JP5674446B2 - 熱線遮蔽フィルム、これを用いた熱線遮蔽ガラス、及び複層ガラス - Google Patents
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(1)前記基材フィルムの屈折率(n1)、前記干渉防止層の屈折率(n2)及び前記熱線反射層の屈折率(n3)が、下記式:
|n2−(n1+n3)/2|≦0.03を満たす。これにより、より反射色がニュートラルにできるので、更に干渉縞を低減でき、色ムラを目立たなくすることができる。
(2)前記干渉防止層が、金属酸化物微粒子又は有機金属化合物を含む。
(3)前記金属酸化物微粒子が、酸化チタン微粒子、酸化スズ微粒子、酸化アンチモン微粒子、酸化ジルコニウム微粒子、酸化セレン微粒子、酸化亜鉛微粒子及びこれらの金属酸化物に他の金属をドープした微粒子からなる群から選択される少なくとも1種であり、前記有機金属化合物が、ジルコニウムアルコキシド、チタニウムアルコキシド、及びインジウムアセチルアセトネートからなる群から選択される少なくとも一種である。これらの微粒子を配合することにより、容易に上記範囲の屈折率の干渉防止層を形成できる。
(4)前記基材フィルムが、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムである。PETフィルムは、耐熱性等の加工耐性が高く、透明性が高い点で好ましい。また、PETフィルムの屈折率は導電性高分子からなる熱線反射層の屈折率と、比較的差が大きいため、本発明が特に有効である。
(5)前記熱線反射層の表面放射率が0.7以下である。
(6)前記熱線反射層の表面抵抗値が、100000Ω/□以下である。
(7)前記導電性高分子が、下記式(I):
|n4−n3|≦0.05、及び
|n2−(n1+n4)/2|≦0.03を満たす。本発明において、上記導電性高分子からなる熱線反射層の屈折率と近似する屈折率を有する別の層が形成されている場合でも、各層が上記の範囲の屈折率であれば、本発明の効果が認められる。これはアクリル樹脂層等を形成することにより熱線遮蔽フィルムを強化する場合等に有効である。
(9)前記別の層の層厚が、0.01〜20μmである。
(10)前記別の層が、アクリル樹脂及び/又は金属酸化物微粒子を含む。
|n2−(n1+n3)/2|≦0.03を満たすことが好ましい。これにより、基材フィルム13と干渉防止層15との層間、及び干渉防止層15と熱線反射層14との層間の屈折率の差を均等することができ、更に熱線反射層14の反射色をニュートラルにすることができる。従って、更に熱線遮蔽フィルムの干渉縞を低減でき、色ムラを目立たなくすることができる。
干渉防止層15は、上述のような屈折率が得られればどのような材料で形成されていても良い。例えば、後述する熱硬化性樹脂又は紫外線硬化性樹脂等のバインダ樹脂に、屈折率調整材料として金属酸化物微粒子又は有機金属化合物等を分散させた組成物を塗工し、硬化させることで形成することができる。配合量を調整することにより、屈折率を容易に調整できる点で、金属酸化物微粒子又は有機金属化合物を含有させることが好ましい。金属酸化物微粒子としては、どのようなものでも良いが、例えば、酸化チタン微粒子、酸化スズ微粒子、酸化アンチモン微粒子、酸化ジルコニウム微粒子、酸化セレン微粒子、酸化亜鉛微粒子及びこれらの金属酸化物に他の金属をドープした微粒子等を挙げることができ、これらを1種又は2種以上を混合して使用することができる。また、有機金属化合物としては、ジルコニウムアルコキシド、チタニウムアルコキシド、及びインジウムアセチルアセトネート等を挙げることができ、これらを1種又は2種以上を混合して使用することができる。金属酸化物微粒子の平均粒径は、一般に10〜1000nmであり、10〜100nmが好ましい。金属酸化微粒子としては、特に酸化チタン微粒子が好ましい。これにより、容易に上記範囲の屈折率(n2)の干渉防止層15を形成することができる。
本発明における基材フィルム13は、通常、透明プラスチックフィルムである。透明プラスチックフィルムは、透明(「可視光に対して透明」を意味する。)なプラスチックフィルムであれば特に制限はない。プラスチックフィルムの例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ポリメチルメタクリレート(PMMA)フィルム、ポリカーボネート(PC)フィルム、ポリエチレンブチレートフィルム等を挙げることができ、特に加工時の熱、溶剤、折り曲げ等の負荷に対する耐性が高く、透明性が高い点で、PETフィルムが好ましい。上述のように、基材フィルム13の屈折率(n1)は、干渉防止層15の屈折率(n2)に影響する。PETフィルムの屈折率は、一般に1.64〜1.66であり、導電性高分子からなる熱線反射層14との屈折率(n3)と比較的差が大きい。従って、PETフィルムは、本発明が特に有効な基材フィルムであるといえる。
本発明において、導電性高分子からなる熱線反射層14の表面放射率(JISR3106に準拠)は、十分な断熱性を発揮するために、好ましくは、0.7以下である。また、表面抵抗値は、好ましくは100000Ω/□以下である。この表面抵抗値であれば、低屈折率層15が形成されていても自由電子密度が十分高く、十分な断熱性が得られる。表面抵抗値は、更に好ましくは10000Ω/□以下であり、特に1000Ω/□以下である。
|n4−n3|≦0.05、及び|n2−(n1+n4)/2|≦0.03を満たしている。即ち、アクリル樹脂層26は導電性高分子からなる熱線反射層25の屈折率(n3)と近似する屈折率(n4)を有している。このような層構成であっても、熱線遮蔽フィルム20は、上述の図1の場合と同様に導電性高分子からなる熱線反射層24が形成されていることにより、近赤外線を効果的に遮蔽し、断熱性を発揮することができる。そして、基材フィルム23と干渉防止層25との層間、干渉防止層25とアクリル樹脂層26との層間、及びアクリル樹脂層26と熱線反射層24との層間において、屈折率の差が小さくなっている。これにより、熱線反射層24の反射色をニュートラルにし、目立った色彩が認められないようにすることが可能となっている。
干渉防止層(及び必要に応じて別の層)に用いるバインダ樹脂としては、熱線遮蔽フィルムの物理的特性を強化するため、硬化性の合成樹脂である紫外線硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂を用いることが好ましい。特に、紫外線硬化性樹脂は、より短時間で硬化させることができ、生産性に優れているので好ましい。紫外線硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、レゾルシノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フラン樹脂、シリコーン樹脂などを挙げることができ、紫外線硬化性樹脂は光重合開始剤等とともに紫外線硬化性樹脂組成物とし、熱硬化性樹脂は熱重合開始剤等とともに熱硬化性樹脂組成物として使用する。
紫外線硬化の場合は、光源として紫外〜可視領域に発光する多くのものが採用でき、例えば超高圧、高圧、低圧水銀灯、ケミカルランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、マーキュリーハロゲンランプ、カーボンアーク灯、白熱灯、レーザ光等を挙げることができる。照射時間は、ランプの種類、光源の強さによって一概には決められないが、数秒〜数分程度である。また、硬化促進のために、予め積層体を40〜120℃に加熱し、これに紫外線を照射してもよい。
本発明の熱線遮蔽ガラスは、本発明の熱線遮蔽フィルムが、前記熱線反射層が設けられた面と反対面でガラス板に貼着されたものであればどのような構成でも良い。
本発明におけるガラス板は透明基板であれば良く、例えば、グリーンガラス、珪酸塩ガラス、無機ガラス板、無着色透明ガラス板などのガラス板の他、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンブチレート、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のプラスチック製の基板又はフィルムを用いてもよい。耐候性、耐衝撃性等の点でガラス板が好ましい。ガラス板の厚さは、1〜20mm程度が一般的である。
本発明における接着剤層は、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、金属イオン架橋エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、部分鹸化エチレン−酢酸ビニル共重合体、カルボキシル化エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル−無水マレイン酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル−(メタ)アクリレート共重合体などのエチレン系共重合体を使用することができる(なお、「(メタ)アクリル」は「アクリル又はメタクリル」を示す。)。また、接着剤層には、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ゴム系粘着剤、SEBS及びSBS等の熱可塑性エラストマー等も用いることができる。なかでも、優れた接着性を示し、高い透明性を有することからEVAを用いるのが好ましい。
また、接着剤層は、更に架橋助剤や接着向上剤としてシランカップリング剤を含むのが好ましい。
本発明の熱線遮蔽ガラスは、複層ガラスに用いられるのが好ましい。本発明の熱線遮蔽ガラスを複層ガラスとすることにより、熱線反射層を雨水、結露、湿気等の水分から保護するとともに擦り傷、掻き傷等の物理的損傷からも保護することができるので、更に長期間性能を維持することができる。
[実施例1]
(1)干渉防止層の形成
PETフィルム(厚さ100μm)の表面に、下記配合の塗工液をロールコーターにより塗工し、80℃、1分乾燥後、塗工層の表面に紫外線照射(高圧水銀灯、照射距離20cm、照射時間5秒)して、厚さ80nm、屈折率1.57の干渉防止層を形成した。
(配合)
ジペンタヘキサアクリレート(DPHA):5質量部
光重合開始剤(イルガキュア(登録商標)184(BASFジャパン社製)):0.5質量部
酸化チタン微粒子(平均粒径50nm):3質量部
メチルイソブチルケトン:100質量部
(2)熱線反射層の形成
干渉防止層の表面に、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)及びポリスチレンスルホン酸の混合物の水分散液(PT−400MF(ナガセケムテック社製)固形分1.3質量%)を、バーコーターを用いて塗布し、135℃、1分間乾燥させ、PETフィルム上に熱線反射層(厚さ270nm〜300nm、屈折率1.51)を形成した。
(3)接着剤層の作製
下記配合の組成物を、カレンダ成形法によりシート状に圧延し、接着剤層(厚さ0.4mm)を得た。なお、配合物の混練は80℃で15分行い、またカレンダロールの温度は80℃、加工速度は5m/分であった。
(配合)
EVA(EVA100質量部に対する酢酸ビニルの含有量25質量部;ウルトラセン635(東ソー社製)):100質量部、
有機過酸化物(tert−ブチルパ−オキシ−2−エチルヘキシルカーボネート;トリゴノックス117(化薬アクゾ社製):2.5質量部、
架橋助剤(トリアリルイソシアヌレート;TAIC(登録商標)(日本化成社製)):2質量部、
シランカップリング剤(γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン;KBM503(信越化学社製)):0.5質量部
紫外線吸収剤:(ユビナール3049(BASF社製)):0.5質量部
(4)熱線遮蔽ガラスの作製
ガラス板(厚さ3mm)上に、接着剤層、上記PETフィルム(表面に干渉防止層、熱線反射層がこの順で形成されている)この順で積層した。得られた積層体を、100℃で30分間加熱することにより仮圧着を行った後、オートクレーブ中で圧力13×105Pa、温度140℃の条件で30分間加熱した。これにより、接着剤層を硬化させて、ガラス板とPETフィルム間が接着一体化された熱線遮蔽ガラス(図1)を得た。
導電性高分子として、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)及びポリスチレンスルホン酸の混合物の水分散液(Baytron P HC V4(HC スタルク社製)固形分1.3質量%)を用いて熱線反射層(厚さ270nm〜300nm、屈折率1.50)を形成した以外は、実施例1と同様に熱線遮蔽ガラスを作製した。
(1)干渉防止層の形成
実施例1(1)と同様に干渉防止層を形成した。
(2)アクリル樹脂ハードコート層の形成
干渉防止層の表面に、下記配合の塗工液を塗工し、80℃、1分乾燥後、塗工層の表面に紫外線照射(高圧水銀灯、照射距離20cm、照射時間5秒)して、厚さ3μm、屈折率1.49のアクリル樹脂ハードコート層を形成した。
(配合)
ジペンタヘキサアクリレート(DPHA): 100質量部
光重合開始剤(イルガキュア(登録商標)184(BASFジャパン社製)):5質量部
メチルイソブチルケトン:200質量部
(3)熱線反射層の形成
アクリル樹脂ハードコート層の表面に、実施例1(2)と同様に熱線反射層を形成した。
(4)熱線遮蔽ガラスの作成
PETフィルムの表面に、干渉防止層、アクリル樹脂ハードコート層、熱線反射層がこの順で形成されている以外は実施例1と同様に熱線遮蔽ガラスを作製した。
導電性高分子として、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)及びポリスチレンスルホン酸の混合物の水分散液(Baytron P HC V4(HC スタルク社製)固形分1.3質量%)を用いて熱線反射層(厚さ270nm〜300nm、屈折率1.50)を形成した以外は、実施例3と同様に熱線遮蔽ガラスを作製した。
(1)熱線反射層の形成
PETフィルム(厚さ:100μm)の表面に、実施例1(2)と同様に熱線反射層を形成した。
(2)熱線遮蔽ガラスの作製
実施例1(3)と同様に、接着剤層を作製した。
(3)熱線遮蔽ガラスの作製
PETフィルムの表面に、熱線反射層のみが形成されている以外は、実施例1と同様に、熱線遮蔽ガラスを作製した。
(1)表面放射率
JISR3106に準拠して測定した。
(2)色目、反射色
日立分光光度計U−4000を用いて、L*a*b*表色系(JIS−Z−8729に準拠する)におけるa*、b*を測定した。a*、b*とも、±10以下をニュートラルな反射色として合格とした。
(3)色目の面内変化
3波長蛍光管による照明により、各熱線遮蔽ガラス生じた色目の面内変化の程度を目視にて評価した。評価は、目立った色目の面内変化がほとんどない場合を○とし、目立った場合を×とした。
各熱線遮蔽ガラスの評価結果を表1に示す。
13、23:基材フィルム
14、24:熱線反射層
15、25:干渉防止層
26:アクリル樹脂層
30:熱線遮蔽ガラス
31、37:ガラス板
32: 接着剤層
38:中空層
39:スペーサー
40:複層ガラス
Claims (13)
- 基材フィルム、及びその表面に設けられた導電性高分子からなる熱線反射層を含む熱線遮蔽フィルムであって、
前記基材フィルムと、前記熱線反射層との間に干渉防止層が形成されており、且つ該干渉防止層の屈折率(n2)が、前記基材フィルムの屈折率(n1)より低く、前記熱線反射層の屈折率(n3)より高く、
前記干渉防止層の層厚が60〜120nmであり、前記熱線反射層の層厚が10〜3000nmであることを特徴とする熱線遮蔽フィルム。 - 前記基材フィルムの屈折率(n1)、前記干渉防止層の屈折率(n2)及び前記熱線反射層の屈折率(n3)が、下記式:
|n2−(n1+n3)/2|≦0.03を満たす請求項1に記載の熱線遮蔽フィルム。 - 前記干渉防止層が、金属酸化物微粒子又は有機金属化合物を含む請求項1又は2のいずれか1項に記載の熱線遮蔽フィルム。
- 前記金属酸化物微粒子が、酸化チタン微粒子、酸化スズ微粒子、酸化アンチモン微粒子、酸化ジルコニウム微粒子、酸化セレン微粒子、酸化亜鉛微粒子及びこれらの金属酸化物に他の金属をドープした微粒子からなる群から選択される少なくとも1種であり、前記有機金属化合物が、ジルコニウムアルコキシド、チタニウムアルコキシド、及びインジウムアセチルアセトネートからなる群から選択される少なくとも1種である請求項3に記載の熱線遮蔽フィルム。
- 前記基材フィルムが、ポリエチレンテレフタレートフィルムである請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱線遮蔽フィルム。
- 前記熱線反射層の表面放射率が、0.7以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱線遮蔽フィルム。
- 前記熱線反射層の表面抵抗値が、100000Ω/□以下である請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱線遮蔽フィルム。
- 更に、前記熱線反射層と前記干渉防止層との間に、別の層が形成されており、且つ前記基材フィルムの屈折率(n1)、前記干渉防止層の屈折率(n2)、前記熱線反射層の屈折率(n3)及び前記別の層の屈折率(n4)が、下記式:
|n4−n3|≦0.05、及び
|n2−(n1+n4)/2|≦0.03を満たす請求項1〜8のいずれか1項に記載の熱線遮蔽フィルム。 - 前記別の層の層厚が、0.01〜20μmである請求項9に記載の熱線遮蔽フィルム。
- 前記別の層が、アクリル樹脂及び/又は金属酸化物微粒子を含む請求項9又は10に記載の熱線遮蔽フィルム。
- 請求項1〜11のいずれか1項に記載の熱線遮蔽フィルムが、前記熱線反射層が設けられた面と反対面でガラス板に貼着されたことを特徴とする熱線遮蔽ガラス。
- 請求項12に記載の熱線遮蔽ガラスと、別のガラス板とが、間隙をおいて、前記熱線反射層が当該別のガラス板に対向するように配置され、その間隙により中空層が形成されていることを特徴とする複層ガラス。
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