以下、本発明の幾つかの例について説明するが、本発明においては窒化物基板の投影形状(詳細後述。本明細書においては以下「平面形状」と言うこともある)は特に限定されるものではなく、本発明は、基板の投影形状が略三角形、略四角形、または略五角形以上の半導体発光素子などにも適用可能である。以下の実施形態では、必要に応じて、平面形状が略四角形や略六角形のもの等を例示して説明を行うものとする。
また、本発明においては、内部発光光の取り出し方向についても(すなわち、光を素子上面側から取り出すか、側壁面側から取り出すかについても)、特に限定されるものではない。ただし、側壁面側からの光取り出しは、光取出し効率の向上の点で非常に優れているため(詳細後述)、以下の説明では、側壁面側からの光取り出しが可能な構成を主として説明するものとする。
本明細書で使用する用語について説明する。
「側壁部(側壁面)」とは、基板側壁部(側壁面)および半導体層側壁部(側壁面)のいずれを指す場合にも用いる。
「露出面」とは、主面、主面と対峙する面、壁面、例えば基板が加工されたりした際に露出する面、および、半導体層部の加工された側壁面等も示し、半導体発光素子の周辺媒質との境界となる面をいう。通常、製造途中で複数の半導体発光素子を1つの基板上に形成することが行われるが、この際に隣接した素子との分離によって形成される面を「分離面」ということもある。分離面はその結果、露出面となることもある。
「傾斜露出面」または「傾斜露出部」とは、窒化物基板の主面に対して平行でない露出面であって、かつ、垂直でもない露出面をいう。なお、露出面は、微視的に見ると意図的、あるいは意図せずに付与された凹凸等を有する場合があるが、露出面の傾斜を議論する場合には、このような凹凸等の微視的な部分は議論の対象とせず、比較的マクロなスケールにおける全体の傾斜量を議論するものとする。具体的には、半導体発光素子のピーク波長λに対して、十分に長い領域の傾斜を議論するものとする。
「露出面形成」とは、任意の方法および任意の形態で露出面を形成することを示す。特には、後述する非等方的な内部発光プロファイルを前提とつつ、半導体発光素子から外部に出射される配光方向を制御するために、あるいは、この結果として応用上必要な方向に光を出射させることで光利用効率を高める目的で、傾斜露出面を意図的に作りこむことを指す。また、これによって、所望の配光特性を実現しつつ、さらに全放射束特性を向上させたり、半導体発光素子からみて(上もしくは下などの)半球空間に放射される部分放射束を選択的に向上させたりするための加工も露出面形成と記載する場合がある。
「凹凸加工」とは、任意の方法および任意の形態で凹凸を形成することを示す。特には、光の散乱効果を上げるためのニュアンスを有して使用することもある。なお、前述の通り、このような凹凸等の微視的な部分は、露出面の傾斜を規定する場合は議論の対象とせず、比較的マクロなスケールにおける全体の傾斜量を議論するものとする。
[1]半導体発光素子
本発明の半導体発光素子の基礎となる半導体発光素子において好ましい形態は、後述する通り、本発明者らが明らかにした自然法則を利用した技術思想が裏付けになるものである。以下、本発明の一形態の半導体発光素子で利用する自然法則、およびそれを用いた技術思想について詳述する。
[1−1]半導体発光素子の概要
図1は本発明の一形態の半導体発光素子の構造を模式的に示す断面図であり、図2は本発明の他の一形態の半導体発光素子の構造を模式的に示す断面図である。本発明に係る半導体発光素子は、図1、図2に例示されるような、素子基板の一部に傾斜露出面を含むものである。
図1、図2に示すように、本発明に係る半導体発光素子10は、窒化物基板12と、その主面21上に形成された半導体層部15とを有している。窒化物基板12は、発光素子のピーク発光波長をλとした際に、波長λにおける屈折率がns(λ)で、その最大物理厚みがtsである。
この半導体発光素子10は、その素子の基板部分に傾斜露出面または傾斜露出部12s(詳細下記)を有している。図1の構成では、傾斜露出面12sは半導体発光素子側壁に含まれており、図2の構成では傾斜露出面12sは半導体発光素子基板中央近傍に含まれている。
半導体層部15は、発光素子を構成しうる活性層構造16を有している。半導体層部15は、好ましくは、第一導電型半導体層17および第二導電型半導体層18のいずれか一方または両方を有する。第一導電型半導体層および第二導電型半導体層のいずれか一方または両方は、コンタクト層、キャリアオーバーフロー抑制層などの各種の機能を有する層を任意に内在することができる。半導体発光素子10は、第一導電型側電極27aおよび第二導電型側電極27bを有することが好ましい。
半導体発光素子10が任意に有することができる活性層構造16は、図3に示すように、量子井戸層31および障壁層33を有する量子井戸活性層構造であることが好ましい。
[1−2]本発明の一形態の半導体発光素子において利用する自然法則、およびそれを用いた技術思想
図4に、一般的な半導体発光素子の構造を示す。図4は、本発明の1つの形態において利用可能な自然法則等について説明するための図であり、素子の側壁部に傾斜露出面が形成されていないものが描かれている。
この半導体発光素子10では、第一導電型側電極27aと第二導電型側電極27bとが設けられており、これらの電極27a、27bから注入された電子と正孔が、活性層構造16内で、例えば量子井戸活性層構造であれば量子井戸層内で再結合し、半導体発光素子10の内部に光を放射する。
電極はある程度の反射を持っているので、半導体発光素子10内における発光強度密度の角度分布は光学干渉効果に強く依存する。この発光強度密度の角度分布を本発明では内部発光プロファイルと呼び、以下のように求めた。
無限に広いXY平面と、これに垂直なZ軸を仮定する。XY面内方向に広がる、基板主面と略平行な多重量子井戸層の中の各量子井戸層部分を、電気双極子の平面的な集合(双極子面)と仮定する。双極子面において、双極子の向きはあらゆる方向に均一である。双極子から放射される光は、半導体発光素子の中で、半導体層部各層(多重量子井戸層部分、第二導電型側半導体層、および第二導電型側電極など)や電極部分において多重反射および多重干渉等を受ける。その結果、素子の内部における発光強度密度Jinは、放射方向(Z軸方向を0度として放射方向がZ軸方向となす角度をθemと記載する)に対し依存性を示すようになる。
「内部発光プロファイル」とは、この半導体発光素子の内部における発光強度密度(Jin)の放射方向(θem)依存性のことをいう。
なお、内部発光方向を規定する角度としては、Z軸方向となす角度θemと別に、発光方向のXY面への射影がX軸方向となす角度(方位角)がある。しかし、双極子の方向は等方的であることから、発光強度密度Jinの方位角依存性はないと考えてよい。
ところで、従来、半導体発光素子の設計においてなされてきた検討では、半導体発光素子の活性層部分から出射される光が「等方的な内部発光プロファイル」、すなわち、あらゆるθemにおいてJinが一定と仮定した上で、半導体発光素子の形状や層構成等について発明等が行われてきた。
しかしながら、本発明者らの検討により、これらの発明等は誤った内部発光プロファイルを前提とするものであることを見出した。そして、従来の検討では、半導体発光素子の高出力化、高効率化において十分な効果を奏するものではないことを見出した。
すなわち、等方的であるべきは双極子の向きであって、この結果与えられる放射方向の内部発光プロファイルは等方的ではなく、非等方的となる。
平板電極と一つの均一な媒質からなる半空間において電極から距離dだけ離れた位置に存在する双極子面(双極子の配向は等方的)からの発光を考えると、内部発光プロファイルは次のように記述できる。
ここで、
I0:双極子からの放射強度
rs:s偏光の電極表面反射における振幅反射係数
rp:p偏光の電極表面反射における振幅反射係数
δ :2πnd/λ
n:双極子面が存在する領域の波長λにおける屈折率
d:双極子面と電極との物理距離
λ:半導体発光素子のピーク波長
である。
さらに、多重量子井戸層における多重反射と多重干渉や、半導体層部を構成する各種相間の多重反射と多重干渉などを考慮する場合には、特性マトリックス法を用いてJinを計算することが好ましい。
図5Aに、本発明の半導体発光素子の基礎となる内部発光プロファイルを求めるために用いたモデルの一例を図示する。ここで、半導体発光素子内の活性層構造が量子井戸活性層構造と仮定する。図に示すように、量子井戸層31、すなわち双極子面が、障壁層33、第二導電型半導体層18を挟んで第二導電型側電極27bまでの距離dの位置に存在している。
ある双極子から出射された光は、自分自身との干渉効果により非等方的となるが、異なる複数の双極子から出射された光は、お互いには干渉せず、全体の内部発光強度密度は、非等方的なそれぞれの光の内部発光強度密度を足し合わせたものとなる。異なるdの位置に発光層が存在する場合には、それぞれの発光層における双極子からの内部発光強度が強めあう方向と弱めあう方向が打ち消しあうことがあるが、本発明の検討によると、例えば、後述する(式A)を満たすような量子井戸活性層構造を有することで、ある特定の方向、すなわち活性層構造と平行な方向に近い方向には、常に強めあう結果、全体として、この特定の方向に最大値をもつ内部発光強度密度分布が得られることがわかった。
〔量子井戸層、障壁層、第二導電型半導体層の間に適度な屈折率差が存在し、かつ発光層が適度な厚みをもつ場合などを想定した場合の、等方的な向きを有する双極子放射による非等方的な内部発光プロファイル〕
量子井戸層、障壁層、第二導電型半導体層の間に適度な屈折率差が存在し、例えば、後述する(式A)を満たすような量子井戸活性層構造を有することを仮定する。このような構造は実際に実現しうる構造である。
等方的な向きを有する双極子放射からの内部発光プロファイルを計算すると、典型的には図5B(横軸が前記Z軸方向となす角度θem、縦軸が内部発光強度密度)のような特性、すなわち、非等方的な内部発光プロファイルとなる。
内部発光強度密度の最大値を示す方向は、第二導電型半導体層18の厚みや第二導電型側電極27bの反射率などの条件により変動はあるものの、活性層構造と平行な方向に近い方向(θemが90度寄りの方向)である。このような活性層構造と平行に近い方向に内部発光強度密度が強くなる傾向は、例えば後述する(式A)を満たすような量子井戸活性層構造を有する発光素子でより顕著となる。
図5Bは、等方的な向きを有する双極子放射からの内部発光プロファイルが、本質的に非等方的になることを示している。すなわち、量子井戸層、障壁層、第二導電型半導体層の間に適度な屈折率差が存在し、かつ発光層が適度な厚みをもつ場合などを想定した場合には、次の自然法則が得られる。
「量子井戸層、障壁層、第二導電型半導体層の間に適度な屈折率差が存在し、例えば、後述する(式A)を満たすような量子井戸活性層構造を有する場合、等方的な向きを有する双極子放射により、非等方的な内部発光プロファイルとなり、活性層構造と平行に近い方向に内部発光強度密度が強くなる。」
〔量子井戸層、障壁層、第二導電型半導体層の間に過度な屈折率差が存在するか、または発光層が過度な厚みをもつ場合などを想定した場合の、等方的な向きを有する双極子放射による等方的な内部発光プロファイル〕
上述のように、等方的な向きを有する双極子放射からの内部発光プロファイルは、本質的に非等方的になるが、量子井戸層、障壁層、第二導電型半導体層の間の屈折率差が適度な範囲を超えて大きくなった場合、または発光層が適度な範囲を超えて厚い場合などには、図5Cに示すように、その程度が図5C中(a)、(b)、(c)の順に例示するように活性層構造と平行な方向に近い方向に内部的に出射された光の強度が弱まっていき、これらが過度になると最終的には図5C中の線(d)のようになる。
量子井戸層、障壁層、第二導電型半導体層の間の屈折率差が大きくなると、活性層構造と平行に近い方向に出射された光ほど強く反射されるようになり、多重反射の結果、有限の反射率をもつ電極により吸収される。また、発光層の厚みが厚くなると、それぞれの双極子からの発光の足し合わせにおいて、活性層構造と平行に近い方向に出射された光も打ち消しあうようになる。その結果として、量子井戸層、障壁層、第二導電型半導体層の間の屈折率差が適度な範囲を超えて大きくなった場合、または発光層が過度な厚みをもつ場合などを想定した場合は、次の自然法則が得られる。
「量子井戸層、障壁層、第二導電型半導体層の間の屈折率差が適度な範囲を超えて大きくなった場合や発光層が過度な厚みをもつ場合などを想定した場合は、等方的な向きを有する双極子放射により、等方的な内部発光プロファイルとなる。
[1−3]本発明の一形態の半導体発光素子の好ましい態様
このように、本発明の半導体発光素子の基礎となる部分を考察したが、本発明の半導体発光素子は、量子井戸層、障壁層、第二導電型半導体層の間に適度な屈折率差が存在するか、または発光層が適度な厚みを持つ場合などが好ましい。活性層構造は量子井戸活性層構造を有することが好ましく、これにより内部発光プロファイルは、活性層構造に平行な方向に内部発光強度密度の最大値を有する非等方的なものが実現できる。
本発明者らの詳細な検討によれば、このような活性層構造は、例えば量子井戸層と障壁層の間の屈折率差を適切に選択することによって実現可能である。また、量子井戸層と障壁層の繰り返し数を適切に選択すること、または、量子井戸層と障壁層の厚みを適切に選択することなどによって実現が可能である。
これらの数値は相互に関連するものであるが、好ましい実現手段として、以下を挙げることができる。
第一に、量子井戸活性層構造および第二導電型半導体層の関係において、以下の式を満たすことが好ましい。
ここで、
NUMQWは活性層構造に含まれる量子井戸層の数を表し、
TQW(nm)は量子井戸層を構成する層の平均物理厚みを表し、
NUMBRは活性層構造含まれる障壁層の数を表し、
TBR(nm)は障壁層を構成する層の平均物理厚みを表し、
TP(nm)は第二導電型半導体層の物理厚みを表し、
nQW(λ)は量子井戸層を構成する層の波長λにおける平均屈折率を表し、
nBR(λ)は障壁層を構成する層の波長λにおける平均屈折率を表し、
nP(λ)は第二導電型半導体層の波長λにおける平均屈折率を表し、
ns(λ)は前述のとおり基板の波長λにおける屈折率を表す。
第二に、量子井戸層は4層以上30層以下であることが好ましい。
第三に、活性層構造に含まれる量子井戸層の厚みの最大値が40nm以下であることが好ましい。
これらは、種々の検討の結果により得られたもので、相対的に屈折率の大きな量子井戸層が、活性層構造と平行に近い方向に出射された光を強く反射し、電極による吸収をもたらすことにならない条件であると考えられ、これらを満たすことで、現実的に実現可能で量子井戸層内における電子−正孔対の閉じ込めも考慮したうえで、活性層構造に平行な方向に高密度な光の放射方向を有する活性層構造を実現することが可能である。
なお、量子井戸層のより好ましい範囲、量子井戸層厚みのより好ましい範囲等については、他の図面(図29A〜図29E)を参照して後述するものとする。
〔量子井戸層、障壁層、第二導電型半導体層の間に適度な屈折率差が存在し、かつ発光層が適度な厚みをもつ場合などを想定した場合の、等方的な向きを有する双極子放射による非等方的な内部発光プロファイルを有する場合の詳細〕
前述の通り、本発明の半導体発光素子を構成する基礎を考察すると、例えば図5Bあるいは、図5Cのグラフ(a)〜(c)の様に、内部発光プロファイルの中で非等方的であって、かつその内部発光強度密度の最大値が活性層構造に平行な方向に近い特性を有すことも好ましい。
すなわち、本発明の一形態においては、半導体発光素子の内部発光方向(θem)に対する発光強度密度分布は等方的ではないことが好ましい。ここで、半導体発光素子の内部発光方向(θem)において、最大値を有する方向(θem max)は、活性層構造の平行方向に近い方向である。この内部発光の最大値を与える方向(θem max)は、半導体層部を構成する材料と各層の構造、電極材料とその構造によって変化する。
具体的には、内部発光の最大値を与える方向(θem max)は、半導体層部を構成する第一導電型半導体層、量子井戸活性層と障壁層を含む活性層構造、第二導電型半導体層、コンタクト層、任意に導入しうる各種構造、第一導電型側電極の構成材料、第二導電型側電極の構成材料、その構造等によって変化する。さらには、最も強くθem maxを変化させうるのは、量子井戸層、障壁層、第二導電型半導体層の間の屈折率差による反射効果と、ある厚みを有する発光層からの異なる双極子による発光の足しあわせの結果として非等方性を打ち消しあう効果である。
そこで、窒化物基板上の半導体層において、これらの条件を検討した結果、次のことを見出した。すなわち、非等方的な内部発光プロファイルを有する場合においてθem maxは、
67.5度≦θem max<90度
範囲で変化させることができる。これは同時に
−90度<θem max≦−67.5度
である。
この結果、本発明者らは次のことを見出した。すなわち、図4の半導体層部15の活性層構造16から半導体発光素子内部に出射される光を効率よく取り出すためには、θem maxの方向の近傍に向かう高密度な光の取り出し効率を向上させることが本質的で有効である。このような手法は、従来の手法、すなわちθem=0度方向へ内部的に出ている光の取り出し効率を向上させる手法よりも本質的であり、かつ効果的である。さらに、θem max近傍に向かう光は高密度なので、主として、この部分の光が発光素子外部において、いずれの方向に向かうかを制御することが、発光素子の配光特性を制御する上で非常に重要である。
本発明の一形態においては、半導体発光素子の活性層構造から半導体発光素子内部に出射される内部発光強度密度の最大値を示す角度(θem max)は、その絶対値の下限が、 67.5度以上であることが好ましく、
70.0度以上であることがより好ましく、
72.5度以上であることがより好ましく、
75.0度以上であることがさらに好ましい。
さらに、θem maxの絶対値の上限は、
90度より小さいことが好ましく、
87.5度以下であることがより好ましく、
85.0度以下であることがより好ましく、
82.5度以下であることがさらに好ましい。
なお、以上の記載から明らかなように、本出願は、非等方的な内部発光プロファイルを有する半導体発光素子であって、内部発光強度密度の最大値を示す角度θem maxの絶対値が、67.5度以上、90度未満を満たす半導体発光素子も開示しており、本出願で開示される他の構成と組み合わせることなく、独立して発明を構成することができる。また、本出願で開示される他の構成と組み合わせることもできる。
内部発光プロファイルと半導体発光素子の周辺媒質との界面における光の反射、透過、屈折等の総合的な結果として、スネルの法則に従って、「外部発光プロファイル」、すなわち配光特性が決定される。
「外部発光プロファイル」とは、半導体発光素子外部における発光強度密度(Jout)の放射方向(φem)に関する分布である。
θem maxは直接的には観測することができないが、半導体発光素子外部における発光強度密度(Jout)の放射方向の最大値を示す(φem max)方向を観測することにより、スネルの法則などから逆算して求めることが可能である。なお、各露出面が光学的に散乱能が高い面などである場合には、逆算できる程の結果が得られないこともある。なお、精度高く内部発光プロファイルを算出するためには、半導体発光素子が比較的光学的な鏡面で構成され、さらに、ステム等は反射鏡となりうる部分を極力排除した上で発光素子を搭載して、空気中で配光特性を測定することが好ましい。
〔最遠側壁部における臨界角による必要基板厚みの導出:側壁傾斜露出面を有する場合の好ましい範囲1〕
本発明者らは、前述の内部発光強度密度の最大値を有する方向を含んで、かつ、それ以外の方向に出射された内部発光も、可能な限り、半導体側壁部から外部に取り出しうるような基板厚みとし、この状態の素子に側壁傾斜露出面を付与することが、本発明の半導体発光素子の一形態として外部発光プロファイル制御の自由度が高く、かつ、光取り出し効率向上に効果的であることを見出した。
また、本発明の一形態として、基板主面の任意の2点の作る最も長い線分長と、窒化物基板の最大物理厚みとの間で、特定の関係を満たすことが非常に好ましいことも見出した。
以下、図6A等を参照して基板主面の任意の2点の作る最も長い線分長と、窒化物基板の最大物理厚みとの間の特定の関係について説明する。なお、側壁傾斜露出面それ自体については後ほど詳説する。
図6Aは、本発明の半導体発光素子に対して好ましく適応できる基板厚みを導出するための基礎を説明するための幾何形状を模式的に示す斜視図である。図6Aに示すように、この半導体発光素子10は、窒化物基板12の主面上(図の下側)に、ピーク発光波長λの光を発する活性層構造16を含む半導体層部15を有している。図6Aの例では、窒化物基板12を、基板主面21に垂直方向に投影したとき、略四角形の形状となる。
なお、この例では、本発明の一形態に好ましく利用可能な基板厚みを導出する基礎を得るために、意図的に側壁面のすべてが基板主面21に対して垂直の場合を想定している。窒化物基板12の投影形状は、基板主面21の平面形状と一致して製造誤差の範囲で合同(以下、「略合同」と表現することがある。)であって、主面も略四角形の形状となっている。この場合、基板主面に垂直方向に投影した形状は、一般に隣接する素子分離端の形状と一致する。
図6Aの構成において(図6Bも参照のこと)、
周辺媒質の波長λにおける屈折率をnout(λ)、
当該窒化物基板の波長λにおける屈折率をns(λ)、
基板の最も厚い部分の物理厚みをts、
半導体層部を構成する層Xの波長λにおける屈折率をnLX(λ)
(すなわち、層Xは、半導体層部を構成する任意の層を表し、nLX(λ)はその層Xの波長λにおける屈折率を表す。)、
基板主面から活性層構造までの最大の物理厚みをta、
半導体層部の最大の物理厚みをtLとする。
当該基板主面(この図では略四角形)の上にある任意の2点の作る最も長い線分長(直線長)をLscとする。この図では、主面の平面形状が略四角形であるので、当該基板主面の略四角形の最短辺の長さをLsaとする。
図6Aにおいて、点Aおよび点Bは、半導体層部15の端(図の下側)の点である。点Cおよび点Dは活性層構造16の端の点である。点Eおよび点Fは、基板主面21と半導体層部15の境界の端部の点である。点Gおよび点Hは、製造上隣接していた他の発光素子10と素子分離を行った端部(この形状では他の点も素子分離を行った端部となっている)の点である。点Iおよび点Jは、基板主面21と反対側の面(図の上側)の基板端部の点である。
活性層構造16から出射される光の内部発光強度密度の最大値(内部プロファイルの最大値)は、相対的には、活性層構造の平行方向に近い方向にある。
ここで、図6Aに示す図を用いて、側壁が垂直で、かつ光路中にも他の傾斜露出面等がない場合に、内部発光強度密度の最大値を示す方向を含んでその近傍の光も直接側壁部分に到達し、さらにその部分での臨界角を同時に考慮した場合について考察する。
このような場合は、素子側壁部に傾斜露出面を導入すると、容易に配光特性を制御しうる構造に変化させられる点で有利であって、かつ、同時に光取り出し効率を向上させられる場合もあって、有利である。
このような具体例を考察する基礎としては、図6Aの点Cから出射される光を想定し、この中には内部発光強度密度の最大値の方向を含みつつ、かつ、可能な限り点Cから他の方向に放射される内部発光も想定して、これらの光が、点Cからもっとも遠い発光素子の壁部分(最遠側壁部)であっても、効果的に光が到達可能であって、かつ、当該光が到達した部分において素子外への光取り出しのための臨界角条件を満たす半導体発光素子を想定すれば良い。
すなわち、図6Aの点Cから出射された光の、点B点D点F点H点Jを含む直線上における臨界角を考慮すれば、素子全体のいずれの発光部分を考えた際でも、側壁への十分な内部発光光の到達要件と臨界角を同時に考慮した結果を与えるものとなる。
図6Bは、図6Aの構造を線Lscで縦方向に切断した断面図である。図6Bでは、点Aから点Iを含む直線と、点Bから点Jを含む直線(最遠側壁部)と、点A点B、点I点Jで囲まれた面が図示されている。ここで点Aと点Bの距離は、当該基板主面の上にある任意の2点の作る最も長い線分長Lscであり、この場合は、対角線(図6A参照)に相当する。
ここで、以下、見通しの良い近似を与える。本発明においては、ns(λ)とnLX(λ)は大きくは異ならないので、図6Aまたは図6Bの構造では、活性層構造から発生した光が窒化物基板側面に十分到達することになる。また、基板主面21から活性層構造までの最大の物理厚みtaは、窒化物基板の厚みtsに比較して十分に薄い。よって、点Cからの発光を点Eからの発光であると仮定して点B点D点F点H点Jを含む最遠側壁部における内部発光光の到達要件と臨界角を考慮すればよい。この際に、特に配光特性制御を行う場合であっても、あるいは、光取り出し効率の向上を目指した側壁傾斜露出面の形成を行う場合であっても、最遠側壁部における臨界角を考察することは重要である。
図6Cは、光の挙動を示す図である。点Eから発光したと想定して、最遠側壁部(図の右側の壁)は、光の挙動に対応して以下の3つの領域131、132、133に分けられる。
第一は、最遠側壁部のうち最も下側の領域131である。この領域131は、最遠側壁部に入射する光の入射角度α(=90−θem)が、
臨界角αc=sin−1(nout(λ)/ns(λ))との関係において
α<αc
となる領域(点Eに対する最遠側壁部第一領域)である。ここにおいて、nout(λ)とは、半導体発光素子の発光波長λにおける周辺媒質の屈折率である。
第二は、上記した領域131の上に存在する領域132である。この領域132は、最遠側壁部に入射する光の入射角度αが、臨界角αc=sin−1(nout(λ)/ns(λ))との関係において
αc≦α≦90−αc
となる領域(点Eに対する最遠側壁部第二領域、あるいは真性閉じ込め光生成領域)である。
第三は、上記した領域132のさらに上の領域133である。この領域133は、最遠側壁部に入射する光の入射角度αが、
臨界角αc=sin−1(nout(λ)/ns(λ))との関係において
90−αc<α
となる領域(点Eに対する最遠側壁部第三領域)である。
第一領域131に入射する光は全反射を受けない。よって、最遠側壁部のこの領域131で効果的に光を取り出すことができる。一方、第二領域132に入射する光、および、第三領域133に入射する光は全反射を受ける。
ここで、第二領域132は、全反射を受けた光が反射をして他の発光素子側壁面に到達したとしても、その面でさらに全反射を受けてしまう領域であり、換言すれば、半導体発光素子内「真性閉じ込め光」を作り出す領域である。
第三領域133に入射する光は、最遠側壁部では全反射を受けるものの、他の部分(例えば基板面21a)において臨界角よりも小さな入射角をもつため、反射を繰り返せば外へ取り出しうる。
ここで、窒化物基板12の厚みts(図6B)が、最遠側壁部第一領域131内になるように薄い場合には、図6Dに示すように、本来十分な窒化物基板の厚みがあれば最遠側壁部に到達可能であって、かつ、ここから取り出し得る光(図の破線参照)が、主面と対峙する基板面12aで全反射を受け、その光が再度活性層構造に入射することで吸収され、または、第二導電型側電極、第一導電型側電極等によっても吸収されてしまう可能性があるため、好ましくない。
もし電極等の反射率が100%で、かつ、窒化物基板および半導体層部の損失が0の場合にはこれらの光も多重反射を繰り返すことで側壁からの出射を実現し得るが、このような環境は実現しない。すなわち、窒化物基板の厚みtsが第一領域131内になるような場合は、光の効果的な取り出しという観点からは好ましくない。
一方、窒化物基板12の厚みtsが第三領域133(図6C)内になるように厚い場合には、図6Eに示すように最遠側壁部に到達可能であって、本来窒化物基板12の厚みが厚くなければ主面と対峙する基板面12aから取り出しうる光が、第三領域133での反射を受け、方向を変えて該基板面12a取り出されることになる。この場合には発光素子側壁に内部発光光が到達するので、また、場合によっては光取出しも可能であって、好ましい。
一方、過剰に厚い基板を用いた発光素子はコスト的に不利になるなどの懸念もある。しかし、原理的には発光素子側壁からの光取り出しが可能であって、好ましい場合である。
特に、半導体発光素子10の側壁からの光取り出しを強調する場合には、好ましく使用可能な形態であって、特に側壁に凹凸加工、さらなる露出面形成加工等を付与することで、このような機能が向上するため、その基本構成として好ましい。
一方、本発明の一形態で好ましい窒化物基板の厚みtsは、1つの場合は、以下のように与えられる。
活性層構造から内部的に出射された光の強度が、活性層構造16と平行方向に比較的近い方向にその極大値をもつことを考慮し、この内部発光強度密度の強い方向の光を十分に側壁部分に到達しうるようにしつつ、臨界角をも考慮し、素子側壁部に傾斜露出面を導入した際に、容易に配光特性が制御可能で、同時に半導体発光素子からの効果的な光取り出しも実現でき、さらにコスト的にも十分に配慮すると、窒化物基板12の厚みtsは二領域132(真性閉じ込め光生成領域)内の厚みとすることが好ましいことが分かる。
すなわち、本発明の一形態における窒化物基板厚みtsは、真性閉じ込め光生成領域132の下限の厚み(図6Cのt1)以上の厚みにすることが好ましい。厚みtsの上限は、素子分離の観点から5500μm以下とすることが好ましい。
さらに好ましい窒化物基板の厚みtsは、真性閉じ込め光生成領域132の下限(図中のt1)の厚み以上の厚みにすることが好ましく、真性閉じ込め光生成領域の上限の厚み(図中のt2)以下の厚みにすることがより好ましい。すなわち、窒化物基板厚みtsは、真性閉じ込め光生成領域内の厚みに、すなわち、
t1≦ts≦t2
とすることがさらに好ましい。
この結果から、本発明の一形態の窒化物基板の厚みtsを、当該基板主面の上にある任意の2点の作る最も長い線分長をLscとのアスペクト比(ts/Lsc)で捕らえると、tanα=ts/Lscであるから、
tan{sin−1(nout(λ)/ns(λ))}≦ts/Lsc
≦tan{90−sin−1(nout(λ)/ns(λ))}
である。
よって、本発明の一形態の半導体発光素子10の窒化物基板12のさらに好ましい厚みtsは、
Lsc×tan{sin−1(nout(λ)/ns(λ))}≦ts
≦Lsc×tan{90−sin−1(nout(λ)/ns(λ))}・・・(式1a)
となる。
厚みをこの範囲とすると、内部発光強度密度の最大値を示す方向に出射される光とその近傍の光を含んで、最遠側壁部における臨界角を考慮した、好ましい必要基板厚みとなり、側壁傾斜露出面を有する場合の本発明における好ましい一形態となる。この場合には、内部発光強度密度の最大値を示す方向に出射された光を側壁傾斜露出面によって制御できることから、外部発光プロファイル制御を、効果的に自由度高く実現でき、かつ、光取り出し効率向上も効果的に実現可能となる。
なお、このような厚みを与えると図1や図2においても、十分条件となる窒化物基板の厚みtsの好ましい範囲が導出できることは明白である。
なお、本発明における窒化物基板の厚みtsは、後述するとおり、主面から垂直に伸ばした長さが最も厚くなる最大厚みである。
〔基板厚みに関する具体例1〕
上記式1aは、nout(λ)が小さくns(λ)が大きい場合に、最も広い範囲の窒化物基板の厚みtsを与える。
よって、nout(λ)は真空あるいは実効的には空気を想定し、これを1とすることができる。よって、本発明における半導体発光素子の好ましい基板厚みは、
Lsc×tan{sin−1(1/ns(λ))}≦ts
≦Lsc×tan{90−sin−1(1/ns(λ))}・・・(式1)
となる。
基板厚みは、式1を満たしつつ、その規定された厚みの中に、内部発光強度密度の最大値を与える方向に出射された光が直接最遠側壁部に入射するようにすることが好ましい。
また、製造コスト等の観点では、基板厚みは、これらを満たしつつ必要最低限度の厚みとすることが有利である。
よって、本発明の一例の半導体発光素子の厚みtsの好ましい下限となりうる指標は、
(a)Lsc×tan{sin−1(1/ns(λ))}
(b)Lsc×tan{1×(90−θem max)}
(c)Lsc×tan{1.5×(90−θem max)}
(d)Lsc×tan{2.0×(90−θem max)}
である。
(a)は最遠側壁部における点Eから出射された光の臨界角によって規定される指標であって、本発明が好ましく満たすべき要件である。
(b)から(d)は、内部発光強度密度の最大値を示す方向が、略活性層構造に平行な方向に近接していることから、本発明において好ましい範囲は、67.5度 ≦ θem max < 90.0度であるが、ここでは45度<θem max<90度として考えれば、数学的な範囲として十分であって、(a)の要件を満たした上で、本発明の半導体発光素子がみたすべき厚みtsの好ましい下限を与える場合がある。
なお、(a)と(b)〜(d)の要件は、その大小関係が各パラメータによって変わることから、(b)〜(d)の要件は、(a)の要件よりも大きい場合に、本発明の半導体発光素子が満たすべき厚みの、下限の好ましい値を与える場合がある。
特に、(c)と(d)を満たす場合、内部発光強度密度の最大値を示す方向に出射された光のみでなく、その近傍の強度の強い光をも側壁から取り出すことができるため、より好ましい。
一方、本発明の一例の半導体発光素子の厚みtsの好ましい上限となりうる指標は、
(e)Lsc×tan{90−sin−1(1/ns(λ))}
(f)2.5×Lsc×tan{sin−1(1/ns(λ))}
(g)2.0×Lsc×tan{sin−1(1/ns(λ))}
(h)1.5×Lsc×tan{sin−1(1/ns(λ))}
である。
(e)は最遠側壁部における点Eから出射された光の臨界角によって規定される指標であって、本発明が好ましく満たす要件である。
(f)から(h)は、基板厚みは必要最低限度の厚みとすべく設けることができるより好ましい基板厚みの指標である。(f)〜(h)の指標は、(e)の指標よりも小さい場合であって、(a)〜(d)の指標のいずれかひとつよりは大きい場合に、本発明の半導体発光素子が内在する基板が好ましく満たす厚みtsの好ましい上限を与える場合がある。(f)はこのような場合に、基板の厚みは必要最低限の厚みの2.5倍以内、(g)は2倍以内、(h)は1.5倍以内が好ましいとの意味である。
〔基板厚みに関する具体例2〕
前述の式1の具体例について説明する。ns(λ)は後述するとおり、波長が短いほど大きくなるが、吸収の大きくない範囲において選択することが必要である。さらに、窒化物基板12の中では、例えば、AlN基板やBN基板等を想定しても、同じ波長における屈折率はGaN基板よりも小さいので、GaNの場合を想定すれば十分である。
そこで、ns(λ)はGaN基板の370nmにおける実測値から2.596とした場合が最も広く、好ましい範囲の窒化物基板の厚みtsを与えることになる。
このようにして式1を計算すると、
Lsc×0.418≦ts≦ Lsc×2.395・・・(式3)
となる。
よって、もし本発明の一例の半導体発光素子を周辺媒質nout(λ)=1に設置し、θem max=75度とした場合には、より好ましいtsの範囲の下限を与える可能性のある前記(a)から(d)の指標はそれぞれ
(a)Lsc×tan{sin−1(1/ns(λ))}=Lsc×0.418
(b)Lsc×tan{1.0×(90−θem max)}=Lsc×0.268
(c)Lsc×tan{1.5×(90−θem max)}=Lsc×0.414
(d)Lsc×tan{2.0×(90−θem max)}=Lsc×0.577
である。
したがって、本発明の半導体発光素子の厚みの好ましい下限は
Lsc×0.418≦ts
であって、より好ましくは、
Lsc×0.577≦ts
である。
一方、その好ましい上限を与える可能性のある(e)〜(h)の指標は、
(e)Lsc×tan{90−sin−1(1/ns(λ))}=Lsc×2.395
(f)2.5×Lsc×tan{sin−1(1/ns(λ))}=Lsc×1.045
(q)2.0×Lsc×tan{sin−1(1/ns(λ))}=Lsc×0.836
(h)1.5×Lsc×tan{sin−1(1/ns(λ))}=Lsc×0.627
である。
本発明の一例の半導体発光素子の厚みtsの好ましい上限は
ts≦Lsc×2.395
であることが好ましく、
ts≦Lsc×1.045
であることがより好ましく、
ts≦Lsc×0.836
であることがより好ましく、
ts≦Lsc×0.627
であることが最も好ましい。
よって、まとめると、このような例の場合に好ましい指標を列記すると、
Lsc×0.418≦Lsc×0.577≦ts≦Lsc×0.627
≦Lsc×0.836≦Lsc×1.045≦Lsc×2.395となる。
なお、GaN基板の460nmにおける実測値から2.4367を用いて計算すると式3は、
Lsc×0.450≦ts≦ Lsc×2.221
と、式3よりも範囲が狭くなる。
なお、表1には主面が(0001)面であるGaN基板(表中の「C−GaN」)と、主面が(1−100)であるGaN基板(表中の「m−GaN」)の屈折率を実測した結果を示す。
〔式1aにおける付記事項 45度<sin−1(nout(λ)/ns(λ))≦90度の場合(一般論)〕
なお、45度<sin−1(nout(λ)/ns(λ))≦90度の場合においては、式1aは、その上限と下限の大小関係が入れ替わる。すなわち、この場合には、遠側壁部における点Eから出射された光の臨界角が45度より大きくなっている状況である。
さらに換言するとこの場合には、窒化物基板厚みtsを規定する点Eの最遠側壁部第二領域132(真性閉じ込め光生成領域)は存在しないことになる。
このような場合においても、本発明においては、内部発光プロファイルが非等方的であって、発光強度密度の最大値を与える方向であるθem maxが67.5度≦θem max<90度が好ましい範囲であるから、内部発光密度の最大値を示す方向に近接した光が最遠側壁部に到達し、かつ、場合によっては光取り出しが容易に実現することが好ましい。
式1aは、本発明の半導体発光素子の周辺媒質として、
nout(λ)<<ns(λ)
である材料が一般的であることを考えると、実際には、45度<sin−1(nout(λ)/ns(λ))≦90度となる周辺媒質中に置かれた素子であっても、nout(λ)が小さくns(λ)が大きい場合を想定すると、最も広い範囲の好ましい窒化物基板の厚みtsを得ることができる。これは、GaN基板の屈折率が、460nm程度における2.43程度の値だとしても、周辺媒質の屈折率は2.20以下程度が現実的な限界であるためである。
よって、このような場合であっても、nout(λ)は真空あるいは実効的には空気を想定し、これを1とすることで求められる窒化物基板の厚みtsが最も広い範囲を与える。
よって、45度<sin−1(nout(λ)/ns(λ))≦90度の場合においても、本発明の半導体発光素子は、式1、あるいはGaN基板上の発光素子であれば式3を満たせば、側壁からの十分な光取り出しが可能である。また、好ましい基板の厚みを与える指標は(a)〜(h)の通りである。
〔式1aにおける付記事項 tsおよびtaについて〕
さて、今までの説明においてtsは、図6Bにおける考察からts+taを近似したものであった。すなわち、活性層構造16の端を窒化物基板12の端と近似した結果であった。
ここで、一般に点Cと点Aの間の主な構成要素となりうる第二導電型側半導体層の厚みは、他の半導体層部を構成する層全体の厚みよりも十分に薄いために、ts+taをts+tLとして近似することも可能である。すなわち、活性層構造の端を半導体層部の端と近似することも可能である。
この場合、式1と式3はtt=ts+tLとして、
Lsc×tan{sin−1(1/ns(λ))}≦tt
≦Lsc×tan{90−sin−1(1/ns(λ))}・・・(式5)
Lsc×0.418≦tt≦ Lsc×2.395・・・(式7)
である。
一方、これらのような近似をせずに、点Cを発光点として考察することも可能であるが、半導体層部の構造、特に量子井戸活性層構造を用いた場合の発光部の特定が必ずしも容易でないため、式1、3、5、7の近似式を満たすことが現実的な指針であって、好ましい。
〔内部発光プロファイルの最大値方向の光の最遠側壁部到達要件のみによる必要基板厚みの導出:側壁傾斜露出面を有する場合の好ましい範囲2〕
ここまでは、最遠側壁部における臨界角を基礎として考察することで、内部発光プロファイルの最大値方向の光と、その近傍の光も含んで、可能な限り、半導体側壁部から外部に取り出しうるような基板厚みとすることが、光取り出し効率向上に効果的であることを示した。また、基板が厚い場合においては、この状態の素子に側壁傾斜露出面(詳細後述)を付与することは、半導体発光素子の外部発光プロファイル制御の自由度が高いことからも、有利である。
一方、本発明においては、内部発光プロファイルの最大値方向の光のみの最遠側壁部到達要件のみによって、好ましい基板厚みを導出することも可能である。すなわち、本発明では、側壁傾斜露出面(詳細後述)において、意図的に内部反射を誘発し、出射方向を変化させることも可能であるので、必ずしも最遠側壁部における臨界角を考慮しなくとも良い。また、最も配光特性を変化させうるのは、θem max方向に出射する最大内部発光強度密度を示す方向に出射される内部発光であるので、この方向に出た光が垂直壁を仮定した際の最遠側壁部に到達可能な要件のみによって、基板厚みを導出することも、本発明における好ましい基板厚みの範囲を与える。
ここで、θem maxは、67.5度≦θem max<90度の範囲(同時に−90度<θem max≦−67.5度の範囲)で変化させうるが、量子井戸層厚み、量子井戸層数、第二導電型半導体層等々の各種構造を変化させた際に、θem maxのさらに好ましい範囲は、
70.0度≦θem max≦87.5度の範囲(同時に−87.5度≦θem max≦−70.0度の範囲)であった。
さらに好ましい範囲は、
72.5度≦θem max≦85.0度の範囲
(同時に−85.0度≦θem max≦−72.5度の範囲)であった。
さらに好ましい範囲は、
75.0度≦θem max≦82.5度の範囲
(同時に−82.5度≦θem max≦−75.0度の範囲)であった。
このような思想に基づく、本発明における好ましい基板厚みは、
Lsc×tan{90°−|90.0°|}<ts
≦Lsc×tan{90°−|67.5°|}(式9a)
であって、より好ましくは、
Lsc×tan{90°−|87.5°|}≦ts
≦Lsc×tan{90°−|70.0°|}(式9b)
であって、より好ましくは、
Lsc×tan{90°−|85.0°|}≦ts
≦Lsc×tan{90°−|72.5°|}(式9c)
であって、より好ましくは、
Lsc×tan{90°−|82.5°|}≦ts
≦Lsc×tan{90°−|75.0°|}(式9d)
である。
さらに、式9aは、
0≦ts≦Lsc×0.4142
であって、
式9bは
Lsc×0.0437≦ts≦Lsc×0.3634
であって、
式9cは
Lsc×0.0875≦ts≦Lsc×0.3153
であって、
式9dは
Lsc×0.1317≦ts≦Lsc×0.2679
である。
よって、本発明においては、上式を満たす基板厚みを有する半導体発光素子は好ましい。さらに、これまでに記載したとおり、本発明の半導体発光素子は、上記tsをttに置き換えた場合の関係を満たすことも好ましい。
〔本発明の基礎となる図6Aに示す素子の配光特性〕
次に本発明の基礎となる図6Aの半導体発光素子の配光特性に関して詳しく記載する。
本発明の半導体発光素子は、先に記したように、例えば図5C(a)(b)(c)の様に、非等方的な内部発光プロファイルを有することが好ましい。
すなわち、本発明の半導体発光素子の内部発光方向(θem)に対する発光強度密度分布は等方的ではない。その活性層構造に内在する量子井戸層部分に配置される双極子の方向が等方的なのであって、この結果、内部発光方向は非等方的になる。
また、過度な多重干渉等の効果によって、この最大の内部発光強度密度を示す方向と近接する方向に出射される光が抑制されることもないので、非等方的となる。
内部発光の最大値を有する方向(θem max)は、図7Aに示すように、活性層構造の平行方向に近い方向である。この内部発光の最大値を与える方向(θem max)は、半導体層部を構成する材料と各層の構造、電極材料とその構造によって変化する。
具体的には、半導体層部を構成する第一導電型半導体層、量子井戸活性層と障壁層を内在する活性層構造、第二導電型半導体層、コンタクト層、任意に導入しうる各種構造、第一導電型側電極の構成材料、第二導電型側電極の構成材料、その構造等によって変化する。
さらに、最も強くθem maxを変化させうるのは、活性層構造が量子井戸活性層構造である場合、量子井戸層と障壁層の屈折率差、量子井戸数、量子井戸層の厚み等の活性層構造内における薄膜干渉効果を支配する要素と、第二導電型側電極によって反射される内部発光の光路長を規定しうる第二導電型半導体層の薄膜干渉効果とである。
そこで、窒化物基板上の半導体層において、これら条件を変数として検討したところ、本発明者らは、θem maxにおいて、67.5度≦θem max<90度範囲で変化させうることを見出した。これは同時に−90度<θem max≦−67.5度である。この範囲が本発明の好ましい範囲である。
なお、図7Aに示すとおり、外部発光方向をφemとし、φemに関しても、内部発光方向と同様に、前記主面と垂直な方向であって光取り出し方向となる方向を0度とし、該主面と平行な一方向を90度、90度方向と対峙する方向を−90度とする。
図7Aに示すように、内部発光強度密度の最も強い方向に出射され半導体発光素子側壁部を透過した光が、スネルの法則に従って、外部発光強度密度の最も強い方向φem maxを規定することとなる。
外部発光においては、双極子方位が等方的な内部発光と異なり、半導体発光素子形状の異方性が存在することから、主面上における基準方向と発光方向の射影がなす角度である方位角に対しても依存性が生じるが、φemに対する依存性ほど顕著ではない。
しかし、本発明においては、半導体発光素子の形状の異方性は、例えば当該素子の投影形状が略五角形以上の図形である場合、その任意のひとつの頂点を含み、基板主面に垂直な面内で外部発光強度密度を測定するか、あるいは、頂点を含まずに基板主面に垂直な面内で外部発光強度密度を測定するかなどによって、その値は異なってくる。本発明においては、半導体発光素子の形状の異方性を反映する方位角に関しては、以下に示す特性が、少なくとも1つの方位角において基板主面に垂直な面内で確認が可能である。また、場合によっては、複数の方位角において観測が可能であることが好ましい。さらには、すべての方位角で観測が可能であることが最も好ましい。
本発明の基礎となる、図6Aに示されるような半導体発光素子の側壁部で、内部発光強度密度の最大値を有する方向に出射された光が透過する側壁部が、基板主面、あるいは、活性層方向と略垂直な場合(後述するβ(N)≒0度)には、実測しうる誤差、側壁面の荒れ、チッピング等によるゆらぎ、発光方向の方位各による誤差等を含んでも、
32.5度 ≦ φem max < 90.0度
であることを見出した。これは同時に
−90.0度 < φem max ≦ −32.5度
である。
よって、本発明の基礎となる、図6Aに示されるような半導体発光素子は、内部発光強度密度の高い方向に向かう光を半導体発光素子の側壁部から取り出し得るので、nout(λ)=1の媒質中に配置すると、上述のような範囲に外部発光強度密度の極大値を有する配光特性を呈するようになる。これは例えば、θem maxが80度の場合において、GaN基板の屈折率を表1から波長400nmの値を用いて、2.52とし、すると、スネルの法則から、φem maxが約64度となることに相当する。
よって、本発明の基礎となる、図6Aに示されるような半導体発光素子は、内部発光強度密度の最大値を示すθem maxを、67.5度≦θem max<90度の範囲で好ましく変化させうるので、本発明の好ましい外部発光強度密度の最大値の方向は、32.5度≦ φem max <90.0度である。また、これは同時に−90.0度<φem max≦−32.5度である。この範囲は本発明の好ましい範囲である。
換言すると、本発明の基礎となる、図6Aに示されるような半導体発光素子においては、基板側壁面を十分に通過しない構造である場合には、このような外部発光プロファイルを有する配光特性とはなり得ず、φem=0度近傍に最大値を有する特性となる。
〔1−4.平面形状(投影形状)と対称性について1〕
本発明の半導体発光素子の平面形状(投影形状)は、前述したように、特に限定されるものではなく、略m角形(一例として、3≦m≦18)であればよい。なお、「略m角形」とは、概ねm角形状を呈するが、各辺が厳密な直線でなく、いずれか1以上の辺の一部または全部に、細かな波形形状や凹凸の形状を、規則的にまたは不規則に有するものであってもよいとする趣旨である。いずれか1以上の辺の一部または全部に、細かな波形形状や凹凸の形状を、規則的にまたは不規則に有するm角形としては、例えば図15(a)、(b)に記載のものが挙げられる
本発明者らの検討によれば、平面形状(投影形状)と光取り出しの関係において、以下があきらかとなっている。投影形状が三角形の場合と、四角形(さらにはそれ以上の角数をもつ多角形)の場合とを比較すると、次のような理由から三角形の方が光取出しに有利である。すなわち、例えば長方形等の場合、内部発光光がその長方形に内接するひし形を描くように反射するパターンがあるのに対して、三角形の場合、そのような反射を繰り返すパターンは少なくなり、最終的に三角形のエッジ部分から光を取り出せる場合がより多くなる。特に、不等辺三角形の場合には、多重反射後、必ずエッジ部分から光を取り出すことができる(このようにエッジ部分から光が取り出される効果をエッジエミッション効果と記載することもある)。投影形状として鋭角を有している場合、内部発光光は辺と辺の多重反射を繰り返し、必ず鋭角部分に向かう。このため、鋭角を含んでいる投影形状は光取出しの点で有利であり、図形の中で鋭角が最も角の中で割合として大きくできる三角形は、本発明の半導体発光素子の投影形状として好ましい。
一方、本発明の半導体発光素子の平面形状として、一種類の多角形の図形(例えば六角形)を想定した際には、その図形の「対称性」と光取り出しに関しても重要な関係を見出している。本明細書で記載する、半導体発光素子の主面側からの投影形状に関する「対称性」とは、その図形の各辺の長さ、あるいは各頂点の角度が等しいかどうかによって定義されるものである。
本明細書においては、ある図形の各辺の長さが等しいほど「対称性が高い」と表現し、その逆を「対称性が低い」と表現する。
さらに、ある図形の各頂点の角度が等しいほど「対称性が高い」と表現し、その逆を「対称性が低い」と表現する。
具体的には、四角形の投影形状を有する半導体発光素子においては、投影形状が正方形の場合は各辺の長さが等しく、4つの頂点の角度も等しいので対称性が最も高い。一方、長方形は、2辺の長さのみが等しく、4つの頂点の角度が等しいので、正方形よりは対称性が低い。ある多角形の中で最も対称性が低いのは、不等辺多角形であって、かつ、各頂点の角度がすべて異なる場合である。
本発明者らは、ある1種類の多角形(例えば六角形)を想定した際に、大まかな傾向しては、このように定義した対称性が低い図形ほど、光取り出しに有利な傾向が見られることを見出している。この理由は、対称性の高い図形の場合には、その対称性に起因した平面的な滞在光が発光素子内部に容易に発生してしまうからである。一方、対称性の低い場合には、このような滞在光は発生しにくいためである。
なお、詳細には、内部発光プロファイルとそれぞれの図形の特性によって、必ずしも上記の大まかな傾向には合致しない例も見られるが、これらにおいても数学的に光取り出しの傾向を捉えることは可能である。
以下、対称性と光取り出しに関して、平行四辺形(ω=0の場合のみは正方形)の投影形状を求めた例を示す。平行四辺形は量産性も考慮しつつ、光取り出しを向上させるのに比較的適した形状であって、好ましい。基板主面の投影形状として図27の平行四辺形を想定し、基板厚み800μmの場合の光取り出し効率を、同図中の角度ωの関数として求めた。
光取り出し効率は、図28に示すように角度ωによって変化しうる。ここでは大まかな傾向として角度ωを大きくすることで光取り出し効率が向上することが分かる。しかし、一方で、角度ω=30度の場合には、局所的に光取り出し効率が低下することも分かる。これは、角度ω=30度の場合には、当該図形の内角が60度と120度となり、一方の角度が他方の倍の関係となる。このために、他の角度よりも実効的に対称性が高くなることと同じで、その対称性に起因した平面的な滞在光が発光素子内部に発生しやすくなると考えられる。このため、同じ平行四辺形の中でもω=30度の場合は、光取り出し効率のω角度依存性に対して下がる傾向となると考えられる。
このように、光取り出し効率は、本発明で定義した対称性とさらにそれぞれの個別の形状における各頂点の角度等によっても変化しうる。なお、平行四辺形の場合は、これらの考察からも明らかなように、図27に示した角度ω(度)が、15−25度程度の場合と、40−60度程度の場合が好ましい。
他方、半導体発光素子の投影形状に関しては、選択する図形、その対称性による光取り出し効率の向上とともに、製造容易性をも考慮して、投影形状を決めることも好ましい。
この観点では、三角形であれば直角三角形は好ましい。直角三角形は、平面充填性とスクライブ容易性が両立しており、よって、各素子に分割するのも不等辺三角形に比較して容易である。その上で、図形の対称性を考えても正三角形よりは低いために、光取り出し効率の向上も計れるために好ましい。
さらに、同様の観点から四角形であれば、長方形や平行四辺形は好ましい。これらの図形は、平面充填性とスクライブ容易性が両立しており、よって、各素子に分割するのも不等辺四角形に比較して容易である。その上で、図形の対称性を考えても正方形よりは低いために、光取り出し効率の向上も計れるために好ましい。
〔1−5.平面形状(投影形状)と対称性について2〕
以下、m角形形状に関して、それぞれの場合に分けてとその利点等について記載する。
(i)平面形状が略三角形の場合
この場合、前述したいわゆるエッジエミッションの効果から、効率よく内部発光光を取り出すことが可能であるので、好ましい。また、素子を製造する場合の容易さという観点からすると、略三角形の平面形状を形成するには略四角形の平面形状を形成する工程に1回のスクライブ工程を追加するだけで良いので、比較的簡単な工程で製造できる点で好ましい。
(ii)平面形状が略四角形の場合
この場合、平面形状が略四角形であるので、五角形以上の多角形構造よりも形状として平面充填性に優れており、窒化物基板に多数の半導体発光素子を作り込む際に有利である。また、三角形の平面形状を有するものよりも、スクライブライン等を形成する回数を減らすことができる。例えば、正方形の平面形状は直行する2方向からのスクライブで形成でき、製造が容易な点で好ましい。
(iii)平面形状が略六角形〜略18角形の場合
この場合、下記理由から、光取り出し効率を向上させることができる点で、好ましい。すなわち、平面形状が略m角形の場合、特にmが大きくなればなるほど、発光素子の平面形状内の中心近傍から発せられた光は、その側壁に到達する際に、垂直入射する割合が増える。例えば投影形状が略正六角形の場合と投影形状が略正十二を比較すると、発光素子の平面形状内の中心近傍から発せられた光が各側壁面に垂直入射する割合は、後者が前者の2倍である。側壁面においては臨界角によって光の脱出が可能かどうかが決まるが、垂直入射する割合が増えれば、光の内部からの脱出確率が上がる。このため、投影形状が略m角形の場合、mが大きくなるほど、高効率な発光素子を形成できるため、好ましい。
なお、半導体発光素子の投影形状は、任意のm角形を1つ選択した場合には、その中では、その対称性が低い形状の方が光取り出しに有利であって好ましい。例えば任意の図形として六角形を考えると、正六角形よりも、少なくとも1つの辺の長さが異なる六角形が、また、さらには、すべての辺の長さが異なる不等辺六角形が光取り出しに有利であって好ましい。例えば、図6Fと図6Gに示した、基板部分が光学的に平坦な面で囲まれた半導体発光素子は、それぞれ、基板主面に垂直方向から投影した形状が正六角形の場合と、当該正六角形を基本に、ひとつの頂角を図示されたように移動させ、図形の対称性を下げた場合である。検討の結果、正六角形の光取り出しに対して、ひとつの頂角を移動させ、図形の対称性を下げた六角形は、光取り出し効率が1.4倍となることを確認している。
〔1−6a.傾斜露出面について(一般的説明)〕
以下、傾斜露出面について、一般的な説明を行う。
本発明の半導体発光素子は、窒化物基板上に形成された発光素子の基板部分に、基板主面とのなす角度が0度でも90度でもない傾斜した露出面を有する。この傾斜露出面は、光の透過面、屈折面、反射面等々として機能させることが可能であって、配光特性を自在に制御し、素子から出射される光を実効的に必要とされる方向に振り分けることで、応用上の光利用効率を高めると同時に、光の取り出し効率をも向上させうる。本発明においては、半導体発光素子の側壁部、主面と対峙する面など、任意の部分を傾斜させうる。すなわち、窒化物基板の任意の部分を除去し、あるいは、任意の部分に所望の形状を付加し、新たな露出面を形成することができる。
〔傾斜露出面を有する本発明の半導体発光素子の態様〕
次に具体的な傾斜露出面の態様に関して説明する。
例えば、側壁部、主面と対峙する面などを傾斜させる様態は、図8A((a)を除く)〜図8Dに例示するとおり、種々の形状を考えうる。
まず、図8Aは、主面と対峙する面から加工して傾斜面を形成した例であり、基板を基板主面に垂直方向に投影した形状と、基板主面の形状が実質的に一致している。
図8Aの(a)は素子の基本的な構成を示しており、当該窒化物基板12の最遠側壁部、主面と対峙する面12aがそのままの形態で露出面となっており、当該窒化物基板の露出面は、主面と略平行な面、主面に対して略垂直な面によって構成されている。
(b−1)では、窒化物基板の最遠側壁部の一部と、主面と対峙する面の一部が加工され、傾斜した露出面12bとなっている。窒化物基板の露出面が、主面と略平行な面、主面に対して略垂直な方向の面、および、これから傾斜している面とを含むことを特徴とする構成である。
(c−1)では、窒化物基板の最遠側壁部の全部が加工され傾斜した露出面となっており、主面と対峙する面は一部が加工され傾斜した露出面となっている。窒化物基板の露出面が、主面と略平行な面、主面に対して略垂直な方向から傾斜している面12cのみを含むことを特徴とする構成である。
(d−1)は、窒化物基板の最遠側壁部も、主面と対峙する面も、その全部が加工され傾斜した露出面となっている。窒化物基板の露出面が、主面に対して略垂直な方向から傾斜している面12dのみであることを特徴とする構成である。
図8Bは、半導体層部側から加工を実施した形態であり、基板主面の大きさは、基板を基板主面に垂直方向に投影した形状より小さい。(b−2)は、窒化物基板の最遠側壁部の一部と、主面の一部が加工され、傾斜した露出面となっている。露出面が、主面と略平行な面、主面に対して略垂直な方向の面、これから傾斜している面(113a)を含むことを特徴とする構成である。
図8Bの(c−2)および(d−2)も上記同様、半導体層部側から加工を実施した形態である。
(c−2)は、窒化物基板の最遠側壁部の全部が加工され傾斜した露出面となっており、主面は一部が加工され傾斜した露出面となっている。露出面が、主面と略平行な面、主面に対して略垂直な方向から傾斜している面113bのみを含むことを特徴とする特徴とする構成である。
(d−2)は、主面側が、半導体層を極一部残したのみでそのほとんどが加工され、窒化物基板の最遠側壁部も傾斜した露出面となっている。この形態は、露出面が、主面と略平行な面、主面に対して略垂直な方向から傾斜している面113cのみであることを特徴とする構成である。
図8Cには、傾斜面が複数種類存在する例を挙げた。(b−3)、(c−3)、(d−3)は、それぞれ上記した(b−1)、(c−1)、(d−1)における主面に対して略垂直な方向から傾斜している面の角度が複数種類存在する例である。同様に、上記した(b−2)、(c−2)、(d−2)において、傾斜している面の角度を複数種類存在させることもできる。
図8Dに、主面または主面と対峙する面の一部を、外形を変更せずに加工した例を示す。これらの例では、主面の外形と、基板を主面に垂直方向に投影した形状の外形は一致するが、主面が加工された場合は、主面は基板を主面に垂直方向に投影した形状と略合同ではない。図8Dの(e−1)は、主面と対峙する面の一部が加工され、傾斜した露出面112aとなっている。露出面が、主面と略平行な面、主面に対して略垂直な方向の面、これから傾斜している面112aを含むことを特徴とする構成である。
図8Dの(e−2)は、主面の一部が加工され、傾斜した露出面となっている。露出面が、主面と略平行な面、主面に対して略垂直な方向の面、これから傾斜している面とを含むことを特徴とする構成である。図8Dの(e−3)は、(e−1)において、主面に対して略垂直な方向から傾斜している面の角度が複数種類存在する例である。
なお、これらの構成における、基板の厚みとは、いずれの場合も主面から垂直に伸ばした長さが最も厚くなる最大厚みであって、また、図8A〜図8Dに示した断面形状において、図8Aの(a)を除く形態は、主面の上にある任意の2点の作る最も長い線分長Lsc上にあっても、その上にはなく別の部分の断面形態となっていても良い。
上記形態の中で、図8A(a)以外の形態は、いずれの場合も傾斜角度β(N)を、内部発光強度の極大値、最大値を示す方向に傾斜させるなどして、光取り出し効率を向上させることができるため、好ましい。
また、単に光取り出し効率の向上のみではなく、半導体発光素子の外部発光強度密度、換言すると配光特性を制御することができるため、任意の傾斜角度β(N)を選択することも好ましい。さらに、基板主面と対峙する面、基板主面と対峙する面に形成された加工露出面、基板主面と垂直な面など、半導体発光素子の外縁を構成するあらゆる面の光取り出しのための臨界角を総合的に考慮し、光取り出し効率の向上を目指すことも好ましい。
なお、本発明においては、主面に対して略垂直な方向から傾斜している面は、その効果を発現させるためには、基板の露出面全体の中で
10%以上そのような傾斜面とすることが好ましく、
20%以上そのような傾斜面とすることがより好ましく、
40%以上そのような傾斜面とすることがさらに好ましく、
60%以上そのような傾斜面とすることがさらに好ましい。
さらに本発明においては、半導体発光素子の側壁部を構成する部分は、対称性が低い形状となっていることが好ましい。
例えば、上記のうち(b−3)、(c−3)、(d−3)、(e−3)などの断面形状は、(b−1)、(c−1)、(d−1)、(e−1)などの場合と異なり、その断面形状にたとえば線対称軸が存在しない。このため、図形としての対称性が低い。このような場合、例えば、半導体発光素子内部で真性閉じ込め光となってしまう全反射をある特定の面で受けた光でも、対称性の低さから、脱出することのできる確率が高くなるため、好ましい。
さらに、図8Bの(b−2)、(c−2)、(d−2)、および、図8Dの(e−2)のように、半導体層部から加工を実施した形態、すなわちβ<0となっている形態(基板の主面側が、主面に対峙する面側より狭い形態)では、光取り出し効率がよい。
なお、ここでは半導体層部は加工され傾斜した露出面となっていない例を多く例示したが、例えば図8Aの(c−1)、(d−1)や、図8Bの(c−2)、(d−2)や、図8Cの(c−3)、(d−3)のように窒化物基板の側壁部が加工され傾斜露出面となっている場合に、半導体層も同様の角度で傾斜した露出面をその端部に有することは、素子作製上簡便であって、好ましい。
〔傾斜露出面の傾斜角定義〕
本発明においては、半導体発光素子に形成しうる傾斜露出面の傾斜角度β(度)は、以下のように定義する。
すなわち、半導体発光素子に内在する基板の主面(有限な面)に対して垂直で、十分に広い任意面を仮定し、この主面と前記任意面が交わる線分上における2つの両端交点において、いずれの両端交点においても、窒化物基板内側に傾斜する角度方向を+、窒化物基板外側に傾斜する角度方向を−と定義し、かつ、前記主面と前記任意面とが交わる線分端の近接側交点において、前記任意面内で前記窒化物基板の傾斜露出面と交わる線分と平行な直線が、前記主面と前記任意面とが交わる線分の2つの両端交点に立てた基板主面に対する垂線と成す角度を傾斜角度βと定義する。なお、前記任意の面内における傾斜角度の個数が複数個ある場合には、β(N)(但し、Nは1からMの自然数であり、Mは前記任意の面内における傾斜角度の個数)と表現する場合もある。
上記定義について、図18Aに例示される素子断面を参照して説明を補足すると、素子の主面とそれに対して垂直な上記任意面が交わる「線分」とは、符号221aで示される線分がこれに相当する。その線分上における「2つの両端交点」とは、符号221a-1、221a-2で示される点がこれに相当する。また、「前記任意面内で前記窒化物基板の傾斜露出面と交わる線分と平行な直線が、前記主面と前記任意面とが交わる線分の2つの両端交点に立てた基板主面に対する垂線と成す角度(β)」とは、例えば、傾斜露出面221bの場合には角度β(1)のことをいい、傾斜露出面221cの場合には角度β(2)のことをいい、傾斜露出面221dの場合には角度β(4)のことをいい、傾斜露出面221eの場合には角度β(3)のことをいう。
なお、図18Bは側壁部の垂直壁からの傾斜を例に、傾斜角のプラス/マイナス方向を示した図であって、窒化物基板の内側に傾斜する角度方向が+、窒化物基板の外側に傾斜する角度方向が−である。
〔側壁傾斜露出面による光取り出し制御と外部発光プロファイル(配光特性)制御の概要〕 ここで、本発明の一態様である側壁傾斜露出面を有する半導体発光素子を例にして、傾斜露出面の効果による光取り出し制御と配光特性制御に関して説明する。
半導体発光素子の側壁部分の露出面形成は、素子分離工程を兼ねることができるなど、比較的傾斜加工を導入しやすい。ここで、図1のように傾斜露出面を側壁部分に形成した構成では、内部発光強度密度の最大値近傍に向かう多くの内部発光光を、基板主面に垂直な垂直露出面に入射させるのではなく、傾斜露出面へ入射させることができる。
この結果、内部発光の側壁における入射角度が変化し、内部発光を直接透過させるにしても、出射角度が変化する。これは、外部発光プロファイルを制御したことになり、この際には側壁からの光取り出しに直接寄与させたことにもなる。
さらにこれらの外部発光プロファイルや光取出し効果は、例えば側壁に作り込まれた傾斜露出面の角度、位置、その面積、面の光学的な状態などを調整することで、所望の状態を実現できる。
さらには、逆に、内部発光強度密度の最大値近傍に向かう多くの内部発光光を、側壁に作りこまれた傾斜露出面において、素子内に完全全反射させて外部発光プロファイルを制御したりすることが可能である。
この際に、図1のようなフリップチップ型の素子形状において、窒化物基板側を主として光取り出し側とすべく、側壁からではなく、基板裏面直上方向の外部発光強度密度を引き上げることも、側壁に作り込まれた傾斜露出面の角度、位置、その面積、面の光学的な状態などを調整することで、実現可能である。このような方法は、いずれも本発明においては、非常に好ましい。
すなわち、半導体発光素子の配光特性を制御したり、場合によっては同時に光取り出し効率を向上させるためには、内部的に高密度に出射されている方向の光を主たる対象とし、これらを、発光素子の傾斜露出面を利用して制御することが、本質的でかつ有効な方法である。これは、従来開示されている等方的な内部発光プロファイルからは到達し得ない結論である。
なお、本発明に好適に利用される窒化物基板であるGaN基板等の光学的な消衰係数や実効的な半導体発光素子の大きさ等から内部発光光の減衰等を考慮すると、θem max方向に半導体発光素子の内部で発せられた光は、最大でも3回の内部反射後(すなわち4回目の露出面到達時には)には半導体発光素内部で傾斜露出面に到達していることが好ましい。
また、半導体発光素子の内部で発せられた光の損失低減との観点では、この内部反射の回数は少ないことが好ましい。具体的には、θem max方向に半導体発光素子の内部で発せられた光は、
2回の内部反射後(すなわち3回目の露出面到達時には)には半導体発光素内部で傾斜露出面に到達していることが好ましく、
1回の内部反射後(すなわち2回目の露出面到達時には)には半導体発光素内部で傾斜露出面に到達していることが好ましく、
内部反射なしに(すなわち1回目の露出面到達時に)半導体発光素内部で傾斜露出面に到達していることが好ましい。
活性層構造が量子井戸構造を有し、量子井戸層と障壁層の屈折率差が適切な範囲で小さい場合、活性層構造から内部的に出射された光は67.5度≦θem max<90度であるため、図1に示された半導体発光素子において、たとえば基板が十分に厚ければ、これらの光は、傾斜した側壁すなわち図中の傾斜露出面に到達しうる。
また、活性層構造と他の半導体層部を構成する半導体層界面における屈折率差が適切な範囲で小さい場合、さらには、半導体層部と窒化物基板の界面における屈折率差も適切な範囲で小さい場合も同様で、たとえば基板が十分に厚ければ、θem max方向に出射された光は傾斜した側壁すなわち図中の傾斜露出面に到達しうる。よって、活性層構造から内部的に出射された光を制御する意味では、傾斜露出面を半導体発光素子の側壁内に含有させることが好ましい。
ここで、傾斜角度と、光取り出し、配光特性に関して定量的に概要を考察する。
図6A、図6B、図6C、図7Aにおいて、最遠側壁部が基板主面21に対して角度+β度だけ傾斜しているとして、この状況を図7Bに示す。また、この状況は図8A(c−1)とも同様である。この場合を例に、傾斜角度と、光取り出し、配光特性に関して概観する。
第一に光取り出しに関して考察すると、内部発光強度密度の最大値を有する方向(θem max)が例えば78度の場合においては、最遠側壁部が図7Bのように側壁に露出した側壁露出面の傾斜角βが
β=90−|θem max|
を満たすように傾斜していると、内部発光強度密度の最大値を有する方向の光が効果的に取り出せるため、好ましい。
本発明の一形態では、67.5度≦θem max<90度(−90度<θem max≦−67.5度)であるので、
0度≦β≦22.5度
であることがより好ましく、θem=78度の場合にはβ=12度であることがより好ましい。
第二に配光特性に関して考察すると、半導体発光素子の側壁部で、内部発光強度密度の最大値を有する方向に出射された光が透過する側壁部が、β度傾斜している場合で、これが大きな傾斜で全反射する場合を除き、外部発光強度密度の最大値を示す方向φem maxは、
90−|θem max|<β
の場合において、
(sin(β−(90−|θem max|))/nout(λ))=
(sin(|φem max|−(90−β))/ns(λ))
を満たす方向となる。
さらに、
β<90−|θem max|
の場合においては、
(sin(β+(90−|θem max|))/nout(λ))=
(sin(−|φem max|+(90−β))/ns(λ))
を満たす方向となり、
90−|θem max|=β
の場合は、
|φem max|=90−β
を満たす方向となる。
例えば、これはθem maxが82度でβが20度の場合において、波長400nmにおけるGaN基板の屈折率を、表1から波長400nmの値を用いて2.52とし、周辺媒質の屈折率nout(λ)=1とすると、φem maxが、約101.6度となることに相当する。
また、θem maxが82度でβが5度の場合において、波長400nmにおけるGaN基板の屈折率を表1から波長400nmの値を用いて、2.52とし、周辺媒質の屈折率nout(λ)=1とすると、φem maxが約77.4度となることに相当する。さらに、θem maxが82度でβが8度の場合においては、φem maxが82度となることに相当する。
なお、傾斜が大きい場合には、全反射をし、その結果他の面から出射するようにすることも好ましい。
〔側壁以外の傾斜露出面に関わる概要〕
一方、図2に例示するように、活性層構造が量子井戸構造を有し、量子井戸層と障壁層の屈折率差が適切な範囲で小さい場合、活性層構造から内部的に出射された光は67.5度≦θem max<90度であるため、図2に示された半導体発光素子において、たとえば基板が適度に薄くなれば、これらの光は、基板中央部の傾斜露出面に到達しうる。すなわち、本発明においては、図2のような基板厚みの比較的薄い構成においても、傾斜露出面を導入することによる配光特性制御効果を得ることが可能である。
また、活性層構造16と他の半導体層部を構成する半導体層界面における屈折率差が適切な範囲で小さい場合、さらには、半導体層部と窒化物基板の界面における屈折率差も適切な範囲で小さい場合も同様で、たとえば基板が適度に薄ければ、θem max方向に出射された光は基板中央部の傾斜露出面に到達しうる。よって、活性層構造16から内部的に出射された光を制御する意味では、傾斜露出面を半導体発光素子の基板内に含有させることも好ましい。
すなわち、本発明においては、活性層構造16から内部的に出射された光が67.5度≦θem max<90度であることを考慮にいれて、適宜基板厚み、薄膜結晶層の構成、傾斜露出面の大きさ、導入位置、傾斜面の数、傾斜面の角度、傾斜面の光学的な面の特性等々を、所望の配光特性に合わせて適宜調整が可能である。
〔1−7.側壁傾斜露出面に関わる詳細:光取り出し機構の例示〕
以下、本発明に係る半導体発光素子に形成しうる側壁傾斜露出面に関して、その傾斜角と内部反射、透過等の詳細検討を通じた光取り出し機構に関して説明する。なお、以下の説明においては、図18A、Bに示したように、素子の側壁面上部側が内側へと傾く傾斜方向を+(プラス)とし、外側へと傾く傾斜方向を−(マイナス)とする。さらに内部発光方向(θem)は、図7Aに従って記載する。
また、以下の結果は、窒化物基板をGaNとし、その屈折率を2.55、また半導体発光素子の設置される周辺環境が空気、その屈折率を1.00として検討を行った結果を示している。さらに、内部発光の放射方向(θem)範囲に関しては、例えば0度〜23度と記載する場合がある。これは、基本的には0度以上23度未満との意味で使用するが、同時に、当該上下限値は1−2度程度の丸め誤差を含んでいるものである。例えば、23度との値は屈折率2.55の素子内部から発せられる光が、屈折率1.00の周辺環境に出射される場合に、スネルの法則からその臨界角sin−1(1.00/2.55)を計算した結果であって、23.08877243.....との意味である。よって、以下ではこれらの数字を丸めて23度と表記している。この意味において当該上下限値は1−2度程度の丸め誤差を含んでいるものである。なお、素子上面(半導体発光素子内に内在する基板の主面と対峙している面)、側面(傾斜している面)、電極面(半導体発光素子内の図中下に図示)等の表現は、図19から図23に合わせて使用している。
(第1の側壁傾斜面傾斜角例)
図19は、各側壁面がマイナス方向に傾斜した半導体発光素子構成の一例を示す断面図である。この例では傾斜角は−40度である。
このような構成において、内部発光の放射方向(θem)別に内部発光の挙動を詳細に検討すると、θemに関わらずに内部発光は最終的に外部にすべて取り出しうる事が分かる。すなわち、このような構成の側壁傾斜面を有する半導体発光素子は非常に好ましい。詳細は、以下の通りである。
第一に、放射方向(θem)が0度〜23度である内部発光の場合、内部発光光は素子上面から取り出すことができる。
第二に放射方向(θem)が23度〜27度である内部発光の場合、内部発光光は素子上面で全反射され、次いで側壁面、対向する側壁面の順で全反射され、最終的に、素子上面から取り出すことができる。
第三に放射方向(θem)が27度〜40度の内部発光の場合、内部発光光は素子上面で全反射され、次いで側壁面から取り出すことができる。
第四Aとして放射方向(θem)が40度〜56度の内部発光の場合であって最初に素子上面に当たるときには、内部発光光は素子上面で全反射され、最終的に側壁面から取り出すことができる。
第四Bとして放射方向(θem)が40度〜56度の内部発光の場合であって最初に側壁面に当たるときには、内部発光光は側壁面、素子上面の順で全反射され、最終的に対抗する側壁面から取り出すことができる。
第五Aとして放射方向(θem)が56度〜73度の内部発光の場合であって最初に素子上面に当たるときには、内部発光光は素子上面で全反射され、最終的に側壁面から取り出すことができる。
第五Bとして放射方向(θem)が56度〜73度の内部発光の場合であって最初に側壁面に当たるときには、内部発光光は側壁面で全反射され、最終的に素子上面から取り出すことができる。
第六Aとして放射方向(θem)が73度〜90度の内部発光の場合であって最初に上面に当たるときには、内部発光光は素子上面で全反射され、複数回の側壁上面間の全反射の後に、最終的に上面か側壁面かから取り出すことができる。
第六Bとして放射方向(θem)が73度〜90度の内部発光の場合であって最初に側壁面に当たるときには、内部発光光は側壁面で全反射され、最終的に素子上面から取り出すことができる。
上記の通り、図19の構成の場合、初期的な内部発光の放射方向(θem)がどの方向への出射かは別にして、光の取り出しは、内部発光角の全域(0度〜90度)にわたって可能となる。これを図24Aには、全域「範囲1(光取り出し領域)」として図示した。
(第2の側壁傾斜面傾斜角例)
図20は、側壁面がマイナス方向に傾斜した半導体発光素子の構成の一例を示す断面図であり、この例では傾斜角が−15度である。
このような構成において、内部発光の放射方向(θem)別に内部発光の挙動を詳細に検討すると、θemの中で、絶対に光取り出しができない領域は消滅する事が分かる。すなわち、このような構成の側壁傾斜面を有する半導体発光素子は非常に好ましい。詳細は、以下の通りである。
第一Aとして放射方向(θem)が0度〜23度の内部発光の場合であって最初に素子上面に当たるときには、内部発光光は上面から取り出すことができる。
第一Bとして放射方向(θem)が0度〜23度の内部発光の場合であって、低確率ではあるが、最初に側壁面に当たるときには、内部発光光は側壁面で全反射され、最終的には素子上面から取り出すことができる。
第二Aとして放射方向(θem)が23度〜53度の内部発光の場合であって最初に素子上面に当たるときには、内部発光光は素子上面で全反射され、直接または側壁面で反射され電極面に向かう光となる。このため、電極部分等で吸収される成分となる。
しかし、第二Bとして放射方向(θem)が23度〜53度の内部発光の場合であっても、最初に側壁面に当たるときには、内部発光光は側壁面で全反射され、最終的に素子上面から取り出すことができる。
第三Aとして放射方向(θem)が53度〜81度の内部発光の場合であって最初に素子上面に当たるときには、内部発光光は素子上面で全反射され、最終的に側壁面から取り出すことができる。
しかし、第三Bとして放射方向(θem)が53度〜81度の内部発光の場合であっても、最初に側壁面に当たるときには、内部発光光は側壁面、素子上面、側壁面と全反射を繰り返し、最終的には電極面に向かう光となる。このため、電極部分等で吸収される成分となる。
第四に、放射方向(θem)が81度〜90度の内部発光の場合は、内部発光光は側壁面から取り出すことができる。
上記の通り、図20の構成の場合、初期的な内部発光の放射方向(θem)がどの方向への出射かは別にして、θemの中で、絶対に光取り出しができない領域は消滅する事が分かる。この状況を図24Bには、0度〜23度の部分を「範囲1(光取り出し領域)」、23度〜81度の部分を「範囲2(場合によって光取り出し可能な領域)」、81度〜90度の部分を「範囲1(光取り出し領域)」として図示した。
(第3の側壁傾斜面傾斜角例(参考例))
図21は、側壁面が垂直な半導体発光素子の構成の一例を示す断面図(参考例)である。このような構成において、内部発光の放射方向(θem)別に内部発光の挙動を詳細に検討すると、θemの中で、絶対に光取り出しができない領域が、広く存在することが分かる。詳細は、以下の通りである。
第一に、放射方向(θem)が0度〜23度である内部発光の場合、内部発光光は素子上面から取り出すことができる。
第二に放射方向(θem)が23度〜67度である内部発光の場合、内部発光光は素子上面、あるいはさらに側壁面で全反射され、電極面に向かう光となる。このため、電極部分等で吸収される成分となる。
第三に放射方向(θem)が67度〜90度の内部発光の場合、内部発光光は側壁面から取り出すことができる。
上記の通り、図21の構成の場合、初期的な内部発光の放射方向(θem)がどの方向への出射かは別にして、θemの中で、絶対に光取り出しができない領域が広く存在する事が分かる。この状況を図24Cには、0度〜23度の部分を「範囲1(光取り出し領域)」、23度〜67度の部分を「範囲3(光取り出し不可能領域)」、67度〜90度の部分を「範囲1(光取り出し領域)」として図示した。
(第4の側壁傾斜面傾斜角例)
図22は、側壁面がプラス方向に傾斜した半導体発光素子の構成の一例を示す断面図であり、この例では傾斜角は+15度である。このような構成において、内部発光の放射方向(θem)別に内部発光の挙動を詳細に検討すると、θemの中で、絶対に光取り出しができない領域を低減させ得る事が分かる。すなわち、このような構成の側壁傾斜面を有する半導体発光素子は非常に好ましい。詳細は、以下の通りである。
第一Aとして放射方向(θem)が0度〜23度の内部発光の場合であって、最初に素子上面に当たるときには、内部発光光は素子上面から取り出すことができる。
しかし、第一Bとして放射方向(θem)が0度〜23度の内部発光の場合であって、最初に側壁面に当たるときには、内部発光光は側壁面、対抗する側壁と全反射され、最終的には電極面に向かう光となる。このため、電極部分等で吸収される成分となる。
第二Aとして放射方向(θem)が23度〜51度の内部発光の場合であって最初に素子上面に当たるときには、内部発光光は素子上面で全反射され、電極面に向かう光となる。このため、電極部分等で吸収される成分となる。
さらに、第二Bとして放射方向(θem)が23度〜51度の内部発光の場合であって、最初に側壁面に当たるときには、内部発光光は側壁面、対抗する側壁と全反射され、最終的には電極面に向かう光となる。このため、この場合も電極部分等で吸収される成分となる。
第三Aとして放射方向(θem)が51度〜81度の内部発光の場合であって最初に素子上面に当たるときには、内部発光光は素子上面で全反射され、直接、あるいはさらに側壁面で全反射し、最終的には電極面に向かう光となる。このため、電極部分等で吸収される成分となる。
しかし、第三Bとして放射方向(θem)が51度〜81度の内部発光の場合であっても、最初に側壁面に当たるときには、内部発光光は側壁面から取り出すことができる。
第四Aとして放射方向(θem)が81度〜90度の内部発光の場合であって、最初に素子上面に当たるときには、内部発光光は素子上面で全反射をして、側壁面から取り出すことができる。
さらに、第四Bとして放射方向(θem)が81度〜90度の内部発光の場合であって、最初に側壁面に当たるときには、内部発光光は側壁面から取り出すことができる。
上記の通り、図22の構成の場合、初期的な内部発光の放射方向(θem)がどの方向への出射かは別にして、θemの中で、図21の参考例と比較すると、絶対に光取り出しができない領域が狭くなる事が分かる。この状況を図24Dには、0度〜23度の部分を「範囲2(場合によって光取り出し可能な領域)」、24度〜51度の部分を「範囲3(光取り出し不可能領域)」、52度〜81度の部分を「範囲2(場合によって光取り出し可能な領域)」、81度〜90度の部分を「範囲1(光取り出し領域)」として図示した。
(第5の側壁傾斜面傾斜角例)
図23は、側壁面がプラス方向に傾斜した半導体発光素子の構成の一例を示す断面図であり、この例では傾斜角が+40度である。このような構成において、内部発光の放射方向(θem)別に内部発光の挙動を詳細に検討すると、θemの中で、絶対に光取り出しができない領域を低減させ得る事が分かる。すなわち、このような構成の側壁傾斜面を有する半導体発光素子は非常に好ましい。詳細は、以下の通りである。
第一Aとして放射方向(θem)が0度〜23度の内部発光の場合であって、最初に素子上面に当たるときには、内部発光光は素子上面から取り出すことができる。
しかし、第一Bとして放射方向(θem)が0度〜23度の内部発光の場合であって、最初に側壁面に当たるときには、内部発光光は側壁面、対抗する側壁と全反射され、最終的には電極面に向かう光となる。このため、電極部分等で吸収される成分となる。
第二Aとして放射方向(θem)が23度〜27度の内部発光の場合であって最初に素子上面に当たるときには、内部発光光は素子上面で全反射され、電極面に向かう光となる。このため、電極部分等で吸収される成分となる。
さらに、第二Bとして放射方向(θem)が23度〜27度の内部発光の場合であって、最初に側壁面に当たるときには、内部発光光は側壁面、対抗する側壁と全反射され、最終的には電極面に向かう光となる。このため、この場合も電極部分等で吸収される成分となる。
第三Aとして放射方向(θem)が27度〜40度の内部発光の場合であって、最初に素子上面に当たるときには、内部発光光は素子上面で全反射され、最終的に電極面に向かう光となる。このため、電極部分等で吸収される成分となる。
しかし、第三Bとして放射方向(θem)が27度〜40度の内部発光の場合であって、最初に側壁面に当たるときには、内部発光は側壁面から取り出すことができる。
第四Aとして放射方向(θem)が40度〜73度の内部発光の場合であって最初に素子上面に当たるときには、内部発光光は素子上面、側壁面と全反射され、最終的には電極面に向かう光となる。このため、電極部分等で吸収される成分となる。
しかし、第四Bとして放射方向(θem)が40度〜73度の内部発光の場合であっても、最初に側壁面に当たるときには、内部発光光は側壁面から取り出すことができる。
第五に放射方向(θem)が73度〜90度の内部発光の場合、内部発光光は側壁面で全反射され、最終的には電極面に向かう光となる。このため、電極部分等で吸収される成分となる。
上記の通り、図23の構成の場合、初期的な内部発光の放射方向(θem)がどの方向への出射かは別にして、θemの中で、図21の参考例と比較すると、絶対に光取り出しができない領域が狭くなる事が分かる。この状況を図24Eには、0度〜23度の部分を「範囲2(場合によって光取り出し可能な領域)」、24度〜27度の部分を「範囲3(光取り出し不可能領域)」、27度〜73度の部分を「範囲2(場合によって光取り出し可能な領域)」、73度〜90度の部分を「範囲3(光取り出し不可能領域)」として図示した。
ここまで見てきた図24Aから図24Eに示されるように、本発明の半導体発光素子は、側壁部分に傾斜露出面を導入することで、初期的な内部発光の放射方向(θem)に対して「範囲1(光取り出し領域)」あるいは「範囲2(場合によって光取り出し可能な領域)」を増加させ、「範囲3(光取り出し不可能領域)」を縮小させうる事が分かる。よって、側壁に導入する側壁傾斜露出面の場合に加えて、任意に設定可能な大きさ、導入位置、傾斜面の数、傾斜面の角度、傾斜面の光学的な面の特性等々を、所望の状態とすることで、内部発光の放射方向(θem)に対して「範囲1(光取り出し領域)」あるいは「範囲2(場合によって光取り出し可能な領域)」を増加させ、「範囲3(光取り出し不可能領域)」を縮小させることは好ましい。さらに、側壁における傾斜露出面の傾斜角度βを−40度とした場合のように全域「範囲1(光取り出し領域)」とする事はより好ましい。
〔側壁傾斜露出面に関わる詳細:配光特性の例示〕
次に、本発明に係る半導体発光素子に形成しうる側壁傾斜露出面に関して、その傾斜角と内部反射、透過等の詳細検討を通じた外部発光プロファイル(配光特性)に関して説明する。なお、以下の説明においては、図18A、Bに示したように、素子の側壁面上部側が内側へと傾く傾斜方向を+(プラス)とし、外側へと傾く傾斜方向を−(マイナス)とする。さらに外部発光方向(φem)は、図7Aに従って記載する。
図25A〜図25Gは傾斜露出面の傾斜角を変化させたときの配光変化を示す図である。図25Aは、傾斜角が−85度〜−65度の範囲での変化を示し、
図25Bは、傾斜角が−60度〜−40度の範囲での変化を示し、
図25Cは、傾斜角が−35度〜−15度の範囲での変化を示し、
図25Dは、傾斜角が−10度〜+10度の範囲での変化を示し、
図25Eは、傾斜角が+15度〜+35度の範囲での変化を示し、
図25Fは、傾斜角が+40度〜+60度の範囲での変化を示し、
図25Gは、傾斜角が+65度〜+85度の範囲での変化を示す。
図25A〜図25Gでは、縦軸は放射光度を示し、横軸は図7Aに示した配向角(φem)(度)を示す。図中に描かれているとおり、配光角は、基板主面に対して垂直方向な上向き方向が0度であり、基板主面に平行な方向が90度であり、基板主面に垂直な下向き方向が180度である。
これらグラフに示されるように、側壁傾斜露出面の傾斜角度を変化させると、半導体発光素子の配光特性を、効果的に変化させることができる。よって、一般に、傾斜露出面は、光の透過面、屈折面、反射面等々として機能させることが可能であって、配光特性を自在に制御し、素子から出射される光を実効的に必要とされる方向に振り分けることで応用上の光利用効率を高められることが分かる。また、前述の通り、光取り出し効率も向上させうることが分かる。
〔側壁傾斜露出面に関わる詳細:側壁傾斜露出面における好ましい傾斜角〕
ここまで〔1−7.側壁傾斜露出面に関わる詳細:光取り出し機構の例示〕と〔側壁傾斜露出面に関わる詳細:配光特性の例示〕で見てきた様に、例えば傾斜露出面を側壁部全体に導入した場合において、光取り出し効率の向上と配光特性制御に関し詳細に検討をした。図26Aはこれら全体をまとめた図である。すなわち図26Aは、GaN基板上の半導体発光素子内の内部発光強度総量を1Wとし、傾斜露出面を側壁部全体に導入した際の全放射束を傾斜角度の関数として求めた結果である。ここで、図中「上方」とは、半導体発光素子を設置した全空間を、活性層に平行な方向で上方の半球空間(図7Aで0°以上から90°以下)と下方の半球空間(図7Aで90°より大から180°以下)に分割した場合に、前者の中に放射される部分放射束分を上方としている。一方、「下方」とは、下方の半球空間(図7Aで90°より大から180°以下)に放射される部分放射束分に相当する。
傾斜露出面を側壁部全体へ導入する場合に関しても、窒化物基板厚みts(あるいはts+ta)は任意とすることが可能である。しかし、本発明においては、基板主面上にある任意の2点の作る最も長い線分長Lscとの関係で、窒化物基板厚みts(あるいはts+ta)は、内部発光プロファイルの最大値方向の光の最遠側壁部到達要件を考慮した厚みとすることが好ましく、内部発光プロファイルの最大値方向の光の最遠側壁部到達要件と最遠側壁部における臨界角条件を共に考慮した厚みとすることがさらに好ましい。
具体的には、前者は、〔内部発光プロファイルの最大値方向の光の最遠側壁部到達要件のみによる必要基板厚みの導出:側壁傾斜露出面を有する場合の好ましい範囲2〕に記載した厚みとする事が好ましく、後者は、〔最遠側壁部における臨界角による必要基板厚みの導出:側壁傾斜露出面を有する場合の好ましい範囲1〕に記載した(式1a)、(式1)、(式3)、〔式1aにおける付記事項 tsおよびtaについて〕に記載した、(式5)、(式7)などを満たすことがより好ましい。
図26Aは、基板主面上にある任意の2点の作る最も長い線分長Lscを1.8mm、窒化物基板厚みtsを800μmとした場合を例示したもので、式1a、式1、式3等を満たしている場合である。
ここで、当グラフより、以下のように側壁傾斜露出面の好ましい傾斜角度が分かる。
第一に、
−90度<傾斜角β≦−65度、または
+ 5度≦傾斜角β≦+30度
の場合、側壁傾斜を導入しない図中傾斜角度0度の素子と比較して、前者は全放射束がほぼ最大値となり、また、後者の場合は全放射束が極大近傍となるため好ましい。また、それぞれの範囲において、図25AからGを参考にして、適宜配光特性の観点から最適な傾斜角度を選択することも好ましい。
第二に
、 −70度<傾斜角β≦−60度、
−50度<傾斜角β<−30度、
0度<傾斜角β≦+20度、または
+55度<傾斜角β<+70度
の場合、側壁傾斜を導入しない図中傾斜角度0度の素子と比較して、それそれの角度は「素子上方」に出射される部分放射束がほぼ極大値となるため好ましい。また、それぞれの範囲において、図25AからGを参考にして、適宜配光特性の観点から最適な傾斜角度を選択することも好ましい。
第三に、
−75度<傾斜角β<−65度、または、
−60度<傾斜角β<−40度
の場合、側壁傾斜を導入しない図中傾斜角度0度の素子と比較して、それそれの角度は「素子下方」に出射される部分放射束がほぼ極大値となるため好ましい。また、それぞれの範囲において、図25AからGを参考にして、適宜配光特性の観点から最適な傾斜角度を選択することも好ましい。
図26Bは、素子下方にも放射があることが好ましい場合の一例であって、本発明の一例の半導体発光素子を搭載した半導体発光装置の構成を模式的に示す図である。例えば図19、図20に示したような本発明に係る半導体発光素子を用いることで、積極的に基板主面に対して垂直上方だけでなく下方にも光を照射できる半導体発光装置を構成しうる。このような半導体発光装置は、指向性が高い従来の半導体発光素子を搭載した装置と比べて、下方側にも光を照射できることから、一般照明、装飾用照明等に、より適したものとなる。
以上、傾斜露出面を種々の角度に形成することや(例えば図19等参照)、素子の平面形状として種々のm角形を選択しうること、さらには、素子の平面形状を非対称形状とすることについて述べた(例えば図6Aや、図6F、図6G等を参照)。本発明においては、当然ながらこれらを適宜組み合わせることが可能である。
図26Cは、本発明の半導体発光素子の好ましい一例を示す斜視図である。この素子においては、基板の形状がいわゆるフレア型に形成されており、具体的には、基板主面21およびそれに対峙する基板面12aの形状がいずれも不等辺三角形(全ての角が鋭角)に形成され、かつ、3つの側壁面がいずれもマイナス方向(逆テーパ状となる方向)に傾斜している。
図中、符号Aで示すように、3つの角部はいずれも立体的に鋭角となっている。このような構成は、内部発光光が、多重反射の後、素子の角部Aから取り出されることとなるため、効率的な光取出しが実現されるため、非常に好ましい。
〔1−8.本発明の素子のチップの平面サイズ〕
次に、本発明の一形態の半導体発光素子の平面サイズについて説明する。本発明者らは、例えば図1や図2の構造の半導体発光素子10を簡便に作製する方法の基礎とすべく、図6Aの構造の半導体発光素子10を簡便に作製する方法に関し検討を行った。
本発明の一形態の半導体発光素子は、その平面形状が略m角形(3≦m≦18)であって、最短辺の長さLsaが250(μm)以上であることが好ましい。
特には、基板主面の平面形状が略三角形であり、最短辺の長さLsaおよび前記Lscが下記式を満たすことが好ましい。
250(μm)≦Lsa≦Lsc≦5000(μm)
基板主面の平面形状が略四角形の場合、下記式を満たすことが好ましい。
550(μm)≦Lsa≦Lsb≦1550(μm)
(但し、
Lsaは、前記略四角形の主面の最短辺の長さを表し、
Lsbは、前記略四角形の主面の最長辺の長さを表す。)
基板主面の平面形状が五角形〜十八角形の場合、下記式を満たすことが好ましい。
500(μm)≦Lsc
(但し、
Lscは、前記基板主面の任意の2点の作る最も長い線分長を表す。)
本発明者らの検討の結果、基板主面が略m角形(3≦m≦18)の半導体発光素子に関し、式11を満たすことが好ましいことを見出した。さらに式12も満たすことがより好ましいことを見出した。
式11
Lsc×tan{sin−1(1/ns(λ))}≦ts
≦ Lsc×tan{90−sin−1(1/ns(λ))}
式12
500(μm)≦Lsc≦7000(μm)
これは以下の通りの検討から導かれる。
通常のGaN系半導体発光素子は、基板主面に垂直方向に投影した形状が略正方形が主流である。また、長方形、正六角形も存在する。これらGaN系半導体発光素子のLsaやLscの長さは250μm程度であり、tsは約100μmである。さらに、LsaやLscの長さが1mm程度を超えるラージチップであってもtsは約100μm程度である。
これは主に使用されてきた基板がサファイア等の過剰に硬質な材質であって、その厚みは主に、素子分離やダイシングの素子分離工程の都合によって決定されるためである。
サファイア等の異種基板上のGaN系半導体発光素子は、基板上に半導体層部を形成する際の熱歪みの問題等があり、100μm程度の厚みの基板では結晶成長が困難である。そのため、通常は400μmを超える基板厚みの状態で半導体層部を形成し、その後、素子化プロセスの最終段で100μm厚程度に基板を研磨して、素子分離工程に備えるプロセスが必要であり、工程が煩雑であった。
一方、窒化物基板例えばGaN基板を用いた場合、その硬度はサファイア基板よりも低く、スクライブ、ブレーキング、ダイシング等の素子分離工程は、比較的厚い基板であっても、相対的には容易にできる。一方、その硬さは、GaAs、GaP、InP、ZnO等よりは硬く、スクライブ、ブレーキング、ダイシング等の素子分離工程において、これら材料ほどには容易ではない。すなわち、窒化物基板を使用する場合は、その硬さに起因した特殊事情を克服する必要がある。また、GaN基板上にGaN系半導体発光素子を形成する場合には、熱歪み等の問題も軽減されると期待される。
そこで、各種の検討を行った結果、基板主面に垂直方向に投影した形状が略三角形から十八角形程度の多角形の半導体発光素子を内在するウエハーの、プロセス上のハンドリングが容易で、かつ、高品質な半導体層部を形成しうる半導体発光素子のGaN基板の厚みtsの好ましい下限は、250μm厚であった。
次に、基板主面に垂直方向に投影した形状が略正三角形、略正方形、略正五角形、略正六角形、略正八角形、略正十二角形の半導体発光素子を250μm厚の基板上に形成し、スクライブ、ブレーキング、ダイシング等の各種方法によって、容易に素子分離し、素子化できる素子寸法を実験的に求めた。ここにおいて素子分離の容易さはLsaではなく、素子の概略の大きさを規定しうるLscにより依存していることを見出した。
具体的には、上記略正三角形、略正方形、正五角形、正六角形、正八角形、正十二角形の半導体発光素子のLscが500μm以上では、いずれの素子分離も容易であった。さらに、550μm以上では、素子そのものの破損の発生、およびこれによる歩留まり低下が低減された。さらに、Lscが600μm以上の場合には、特にブレーキング工程によるチッピング等の発生が低減された。本発明においては、半導体発光素子の側壁面、特に傾斜露出面において、透過、屈折、反射等を誘発させるために、チップ外形におけるチッピングの発生を抑制することは技術的意義が大きい。
すなわち、tsが比較的薄い場合のLscの下限は500μm以上であることが好ましく、550μm以上であることがより好ましく、600μm以上であることがより好ましかった。
一方、スクライブ、ブレーキング、ダイシング等の簡便な方法で素子分離工程を実施できるGaN基板の厚みtsの上限は5500μmであった。この場合にはダイシング等の素子分離方法が有効である。このように、tsが厚い場合にも、Lscが大きいと良好な素子分離ができることがわかった。
しかし、Lscが過剰に大きい場合には、ダイシングシートからの剥離が困難になることが分かった。
特にtsが5500μmと膜厚の厚いGaN基板をダイシングする際には、スピンドルに掛かる負荷に耐えるようにGaN基板を十分な粘着力のあるダイシングシートに固定する必要が発生する。Lscが7000μm以下になるようにダイシングをすると、ダイシング後に素子をシートから剥離する際に、素子に過度な破損を誘発せず、歩留まり低下が低減された。
さらに、Lscが3500μm以下の場合、シート剥離時の素子の部分的な破損が低減され、素子分離後に良好な形状を維持することができた。
Lscが2800μm以下である場合には、素子の破損の程度はさらに軽減され良好な形状となる素子が多く、好ましかった。Lscが2200μm以下の場合には、格段に良好な素子分離が可能であった。
すなわち、tsが比較的厚い場合のLscの上限は、通常7000μm以下であって、好ましくは3500μm以下であって、より好ましくは2800μm以下であって、より好ましくは2200μm以下であった。これらの事実は、GaAs、GaP、InP、ZnO等では見られない事実であった。
特に、500μm≦Lsa≦Lsc≦2200μmを満たす平面形状を有する窒化物基板上の半導体発光素子10は、準備した窒化物基板の上に高品質な半導体層部を形成した後に基板を研磨するなどのプロセスを実施しなくとも、容易に良好な素子分離をすることが可能であった。
また、特に、上式の下限は、550μm以上を満たす場合により好ましく、600μm以上を満たす場合に最も好ましかった。
上式の上限は、2100μm以下を満たす場合がより好ましく、2000μm以下を満たす場合が最も好ましかった。
例えば、Lsaが550μmの正六角形のGaN基板上にGaN系半導体層部を有する半導体発光素子の場合、そのLscは1100μm程度となり、式3から要請される基板厚みはその下限でも約460μmとなる。
よって、このような平面的に比較的大型の素子を、従来のサファイア基板を内在する半導体発光素子のように100μm程度の厚みで作製すると、図6Dに示されるように、本来十分な窒化物基板の厚みがあれば最遠側壁部に到達可能な内部発光光が、主面と対峙する基板面12aで全反射を受け、その光が再度活性層構造に入射することで吸収され、または、第二導電型側電極、第一導電型側電極等によっても吸収されてしまう可能性がある。
上記のようにして決定した基板厚みを有する素子に対して、露出傾斜面を導入することによって、本発明の半導体発光素子は完成させることができる。この際に、傾斜露出面は、側壁に形成することが好ましい。
さらに、本発明は傾斜露出面を作りこむに当たって、ダイサーによって作りこむことが好ましい。これはダイサーの刃の角度等によって、容易に傾斜露出面の角度調整が可能であるからである。よって、素子分離を行う際にもダイサーで行うことは好ましい。しかし、ダイヤモンドスクライブ、レーザスクライブ等の方法によって素子分離を行うことも基板厚み、工程のスループット等を考慮して適宜選択可能である。
一方、傾斜露出面の場所によっては、内部発光強度密度の最大値を示す方向近傍に出射される光が、最遠側壁部には到達できないものの、傾斜露出面に到達しうるように傾斜露出面の形成場所、角度、面積等を適宜選択し、比較的基板の厚みを薄くして安価に半導体発光素子を作製することも好ましい。
さらに本発明は、一般に電極における反射率が高くない紫や近紫外、紫外領域の半導体発光素子に好適に利用できる技術である。
波長に注目した本発明の好ましい範囲は、ピーク発光波長λの下限は、370nm以上が好ましく、380nm以上がより好ましく、390nm以上がより好ましく、400nm以上がより好ましい。さらに、そのピーク発光波長λの上限は、430nm以下が好ましく、420nm以下がより好ましく、410nm以下がより好ましい。
さらに活性層構造16から内部に発する光を上記範囲に設定するための窒化物半導体としては、InxGa1−xNからなる量子井戸層とAlyGa1−yNからなる障壁層を含む量子井戸活性層構造を例示可能であるが、この中で、上記波長域を実現する場合には、量子井戸層と障壁層の屈折率差を小さくする構成を容易に実現可能であって、かつ、十分な電子―正孔対の閉じ込めも可能な構成が存在する。
このような波長を実現しうるInxGa1−xN系量子井戸層は、例えばGaN基板を用いた場合には、In組成xを0.10以下程度にすることが可能であって、また障壁層をGaNで構成することが可能であって、屈折率差が適度に小さいために好ましい。
さらに、障壁層33にSi等のドーピングを施すことで、さらに量子井戸層と障壁層の屈折率差を小さくすることも可能となるため、Si等のドーピングを施すことが特に好ましい。よって、本発明においては、上記範囲の波長を有する半導体発光素子に適応することが好適である。
さらに、1つの基板上の半導体層部15に比較的大型の単体の発光ユニットを構成したいわゆるラージチップの構成を有する場合、1つの基板上の半導体層部15に複数の発光ユニットを構成し、発光ユニット単体は比較的小型の平面形状を有するものの、発光素子全体としは大型の平面形状となる集積型の半導体発光素子、さらには、1つの基板上の半導体層部に比較的大型の複数の発光ユニットを有し大型の平面形状となる集積型の半導体発光素子など、平面的な大きさが大きい素子は、大電力投入が可能であるので、本発明はこのような素子の光取り出し効率を向上させられるので、高出力特性と高効率性を両立させた発光素子を実現できるので好ましい。
〔凹凸加工を傾斜露出面に有する本発明の素子の様態と基板面方位〕
さらに本発明においては、半導体発光素子に内在する当該窒化物基板の露出面が、凹凸加工されている部分を有することが好ましい。これにより、さらに光取り出し効率を向上させることが可能である。
図8A〜D等に例示した本発明の各種形態の中でも、当該窒化物基板の露出面に凹凸加工を施すことが可能である。
例えば、窒化物基板の主面が、c+面、すなわち(0001)面あるいはこれらの面からのオフ角度が5度以内の面の極性面である場合には、例えば図8A〜Dの中の主面と対峙する面が平行な部分を有する形態は、主面と対峙する面が略c−面となるため好ましい。
これは、c−面への光取り出しのための凹凸加工は、KOHやHCl等の溶液の中でバンドギャップに相当するエネルギーよりも大きなエネルギーを有する光を照射しながらエッチングをする(光/電気)化学エッチングによって容易に実施可能であるからである。さらに、光照射を抑制しても、高温のエッチャントによってエッチングを実施することも可能である。このようにすると、半導体発光素子側壁部、側壁部を加工して形成された露出面からの光取出しだけでなく、主面と対峙する面からの光取出し効率も向上するため、本発明においては相乗効果が発現し、好ましい。
一方、窒化物基板の主面がc面以外の場合、例えば、(1−10n)面、(11−2n)面(但しnは0、1、2、3)あるいはこれらの面からのオフ角度が5度以内の無極性、半極性面である場合、この中でも特に主面が(1−100面)すなわちm面、(11−20)面すなわちa面である場合、図10の中の例えば(a−1)の形態では、側壁面の一部にc−面を含む可能性がある。
このような形態の素子に(光/電気)化学エッチングを施すと側壁面の一部に凹凸加工が集中しがちとなる。このため、このような形態は、所望の側壁面の中の一部の面からの光取り出し効率を、他の部分よりも向上させることが可能であって、配光特性制御の観点からは好ましい。
なお、このような窒化物基板の主面がc面以外の場合には、(光/電気)化学エッチングによっては、主面と対峙する面からの光取出し効率を向上させることは、容易でない形態でもある。
よって、光取り出し効率向上の観点では、窒化物基板の主面がc面以外の場合において、特に、窒化物基板の主面がm面、a面の場合においては、半導体発光素子の傾斜露出面に、主面と対峙する平行な面と主面に対して垂直な面以外に、主面に対して垂直な面から傾斜した面を有することが特に好ましい。
これは、このような面には、比較的均質に(光/電気)化学エッチングによる凹凸加工が容易に付与できるからである。この中でも、図8A〜D中の(b−1)、(c−1)、(d−1)、(e−1)、(b−3)、(c−3)、(d−3)、(e−3)の構成は好ましい。さらには、半導体発光素子に内在する基板の露出面のほとんど、もしくはすべてが主面に対して垂直な面から傾斜した面のみによって構成されることが、より好ましい。
この場合には、素子のマウントのための平坦面をその一部に必要最低限だけ内在しても構わない。具体的には、このような半導体発光素子の中でも実質的にd−1に近いc−1の構成は好ましく、基板厚みの最大値を与える部分は一部平坦であってもよい。
本発明においては、半導体発光素子が、後述するとおり、複数の発光ユニットを備える集積型の半導体発光素子であることが好ましい。集積型素子の場合には、平面的に発光ユニットを複数作りこむため、Lscが長くなることが多い。このため、1つ1つの発光ユニットの発する光の取り出し効率を低下させないためには、傾斜した露出面を有することが好適である。本発明の半導体発光素子が集積型である場合は、基板の形状は、すでに示した傾斜した露出面を有する形態のいずれも好ましい。
この中でも、特に図8Bの(b−2)、(c−2)、(d−2)、および図8Dの(e−2)のような、半導体層部側から加工を付与した形態が特に好ましい。これは発光ユニットの分離等を容易に行うことが可能となるからである。
〔本発明の素子が有する半導体層部の態様〕
一方、本発明の半導体発光素子が内在する半導体層は、任意の構成をとることが可能である。ここで本発明の半導体発光素子は、基板側から第一導電型側半導体層、活性層構造、第二導電型半導体層を含むことが好ましい。すなわち、第一導電型側半導体層は、活性層構造の基板側に存在し、第二導電型半導体層は活性層構造の基板と反対側に存在する。
さらに、本発明の半導体発光素子は、第一導電型半導体層と基板の間にバッファ層を有することが好ましく、バッファ層はアンドープ層であることが好ましい。第一導電型側半導体層は、単層構成であっても、多層構成であってもよく、多層構成の場合には、バンドギャップの大きな層と小さな層を組み合わせる形態、ドーピング濃度の異なる層を組み合わせる形態等が好ましい。
活性層構造は、バルク活性層でもよいし、単なるホモ接合であっても、シングルへテロ接合でもよいし、ダブルへテロ接合でもよいが、量子井戸層と障壁層を含む量子井戸活性層構造であることが好ましい。第二導電型半導体層は、単層構成であっても、多層構成であってもよく、多層構成の場合には、バンドギャップの大きな層と小さな層を組み合わせる形態、ドーピング濃度の異なる層を組み合わせる形態等が好ましい。さらに本発明は、半導体層部に接して電極を有することが好ましい。
本発明においては、窒化物基板が十分な導電性を有している場合には、半導体層部が、第一導電型側電極と接しておらず、第二導電型側電極と接し、第一導電型側電極は窒化物基板と接している形態を好ましく採用することができる。これはいわゆる上下導通型の半導体発光素子の形態をとりうるということである。このような構成では、素子のいわゆる上下面に電極が形成されるために、素子の側壁面から主に光を取り出しうる本発明の半導体発光素子を上下導通型の半導体発光素子とすることは格段の効果を奏するものである。
第一導電型側電極および第二導電型側電極は、それぞれ第一導電型キャリア、第二導電型キャリアを注入するための電極である。
この際に、半導体発光素子は基板側、半導体層部側のいずれも、放熱板側にすることが可能であるが、高出力動作を実現する上では、半導体層部側を放熱板に近接して配置し、半導体発光装置とすることが好ましい。
ここで、放熱板は、放熱性と同時に電流注入等の機能を有してもよく、サブマウントと記載する場合もある。
さらに本発明においては、窒化物基板が十分な導電性を有している、有してないにかかわらずに、半導体層部が、第一導電型側電極とも、第二導電型側電極とも、共に接していることを特徴とする半導体発光素子がより好ましい。これはいわゆるフリップチップ型の半導体発光素子の形態をとりうるということである。
この際に、半導体発光素子は半導体層部を放熱板側にすることが可能である。この場合には、高出力動作を実現する上では、半導体層部側が放熱板やサブマウントに近接して配置されるので好ましい。
本発明においては、半導体層部の周辺部分、すなわち「半導体層部端部」は、図9に例示されるような形態とすることが可能であって、いずれの場合も好ましい。図9〜図11は図6Aに例示された線分Lscを含む面の形態を例示したものである。
なお、図9は、半導体層部端部の形態の例を説明するための図であり、基板側壁面が垂直に描かれているが、この基板側壁面には上述の通り種々の傾斜露出面を形成可能である。基板の形態は、図8に例示したような形態のいずれとも組み合わせることは可能である。
点A、点Bは半導体層部の上端部(図9ではフリップチップ型の半導体発光素子を想定し、下に位置しているが、半導体層部を形成する、例えばエピタキシャル成長直後は、「上」端部となる。)であって、点C、点Dは活性層構造の端である。点E、点Fは基板主面と半導体層部の境界である下端部(前述と同様、図9ではフリップチップ型の半導体発光素子を想定し、上に位置しているが、半導体層部を形成する際には、「下」端部となる。)であり、点G、点Hは製造上隣接していた他の発光素子との素子分離を行った端部であり、点I、点Jは基板主面と対峙する面の基板端部である。
図9(a−1)に例示の形態は、基板主面と垂直な方向から投影した際には、隣接する素子との素子分離端(G、H)と、基板主面と対峙する面の基板端部(I、J)と、基板主面の端(E、F)と、この上に形成された半導体層部の端(A、B)、活性層構造の端(C、D)とのすべてが一致する形態であって、本発明においては容易に形成できるため、好ましい形態である。
図9(b−1)、(b−2)、(b−3)の形態は、基板主面と垂直な方向から投影した際には、隣接する素子との素子分離端と基板主面の端とこの上に形成された半導体層部の端は一致するものの、活性層構造の端とは一致しない形態である。
この中で、半導体層部の側壁は、基板主面と垂直となっている(b−1)の形態は、その作製の簡便さから本発明の好ましい形態であって、また、(b−2)の形態と(b−3)の形態は、半導体層部の内部発光方向の一部を制御し、基板内部に出射される光の方向を変化させることで、側壁から出射される外部発光の方向、すなわち配光特性を制御できるため好ましい。
図10(c−1)、(c−2)、(c−3)の形態は、基板主面と垂直な方向から投影した際には、隣接する素子との素子分離端(G、H)と基板主面の端(E、F)は一致するものの、基板主面の端とこの上に形成された半導体層部の端(A、B)は一致せず、基板主面の端と活性層構造の端(C、D)とも一致しない形態である。
この中で、半導体層部の側壁は、基板主面と垂直となっている(c−1)の形態は、その作製の簡便さから本発明の好ましい形態であって、また、(c−2)の形態と(c−3)の形態は、半導体層部の内部発光方向の一部を制御し、基板内部に出射される光の方向を変化させることで、側壁から出射される外部発光の方向、すなわち配光特性を制御できるため好ましい。
図11(d−1)、(d−2)、(d−3)の形態は、基板主面部分もその一部が加工されているために、主面と垂直な方向から投影した際には、隣接する素子との素子分離端(G、H)と、基板主面の端(E、F)およびこの上に形成された半導体層部の端(A、B)が一致しない形態である。
この中で、半導体層部の側壁は、基板主面と垂直となっている(d−1)の形態は、その作製の簡便さから本発明の好ましい形態であって、また、(d−2)の形態と(d−3)の形態は、半導体層部の内部発光方向の一部を制御し、基板内部に出射される光の方向を変化させることで、側壁から出射される外部発光の方向、すなわち配光特性を制御できるため好ましい。
また、図11に示すように主面が加工されている場合において、主面(E、F)と素子分離端(G、H)との深さh{図11(d−1)〜(d−3)参照}が浅いときは、素子分離端を含む平面(一般に、基板を投影した略m角形と一致する場合が多い。)上において、任意の2点の作る最も長い線分長Lsc’が、式1、式3、式5または式7において、LscをLsc’で置き換えた式を満たすことが好ましい。
ここで、「深さhが浅い」とは、基板の最大物理厚みをtsとした際に、hが好ましくはtsの1/2以下、より好ましくはtsの1/4以下、より好ましくはtsの1/10以下、より好ましくはtsの1/50以下である。またさらに、「深さhが浅い」とは、半導体層部の最大物理厚みをtLとした際に、hが好ましくはtL以下、より好ましくはtLの1/2以下、より好ましくはtLの1/4以下、より好ましくはtLの1/10以下である。
また、これらの形状を本発明の集積型の構成を有する半導体発光素子において、図12に例示するように、発光ユニット間の分離部分に適用することも好ましい。
図9〜図11に例示された本発明の好ましい形態は、半導体層部を加工する際に、ドライエッチング、ウエットエッチング、ダイシング、機械的スクライビング、光学的スクライビングのいずれかの方法、もしくはこれらの組み合わせで実現することが可能である。
特にこの際に、図9〜図11の(a−1)を除く形態においては、基板主面側からみた半導体層部の形態と、図8に例示した基板部分の形態を独立に決定できるために特に好ましい。また、一方の形態を決定し、他方を非等方的な内部発光プロファイルを考慮して従属的に決定することも、より好ましい。
また、本発明の一形態においては、基板を基板主面に垂直方向に投影した形状が略四角形であり、この投影形状は、素子分離端形状と一致しない場合もあるが、一般には一致する場合が多い。また、半導体層部の形態は任意の形状をとることが可能であり、例えば、図13(a)(b)では、素子分離端の平面形状は、基板の主面に垂直方向に投影した形状と略合同な略四角形であるものの、半導体層部の形態は前記略m角形以外の任意の形状が含まれるものである。
ここで、半導体層部、特に活性層構造の端が、基板主面と垂直方向から投影した際に素子分離端の平面形状と略相似形であることは、作成プロセス上から容易であって、より好ましい。また、半導体層部の端部の平面形状が、例えば、n角形(nは、3以上の自然数)、円形、楕円形、その他曲線に囲まれる不定形状、直線と曲線により囲まれる不定形等の任意の形状が挙げられる。例えば、nの数字が大きい場合や円形である場合は、半導体層部側壁からの光取り出しの観点でより好ましい。
また特に、基板の側壁部、露出部だけでなく、半導体層の側壁部にも凹凸加工を施されていてもよく、これにより光取り出し効率が向上する。図13(a)には、図8Aの(b−1)の構成を有する基板上に、図10(c−1)の構成を組み合わせ、基板主面と垂直な方向から投影した際の活性層構造端を円形に配置した例を示す。また、図13(a)の変形例としては、図10(c−2)の構成を組み合わせ、半導体層部側壁が傾斜しているものも好ましい。
また、図13(b)は、図8D(e−1)の構成を有する基板上に、基板主面と垂直な方向から投影した際の活性層構造端を三角形以上の各種n角形、円形、任意の形状の組み合わせとし、さらにその一部には凹凸加工(詳細な図示は省略するが、例えば側壁部に凹凸加工がされていてもよい)を施した部分を有する、集積型の半導体発光素子とした場合の一例である。
また、周辺に平面的に付与する凹凸加工は、周期的な凹凸加工よりも、周期性のない凹凸加工が好ましい。このようにすると、半導体層部端部、あるいは活性層構造端部からの光取り出し効率が向上するために非常に好ましい。ここで、細かな凹凸の形状における凹凸サイズ(ラインからの高低差=出入差)は、半導体発光素子のピーク波長をλとして、λ/50から50λ程度の寸法を有することができる。好ましくはλ/10から10λ程度の寸法を有し、より好ましくはλ/7から7λ程度の寸法を有し、より好ましくはλ/5から5λ程度の寸法を有することができる。
なお、以上の記載から明らかなように、本出願は、基板主面に対して傾斜した(垂直または平行でない)傾斜露出面を有する半導体発光素子も開示しており、本出願で開示される他の構成と組み合わせることなく、独立して発明を構成することができる。また、本出願で開示される他の構成と組み合わせることもできる。ここで、半導体層部の側壁が傾斜していることがさらに好ましい。
さらに、本出願は、基板側壁部および半導体層部側壁の一方または両方に、凹凸加工が施された半導体発光素子も開示しており、本出願で開示される他の構成と組み合わせることなく、独立して発明を構成することができる。また、本出願で開示される他の構成と組み合わせることもできる。
〔本発明の素子が封止材によってモールドされる場合〕
本発明においては、その半導体発光素子の周辺をシリコーン系封止材(1.25≦nout(λ)≦1.53)、高屈折率シリコーン組成物封止材(1.45≦nout(λ)≦1.8)、やガラス封止材(1.55≦nout(λ)≦2.10)によって覆い、半導体発光装置を構成することは、光取り出し効率のさらなる向上のために好ましい。
また、封止材の中に蛍光体などの波長変換用粒子等をいれておき、半導体発光素子の発する光の波長の少なくとも一部を、他の波長に変換することも好ましい。このような場合であっても、本発明の発光素子は、式1および式3を満たすことが好ましい(式1(a)においては、nout(λ)=1)。
かかる封止材のうち、好ましいシリコーン系封止材(1.25≦nout(λ)≦1.53)、高屈折率シリコーン組成物封止材(1.45≦nout(λ)≦1.80)、ガラス封止材(1.55≦nout(λ)≦2.10)について説明する。
シリコーン系封止材とは、シリコーン材料からなる封止材をいう。
前記シリコーン系材料とは、通常、シロキサン結合を主鎖とする有機重合体をいい、例えば、縮合型、付加型、改良ゾルゲル型、光硬化型、などのシリコーン系材料を用いることができる。
縮合型シリコーン系材料としては、例えばアルキルアルコキシシランの加水分解・重縮合で得られるSi−O−Si結合を架橋点に有する化合物を挙げることができる。縮合型シリコーン系材料は半導体発光デバイスに用いられるパッケージや電極、発光素子などの部材との接着性に優れるため、密着向上成分の添加を最低限とすることが出来、架橋はシロキサン結合主体のため耐熱性・耐光性に優れる利点がある。縮合型シリコーン材料は、本質的に、後述する極性基を内在しているため、本発明の一形態ような基板の側壁面から光取り出し効果を期待する構造を有する半導体発光素子においては、厚膜基板の側壁面における密着性も良好であるため、総じて光取り出し効果に相乗的な効果を奏する点で好ましい。また、本発明が比較的サイズの大きい、ラージチップの場合においては、上記観点から殊更好ましい。
このような縮合型シリコーン材料としては、例えば特開2007−112973〜112975号公報、特開2007−19459号公報、特開2008−34833号公報等に記載の半導体発光デバイス用部材を用いることができる。
付加型シリコーン系材料とは、ポリオルガノシロキサン鎖が、有機付加結合により架橋されたものをいう。代表的なものとしては、例えばビニルシランとヒドロシランをPt触媒などの付加型触媒の存在下反応させて得られるSi−C−C−Si結合を架橋点に有する化合物等を挙げることができる。
付加型シリコーン材料は、硬化速度や硬化物の硬度などの選択の自由度が高い、硬化時に脱離する成分が無く硬化収縮しにくい、深部硬化性に優れるなどの利点がある。付加型シリコーン材料は、本質的には、後述する極性基を内在していないが、極性基を骨格内に導入したり、極性基を有する密着改善成分を添加したり、プライマーを介在させることにより、チップとの密着性を高めることができる。
かかる手法により、本発明のような基板の側壁面から光取り出し効果を期待する構造を有する半導体発光素子においては、厚膜基板の側壁面における密着性も良好であるため、総じて光取り出し効果に相乗的な効果を奏する点で好ましい。また、本発明が比較的サイズの大きい、ラージチップの場合においては、上記観点から殊更好ましい。
このような付加型シリコーン材料としては、例えば特開2004−186168号公報、特開2004−221308号公報、特開2005−327777号公報等に記載のポッティング用シリコーン材料、特開2003−183881号公報、特開2006−206919号等に記載のポッティング用有機変性シリコーン材料、特開2006−324596号公報に記載の射出成型用シリコーン材料、特開2007−231173に記載のトランスファー成型用シリコーン材料等を好適に用いることができる。
また、縮合型の一つである改良ゾルゲル型シリコーン系材料としては、例えば、特開2006−077234号公報、特開2006−291018号公報、特開2007−119569等に記載のシリコーン材料を好適に用いることができる。改良ゾルゲル型のシリコーン材料は高架橋度で耐熱性・耐光性高く耐久性に優れる。本発明が比較的サイズの大きい、ラージチップの場合においては、耐熱性・耐光性、耐久性の観点から好適である。
光硬化型シリコーン系材料としては、例えば特開2007−131812号公報、特開2007−214543等に記載のシリコーン材料を好適に用いることが出来る。紫外硬化型シリコーン材料は、短時間に硬化するため生産性に優れる、硬化に高い温度をかける必要が無く発光素子の劣化が起こりにくいなどの利点がある。本発明が比較的サイズの大きいラージチップの場合においては、上記の利点の他、硬化時に高い温度を要しないので硬化物に冷却による内部応力の残存が少なく長期使用や温度衝撃により剥離しにくい観点から好適である。
これらのシリコーン系材料は単独で使用しても良いし、混合することにより硬化阻害が起きなければ複数のシリコーン系材料を混合して用いても良い。
また、上記シリコーン系封止材は、高屈折率とするために、ジルコニア、チタニアなどのナノ粒子と混合して高屈折率シリコーン組成物封止材(1.45≦nout(λ)≦1.8)としてもよい。この場合、前記ナノ粒子とシリコーン系材料との密着性改善や分散性改善などを目的として、前記ナノ粒子をカルボキシル基などナノ粒子表面の金属と反応しやすい配位子を有する有機酸、シランカップリング剤やその加水分解物・部分加水分解物、加水分解性基やシラノール基を有するポリシロキサンのようなシリコーンオイル・シリコーン樹脂等で表面処理して用いることが好ましい。また、チタニアなど、ナノ粒子が光触媒作用を有する場合には、周辺有機物の劣化を防止するためにケイ素酸化物を含む被覆層をナノ粒子表面に設けても良い。
ここでこれらの被覆層による被覆とは、ナノ粒子表面を完全に覆った形態、あるいは隙間が空いた形態両方を意味する。
高屈折率のシリコーン組成物封止材としては、例えば特開2007−270099号公報に記載の半導体発光素子封止用組成物などを用いることができる。
上記シリコーン系封止材においては、本発明の半導体発光素子との密着性を良好なものとするために、以下の特性を有していることが好ましい。
1)他の層との界面に、極性基を含有すること、
2)硬度が、ショアAで5以上100以下、または、ショアDで0以上85以下であること
以下、これらの特性について説明する。
特性1):極性基
封止材は、光・熱・物理的作用などで、半導体発光素子の間で剥離を生ずると、半導体発光装置の光維持率が低下する。これは、本発明のような基板の側壁面から光取り出し効果を期待する構造を有する半導体発光素子においては極めて重要な要因である。従って、これらの間で強く密着していることが重要である。
そこで、本発明に用いる封止材は、隣接する層との界面に、極性基を含有することが好ましい。すなわち、封止材は、隣接する半導体発光素子との界面に極性基を有するよう、当該極性基を有する化合物を含有する。
このような極性基の種類に制限は無いが、例えば、シラノール基、アミノ基およびその誘導基、アルコキシシリル基などの加水分解性シリル基、カルボニル基、エポキシ基、カルボキシ基、カルビノール基(−COH)、メタクリル基、シアノ基、スルホン基などが挙げられる。なお、封止材は、いずれか1種の極性基のみを含有していてもよく、2種以上の極性基を任意の組み合わせおよび比率で含有していても良い。
これらの極性基は、封止材の中にはじめから含まれていても良く、プライマーの塗布や表面処理などにより後から付加されたものでもよい。
特性2):硬度測定値
硬度測定値は、本発明で用いる封止材の硬度を評価する指標であり、以下の硬度測定方法により測定される。
本発明で用いる封止材は、比較的硬度の低い部材、好ましくはエラストマー状を呈する部材であることが好ましい。すなわち、本発明では、半導体発光素子と封止材という熱膨張係数の異なる複数種の部材が隣接することになるが、封止材が比較的低硬度であり、好ましくはエラストマー状を呈することにより、それぞれの部材の伸縮による応力を緩和することができる。したがって、使用中に剥離、クラック、断線などを起こしにくく、耐リフロー性および耐温度サイクル性に優れる半導体発光装置を得ることができる。
具体的には、透光性被覆層4は、デュロメータタイプAによる硬度測定値(ショアA)が、5以上、好ましくは7以上、より好ましくは10以上、また、通常100以下、好ましくは80以下、より好ましくは70以下である。または、デュロメータタイプDによる硬度測定値(ショアD)が、0以上、また、通常85以下、好ましくは80以下、より好ましくは75以下である。
ガラス封止材とは、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素等の無機系材料、およびホウケイ酸塩、ホスホケイ酸塩、アルカリケイ酸塩等のガラス材料からなる封止材をいう。本発明におけるガラス材料を用いる場合、例えば粉砕ガラスを溶融、硬化することにより製造することができる。
ガラス材料としては、屈伏点が通常700℃以下、好ましくは600℃以下、更に好ましくは500℃以下、更に好ましくは400℃以下であり、通常200℃以上、好ましくは250℃以上である。屈伏点が大きすぎると焼結する際に高温になり過ぎ、半導体発光素子の劣化を招く恐れがある。また、蛍光体を混ぜて用いる場合に、蛍光体の劣化あるいは、蛍光体とガラス組成物との反応により蛍光体の発光特性の低下が起こる場合がある。屈伏点が小さすぎると被覆の安定性が低下し、製品の使用時に軟化するという不具合を生じる場合がある。
本発明に用いられるガラスの炭素成分は通常100ppm以下、好ましくは60ppm以下、更に好ましくは30ppm以下、特に好ましくは10ppm以下である。炭素成分が多すぎると無色透明性を十分担保できなくなるおそれがあるため、炭素成分は少ない程好ましい。炭素成分を減少させる方法としては、予め溶融、硬化、粉砕工程を経て得られたガラスを用いる方法が好ましい。
ガラス封止剤は、高屈折率化が容易でありチップからの光取り出し効率が高く、有機成分を含有しないため耐熱性および耐光性に優れ、構造が緻密でガス透過性が低いためチップや蛍光体を水蒸気や酸素による劣化から保護することが出来る等の利点がある。本発明が比較的サイズの大きい、ラージチップの場合においては、上記観点から殊更好ましい。
その他封止材に用いる材料としては、有機系材料を挙げることができる。
有機系材料としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等が挙げられる。具体的には、例えば、ポリメタアクリル酸メチル等のメタアクリル樹脂;ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体等のスチレン樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリエステル樹脂;フェノキシ樹脂;ブチラール樹脂;ポリビニルアルコール;エチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート等のセルロース系樹脂;エポキシ樹脂;フェノール樹脂等が挙げられる。
〔1−9.各部分の好ましい範囲〕
<基板>
本発明の半導体発光素子は、高出力特性と高効率性を両立することが好ましいが、用いる窒化物基板においては、前述の通り、従来とは異なる特定のサイズ・形状を有するため、その材料は、以下のような点を考慮して選択することが好ましい。
<転位密度、分極反転域>
また、窒化物基板は、その製法によっては、周期的に転位密度が密集している領域を有するものや、その極性がそろっていない部分を有する場合もある。このような基板は基板作成時の下地層に、選択的な成長を促すマスクを用いて基板部分の結晶成長を行った基板などがある。このような基板を本発明の半導体発光素子に用いることは好ましくない。
これは、本発明の素子が主面と平行な方向で見ても、また、主面と垂直な方向で見ても、基板の面積、体積が大きいために、その1つの素子の中に転位の密集領域や分極反転域を含むと、素子特性が格段に劣化するためである。小型の素子を作製する場合においては、このような領域を素子分離領域と一致させるなどのことをして、発光と直接関係がないようにすることが可能である。
そこで、本発明に用いる窒化物基板の転位密度は9×1016(cm−2)以下であって、当該転位の分布が略一様であることが好ましい。転位密度は、通常CL(カソードルミネッセンス)法によりダークスポットの密度を観察することにより測定することができる。
また、本発明に用いる窒化物基板は、分極反転域を有さないことが好ましい。
このような観点から、本発明の半導体発光素子用に準備する基板は、選択成長用マスクを用いない製法によって準備された基板を用いることが好適である。
<熱伝導率>
デバイスの安定な動作や長寿命化のためには出来る限り、温度上昇なく動作させる必要がある。
このためには、本発明の半導体発光素子においても、動作時の温度上昇を抑えるために効率よく熱放散させる必要がある。特に、比較的サイズの大きいラージチップなどのパワーデバイスでは、高出力下における光の損失等に伴う熱発生は大きいため、高効率な熱放散の必要性は高い。このような場合は熱伝導率が高い基板を用いることが好ましい。
本発明においては、特に熱伝導率が高い半導体材料を用いることにより薄片化は不要となり、本発明の特性を最大限に引き出すことができる。かかる観点からも、本発明にもちいる基板は、熱伝導率の高い材料であることが好ましい。
すなわち、本発明の自立基板は、室温(25℃)における熱伝導率が、通常250W/m・K以上、好ましくは300W/m・K以上、更に好ましくは345W/m・K以上のGaN系半導体であることが好ましい。
熱伝導率は、レーザーフラッシュ法により評価することができる。一般に、熱伝導率を直接求めるためには大きな試料を準備して長時間をかけて計測を行う必要がある。これに対して、レーザーフラッシュ法では、小さな試料を用いて短時間に熱伝導率を測定することができる。
レーザーフラッシュ法は、直径10mm、厚さ1〜5mm程度の円板状試料Sの表面をパルス幅が数百μsのレーザー光により均一に加熱した後の試料Sの裏面温度変化から熱拡散率を算出する測定法である。断熱条件を仮定した理論解によれば、パルス加熱後の試料Sの裏面温度は上昇し、試料S内の温度分布が均一化されるのに伴って一定値に収束する。レーザーフラッシュ法は、小さい試料を短時間に測定することができ、解析法が簡明であり、室温から200℃以上の高温に至るまでの計測が可能であるため、熱拡散率の標準的かつ実用的計測法として広く用いられる。
ここで、(1)式の適用において、GaNの密度を6.15(g/cm3)、比熱を40.8(J/mol・K)とする(Barin、 I.、 O. Knaeke、 and O. Kubasehewski、 Thermochemical Properties of Inorganic Substrates、 Springer−Verlag、 Berlin、 1977)。
熱拡散率の計測値は、標準試料を使って更正されうる。例えば、財団法人ファインセラミックセンターから入手可能な多結晶アルミナ(直径10mm、厚さ1mm)を標準試料として用いることができる。
試料Sの裏面温度の変化から熱拡散率αを算出するアルゴリズムとしては、t1/2法を使用した。t1/2法では、試料S裏面の過渡温度上昇の半分まで到達するのに要する時間から次の式にしたがって熱拡散率αを算出する。ここで、dは試料Sの厚さである。
α=0.1388d2/t1/2
上記の熱伝導率を有する基板としては、例えば後述の特開2007−277077号公報に記載のGaN系厚膜材料の製造方法によって製造することができる。
<不純物濃度>
また、本発明の半導体発光素子に用いる窒化物基板は、意図しない不純物濃度の低い単結晶基板であることが好ましい。特に、酸素不純物の存在は、透明性が損なわれる、または半導体発光素子からの発光を吸収する等の原因の一要因となりうるため、本発明の一形態ように基板の側壁面から光を取り出そうとする場合においては、できるだけ酸素不純物の濃度が低いことが好ましい。したがって本発明に用いる窒化物基板は、酸素濃度が、通常5×1017(cm−3)以下であり、好ましくは1×1017(cm−3)以下である。
また、基板相当部分に、基板相当部分の一部に内包して、あるいは基板相当部分と半導体層部との界面に内在するようにして、蛍光体成分などを意図的に含むことは好ましくない。
<単結晶基板>
本発明の窒化物基板は、非線形作用以外の波長変換機能を有さない単結晶基板であることが好ましい。単結晶構造は熱拡散の効率がよいからである。また、単結晶構造であれば、特定の結晶面を利用してへき開等によって加工することができるので、直方体あるいは立方体への加工が比較的容易に得ることができるという利点もある。
<透明性>
本発明の窒化物基板は、半導体層が発するピーク波長λの光に対して、透明であることが好ましく、具体的には、その透過率は50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることが最も好ましい。
<反り、残留歪み>
半導体発光素子においては、製造工程のうち、素子を分離する工程(後述する第四工程)におけるへき開が容易である必要がある。反り、残留歪みなどが低減された基板は、へき開等によって比較的加工しやすいため、直方体あるいは立方体への加工が比較的容易に得ることができる。また、反り、残留歪みが少ないことは、基板の加工において、加工板との密着性がよく、真空チャック、位置ずれ防止などを期待することができるが、前述のように、本発明の半導体発光素子が、そのサイズが比較的大きい、いわゆるラージチップとよばれるものである場合は、その効果が特に大きい。
このような観点から、本発明に用いる基板としては、残留歪みができるだけ少ないことが好ましい。化合物半導体単結晶の残留歪の評価は、たとえば、Appl.Phys.Lett.47(1985)pp.365−367に記載される光弾性法に基づいて行うことができる。また、本発明に用いる基板としては、反りが通常0.03mm以下であり、好ましくは0.01mm以下である。反りが大きすぎると、真空吸着等ができず、ハンドリングの問題が生じる場合がある。反りは、2インチ直径の基板ウエハーを平坦な台上において、中心の隆起Hを測定することにより測定することができる(図14参照)。
<その他特性>
窒化物基板の中では、GaN、AlN、BN、InN基板、あるいはこれらの原料からなる混晶基板が好ましいが、GaN、AlN、BN基板を用いることがより好ましく、GaN基板を用いることが最も好ましい。
また、その主たる面方位は(0001)面、(1−10n)面、(11−2n)面、(但しnは0、1、2、3)であることが好ましく、(0001)面、(1−100)面、(11−20)面であることがより好ましく、(1−100)面、(11−20)面であることがより好ましく、(1−100)面であることが最も好ましい。これは極性面であるよりも、半極性面である方が、さらには非極性面であるほうが、活性層構造内における空間的な電子―正孔対の分離等が起こりにくく、内部量子効率が向上し、半導体発光素子の高出力化、高効率化に好ましいからである。
さらにそれぞれの主たる面方位からのずれの幅、いわゆるオフ角度は、5度以内の面であることが好ましく、オフ角度が2度以内であることがより好ましく、オフ角度が1度以内であることがより好ましく、オフ角度が0.5度以内であることがより好ましく、オフ角度が0.2度以内であることがより好ましく、それぞれの主面ジャスト基板であることが最も好ましい。
これはオフ角度が小さいほど、それぞれの主面上での結晶成長が高品質になるからである。なお、本発明の半導体発光素子は、後述の本発明の半導体発光素子の製造方法における記載の方法によって作製することが好ましい。
<窒化物基板の製造例;気相成長法により得られる窒化物基板の好適な例>
上記の特性を有する窒化物基板としては、気相成長法により得られる窒化物基板を挙げることができるが、中でも特開2007−277077号公報に記載の、H−VPE(Hydride Vapor Phase Epitaxial Growth)法によって成長させる窒化ガリウム系材料を用いたものが好適である。
すなわち、H−VPE法における成長工程において、H2ガスを含むキャリアガスと、GaClガスと、NH3ガスとを反応室に供給し、成長温度を900℃以上1200℃以下とし、成長圧力を8.08×104Pa以上1.21×105Pa以下とし、GaClガスの分圧を1.0×102Pa以上1.0×104Pa以下とし、NH3ガスの分圧を9.1×102Pa以上かつ2.0×104Pa以下とする制御を行うことで、本発明に用いる基板として良好なものを得ることができる。
前記反応室には、下地基板を支持する支持部が配置され、前記成長工程では、前記下地基板に窒化ガリウム系材料を成長させ、前記反応室に連通するように配置された導入室に前記キャリアガス、前記NH3ガスおよびHClガスが供給され、前記導入室内に配置された容器に収容されたGaと前記HClガスとの反応によって前記GaClガスが発生し、前記反応室には、前記導入室から前記キャリアガス、前記GaClガスおよび前記NH3ガスが導入され、前記導入室の平均断面積が前記反応室の平均断面積の2/3以下とするように制御する。
このようにすると窒化物基板は、酸素濃度が5×1017(atoms/cm3)未満、好ましくは、1×1017(atoms/cm3)未満とすることができ、結果として、その25(℃)における熱伝導率が2.0×102(W/m・K)以上、好ましくは2.8×102(W/m・K)以上、より好ましくは3.3×102(W/m・K)以上となる。
本発明の半導体発光素子が、上述のような基板を内在すると、放熱性が良好となるため、高出力動作時、高温動作時の素子特性が改善され、好ましい。なお、このような場合であっても、3.8×102(W/m・K)以下である。
<窒化物基板の製造例;液相成長法により得られる窒化物基板の好適な例>
また、前述の気相成長法の他に、液相成長法により得られる窒化物基板も、本発明の半導体発光素子に用いる基板は好適である。液相成長法により得られる基板は、自然核発生によって得られる結晶が材料的に得られるという特性から、反りや残留歪みなどが少なく、結晶格子の周期性が高いという特性を有するが、本発明においては、特に以下の観点から、反りや残留歪みが少ないという特性が有効である。
すなわち、半導体発光素子においては、製造工程のうち、素子を分離する工程(後述する第四工程)におけるへき開が容易である必要がある。液相成長法により得られる基板は、自然核発生によって得られる結晶であるため、気相成長法により得られる場合に存在する反りが、本質的に発生しにくいため、へき開等によって加工することができるので、直方体あるいは立方体への加工が比較的容易に得ることができる。
また、反りや残留歪みが少ないことは、基板の加工において、加工板との密着性がよく、真空チャック、位置ずれ防止などを期待することができるが、前述のように、本発明の半導体発光素子は、そのサイズが比較的大きい、いわゆるラージチップとよばれるものであるため、その効果が特に大きい。
液相成長法により得られる基板の材料としては、大きく以下の通り分類することができる。
(イ)III族元素を含む合金融液を窒素ガスで窒化して得られる材料
Ga、Al、InなどのIII族元素とIII族元素以外の金属元素(好ましくはNaなどのアルカリ金属元素またはアルカリ土類金属元素)の合金融液を窒素ガス加圧雰囲気下で加熱し、III族元素と窒素を反応させ結晶成長させると、窒化物単結晶を製造することができる。
この方法により得られる窒化物材料は、前述の液相成長法で得られる特徴に加え、原料となるIII族元素の利用効率が高く、安価に製造ができる点で、特に厚膜基板を必要とする本発明において好適である。
このような材料としては、特開2001−102316号公報等に記載される方法により得られる窒化物材料が挙げられる。
(ロ)複合窒化物溶液中における窒化物結晶成長により得られる材料
Ga、Al、InなどのIII族元素およびIII族元素以外の金属元素(好ましくはLiなどのアルカリ金属元素またはアルカリ土類金属元素)を含有する複合窒化物を、イオン性溶媒に溶解した溶液または融液とし、この溶液または融液中で結晶成長すると、III族金属窒化物材料を得ることができる。
この方法により得られる窒化物材料は、前述の液相成長法で得られる特徴に加え、透明性に優れるため、特に厚膜基板を必要とし、基板側壁面からの光取り出し効率が重要な本発明の一形態において好適である。
このような材料としては、特開2007−84422号公報、中国特許1288079号公報、米国特許公開2006−0048701号公報等に記載される方法に記載される方法により得られる窒化物材料が挙げられる。
(ハ)いわゆるアモノサーマル法により得られる材料
アンモニアなどの窒素含有溶媒を用いて、高温高圧の系に温度差を設け、温度差により溶媒への結晶溶解度の差を利用して窒化物の結晶成長を行う、いわゆるアモノサーマル法により得られる材料は、前述の液相成長法で得られる特徴に加え、大量にバルク製造ができる点で、特に厚膜基板を必要とする本発明の一形態において好適である。
このような材料としては、特開2007−39321号公報、特表2005−506271号公報、Jounal of Crystal Growth 281(2005)355、Jounal of Crystal Growth 310(2008)3907、Jounal of Crystal Growth 287(2006)376等に記載される方法により得られる窒化物材料が挙げられる。
また、これらの中でも、反応容器(チャンバー)において、GaNなどの窒化物結晶が成長する際に、第一、第二の温度分布生成段階を設け、(a)結晶成長に必要な温度勾配が、第一の温度分布生成段階よりも第二の温度分布生成段階で大きく、(b)結晶成長速度が、第一の温度分布生成段階よりも第二の温度分布生成段階で大きくなるように制御された方法が開示されている(特表2006−513122号公報等)。
この方法により得られる材料は、酸素不純物が少なく、吸光係数が低い(透明性に優れる)ため、特に厚膜基板を必要とし、基板側壁面からの光取り出し効率が重要な本発明の一形態において好適である。
(ニ)超高温超高圧条件による反応により得られる材料
超高温(2000K)のGa融液に超高圧(1〜2GPa)の窒素を溶解させGaと窒素を反応させて得られるGaN結晶は、格子不整合が少ない結晶性のよい材料という点で本発明の基板に好適に用いられる。
このような材料としては、Jounal of Crystal Growth 274(2005)55−64頁、Jounal of Crystal Growth 307(2007)259−267等に記載される方法に記載される方法により得られる窒化物材料が挙げられる。
<半導体層部>
本発明者らの検討によれば、窒化物基板、半導体層部を構成しうる第一導電型半導体層、平均としてみた活性層構造(例えば量子井戸活性層構造であれば量子井戸層と障壁層の屈折率と厚みから求めた平均値)、第二導電型半導体層などの各層において、発光素子のピーク波長におけるそれぞれの屈折率は、窒化物基板を基準として±25%以内であることが好ましく、±10%以内であることがより好ましく、±5%以内であることがさらに好ましく、±3%以内であることが最も好ましい。
すなわち、下限に関しては、
0.75≦(nLX(λ)/ns(λ))であることが好ましく、
0.90≦(nLX(λ)/ns(λ))であることがより好ましく、
0.95≦(nLX(λ)/ns(λ))であることがさらに好ましく、
0.97≦(nLX(λ)/ns(λ))であることが最も好ましい。
一方上限に関しては、
(nLX(λ)/ns(λ))≦1.25であることが好ましく、
(nLX(λ)/ns(λ))≦1.10であることがより好ましく、
(nLX(λ)/ns(λ))≦1.05であることがさらに好ましく、
(nLX(λ)/ns(λ))≦1.03であることが最も好ましい。
以上は、各層X(第一導電型半導体層、活性層構造、第二導電型半導体層などの各層)がそれぞれ、満たすことが好ましい。
このように設定することによって、活性層構造部より内部的に放射された光は、半導体層内部において過度な干渉等を受けることなく、側壁部に光が到達しうるようになるため、側壁部から光取り出しを行う場合において、好ましい。
本発明においては、基板も半導体層部も、窒化物のみから構成されることが好ましい。特に半導体層部はInN、GaN、AlN、BNのいずれかの材料か、これらの混晶によって構成されることが好ましく、さらに放熱性の観点から、混晶は三元系までの混晶で構成されることが好ましい。特にInGaN、GaN、AlGaNの材料によって半導体層部が構成されることが好ましい。また、基板がGaNである場合には、半導体層部との屈折率差が小さいほうが好ましく、この観点でInxGa1−xNにおけるIn組成Xは0.01以上、0.15以下であることが好ましく、AlyGa1−YNにおけるAl組成Yは0以上、0.2以下であることが好ましい。
<バッファ層>
本発明においては、基板主面に半導体層を形成する場合に、バッファ層を有することが好ましい。このバッファ層は薄膜のアンドープ層とすることが好ましい。これは特にMOCVD法によって半導体層部を形成する際に、高品質化が可能であって、好ましい。
本発明においては、窒化物基板が十分な導電性を有する場合には、基板を第一導電型半導体層として機能させることもできる。このような場合は、半導体層部形成が簡略化される点で好ましい。
<第一導電型半導体層>
また、窒化物基板の導電性の有無に関わらず、バッファ層の上に第一導電型半導体層を形成してもよい。このような場合には、高品質な層が形成できる点で好ましい。ここで、特に第一導電型半導体層はGaN、AlGaN、AlNのいずれかから構成されることが好ましい。
第一導電型半導体層の厚みは4μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、6μm以上であることが最も好ましい。また、20μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましく、10m以下であることが最も好ましい。このようにすると、特にフリップチップ型の半導体発光素子とする際に、駆動電圧を低減することができる点で好ましい。
第一導電型半導体層は、n型半導体層であることが好ましく、ドーパントはSiを含むことが好ましい。さらに、そのキャリア濃度は、
5×1017(cm−3)以上であることが好ましく、
1×1018(cm−3)以上であることがより好ましく、
3×1018(cm−3)以上であることがより好ましく、
5×1018(cm−3)以上であることがより好ましい。
また、5×1019(cm−3)以下であることが好ましく、
1×1019(cm−3)以下であることがより好ましい。
なお、第一導電型層半導体層が複数の層から構成される場合には、ドーピング濃度の異なる層を含むことも好ましい。
<活性層構造>
本発明においては、活性層構造は、同じ材料の接合からなる構成であってもよく、異なる材料の接合からなる構成であってもよいが、異種材料の接合を多重に有し、量子力学的なポテンシャル間の遷移によって電子―正孔対の再結合が発生する量子井戸活性層構造であることが好ましい。
特に、本発明の一形態においては、内部発光を半導体発光素子の側壁から効率的に取り出すことが可能であるので、内部発光強度密度の最大値を有する方向が、適切な範囲で、活性層と平行な方向により近接する構成も好ましい。
本発明における活性層構造は、量子井戸活性層構造を有することが好ましく、その結果実現する内部発光プロファイルは、活性層構造に平行な方向に内部発光強度密度の最大値を有する非等方的なものであることも好ましい。
このような活性層構造は、本発明者らの詳細な検討によれば、たとえば、量子井戸層と障壁層の間の屈折率差を適切に選択すること、量子井戸層と障壁層の繰り返し数を適切に選択すること、量子井戸層と障壁層の厚みを適切に選択することなどによって実現が可能である。
これらの数値は相互に関連するものであるが、好ましい実現手段として、以下を挙げることができるのは、前述の通りである。
第一に、活性層構造に含まれる量子井戸層の数をNUMQW、量子井戸層を構成する層の平均物理厚みをTQW(nm)、量子井戸層を構成する層の波長λにおける平均屈折率をnQW(λ)、活性層構造に含まれる障壁層の数をNUMBR、障壁層を構成する層の波長λにおける平均屈折率をnBR(λ)、第二導電型半導体層の物理厚みをTP(nm)、第二導電型導電体層の屈折率をnPとする際に、量子井戸活性層が以下の式を満たすことが好ましい。
第二に、量子井戸層は4層以上30層以下であることが好ましい。
第三に、活性層構造に含まれる量子井戸層の厚みの最大値が40nm以下であることが好ましい。
なお、量子井戸層の数や量子井戸層の厚みについての他の好ましい範囲については、前述した通りである。
これらは、種々の検討の結果得られたもので、相対的に屈折率の大きな量子井戸層が、過度な薄膜干渉の原因にならない条件であると考えられ、これらを満たすことで、現実的に実現可能で量子井戸層内における電子―正孔対の閉じ込めも考慮したうえで、活性層構造に平行な方向に高密度な光の放射方向を有する活性層構造を実現可能である。
さらに、量子井戸層の厚みは、基板主面の面方位も考慮すると以下の通りとなる。
(0001)面あるいはこれらの面からのオフ角度が5度以内の面のような極性面上に形成する場合においては、0.5nm以上が好ましく、1.0nm以上がより好ましく、1.5nm以上が最も好ましい。また5.0nm以下が好ましく、3.0nm以下がより好ましく、2.5nm以下がもっとも好ましい。
これは極性面上に形成された多重量子井戸活性層構造中において、注入/生成された電子―正孔対が空間的に分離されるために、その分離を抑制するためには、後述する半極性面、非極性面上の量子井戸層と比較すると薄めの厚みとならざるを得ないからである。
すなわち、極性面上における量子井戸層の厚みは、電子―正孔対の発光再結合確率を極端に低下させない範囲において厚く作製することが、θem maxの好ましい範囲を容易に実現できるようになるため、好ましい。
一方、当該窒化物基板の主面が、(1−10n)面、(11−2n)面(但しnは0、1、2、3)あるいはこれらの面からのオフ角度が5度以内の面である半極性面、非極性面である場合には、量子井戸層の厚みの下限は5nm以上であることが好ましく、10nm以上であることが好ましく、15nm以上であることがより好ましい。
これは極性面上に形成される量子井戸層の好ましい範囲と比較して格段に厚い量子井戸層、多重量子井戸活性層構造を形成可能であるということである。このため、半導体発光素子の側壁面から光を取り出しうる本発明においては、量子井戸層を厚くすると内部発光強度密度の最大値を与える方向(θem max)が、容易に量子井戸層に平行な方向に向かうため、側壁からの光取り出し効率の観点から格段に好ましい。
また、半極性面、非極性面上に形成された量子井戸活性層の場合は、量子閉じ込めシュタルク効果による電子―正孔対の空間的分離が、極性面上に比較して抑制されるために、厚い量子井戸構造を有していても発光再結合が阻害されず、内部量子効率も向上する。
よって、本発明において、(1−10n)面、(11−2n)面(但しnは0、1、2、3)あるいはこれらの面からのオフ角度が5度以内の面である半極性面、非極性面上に、厚い量子井戸層を形成することは、内部量子効率も向上し、かつ、光取り出し効率も向上させうる構成であって、格段に好ましい。
なお、当該窒化物基板の主面が、(1−10n)面、(11−2n)面(但しnは0、1、2、3)あるいはこれらの面からのオフ角度が5度以内の面である半極性面、非極性面の上に形成された量子井戸層の厚みの上限は、40nm以下が好ましく、30nm以下がより好ましく、25nm以下がさらに好ましく、20nm以下が最も好ましい。
これらの好ましい量子井戸層の厚みの上限も、極性面上に形成される量子井戸層に比較して格段に厚いものとなっている。これは、前述した理由による。よって、(1−10n)面、(11−2n)面(但しnは0、1、2、3)あるいはこれらの面からのオフ角度が5度以内の面である半極性面、非極性面上に、厚い量子井戸層を形成することは、内部量子効率も向上し、かつ、光取り出し効率も向上させうる構成であって、格段に好ましい。
量子井戸層の層数は、(0001)面あるいはこれらの面からのオフ角度が5度以内の面のような極性面上に形成する場合、4層以上が好ましく、5層以上がより好ましく、8層以上がより好ましく、10層以上が最も好ましい。
また、量子井戸層の層数は、30層以下であることが好ましく、25層以下であることがより好ましく、20層以下であることがより好ましい。
一方、当該窒化物基板の主面が、(1−10n)面、(11−2n)面(但しnは0、1、2、3)あるいはこれらの面からのオフ角度が5度以内の面である半極性面、非極性面である場合、量子井戸層の層数は、4層以上が好ましく、5層以上がより好ましく、8層以上が最も好ましい。また、量子井戸層の層数は、30層以下であることが好ましく、20層以下であることがより好ましく、15層以下であることがより好ましい。
半極性面、非極性面上に形成される量子井戸層の層数は、1量子井戸の厚みを比較的厚くすることが可能であるため、その層数を抑制したとしても、十分な内部量子効率が実現でき、かつ、量子井戸層全体の体積としては十分に確保できる。
このような場合においては、内部発光強度密度の最大値を与える方向(θem max)が、適切な範囲において量子井戸層に平行な方向に向かうため、本発明においては、側壁からの光取り出し効率も向上し、かつ内部量子効率も高いため、相乗効果を得ることができ、格段に好ましい。
本発明の活性層構造が量子井戸活性層構造である場合には、その障壁層と量子井戸層間の屈折率差は、適切な範囲内で小さいことが好ましい。
これは、そのような構成の場合に、内部発光強度密度の最大値を与える方向(θem max)が、適切な範囲で、量子井戸層に平行な方向に向かうため、本発明においては光取り出し効率の観点で好ましいからである。
ここで本発明者らの検討によれば、発光素子のピーク波長における量子井戸層と障壁層のそれぞれの屈折率差(屈折率比の差)は、一方を基準として、15%以下であることが好ましく、13%以下であることがより好ましく、10%以下であることがより好ましい。さらには、7.0%以下であることがさらに好ましく、5.0%以下であることがさらに好ましく、3.0%以下であることがさらに好ましく、1.5%以下の差を有することが最も好ましい。
但し、屈折率差を過剰に少なくすることは、量子井戸層と障壁層の間のバンドオフセットが過小となる場合があり、キャリア閉じ込めに支障をきたす場合があるので、屈折率差が小さいことと、オフセットをある範囲で保持するとの観点で、適宜選択することが好ましい。また、過剰な屈折率差を形成すると、θem maxの好ましい範囲である67.5度≦ θem max <90.0度に光密度の高い方向が消滅するために、好ましくない。
ここで、量子井戸層は発光素子の用途によって波長を決定する必要があるため、屈折率差は障壁層の材料を変更することで実現することが好ましい。例えば、発光波長が370nmから430nm程度の本発明において好ましく実現しうる波長域においては、InxGa1−xNにおいて0<x≦0.1程度の組成でそのような波長を実現しうるが、この際に障壁層をInyGa1−yNやGaN、AlZGa1−ZNにすることは、本発明の一形態においては好ましい。
特に本発明においては、障壁層のIn組成yが0≦y≦x/3を満たすことは、量子井戸層との屈折率差を少なくするために好ましい。さらに、障壁層のAl組成zが0≦z≦xを満たすことは、量子井戸層との屈折率差を少なくするために好ましい。
本発明の量子井戸活性層層構造においては、障壁層にドーピングを施すことは好ましい。一般に、キャリア閉じ込めのために、量子井戸活性層に使用する材料のバンドギャップは、障壁層に使用するものよりも小さい。このため、屈折率は障壁層よりも大きくなるのが一般である。ここで、半導体発光素子の発光波長は、各種応用上の要請等によって決定されるため、発光波長を優先的に決定すると、量子井戸活性層の屈折率は決定されてしまう。
一方、障壁層は、特に窒化物半導体の場合には、量子井戸層にInGaN系材料を用いると、750℃程度の比較的低温で成長する必要があるため、その障壁層としてはGaNが使用しやすい。これは前述の通りInGaN、AlGaN、InAlGaN等を障壁層に使用することも可能であるものの、好ましい成長温度がAlGaNとGaNでは、GaNの方がInGaNに相対的には近いからである。
このような場合を想定すると、障壁層の材料を変えずに、障壁層のドーピングを施し、量子井戸層との屈折率差を適切な範囲で小さくすることは、非常に好ましい。
さらに、ドーピング濃度を変更し、内部発光プロファイル、すなわち最大の内部発光強度密度を有する光の出射方向を制御し、所望の側壁からの光取り出し状態を変化させることは、本発明の一形態において好ましい。
ドーピングは、障壁層の屈折率を適切に変化させうる範囲で、また、障壁層や量子井戸層の結晶性を極端に劣化させない範囲で、どのような元素を、どのような濃度で導入してもよいが、これによって、量子井戸層と障壁層の屈折率差を適切に制御し、側壁からの光取り出し効率を向上させうる範囲で任意に設定可能である。
具体的には、障壁層へのドーピング濃度は、
1×1017(cm−3)以上であることが好ましく、
2×1017(cm−3)以上であることがより好ましく、
3×1017(cm−3)以上であることがより好ましく、
4×1017(cm−3)以上であることがより好ましい。
また、1×1019(cm−3)以下であることが好ましく、
5×1018(cm−3)以下であることがより好ましく、
2×1018(cm−3)以下であることがより好ましく、
1×1018(cm−3)以下であることがより好ましく、
7×1017(cm−3)以下であることがより好ましい。
ドーパントはSiを含むことが好ましい。
活性層構造は、GaN、InGaN、AlGaN、InAlGaNなど所望の材料によって構成することが可能である。
<第二導電型半導体層>
本発明の半導体層部には、第二導電型半導体層を有することは好ましく、また、第二導電型半導体層に接して、第二導電型側電極を有することが好ましい。
本発明においては、第二導電型はp型であることが好ましい。これは、一般に窒化物半導体においては、p型はMgをドーパントとするなどして実現されるが、Mgをドーピングされた層の結晶性は必ずしも良好でなく、活性層構造を形成する下地はn型の層であるほうが良い。よって、逆に、活性層構造を形成した後に形成される、第二導電型はp型であることが好ましい。
本発明の半導体発光素子は、活性層構造から生成され、第二導電型半導体層側に出射された光は、第二導電型側電極でその一部が反射され、第二導電型半導体層の光学厚み分だけの光路差で多重干渉を引き起こすことで内部発光プロファイルが影響される特徴を有する。よって、第二導電型半導体層の厚みは、半導体発光素子側壁面からの光取り出しを効率的に行ううえで、適切に制御されることが好ましい。
本発明者らの検討によれば、第二導電型半導体層の厚みは10nm以上180nm以下である場合には、67.5度≦θem max<90度の出射方向に見られる光密度のピーク形状は、半導体発光素子の側壁部からの光取出しに好ましい単峰性であって、かつ、その高密度のピークは相対的に十分に高いものとなるため、好ましい。また、このような厚みの場合には、第二導電型層がキャリア注入層としての機能も十分に果たすために好ましい。
さらには、適切な範囲で、第二導電型半導体層の厚みを変化させて、最大の内部発光強度密度を有する光の出射方向を制御し、所望の側壁からの光取り出し効率を向上させることは本発明において好ましい。本発明者らのシミュレーションの結果を、図17A(第2導電型半導体層の厚みを0〜150nmの範囲で変化させた)および図17B(第2導電型半導体層の厚みを150〜500nmの範囲で変化させた)に示す。これらの検討によれば、第二導電型半導体層の厚みは、10nm以上であることが好ましく、30nm以上であることがより好ましく、40nm以上であることがより好ましく、50nm以上であることがより好ましい。
また、第二導電型側半導体層の厚みは、180nm以下であることが好ましく、170nm以下であることがより好ましく、160nm以下であることがより好ましく、150nm以下であることがより好ましい。
本発明者らは、これらの範囲において内部発光強度密度の最大値を示す方向θem maxの近傍の内部発光強度密度Jinが比較的シャープなプロファイルを有し、放射方向が比較的そろっていて光取り出しに好都合であることを見出した。また、内部発光強度密度の極大値近傍に見られる放射強度密度の極小値は、過度な多重干渉が発生した場合には過度に小さくなるが、このようなことがないことを見出した。
すなわち、本発明の一形態において、上記の好ましい範囲にある第二導電型側半導体層の厚みを有する半導体発光素子は、側壁方向に出射される内部発光強度密度の最大値近傍に出射される光の方向が集中し、その最大値近傍に大きな極小値もないため、側壁からの光取り出しが比較的容易であり特に好ましい。
第二導電型半導体層は、単層で構成されていてもよく、また、複数の層から構成されていても良い。また、その材料は任意の材料を選択可能である。
しかし、基板が窒化物基板であるので、第二導電型半導体層はGaN、AlGaN、InAlGaNから選択されることが好ましい。特に、第二導電型半導体層は、複数のAl組成の異なるAlxGa1−xN(0<x<1)から構成されることが好ましい。また、活性層近傍からAl組成を連続的に下げていくことも好ましい。
第二導電型半導体層は好ましくはp型の層であるが、ドーパントとして広く使用可能なMgは、結晶成長中、あるいは結晶成長後の種々の方法で活性化が可能である。ここで、第二導電型半導体層はAlが導入された層であるほうが、Alが導入されていない層よりも安定であって、劣化が少なく好ましい。
特に、この際に、複数のAl組成が異なる層から形成される場合であっても、その屈折率差は、窒化物基板を基準として±25%以内であることが好ましく、±10%以内であることがより好ましく、±5%以内であることがさらに好ましく、±3%以内であることが最も好ましい。このような場合、側壁方向に出射される内部発光強度密度の最大値近傍に出射される光の方向が集中し、その最大値近傍に大きな極小値もないため、側壁からの光取り出しが比較的容易であり特に好ましい。
また、活性層近傍から半導体層部の表面に向けて、Al組成を連続的に下げていくことも好ましい。
このようにすると屈折率差が見かけ上小さくなるため、側壁方向に出射される内部発光強度密度の最大値近傍に出射される光の方向が集中し、その最大値近傍に大きな極小値もないため、側壁からの光取り出しが比較的容易であり特に好ましい。
第二導電型半導体層にはMgをドーピングすることが好ましいが、Mg濃度は、
3×1018(cm−3)以上であることが好ましく、
5×1018(cm−3)以上であることがより好ましく、
7×1018(cm−3)以上であることがより好ましい。
また、1×1020(cm−3)以下であることが好ましく、
5×1019(cm−3)以下であることがより好ましく、
3×1019(cm−3)以下であることがより好ましく、
2×1019(cm−3)以下であることがより好ましい。
<第一導電型側電極と第二導電型側電極>
本発明の半導体発光素子においては、最も強くθem maxを変化させうるのは、前述の通り、活性層構造が量子井戸活性層構造である場合には、量子井戸層と障壁層の屈折率差、量子井戸数、量子井戸層の厚み等の活性層構造内における薄膜干渉効果を支配する要素と、第二導電型側電極によって反射される内部発光の光路長を規定しうる第二導電型半導体層の薄膜干渉効果とである。
よって、本発明において特に第二導型側電極は、半導体層に接して形成されることが好ましく、特に基板主面に対して略平行な表面を有する第二導電型半導体層に接して形成される部分を有することが好ましく、さらに、その全体が第二導電型半導体層に接していることが好ましい。
ここで、薄膜干渉効果を誘発するために、第二導電型側電極は比較的反射率の高い材料で構成されることが好ましく、特に第二導電型半導体層と接する側を構成する部分は、高反射金属を有することが好ましい。
一般に高反射金属であってもその反射率は100%ではないが、相対的に高い反射率を有する金属は好ましく利用可能である。第二導電型半導体層が、本発明においては好ましくはp型半導体層であるので、第二導電型側電極はp側電極となることが好ましい。ここで、特にPt、Ag、Al等は、本発明で好適に利用される370nmから430nmの範囲においても比較的反射率が高いため好ましい。
一方、第一導電型側電極は、デバイス構造の構成全体によって、その配置を適宜選択可能である。例えば、第一導電型側電極を第二導電型側電極と同じ側に配置し、フリップチップ型発光素子を構成してもよい。また、基板側に第一導電型側電極を配置し、第二導電型半導体層側に配置される第二導電型側電極との間で上下に電流を流す上下導通型の半導体発光素子とすることも可能である。
第一導電型半導体層が、本発明においては好ましくはn型半導体層であるので、第一導電型側電極はn側電極となることが好ましい。ここで、特にAl等は、本発明で好適に利用される370nmから430nmの範囲においても比較的反射率が高いため好ましい。
<放熱機構>
本発明の半導体発光素子は、高出力動作と高効率性を兼ね備えた素子となるので、サブマウント等の放熱機構の上に搭載されることが好ましい。特に放熱機構側には、基板側ではなく、最も発熱する半導体層部側が搭載されることが好ましい。また、半導体発光素子はサブマウント等の放熱機構には、半田によって接着される場合が好ましく、また、高密度に充填されたバンプ上に搭載される場合も好ましい。
〔1−10a.第二導電型半導体層についての補足〕
以下、第二導電型半導体層の厚みについて説明を補足する。
これまでの説明では、内部発光強度密度Jin(θ)が最大値となる際のθをθ em max(度)として、
67.5(度)≦ θ em max <90(度)
となることが一形態として好ましいことを説明した。また、この結果として、第二導電型半導体層の厚みは10nm以上180nm以下であることが好ましいことについて述べた。
これに関して、下記の方針1〜方針3のような技術思想をさらに追加可能である。
(1)すなわち、
方針1:
内部発光強度密度Jin(θ)の最大値を与える角度θem max(度)に最近接し、
Jin(θ)に極小値を与える角度θem L-minimal(度)が以下を満たすことが望ましい。
θem L-minimal(度)<67.5(度)
より一般的には、
θem
L-minimal(度)<(90−sin−1(1/ns(λ)))(度)
であることが望ましい。
なお、半導体発光素子がモールドしてあり、
臨界角が(90−sin−1(nout(λ)/ns(λ)))(度)となる場合も、
例えば、nout(λ)=1.4であればθem L-minimal(度)<55.9(度)となるので、nout(λ)=1.0(空気や真空)としてθem L-minimal(度)<67.5(度)の場合を考えておけば十分な範囲を与えることとなる。
方針2:
θ=θ em max(度)における内部発光強度密度の最大値Jin(θem max)と、67.5度における内部発光強度密度Jin(67.5)の比(Jin(67.5)/Jin(θ em max))が以下を満たすことが好ましい。
Jin(67.5)/Jin(θem max)≦0.9
より一般的には、
Jin(90−sin−1(1/ns(λ)))/Jin(θem max)≦0.9
であることが望ましい。
方針3:
θ=θ em max(度)における内部発光強度密度の最大値Jin(θem max)と、67.5度における内部発光強度密度Jin(67.5)の比(Jin(67.5)/Jin(θem max))が以下も満たすことがさらに好ましい。
Jin(67.5)/Jin(θ em max )≦0.8
より一般的には、
Jin(90−sin−1(1/ns(λ)))/Jin(θ em max)≦0.8
であることがさらに望ましい。
(2−1)
方針1、2についての理由を、図29A等を参照して説明する。
図29Aは、GaN基板上の発光素子の場合であって、内部発光強度密度の放射方向(θem)依存性を示したグラフであって、第二導電型半導体層厚みをパラメータとしている。ここで、量子井戸層数は8、量子井戸層の厚みは2nm、バリア層は13nmと仮定した結果である。さらに、図中の67.5(度)≦θ em≦90(度)の範囲の内部発光は、半導体発光素子側壁からの光取り出しが可能な光であって、図中にはこの臨界角である67.5度の部分が明示されている。
同図に示すように、グラフ中の150nmの線(やや太く描かれている線)を境にして、150nmを超える第二導電型半導体層の厚みがあると、すなわち、67.5(度)≦θ em L-minimal ≦90(度)であると、素子側壁から光取り出し可能な67.5度から90度までの方向に向かう内部発光光の総量が過度に減少し始めてしまう(方針1)。
一方、グラフ中の70nmの線(やや太く描かれている線)を境にして、(Jin(67.5)/Jin(θ em max))が0.9より大きい場合(計算例では60、50nmなど)は、光取り出しができない、67.5度より小さい部分にも過剰に内部発光が向かう傾向になってしまう(方針2)。
また、素子側壁から光取り出し可能な67.5度以上90度以下の方向に向かう内部発光光の総量が過度に減少し始めてしまう。
(2−2)
方針1、3についての理由を、図29Bを参照して説明する。図29Bは図29Aと同様の図であるが、グラフ中の太線で示した部分が異なっている。
最初に、図29Bの例を用いて、方針1についての理由を再度説明すると、次の通りである。すなわち、同図に示すように、グラフ中の150nmの線を境として、67.5(度)≦θ em L-minimal≦90(度)であると、素子側壁から光取り出し可能な67.5度から90度までの方向に向かう内部発光光の総量が過度に減少し始めてしまう(方針1)。
一方、図29Bのグラフ中の80nmの線(やや太く描かれている線)を境にして、(Jin(67.5)/Jin(θ em max ))が0.8より大きい場合(計算例では70、60、50nmなど)は、67.5度より小さいの光取り出しができない部分にも過剰に内部発光が向かってしまう傾向になってしまう(方針3)。
また、素子側壁から光取り出し可能な67.5度以上90度以下の方向に向かう内部発光光の総量が過度に減少し始めてしまう。
側壁からの光取り出しを主としうる半導体発光素子の構成において、第二導電型側半導体層の厚みを70nm以上150nm以下とすることは、格段の効果を生み出すこととなり、好ましい。また、第二導電型側半導体層18の厚みを80nm以上150nm以下とする事はより好ましい。
〔1−10b.MQW構造中の量子井戸層の数についての補足〕
以下、量子井戸層の数について説明を加える。
これまでの説明においては、
(i)極性面上の量子井戸層数に関して、その好ましい層数が、
4層以上、5層以上、8層以上、10層以上であって、
30層以下、25層以下、20層以下であること、
について述べた。
(ii)また、非極性面上の量子井戸層数に関して、その好ましい層数が、
4層以上、5層以上、8層以上であって、
20層以下、15層以下であること、
について述べた。
本実施形態では、上記と同様、下記の方針1〜方針3の技術思想をさらに追加可能である。
(1)すなわち、
方針1:
内部発光強度密度Jin(θ)の最大値を与える角度θ em max(度)に最近接し、Jin(θ)に極小値を与える角度θem L-minimal(度)が以下を満たすことが望ましい。
θ em L-minimal(度)<67.5(度)
より一般的には
θ em L-minimal(度)<(90−sin−1(1/ns(λ)))(度)
を満たすことが好ましい。
方針2:
θ=θ em max(度)における内部発光強度密度の最大値Jin(θ em max)と、67.5度における内部発光強度密度Jin(67.5)の比(Jin(67.5)/Jin(θ em max))が以下を満たすことが好ましい。
Jin(67.5)/Jin(θ em max )≦0.9
より一般的には、
Jin(90−sin−1(1/ns(λ)))/Jin(θ em max )≦0.9
であることが望ましい。
方針3:
θ=θ em max(度)における内部発光強度密度の最大値Jin(θ em max)と、67.5度における内部発光強度密度Jin(67.5)の比(Jin(67.5)/Jin(θ em max))が以下も満たすことがさらに好ましい。
Jin(67.5)/Jin(θ em max )≦0.8
より一般的には、
Jin(90−sin−1(1/ns(λ)))/Jin(θ em max )≦0.8
であることがさらに望ましい。
(2−1)
上記の方針についての理由を、図29Cを参照して説明する。
図29Cは、GaN基板上の発光素子の場合であって、内部発光強度密度の放射方向(θem)依存性を示したグラフであって、量子井戸層の数をパラメータとしている。ここで、量子井戸層の厚みは2nm、第二導電型半導体層の厚みは90nm、バリア層は13nmである。さらに、図中の67.5(度)≦θ em≦90(度)の範囲の内部発光は、半導体発光素子側壁からの光取り出しが可能な光であって、図中にはこの臨界角である67.5度の部分が明示されている。
このグラフにおいて、67.5度以上に極小値が存在しない条件は、量子井戸層数≦11層である。また、Jin(67.5)/Jin(θ em max )が0.9以下となる条件は、量子井戸層数≧5層である。
グラフ中の11層の線(やや太く描かれている線)を境にして、11層を超える量子井戸層があると、すなわち、67.5(度)≦θ em L-minimal≦90(度)であると、素子側壁から光取り出し可能な67.5度から90度までの方向に向かう内部発光光の総量が過度に減少し始めてしまう(方針1)。
また、グラフ中の5層の線(やや太く描かれている線)を境にして、(Jin(
67.5)/Jin(θ em max ))が0.9より大きい場合(計算例では1〜4層)は、67.5度より小さい、光取り出しができない部分にも過剰に内部発光が向かってしまう傾向になってしまう(方針2)。
(2−2)
方針1、3についての理由を、図29Dを参照して説明する。図29Dは図29Cと同様の図であるが、グラフ中の太線で示した部分が異なっている。まず方針1に関して再度説明すると、グラフ中の11層の線(やや太く描かれている線)を境にして、11層を超える量子井戸層があると、すなわち、67.5(度)≦θ em L-minimal≦90(度)であると、素子側壁から光取り出し可能な67.5度から90度までの方向に向かう内部発光光の総量が過度に減少し始めてしまう(方針1)。
一方、図29Dのグラフ中の7層の線(やや太く描かれている線)を境にして(Jin(67.5)/Jin(θ em max))が0.8より大きい場合(計算例では1〜6層)は、67.5度より小さい、光取り出しができない部分にも過剰に内部発光が向かってしまう傾向になってしまう(方針3)。
側壁からの光取り出しを主としうる半導体発光素子の構成において、量子井戸層数を5層以上11層以下とすることは、格段の効果を生み出すこととなり、好ましい。また、量子井戸層数を7層以上11層以下とする事はより好ましい。
〔1−10c.MQW構造中の量子井戸層の厚みについての補足〕
以下、量子井戸層の厚みについて説明を加える。
これまでの説明においては、
(i)極性面上の量子井戸層厚みに関して、その好ましい厚みが、
0.5nm以上、1.0nm以上、1.5nm以上であって、
5.0nm以下、または3.0nm以下であること、
について述べた。
(ii)また、非極性面上の量子井戸層厚みに関して、その好ましい厚みが、
5.0nm以上、10nm以上、15nm以上
40nm以下、30nm以下、25nm以下、20nm以下であること、
について述べた。
本実施形態では、MQW構造に関して、さらに、下記の方針1〜方針2の技術思想を追加可能である。
(1)すなわち、
方針1:
内部発光強度密度Jin(θ)の最大値を与える角度θ em max(度)に最近接し、Jin(θ)に極小値与える角度θem L-minimal(度)が以下を満たすことが望ましい。
θem L-minimal(度)<67.5(度)
より一般的には、
θ em L-minimal(度)<(90−sin−1(1/ns(λ)))(度)
を満たすことが好ましい。
方針2:
高温動作時の電子−正孔対のオーバーフローを抑制するには、
各種検討を加えたところ、1.0nm以上の量子井戸層厚みが必要である。
(2)
上記の方針についての理由を、図29Eを参照して説明する。
図29Eは、GaN基板上の発光素子の場合であって、内部発光強度密度の放射方向(θem)依存性を示したグラフであって、量子井戸層の厚みをパラメータとしている。ここで量子井戸層の数は8、第二導電型半導体層の厚みは90nm、バリア層は13nmである。さらに、図中の67.5(度)≦θ em≦90(度)の範囲の内部発光は、半導体発光素子側壁からの光取り出しが可能な光であって、図中にはこの臨界である67.5度の部分が明示されている。
同図に示すように、グラフ中の7nmの線(やや太く描かれている線)を境にして、7nmを超える量子井戸層の厚みがあると、すなわち、67.5度≦θ em L-minimal≦90度であると、素子側壁から光取り出し可能な67.5度から90度までの方向に向かう内部発光光の総量が過度に減少し始めてしまう(方針1)。
旧来は、光取り出しのために内部発光強度密度Jin(θ)の最大値が側壁からの光取り出し可能な方向に向かうことを主眼においていた。
これに加えて、「内部発光強度密度Jin(θ)の最大値を与える角度θ em max(度)に最近接し、Jin(θ)に極小値与える角度θem L-minimal(度)が、
θ em L-minimal(度)<67.5(度)
を満たすことが、
また、より一般的には、
θ em L-minimal(度)<(90−sin−1(1/ns(λ)))(度)
を満たすことが、より効率的な素子側壁からの光取り出しを可能とすることを見出している。
側壁からの光取り出しを主としうる半導体発光素子の構成において、量子井戸層の厚みを7nm以下とする事は、格段の効果を生み出すこととなり、好ましい。また、方針2から、量子井戸層の厚みを1nm以上とする事は好ましい
すなわち、本発明の一形態の半導体発光素子においては、量子井戸層の厚みが1.0nm以上7.0nm以下であることが好ましい。
[2]半導体発光装置
本発明の半導体発光装置は、前述の本発明の半導体発光素子を備えていることを特徴とする。以下に、本発明の半導体発光装置の一例を示すが、本発明の半導体発光装置は、以下の実施態様のみに限定されるものではなく、公知の半導体発光装置またはそれらの組み合わせである半導体発光装置の態様にも応用することができる。
図16は、フリップチップ構造を有する本発明の半導体発光素子を搭載した半導体発光装置の一例である。
本実施形態の発光装置の基本構成は、図16に示すように、半導体発光素子10がサブマウント101上にフリップチップ実装されている。本発明においては、例えば、図1、図2に示したような、基板の一部に傾斜露出面が形成された半導体発光素子を利用することができる。
半導体発光素子10は、半導体層部15の第一導電型半導体層17及び第二導電型半導体層18のそれぞれに電気的に接続された第一導電型側電極27aおよび第二導電型側電極27bのそれぞれに導電性材料からなる半田またはバンプ102a、102bが設けられており、半導体発光素子10がフェースダウンで半田またはバンプ102a、102bを介してサブマウント101と電気的に接続されている。また、サブマウント101は、さらにプリント配線を有する絶縁基板103と接続されている。絶縁基板103は、半導体発光素子10を搭載するための凹部104が設けられており、凹部104の側壁105には、活性層構造18に平行な方向に内部発光強度密度の最大値を有する本発明の半導体発光素子10の内部発光プロファイルを効果的に利用できるように形状が設計され、さらに反射材料が用いられている。
前記凹部104には、封止材106が充填され、半導体発光素子10を覆っている。
サブマウント101は、放熱機構の役割を有し、高出力動作と高効率性を兼ね備えた本発明の半導体発光素子を搭載する上では好ましい。また、封止材は、本発明の半導体発光素子10の光取り出し効率向上の観点から設けられることが好ましく、その材料としては前述したシリコーン系封止材、高屈折率シリコーン組成物封止材、ガラス封止材のいずれか1以上を用いることが好ましい。封止材には、本発明の半導体発光素子の波長を変換する目的で、1種以上の蛍光体が含有されていても良い。
本発明の半導体発光装置は、本発明の半導体発光素子の内部プロファイルを効果的に利用しつつ、光取り出し効率を向上させるように設計されることが好ましい。
例えば、活性層構造に平行に近い方向への光取り出しが有効となるように、凹部104の側壁105の傾斜角が、半導体発光素子の内部発光強度密度の高い方向の光を外に取り出せるように設計されていることが好ましい。
また、例えば半導体発光素子の発光による蛍光体の効果的な励起を目的として、半導体発光素子の内部発光強度密度の比較的高い方向に蛍光体が配置される様、設計されていることも好ましい。具体的には、蛍光体が前記凹部104の底に近い領域に分布するように、封止材を硬化させる工程において意図的に蛍光体を沈降させる工程を設けておくことなどが挙げられる。
図16では、フリップチップ型構造を有する本発明の半導体発光素子を搭載した半導体発光装置の一例を挙げたが、例えば上下導通型構造を有する本発明の半導体発光素子を搭載した場合も同様に設計することができる。すなわち、本発明の半導体発光素子の内部プロファイルを効果的に利用しつつ、光取り出し効率を向上させるように、封止材、反射材、蛍光体の配置などの設計がされていることが好ましい。
[3]半導体発光素子の製造方法
本発明の一形態の半導体発光素子の製造方法は、一例として、窒化物基板主面上に形成され、少なくとも第一導電型半導体層、ピーク波長λの光を発する活性層構造、第二導電型半導体層を含む半導体層部を有する半導体発光素子の製造方法であって、
窒化物基板を準備する第一工程と、
前記窒化物基板の主面上に半導体層部を形成する第二工程と、
前記半導体層部を加工する第三工程と、
前記基板と加工された半導体層部を各素子に分離する第四工程と、を含み、
当該発光素子の一部を加工して、当該発光素子の基板部分に前記主面とのなす角度が0度でも90度でもない傾斜露出面を形成する工程をも含む、ことを特徴とする。
本発明の製造方法では、適切な工程において、基板厚み、素子分離端形状、基板主面形状、半導体層部形状等が、必要により加工される。
さらに本発明における本発明の半導体発光素子には窒化物基板が用いられる。窒化物基板としては前述と同じく、GaN、AlN、BN、InN基板、あるいはこれらの原料からなる混晶基板が好ましいが、GaN、AlN、BN基板を用いることがより好ましく、GaN基板を用いることが最も好ましい。
本発明においては、発光素子の製造方法は容易であることが好ましいので、第一工程から第四工程は、この順に実施することがより好ましい。
<第一工程>
第一工程は、半導体層部形成工程の前に窒化物基板を準備する工程である。この工程においては、各種基板を作成する製法としての窒化物基板の結晶成長工程、基板の外形加工工程、主面仕上げ工程、基板厚み調整工程、裏面仕上げ工程等を含むことが好ましい。
第一に本発明の第一工程で準備する窒化物基板は、基板の説明において前述した気相成長法、液相成長法等によって形成された基板であることが好ましい。
本発明においては、基板はGaN基板が最も好ましい。
次に、本発明においては窒化物基板を用いるため、サファイア等の過剰に硬質な基板と異なるため、適切な平面形状の寸法を有する半導体発光素子の形成を予定して準備する窒化物基板であれば、半導体層の形成時の基板厚みと素子分離工程の際の基板の厚みが同一であっても、高品質な半導体発光素子を容易に形成可能である。従って、素子中に存在する基板の物理的厚みttは、第一工程においてttの厚みとなっても、その後にこの厚みにされてもよい。
サファイア等の過剰に硬質な基板上に形成される半導体発光素子においては、半導体層部形成時には、熱歪み抑制等の観点で、ある程度の基板厚みが必要であるが、その後は基板を薄膜化しないと、素子分離ができないとの不具合が発生する。
これに対して、本発明においては、適切な平面形状の寸法を有する半導体発光素子の形成を予定して準備する窒化物基板であれば、半導体層部形成後等に、基板全面の厚みを、研磨、エッチング等によって調整することが必須とならない。
すなわち、本発明においては、素子中において好ましい基板厚みに調整する工程、すなわち「基板厚み調整工程」を、第一工程内、または第一工程及び第二工程の間(以下、「第一第二工程間」と称する。)において実施することは好ましい。
さらに、光取り出しのために新たな露出面を形成する傾斜露出面形成工程、少なくとも露出面の一部への凹凸加工を付与する露出面上凹凸形状形成工程なども、あらかじめ第一工程内あるいは第一第二工程間において実施しておくことが好ましい。
このようにすると、半導体層部が形成されておらず、電極等も形成されていないため、加工時にこれらの層を保護する必要等がなく、基板の必要部分に必要な加工を容易に施すことが可能であって、好ましい。
この中でも、本発明の半導体発光素子は、素子完成時の基板厚み調整工程を、特に第一工程内において実施することがより好ましい。
一方、図8〜図11に例示した基板側壁部、主面と対峙する面などを傾斜させる様態の傾斜露出面形成工程は、第一工程内、第一第二工程間の少なくとも一方で行ってもよい。
さらに、傾斜露出面を含む各種露出面に、凹凸加工を付与する露出面上凹凸形状形成工程は、基板露出面に通常露出している面以外の面を意図的に付加し、新たな傾斜露出面を形成する場合には、その形成後に行うことが好ましい。
また、基板露出面に通常露出している面以外の面を意図的に付加しない場合は、露出面上凹凸形状形成工程は、第一工程内あるいは第一第二工程間で行うことがより好ましい。
なお、加工の程度、深さ等によっては、意図しない基板の割れ等を第二工程、第二工程及び第三工程の間(以下、「第二第三工程間」と称する。)、第三工程、第三工程及び第四工程の間(以下、「第三第四工程間」と称する。)、第四工程、第四工程後で誘発してしまうこともある。
このような場合を回避する観点では、基板厚み調整工程、傾斜露出面形成工程、露出面上凹凸形状形成工程は、後述する第二第三工程間、第三第四工程間、第四工程内、第四工程後に行うことも好ましい。また、第一工程や第一第二工程間で部分的に行い、第二第三工程間、第三第四工程間、第四工程内、第四工程後にさらに行うことも好ましい。
なお、本発明で好ましい発光素子の製造方法は、第一工程内で基板厚み調整工程を実施し、その後、任意の工程として、第一工程内あるいは第一第二工程間で露出面上凹凸形状形成工程を実施する。その後、第二工程として半導体層部形成工程を行う。その後、第三工程として半導体層部加工工程を実施する。
その後、第三第四工程間あるいは第四工程内で傾斜露出面形成工程、さらに露出面上凹凸形状形成工程を行い、半導体発光素子を完成させることである。また、第二工程実施後には、基板厚み調整工程を実施しないことが好ましい。なお、通常市販されている窒化物基板を購入する場合も、第一工程を実施していることと同等である。
このような製造工程にすると、半導体層部形成工程実施の際と、半導体層部加工工程の際に、傾斜露出面形成工程によって形成される比較的マクロな形状が基板裏面に付与されていないため、半導体層部形成時の温度ムラ等の懸念が低減し、また、半導体層部加工工程の際の各種プロセス実施時の基板真空チャック等おける不具合も発生しない。さらに、その後、傾斜露出面形成工程を実施した際に、あらたな加工を施した部分は、凹凸加工を付与できることとなるため、最も好ましい。
<基板厚み調整工程>
基板厚み調整は、半導体基板をバルク結晶からきり出す際に、そのおおよその厚みを決め、その後、機械的ラッピング、機械化学的ポリッシング、化学的ポリッシング等、エッチング等の種々の方法によって確定させることが可能である。
<傾斜露出面形成工程>
基板は、図8Aの(a)の形とする場合には、意図的な基板露出面を新規に形成することなく、常識的に基板を分割するだけで、露出面を形成することができる。
一方、(a)以外の形に例示されるような、基板主面と平行な面以外の面や、垂直な面以外の面を、例えば基板厚みと同等程度のオーダーとして、後述する凹凸形成と比較して大きな寸法で付与すべく加工する場合には、本発明における半導体発光素子の製造方法においては、傾斜露出面形成工程を実施する。
露出面形成工程で好ましく形成される面は、最終的に半導体発光素子が内在する基板の最大物理厚みをtsとする際に、最終的に半導体発光素子に内在する加工部分を素子断面的に見ると、その加工される断面部分の大きさは、ts/10から10ts程度であることが好ましい。露出面形成工程で形成される面は、必ずしも光の散乱機能等を有する必要はないが、散乱機能を有するように追加加工することも可能である。
傾斜露出面形成工程は、ダイシング、機械的スクライビング、光学的スクライビング、ドライエッチング、ウエットエッチングのいずれかの方法もしくはこれらの組み合わせで実施することがこのましい。
特に、ダイシングによって実施することが好ましい。これは他の方法と比較しても、内部発光プロファイルを考慮して所望の角度を有する傾斜露出面を、ダイシングブレードの形状等を適宜選択することで形成できるために、傾斜露出面の傾斜制御性に優れるためである。
さらにダイシング工程は、後述する第四工程における素子分離時にも、換言すると、意図的な基板露出面を新規に形成することなく、通常の常識的な基板を分割する場合にも、有効である。よってダイシングによる加工は、比較的厚い窒化物膜厚の傾斜露出面形成工程、素子分離工程等、多域に渡って利用でき、好ましい。
特に傾斜面露出工程においては、ダイシングブレードの断面形状を左右非対称とすることで、対称性の低い基板露出面を形成することも好ましい。このようにすると、半導体発光素子の側壁部を構成する部分は、対称性が低い形状となる。
例えば、図8の(b−3)、(c−3)、(d−3)、(e−3)などの断面形状は、(a)、(b−1)、(c−1)、(d−1)などの場合と異なり、その断面形状にたとえば線対称軸が存在しない。このために図形としての対称性が低い。このような場合には、例えば、半導体発光素子内部で真性閉じ込め光となってしまう全反射をある特定の面で受けた光すら、対称性が低いことから、他の面などから脱出することのできる確率が高くなるため、光取り出し効率向上の観点から好ましい。
<傾斜露出面仕上げ工程>
本発明においては、傾斜露出面を形成した後には、傾斜露出面仕上げ工程を行うことが好ましい。傾斜露出面を任意の方法で形成する際には、当該露出面近傍の窒化物基板にダメージが入る場合もあり、このようなダメージ部分を除去、回復するための工程を傾斜露出面仕上げ工程として行うことは好ましい。これは、窒化物基板にダメージが導入された部分は、そうでない部分と比較して、消衰係数が大きくなる、光取り出しに不利な面となってしまう場合があるからである。また、傾斜露出面形成時に汚れ等が導入される場合もあり、洗浄することでこのような部分を除去、回復することも好ましい。
傾斜露出面仕上げ工程は、傾斜露出面の形成後であれば、任意の時期に行うことが可能である。
傾斜露出面仕上げ工程においては、窒化物基板の基板ラッピング、基板ポリッシング等と類似の機械化学的エッチング技術を使用することが可能である。さらに、後述する凹凸形成工程で使用する各種溶液を使用することも可能である。具体的には、KOH,HCl等の各種アルカリ性溶液、酸性溶液を使用したエッチングを行うことも可能である。さらに、有機洗浄等によって洗浄することも可能である。
<基板面方位及び基板上凹凸形成工程>
本発明における凹凸加工とは、傾斜露出面形成と比較して相対的に微細な加工であって、光を散乱させる機能を有する加工である。よって、その凹凸サイズ(高低差)は、半導体発光素子のピーク波長をλとして、λ/50から50λ程度の寸法を有する加工である。好ましくはλ/10から10λ程度の寸法を有し、より好ましくはλ/7から7λ程度の寸法を有し、より好ましくはλ/5から5λ程度の寸法を有する。このような加工は光の散乱を誘発するために、加工の周期性や加工の大小が乱れていることが好ましく、ランダムであることがより好ましい。前記凹凸サイズは、例えば表面粗度Ra等により測定される。
本発明において第一工程で準備する基板の主面の面方位は(0001)面あるいはこれらの面からのオフ角度が5度以内の面であることが好ましい。
このような選択をすることによって、基板主面と対峙する面が窒素面となり、この面に微細な凹凸加工を容易に形成できるため、好ましい。具体的には、基板のバンドキャップに相当するエネルギーよりも大きなエネルギーを有する波長の光を照射しながらKOH、HCl等のアルカリ性溶液、酸性溶液に浸したり、高温環境下においてKOH、HCl等のアルカリ性溶液、酸性溶液に浸したりする(光/電気)化学エッチングをすることで、(000−1)面の加工が容易にできるため、好ましい。
本発明において第一工程で準備する基板の主面の面方位は(1−10n)面、(11−2n)面(但しnは0、1、2、3)あるいはこれらの面からのオフ角度が5度以内の面であることも好ましく、(1−100)面、(11−20)面であることがより好ましい。これらの面は半極性面、非極性面となるため、内部量子効率の向上が期待されるため好ましい。また、このような面を主面に有する場合であっても、基板の一部を加工して他の面を露出させる傾斜露出面形成工程を実施ことで(光/電気)化学エッチングによる基板上凹凸形成工程を施すことが可能となるため、好ましい。
本発明においては、基板主面を非極性面である(1−100)面(m面)とし、基板と対峙する面にダイシング装置等によって、第一工程で基板主面と平行でない面、基板主面に垂直でない面などを露出させ、ここに基板上凹凸形成工程として、(光/電気)化学エッチングによる凹凸加工を施すことは、より好ましい。
本発明においては、上記の(光/電気)化学エッチングによる凹凸加工を施すことは、第一工程において実施することが、非常に好ましい。このように第一工程において実施すると、半導体層部が形成されておらず、電極等も形成されていないため、加工時にこれらの層を保護する必要等がなく、基板の必要部分に必要な加工を容易に施すことが可能であって、好ましい。
また、上記の(光/電気)化学エッチングによる凹凸加工を施すことは、第一第二工程間、第二第三工程間、第三第四工程間、第四工程内、第四工程後いずれで実施することも好ましい。特にこのようにすると半導体層部形成時に都合のよい基板主面と対峙する面に求められる、例えば高温における均熱性に優れた面と、光取り出しに求められる凹凸の度合いを独立に制御できるため好ましい。
さらには、第三工程の後に実施すると半導体層部形成時における高温均熱性の観点だけではなく、半導体層部加工工程で、基板を真空吸着する際などに求められる裏面のある程度の平坦性と、光取り出しに求められる凹凸の度合いを独立に制御できるため好ましい。
また、第四工程内、第四工程後に行うことも、素子の露出面、分離面等すべてに凹凸加工を施す観点からは、好ましい。
<第一第二工程間工程>
第一工程は、半導体層部形成工程の前に窒化物基板を準備する工程であって、第二工程は後述するとおり、当該基板主面上に少なくとも半導体層部を形成する工程である。この間に第一第二工程間工程を有することは任意である。
たとえば、第一工程として窒化物基板を購入し、その後、半導体層形成工程前に、第一第二工程間工程として、基板厚み調整工程を実施したり、傾斜露出面形成工程を実施したり、露出面上凹凸形状形成工程を実施することは、実効的に第一工程においてこれらの工程を実施することと等価であって、本発明の好ましい形態のひとつである。
<第二工程>
本発明における第二工程内においては、少なくとも半導体層部を基板主面上に形成する工程を有する。この際には、前述の通り、本発明の基板が窒化物であるので、基板と半導体層の屈折率差が小さいためにも、半導体層部は窒化物を含むようにすることが好ましく、特に活性層部分は窒化物で構成するようにすることが好ましく、半導体層部全体が窒化物からなるようにすることがより好ましい。
一方、窒化物基板との屈折率差が小さい場合等には、基板上に、炭化物、酸化物、フッ化物、燐化物、硫化物、塩化物、砒化物、セレン化物、臭化物、テルル化物、ヨウ素化物、あるいはこれらの混晶、さらには窒化物とこれらの混晶等を形成し、窒化物のみでは実現が難しい波長を発光しうる構成とすることも好ましい。
本発明のより好ましい形態において、第二工程における窒化物基板主面上に形成される窒化物半導体層部をAlxGayIn1−(x+y)N(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)とすることは、さらに好ましい。このような構成とすると、基板、バッファ層、第一導電型半導体層、活性層構造、第二導電型半導体層をはじめ、その他の任意で形成しうる層をすべて高品質の窒化物とすることが可能となるため、さらに好ましい。
本発明においては、特に、第二工程においては、MOCVD法、MBE法、PLD法、PED法、PSD法、H−VPE法、LPE法のいずれかの方法、もしくはその組み合わせによって半導体層部を形成することが好ましい。これらの方法はいずれも高品質の半導体層を形成することが可能であるからである。
特に、半導体層を形成する際には、窒化物基板上にホモエピタキシャル成長した半導体層を形成する観点からは、MOCVD法、MBE法、H−VPE法、LPE法等が好ましく、窒化物基板上にヘテロエピタキシャル成長した半導体層を形成する観点からは、MOCVD法、MBE法、PLD法、PED法、PSD法等が好ましく、半導体層の構造の中に、比較的薄いμm以下の厚みを有する層を精度良く作製する観点からは、MOCVD法、MBE法、PLD法、PED法、PSD法が好ましい。
特にこれらの方法の中でも、本発明でより好ましい形態である窒化物基板上にAlxGayIn1−(x+y)N(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)からなる半導体層部を形成する場合には、MOCVD法、MBE法を用いることがより好ましく、この中でもMOCVD法によって形成することが最も好ましい。
本発明者らの検討によれば、本発明でより好ましい形態である窒化物基板上にAlxGayIn1−(x+y)N(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)からなる半導体層部をMOCVD法によってエピタキシャル成長する場合には、第二工程における窒化物基板主面上に形成される半導体層部の形成初期過程を、意図的なSi原料供給がされないエピタキシャル成長過程とすることがより好ましい。
本発明者らは、このようにすると、半導体層部がモフォロジの平坦性に優れ、かつ内在する活性層構造の平坦性も優れ、かつこの結果として内部量子効率も高い活性層構造とすることが可能であることなどを見出している。さらに、本発明者らは、N2キャリアによって半導体層部の形成前の温度昇温を行うことが、MOCVD法による窒化物基板上へのAlxGayIn1−(x+y)N(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)からなる半導体層部形成に好適であることを見出している。このようにすると、通常のH2キャリアによる半導体層部の形成前の温度昇温に比較して、半導体層部の表面モフォロジが良好となり、かつ平坦な量子井戸活性層構造を形成できるため好ましい。
また、本発明の第二工程においては、半導体層部内の量子井戸層形成時のIn濃度を、そのピーク発光波長λが370nm以上430nm以下となるように調整することが好ましい。本発明の一形態においては、半導体層内部で生成された光は、発光素子側壁から取り出すことが可能である。
よって、本発明は半導体発光素子の平面的な大きさが大きい素子において非常に有効な方法であって、さらに、一般に電極における反射率が高くない紫や近紫外、紫外領域の半導体発光素子に好適に利用できる技術である。よって、そのピーク発光波長λが370nm以上430nm以下となるように調整することが好ましい。
より好ましくは、ピーク発光波長λの下限は、380nm以上がより好ましく、390nm以上がより好ましく、400nm以上がより好ましい。さらに、そのピーク発光波長λの上限は、420nm以下がより好ましく、410nm以下がより好ましい。
<第二第三工程間工程>
本発明における第二工程は、少なくとも半導体層部を基板主面上に形成する工程を有し、本発明の第三工程は、少なくとも窒化物基板の主面上に形成された半導体層を加工する工程を有する。
よって、第二工程と第三工程の間に任意の工程を有することも可能である。ここで、第二第三工程間工程において基板厚み調整工程を行ってもよく、傾斜露出面形成工程、露出面上凹凸形状形成工程等を第二第三工程間に行うことは好ましい。
このような製造工程にすると、半導体層部形成工程実施の際に傾斜露出面形成工程によって形成される比較的マクロな形状や、露出面上凹凸形状形成工程等によって形成される比較的ミクロな凹凸が基板裏面に付与されていないため、半導体層部形成時の温度ムラ等の懸念が低減する。
<第三工程>
本発明の第三工程においては、少なくとも窒化物基板の主面上に形成された半導体層を加工する工程を有する。
具体的には、少なくとも第二導電型側電極の形成、半導体層のエッチング、第一導電型側電極の形成を含み、これらは任意の順番で実施することができる。また、絶縁層の形成を含んでいてもよい。さらに、半導体層部の加工と同時に、または半導体層部の加工とは別に、基板主面を加工してもよく、そのときに、基板主面の任意の2点の作る最も長い線分長Lscが、本工程において決まる場合がある。その際、主面を略m角形に加工する場合には、略m角形の主面の最短辺の長さLsaも、本工程において決まる場合がある。
詳細な具体例として、以下の工程を任意の順序で行うことが挙げられる。
(1)第二導電型側(第一)電極の形成、
(2)半導体層のエッチング、
(3)絶縁層の形成、
(4)第一導電型側(第一)電極の形成、
(5)第一導電型側第一電極上への第一導電型側バリア層および第一導電型側第二電極の形成、
(6)第二導電型側第一電極上への第二導電型側バリア層および第二導電型側第二電極の形成。
また、各種電極の形成は、いわゆるフリップチップ型の半導体発光素子とする場合には、各種電極が半導体層部側に接して形成される部分を有することが好ましく、また、基板を電流注入路とする上下導通型の半導体発光素子とする場合には、一方の導電型側電極が半導体層部側に形成されると、他方の導電型側電極は基板に接して形成される部分を有することが好ましい。
本発明の半導体発光素子の製造方法においては、半導体層部端部の意図的な加工を行わずに、図9(a−1)のような形態とする場合は、作成プロセスが最も単純となり、このような形態も本発明において好ましい。但し、このような場合には、例えば、窒化物基板主面、素子分離端、および半導体層部端部の形状が一致している。このため、これらの形状を独立に制御し、光取り出し効率のさらなる向上、光の配光特性制御の付加、凹凸加工がすでに施された基板側からの素子分離を避けて、半導体層部側から素子分離を容易に行うための素子分離溝の形成などはできないこととなる。
そこで、本発明の半導体発光素子の製造方法においては、図9に例示される半導体層部端部の形状を実現する半導体層部端部形成工程は、第三工程内で行うことも好ましい。この際には、半導体層部端部の平面形状は、任意の図形を取ることが可能であって、その側壁には、平面的な凹凸形状が形成されることが好ましい。
また、本発明の一形態では、半導体発光素子の内部発光強度密度の最大値を与える方向は、活性層構造と平行な方向に近接しているため、半導体層部端部の断面形状加工は、光取り出し効率、光の配光特性制御の付加等に影響を与えるため、適切に実施することが好ましい。また、このように形成した溝部分は、半導体層部側から素子分離を行う場合に容易に素子分離を行うための素子分離溝ともなりうるため好ましい。
ここで、第三工程内において、半導体層部端部形成を当該窒化物基板の主面に対して略垂直に実施することは、エッチングプロセスが容易であって、かつ、エッチングした部分を後述する素子分離の分離始点とすることも可能であって好ましい。
一方、第三工程内における半導体層部端部形成を、当該窒化物基板の主面に対して略垂直でないようにすることは、基板内部に出射される光の方向を変化させることで、側壁から出射される外部発光の方向、すなわち配光特性を制御できるため好ましい。
特に、図9〜図11の(b−2)、(c−2)、(d−2)の様に、「半導体層部の形成方向に対して順テーパー」とすることによって、内部発光を基板側に反射させることも可能であって、内部発光の方向を積極的に制御し、半導体発光素子側壁からの光取り出し効率を向上させ、さらに、配光特性を制御できるため好ましい。
一方、図9〜図11の(b−3)、(c−3)、(d−3)のように「半導体層の形成方向に対して逆テーパー」とする場合も、半導体層側壁からの光の出射を制御し、配光特性を制御できるため好ましい。
また、半導体層部端部の加工を、半導体層部の途中まで、基板界面まで、基板の途中までのいずれかの深さで実施することは好ましい。半導体層部端部の加工を半導体層部の途中まで実施する場合には、加工時間が短時間で済むために好ましい。
基板界面まで実施する場合には、特に窒化物基板上に異種材料を形成した際などに、エッチングを選択的に実施することも可能であってこのような場合に好ましい。
さらに、基板の途中まで実施する場合は、基板内部に出射される光の方向を、他のいずれの方法よりも大きく変化させることで、半導体発光素子側壁からの光取り出し効率を向上させ、さらに、配光特性を制御できるため好ましい。
これらの半導体層部端部の加工は、本発明においては、ドライエッチング、ウエットエッチング、ダイシング、機械的スクライビング、光学的スクライビングのいずれかの方法、もしくはこれらの組み合わせで行うことが好ましい。特に、ドライエッチング、ウエットエッチング、ダイシングは、各種プロセス条件を制御することで、テーパー形状、溝深さ等を自在に制御可能であるため、より好ましい。
特にドライエッチングとウエットエッチングは、フォトリソグラフィー技術を用いて任意の形状をフォトマスクから転写することができるため、半導体層部端部形成時に平面的な凹凸加工や各種任意の形状を形成できるため特に好ましい。このようにするとさらに光取り出し効率を向上できるため好ましい。
特に、前述のように、半導体層部端部あるいは活性層構造の端部を対称性の低い形状とすることは、光取り出しの観点で好ましい。このような場合には、例えば、半導体発光素子内部で真性閉じ込め光となってしまう全反射をある特定の面で受けた光すら、対称性が低いことから、他の面などから脱出することのできる確率が高くなるため、光取り出し効率向上の観点から好ましい。
半導体層部端部の加工は、上記の通りドライエッチングかウエットエッチングで行うことが好ましいが、特に半導体層部は好ましくは窒化物であって、このために、ウエットエッチングよりもドライエッチングによって半導体層部端部の加工を行うことが好ましい。
ここで、高密度プラズマプロセスが実現可能なICP法によってプラズマを励起し、Clを含むガスによってドライエッチングを実施することが好ましい。また、エッチングマスクは、SiNx、SiOx、SrF2を含むマスクを用いることが好ましく、特にSrF2を含むマスクを用いることが好ましい。
さらに、SrF2を用いると、半導体層部とマスク材料の選択比を大きくすることが可能であって、特に、半導体層部端部を深くエッチングして形成する場合に好適である。さらに、本発明者らの検討では、SrF2にレジストを意図的に含有させる処理を行う、ポリマー処理を行う、酒石酸等による化学薬品処理を行う等のことで平面的な形状制御に優れたエッチングプロセスを構築できるため、好ましい。
また、順テーパーエッチング、垂直エッチング、逆テーパーエッチング等の形状制御は、ドライエッチング時のプラズマ密度、圧力、温度、使用するガス、エッチングバイアス等を適宜選択することで実現可能である。
本発明の半導体発光素子は、発光ユニット、すなわち単体の発光素子として機能しうる部分が、1つであってもよいが、発光ユニットが1つの発光素子内に複数存在する場合が好ましい。すなわち、いわゆる集積型の半導体発光素子であることが好ましい。このような場合においては、第三工程内において、予定された1つの発光素子内の半導体層部に複数の発光ユニットを形成することが好ましく、複数の発光ユニットは、発光ユニット間分離溝によって分離されるようにすることが好ましい。
この発光ユニット間分離溝においても、半導体層部端部の形成時と同様に、深さ制御、テーパー角制御等を行うことが好ましく、特に内部発光強度密度の最大値を示す方向に対して垂直壁となるような角度で発光ユニット間分離溝を形成することは好ましい。
このような発光ユニット間分離溝は、ドライエッチング、ウエットエッチング、ダイシング、機械的スクライビング、光学的スクライビングのいずれかの方法、もしくはこれらの組み合わせで形成することが好ましい。特に、半導体層部端部の加工と同様に、ドライエッチングによって実施することが好ましく、特に、半導体層部端部の加工と同時に実施することがより好ましい。
<第三第四工程間工程>
本発明における第三工程は、少なくとも窒化物基板の主面上に形成された半導体層を加工する工程であって、第四工程は、基板と加工された半導体層部を各素子に分離する際に、所望の形状となるように素子分離を行う工程である。ここで、第三第四工程間工程において、基板厚み調整工程を行ってもよく、また、傾斜露出面形成工程、露出面上凹凸形状形成工程等を第三第四工程間に行うことはより好ましい。
このような製造工程にすると、半導体層部形成工程の際と、半導体層部加工工程の際に、傾斜露出面形成工程によって形成される比較的マクロな形状が基板裏面に付与されていないため、半導体層部形成時の温度ムラ等の懸念が低減し、また、半導体層部加工工程の際の各種プロセス実施時の基板真空チャック等おける不具合も発生しない。
<第四工程>
本発明の第四工程においては、少なくとも、基板と加工された半導体層部を各素子に分離する。基板主面の任意の2点の作る最も長い線分長Lscは、本工程より前の工程で決まる場合もあるが、本工程において決まる場合が多い。その際、主面が略m角形である場合に、略m角形の主面の最短辺の長さLsaも、本工程において決まる場合場合が多い。
本発明の第四工程においては、具体的には、第三工程を終了した製造途上の半導体発光素子を含むウエハーの粘着シートへの貼り込み、スクライビング、ブレーキング、ダイシング、粘着シート上での素子分離、粘着シートからの素子剥離等の任意の工程を任意の順番で行うことが可能である。また、第四工程において、基板の一部を加工して新たな露出面を形成する露出面形成工程、少なくとも露出面の一部に凹凸加工を付与する凹凸形成工程を有することも好ましい。
第四工程においては、半導体発光素子を所望の大きさの素子に分割することが重要であって、この点に関する歩留まりを左右する要素は、素子形状そのものにもあることは、前述の通りである。
一方、素子分離工程のプロセスに関し、好ましい範囲は以下の通りである。
例えば、第三工程内において半導体層部端部の加工された部分は、素子分離溝としても利用可能であって、この部分にダイヤモンドスクライブやレーザスクライブによって、分離始点を形成し、その後各素子にブレーキングすることが可能である。ここで、ブレーキング後に露出面に凹凸加工を付与する凹凸形成工程を実施することは、半導体発光素子の側壁面がすべて露出するので、その全体に凹凸加工を付与することできるため好ましい。
また、ダイヤモンドスクライブやレーザスクライブを基板裏面側から実施することも好ましい。
たとえば、レーザスクライブで基板側に分離始点を有するようにして、基板裏面とその内部に意図的なダメージ披瀝部分を形成し、その後に素子に分割する前にダイシング装置で、レーザスクライブの基板表面痕の上を含んで、他の部分も同時にダイシングを行い、表面の変質層を除去し、その後に露出面に凹凸加工を付与した後にブレーキングするなどのことも好ましい。このようにするとレーザスクライブによる表面の変性層を容易に除去できるため、好ましい。
本発明においては、分離始点の形成は、ダイヤモンドスクライブや窒化物基板より硬質な材質を有するダイヤモンド以外の材料を先端に有するスクライビングツールを用いて「傷入れする」機械的スクライビングによって行うことは好ましい。また、集光された高エネルギー密度の光を照射することによって分離始点となる部分やその内部に意図的なダメージ披瀝部分を作る、レーザスクライブに代表される光学的スクライビングによって行うことも好ましい。
さらに分離始点はダイシングやドライエッチング、ウエットエッチングによっても形成可能であって、いずれの方法も好ましく利用可能である。
機械的スクライビングは方法が簡便であって好ましく利用可能である。特に窒化物基板はサファイア等の過度に硬質な基板と異なるため、高価なダイヤモンドを先端に有するダイヤモンドスクライブツールを使用することなく、例えばルビー、サファイア、TiN、炭化珪素等の比較的硬質であって、安価な材料によっても機械的なスクライブが可能であるため、窒化物基板より硬質な材質を有するダイヤモンド以外の安価な材料を先端に有するスクライビングツールを用いて「傷入れする」機械的スクライビングは、コストの観点からよりこの好ましい。
また機械的スクライビングとして高水圧の水で本発明の半導体発光素子にスクライビングを施すことは非常に好ましい。このようにすると、スクライビング時の基板への着色等を抑制できる他、基板主面に垂直方向に投影した形状が略m角形などである窒化物基板の分離形成が比較的容易であるため、好ましい。
さらに、集光された高エネルギー密度の光を照射することによって分離始点となる部分やその内部に意図的なダメージ披瀝部分を作る光学的は、ダイヤモンドスクライブと比較して安定的なスクライブが実施可能であって、より好ましい。特に、窒化物に対して分離始点を形成する際には、そのバンドギャップよりも小さなエネルギーを有する波長の光でスクライブすることが好ましい。
このようにすると、スクライブ対象部において光の吸収(アブソープション)がなく、対象材料の昇華(アブレーション)が起きるために好ましい。さらに、本発明の半導体素子そのものはその厚みが比較的厚くなる場合もあるため、スクライブ対象部分の内部にもダメージ披瀝部分を作製しておくことは、比較的厚い半導体発光素子のブレーキングに有利になる。このため、本発明の半導体素子に、スクライブ対象部において光の吸収がない波長で光学的なスクライブを行う際に、スクライブ対象の表面ではなく、その内部に光が集光するように調整し、内部のみに意図的なダメージ披瀝部分を形成する方法でスクライブすることは特に好ましい。
すなわち、窒化物基板上に形成された半導体発光素子の製造方法であって、半導体発光素子の主たる構成要素が有するバンドギャップに対して透明となる波長を有する光でスクライブする際に、その内部に集光ポイントを有するようにしてスクライブする方法は、比較的厚膜の窒化物半導体発光素子を歩留まり良く素子分離できる他、基板主面に垂直方向に投影した形状が略m角形などである窒化物基板の分離形成が比較的容易であるため、非常に好ましい。
機械的スクライブ、光学的スクライブ、ダイシング、ドライエッチング、ウエットエッチング等によって形成する分離始点は、基板側にあることが好ましい。このようにすると、半導体層側から分離始点を形成する場合に比較して、厚膜となる場合もある本発明の半導体発光素子基板に対して確実に分離始点を形成することが可能となるために好ましい。
一方、分離始点は半導体層側にあることも好ましい。基板裏面などに露出面形成や凹凸加工形成が完了している際に、第三工程において半導体層部に作製された1つ1つの素子パターンを基板裏面側からでは認識出来ずに、分離始点部分を容易に決定できない場合がある。このような場合でも、分離始点を半導体層側にすると、本発明の半導体発光素子に対して確実に分離始点を形成することが可能となるために好ましい。
本発明の半導体発光素子の基板厚みが比較的厚いものとなる場合には、スクライブで形成される意図的なダメージ披瀝部分をきっかけとして、最終分割して素子を形成するブレーキングを行うことが好ましい。例えば図8の(b−1)(b−2)(b−3)(e−1)(e−2)(e−3)のように、素子分離後の形状において素子分離端あるいは分離面となる部分が、素子作製途上において隣接する素子パターンと連続している部分が多い場合には、ブレーキングはより好ましく実施される。
一方、図8の(c−1)(c−2)(c−3)(d−1)(d−2)(d−3)のように、新たな露出面形成を素子分離端近傍で行った場合などに例示されるように、素子分離後の形状において素子分離端あるいは分離面となる部分が、素子作製途上において隣接する素子パターンと連続している部分が少ない場合には、スクライブが不要な場合もある。
なお、本発明においては、後者の場合は、素子作成プロセスが簡素化可能であって、作製プロセス上好ましい。
本発明においては、素子分離を実施した際に、素子を粘着シートから剥離する際の歩留まりにおいても、前述の通り、Lscを最適値とすることにより、第四工程における素子分離の歩留まりは高くすることができる。
<第四工程後工程>
本発明の半導体発光素子は、粘着シート等からの剥離が完了した後に、放熱性や電流注入性を容易にするために、いわゆるサブマウント等の放熱板に搭載することが好ましい。また、必要に応じて、サブマウントへの接着は、バンプ、半田等の任意の方法を用いることが可能であるが、放熱性を考慮したマウントを行い、Agが成分として含まれないようにすることが好ましい。
本発明においては、半導体発光素子の好ましいピーク波長λの下限は、370nm以上が好ましく、380nm以上がより好ましく、390nm以上がより好ましく、400nm以上がより好ましい。さらに、そのピーク発光波長λの上限は、430nm以下が好ましく、420nm以下がより好ましく、410nm以下がより好ましい。ここで、このような波長の光をAgに当てると特に激しく変色してしまい、初期の高い反射率が保存されず、光吸収が大きくなってしまい、光源として好ましくなくなるからである。
本発明の半導体発光素子は、粘着シート等からの剥離が完了した後に、封止をし、半導体発光装置を構成することが好ましい。特に、本発明においては、その半導体発光素子の周辺をシリコーン系封止材(1.25≦nout(λ)≦1.45)やガラス封止材(1.55≦nout(λ)≦2.10)によって覆うことは、光取り出し効率のさらなる向上のために好ましい。また、封止材の中に蛍光体などの波長変換用粒子等をいれておき、半導体発光素子の発する光の波長の少なくとも一部を、他の波長に変換することも好ましい。このような場合であっても、本発明の発光素子は、式1や式3を満たすことが好ましい。
封止時の温度は、600℃以下で実施されることが好ましく、500℃以下で実施されることがより好ましく、400℃以下で実施されることがより好ましく、300℃以下で実施されることがより好ましく、200℃以下で実施されることがさらに好ましい。このように可能な範囲で低温プロセスとすることで半導体発光素子へのダメージを導入せずに光出力を向上させることが可能であって、好ましい。
以下に実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
[1]半導体発光素子の製造
(実施例1、比較例1)
〔第一工程〕
窒化物基板として、(0001)面(c+面)配向したGaN自立基板を用いた。GaN自立基板は、H−VPE法により製造した。以下に製造した基板のGaN自立基板の性状を示す。
・電気特性:n型
・キャリア密度:5×1017cm−3
・X線回折による(10−12)反射におけるロッキングカーブの半値幅:67arcsec
・(1−100)方向へのオフ角度:0°
・(11−20)方向へのオフ角度:0°
・転位密度:3×106cm−2以下であった。
・酸素濃度:検出限界以下
・熱伝導率:250W/m・K以上
・反り:0.03mm以下
・膜厚:403μm
〔第二工程〕
前記第一工程で得られたc+面GaN基板上に、MOCVD法を用いて、第1のバッファ層として、成長温度1070℃で、厚み20nmのアンドープのGaN層を形成した。次に、第一導電型(n型)クラッド層として、成長温度1130℃で、厚み6.5μmのSiドープのGaN層を形成した。
次に活性層構造として、バリア層として成長温度800℃で13nmの厚さに成膜したアンドープGaN層と、量子井戸層として成長温度740℃で2nmの厚さに成膜したアンドープIn0.08Ga0.92N層とを、量子井戸層が全部で8層となるように交互に成膜し、最上段のバリア層として成長温度800℃で19nmの厚さに成膜したアンドープGaN層を成膜した。さらに成長温度を1070℃にして、第二導電型(p型)第一クラッド層を形成すべく、MgドープAl0.09Ga0.91N層を0.13μmの厚さに成長した。最後に第二導電型(p型)コンタクト層を形成すべく、MgドープAl0.03Ga0.97N層を0.02μmの厚さに成長した。
この後にMOCVD成長炉の中で徐々に温度を下げて、ウエハーを取り出し、薄膜結晶成長を終了した。
〔第三工程〕
薄膜結晶成長が終了したウエハーに対してp側電極を形成するために、フォトリソグラフィー法を用いてp側電極をリフトオフ法でパターニングする準備としてレジストパターンを形成した。ここでp側電極としてNi(40nm厚)/Au(350nm厚)を真空蒸着法によって形成し、アセトン中で不要部分をリフトオフ法によって除去した。次いで、その後熱処理を実施してp側電極を完成させた。
次いで、エッチング工程を実施するために、エッチング用マスクを形成した。そして、MgドープAl0.03Ga0.97Nコンタクト層、MgドープAl0.09Ga0.91Nクラッド層、In0.08Ga0.92N量子井戸層とGaNバリア層からなる活性層構造、n−GaNクラッド層の途中まで、Cl2ガスを用いたICPプラズマエッチングを実施し、n型キャリアの注入部分となるn型クラッド層を露出させた。その後、エッチングマスクを除去した。
次に、露出したn型コンタクト層の表面にn側電極を形成するために、フォトリソグラフィー法を用いてn側電極をリフトオフ法でパターニングする準備をしてレジストパターンを形成した。ここでn側電極としてTi(40nm厚)/Al(400nm厚)を真空蒸着法によって形成し、アセトン中で不要部分をリフトオフ法によって除去した。次いで、その後熱処理を実施してn側電極を完成させた。
〔第四工程の一部実施〕
次いで、ウエハー上に形成された1つ1つの発光素子を分割する準備として、ダイヤモンドスクライバーを用いて基板側からスクライブラインを形成した。
〔傾斜露出面形成工程〕
ついで、発光素子直上の相対的な外部発光強度密度を高めるべく、素子分離後に、基板裏面で傾斜露出面となる露出面を形成した。この際には、ダイシング装置を用いて、基板裏面の一部分にダイシング痕を形成した。
具体的には、素子化した際に投影形状が、一辺(Lsa)900μmの正六角形となることを予定したので、以下のようにダイシングした。まず、刃先の開き角度が134度(図38参照)であるダイシングブレードを準備した。
次に1つの素子内の1組の対角線に対して直行するように2本のダイシング痕を形成した。その際には、ダイシング痕の最大深さが140μmとなるようにし、1つのダイシング痕を、素子外形投影形状である六角形の1頂角から対角線上で450μmはなれた位置を中心に形成し、もうひとつのダイシング痕も、もうひとつの頂角から対角線上で450μmはなれた位置を中心に形成した。
ついで、形成した2本のダイシング痕に対して直行するように、さらに2本のダイシング痕を形成した。この際には、ダイシング痕の最大深さが140μmとなるようにし、1つのダイシング痕を、1つの辺から400μmはなれた位置を中心に形成し、もうひとつのダイシング痕も、もうひとつの頂角から対角線上で400μmはなれた位置を中心に形成した。
〔残りの第四工程実施〕
もともと形成していたスクライブラインにそってGaN基板をブレーキングし、1つ1つの半導体発光素子を完成させた。
これにより得られた半導体発光素子は、一辺Lsaが900μmの正六角形であった(即ち、当該正六角形上にある任意の2点の作る最も長い線分長Lscは、当該正六角形の対角線であり、1800μmであった。)。基板の物理厚みの最大値は、素子完成後も前述の通り403μmであった。
この半導体発光素子を、傾斜露出面を有するGaN基板側を上面にして、Auバンプを用いてサブマウントとフリップチップ接合し、半導体発光装置を成させた。この半導体発光装置のピーク発光波長は410nmであった。次いで、半導体発光素子の配光特性を、(a)当該正六角形の対辺の断面方向とした場合、および(b)基板主面の形状である正六角形の対角線を断面方向とした場合について測定した。なお、それぞれの特性は、同時に作製し、傾斜露出面形成工程のみを行わなかったサンプルと比較(比較例1と一緒に)して示す。
図30の実線は傾斜露出面形成工程を行った素子の、正六角形の対辺の断面方向に測定を行った場合(実施例1)であって、図30の破線は、傾斜露出面形成工程を行わなかった素子の、正六角形の対辺の断面方向に測定を行った場合(比較例1)である。結果は、それぞれの配光特性の最大値で規格化して示している。明らかに配光特性が変化しており、傾斜露出面形成工程を行った素子は、0度方向の相対放射強度が向上していた。
さらに、図31の実線は傾斜露出面形成工程を行った素子の、正六角形の対角線の断面方向に測定を行った場合であって、図31の破線は、傾斜露出面形成工程を行わなかった素子の、正六角形の対角線の断面方向に測定を行った場合である。結果は、それぞれの配光特性の最大値で規格化して示している。明らかに配光特性が変化しており、傾斜露出面形成工程を行った素子は、0度方向の相対放射強度が向上していた。
なお、表2には、傾斜露出面形成工程を行った素子の、また、表3には、傾斜露出面形成工程を行わなかった素子の配光特性の指標をまとめて示す。
(実施例2、比較例2)
第一工程において、基板の膜厚を800μmとし、傾斜露出面形成工程を以下に記載するようにした以外は、実施例1と同様にして半導体発光素子を作成した。実施例2において実施した傾斜露出面形成工程は以下の通りである。
〔傾斜露出面形成工程〕
発光素子直上の相対的な外部発光強度密度を高めるべく、素子化した際に、基板裏面で傾斜露出面となる露出面を形成した。この際には、ダイシング装置を用いて、基板裏面の一部分にダイシング痕を形成した。
具体的には、素子化した際に投影形状が、一辺(Lsa)900μmの正六角形となることを予定したので、以下のようにダイシングした。まず、刃先の開き角度が90度であるダイシングブレードを準備した。次に1つの素子内の6つの辺となる部分をダイシング痕の中心になるようにして6本のダイシング痕を形成した。その際には、ダイシング痕の最大深さが400μmとなるようにして形成した。本工程以外は、実施例1と同様にして半導体発光素子を作成した。
また、実施例2と同時に作製し、傾斜露出面形成工程のみを行わなかった比較例2の結果も示す。
次いで、当該半導体発光素子の配光特性を、(a)当該正六角形の対辺の断面方向とした場合、および(b)基板主面の形状である正六角形の対角線を断面方向とした場合について測定した。
図32の実線は傾斜露出面形成工程を行った素子の、正六角形の対辺の断面方向に測定を行った場合(実施例2)であって、図32の破線は、傾斜露出面形成工程を行わなかった素子の、正六角形の対辺の断面方向に測定を行った場合(比較例2)である。結果は、それぞれの配光特性の最大値で規格化して示している。明らかに配光特性が変化しており、傾斜露出面形成工程を行った素子は、0度方向の相対放射強度が向上していた。
さらに、図33の実線は傾斜露出面形成工程を行った素子の、正六角形の対角線の断面方向に測定を行った場合(実施例2)であって、図33の破線は、傾斜露出面形成工程を行わなかった素子の、正六角形の対角線の断面方向に測定を行った場合(比較例2)である。結果は、それぞれの配光特性の最大値で規格化して示している。明らかに配光特性が変化しており、傾斜露出面形成工程を行った素子は、0度方向の相対放射強度が向上していた。
なお、表4には、傾斜露出面形成工程を行った素子の、また、表5には、傾斜露出面形成工程を行わなかった素子の配光特性の指標をまとめて示す。
ここで表4における実施例2においては、0度近傍における極小値をとらなくなっているが、±30度近傍の極小値をこれに代えて表中に示しておく。
(実施例3、比較例3)
第一工程において、基板の膜厚を800μmとし、第二工程において、量子井戸層数を10層とし、バリア層を11層とし、第二導電型(p型)第一クラッド層であるMgドープAl0.09Ga0.91N層を0.11μmの厚さとし、傾斜露出面形成工程を以下に記載するようにし、かつ、第四工程であるダイヤモンドスクライブとブレーキングによる素子化を行わなかった以外は、実施例1と同様にして半導体発光素子を作成した。
なお、実施例3において実施した傾斜露出面形成工程は以下の通りである。
〔傾斜露出面形成工程〕
発光素子直上の相対的な外部発光強度密度を高めるべく、素子化した際に、基板裏面で傾斜露出面となる露出面を形成した。この際には、ダイシング装置を用いて、基板裏面の一部分にダイシング痕を形成した。
具体的には、素子化した際に投影形状が、一辺(Lsa)900μmの正六角形となることを予定したので、以下のようにダイシングした。まず、刃先の開き角度が30度であるダイシングブレードを準備した。次に1つの素子内の6つの辺となる部分をダイシング痕の中心になるようにして6本のダイシング痕を形成した。その際には、ダイシング痕の最大深さが800μmとなるようにして、素子分離工程をかねて形成した。
よって、ここではダイヤモンドスクライブによるスクライブラインの形成とブレーキング装置による素子分割を実施することなく、素子化工程を簡略化した。本工程以外は、実施例1と同様にして半導体発光素子を作成した。
また、実施例3と同時に作製し、傾斜露出面形成工程のみを行わなかった比較例3の結果も示す。
当該半導体発光素子の配光特性を、(a)当該正六角形の対辺の断面方向とした場合、および(b)基板主面の形状である正六角形の対角線を断面方向とした場合について測定した。
図34の実線は傾斜露出面形成工程を行った素子の、正六角形の対辺の断面方向に測定を行った場合(実施例3)であって、図34の破線は、傾斜露出面形成工程を行わなかった素子の、正六角形の対辺の断面方向に測定を行った場合(比較例3)である。結果は、それぞれの配光特性の最大値で規格化して示している。明らかに配光特性が変化しており、傾斜露出面形成工程を行った素子は、0度方向の相対放射強度が向上していた。
さらに、図35の実線は傾斜露出面形成工程を行った素子の、正六角形の対角線の断面方向に測定を行った場合(実施例3)であって、図35の破線は、傾斜露出面形成工程を行わなかった素子の、正六角形の対角線の断面方向に測定を行った場合(比較例3)である。結果は、それぞれの配光特性の最大値で規格化して示している。明らかに配光特性が変化しており、傾斜露出面形成工程を行った素子は、0度方向の相対放射強度が向上していた。
なお、表6には、傾斜露出面形成工程を行った素子の、また、表7には、傾斜露出面形成工程を行わなかった素子の配光特性の指標をまとめて示す。
ここで表6における実施例3においては、0度近傍における極小値をとらなくなっているが、±15度近傍の極小値をこれに代えて表中に示しておく。
(実施例4)
第一工程において、基板の膜厚を800μmとし、第三工程で形成したp側電極をPt、n側電極をAlとし、斜露出面形成工程を以下に記載するようにした以外は、実施例1と同様にして半導体発光素子を作成した。なお、実施例4において実施した傾斜露出面形成工程は以下の通りである。
〔傾斜露出面形成工程〕
ついで、発光素子直上の相対的な外部発光強度密度を高めるべく、薄膜結晶成長層側から基板側にむけて外側に広がり、途中から垂直壁となる傾斜露出面を、ダイシング装置を用いて形成した。すなわち、薄膜結晶層側とこれに近接する基板側の一部分にダイシング痕を形成した。より具体的には、素子化した際に薄膜結晶層側が、一辺(Lsa)900μmの正六角形となり、基板方向にそって外側に広がった形状とすることを予定したので、以下のようにダイシングした。まず、刃先の開き角度が20度であるダイシングブレードを準備した。ここで、ダイシング痕の最大深さが400μmとなるように、薄膜結晶成長層側からダイシングし、素子内の6つの辺となる部分に傾斜露出面を形成した。本工程以外は、実施例1と同様にして半導体発光素子を作成した。
また、実施例4と同時に作製し、傾斜露出面形成工程のみを行わなかった比較例3の結果も示す。
次いで、当該半導体発光素子の配光特性を、(a)当該正六角形の対辺の断面方向とした場合、および(b)基板主面の形状である正六角形の対角線を断面方向とした場合について測定した。
図36の実線は傾斜露出面形成工程を行った素子の、正六角形の対辺の断面方向に測定を行った実施例4の場合であって、図36の破線は、傾斜露出面形成工程を行わなかった比較例3の素子の、正六角形の対辺の断面方向に測定を行った場合である。結果は、それぞれの配光特性の最大値で規格化して示している。明らかに配光特性が変化しており、傾斜露出面形成工程を行った素子は、0度方向の相対放射強度が向上していた。
さらに、図37の実線は傾斜露出面形成工程を行った実施例4の素子の、正六角形の対角線の断面方向に測定を行った場合であって、図37の破線は、傾斜露出面形成工程を行わなかった比較例3の素子の、正六角形の対角線の断面方向に測定を行った場合である。結果は、それぞれの配光特性の最大値で規格化して示している。明らかに配光特性が変化しており、傾斜露出面形成工程を行った素子は、0度方向の相対放射強度が向上していた。
なお、表8には、傾斜露出面形成工程を行った素子の配光特性の指標をまとめて示す。ここで表8における実施例4においては、0度近傍における極小値をとらなくなっており、また、単峰性の配光特性となっているので、