JP5674325B2 - メタクリル樹脂組成物を用いて得られた成形体 - Google Patents
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Description
しかしながら、昨今、車両用途では燃費向上に伴う軽量化の為の薄肉化や斬新なデザインを実現するための大型化など、材料の流動性向上の要求が高まっている。従来、材料の流動性を向上させると強度や耐熱性、二次加工性などを犠牲にしていた。
車両用ランプの透明部材においても薄肉化が検討されており、材料の流動性向上の要求が望まれている。流動性を向上させる方法として分子量を下げる方法などがあるが、ハウジング部材との熱板溶着時に樹脂が糸を曳き、外観不良となる問題があった。
射出成形時の流動性と得られた成形品の物性を両立させる手法として特許文献1が挙げられる。特許文献1では射出成形時の流動性と耐溶剤性を改良する樹脂について開示があるが、熱板溶着時の糸曳き性に関する十分な検討がされておらず、射出成形時の流動性と熱板溶着時の糸曳き性を同時に満足するものではなかった。
すなわち、本発明および実施態様は以下に記載するものである。
[1]メタクリル樹脂は下記重合体(1)及び重合体(2)であり、メタクリル樹脂組成物はゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量が5000〜50000で該メタクリル樹脂組成物全体に対して10〜35質量%である重合体(1)と、重量平均分子量が90000〜350000で該メタクリル樹脂組成物全体に対して90〜65質量%である重合体(2)を含むメタクリル樹脂組成物であって、メタクリル酸メチル単量体単位80〜99wt%及びアルキル基の炭素数が2〜18のメタクリル酸アルキル、アルキル基の炭素数が1〜18のアクリル酸アルキルの中から選ばれる少なくとも1種のビニル単量体単位1〜20wt%を含み、レオメーターを用いて樹脂温度240℃、角速度4rad/sの条件で測定した粘度が4900Pa・s以上であって、樹脂温度240℃、角速度100rad/sの条件での粘度が1450Pa・s以下であり、245℃に加熱したテフロン(登録商標)加工したアルミニウム板に押し当て、20秒後に試験片を離したとき、5mm以上の樹脂糸が発生する長糸発生率が20%以下であることを特徴とするメタクリル樹脂組成物を用いて得られた成形体と他の成形体とを熱板溶着させた成形体。
[2]以下の測定条件でのスパイラル長さが26cm以上であることを特徴とする上記[1]記載のメタクリル樹脂組成物を用いて得られた成形体と他の成形体とを熱板溶着させた成形体。
・射出成形機:東芝機械製IS−100EN
・測定用金型:金型の表面に、深さ2mm、幅10mmの溝を、中心部からアルキメデススパイラル状に掘り込んだ金型
・樹脂温度:250℃
・金型温度:55℃、
・射出圧力:98MPa、
・射出時間:10sec
・冷却時間:10秒
・測定方法:40ショット成形後に、スパイラル長さ測定用成形品10個をサンプリングし、2mmのスパイラル部分の長さの平均値をスパイラル長さとする
本発明者らの研究により、メタクリル樹脂組成物成形体の熱板溶着時の糸曳き発生率はレオメーターを用いて樹脂温度240℃、角速度4rad/sの条件での粘度と相関があることを見出した。その具体的な理由は次のとおりである。
すなわち、糸曳きが発生する温度は、成形体が溶着する時の樹脂温度における溶融粘度が関係していると考えた。一般的な成形ラインにおける熱板の設定温度は250℃であるが、実際のラインでは熱板の表面温度は数℃低下しており、樹脂を熱板に押し付けた場合、熱板付近の樹脂温度は更に数℃低くなると考えられる。したがって、250℃で樹脂粘度が適当な樹脂であっても本発明の効果が得られない場合がある。そこで、本発明者らは樹脂の粘度を測定する温度を240℃と設定した。さらに、成形時の糸曳きの度合いを正確に評価するには、実際の樹脂の表面温度を反映した温度での糸曳き状態を見る必要があるが、その適正温度が245℃であることを見出した。
なお、本発明で測定される粘度は、レオメーター(ティー・エイ・インスツルメント社製 製品名:ARES−G2)で測定される。測定冶具は直径25mm、角度1度のコーンを使用した。受け台は直径25mmの平らな円盤状である。
上記の粘度をこの範囲に調整する為には、低分子量重合体(1)と高分子量重合体(2)の組成(比率や分子量、メタクリル酸メチルに共重合可能な他のビニル単量体重量%)の差で調整すればよい。例えば、低分子量重合体(1)と高分子量重合体(2)の分子量の差を大きくすることにより、角速度100rad/sでの粘度は大きくなり、4rad/sでの粘度が小さくなる傾向にある。
アルキル基の炭素数が2〜18のメタクリル酸アルキル、アルキル基の炭素数が1〜18のアクリル酸アルキル;アクリル酸やメタクリル酸等のα,β−不飽和酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和基含有二価カルボン酸及びそれらのアルキルエステル;スチレン、α−メチルスチレン、ベンゼン環に置換基を有するスチレン等の芳香族ビニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物;
無水マレイン酸、マレイミド、N−置換マレイミド等;
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のエチレングリコール又はそのオリゴマーの両末端水酸基をアクリル酸またはメタクリル酸でエステル化したもの;ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリレート等の2個のアルコールの水酸基をアクリル酸又はメタクリル酸でエステル化したもの;トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール誘導体をアクリル酸又はメタクリル酸でエステル化したもの;ジビニルベンゼン等の多官能モノマー等が挙げられ、これらは、単独或いは2種類以上を併用して用いることが出来る。
これらの中でも、耐光性、耐熱性、流動性の観点から、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等が好ましく用いられる。中でも、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチルが特に好ましく、さらにはアクリル酸メチルが入手しやすく最も好ましい。
メタクリル樹脂組成物は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量が80000〜230000であると好ましい。機械強度の 観点から80000以上が好ましく、流動性の点から230000以下が好ましい。この場合、成形加工が容易となる。より好ましくは、 85000〜210000であり、さらに好ましくは90000〜200000である。最も好ましくは95000〜190000である。
また、重量平均分子量が500以下のメタクリル樹脂組成物成分は、成形時にシルバーと呼ばれる発泡様の外観不良を生じさせやすいため、できる限り少ないほうが好ましい。
あらかじめ、単分散の、重量平均分子量が既知で試薬として入手可能な標準メタクリル樹脂と、高分子量成分を先に溶出する分析ゲルカラムを用い、溶出時間と重量平均分子量から検量線を作成しておく。得られた検量線から各試料の分子量を求めることが出来る。
ピーク重量平均分子量(Mp)とは、GPC溶出曲線においてピークを示す、重量平均分子量を指す。GPC溶出曲線においてピークが複数存在する場合は、存在量が最も多い重量平均分子量が示すピークを指す。
なお、メタクリル酸メチルに共重合可能な他のビニル単量体は、得られるメタクリル樹脂の高分子量成分中の組成比率が低分子量成分中の組成比率に比べて大き いことが好ましい。耐熱性や環境試験下でのクラックや成形品のゆがみの低発生率、機械強度を維持しながら流動性をより向上させることができるからである。 メタクリル樹脂組成物の高分子量成分および低分子量成分は、GPC溶出曲線におけるエリア面積によって決めることができる。
まず、GPC測定で得られた溶出時間とRI(示差屈折検出器)による検出強度から得られるGPC溶出曲線に対し、測定機器により自動で引かれるベースラインとGPC溶出曲線が交わる点Aと点Bを定める。点Aは、溶出時間初期のGPC溶出曲線とベースラインとが交わる点である。点Bは、原則として重量平均分子量が500以上でベースラインとGPC溶出曲線が交わる位置とする。もし重量平均分子量が500以上の範囲で交わらなかった場合は重量平均分子量が500の溶出時間のRI検出強度の値を点Bとする。点A、B間のGPC溶出曲線と線分ABで囲まれた斜線部分がGPC溶出曲線におけるエリアである。この面積が、GPC溶出曲線におけるエリア面積である。
エリア面積を決定するためには高分子量成分から先に溶出されるカラムを用いるため、溶出時間初期に高分子量成分が観測され、溶出時間終期に低分子量成分が観測される。
この図2において、ある溶出時間におけるベースライン上の点を点X,GPC溶出曲線上の点を点Yとする。曲線AYと、線分AX、線分XYで囲まれる面積の、GPC溶出曲線におけるエリア面積に対する割合を、ある溶出時間での累積エリア面積(%)の値とする。
累積エリア面積0〜2%にある重量平均分子量成分を有するメタクリル樹脂中のメタクリル酸メチルに共重合可能な他のビニル単量体単位の平均組成比率をMh(wt%)とする。
累積エリア面積0〜2%、98〜100%の測定グラフ上での位置の概略図を図3に示す。
MhやMlの値はGPCから得られた溶出時間をもとにカラムのサイズに応じ数回もしくは数十回連続分取して、求めることが可能である。分取したサンプルの組成を既知の熱分解ガスクロ法により分析すればよい。
このMh(wt%)とMl(wt%)には下記の式[1]の関係が成り立つことが好ましい。
(Mh−0.8)≧Ml≧0・・・・・・・・・・・・・[1]
(Mh−2)≧Ml≧0・・・・・・・・・・・・・[2]
耐熱性と流動性、機械的強度のバランスがよいメタクリル樹脂が得られるためである。
1.2≧(Mh−0.8)≧Ml≧0・・・・・・・・・・・・・[3]
なお、本発明のメタクリル樹脂組成物は耐熱性に優れ、JIS−K7206に規定されたB50法でのビカット軟化温度が95℃以上を達成することができる。より好ましくは100℃以上であり、さらに好ましくは、103℃以上である。最も好ましくは106℃以上であある。この範囲に調整するためには、メタクリル樹脂組成物全体に対してメタクリル酸メチルに共重合可能な他のビニル単量体単位を20wt%以下に調整すればよい。
1.あらかじめ重合体(A)を製造しておき、重合体(A)と異なる分子量を持つ重合体(B)の原料組成混合物に重合体(A)を混合し、その混合液を重合させて製造する方法。
2.重合体(A)を製造した後、重合体(A)とは異なる分子量を持つ重合体(B)の原料組成混合物を追添、重合することによって製造する方法。
3.あらかじめ重合体(A)及び重合体(A)と異なる分子量を持つ重合体(B)を個別に製造しておき、ブレンドする方法。
好ましくは、重合体(A)を製造し、その重合体(A)が重合体(B)の原料組成混合物中に存在している状態で重合体(B)を製造する方法である。重合体 (A)と重合体(B)のそれぞれの組成を制御しやすく、重合時の重合発熱による温度上昇が押さえられ、系内の粘度も安定に得られるためである。この場合、 重合体(B)の原料組成混合物は(A)を添加した時点で一部重合が開始されている状態であっても良い。
重合体(A)と重合体(B)の分子量はどちらかが高分子量であり、どちらかが低分子量であってもよい。重合体(A)と重合体(B)の組成は異なっていることが好ましい。
例えばメタクリル酸メチルと共重合可能な他のビニル単量体の含有量が、メタクリル樹脂組成物に対して1〜20wt%であれば、重合体(A)と重合体(B)でその含有量が異なっていることが好ましい。
まず、メタクリル酸メチル単量体0〜100wt%及びメタクリル酸メチルに共重合可能な他のビニル単量体の少なくとも1種で構成される単量体0〜100wt%、好ましくは、メタクリル酸メチル単量体80〜100wt%及びメタクリル酸メチルに共重合可能な他のビニル単量体の少なくとも1種で構成される単量体0〜20wt%からなる重合体(1)が得られるよう1段目の原料を仕込む。更に好ましい重合体(1)の比率は、メタクリル酸メチル単量体90〜100wt%及びメタクリル酸メチルに共重合可能な他のビニル単量体の少なくとも1種で構成される単量体0〜10wt%、最も好ましくは、メタクリル酸メチル単量体95〜100wt%及びメタクリル酸メチルに共重合可能な他のビニル単量体の少なくとも1種で構成される単量体0〜5wt%である。
なお、重合体(1)の比率は10〜35wt%にするように原料を配合することが好ましい。得られた樹脂組成物の流動性向上の効果を高めるためには10wt%以上が好ましく、樹脂組成物の機械強度の点から35wt%以下が好ましい。より好ましくは15〜33wt%であり、さらに好ましくは20〜30wt%である。
メタクリル酸メチル単量体69〜99.5wt%及びメタクリル酸メチルに共重合可能な他のビニル単量体の少なくとも1種で構成される単量体0.5〜31wt%となるように原料を仕込むと好ましい。より好ましくはメタクリル酸メチル単量体80〜99.5wt%及びメタクリル酸メチルに共重合可能な他のビニル単量体の少なくとも1種で構成される単量体0.5〜20wt%からなる重合体(2)が得られるよう2段目の原料を仕込む。更に好ましい重合体(2)の比率は、メタクリル酸メチル単量体85〜99.5wt%及びメタクリル酸メチルに共重合可能な他のビニル単量体の少なくとも1種で構成される単量体0.5〜15wt%、最も好ましくは、メタクリル酸メチル単量体90〜99.5wt%及びメタクリル酸メチルに共重合可能な他のビニル単量体の少なくとも1種で構成される単量体0.5〜10wt%である。
重合体(2)は、 重合体(2)の比率は90〜65wt%が好ましい。得られた樹脂組成物の流動性向上の効果を得るためには90wt%以下が好ましい。また、樹脂組成物の機械強度の点から65wt%以上が好ましい。より好ましくは85〜67wt%であり、さらに好ましくは80〜70wt%である。
(Mah−0.8)≧Mal≧0・・・・・・・・・・・・・・[4]
組成比率MalとMahは、それぞれの仕込みで用いた組成比率とほぼ同等の値を示し、重合体(1)及び重合体(2)それぞれを熱分解ガスクロマトグラフィー法により測定し、決定することが可能である。
Mah(wt%)とMal(wt%)との差は、流動性の点から0.8wt%以上が好ましい。
式[5]の関係が成り立つと、耐熱性と環境試験におけるクラックや成形品のゆがみの低発生率や機械強度を維持しながら流動性が劇的に向上するのでより好ましい。
(Mah−2)≧Mal≧0・・・・・・・・・・・・・・[5]
その場合においては、式[6]が成り立つようにすることで、耐熱性と流動性、機械的強度のバランスがよいメタクリル樹脂組成物が得られる。
1.2≧(Mah−0.8)≧Mal≧0・・・・・・・・・・・・・[6]
すなわち、Mah(wt%)を2wt%以下とし、なおかつMal(wt%)との差を0.8wt%以上に保つことが耐熱性、環境試験におけるクラックや成形品のゆがみの低発生率、機械強度を保持しつつ、流動性を向上させる上で好ましい。
流動特性が良くなることから、重合体(2)より重合体(1)のメタクリル酸メチルに共重合可能な他のビニル単量体の比率を少なくするほうが好ましく、使用しなくても良い。
すなわち、重合体(1)の重合時間、すなわち1段目の重合で単量体を添加後に重合発熱により発熱ピーク温度に達するまでの時間(Tl)と、重合体(2)の重合時間、すなわち2段目以降で単量体を添加後に重合発熱により発熱ピーク温度に達するまでに時間(Th)の関係は、下記関係式[7]が成り立つ必要がある。
Th/Tl≧1 ・・・[7]
生産性の点からTh/Tl≧1が好ましい。また、Thが長すぎると重合体(2)が目的の分子量に到達しない可能性が高まり、分子量低下による物性低下が懸念される為、5≧Th/Tlが好ましい。より好ましくは4≧Th/Tl≧1であり、更に好ましくは3≧Th/Tl≧1である。
式[7]を満足する条件にすることで、重合が安定し、効果的に本発明のメタクリル樹脂組成物を得ることが出来る。1段目および2段目以降の発熱ピーク温度に達するまでの時間を式[7]のように調整するためには、重合体(1)と重合体(2)の製造に使用する重合開始剤の量を適宜調整すればよい。
重合温度は、重合方法に応じて適宜最適の重合温度を選択して製造すればよいが、50℃〜180℃が好ましい。
以下、一例として、懸濁重合法における製造方法について詳細に説明する。
本発明における重合温度は、生産性、凝集体の生成量を少なくするために、60℃以上100℃以下であることが好ましい。より好ましくは65℃以上95℃以下であり、更に好ましくは70℃以上90℃以下、特に好ましくは75℃以上85℃以下である。
重合体(1)及び重合体(2)の重合温度は、同じであっても異なっていてもよい。懸濁重合法において上記の式(1)の関係が成り立つ場合、凝集体の生成量を少くすることができるうえ、得られるポリマー微粒子の粒径間の重量平均分子量の差異が小さくなり、均一なポリマーが得られるという点からも、生産安定性が向上する傾向にある。
凝集体の生成をより少量に抑えるためより好ましいのは、上記式[7]について、5≧Th/Tl≧1が成り立つことであり、更に好ましくは4≧Th/Tl≧1、特に好ましくは3≧Th/Tl≧1である。
重合体(2)の原料混合物は、重合体(1)の重合による発熱ピークが観測された後、直ちに添加しても良く、一定時間保持した後に添加してもよい。重合体(1)の原料混合物の重合度をより上げる必要がある場合には、重合体(1)による発熱ピークが観測された後、一定時間保持してから、重合体(2)の原料混合物を投入することが好ましい。
保持する際の温度は重合度を上げることができることから、重合体(1)の重合温度と同じか、重合体(1)の重合温度より高い温度であることが好ましい。より高い温度とする場合は重合温度より5℃以上昇温することが好ましい。より好ましくは7℃以上、更に好ましくは10℃以上である。また、昇温する場合は、得られる重合体の凝集を防ぐ観点から100℃以下であることが好ましい。具体的には、80℃以上100℃以下が好ましく、より好ましくは85℃以上99℃以下であり、更に好ましくは87℃以上99℃以下、最も好ましくは90℃以上99℃以下である。
重合体(2)の原料混合物を添加してから重合発熱による発熱ピーク温度が観測された後は、得られるメタアクリル樹脂組成物中の残存モノマー量を抑えることができる ことから、重合体(2)の重合温度よりも5℃以上昇温することが好ましい。より好ましくは7℃以上、更に好ましくは10℃以上である。また、昇温する場合 は、得られる重合体の凝集を防ぐ観点から100℃以下であることが好ましい。具体的には85℃以上100℃以下、より好ましくは87℃以上99℃以下、更 に好ましくは90℃以上99℃以下である。
昇温した後の保持時間は、本願の効果が発揮できる範囲であれば特に規定はされないが、一定時間該温度を保持することが好ましい。具体的には、10分以上 180分以下であり、好ましくは15分以上150分以下、更に好ましくは20分以上120分以下、最も好ましくは30分以上90分以下である。
ジ−t−ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサンなどのパーオキサイド系; アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル、1,1−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)などのアゾ系;等が挙げられる。これらは単独でもよいし、2種類以上を併用しても良い。また、これらのラジカル開始剤と適当な還元剤とを組み合わせてレドックス系開始剤として実施しても良い。これらの開始剤は、単量体混合物に対して、0.001〜1wt%の範囲で用いるのが一般的である。
連鎖移動剤としては、例えばn−ブチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、2−エチルヘキシルチオグリコレート、エチレングリコールジチオグリコレート、トリメチロールプロパントリス(チオグリコート)、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)などのメルカプタン類が好ましく用いられる。重合体(A)と重合体(B)に用いられる連鎖移動剤は同じでも良いし異なっていても良い。
重合体(A)と重合体(B)の連鎖移動剤の量は望む分子量に依存して決定することができるが、一般に単量体混合物に対して、0.001〜1wt%の範囲で用いられる。
染料、顔料、ヒンダードフェノール系やリン酸塩等の熱安定剤;
ベンゾトリアゾール系、2−ヒドロキシベンゾフェノン系、サリチル酸フェニルエステル系などの紫外線吸収剤;フタル酸エステル系、脂肪酸エステル系、トリメリット酸エステル系、リン酸エステル系、ポリエステル系などの可塑剤;高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸のモノ、ジ、またはトリグリセリド系などの離型剤;高級脂肪酸エステル、ポリオレフィン系などの滑剤;
ポリエーテル系、ポリエーテルエステル系、ポリエーテルエステルアミド系、アルキルスルフォン酸塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩などの帯電防止剤;リン系、リン/塩素系、リン/臭素系などの難燃剤;
補強剤として多段重合で得られるアクリル系ゴム;
メタクリル酸メチル/スチレン重合体ビーズ、有機シロキサンビーズなどの有機系、有機無機系光拡散剤;硫酸バリウム、酸化チタン、炭酸カルシウム、タルクなどの無機系光拡散剤;等が挙げられる。
<原料>
用いた原料は下記のものである。
・メタクリル酸メチル:旭化成ケミカルズ製(重合禁止剤として中外貿易製2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール(2,4−di−methyl−6−tert−butylphenol)を2.5ppm添加されているもの)
・アクリル酸メチル:三菱化学製(重合禁止剤として川口化学工業製4−メトキシフェノール(4−methoxyphenol)が14ppm添加されているもの)
・n−オクチルメルカプタン(n−octylmercaptan):アルケマ製
・2エチルヘキシルチオグリコレート(2−ethylhexyl thioglycolate):アルケマ製 ラウロイルパーオキサイド(lauroyl peroxide):日本油脂製
・第3リン酸カルシウム(calcium phosphate):日本化学工業製、懸濁剤として使用 炭酸カルシウム(calcium calbonate):白石工業製、懸濁剤として使用
・ラウリル硫酸ナトリウム(sodium lauryl sulfate):和光純薬製、懸濁助剤として使用[測定法]
1.メタクリル樹脂組成物の組成分析
メタクリル樹脂組成物の組成分析は、熱分解ガスクロマトグラフィー及び質量分析方法で行った。
熱分解装置:FRONTIER LAB製Py−2020D
カラム:DB−1(長さ30m、内径0.25mm、液相厚0.25μm)
カラム温度プログラム:40℃で5min保持後、50℃/minの速度で320℃まで昇温し、320℃を4.4分保持
熱分解炉温度:550℃
カラム注入口温度:320℃
ガスクロマトグラフィー:Agilent製GC6890
キャリアー:純窒素、流速1.0ml/min
注入法:スプリット法(スプリット比1/200)
検出器:日本電子製質量分析装置Automass Sun
検出方法:電子衝撃イオン化法(イオン源温度:240℃、インターフェース温度:320℃)
サンプル:メタクリル樹脂組成物0.1gのクロロホルム10cc溶液を10μl
検量線用標準サンプルの作成:メタクリル酸メチル、アクリル酸メチルの割合が(メタクリル酸メチル/アクリル酸メチル)=(100%/0%)、 (98%/2%)、(94%/6%)、(90%/10%)(80%/20%)の合計5種の溶液各50gにラウロイルパーオキサイド0.25%、n−オクチ ルメルカプタン0.25%を添加した。
この各混合溶液を100ccのガラスアンプル瓶にいれて、空気を窒素に置換して封じた。
そのガラスアンプル瓶を80℃の水槽に3時間、その後150℃のオーブンに2時間入れた。
室温まで冷却後、ガラスを砕いて中のメタクリル樹脂を取り出し、組成分析を行った。
検量線用標準サンプルの測定によって得られた(アクリル酸メチルの面積値)/(メタクリル酸メチルの面積値+アクリル酸メチルの面積値)及びアクリル酸メチルの仕込み比率とのグラフを検量線として用いた。
測定装置:日本分析工業製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(LC−908)
カラム:JAIGEL−4H 1本及びJAIGEL−2H 2本、直列接続
本カラムでは、高分子量が早く溶出し、低分子量は溶出する時間が遅い。
検出器:RI(示差屈折)検出器
検出感度:2.4μV/sec
サンプル:0.450gのメタクリル樹脂組成物のクロロホルム15ml溶液
注入量:3ml
展開溶媒:クロロホルム、流速3.3ml/min
上記の条件で、メタクリル樹脂組成物の溶出時間に対する、RI検出強度を測定した。
GPC溶出曲線におけるエリア面積と、検量線を基にメタクリル樹脂組成物の平均分子量を求めた。
検量線用標準サンプルとして、単分散の重量平均分子量が既知で分子量が異なる以下の10種のメタクリル樹脂(EasiCal PM−1 Polymer・Laboratories製)を用いた。
標準試料1 1,900,000
標準試料2 790,000
標準試料3 281,700
標準試料4 144,000
標準試料5 59,800
標準試料6 28,900
標準試料7 13,300
標準試料8 5,720
標準試料9 1,936
標準試料10 1,020
また、GPC溶出曲線でのピーク重量平均分子量(Mp)をGPC溶出曲線と検量線から求める。
まず、メタクリル樹脂組成物のGPC溶出曲線におけるエリア面積を求める。
GPC溶出曲線におけるエリア面積とは図1に示す斜線部分を指す。具体的な定め方は次のように行う。まず、GPC測定で得られた溶出時間とRI(示差屈折検出器)による検出強度から得られるGPC溶出曲線に対し、測定機器で得られる自動で引かれるベースラインを引いてGPC溶出曲線と交わる点Aと点Bを定める。点Aは、溶出時間初期のGPC溶出曲線とベースラインとが交わる点である。点Bは、原則として重量平均分子量が500以上でベースラインと溶出曲線が交わる位置とする。もし交わらなかった場合は重量平均分子量が500の溶出時間のRI検出強度の値を点Bとする。点A、B間のGPC溶出曲線とベースラインで囲まれた斜線部分がGPC溶出曲線におけるエリアである。この面積が、GPC溶出曲線におけるエリア面積である。エリア面積を決定するためには高分子量成分が先に溶出されるカラムを用いるため、溶出時間初期(点A側)に高分子量成分が観測され、溶出時間終期(点B側)に低分子量成分が観測される。
GPC溶出曲線におけるエリア面積を、Mpの1/5の重量平均分子量に対応する溶出時間で分割し、Mpの1/5以下の重量平均分子量成分に対応するGPC溶出曲線におけるエリア面積を求める。その面積と、GPC溶出曲線におけるエリア面積の比から、Mpの1/5以下の重量平均分子量の比率を求めた。
本測定では累積エリア面積0〜2%である分子量成分と、98〜100%である分子量成分の組成分析を行う。GPC溶出曲線におけるエリア面積の累積エリア面積(%)は、図1に示す点Aを累積エリア面積(%)の基準である0%とし、溶出時間の終期に向かい、各溶出時間に対応する検出強度が累積して、GPC溶出曲線におけるエリア面積が形成されるという見方をする。
累積エリア面積0〜2%である分子量成分と、98〜100%である分子量成分を、対応する溶出時間を基にカラムから分取して、その組成分析を行った。測定と、各成分の分取は、2.と同様の装置、条件で行った。
分取を2回行い、分取したサンプルのうち10μlを1.で用いた熱分解ガスクロ分析及び質量分析方法の熱分解装置用白金試料カップに採取し、100℃の真空乾燥機に40分乾燥した。1.と同様の条件で分取した累積エリア面積に対応するメタクリル樹脂組成物の組成を求めた。
1.レオメーターでの粘度測定
樹脂の粘度はレオメーター:ARES−G2(ティー・エイ・インスツルメント社製)で測定される。測定冶具はコーンを使用した。コーンの形状は直径25mm、角度1度のコーンを使用した。受け台は直径25mmの平らな円盤状である。
測定にあたっては、粘度測定サンプルとなるメタクリル樹脂組成物をあらかじめプレス成形で直径25mm厚み1.2〜1.5mmの樹脂製円盤に成形しておいた。あらかじめ、レオメーターの測定部であるコーンと受け台を250℃に加熱後、樹脂製円盤を受け台とコーンの間にセットし、コーンの頂点から受け台までの距離が0.05mmになるまでコーンを押した。はみ出た樹脂を取り除いた後に測定開始。角速度100rad/s及び4rad/sで冶具にかかるトルクから粘度を計測した。
実施例、比較例で得られた樹脂を幅20mm、長さ75mm、肉厚2mmに成形したものを20枚用意し、試験片とした。
熱板溶着機(タカギセイコー社製)を用いて熱板を表面温度245℃まで加熱した。熱板にはアルミニウム板の表面をテフロン(登録商標)加工した金属板を使用した。試験片の20mm×2mmの面を1mm/sの速度で熱板に押し当て、接触した位置から0.7±0.2mmまで押し込んで20秒間接触後、20±10mm/sの速度で試験片を離したとき、5mm以上の樹脂糸が発生した試験片の数から長糸発生率を算出し、糸曳き性とした。
断面積一定の、スパイラル状のキャビティを樹脂が流れた距離によって、相対的流動性を判定する試験である。
射出成形機:東芝機械製IS−100EN
測定用金型:金型の表面に、深さ2mm、幅10mmの溝を、中心部からアルキメデススパイラル状に掘り込んだ金型
射出条件:
樹脂温度:250℃
金型温度:55℃、
射出圧力:98MPa、
射出時間:10sec
冷却時間:10秒
金型表面の中心部に樹脂を上記条件で射出した。
40ショット成形後に、スパイラル長さ測定用成形品10個をサンプリングし、2mmのスパイラル部分の長さの平均値をスパイラル長さとした。
メタクリル樹脂組成物の耐熱性は、JIS−K7206に規定されたB50法で測定したビカット軟化温度で評価した。
以下に樹脂の製造方法を示す。 配合量は表1に、単量体の仕込み組成と重合体の比率、各重合体の重量平均分子量の測定結果、を表2に示す。
60LのSUS製反応器に重合体(1)の原料を、表1に示す配合量を投入し攪拌混合し、反応器の反応温度を80℃で懸濁重合し、重合ピーク確認後、60分 間、80℃を維持して重合体(1)を得た。この重合体(1)をサンプリングし、GPCで重合平均分子量を測定した。 その後、前記重合体(1)を含む重合系に重合体(2)の原料を、表1に示す配合量反応器に投入し、引き続き80℃で懸濁重合し、重合ピーク確認後、92℃に約1℃/minの速度で昇温した後、60分熟成し、重合反応を実質終了した。次に50℃以下まで冷却して懸濁剤を溶解させるために20wt%硫酸を投入 し、洗浄脱水乾燥処理し、メタクリル樹脂組成物ビーズを得た。このメタクリル樹脂組成物ビーズの重合平均分子量をGPCで測定し、重合体(1)のGPC溶出曲線を元 に、重合体(1)が含まれている比率をかけて、メタクリル樹脂組成物ビーズのGPC溶出曲線から、重合体(1)のGPC部分を除去し、重合体(2)の重量平均分 子量を求めた。
60LのSUS製反応器に重合体(1)の原料を、表1に示す配合量を投入し攪拌混合し、反応器の反応温度を80℃で懸濁重合し、重合ピーク確認後、92℃に約1℃/minの速度で昇温した後、60分熟成し、重合反応を実質終了した。次に50℃以下まで冷却して懸濁剤を溶解させるために20wt%硫酸を投入し、洗浄脱水乾燥処理し、メタクリル樹脂ビーズ:重合体(1)を得た。この重合体(1)をサンプリングし、GPCで重合平均分子量を測定した。
<評価結果>
表3に実用特性評価結果を記す。
車両用ランプなどの成形条件として特にニーズの高い樹脂の要求特性は、糸曳き性20%以下、スパイラル長さ26cm以上、更に好ましい条件としてビカット軟化温度106℃以上であり、この物性を目標特性として評価したが、実施例1〜5は糸曳き性、スパイラル長さ共に優れていた。
更に実施例1・3・4はビカット軟化温度も優れていた。実施例2と実施例5を比較すると糸曳き性、耐熱性は同等であるが、スパイラル長さは実施例2の方が優れていた。
比較例1・3はスパイラル長さが良好であるが、糸曳き性が悪かった。比較例2・4・5は糸曳き性が良好であるが、スパイラル長さが短かった。
2.ベースライン
Claims (2)
- メタクリル樹脂は下記重合体(1)及び重合体(2)であり、メタクリル樹脂組成物はゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量が5000〜50000で該メタクリル樹脂組成物全体に対して10〜35質量%である重合体(1)と、重量平均分子量が90000〜350000で該メタクリル樹脂組成物全体に対して90〜65質量%である重合体(2)を含むメタクリル樹脂組成物であって、メタクリル酸メチル単量体単位80〜99wt%及びアルキル基の炭素数が2〜18のメタクリル酸アルキル、アルキル基の炭素数が1〜18のアクリル酸アルキルの中から選ばれる少なくとも1種のビニル単量体単位1〜20wt%を含み、レオメーターを用いて樹脂温度240℃、角速度4rad/sの条件で測定した粘度が4900Pa・s以上であって、樹脂温度240℃、角速度100rad/sの条件での粘度が1450Pa・s以下であり、245℃に加熱したテフロン(登録商標)加工したアルミニウム板に押し当て、20秒後に試験片を離したとき、5mm以上の樹脂糸が発生する長糸発生率が20%以下であることを特徴とするメタクリル樹脂組成物を用いて得られた成形体と他の成形体とを熱板溶着させた成形体。
- 以下の測定条件でのスパイラル長さが26cm以上であることを特徴とする請求項1記載のメタクリル樹脂組成物を用いて得られた成形体と他の成形体とを熱板溶着させた成形体。
・射出成形機:東芝機械製IS−100EN
・測定用金型:金型の表面に、深さ2mm、幅10mmの溝を、中心部からアルキメデススパイラル状に掘り込んだ金型
・樹脂温度:250℃
・金型温度:55℃、
・射出圧力:98MPa、
・射出時間:10sec
・冷却時間:10秒
・測定方法:40ショット成形後に、スパイラル長さ測定用成形品10個をサンプリングし、2mmのスパイラル部分の長さの平均値をスパイラル長さとする
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