Scheffer, Erlangen、1985年9月に記載がある。
これら反応は、温度上昇と共に通常下記の反応段階に細区分される。
脱水
粒状物接触領域における固体物理反応(例えば珪酸塩の生成)
石英粒を封入する炭酸塩溶融物の生成
気泡(CO、NO、O、SO)を生ずる分解反応
珪酸塩溶融物の生成
次いで、前記バッチ中の残りの成分が珪酸塩溶融物中へ溶解される。
前記バッチの溶融温度条件においては、上述した反応はある程度相互に並行して進行する。大部分のガスは、前記バッチ反応中、及びバッチ被覆層中を経る無清澄溶融液の生成中に漏出する。
これらの反応段階は、珪酸アルミニウムリチウム(LAS)ガラスセラミックスから成る可結晶化ガラスの従来型バッチ用原料混合物の場合においても進行する。この場合における一般的な主構成成分は、SiOガラス成分源としての石英砂、Al成分源として酸化アルミニウム又は三水酸化アルミニウム、及びLiO成分源としての炭酸リチウムである。さらに、前記バッチには、酸化状態を設定するために通常硝酸塩が含められる。バッチ温度が上昇されると、この硝酸塩によってまず水の放出が起こり、次いで硝酸塩の分解、さらには液相形成が生ずる。前記溶融にとって重要なことは約1030℃において主成分であるLiO及びSiOから共晶が生成されることである。この最初の液状のリチウム・リッチ珪酸相において、酸化アルミニウム、石英砂、ジルコニウム等のその他結晶性原料、清澄剤、及びその他の例えばO、CO、NO、N及びSO等のガスのいくつかが溶解し始める。前記その他の結晶性原料の前記液相中への溶解が増加するにつれて、前記液相のガス溶解性が減少し、そのため気泡の形成が起こる。この場合、気泡内圧が溶解したガスの平衡圧より低いか、あるいは高ければ、気泡は成長あるいは減少する。そのため、溶解したガスは、清澄処理中に、それ以上妨げとならないレベルまで抽出あるいは減じられる。
前記最終生成物中の前記溶解ガス残留物は再沸騰に関して重要であり、それゆえに可能な限り少量に減じられなければならない。
石英砂、及び珪酸ジルコニウム、及び又は酸化ジルコニウムは、ガラス溶融液中で最後に溶解されるバッチ用原料である。これらの原料によって溶融時間が決定され、またその場合において、タンクスループットが過剰に高ければバッチ残存物となるリスクがある。前記溶解速度はLASガラスの場合は遅く、付着する気泡によってガラス溶融液表面に結晶相が生ずる。残存石英から成り、及び又は高温において石英から生成される表面層が生成されると、アルミノ珪酸ガラスの場合は特にクリストバル石(SiO)及びバデレー石(ZrO)と称される。
目標として選択されたバッチ原料を用いての溶融経過状態、バッチカーペットの形成、及び溶融領域におけるガラス温度は、後続のすべてのガラス製造下位段階から製品品質に亘って重大な問題である。過剰に高いタンクスループットに起因して前記溶融工程における溶融速度と処理終了時における取り出しが整合しない場合に、ガラス中に品質問題(バッチ残存物、気泡)が生ずる。溶解性のあまり高くないバッチ原料は、前記表面層あるいは深部のフローを通って溶融タンクの後方領域まで通過する。これら原料が溶解する際に、バッチ粒子周辺の化学的改変を受けたゾーンにおいてガス溶解性が低下し、さらに気泡形成による上述の影響が生ずる。遅れて溶解している残存石英粒子は連続した気泡の新たな生成の外的核となる(Noelle, Guenter, ガラス製造技術、Deutscher Verlag fur Grundstoffindustrie Stuttgart 1997, 3版、83頁)。このメカニズムは、溶解している残存石英粒子の縁に気泡があることを示す顕微鏡写真によって証明される。溶融過程の遅い段階で生成されるこのような気泡は、本質的にガラス溶融液から除去できないものである。
それゆえ、目標として選択されたバッチ原料を用いることにより、バッチカーペットのサイズ及び表面層の形成を減らせる可能性がある。緩やかに溶解するバッチ原料を減らすことにより、バッチ残存物が生ずるリスクと後で気泡が生ずるリスクが減じられる。周知であるが、均質化に働く手法を取ることによっても常に清澄が促進され、まその逆も同様である。従って所望されるガラス組成に類似するバッチ原料を用いることが有利である。そのために製造中に生ずるガラス屑もバッチへ添加される。バッチカーペット及び表面層形成が減じられることによっても、ガスバーナーから赤外線を用いて、さらにタンクの上部構造の頂部からの反射を用いてガラス溶融液の温度を高めるために必要とされる熱の投入が促進される。
一般的な溶融タンクを用いる場合、ガラス溶融液の清澄は、溶融がうまく為された段階において、また空間的に分離された領域において実施される。この分離される2領域は溶融タンクのホットスポットと呼ばれる部分によって分離される。前記ホットスポットは、ガラス溶融液の温度が最も高くなる箇所、すなわちガラス溶融液の上方へ向いた流れが起こる箇所である。周知の通り、一般的な溶融タンクの設計には下記のような種々組み込み構造が用いられる。
・短絡流を防止し、かつガラス液面の高さを低くして温度上昇を得るのためのオーバーフロー壁、
・主として表面中の短絡流を防止し、さらに逆流も防止するためのブリッジ壁、
・通常横方向に配置され、フレームから出る放射線によって生ずる熱、あるいは前記頂部における反射によって生ずる熱を放出するガスバーナー、
・平均ガラス温度を上昇させ、及びフロー安定性を高めるための追加電気ヒーター、及び
・ガラス流れ方向に対して横方向及び又は縦方向に配置される、短絡流の防止、流れの安定化、及び冷たい底部ガラス温度を熱い表面へ運んで平均ガラス温度を上昇させるためのバブラー。
一般的に、タンク中の前記ホットスポットは、エネルギー分布(ガスバーナーの設置及び追加の電気加熱)によって、あるいは追加されるオーバーフロー壁、バブラーあるいはタンク底部おける追加的電気加熱等の構成手段によって空間的に固定される。
前記ブリッジ壁は、LASガラスの場合に重大問題となる溶融タンクの後方での清澄及び静止領域までの表面層の進行を止めるために特に適する。
ガラス液位の高さとガラス溶融液の赤外線透過率は適合されなければならない。一般論として、底部に冷ゾーンが生ずることを防止して平均ガラス温度の上昇が促進されるように、過剰にガラス液位を高くすることは回避されなければならない。
前記組み込み構造の溶融タンク中における流れ状態に対する影響は、例えば既に引用したNoelleの著書中に説明及び図示されている(87頁、以下参照)。
清澄には、気泡とガラス溶融液との濃度差によって生ずる静的浮力の結果として、気泡がガス溶融液中を上昇して外気へ放出されるように試み、補助することも含まれる。補助的清澄手段を欠く場合、このような気泡の除去処理に多大な時間を要する。しかしながら、このような手段を設ければ、その結果としての停止時間の増加、タンクスループットの低下によって製造コストの上昇が生ずるであろう。
LAS可結晶化ガラスの清澄方法としては、公知手法を用いた種々方法が開発されている。
特に、含量0.3〜1.5重量%の酸化砒素及び酸化アンチモンは、LAS可結晶化ガラスの化学清澄剤として有用なことが立証されている。これらの清澄剤は従来の約1600℃以下の清澄温度においてもガラス溶融液中においてO2ガスを放出する。このように気泡中をさらに通過するガス量によって所望の気泡成長まで導かれ、それによって所望の気泡上昇速度の増大へと導かれる。上昇する気泡によりガラス溶融液の均質化が促進され、表面層の形成が妨げられる。これらの清澄剤は要求されるガラスセラミックス特性に適合し、溶融液の気泡品質は良好となる。
たとえこれら物質がガラスの骨組み中に固定状態で結合されるとしても、安全性及び環境保護の観点からは不利である。原料調達及び準備段階において、また溶融液中においても蒸発が起こるため特別な予防措置手段が採られなければならない。
環境に対して有害性の少ない代替化学清澄剤の探索から酸化錫が使用されるに至っている。環境に有害な酸化砒素又は酸化アンチモンの酸化錫への置き換えは、経済的なタンクスループットでは気泡品質が不適当なことから、直ぐには可能でない。LAS可結晶化ガラス中への酸化錫の溶解性は低いため、その最大含量は0.6重量%以下に制限される。前記含量がそれ以上になると、低溶解性ゆえに形状化中に失透が引き起こされる。前記失透中に生成される錫含有結晶により、該結晶から生成されるガラス及びガラスセラミックスの強度に有害な影響が生ずる。酸化砒素又は酸化アンチモンを用いる化学清澄の場合、清澄剤の濃度をさらに高くすることは不可能である。さらに、酸化錫は比較的高温においてのみ清澄に必要とされる酸素を十分量放出する。そのため、従来から慣用の1700℃以下の溶融温度では、清澄剤として酸化錫を使用する有効性は低下する。表面層の形成を妨げるガラス溶融液の均質化による好ましい効果も、O2清澄ガスの放出量が少量なことから同様に評価は低い。
そのため、さらなる手段を用いて酸化錫の清澄効果を強める方法が探索されている。
良好な気泡品質を得るため、例えば従来の溶融及び清澄温度(最大1700℃)において、酸化錫と共にさらに他の清澄剤が用いられる。種々文献にさらなる清澄剤としてハロゲン化化合物を用いることが記載されている。
日本特許出願JP11―100229A及びJP11―100230Aには、SnO2を0.1〜2重量%、及びClを0〜1重量%用いる記載がある。これら特許出願においては、V25を唯一の着色料として添加して着色が行われている。
SnO2を用いた清澄を補助するためにフッ素0.05〜1重量%(US2007-0004578A1)及び臭素0.01〜1重量%(US2008―0026927A1)を添加する方法も記載されている。主要な着色料はV25である。ハロゲン化化合物の添加は、それらが溶融温度及び溶融処理においてかなりの量蒸発してHFあるいはHCl等の有毒化合物を生ずるため不利である。さらに、これら化合物は溶融タンクの頂部において耐火煉瓦を化学的に攻撃して腐食を生ずる。
US 2007―0129231 A1には、清澄剤として0.15〜0.3重量%のSnO2と0.7〜1.5重量%のCeO2及び又はMnO2を組み合わせて用いる方法が記載されている。As23を用いて清澄を行う場合と比較して、CeO2及び又はMnO2が比較的高い含量にも拘らず、これら清澄剤の組み合わせでは明らかに気泡品質が劣ることが示されている。これは、CeO2及びMnO2によって清澄に要求される酸素が比較的低温で結合され、高融点LAS可結晶化ガラスの清澄に対する効果が減じられるからである。
清澄剤としての酸化錫は、約1630℃以上の比較的高温においてのみ、清澄に必要な酸素を比較的大量に放出するため、良好な気泡品質を得るためには1700℃以上での高温清澄を行うことが適切である。
これにより、例えばDE19939771B4には、無線周波数スカル技術を用いる、溶融タンク下流配置の分離型高温清澄装置を用いて、1700〜2800℃のかなりの高温を生成して溶融液の粘度を減じ、これにより気泡の上昇速度を高める方法が開示されている。かかる方法においては、一般的に相互接続される2台の独立型清澄装置が設置される。
とりわけ、WO 02/16279 A1 (=DE 199 39 787 C2)には、V25を用いて着色される珪酸アルミニウムリチウム(LAS)ガラスセラミックスの製造が、酸化砒素や酸化アンチモン等の標準的清澄剤を用いず、SnO2、CeO2、硫酸塩又は塩化物化合物等の代替清澄剤を用いる1975℃での1時間の高温清澄によって還元剤との関連から記載されている。平面的には黒く見えるこのガラスセラミックスは、典型例としてレンジ上面に用いられ、CERAN SUPREMA(登録商標)のブランドで市販されている。
これら高温清澄装置をさらに用いるためには特別な装置への費用支出を要し、また別ルートでのエネルギー投入も要求される。
さらに別の物理的清澄方法として所謂真空清澄を挙げることができる。本方法に関しては、例えばEP 0 908 417 A2を参照されたい。真空清澄の場合、溶融液中に存在する気泡はさらに成長する。本方法の結果として、気泡はさらに大形化して溶融液の表面へより速く上昇し、これにより上方に広がる炉空間中に溶融液を残すことが可能である。但し、この方法を実施するためには構成が複雑である。
DE 10 2005 039919 A1には、ガラスセラミックス未加工ガラスに用いるガラス溶融液の清澄方法、及びそれに従って具現化された溶融タンクに関する記載がある。清澄剤として含量0.4重量%未満の酸化錫のみが添加された珪酸アルミニウムリチウム(LAS)ガラス系を基材とするガラスバッチが供給され、清澄剤としての酸化砒素及び又は酸化アンチモンの使用は使用されない。バッチの溶融及び溶融液の清澄は1700℃未満の温度で実施され、さらなる特別な高温清澄装置の使用は行われていない。タンク構成、清澄剤含量及び平均ガラス温度に依存して、要求される気泡品質によって清澄対象となるガラスのタンク内最小滞留時間が定められる。本方法においても、従来の清澄温度におけるSnO2だけの清澄はタンクスループットが制限を受ける点で不利であることが明らかとされている。本引例には種々の溶融タンク設計が記載されており、これら設計は本願発明においても考慮されている。
本発明は、ガラス中及びセラミックス製品中の気泡数が十分少なく、適度の清澄剤含量を用いることによって経済性が確保される、珪酸アルミニウムリチウム(LAS)ガラスセラミックスから成る可結晶化ガラス用ガラス溶融液の環境調和型溶融・清澄方法を提供することを目的とする。
本発明の目的は請求項1項記載の方法によって達成される。
前記目的は、本発明による下記工程、すなわち、
・清澄剤として酸化砒素及び又は酸化アンチモンを使用せず、主たる清澄剤として酸化錫が0.1〜<0.6重量%添加された珪酸アルミニウムリチウム(LAS)ガラス系を基材とするガラスバッチを用意する工程、
・ガラス成分としてSiO2を投入するために通常用いられる石英砂原料の割合が40重量%未満、好ましくは15重量%未満、さらに好ましくは5重量%未満となるようにガラスバッチに用いる原料混合物を設計する工程、及び
・温度1600℃以上、また好ましくは1650℃以上の温度でガラス溶融液を清澄する工程から構成される、珪酸アルミニウムリチウム(LAS)ガラスセラミックスから成る可結晶化ガラス用ガラス溶融液の環境調和型溶融・清澄方法によって達成される。
本発明による、LASガラスセラミックスから成る可結晶化ガラスに用いられるガラス溶融液の環境調和型溶融及び清澄方法は、回避不可な微量物質は別として、化学清澄剤として酸化砒素及び又は酸化アンチモンを含まず、かつ複数の手段を取ることにより気泡数の低減化が達成されていることによって特徴付けられる。
酸化錫は清澄剤として0.1〜<0.6重量%の含量で用いられる。前述した比較的高温での清澄に必要とされる酸素の放出により、清澄を行うためにはガラス溶融液はさらに1600℃以上まで、好ましくは1650℃以上まで加熱されることが必要である。
しかしながら、これらの手段だけでは不十分なことが明らかとなった。経済的理由からタンクスループットの増加が望まれることに関し、ガラスバッチ用の原料混合物は、ガラス成分であるSiO2を投入するために通常用いられる原料石英砂の割合が最少となるように事前設計されることも必要である。石英砂含量が高くなると、バッチの溶融時にガラス表面に層が形成され、この層が溶融タンク中のかなり離れた箇所にまで広がってしまう。この表面層はSiO2(残存石英)とZr原料から成るバッチ残存物を豊富に含んでいる。バッチ粒子は付着する気泡によってガラス表面に保持される。緩慢な溶解の結果、溶融過程の遅い段階において気泡が生成され、それによって気泡品質が損なわれる。本方法の遅い段階における気泡生成の原因となる石英砂を最小限とするため、ガラスバッチに用いる原料混合物中の石英砂の割合を40重量%未満、好ましくは15重量%未満とする。この場合において、最も重要なことはバッチ原料を溶融し、及び均質化するため、添加される可能性のあるガラス屑は、組成に関してLASガラスと一致しないので計算上考慮されていない。ガラスバッチ用の原料混合物中の石英砂の割合は特に好ましくは5重量%である。このような低含量とすることにより、気泡品質、均質性、及び表面中にバッチ残存物の少ない溶融性に関してとりわけ高品質なガラスが得られる。
望まれる気泡数を達成するためには上述した方法を組み合わせることが必要である。この達成すべき気泡数はガラスkg当たり3個未満、好ましくは1個未満である。これら気泡数は100μm以上の気泡サイズに関する数である。
清澄剤として酸化砒素及び酸化アンチモンが不要であることは、得られるガラスにこれらの物質が実質的、技術的に含まれないことを意味する。As又はSbは混入物質としては通常0.04重量%未満の含量で含まれる。
本発明の一実施態様においては、清澄剤として酸化錫と酸化鉄を組み合わせて用いることにより、気泡品質及び経済性に関しより改善された結果が得られている。酸化錫の清澄剤としての使用は周知であるが、今日まで酸化鉄の清澄剤としての使用は工業的には注目されていない。これは、第一に酸化錫の場合と類似の方式で為されるFe3+からFe2+への大量転移に関与する酸素の放出が約1600℃以上の高温においてのみ開始されるためである。さらに、酸化鉄は着色料となることから透明ガラスの製造には不向きなためである。
既に見出されているように、前記2種の清澄剤を組み合わせることにより、両清澄剤の効果が大幅に増強される。このことは、2種清澄剤間での酸化還元相互作用によって説明される。酸化錫がガラス溶融液中に存在する場合、見出されるFe2+の割合は、酸化錫を含まない他は同一組成をもつ溶融液よりも高い。この観察事実は上記説明を支持するものである。珪酸アルミニウムリチウム(LAS)ガラス系を基材とするガラスバッチには、清澄剤として0.1〜<0.6重量%の酸化錫と0.05〜0.3重量%の酸化鉄が含まれることが意図されている。
清澄処理は均質化と緊密に連関しているため、バッチ原料としては、LASガラスの主成分であるSiO、Al及びLiOを既に含み、かつ最終ガラス組成に近いものを用いることが有利である。この組成は主バッチ原料としてLiO−Al−SiO化合物を用い、原料混合物の少なくとも45重量%をこの化合物で構成することによって達成される。好ましくは、前記LiO−Al−SiO化合物の比率は70重量%以上となることが意図される。なお、この組成計算にはガラス屑は考慮されない。好ましくは、主バッチ原料として、ペタル石及び又はリチア輝石が用いられる。これらを主原料として用いることにより、前記3種主成分をLASガラスの組成に近い比率で均質に加えることが可能となる。この原料に関しバッチ中の石英砂の割合は最少である。
前記方法によればバッチの溶融時に生ずるバッチカーペットも最少に減じられる。浮遊バッチカーペットを最少化することにより、ガスバーナーを用いた炎による熱投入及びタンク頂部からガラス溶融液中への反射による熱投入がより効率化される。このことは、かかる効果によってガラス温度の上昇が促進され、さらに酸化錫及び酸化鉄を用いた清澄に良い影響が及ぶため有利である。さらに、タンクスループットが向上され、エネルギーロスも減じられるため、経済的理由からも有利である。
本発明の一実施態様では、清澄処理中に放出されるO清澄ガス(モル濃度)最大量のバッチ分解中に放出される不溶性外来ガス量に対する比が特定の関係となるように、LASガラス系用のガラスバッチが供給される。ここで不溶性外来ガスとは、分解中に放出される、LASガラスへの溶解性が極めて低いCO、SO、NO、N等のガスのことを指す。これに対し、周知の通り、LASガラスに溶解するHOは前記不溶性外来ガスには含まれない。清澄において特に好ましい結果をもたらすOとモル単位のガス量との関係を式で表すと下記の通りである。
[モル]/外来ガス[モル]>0.02
放出されるO清澄ガス量は放出される不溶性外来ガス量の少なくとも2%となることが意図される。それによって得られることは、清澄のために十分量のO清澄ガスが入手可能であること、及びOガスは前記不溶性外来ガスの気泡中へ拡散可能なことである。サイズにおける成長及び気泡が加速的に上昇する結果、清澄処理中に気泡はガラス溶融液から除去される。
ガラス溶融液の均質化及び溶融方法の改善のために、ガラスバッチにガラス屑を20〜60重量%の割合で添加することが有利である。バッチカーペットの生成、及び表面層の生成は溶融中にさらに減じられる。これに関与するガラス屑は、本質的にLASガラス組成に相当するものであり、例えば溶融タンクの底部出口から製造中に生じるもの、あるいはガラスリボンから窓ガラス型板を切り出す時に生ずる切断廃棄残渣、あるいは総じて製造中に生ずる不良品から得られる。この好ましい均質化効果を引き起こすために添加すべきガラス屑の最少量は20重量%である。この添加量は、前記ガラス屑がエネルギーを消費して溶融することによる経済的理由と不良品の発生を低くしようとの努力から、60重量%を越えるべきではない。
既に説明したように、ガラス溶融液の温度を上げるためには、バッチカーペット及び表面層形成を減ずることが有効に働く。ガスバーナーの炎から発せられる熱放射線及びタンク頂部から反射される熱放射線は妨害されることなくガラス溶融液中へ入って吸収される。溶融タンク底部も、ガラス液面レベルにもよるが、同様に多少とも加熱される。タンク底部が過剰に冷たくなることは、それによってガラス溶融液の温度も低下するから回避されなければならない。技術的理由から、タンク底部の温度を最適化するために溶融タンク中のガラス液面の変化は制限される。このことは、ガラス液面が非常に低くなるように選定される場合、タンクの溶融容積サイズが予め決まっていれば、底面積の大きいタンクは非経済的であることを意味している。また、ガラス液面が過剰に高いと、タンク深部にある気泡は上昇距離が大きくなり、気泡が溶融液から除去されなくなるリスクが伴う。それゆえ、ガラス溶融液の赤外線吸収は、タンクの上部構造からの熱放射に関しては、良好な吸収条件が平均ガラス液面高さである約50〜100cmで得られるように設定されれば有利である。かかる構成によりガラス溶融液の温度上昇にとって好ましい熱投入がもたらされる。ガラス溶融液による赤外線吸収性は、タンク底部が冷たくなり過ぎないように、またガラス溶融液が深部まで十分均質に熱吸収できるように高過ぎてはならない。他方において、タンク底部に耐火レンガを用いることは熱くなり過ぎることから回避されるべきである。耐火レンガが加熱され過ぎると、ガラス溶融液と反応する結果気泡の二次的発生源となる可能性がある。ガラスの赤外線吸収が、1600nm、室温、かつ厚さ4mmの条件で測定された場合に40〜80%となるならば、前記2つの要求は双方とも満たされる。ガラス成分及び任意に着色に用いられるVは赤外域において殆ど吸収を示さないため、ガラス溶融液の赤外線吸収を決める重大な役割は清澄剤である酸化鉄に、とりわけFe2+の比率に帰する。本発明において前記吸収は酸化鉄含量を0.05〜0.3重量%とすることによって与えられる。
本発明による前記清澄方法の組み合わせにより、適度な清澄剤含量を用いて、1700℃未満の温度で経済的にガラス溶融液を清澄することが可能である。このような清澄温度では、特定の高温又は真空清澄装置等のさらなる装置の追加を必要とせずに、従来型溶融タンクを用いて要求される気泡品質を満たしつつ清澄を行うことが可能である。装置の追加を要しないため経済的な点において有利である。
従来方式で建設された溶融タンク中においては、清澄処理中にホットスポットにおいて溶融温度に達する。ホットスポットにおいて上方向に流れが生ずる結果、気泡は表面付近にまで達する。このことは、ガラス溶融液から気泡が除去されるまでは、気泡で被覆される間隔も最少限とすべきことを意味している。この部分においてガラス温度が高ければ、このことはガラス粘度が低いこと、また高温によって気泡がさらに拡がって上昇速度が速まることを意味している。溶融タンク中にこのような局部的温度設定を実現するために、タンクは、加熱が電極を用いた電気的手段とガスバーナーの両方を用いて実施されるように設計される。
別の実施態様においては、ガス溶融液の清澄が1700℃以上の温度、好ましくは1750℃以上の温度で有利に実施される。このことは、特に気泡品質に関して要求が厳しい場合、及び又は所定サイズの溶融タンクに対して高いタンクスループットが要求される場合に当て嵌まる。高温清澄装置を備える溶融タンクの場合、溶融されるガラス組成に関してはより柔軟的である。技術的理由から、例えばガラスセラミックス製品に対する特定の要求からより高い溶融粘度をもつガラス組成が要求されると、後者のガラス組成物を同様に高温清澄の実施を経て、技術的問題なく、かつ十分な気泡品質を保持して清澄することが可能である。
本発明方法により、好ましくは、主結晶相としてβ−石英固溶体を含む着色ガラスセラミックスを生成するLASガラス系用ガラスバッチであって、酸化物に基づく重量%で表わした場合にほぼ下記組成;
LiO 3.0〜4.2
ΣNaO+KO 0.2〜1.5
MgO 0〜1.5
ΣCaO+SrO+BaO 0〜4
ZnO 0〜2
0〜2
Al 19〜23
SiO 60〜69
TiO 2.5〜4
ZrO 0.5〜2
0〜3
SnO 0.1〜<0.6
ΣTiO+ZrO+SnO 3.8〜6
0.01〜0.06
Fe 0.05〜0.3
から成る該ガラスバッチが用意される。
前記表現「ほぼ〜から成る」は、表記された成分が全組成物の少なくとも96重量%、概して98重量%を占めるものであることを意味する。工業的規模で用いられるバッチ原料の場合には、通例不純物として例えばF、Cl、あるいはアルカリであるRb、Cs等の多数元素が含まれる。例えばGe系化合物、Bi、W、Nb、Ta、Yの希土酸化物等の他の化合物を低含量で添加することも可能である。
清澄剤であるSnO、Fe及びV等の数種多価成分は通常高酸化状態で存在する。これら成分の一部は、周知の通り溶融温度に伴って酸素放出量が増加するために、溶融ガラス中により価数の少ない状態で見出される。
含量0.01〜0.06重量%の有色酸化物Vの他に、例えばクロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、セレン、希土類、モリブデン化合物等の着色成分を用いて着色を保持することも可能である。これら着色成分の含量は、これら成分によって通常赤外線の透過率が概略低下されることから1重量%以下までに制限される。
本発明によるガラスセラミックスの製造に用いられる可結晶化ガラスの水分含量は、選択されるバッチ原料及び溶融液中の加工条件に依存して通常0.015〜0.06モル/リットルの範囲内である。この数値は、可結晶化ガラスに関して、0.16〜0.64/mmのβ−OH値に対応する。
気泡品質の改善のためには、主清澄剤として酸化錫及び酸化鉄が用いられる他に、例えばCeO、硫酸塩、硫化物、及びハロゲン化物等の清澄添加物をさらに用いることが可能である。これら添加物の含量は通常1重量%以下に制限される。
示された好ましい制限範囲内の酸化物、LiO、Al及びSiOは、β−石英固溶体にとって必要な構成成分である。アルカリであるNaO及びKOを含量0.2〜1.5重量%となるように添加することにより、ガラスの成形(shaping)中における溶解性及び失透安定性が改善される。
さらに、表に示された量のTiO及びZrOの添加がガラスセラミックス製造における結晶化のための核形成剤として必要とされる。核形成効果を有する成分であるTiO、ZrO及びSnOの量は、ガラスセラミックスの結晶化中に失透が起こることなく核形成が確保されるように全体で3.8〜6重量%の範囲内とされる。
可視範囲内でガラスセラミックスを着色するため、着色酸化物であるVが0.01〜0.06重量%の範囲内で使用される。Feを用いてこれら2種着色料を組み合わせることにより、レンジ上板として用いられるガラスセラミックスに要望される透過率プロフィールを設けることが可能となる。厚さ4mmで、1600nmにおいて約40〜80%の赤外線透過率が与えられている他に、これらレンジ上板の光透過率(輝度Y)は主に0.8〜2.5%であり、赤色光発光ダイオードが発する波長630nmでの透過率は3〜9%である。前記示された組成は好ましくは暗色に着色されるガラスセラミックスの製造に用いられる。さらに別の任意成分として、MgO、ZnO及びPをβ−石英固溶体中へ混合することも可能である。アルカリ土類金属であるCaO、SrO、BaO及びBを用いるにより、ガラスの形状化中における溶解性及び失透安定性が改善される。
製造工程の一部及び利用に対して課される要求は前記示された範囲の組成を用いることにより合併され、技術的に確立された経済的かつ環境調和型のLASガラスの溶融・清澄及びセラミック化方法が確保される。ガラスセラミックスをレンジ上板用途に用いる場合には、特に耐熱性、耐薬品性、及び透過率が好ましい程度まで適合することが要求される。
製造を経済的に行うため、LASガラスは容易に溶融かつ清澄でき、また高い耐失透性をもつように調製される。ガラス溶融液の粘度曲線はこのような特性を評価する上で重要である。前記粘度は、最高で1320℃、好ましくは最高で1310℃の温度で10dPasが得られるように調製される。最高で1750℃の温度では、前記粘度が10dPasとなるように調製される。ガラス溶融液の粘度を下げるため、SiO、Al、ZrOの含量が下げられ、他方アルカリであるNaO及びKO、アルカリ土類金属であるCaO、SrO及びBaOについては高含量が選択される。ZrOの含量を1.6重量%以下まで減らすことも、穏やかに溶解するZr原料のバッチ残存物を含む表面層の形成を減じるために有利である。耐失透性を向上させるためには、LiO、Al、SiO、ZrO及びSnOは失透に関して臨界的な結晶層を形成する可能性があるため、これら成分の含量を減らす方が有利である。上述した有利点を実現するため、一実施態様では、主結晶層としてβ−石英固溶体を含む着色ガラスセラミックスを生成し、酸化物で表した重量%で下記組成;
LiO 3.2〜4.0
NaO 0.2〜1
O 0.1〜1
ΣNaO+KO 0.4〜1.2
MgO 0.1〜1.2
CaO 0.2〜1
SrO 0〜1
BaO 0〜3
ΣCaO+SrO+BaO 0. 2〜4
ZnO 0〜1.8
0〜1
Al 19〜22
SiO 62〜67
TiO 2.8〜4
ZrO 0.5〜1.6
0〜1.5
SnO 0.1〜0.5
ΣTiO+ZrO+SnO 4.2〜6
0.01〜0.05
Fe 0.08〜0.15
から成るLASガラス系用ガラスバッチが用意される。
鉄含量は、赤外域及び可視光域におけるガラスセラミックスの透過率プロフィールを最適化するため0.08〜0.15重量%の範囲内に設定される。
一実施態様においては、清澄剤として酸化錫が0.35重量%未満、好ましくは0.3重量%未満の含量とされたLASガラス系用ガラスバッチが供給される。成形中における耐失透性を向上させるためにはSnO2を減らすことが有利である。さらに、溶融タンク中の貴金属組み込み構造上に腐食が生ずる傾向も減じられる。酸化錫は特にスターラー、電極、あるいは引きノズル等のPt含有組み込み構造と反応し易く、そのために耐使用年数が短縮される可能性がある。
好ましくは、LASガラス用ガラスバッチ中のV含量は0.04重量%未満、さらに好ましくは0.03重量%未満である。酸化バナジウムは高コスト材料であるため、Vの含量は最小限とする方が経済的に有利である。さらに、酸化バナジウムは有害物質として分類されるため、環境上の観点から安全な材料とは言えない。このようにVO5含量を用いることにより、450nm以上の可視光域においても、本発明に係る組成物の透過率を、青色、緑色、黄色、オレンジ色あるいは白色、あるいは白色発光ダイオードを用いるレンジ上板の表示性能にとって有利な0.2%未満に設定することが可能となる。従来有効とされている赤色発光ダイオードを用いた場合の表示性能は何ら変化なく確保される。
本発明方法によって溶融及び清澄されるLAS可結晶化ガラスは、β−石英砂固溶体を用いてガラスセラミックスへ変換された後にレンジ上板として用いられる。要求されるプレート形状とするために適する形状化方法はローリング法及びフローティング法である。
レンジ上板には通常厚さ2.5〜6mmのガラスセラミックスブレートが用いられる。
本発明に従った組成に伴って得られる好ましい透過率プロフィールゆえに、レンジ上板による青色、緑色、黄色、オレンジ色、及び白色発光ダイオードのカラー表示性能は向上される。あらゆる形状のインジケーター、窪みのある形状、面形状も可能である。可視光域における透過率スペクトルプロフィールが均質であることから、カラーディスプレイあるいはスクリーン用に提供することも可能である。ローラーによる成形により、レンジ上板の下側へ慣用的なノブを設けたり、あるいは滑らかな状態に作製することも可能である。ディスプレイインジケーター用に、厚さの薄い部分を圧延することも可能である。
レンジ上板の加熱手段としては、放射ヒーター、ハロゲンヒーター、誘導ヒーターあるいはガスを用いることが可能である。この場合、レンジ上板は平面状の形状だけでなく、3次元的に形状化することも可能である。斜に切ったり、角度をつけたり、湾曲面とすることも可能である。レンジ上板は、技術的意味において、酸化砒素及び又は酸化アンチモン無含有である。1600℃以上の温度で酸化錫及び酸化鉄を組み合わせて用いた清澄を行い、さらに本発明に従ってガラスバッチ用に確立された原料混合物を用いることにより、気泡品質はレンジ上板kg当たりの気泡数として3個未満、好ましくは1個未満まで減じられる。
実施例3における溶融液の表面を示した平面図である。図1左は縁部を示し、図1右はドリルコアの中心部を示す。 比較例5における溶融液の表面を示した平面図である。図2左は縁部を示し、図2右はドリルコアの中心部を示す。 比較例6における溶融液の表面を示した平面図である。図3左は縁部を示し、図3右はドリルコアの中心部を示す。
発明を実施するための手段
以下に記載の実施例により本発明についてさらに詳細に説明する。
表1は、珪酸アルミニウムリチウムガラスセラミックスに用いられる本発明による可結晶化ガラスの組成を酸化物による重量%で示し、及びそれら組成のバッチ原料として用いられる各種化合物を示した表である。原料混合物について計算する場合には、いくつかの原料については品質によりある程度の不純物が含まれることを考慮しなければならない。例えば、市販品の品質にもよるが、リシア輝石のLiO含量は異なり、またカリ、ナトリウム及びカルシウム長石、及びFeもある程度含まれている。所望の組成から成るLASガラスを得るためにバッチ処方を計算する際には前記混入物について考慮しなければならない。
ガラスNo.2は、酸化錫に代えて酸化砒素を用いて清澄を行った以外はすべて同一である比較用ガラスである。バッチ原料として用いたAsは、タンク雰囲気からの、あるいは硝酸塩分解によって生ずる酸素を用いて溶融中にAsへ変換される。
Figure 0005680314
表1にはガラスに関して測定された、密度、転位温度Tg、加工温度V、粘度10dPasを示す温度、20〜300℃における熱膨張率、高温失透温度UDEVなどの特性も示されている。1600nmにおける赤外線透過率は厚さ4mmについて測定されている。
LASガラス用のガラスバッチに用いる原料混合物を変更するための実験室試験では、十分に事前混合したガラスバッチ約2kgを白金坩堝中へ投入した。この坩堝の高さは約250mmであり、直径は約70mmである。前記坩堝を温度の均一化された炉中へ置き、ガラスバッチを溶融した。溶融状態の評価試験は1600℃において1時間に亘って実施した(表2)。
Figure 0005680314
特定時間経過後、溶融バッチを含む白金坩堝を取り外し、坩堝中に入れられたガラスを無ストレス方式により冷却炉中において毎分20Kの冷却速度で680℃から室温まで冷却された。表面が溶融状態にある冷却ガラスをダイアモンド中空ドリルを用いて坩堝から取り出し、得られたドリルコアについて品質の評定を行った。ドリルコアの直径は55mmであった。試験は均等に行われたため、種々原料の溶融状態、特にバッチ残存物による表面層の形成に関して相対的比較を行うことができた。種々原料混合物の溶融状態は、1600℃、1時間の試験条件下で調べた。
表2における実施例1〜4は、異なるLiO、Al及びSiO化合物を主バッチ原料とする本発明による例示である。実施例2及び3は品質の異なる、すなわちLiO含量の異なる市販のリシア輝石原料と共に溶融した例である。実施例4のバッチ原料にはさらに生成されるガラスと同一組成から成るガラス屑を30重量%加えた。実施例5は炭酸リチウムを用い、酸化錫と酸化鉄を組み合わせた清澄を行った同一組成から成るガラスの比較例である。実施例1〜5からは、表1のガラスNo.1と同一組成から成るガラスが生成される。比較例6は表1のガラスNo.2に対応しており、組み合わせ清澄に代えて酸化砒素を用いた清澄を行っている。表2にはガラスバッチ用原料混合物1kgに対するLiO、Al及びSiOの各化合物の比率、及び石英砂の比率を示す。添加したガラス屑は計算上考慮されていないが、溶融状態及び気泡品質のさらなる改善をもたらしている。これらバッチの主要成分は市販原料品質によって構成される。さらに、表1に従って用いられる原料から放出される不溶性外来ガス及び放出される最大O清澄ガス、及びそれらの比も測定される。硝酸塩分解中に放出されるガスはNO外来ガスとして計算され、可能性のあるOの分裂(cleavage)に関してはこの反応が清澄効果を得るには低過ぎる温度で起こることから考慮されていない。
最初に、バッチ残存物を用いた表面層の形成について視覚による評価を行った。比較的暗いガラスに関しては、表面の白いバッチ残存物が明瞭に識別される。視覚による評価においては、形成が極めて高いものを5と評定し、平均的な形成は3、そしてバッチ残存物が認められないものは0と評定する。さらに、前記表面を写真撮影し、白い不溶解性バッチ残存物の面積比率をコンピュータ補助画像処理を用いて定量する。表面の気泡は計算からは除外する。原材料によるが、バッチ残存物は通常白金坩堝の縁部に蓄積し、またドリルコアの縁部にも蓄積するため、ドリルコアの縁部及び中心部における数値を測定した。
得られたドリルコアは、評定のため、縦方向に二等分する。横方向の検鏡用薄切片を作製し、約4mm厚の切片として研磨した。バッチ残存物の生成は、視覚的評価に影響を与える要因である。
図1〜3は写真の白黒コピーであり、それぞれはドリルコアの縁部及び中心部の溶融液表面の平面図である。図1は、リシア輝石及び、酸化鉄と酸化錫を組み合わせて清澄剤として用いている実施例3における状態である。図2は炭酸リチウムを用い、組み合わせ清澄を行っている比較例5における状態である。図3は表1の比較ガラスNo.2に対応する炭酸リチウムと砒素による清澄を行った比較例6における状態である。挿入されたスケールは1500μmを示す。
ドリルコアから約30°の扇形片を切り出し、ガラス溶融液の面を厚さ2mmで切り離した。この切り離し部分はバッチ残存物が猶見出される深さに一致する。得られた材料を粉砕して結晶相及び結晶相の容積%による比率についてX線解析によって分析した。石英砂から生成されたクリストバル石は単一結晶相として見出された。
光学顕微鏡観察を行うことにより、バッチ粒子上に付着した気泡がしばしば観察される。
以上の結果から、ガラス品質がガラスバッチ用の原料混合物中に含まれる石英砂の比率に大きく依存することが示される。砒素を用いた清澄を行った比較例6における良好な品質、すなわち均質性、及び表面層が少ないか、又はないことは、放出されるO清澄気泡の均質化効果に帰すものである。酸化砒素は、比較的低温でも清澄性酸素を放出し、さらに比較的大量であっても、一種の微小撹拌効果、従って良好な均質化効果を発揮し、及び表面層を形成することなく溶融させる。本発明に従った実施例により得られる品質は、炭酸リチウムを用いる比較例5よりも優れることは、LiO−Al−SiO化合物に用いるバッチ原料が、酸化錫及び酸化鉄を用いた組み合わせ清澄を行う場合に大きな影響をもつことを示している。
さらなる実施例7では、表1のガラスNo.1に従った組成から成り、表2の実施例4に相当するガラスバッチ用の原料混合物を用いた組成物を工業的規模で溶融した。溶融タンクにはブリッジ壁が備え付けられている。加熱は、ガスバーナーと、さらにガラス溶融液中に浸された電極を用いる電気ヒーターによって行った。加熱を行うことにより、清澄中のホットスポット領域における温度を1660℃に設定した。1700℃を超える温度での高温清澄は不要とした。得られたLASガラスの気泡品質はガラスkg当たり気泡数0.5未満であった。成形中、厚さ4mmの吹き出物だらけのガラスリボンを作製し、ストレスを避けるため冷却炉中において冷却した。このガラスリボンからサイズ500×500×4mmのレンジ上板を切り出し、工業用ローラー炉中においてセラミック化した。セラミック化中、プレートを700〜800℃の温度範囲において25分間核形成し、最高温度910℃で10分間結晶化した。得られた厚さ4mmのガラスセラミックスの透過率は、450nm以上の可視光域において所望される0.2%以上の透過率であった。470nmでは0.4%の透過率が測定された。20〜700℃における熱膨張率は0.2・10−6/Kである。得られたガラスセラミックスは、キャビネット型レンジ用途とされる場合に課される要求、例えば耐熱性、耐薬品性、及び透過率に対し高い適合性を有するものである。

Claims (14)

  1. 酸化砒素及び又は酸化アンチモンを用いず、主清澄剤として酸化錫が0.1〜<0.6%及び酸化鉄が0.05〜0.3%添加された珪酸アルミニウムリチウム(LAS)ガラス系を基材とするガラスバッチを用意する工程、
    ガラス成分であるSiOを投入するために通常用いる石英砂原料の比率が40重量%未満となるようにガラスバッチ用原料混合物を設計する工程、及び
    1600℃以上の温度でガラス溶融液を清澄する工程から構成されることを特徴とする、珪酸アルミニウムリチウム(LAS)ガラスセラミックスから成る可結晶化ガラスに用いるガラス溶融液の環境調和型溶融清澄方法。
  2. 主バッチ原料としてLiO−Al−SiO化合物が用いられ、前記化合物によって前記原料混合物の45重量%以上が構成されることを特徴とする請求項1記載の方法。
  3. ペタル石及び又はリシア輝石が主バッチ原料として用いられることを特徴とする請求項項記載の方法。
  4. 清澄中に放出されるO清澄ガス(モル)の最大量の、バッチ分解中に放出される不溶性外来ガス量(モル)に対する比が下記関係;
    [モル]/不純物ガス[モル]>0.02
    を満たすLASガラス系用ガラスバッチが用意されることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の方法。
  5. ガラス屑としてガラスバッチがさらに20〜60重量%添加されることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の方法。
  6. ガラス溶融液の赤外線吸収が、厚さ4mm、室温での、1600nmにおける赤外線透過率40〜80%に対応する数値に設定されることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の方法。
  7. 清澄が、追加の特別な高温清澄装置を用いずに、ガラス溶融液の温度として1700℃未満の温度において実施されることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の方法。
  8. 清澄がガラス溶融液の温度として1700℃以上の温度で実施されることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の方法。
  9. 溶融装置のスループットあるいはガラスの平均残存時間が、ガラス中の気泡数がガラスkg当たり3気泡未満となるように選択されることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の方法。
  10. 主結晶相としてβ−石英固溶体を含む着色ガラスセラミックスを生成するLASガラス系に用いられ、かつ酸化物で表わした重量%でほぼ下記組成;
    LiO 3.0〜4.2
    ΣNaO+K0 0.2〜1.5
    MgO 0〜1.5
    ΣCaO+SrO+BaO 0〜4
    ZnO 0〜2
    0〜2
    Al 19〜23
    SiO 60〜69
    TiO 2.5〜4
    ZrO 0.5〜2
    0〜3
    SnO 0.1〜<0.6
    ΣTiO+ZrO+SnO 3.8〜6
    0.01〜0.06
    Fe 0.05〜0.3
    から成るガラスバッチが供給されることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の方法。
  11. 主結晶相としてβ−石英固溶体を含む着色ガラスセラミックスを生成するLASガラス系に用いられ、かつ酸化物で表わした重量%でほぼ下記組成;
    LiO 3.2〜4.0
    NaO 0.2〜1
    O 0.1〜1
    ΣNaO+KO 0.4〜1.2
    MgO 0.1〜1.2
    CaO 0.2〜1
    SrO 0〜1
    BaO 0〜3
    ΣCaO+SrO+BaO 0.2〜4
    ZnO 0〜1.8
    0〜1
    Al 19〜22
    SiO 62〜67
    TiO 2.8〜4
    ZrO 0.5〜1.6
    0〜1.5
    SnO 0.1〜0.5
    ΣTiO+ZrO+SnO 4.2〜6
    0.01〜0.05
    Fe 0.08〜0.15
    から成るガラスバッチが供給されることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
  12. 清澄剤として酸化錫を0.35重量%未満含むLASガラス系用ガラスバッチが供給されることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
  13. を含量として0.04重量%未満含むLASガラス系用ガラスバッチが供給されることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
  14. 主結晶相としてβ−石英固溶体を含む着色ガラスを生成するLASガラス系用ガラスバッチが供給される請求項1〜13少なくとも1項に従って製造されるガラスセラミックスのレンジ上板としての使用。
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