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JP5675889B2 - センサ値を用いてインスリンを注入するための閉ループ装置または半閉ループ装置 - Google Patents

センサ値を用いてインスリンを注入するための閉ループ装置または半閉ループ装置 Download PDF

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Description

本発明は、閉ループまたは半閉ループ装置に用いられるセンサ装置、より詳細には、センサ値を予測してセンサの故障を検出するための装置に関する。
長年に亘り、身体の特性値は、体液試料を採取して求めてきている。例えば、糖尿病患者では度々血糖値を測定する。従来の血糖の測定では、ランセットを用いて指を刺し、少量の血液試料を採取する方法を用いている。このような方法は、各時点でのデータを与えるよう設計されており、試験時の間の特性値変化を示す連続データを与えるものではない。このような不連続の測定値は、ある時点においてある糖尿病患者の血糖値がどのようであるかについては多少の知識を与え、これより、患者の現在の血糖測定値を下げるためのインスリンの“補正”量を求めるには十分な情報を与える。しかし、このような不連続の測定値では、血糖値に基づいてインスリンを投与する、全ての種類の自動または半自動装置に対して、十分な情報を与えることはできない。
最近では、患者の血液や間質液中の特定の薬剤または組成物を検出、および/または、定量する様々な埋め込み型電気化学センサが開発されている。例えば、糖尿病患者の血糖値のデータを得るために使用する、グルコースセンサが開発されている。血糖モニタに(有線または無線で)接続したこのようなグルコースセンサは、一定期間、例えば、3から5日間に亘って、連続グルコース測定値を与えることができる。このような測定値は、患者へのインスリンの規則的投与を典型的に含む治療計画の監視、および/または、調整に有用である。このように、血糖測定値は、その内容を全て本件に引用して援用する、米国特許第4,562,751号、米国特許第4,678,408号、および米国特許第4,685,903号に一般的に記載されているような、外部型の半自動薬物注入ポンプ、あるいは、米国特許第4,573,994号に一般的に記載されているような、自動化埋め込み型薬物注入ポンプを用いる薬物治療を向上させる。典型的な薄膜センサは、その内容を全て本件に引用して援用する、同一出願人による、米国特許第5,390,671号、米国特許第5,391,250号、米国特許第5,482,473号、および米国特許第5,586,553号に記載されている。また、米国特許第5,299,571号も参照されたい。更に、連続グルコースデータの生成に用いられる特徴的なグルコースモニタは、その内容を全て本件に引用して援用する、同一出願人による、2005年12月30日出願、米国特許出願第11/322,568号、標題“Telemetered Characteristic Monitor System and Method of Using the Same”に記載されている。更に、センサデータを受ける注入ポンプは、その内容を全て本件に引用して援用する、同一出願人による、2004年10月14日出願、米国特許出願第10/867,529号、標題“System for Providing Blood Glucose Measurements to an Infusion Device”に記載されている。
米国特許第4,562,751号明細書 米国特許第4,678,408号明細書 米国特許第4,685,903号明細書 米国特許第4,573,994号明細書 米国特許第5,390,671号明細書 米国特許第5,391,250号明細書 米国特許第5,482,473号明細書 米国特許第5,586,553号明細書 米国特許第5,299,571号明細書 米国特許出願第11/322,568号明細書 米国特許出願第10/867,529号明細書 国際公開第2006/099151号 特表2003−522558号公報
センサ技術の向上に伴い、閉ループまたは半閉ループ装置において、インスリンなどの医薬品の注入を制御するため、センサ値を用いることが更に強く求められている。特に、糖尿病用の閉ループ装置では、患者に取り付けたグルコースセンサとインスリン注入ポンプが必要で、インスリンは、センサのグルコース値の測定値に基づく注入ポンプのコントローラにより自動的に投与される。半閉ループ装置は、患者の介入する工程を典型的に含み、注入ポンプのコントローラで算出した注入量のインスリンを投与する前に、患者の承諾を得る必要がある。しかし、薬剤の過剰投与、および/または、投与不足の分岐を考えた場合、インスリンなどの薬剤の投与の制御に使用できる程に十分信頼できるセンサ値が得られ、それ自体で作動し、あるいは、患者の承認/拒否工程があっても作動する、十分なセーフガードを備えた、実用的な閉ループ/半閉ループ装置を実際に作り出す実行可能な方法は未だ開発されていない。
本発明の実施の形態に従って、使用者体内の血糖濃度を調節するための閉ループ注入装置および方法を述べる。本発明の実施の形態は、第1部位に設置した第1グルコースセンサから第1グルコース測定値を得る工程と、第2部位に設置した第2グルコースセンサから第2グルコース測定値を得る工程とを含んでいる。望ましい実施の形態では、この装置および方法では、第1および第2センサで生じたシグナルを確認する。実施の形態において、確認は、入力として第2グルコース測定値を用いて第1グルコース測定値に対する第1予測値を導き出し、入力として第1グルコース測定値を用いて第2グルコース測定値に対する第2予測値を導き出すことで行う。第1予測値と第1グルコース測定値との間の第1誤差と、第2予測値と第2グルコース測定値との間の第2誤差を求める。第1および第2誤差の絶対誤差値の合計を閾値と比較して、故障センサを確認することができる。
本発明の別の実施の形態に従い、この装置および方法では、第1グルコースセンサまたは第2グルコースセンサのどちらが、センサシグナル中に最小誤差を含んでいるかを決定し、センサシグナル中に最小誤差を含んでいるグルコースセンサに基づいて、報告血糖値を計算する。更に別の実施の形態においては、計器(meter)グルコース値との比較を用いて、第1または第2グルコースセンサが故障しているかどうかを決定することができる。
インスリンなどの薬剤の投与の制御に使用できる程に十分信頼できる実用的な閉ループ/半閉ループ装置が提供できる。
本発明のその他の特徴および長所は、例として本発明の実施の形態の様々な特徴を示している添付図と併せ、以下の詳細な記述より明らかとなろう。
添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を詳細に述べる。同じ番号は、各図中の対応する部分を指している。
本発明の実施の形態による、閉ループグルコース制御装置を示すブロック図である。 本発明の実施の形態による、身体上に設置した閉ループハードウェアを示す正面図である。 本発明の実施の形態において使用する、グルコースセンサ装置を示す斜視図である。 図3aのグルコースセンサ装置を示す側断面図である。 本発明の実施の形態において使用する、図3aのグルコースセンサ装置のセンサセットを示す斜視図である。 図3cのセンサセットを示す側断面図である。 図3dのセンサの検出端を示す断面図である。 皮下センサ挿入セットと遠隔操作型特性値モニタ送信機とを接続して特性値モニタ装置とした、別の望ましい実施の形態の斜視図である。 二つに分けた、皮下センサ挿入セットと遠隔操作型特性値モニタ送信機とを示す上面図である。 本発明の実施の形態において使用する、開位置にあるリザーバの蓋を備えた注入デバイスを示す上面図である。 本発明の実施の形態において使用する、挿入針を備えた注入セットの針を引き出した場合を示す側面図である。 本発明の実施の形態による、閉ループグルコース制御装置を示すブロック図である。 本発明の実施の形態による、閉ループグルコース制御装置を示すブロック図である。 本発明の実施の形態による、自動的な採血および血液の戻しを示すブロック図である。 本発明の実施の形態による、身体に取り付けたセンサセットおよび注入セットを示す断面図である。 本発明の実施の形態による、間質液中グルコースと血漿グルコースとの関係を示すモデルである。 血漿グルコースステップと、それによって生じる間質液グルコース濃度との対比を示すグラフである。 本発明の実施の形態による、身体の異なる位置に同時に取り付けた2つのグルコースセンサを示すブロック図である。 本発明の実施の形態による、経時的に参照血糖値と比較した、図13の2つのグルコースセンサを示すグラフである。 本発明の実施の形態による、2つのセンサの間でセンサの確認と故障点検を行うために用いられる適応フィルタ配置を示すブロック図である。 本発明の実施の形態による、未処理のセンサシグナルと、適応フィルタを用いて計算した対応する予測トレースとを示すグラフである。 本発明の実施の形態による、センサ値のそれぞれの予測のパフォーマンスを示すグラフである。 本発明の実施の形態による、故障検出を示すグラフである。 本発明の実施の形態による、図15の適応フィルタ配置で用いられる工程を示すフローチャートである。 本発明の実施の形態による、図16の故障処理プロセス中の工程を示すフローチャートである。
説明を目的とした図面に示すように、本発明は、身体から得た分析物濃度の測定値からのフィードバックを基に、使用者の体内に注入する液体インシュリンの速度を調節する、閉ループ注入装置に具体的に示される。詳細な実施の形態において、本発明は、身体から得たグルコース濃度の測定値を基に、使用者の体内に注入するインスリンの速度を調節する、制御装置に具体的に示される。望ましい実施の形態では、この装置は、膵臓ベータ細胞(β細胞)を模倣して設計されている。言い換えると、本装置は、完全に機能するヒトβ細胞が体内の血糖濃度の変化に応じて作り出すのと同じ濃度プロフィールで使用者の体内へインスリンを放出するよう、注入デバイスを制御するものである。
このように、本装置は、血糖値に対する身体の自然なインスリン応答を模倣し、またインスリンは代謝効果と細胞分裂促進効果の両方を持つため、インスリンを有効利用するだけでなく、他の身体的な作用も利用するものである。しかし、どれほどの量のインスリンが送達されるかを考慮せずに、体内でのグルコースの偏りを小さくするよう設計されたアルゴリズムでは、過度の体重増加、高血圧、アテローム性動脈硬化症を引き起こすことがあるため、アルゴリズムは、β細胞を厳密に模倣しなければならない。本発明の望ましい実施の形態において、この装置は、生体内でのインスリン分泌パターンを模倣し、健常人の持つ生体内β細胞適応と一致するようこのパターンを調節しようとするものである。正常耐糖能(NGT)を持ち、幅広く変化するインスリン感受性(S)を持つ対象者における生体内β細胞応答は、グルコースホメオスタシスを保つ上で最適のインスリン応答である。
望ましい実施の形態は、図1に示すように、グルコースセンサ装置10と、コントローラ12と、インスリン送達装置14とを含むものである。グルコースセンサ装置10は、身体20内の血糖値18を示すセンサシグナル16を発生し、センサシグナル16をコントローラ12へ送る。コントローラ12はセンサシグナル16を受け、インスリン送達装置14へ情報を送る、命令(コマンド)22を発生する。インスリン送達装置14は命令22を受け、命令22に応じて身体20内にインスリン24を注入する。半閉ループ型であるもう一つの実施の形態では、インスリン送達14がインスリンを注入する前に、使用者によって命令22が承認されなければならない。
一般に、グルコースセンサ装置10は、グルコースセンサと、センサに電力を供給してセンサシグナル16を発生するためのセンサ電気部品と、センサシグナル16をコントローラ12へ伝えるセンサ通信系と、電気部品とセンサ通信系とを収容するセンサ装置ハウジングとを含んでいる。
典型的に、コントローラ12は、センサシグナル16に基づいてインスリン送達装置14への命令を発生する、コントローラ電気部品およびソフトウェアと、センサシグナル16を受け、インスリン送達装置14へ命令を伝えるコントローラ通信系とを含んでいる。
一般に、インスリン送達装置14は、注入デバイスと、身体20へインスリン24を注入するための注入チューブとを含んでいる。詳細な実施の形態では、注入デバイスは、命令22に従って注入モーターを作動させる注入電気部品と、コントローラ12から命令22を受ける注入通信系と、注入デバイスを収容する注入デバイスハウジングとを含んでいる。
望ましい実施の形態において、コントローラ12は、注入デバイスハウジング内に収容されており、注入通信系は、命令22をコントローラ12から注入デバイスへ伝える電気配線またはワイヤである。別の実施の形態では、コントローラ12はセンサ装置ハウジング内に収容されており、センサ通信系は、センサシグナル16をセンサ電気部品からコントローラ電気部品へ伝える電気配線またはワイヤである。更に別の実施の形態では、コントローラ12がそれ自体のハウジングを持ち、あるいは、補助的なデバイス内に含まれている。もう一つの別の実施の形態では、コントローラと注入デバイスとセンサ装置とが全て1つのハウジング内に収容されている。更に別の実施の形態では、センサ、コントローラ、および/または、注入通信系は、ケーブル、ワイヤ、光ファイバー線、RF、IR、または超音波送受信機、あるいは電気配線に代わるものなどを用いることができる。
<装置の概要>
図2に示すように、本発明の望ましい実施の形態は、使用者の身体20上に全てを装着した、センサ26と、センサセット28と、遠隔操作型特性値モニタ送信機30と、センサケーブル32と、注入デバイス34と、注入チューブ36と、注入セット38とを含むものである。図3aおよび図3bに示すように、遠隔操作型特性値モニタ送信機30は、プリント基板33と、バッテリ35と、アンテナ(図示せず)と、センサケーブルコネクタ(図示せず)とを支持している送信機ハウジング31を含んでいる。図3dおよび図4に示すように、センサ26の検出端40には露出した電極42があり、使用者の身体20の皮膚46を通して皮下組織44に差し込まれている。電極42は、皮下組織44に充満している間質液(ISF)と接している。図3cおよび図3dに示すように、センサ26は、使用者の皮膚46に貼り付けられたセンサセット28によって位置に保たれている。センサセット28は、センサケーブル32の第1端29へ接続する、センサ26のコネクタ端27を備えている。センサケーブル32の第2端37は、送信機ハウジング31に接続している。送信機ハウジング31内に収容されているバッテリ35は、センサ26と、プリント基板33上の電気部品39に電力を供給する。電気部品39はセンサシグナル16を検知して、デジタルセンサ値(Dsig)をメモリに記憶した後、定期的にデジタルセンサ値Dsigを、メモリから、注入デバイス内に含まれているコントローラ12に送信する。
図3a〜図3bに示すように、遠隔操作型特性値モニタ送信機30は、センサケーブル32によってセンサセット28に接続している。別の実施の形態では、ケーブル32を省き、遠隔操作型特性値モニタ送信機30に、センサセット28のコネクタ部分26に直に接続するための適当なコネクタを加え、あるいは、センサセット28に変更を加えて、別の位置にコネクタ部分26を設けても良い。例えば、図5および図6は、可能な別の実施の形態を示したものであり、ここでは、図6に示すように、特性値モニタ送信機100’とセンサセット10’とが並列に直接接続するよう、特性値モニタ送信機100’とセンサセット10’に変更を加えて、センサセット10’から特性値モニタ送信機100’を取り外せるようにすることができる。もう一つの可能な実施の形態(図示せず)では、遠隔操作型特性値モニタ送信機100’をセンサセット10’上に置き易いよう、センサセット10’の上部に変更を加えることができる。
コントローラ12は、デジタルセンサ値Dsigを処理して、注入デバイス34への命令22を発生する。望ましくは、図7に示すように、注入デバイス34は命令22に応じて、注入デバイス34の内側に設置したリザーバ50からインスリン24を押し出すプランジャー48を作動させる。詳細な実施の形態では、リザーバ50のコネクタチップ54は、注入デバイスハウジング52を突き抜けて延び、注入チューブ36の第1端51がコネクタチップ54に接続している。注入チューブ36の第2端53は、注入セット38に接続している。インスリン24は、注入チューブ36を通って注入セット38へ、更に身体20へ送り出される。図8に示すように、注入セット38は、使用者の皮膚46に接着されている。注入セット38の一部として、カニューレ56は、皮膚46を突き抜けて皮下組織44まで伸び、リザーバ50と、使用者の身体20の皮下組織44との間で液体を連絡させている。
別の実施の形態では、閉ループ/半閉ループ装置を、病院でのグルコース管理装置の一部とすることができる。集中治療の際のインスリン治療が、対象者が以前、糖尿病であったか否かに関係なく、創傷治療の劇的な改善、血液感染、腎不全、および多発性神経障害死亡率の減少(その内容を全て本件に引用して援用する、Van den Berghe G.ら、NEJM 345: 1359-67, 2001を参照)を示したことから、本発明をこの病院設備で用いて、集中治療中の患者の血糖値を制御することは可能である。このような別の実施の形態において、患者が集中治療設備(例えば、ICU)内にいる間、一般に患者の腕にはIV管が埋め込まれているため、既存のIV接続部からピギーバックを外して、閉ループグルコース制御装置を設置することができる。このように、病院型装置では、静脈内(IV)輸液の速やかな投与を目的として患者の血管系に直接繋いだIVカテーテルを、採血や、物質(例えば、インスリン、抗凝血剤)を血管内腔へ直接注入し易くするためにも使用できる。更に、グルコースセンサをIVラインより挿入し、血流からリアルタイムで血糖値を得ることができる。その結果、病院型装置の種類に応じて、別の実施の形態では、望ましい実施の形態に述べたような、センサ26、センサセット28、遠隔操作型特性値モニタ送信機30、センサケーブル32、注入チューブ36、注入セット38などの前述の装置用構成要素を必ずしも必要としない。代わりに、その内容を全て本件に引用して援用する、2002年12月30日出願の同時係属中の特許出願第10/331,949号、標題“Multi-lumen Catheter”に記載のような、標準血糖測定器または血管グルコースセンサを用いて、注入ポンプ制御のための血糖値を求め、患者へのインスリン投与に既存のIV接続部を用いることができる。
本発明の閉ループコントローラと共に、病院型装置の数多くのデバイスの組み合わせが使用できることを認めることが重要である。例えば、図9aの皮下センサ装置と対比させて図9bに示すように、自動血糖/静脈内インスリン注入装置は、グルコース濃度を求めるため所定の間隔(望ましくは、5〜20分)で自動的に血液を採取分析し、より狭い間隔(望ましくは、1分)で血糖値を推定し、後に述べるコントローラに従って静脈内インスリン注入量を計算するために、推定シグナルを用いることができる。変更を加えた自動血糖/静脈内インスリン注入装置では、皮下センサ装置で必要とされる皮下センサ補正および皮下インスリン補正(後に、皮下センサ装置に伴う遅延問題について議論する際に述べるような)を行う必要がなくなると考えられる。血液の自動採取と、それに続くグルコース測定は、既存の技術(例えば、VIAまたはBiostatorなどの血糖分析器)または図10に示す装置を用いて行うことができる。図10の装置は、蠕動ポンプ420を用いて、電流測定センサ410(センサ26で使用されているものと同じ技術)を経由して血液を吸引後、リザーバ400からの放出(0.5〜1.0ml)を加えた血液を戻す。放出は、生理食塩水、ヘパリン、グルコース溶液、および/またはその類似物から成るどのような調製物であっても良い。血液試料を、1分以上、20分以下の間隔で採取するならば、血糖値を、現在(n)と前回(n−1)の値に基づく推定を用いて分刻みに推定し、後に詳細に述べるような、コントローラのロジックと連動させることができる。20分以上の間隔で得られる血液試料の推定では、ゼロ次ホールドが用いられると考えられる。これらの血糖値を基に、注入デバイスは、後により詳しく示す閉ループコントローラに基づいて、インスリンを投与することができる。
本装置に別の変更を加えたものでは、手動の血糖/静脈内インスリン注入装置が使用可能で、ここでは、標準的な血糖測定器(例えば、YSI、Beckmanなど)から頻繁に血糖値を手入力し、より狭い間隔(望ましくは、1分)で値を推定して、IVインスリン注入量を算出するための代用シグナルを作り出す。あるいは、センサ血糖/静脈内インスリン注入装置では、頻繁に血糖値を測定するために連続グルコースセンサ(例えば、血管内、皮下など)を使用しても良い。更に、先の実施例のいずれにおいても、インスリン注入は、後に述べるコントローラに従って、静脈内よりも皮下に投与することができる。
更に別の実施の形態では、装置の構成部品を、より少数またはより多数のデバイスと組み合わせても良く、および/または、各デバイスの機能を、使用者のニーズに合わせて様々に配置しても良い。
<コントローラ>
前述の望ましい実施の形態などのように閉ループ装置のハードウェアを設定した後、人体に対するハードウェアの作用を、コントローラによって決定する。望ましい実施の形態において、コントローラ12は、膵臓ベータ細胞(β細胞)を模倣して設計されている。言い換えると、コントローラ12は、血中のインスリン濃度が、身体20中の血糖濃度に応じて、完全に機能するヒトβ細胞が生じる濃度プロフィールと同様のプロフィールとなるような速度で、身体20中にインスリン24を放出するよう、注入デバイス34に命令する。このように、コントローラ12は、生体内でのインスリン分泌パターンを模倣し、生体内β細胞適応と一致するようこのパターンを調節しようとするものである。正常耐糖能(NGT)を持ち、幅広く変化するインスリン感受性(S)を持つ対象者における生体内β細胞応答は、グルコースホメオスタシスを保つ上で最適のインスリン応答である。β細胞の二相性インスリン応答は、比例積分微分(proportional, plus integral, plus derivative)(PID)コントローラの構成要素を、様々なフィルタと共に用いて模倣することができる。β細胞を模倣するためのPIDコントローラに関する記述は、その内容を全て本件に引用して援用する、同一出願人による米国特許第6,558,351号に見ることができる。別の実施の形態において、コントローラは単に、その個体のインスリン感受性/炭水化物比、標的血糖値、摂取する炭水化物の量、およびセンサの示した現在の血糖値の知見から、注入するインスリンの量を計算する、注入ポンプのコントローラであっても良い。このようなコントローラの例は、その内容を全て本件に引用して援用する、同一出願人による米国特許第6,554,798号、標題“External Infusion Device with Remote Programming, Bolus Estimator and/or Vibration Alarm Capabilities”に記載されている。
<センサ冗長性>
本装置で使用するコントローラに関わらず、インスリン送達用の閉ループ/半閉ループアルゴリズムは、ポンプ送達機構から投与する最適インスリン投与量を求める制御アルゴリズムを、連続式グルコースセンサに基づいて動かす。従って、センサの信頼性と故障の検出および対処は、このような応用での信頼性と安全性にとって極めて重要である。このため、センサシグナルの忠実性を評価し、センサ故障の検出後に適切な行動を開始できる評価機構を持つことが望ましい。故障が検出された場合には、センサ交換の要求を発して、インスリン送達を一時停止し、または制御を指定の基本パターンでの固定操作モードに切り替えなければならない。
センサ値が信頼できるかどうかを確認するひとつの方法には、センサの状態(電圧測定値、インピーダンズなど)に関する情報を示すセンサによる、他のシグナルの測定がある。この方法には多少の長所があるが、センサが正確であると常にわかっているとは断言できない。正確なセンサ測定値を保証するもうひとつの可能な方法は、1つのセンサ部位に設けた二重または三重(3-up)の検出装置を用いて、センサが互いにチェックしあえるようにしたものである。センサが一致している限り、この装置は閉ループモードのままであり続け、各センサが同様に、または同時に故障する可能性は小さいと考えられることから、この方法は有益である。しかし、インターフェロンが全てのセンサに同様に影響し、あるいは、センサ挿入部位が影響を受けて、全てのセンサが同じようにグルコースを読み誤る可能性がある。このため、機能している2つのセンサが異なる出力を生じる、あるいは、2つの機能不全センサが患者のグルコースの状態として信頼できそうな同じ出力を示すといった、多くの状況が考えられる。このため、この技術によっても故障の状態にある可能性がある。
従って、本発明の目的は、検出方法および/またはセンサ位置が互いに異なっている、センサ冗長性の使用に関する。例えば、ある実施の形態において、異なる部位に設置した2つの皮下センサは、センサ位置または干渉による、共通する影響の可能性が無視できることを保証すると考えられる。しかし、別の部位では、測定部位の皮膚温度や圧力のばらつきにより異なる生理的遅延が生じることがある。例えば、寝る姿勢によって部位の1つに余分な圧力がかかると測定値が変化する。更に、同じ測定値を示すはずの2つの全く同じセンサが、異なる時間遅延、感度、および、紛らわしいシグナルを生じる偏差(オフセット:offsets)を示すことがある。従って、望ましい実施の形態では、異なる技術を用いたセンサを異なる体液中に、例えば、一方のセンサを皮下組織中に、もう一方を血液中に置く。このため、先の記述では様々な種類の電気−酵素センサを述べたが、この装置では、例えば、化学系、光学系など別の種類のセンサも用いられよう。例えば、別の種類のセンサは、その内容を全て本件に引用して援用する、以下の参考文献、Van Antwerpらによる、米国仮出願第60/007,515号、標題“Minimally Invasive Chemically Amplified Optical Glucose Sensor”;Van Antwerpらによる、2000年1月4日発行、米国特許第6,011,984号、標題“Detection of Biological Molecules Using Chemical Amplification”;Walshらによる、2004年7月20日発行、米国特許第6,766,183号、標題“Long Wave Flourophore Sensor Compounds and Other Fluorescent Sensor Compounds in Polymers”に記載されている。ドナー−アクセプタ蛍光法を用いた他の化合物、例えば、その内容を全て本件に引用して援用する、Raoらによる、1997年5月13日発行、米国特許第5,628,310号、標題“Method and Apparatus to Perform Trans-cutaeous Analyte Monitoring”;Chickらによる、1994年8月30日発行、米国特許第5,342,789号、標題“Method and Device for Detecting and Quantifying Glucose in Body Fluids”;Lakowiczらによる、1993年9月21日発行、米国特許第5,246,867号、標題“Determination and Quantification of Saccharides by Luminescent Lifetimes and Energy Transfer”に開示のものなども使用できる。重要な点は、2つの異なる位置で2つの異なる種類のセンサを使用すると、正確なセンサ測定値に大きく依存する装置のフェイルセーフ性能の保証に必要な理想的な冗長性が得られるということである。
<センサ冗長性の課題>
しかし、異なるセンサ技術および異なる測定液体は、大きく変動する時間遅延を持つことが知られている。例えば、問題の複雑さは、皮下グルコースセンサ26に見ることができる。図11について述べるならば、生理的遅延422は、血漿420と間質液(ISF)との間をグルコースが移動するために必要な時間に起因する。この遅延は、図11中の円で囲まれた双方向矢印422で示されている。一般に、先に述べたように、センサ26は身体20の皮下組織44内に差し込まれ、センサの先端40付近の電極42が間質液(ISF)と接している。しかし測定すべき所望のパラメータは、血糖濃度である。グルコースは、血漿420により全身に運ばれる。拡散過程によってグルコースは血漿420から皮下組織44のISFへ移動し、また同様にその逆も起こる。血糖値18が変化すると、ISF中のグルコース濃度も変化する。しかし、血漿420とISFとの間のグルコース濃度が平衡に達するまでに身体が必要とする時間のため、ISF中のグルコース濃度は血糖値18よりも遅れる。調べたところ、血漿420とISFとの間のグルコース遅延時間は、0〜30分の間で変動することがわかった。血漿420とISFとの間のグルコース遅延時間に影響すると考えられるいくつかのパラメータは、個体の新陳代謝、現在の血糖値、グルコース濃度が上昇しているか下降しているか、などである。図12aに図示したモデルは、ISFグルコースと血漿グルコースとの間のこの動的な関係を示すために作られたものである。このモデルは、皮下組織44コンパートメント内で血漿420とISFとを隔てているキャピラリ410が、グルコースのISF空間(即ち、皮下空間)への拡散の妨げとなっているという前提に基づいている。グルコースは、そのコンパート内でのグルコース濃度に比例した速度で、ISF空間44から消失して、脂肪/筋肉細胞440へ移動する。この数学的関係は、次の物質収支方程式で記述される。
式中、皮下組織からのグルコース消失速度は、一定の取り込み速度k02と、血漿と皮下組織との間の一定のグルコース拡散速度k12およびk21を持つ。皮下組織44内の血漿420およびISFは、それぞれ対応する体積VおよびVのグルコース濃度CおよびCを持つ。血漿120からISF130への時定数と勾配は、次の式で表すことができる。
式中、時定数τは、血漿グルコースとISFグルコースとの間の時間遅延である。方程式(2)は、ISFコンパートメント中の定常状態グルコース濃度(C)が、このコンパートメントからのグルコースの消失速度(k02)と、コンパートメントへのグルコース拡散速度(k12およびk21)とに依存している定常状態を仮定している。全ての速度パラメータは一定であると仮定しているため、ISFグルコース濃度と血漿グルコース濃度との間の時間遅延も、勾配と同様に一定である。次に、理論血漿グルコースステップ応答を、得られたISFグルコース濃度と、0.8の勾配と10分間の1次時間遅延で重ね合わせて図12bに示す。ISFグルコース濃度から完全に平衡するまでの過渡応答には、およそ50分間または5時定数かかる。図12aに示すように、血漿グルコースは、電気化学センサ28を通じたISFグルコースの測定から推定できる。nA程度の低い電流は、ISFグルコースに比例すると考えられる電気化学的反応を用いて測定する。電気化学センサは、この生理学的遅延に加えて、同様の過渡的な輸送遅延を生じると考えられる。
更に、図11において、センサ26の先端を囲む円424で示される化学反応遅延424も、センサ応答時間に含まれる。センサ電極42は、電極42をISFでぬれた状態に保ち、グルコース濃度を下げ、電極表面でのグルコース濃度のばらつきを小さくする保護膜で覆われている。グルコース濃度が変化する際、保護膜は、ISFと電極表面との間のグルコース交換速度を遅くする。更に、グルコースがグルコースオキシダーゼGOXと反応して過酸化水素を発生するための反応時間、および、過酸化水素が水と酸素と自由電子に還元する、2次反応のための反応時間による、単なる化学反応遅延がある。このセンサ遅延は確認できるが、部位が異なることによって、より大きな時間遅延のばらつきが生じることがある。このセンサ遅延時間は、製造バッチ間でも僅かに変動することがあり、またしばしば異なる偏差を持つ。微小透析センサは、透析膜を通る長い拡散過程のためより大きな遅延があることが知られている。蛍光および赤外光学系を用いるセンサもまた、異なる特性の組み合わせを備えている。
アナログセンサシグナルIsigをデジタルセンサ値Dsigに変換する際には処理遅延も存在する。望ましい実施の形態では、アナログセンサシグナルIsigを1分間隔で積分した後、カウント数に変換する。要は、この1分間の積分が30秒間の遅延を生じる。特定の実施の形態では、1分間値を5分間値に平均した後にコントローラへ送る。これより生じる平均遅延は2.5分間である。別の実施の形態では、より長い、または短い積分時間を使用し、より長い、または短い遅延時間を生じる。別の実施の形態では、アナログセンサシグナル電流Isigを連続的にアナログ電圧Vsigに変換し、A/D変換器は、10秒毎に電圧Vsigを測定する。次に、6個の10秒値をプレフィルタにかけて平均し、1分間値とする。最後に、5個の1分間値をフィルタにかけた後、平均して5分間値とすると、平均遅延は2.5分間となる。別の実施の形態では、異なる電気部品または異なるサンプリング速度を使用し、異なる遅延時間となる。
<冗長センサを使用する場合の事前の障害の解決>
単一のセンサを効率的に作動させて信頼性の高いセンサ測定値を得ることは、現在困難であるが、追加センサを加えることは先行技術において考えられていなかった。しかし、本発明では、変化する部位が異なり、センサが異なっている2つの異なるセンサを用いて、互いの伝達関数の違いを模倣するために使用でき、それがそれぞれ互いの測定値の確認と、それぞれ互いの故障の識別の助けとなる、方法および装置を考案する。この伝達関数は、検出部位特性値での違いと、時間変化する固有のセンサ力学とを含んでいる。このようなモデルは、他のセンサシグナルを基にしてそれぞれのセンサ出力を予測することを可能とする。望ましい実施の形態では、異なる部位にある2つの異なる種類のセンサを想定しているが、後に示すアルゴリズムは、同じ空間をサンプリングする2つの同一のセンサ、または、異なる液体、例えば、血漿、全血、またはISFをサンプリングする全く技術の異なる2つのセンサでも機能することができる。この方法では、各リアルタイムセンサ測定値中の差を基にして一組のフィルタ係数を調節する。これはデータ型手法であるため、センサ、センサ部位、またはセンサ特性値について更に情報を必要としないという長所がある。
図13のブロック図は、身体の異なる場所に同時に取り付けた2つのグルコースセンサ800および850を示している。図13の具体例として、2つのセンサ800および850は、間質液中のグルコースを測定するため腕の皮下組織(1)と腹部(2)とに差し込まれた、同種のものである。値を参照血糖値と比較して、遅延およびノイズにおける実際の差を見る。しかし、別の例では、センサ800と850を、同じ種類、または2つの異なる種類のセンサとすることができる。図13は、2つのセンサ800および850のグルコース測定における遅延の原因を示しており、デジタル化したセンサシグナルは1次の遅延および勾配効果を合わせたものを含んでいる。この工程で生じる第1の遅延および勾配効果1310は、測定部位に由来し、第2の遅延および勾配効果1320は、全てのグルコースセンサに固有の輸送遅延である。このアルゴリズムはデータ駆動型であるため、自動的にいずれの特性値にも適応される。第1センサ部位は、図12bに示す効果と同じ、多少の限られた持続時間の時間遅延とシグナル減衰を生じる効果を持つ、1次のフィルタG(jω)で示される。この遅延は、測定空間へのグルコースの拡散速度に比例する。この遅延と減衰に続いて、シグナルは、1次のフィルタH(jω)で示される、センサの種類によるセンサ輸送遅延と拡散工程によって更に遅延され、減衰されると考えられる。直列した2つのフィルタは、2次の効果を持つ。第2センサ部位は、1次のフィルタG(jω)で示され、第2センサは、H(jω)で示される。これは第1のセンサおよび部位と同じ特徴を持つが、大きさと遅延が異なっている。この合わせた効果に加え、全てのセンサは、多少の電子雑音n(t)およびn(t)を含んでいる。2つの1次の効果は、2つの直列したフィルタを持つのと同等の2次の周波数応答を生じる。ある例では、第1の部位G(jω)は、0.1の勾配と10分間の時間遅延を生じる。これに続き、第1センサH(jω)から、単一勾配の2分間の遅延が追加される。結果として得られるセンサシグナルは、第1センサ800からのs(t)であって、これは、これらの効果と、電子ノイズを真似て加えられたホワイトガウスノイズとを合わせたものである。第2の部位G(jω)は、5分間の時間遅延と0.2の勾配とを持つ。センサ時間遅延H(jω)は、単一勾配の1分間である。第2センサ850からの第2センサシグナルs(t)には、同じ出力のホワイトノイズが加えられている。図14は、2つのセンサ800および850からのセンサシグナルを描いたものである。図14には、各処理段階でのシグナルが示されており、血漿から採取したBGシグナルと比較した場合、第1トレースが最大の遅延を持つことが明らかである。第2センサシグナルs(t)は、第1センサシグナルs(t)の2倍の振幅を持つが、時間遅延は半分しかない。ノイズによる改悪(corruption)はいずれのグラフからも明らかである。
センサ信頼性を評価するため、2つのフィルタ残分の相違が、センサ800および850の一方または両方に故障がある可能性を示しているならば、図15の適応フィルタ配置を用いて、装置の確認と、2つの予測フィルタの調整を行う。十分なトレーニング期間の後、各予測フィルタA(z)およびA(z)は、入力として他のセンサを用いてセンサ出力を予測することができる。無限インパルス応答(IIR)または有限インパルス応答(FIR)フィルタのどちらでも十分と考えられる。本明細書に示す例では、32次FIRフィルタを用いており、予測値は方程式(3)および方程式(4)で表される。

上記の方程式において、グルコースと得られたセンサシグナルとの間のメディアの特徴を示す、部位およびセンサのフィルタを組み合わせたもの、G(jω).H(jω)およびG(jω).H(jω)の応答に合うよう、適応フィルタ係数AおよびAを連続的に調節する。ダッシュ記号は、センサシグナルsおよびsの予測値を示している。調整工程の間、方程式(5)および方程式(6)で示される各フィルタ出力から誤差を算出し、フィードバックして対応するフィルタ係数を適応させる。

適応アルゴリズムを用いて、この誤差が最も小さくなるよう係数を更新する。望ましい実施の形態で用いられる適応調整アルゴリズムは、再帰最小二乗(RLS)アルゴリズムであり、これは指数関数的にデータに重みをかけて旧データの影響を徐々に除き、変化する特性値をゆっくりと追跡するものである。センサの安定性、あるいは、創傷治癒過程によるその部位での身体の自然な反応のいずれかに直接関わるものであれ、感度が変化してセンサ特性値が時間と共にドリフトする可能性があるため、これは特に重要である。それでもなお、この方法では、フィルタ係数を定期的に更新調整して変化する特性値を補償しなければならない。別の実施の形態では、RLSアルゴリズムの代わりに、最も簡単な最小二乗平均(LMS)アルゴリズムから、より複雑なカルマンフィルタリングに及ぶものなど、別の適応調整アルゴリズムが使用できる。
未処理のセンサシグナルを、短い調整時間でその後に続く、適応フィルタを用いて計算した対応する予測トレースと共に図16に示す。図16の第1トレースは、第2センサトレースs(t)と、第1センサトレースs(t)をフィルタA(z)に適用して算出したセンサ予測値s (t)とを示している。処理シグナル中にまだ少量のノイズが存在するが、明らかな時間遅延とゲインが正確に把握された。図16の第2トレースは、第1センサトレースs(t)と、第2センサシグナルs(t)をフィルタA(z)に適用した、その対応する予測値s (t)とを示している。この予測が、ゲインと時間遅延を補正するだけでなく、改良された信号対雑音比(SNR)でセンサシグナルも予測することがわかる。これは、センサ故障の検出が2次シグナルに基づいているならばより有益であり、更なる遅延を生じることなく、1次センサシグナルからセンサノイズをフィルタすることができる。これは、閉ループアルゴリズム、特に、速やかな投与決定を行うものに非常に有益である。それぞれの予測のパフォーマンスを図17に示す。最初のトレースは、第1センサに基づく第2センサの予測における誤差である。2番目のトレースは、入力として第2センサを用いた第1センサの予測における誤差を示している。明らかに、調整工程は、2.5時間以内にほぼ十分な性能に達するほどに有効である。図18に示すような故障の検出は、方程式(7)で表される総合誤差計算に基づいており、総合誤差E<2nAは、両方のセンサが正確に機能しており、誤作動が起きていないことを示している。この閾値を越え、ロジックが故障対応モード(後に詳細に述べるような)に入ると、警報が発せられる。
正常作動条件下(故障なし、総合誤差E<2nA)では、方程式(8)で表される最小誤差を持つセンサ出力を用いて、n次サンプルの出力yのための制御アルゴリズムを動かさなければならない。これは、最小ノイズを持つセンサを示すと考えられる。
図19は、本発明の実施の形態による、図15の適応フィルタ配置で用いられる工程を説明するフローチャートである。このアルゴリズムは、ブロック1610から始まり、ここでコントローラ12は第1センサ800からセンサ値s(t)を受け取る。ブロック1620で、コントローラ12は、第2センサ850からセンサ値s(t)を受け取る。ブロック1630で、第1予測フィルタA(z)は、センサ値s(t)を用いて第1センサ850の値s (t)の予測を始める。同様に、ブロック1640で、第2予測フィルタA(z)は、センサ値s(t)を用いて第2センサ800の値s (t)の予測を始める。ブロック1650において、第1センサ値s(t)と第1予測センサ値s (t)との間の差を、e(t)として計算し、第2センサ値s(t)と第2予測センサ値s (t)との間の差を、e(t)として計算する。次に、e(t)とe(t)の絶対値を加えて全誤差Eを算出する。ブロック1660で、全誤差Eを閾値と比較する。望ましい実施の形態では、閾値を2nAに設定しているが、この値は装置の許容誤差に応じて増減させることができる。全誤差Eが閾値より大きい場合、アルゴリズムは、センサの故障を示し、ブロック1670で故障対応モードへ進む。故障対応モードについては、図20で詳細に示す。または、全誤差Eが閾値以下である場合、次に、ブロック1680で、ロジックは、どちらのセンサが最小量のノイズを含んでいるかを決定する。第1センサがより少ないノイズを示しているならば、ロジックは次にブロック1690に進み、ここで、第1センサの予測センサ値s (t)を用いて、個体の血糖値(即ち、s (t)×CF)(式中、CFは、センサシグナルを較正してBG値を得るために用いられる較正係数)を計算する。一方、第2センサがより少ないノイズを示しているならば、ロジックはブロック1700へ進み、ここで、第2センサの予測センサ値s (t)を用いて、個体の血糖値(即ち、s (t)×CF)を計算する。別の実施の形態では、予測センサ値よりも、センサの実際のセンサ値を用いて、血糖値を計算する。いずれにせよ、選択したグルコースセンサ値に応じて、コントローラ12は、投与すべきインスリンの量を、選択したグルコースセンサ値を用いてブロック1710で計算することができる。
図20は、本発明の実施の形態による、図19の故障対応プロセス中の工程を説明するフローチャートである。両方のセンサが同時に故障する僅かな可能性を考え、図20の故障対応プロセスを使用して、どちらのセンサが故障しており、それ以上使用すべきではないかを決定し、故障センサが交換されるまで一時的に作動する解決法を与える。このロジックはまた、両方のセンサが故障しているかどうかを決定し、閉ループの稼働を即座に停止すべきであることを決定する方法も提示する。このロジックはブロック2010から始まり、ここでロジックが故障対応モードに入ると警報が発せられる。警報には、従来のフィンガープリック法を用いた現在の計測値の要求も含まれると考えられる。現在の計測値を現在の血糖値として用いて、各センサ測定値と比較する。ブロック2020および2030で、現在の血糖値と第1センサ800および第2センサ850との間の百分率として算出した平均絶対差を計算する。平均絶対差は、次のようにして計算できる。
[数9]
mad=100×|CF.s1−BG|/BG %
mad=100×|CF.s2−BG|/BG %
(式中、「BG」はBlood Glucoseの略であり、ここでは「フィンガープリック法を用いて計測された現在の血糖値」を意味し、「CF.s1」は第1センサシグナルを較正して血糖値を得るために用いられる較正係数であり、「CF.s2」は第2センサシグナルを較正して血糖値を得るために用いられる較正係数である。)
ブロック2040において、第1センサ800の平均絶対差を閾値と比較し、第1センサ800から戻ってきた血糖値が、測定器から戻ってきた現在の血糖値から外れ過ぎているかどうかを決定する。望ましい実施の形態では、閾値を20%の差に設定している。しかし、別の実施の形態では、閾値を、より高い、または低い値に設定することができる。閾値を越えると、ブロック2050でのロジックは、第1センサ800に障害があると判断して、第1センサ800が故障していると報告する。第1センサ800値をブロック2040でチェックした後、第2センサ850値を、ブロック2060および2080でチェックする。ブロック2060および2080において、第2センサ850の平均絶対差を同じ閾値と比較して、第2センサ850から戻ってきた血糖値が、計測器から戻ってきた現在の血糖値から外れ過ぎているかどうかを決定する。閾値を越えると、ブロック2070および2100でのロジックは、第2センサ850に故障があると判断して、第2センサ850が故障していると報告する。どちらのセンサが故障していると判断されるかによって、ロジックのデフォルトには4つの異なる可能性が設定されている。第1の可能性は、ブロック2110において発見される。両方のセンサ800および850が閾値を越えない(つまり、どちらのセンサも故障していると判断されない)ならば、ブロック2110のロジックは、故障対応モードを出て、図19の通常動作へ戻る。第2の可能性は、ブロック2120で発見され、ここでは第2センサ850のみが故障していることが発見される。この場合、ブロック2120のロジックは、第2センサ850からのシグナルを用いて停止し、閉ループ装置/半閉ループ装置は、第2センサ850が交換されるまで、第1センサ800からのセンサ値だけを用いて継続する。同様に、第3の可能性は、ブロック2090で発見され、ここでは第1センサ800のみが故障していることが発見される。この場合、ブロック2090のロジックは、第1センサ800からのシグナルを用いて停止し、閉ループ装置/半閉ループ装置は、第1センサ800が交換されるまで、第2センサ850からのセンサ値だけを用いて継続する。最後の可能性はブロック2130で発見され、ここでは、両方のセンサが故障しており、交換が必要なことが発見される。ブロック2130のロジックが働くと、インスリン送達を最小基礎量のみに制限するなど、別のインスリン送達戦略を即時に採らなければならない。
別の実施の形態では、1つのセンサが1次センサとして働き、第2センサは監視機構として働く。この実施の形態の例において、第2センサ850は、第1センサ800が故障しているかどうかを検出するためにのみ使用される。図19のブロック1660において全誤差Eが閾値を越えたならば、装置は、インスリン送達を最小基礎量のみに制限するなど、別インスリン送達戦略を自動的に実行し、両方のセンサを交換するようシグナルが発せられる。更に、全誤差Eが閾値を越えない場合、2つのセンサの間での誤差の比較は行われない。代わりに、第1センサ800の予測センサ値のみが使用される。
以上の記述は、本発明の特定の実施の形態を参照としているが、その意図から逸脱することなく、多くの変形ができることは理解されよう。例えば、本発明の主要な教示内容を機能させつつ、工程を加え、あるいはアルゴリズムの順序を変えることが可能である。更に、望ましい実施の形態では2つのセンサを用いると記述されているが、別の実施の形態では、3つ以上のセンサを本発明で用いることができる。このように、添付の請求項は、本発明の真の範囲および意図内にあるようこれらの変形を包含するものである。
故に、ここに開示の実施の形態は、全ての点で、説明のためであって制限するものではないと考えるべきである。本発明の範囲は、先の記述よりも添付の請求項に示されており、また、請求項の同等物の意味および範囲に入る全ての変形は、その中に包含されるものとする。
10 グルコースセンサ装置、10’ センサセット、12 コントローラ、14 インスリン送達装置、16 センサシグナル、18 血糖値、20 身体、22 命令、24 インスリン、26 センサ、26 コネクタ部分、27 コネクタ端、28 センサセット、30 遠隔操作型特性値モニタ送信機、31 送信機ハウジング、32 センサケーブル、33 プリント基板、34 注入デバイス、35 バッテリ、36 注入チューブ、38 注入セット、39 電気部品、40 検出端、42 電極、44 皮下組織、46 皮膚、48 プランジャー、50 リザーバ、51 第1端、52 注入デバイスハウジング、53 第2端、54 コネクタチップ、56 カニューレ、100’ 遠隔操作型特性値モニタ送信機、120 血漿、130 ISF、400 リザーバ、410 電流測定センサ、420 蠕動ポンプ、420 血漿、422 生理的遅延、424 化学反応遅延、440 脂肪/筋肉細胞。

Claims (3)

  1. センサ値を用いてインスリンを注入するための閉ループ装置または半閉ループ装置であって、
    第1血糖測定値を発生する、第1部位に設置した第1グルコースセンサと、
    第2血糖測定値を発生する、第2部位に設置した第2グルコースセンサと、
    前記第1血糖測定値または前記第2血糖測定値に基づいて個体の血糖値を計算するためのコントローラであって、
    入力として前記第2血糖測定値を用いて、前記第1血糖測定値に対する第1予測値を導き出し、
    入力として前記第1血糖測定値を用いて、前記第2血糖測定値に対する第2予測値を導き出し、
    前記第1予測値と前記第1血糖測定値との間の第1誤差を求め、
    前記第2予測値と前記第2血糖測定値との間の第2誤差を求め、
    前記第1および第2誤差の絶対誤差値の合計を閾値と比較し、
    前記絶対誤差値の合計が前記閾値を超えないならば、前記第1グルコースセンサおよび前記第2グルコースセンサのどちらが最小誤差を有するかを決定し、
    前記最小誤差を有する前記第1又は第2グルコースセンサの血糖測定値又は予測値を用いて前記個体の血糖値を計算するコントローラと、
    前記個体の血糖値に基づいてインスリンを送達する注入ポンプと、
    を含むことを特徴とする装置。
  2. 請求項1に記載の装置であって、前記第1グルコースセンサと前記第2グルコースセンサとは互いに確認し合うことを特徴とする装置。
  3. 請求項1に記載の装置であって、前記第1グルコースセンサと前記第2グルコースセンサとが互いに確認し合えなくなったならば、故障センサが検出されることを特徴とする装置。
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