JP5671773B2 - リチウムイオン二次電池 - Google Patents
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Description
本発明のリチウムイオン二次電池に用いられる非水系電解液は、リチウム塩及びこれを溶解する非水溶媒を含有する。
[リチウム塩]
リチウム塩としては、リチウムイオン二次電池用非水系電解液の電解質として用い得ることが知られているリチウム塩であれば特に制限はないが、例えば次のものが挙げられる。
LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiSbF6等の無機フッ化物塩;LiClO4、LiBrO4、LiIO4等の過ハロゲン酸塩;LiAlCl4等の無機塩化物塩等。
含フッ素有機リチウム塩:
LiCF3SO3等のパーフルオロアルカンスルホン酸塩;LiN(CF3SO2)2、LiN(CF3CF2SO2)2、LiN(CF3SO2)(C4F9SO2)等のパーフルオロアルカンスルホニルイミド塩;LiC(CF3SO2)3等のパーフルオロアルカンスルホニルメチド塩;Li[PF5(CF2CF2CF3)]、Li[PF4(CF2CF2CF3)2]、Li[PF3(CF2CF2CF3)3]、Li[PF5(CF2CF2CF2CF3)]、Li[PF4(CF2CF2CF2CF3)2]、Li[PF3(CF2CF2CF2CF3)3]等のフルオロアルキルフッ化リン酸塩等。
オキサラトボレート塩:
リチウムジフルオロオキサラトボレート、リチウムビス(オキサラト)ボレート等。
非水溶媒としても従来から非水系電解液の溶媒として提案されているものの中から、適宜選択して用いることができる。例えば、次のものが挙げられる。
1)環状カーボネート:
環状カーボネートを構成するアルキレン基の炭素数は2〜6が好ましく、特に好ましくは2〜4である。具体的には例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等が挙げられる。中でも、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートが好ましい。
2)鎖状カーボネート:
鎖状カーボネートとしては、ジアルキルカーボネートが好ましく、構成するアルキル基の炭素数は、それぞれ、1〜5が好ましく、特に好ましくは1〜4である。具体的には例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−n−プロピルカーボネート対称鎖状カーボネート類;エチルメチルカーボネート、メチル−n−プロピルカーボネート、エチル−n−プロピルカーボネート等の非対称鎖状カーボネート類等のジアルキルカーボネートが挙げられる。中でも、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートが好ましい。
3)環状エステル:
具体的には例えば、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等が挙げられる。
4)鎖状エステル:
具体的には例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル等が挙げられる。
5)環状エーテル:
具体的には例えば、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等が挙げられる。
6)鎖状エーテル:
具体的には例えば、ジメトキシエタン、ジメトキシメタン等が挙げられる。
7)含硫黄有機溶媒:
具体的には例えば、スルフォラン、ジエチルスルホン等が挙げられる。
本発明のリチウムイオン二次電池に用いられる非水系電解液は、一般式(1)で表される環状シロキサン化合物、一般式(2)で表されるフルオロシラン化合物、一般式(3)で表される化合物、分子内にS−F結合を有する化合物、硝酸塩、亜硝酸塩、モノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩、酢酸塩及びプロピオン酸塩からなる群より選ばれた少なくとも1種以上の化合物(以下、これらを「特定化合物」と略記することがある)を、10ppm以上含有することが必須である。
一般式(1)で表される環状シロキサン化合物におけるR1及びR2は互いに同一であっても異なっていてもよい炭素数1〜12の有機基であるが、R1及びR2としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基等の鎖状アルキル基;シクロヘキシル基、ノルボルニル基等の環状アルキル基;ビニル基、1−プロペニル基、アリル基、ブテニル基、1,3−ブタジエニル基等のアルケニル基;エチニル基、プロピニル基、ブチニル基等のアルキニル基;トリフルオロメチル基等のハロゲン化アルキル基;3−ピロリジノプロピル基等の飽和複素環基を有するアルキル基;アルキル置換基を有していてもよいフェニル基等のアリール基;フェニルメチル基、フェニルエチル基等のアラルキル基;トリメチルシリル基等のトリアルキルシリル基;トリメチルシロキシ基等のトリアルキルシロキシ基等が挙げられる。
一般式(2)で表されるフルオロシラン化合物におけるR3〜R5は、互いに同一であっても異なっていてもよい炭素数1〜12の有機基であるが、一般式(1)におけるR1及びR2の例として挙げた鎖状アルキル基、環状アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロゲン化アルキル基、飽和複素環基を有するアルキル基、アルキル基を有していてもよいフェニル基等のアリール基、アラルキル基、トリアルキルシリル基、トリアルキルシロキシ基に加え、エトキシカルボニルエチル基等のカルボニル基;アセトキシ基、アセトキシメチル基、トリフルオロアセトキシ基等のカルボキシル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、フェノキシ基、アリロキシ基等のオキシ基;アリルアミノ基等のアミノ基;ベンジル基等を挙げることができる。
一般式(3)で表される化合物におけるR6〜R8は、互いに同一であっても異なっていてもよい炭素数1〜12の有機基であるが、その例としては、一般式(2)のR3〜R5の例として挙げた鎖状アルキル基、環状アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロゲン化アルキル基、飽和複素環基を有するアルキル基、アルキル基を有していてもよいフェニル基等のアリール基、アラルキル基、トリアルキルシリル基、トリアルキルシロキシ基、カルボニル基、カルボキシル基、オキシ基、アミノ基、ベンジル基等を同様に挙げることができる。
分子内にS−F結合を有する化合物としては特に限定はないが、スルホニルフルオライド類、フルオロスルホン酸エステル類が好ましい。例えば、メタンスルホニルフルオライド、エタンスルホニルフルオライド、メタンビス(スルホニルフルオライド)、エタン−1,2−ビス(スルホニルフルオライド)、プロパン−1,3−ビス(スルホニルフルオライド)、ブタン−1,4−ビス(スルホニルフルオライド)、ジフルオロメタンビス(スルホニルフルオライド)、1,1,2,2−テトラフルオロエタン−1,2−ビス(スルホニルフルオライド)、1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン−1,3−ビス(スルホニルフルオライド)、フルオロスルホン酸メチル、フルオロスルホン酸エチル等が挙げられる。中でも、メタンスルホニルフルオライド、メタンビス(スルホニルフルオライド)又はフルオロスルホン酸メチルが好ましい。
硝酸塩、亜硝酸塩、モノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩のカウンターカチオンとしては特に限定はないが、Li、Na、K、Mg、Ca、Fe、Cu等の金属元素の他、NR9R10R11R12(式中、R9〜R12は、各々独立に、水素原子又は炭素数1〜12の有機基を表わす。)で表現されるアンモニウム、4級アンモニウムが挙げられる。ここで、R9〜R12の炭素数1〜12の有機基としては、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいシクロアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアリール基、窒素原子含有複素環基等が挙げられる。R9〜R12としては、それぞれ、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、窒素原子含有複素環基等が好ましい。これらのカウンターカチオン中でも、リチウムイオン二次電池に用いたときの電池特性の点から、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム又はNR9R10R11R12が好ましく、リチウムが特に好ましい。また、中でも、硝酸塩又はジフルオロリン酸塩が、出力向上効果が大きい上、電池のサイクル、高温保存特性の点で好ましく、ジフルオロリン酸リチウムが特に好ましい。また、これらの化合物は非水溶媒中で合成されたものを実質的にそのまま用いてもよく、別途合成して実質的に単離されたものを非水溶媒中又は非水系電解液中に添加してもよい。
本発明のリチウムイオン二次電池における非水系電解液は、電解質であるリチウム塩及び特定化合物を必須成分として含有するが、必要に応じて他の化合物を、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の量で含有させることができる。このような他の化合物としては、具体的には、例えば、
(1)ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等の芳香族化合物;2−フルオロビフェニル、o−シクロヘキシルフルオロベンゼン、p−シクロヘキシルフルオロベンゼン等の前記芳香族化合物の部分フッ素化物;2,4−ジフルオロアニソール、2,5−ジフルオロアニソール、2,6−ジフルオロアニソール、3,5−ジフルオロアニソール等の含フッ素アニソール化合物等の過充電防止剤;
(2)ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネート、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水グルタコン酸、無水イタコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物等の負極被膜形成剤;
(3)亜硫酸エチレン、亜硫酸プロピレン、亜硫酸ジメチル、プロパンスルトン、ブタンスルトン、メタンスルホン酸メチル、ブスルファン、トルエンスルホン酸メチル、硫酸ジメチル、硫酸エチレン、スルホラン、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、テトラメチレンスルホキシド、ジフェニルスルフィド、チオアニソール、ジフェニルジスルフィド、ジピリジニウムジスルフィド等の正極保護剤;
等が挙げられる。
以下に本発明のリチウムイオン二次電池に使用される負極について説明する。
[負極活物質]
以下に負極に使用される負極活物質について述べる。
(a)円形度が0.85以上。
(b)広角X線回折法による(002)面の面間隔(d002)が0.337nm未満。
(c)アルゴンイオンレーザーラマンスペクトル法における1580cm-1のピーク強度に対する1360cm-1のピーク強度の比として定義されるラマンR値(以下、単に「ラマンR値」と略記する場合がある)が0.12以上0.8以下。
本発明のリチウムイオン二次電池の負極活物質として用いられる黒鉛質炭素粒子の円形度は0.85以上であることが必須であるが、好ましくは0.87以上、特に好ましくは0.89以上、更に好ましくは0.92以上である。上限としては、円形度が1のときに理論的真球となる。この範囲を下回ると、負極活物質の充填性が低下し、熱伝導性が低下するため、早期の出力回復の妨げとなる場合があり、特に、低温時の低出力状態からの出力の回復が遅くなる場合がある。
円形度
=(粒子投影形状と同じ面積を持つ相当円の周囲長)/(粒子投影形状の実際の周囲長)
本発明のリチウムイオン二次電池の負極活物質として用いられる黒鉛質炭素粒子の広角X線回折法による(002)面の面間隔(d002)は、0.337nm未満であることが必須であるが、好ましくは0.336nm以下である。下限としては、黒鉛の理論値である0.335である。この範囲を上回ると、結晶性が低下し、電子による熱伝導性が低下し、早期の出力回復特性が低下する場合があり、特に、低温時の低出力状態からの出力の回復が遅くなる場合がある。
本発明のリチウムイオン二次電池の負極活物質として用いられる黒鉛質炭素粒子のラマンR値は、0.12以上が必須であるが、好ましくは0.15以上、特に好ましくは0.17以上、更に好ましくは0.2以上である。上限としては、好ましくは0.8以下、特に好ましくは0.6以下、更に好ましくは0.45以下である。ラマンR値がこの範囲を下回ると、粒子表面の結晶性が高くなり過ぎ、充放電サイトの減少に伴って出力そのものが低下する場合がある。一方、この範囲を上回ると、粒子表面の結晶性が低下するため、電子による熱伝導が低下して出力の回復特性が低下する場合がある。
・アルゴンイオンレーザー波長 :514.5nm
・試料上のレーザーパワー :15〜25mW
・分解能 :10〜20cm-1
・測定範囲 :1100cm-1〜1730cm-1
・ラマンR値、ラマン半値幅解析:バックグラウンド処理
・スムージング処理 :単純平均、コンボリューション5ポイント
本発明のリチウムイオン二次電池の負極活物質として用いられる黒鉛質炭素粒子のタップ密度は、好ましくは0.55g/cm3以上、より好ましくは0.7g/cm3以上、更に好ましくは0.8g/cm3以上、特に好ましくは1g/cm3以上である。また上限は、好ましくは2g/cm3以下、更に好ましくは1.8g/cm3以下、特に好ましくは1.6g/cm3以下である。タップ密度がこの範囲を下回ると、負極として用いた場合に充填密度が上がり難く、粒子間の接触面積が減少するため、熱伝導性が低くなる場合がある。一方、この範囲を上回ると、電極中の粒子間の空隙が少なくなり過ぎ、非水系電解液の流路が減少することで、出力自体が減少する場合がある。
本発明のリチウムイオン二次電池の負極活物質として用いられる黒鉛質炭素粒子のBET法を用いて測定した比表面積は、0.1m2/g以上が好ましく、特に好ましくは0.7m2/g以上、より好ましくは1m2/g以上、更に好ましくは1.5m2/g以上である。上限は、100m2/g以下が好ましく、特に好ましくは50m2/g以下、より好ましくは25m2/g以下、更に好ましくは15m2/g以下である。BET比表面積の値がこの範囲を下回ると、負極材料として用いた場合の充電時にリチウムの受け入れ性が悪くなり易く、リチウムが電極表面で析出し易くなる場合がある。一方、この範囲を上回ると、負極材料として用いた時に非水系電解液との反応性が増加し、ガス発生が多くなり易く、好ましい電池が得られにくい場合がある。
本発明のリチウムイオン二次電池の負極活物質として用いられる黒鉛質炭素粒子の体積平均粒径は、レーザー回折・散乱法により求めた体積基準の平均粒径(メジアン径)で定義され、1μm以上が好ましく、特に好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上、更に好ましくは7μm以上である。また、上限は、通常50μm以下、好ましくは40μm以下、より好ましくは30μm以下、更に好ましくは25μm以下である。上記範囲を下回ると、不可逆容量が増大して、初期の電池容量の損失を招くことになる場合がある。また上記範囲を上回ると、電極極板化時に、不均一な塗面になりやすく、電池製作工程上望ましくない場合がある。
本発明のリチウムイオン二次電池の負極活物質として用いられる黒鉛質炭素粒子の細孔容積は、水銀ポロシメトリー(水銀圧入法)により求められる、直径0.01μm以上、1μm以下に相当する粒子内の空隙、粒子表面のステップによる凹凸の量が、0.01mL/g以上、好ましくは0.05mL/g以上、より好ましくは0.1mL/g以上、上限として0.6mL/g以下、好ましくは0.4mL/g以下、より好ましくは0.3mL/g以下の範囲である。この範囲を上回ると、極板化時にバインダーを多量に必要となる場合がある。下回ると、高電流密度充放電特性が低下し、かつ充放電時の電極の膨張収縮の緩和効果が得られない場合がある。
本発明のリチウムイオン二次電池の負極活物質として用いられる黒鉛質炭素粒子の灰分は、黒鉛質炭素粒子の全質量に対して、1質量%以下が好ましく、特に好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下である。また下限としては、1ppm以上であることが好ましい。上記の範囲を上回ると充放電時の非水系電解液との反応による電池性能の劣化が無視できなくなる場合がある。一方、この範囲を下回ると、製造に多大な時間とエネルギーと汚染防止のための設備とを必要とし、コストが上昇する場合がある。
黒鉛質炭素粒子の真密度は、通常2.0g/cm3以上、好ましくは2.1g/cm3以上、より好ましくは2.2g/cm3以上、更に好ましくは2.22g/cm3以上であり、上限としては2.26g/cm3以下である。上限は黒鉛の理論値である。この範囲を下回ると炭素の結晶性が低すぎて初期不可逆容量が増大する場合がある。本発明においては、真密度は、ブタノールを使用した液相置換法(ピクノメータ法)によって測定したもので定義する。
本発明のリチウムイオン二次電池の負極活物質として用いられる黒鉛質炭素粒子の配向比は、通常0.005以上であり、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.015以上、上限は、理論上0.67以下である。この範囲を下回ると、高密度充放電特性が低下する場合がある。
・ターゲット:Cu(Kα線)グラファイトモノクロメーター
・スリット :発散スリット=1度、受光スリット=0.1mm、散乱スリット=1度
・測定範囲及びステップ角度/計測時間:
(110)面:76.5度≦2θ≦78.5度 0.01度/3秒
(004)面:53.5度≦2θ≦56.0度 0.01度/3秒
本発明のリチウムイオン二次電池の負極活物質として用いられる黒鉛質炭素粒子のアスペクト比は、理論上1以上であり、上限としては10以下、好ましくは8以下、更に好ましくは5以下である。上限を上回ると、極板化時にスジ引きや、均一な塗布面が得られず、高電流密度充放電特性が低下する場合がある。
本発明のリチウムイオン二次電池の負極活物質として用いられる黒鉛質炭素粒子は、天然に産出するものであっても、人工的に製造されたものであってもよいが、黒鉛質炭素粒子が天然黒鉛を含有するものであることが好ましい。また、天然に産出するものや人工的に製造されたものに特定の処理を加えたものであってもよい。また、製造方法(選別方法も含む)も特に制限されず、例えば、篩い分けや風力分級等の分別手段を用いて、上記特性を有する黒鉛質炭素粒子を選別して取得することもできる。
以下において、この力学的エネルギー処理について説明する。力学的エネルギー処理を加える対象となる原料の炭素質粒子は特には限定されないが、天然又は人造の黒鉛系炭素質粒子、黒鉛前駆体である炭素質粒子等である。これらの原料の特性について以下に示す。
原料の黒鉛系炭素質粒子についての性質は、次に示す(1)〜(11)の何れか1項又は複数項を同時に満たしていることが望ましい。なお、物性測定方法や定義は、何れも上記した黒鉛質炭素粒子の場合と同様である。
原料の黒鉛系炭素質粒子は、学振法によるX線回折で求めた格子面(002面)のd値(層間距離)が、0.335nm以上であることが好ましく、上限は、通常0.340nm以下、好ましくは0.337nm以下であることが望まれる。また、学振法によるX線回折で求めた黒鉛系炭素質粒子の結晶子サイズ(Lc)は、通常30nm以上、好ましくは50nm以上、より好ましくは100nm以上の範囲である。この範囲を下回ると、結晶性が低下し、初期不可逆容量の増大が増加する可能性がある。
原料の黒鉛系炭素質粒子中に含まれる灰分は、黒鉛系炭素質の全質量に対して、1質量%以下、中でも0.5質量%以下、特に0.1質量%以下、下限としては1ppm以上であることが好ましい。上記の範囲を上回ると充放電時の非水系電解液との反応による電池性能の劣化が無視できなくなる場合がある。この範囲を下回ると、製造に多大な時間とエネルギーと汚染防止のための設備とを必要とし、コストが上昇する場合がある。
原料の黒鉛系炭素質粒子の体積平均粒径は、レーザー回折・散乱法により求めた体積基準の平均粒径(メジアン径)で定義されるが、通常1μm以上、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上、更に好ましくは7μm以上である。また、上限は特に制限されないが、通常10mm以下、好ましくは1mm以下、より好ましくは500μm以下、更に好ましくは100μm以下、特に好ましくは50μm以下である。上記範囲を下回ると、力学的エネルギーを加えることによって粒径が小さくなり過ぎて不可逆容量の増大を招く場合がある。また上記範囲を上回ると、力学的エネルギーを加える装置による効率的な運転が困難となり、時間的損失を招く場合がある。
アルゴンイオンレーザーラマンスペクトル法を用いて測定した原料の黒鉛系炭素質粒子のラマンR値は、通常0.01以上、好ましくは0.03以上、より好ましくは0.1以上、上限としては0.6以下、好ましくは0.4以下である。ラマンR値がこの範囲を下回ると、粒子表面の結晶性が高過ぎて、力学的エネルギーを加えることによるラマン値の増加によってもなお、結晶性の低さによって充放電に伴ってLiが層間に入るサイトが少なくなる場合、すなわち、充電受入性が低下する場合がある。一方、この範囲を上回ると、力学的エネルギーを加えることによって、より粒子表面の結晶性が低下し、非水系電解液との反応性が増し、効率の低下やガス発生の増加を招く場合がある。
原料の黒鉛系炭素質粒子のBET法を用いて測定した比表面積は、通常0.05m2/g以上、好ましくは0.2m2/g以上、より好ましくは0.5m2/g以上、更に好ましくは1m2/g以上である。上限は、通常50m2/g以下、好ましくは25m2/g以下、より好ましくは15m2/g以下、更に好ましくは10m2/g以下である。BET比表面積の値がこの範囲を下回ると、力学的エネルギーを加えることによってBET比表面積が増加しても、充電時にリチウムの受け入れ性が悪くなり易く、リチウムが電極表面で析出し易くなる場合がある。一方、この範囲を上回ると、力学的エネルギーを加えることによって更にBET比表面積が増加して負極活物質として用いた時に非水系電解液との反応性が増加し、ガス発生が多くなり易く、好ましい電池が得られにくい場合がある。
原料の黒鉛系炭素質粒子の球形の程度としては、その粒径が3〜40μmの範囲にある粒子の円形度が0.1以上が好ましく、より好ましくは0.2以上、更に好ましくは0.4以上、更に好ましくは0.5以上、最も好ましくは0.6以上である。この範囲を下回ると、力学的エネルギーを加えても、十分球形化が進まず、高電流密度充放電特性が低くなる場合がある。
原料の黒鉛系炭素質粒子の真密度は、通常2g/cm3以上、好ましくは2.1g/cm3以上、より好ましくは2.2g/cm3以上、更に好ましくは2.22g/cm3以上であり、上限としては2.26g/cm3以下である。上限は黒鉛の理論値である。この範囲を下回ると炭素の結晶性が低すぎて初期不可逆容量が増大する場合がある。
原料の黒鉛系炭素質粒子のタップ密度は、通常0.05g/cm3以上であり、好ましくは0.1g/cm3以上、更に好ましくは0.2g/cm3以上、特に好ましくは0.5g/cm3以上であることが望まれる。また、好ましくは、2g/cm3以下、更に好ましくは、1.8g/cm3以下、特に好ましくは1.6g/cm3以下である。タップ密度がこの範囲を下回ると、力学的エネルギーを加えてもタップ密度の向上が十分でなく、負極活物質として用いた場合に充填密度が上がり難く、高容量の電池を得ることができない場合がある。一方、この範囲を上回ると、力学的エネルギーを加えた場合に更にタップ密度が上昇し、電極化後の電極中の粒子間の空隙が少なくなり過ぎ、非水系電解液の流路不足による、高電流密度充放電特性が低下する可能性がある。黒鉛系炭素質粒子のタップ密度も、前記した方法と同一の方法で測定され定義される。
原料の黒鉛系炭素質粒子の配向比は、通常0.001以上であり、好ましくは0.005以上である。上限は、理論上0.67以下である。この範囲を下回ると、力学的エネルギーを加えても、配向比の向上が十分ではなく、高密度充放電特性が低下する場合がある。
黒鉛系炭素質粒子のアスペクト比は、理論上1以上であり、上限として10以下、好ましくは8以下、更に好ましくは5以下である。上限を上回ると、力学的エネルギーを加えてもアスペクト比が十分低下せず、極板化時にスジ引きや、均一な塗布面が得られず、高電流密度充放電特性が低下する場合がある。
これらの原料の黒鉛系炭素質粒子に対する力学的エネルギー処理は、処理前後の体積平均粒径の比が1以下になるように粒径を減じ、かつ、処理によりタップ密度を高め、かつ、ラマンR値が処理により1.1倍以上となるようなものである。
力学的エネルギー処理を行う装置は、上記の好ましい処理を行うことが可能なものの中から選択する。本発明者らが検討したところ、上記の4つの一つ以上を用いることでも達成可能ではあるが、好ましくは、衝撃力を主体に粒子の相互作用も含めた圧縮力、摩擦力、剪断力等の機械的作用を繰り返し粒子に与える装置が有効であることが明らかになった。具体的には、ケーシング内部に複数のブレードを設置したローターを有していて、そのローターが高速回転することによって、内部に導入された炭素質粒子に対して衝撃圧縮、摩擦、剪断力等の機械的作用を与え、体積粉砕を進行させながら表面粉砕を行う装置が好ましい。また、炭素質粒子を循環又は対流させることによって機械的作用を繰り返して与える機構を有するものであるのがより好ましい。ケーシング内部のブレードの数は、3枚以上が好ましく、5枚以上が特に好ましい。
負極の製造は、常法によればよい。例えば、負極活物質に、バインダー、溶媒、必要に応じて、増粘剤、導電材、充填材等を加えてスラリーとし、これを集電体に塗布、乾燥した後にプレスすることによって形成することができる。電池の電解液注液工程直前の段階での片面あたりの負極活物質層の厚さは通常15μm以上、好ましくは20μm以上、より好ましくは30μm以上であり、上限は150μm以下、好ましくは120μm以下、より好ましくは100μm以下である。この範囲を上回ると、非水系電解液が集電体界面付近まで浸透しにくいため、高電流密度充放電特性が低下する場合がある。またこの範囲を下回ると、負極活物質に対する集電体の体積比が増加し、電池の容量が減少する場合がある。また、負極活物質をロール成形してシート電極としたり、圧縮成形によりペレット電極としても良い。
負極活物質を保持させる集電体としては、公知のものを任意に用いることができる。負極の集電体としては、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等の金属材料が挙げられ、中でも加工し易さとコストの点から特に銅が好ましい。集電体の形状は、集電体が金属材料の場合は、例えば金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、金属薄膜、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル等が挙げられる。中でも好ましくは金属薄膜、より好ましくは銅箔であり、更に好ましくは圧延法による圧延銅箔と、電解法による電解銅箔があり、どちらも集電体として用いることができる。銅箔の厚さが25μmよりも薄い場合、純銅よりも強度の高い銅合金(リン青銅、チタン銅、コルソン合金、Cu−Cr−Zr合金等)を用いることができる。
(1)平均表面粗さ(Ra)
JISB0601−1994に記載の方法で規定される集電体基板の活物質薄膜形成面の平均表面粗さ(Ra)は、特に制限されないが、通常0.01μm以上、好ましくは0.03μm以上、通常1.5μm以下、好ましくは1.3μm以下、特に好ましくは1.0μm以下である。集電体基板の平均表面粗さ(Ra)を上記した下限と上限の間の範囲内とすることにより、良好な充放電サイクル特性が期待できる。上記下限値以上とすることにより、活物質薄膜との界面の面積が大きくなり、活物質薄膜との密着性が向上する。平均表面粗さ(Ra)の上限値は特に制限されるものではないが、平均表面粗さ(Ra)が1.5μmを超えるものは電池として実用的な厚みの箔としては一般に入手しにくいため、1.5μm以下のものが好ましい。
集電体基板の引張強度は、特に制限されないが、通常50N/mm2以上、好ましくは100N/mm2以上、更に好ましくは150N/mm2以上、である。引張強度とは、試験片が破断に至るまでに要した最大引張力を、試験片の断面積で割ったものである。本発明における引張強度は、伸び率と同様な装置及び方法で測定される。引張強度が高い集電体基板であれば、充電・放電に伴う活物質薄膜の膨張・収縮による集電体基板の亀裂を抑制することができ、良好なサイクル特性を得ることができる。
集電体基板の0.2%耐力は、特に制限されないが、通常30N/mm2以上、好ましくは100N/mm2以上、特に好ましくは150N/mm2以上である。0.2%耐力とは、0.2%の塑性(永久)歪みを与えるに必要な負荷の大きさであり、この大きさの負荷を加えた後に除荷しても0.2%変形している事を意味している。本発明における0.2%耐力は、伸び率と同様な装置及び方法で測定される。0.2%耐力が高い集電体基板であれば、充電・放電に伴う活物質薄膜の膨張・収縮による集電体基板の塑性変形を抑制することができ、良好なサイクル特性を得ることができる。金属薄膜の厚さは任意であるが、通常1μm以上、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上である。また、上限は、通常1mm以下、好ましくは100μm以下、より好ましくは30μm以下である。1μmより薄くなると強度が低下するため塗布が困難となる場合がある。100μmより厚くなると捲回等で所望の電極の形を変形させることが困難となる場合がある。また、金属薄膜は、メッシュ状でもよい。
集電体と活物質層の厚さの比は特には限定されないが、(非水系電解液注液直前の片面の活物質層の厚さ)/(集電体の厚さ)の値が150以下、好ましくは20以下、より好ましくは10以下であり、下限は0.1以上、好ましくは0.4以上、より好ましくは1以上の範囲である。この範囲を上回ると、高電流密度充放電時に集電体がジュール熱による発熱を生じる場合がある。この範囲を下回ると、負極活物質に対する集電体の体積比が増加し、電池の容量が減少する場合がある。
負極活物質の電極化した際の電極構造は特には限定されないが、集電体上に存在している活物質の密度は、好ましくは1g/cm3以上、より好ましくは1.2g/cm3、更に好ましくは1.3g/cm3以上であり、上限として2g/cm3以下、好ましくは1.9g/cm3以下、より好ましくは1.8g/cm3以下、更に好ましくは1.7g/cm3以下の範囲である。この範囲を上回ると活物質粒子が破壊され、初期不可逆容量の増加や、集電体/活物質界面付近への非水系電解液の浸透性が低下し、高電流密度充放電特性が低下する場合がある。また下回ると活物質間の導電性が低下し、電池抵抗が増大し、単位容積当たりの容量が低下する場合がある。
活物質を結着するバインダーとしては、非水系電解液や電極製造時に用いる溶媒に対して安定な材料であれば、特に制限されない。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、芳香族ポリアミド、セルロース、ニトロセルロース等の樹脂系高分子;SBR(スチレン−ブタジエンゴム)、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴム、NBR(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)、エチレン−プロピレンゴム等のゴム状高分子;スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体及びその水素添加物;EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体)、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体及びその水素添加物等の熱可塑性エラストマー状高分子;シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体等の軟質樹脂状高分子;ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体等のフッ素系高分子;アルカリ金属イオン(特にリチウムイオン)のイオン伝導性を有する高分子組成物等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
極板配向比は、0.001以上、好ましくは0.005以上、より好ましくは0.01以上、上限は理論値である0.67以下である。この範囲を下回ると、高密度充放電特性が低下する場合がある。
・ターゲット: Cu(Kα線)グラファイトモノクロメーター
・スリット : 発散スリット=1度、受光スリット=0.1mm、散乱スリット=1度・測定範囲、及び、ステップ角度/計測時間:
(110)面 : 76.5度≦2θ≦78.5度 0.01度/3秒
(004)面 : 53.5度≦2θ≦56.0度 0.01度/3秒
・試料調整 : 硝子板に0.1mm厚さの両面テープで電極を固定
放電状態から公称容量の60%まで充電した時の負極の抵抗が500Ω以下が好ましく、特に好ましくは100Ω以下、より好ましくは50Ω以下、及び/又は二重層容量が1×10-6F以上が好ましく、特に好ましくは1×10-5F以上、より好ましくは3×10-5F以上である。この範囲であると出力特性が良く好ましい。
以下に本発明の非水系電解液二次電池に使用される正極について説明する。
[正極活物質]
以下に正極に使用される正極活物質について述べる。
[[正極活物質の組成]]
正極活物質としては、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵・放出可能なものであれば特に制限はない。リチウムと少なくとも1種の遷移金属を含有する物質が好ましく、例えば、リチウム遷移金属複合酸化物、リチウム含有遷移金属リン酸化合物が挙げられる。
また、これら正極活物質の表面に、正極活物質を構成する物質とは異なる組成の物質が付着したものを用いることもできる。表面付着物質としては酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ホウ素、酸化アンチモン、酸化ビスマス等の酸化物、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム等の硫酸塩、炭酸リチウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、炭素等が挙げられる。
[[[形状]]]
本発明における正極活物質粒子の形状は、従来用いられるような、塊状、多面体状、球状、楕円球状、板状、針状、柱状等が用いられるが、中でも一次粒子が凝集して、二次粒子を形成して成り、その二次粒子の形状が球状ないし楕円球状であるものが好ましい。通常、電気化学素子はその充放電に伴い、電極中の活物質が膨張収縮をするため、そのストレスによる活物質の破壊や導電パス切れ等の劣化がおきやすい。そのため一次粒子のみの単一粒子活物質であるよりも、一次粒子が凝集して、二次粒子を形成したものである方が膨張収縮のストレスを緩和して、劣化を防ぐため好ましい。また、板状等軸配向性の粒子であるよりも球状ないし楕円球状の粒子の方が、電極の成形時の配向が少ないため、充放電時の電極の膨張収縮も少なく、また電極を作成する際の導電材との混合においても、均一に混合されやすいため好ましい。
正極活物質のタップ密度は、通常1.3g/cm3以上、好ましくは1.5g/cm3以上、更に好ましくは1.6g/cm3以上、最も好ましくは1.7g/cm3以上である。正極活物質のタップ密度が上記下限を下回ると正極活物質層形成時に、必要な分散媒量が増加すると共に、導電材や結着剤の必要量が増加し、正極活物質層への正極活物質の充填率が制約され、電池容量が制約される場合がある。タップ密度の高い金属複合酸化物粉体を用いることにより、高密度の正極活物質層を形成することができる。タップ密度は一般に大きいほど好ましく特に上限はないが、大きすぎると、正極活物質層内における非水系電解液を媒体としたリチウムイオンの拡散が律速となり、負荷特性が低下しやすくなる場合があるため、通常2.5g/cm3以下、好ましくは2.4g/cm3以下である。正極活物質のタップ密度も、負極活物質の項に記載した方法と同一の方法で測定され定義される。
粒子のメジアン径d50(一次粒子が凝集して二次粒子を形成している場合には二次粒子径)は通常0.1μm以上、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、最も好ましくは3μm以上で、上限は、通常20μm以下、好ましくは18μm以下、より好ましくは16μm以下、最も好ましくは15μm以下である。上記下限を下回ると、高タップ密度品が得られなくなる場合があり、上限を超えると粒子内のリチウムの拡散に時間がかかるため、電池性能の低下をきたしたり、電池の正極作成すなわち活物質と導電材やバインダー等を溶媒でスラリー化し、薄膜状に塗布する際に、スジを引く等の問題を生ずる場合がある。ここで、異なるメジアン径d50をもつ正極活物質を2種類以上混合することで、正極作成時の充填性を更に向上させることもできる。
一次粒子が凝集して二次粒子を形成している場合には、正極活物質の平均一次粒子径としては、通常0.01μm以上、好ましくは0.05μm以上、更に好ましくは0.08μm以上、最も好ましくは0.1μm以上で、上限は、通常3μm以下、好ましくは2μm以下、更に好ましくは1μm以下、最も好ましくは0.6μm以下である。上記上限を超えると球状の二次粒子を形成し難く、粉体充填性に悪影響を及ぼしたり、BET比表面積が大きく低下するために、出力特性等の電池性能が低下する可能性が高くなる場合がある。逆に、上記下限を下回ると、通常、結晶が未発達であるために充放電の可逆性が劣る等の問題を生ずる場合がある。
本発明の二次電池に供する正極活物質のBET比表面積は、0.2m2/g以上、好ましくは0.3m2/g以上、更に好ましくは0.4m2/g以上で、上限は4.0m2/g以下、好ましくは2.5m2/g以下、更に好ましくは1.5m2/g以下である。BET比表面積がこの範囲よりも小さいと電池性能が低下しやすく、大きいとタップ密度が上がりにくくなり、正極活物質形成時の塗布性に問題が発生しやすい場合がある。
正極活物質の製造法としては、無機化合物の製造法として一般的な方法が用いられる。特に球状ないし楕円球状の活物質を作成するには種々の方法が考えられるが、例えば、遷移金属硝酸塩、遷移金属硫酸塩等の遷移金属原料物質と、必要に応じ他の元素の原料物質を水等の溶媒中に溶解ないし粉砕分散して、攪拌をしながらpHを調節して球状の前駆体を作成回収し、これを必要に応じて乾燥した後、LiOH、Li2CO3、LiNO3等のLi源を加えて高温で焼成して活物質を得る方法、遷移金属硝酸塩、遷移金属硫酸塩、遷移金属水酸化物、遷移金属酸化物等の遷移金属原料物質と、必要に応じ他の元素の原料物質を水等の溶媒中に溶解ないし粉砕分散して、それをスプレードライヤー等で乾燥成型して球状ないし楕円球状の前駆体とし、これにLiOH、Li2CO3、LiNO3等のLi源を加えて高温で焼成して活物質を得る方法、また、遷移金属硝酸塩、遷移金属硫酸塩、遷移金属水酸化物、遷移金属酸化物等の遷移金属原料物質と、LiOH、Li2CO3、LiNO3等のLi源と、必要に応じ他の元素の原料物質とを水等の溶媒中に溶解ないし粉砕分散して、それをスプレードライヤー等で乾燥成型して球状ないし楕円球状の前駆体とし、これを高温で焼成して活物質を得る方法等が挙げられる。
以下に、本発明に使用される正極の構成について述べる。
[[[電極構造と作製法]]]
本発明のリチウムイオン二次電池用正極は、正極活物質と結着剤とを含有する正極活物質層を、集電体上に形成して作製される。正極活物質を用いる正極の製造は、常法により行うことができる。すなわち、正極活物質と結着剤、並びに必要に応じて導電材及び増粘剤等を乾式で混合してシート状にしたものを正極集電体に圧着するか、又はこれらの材料を液体媒体に溶解又は分散させてスラリーとして、これを正極集電体に塗布し、乾燥することにより、正極活物質層を集電体上に形成させることにより正極を得ることができる。正極活物質はその2種類以上を事前に混合して用いてもよいし、正極作成時に同時に加えることによって混合されてもよい。
導電材としては、公知の導電材を任意に用いることができる。具体例としては、銅、ニッケル等の金属材料;天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛(グラファイト);アセチレンブラック等のカーボンブラック;ニードルコークス等の無定形炭素等の炭素材料等が挙げられる。なお、これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
正極活物質層の製造に用いる結着剤としては、特に限定されず、塗布法の場合は、電極製造時に用いる液体媒体に対して溶解又は分散される材料であれば良いが、具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、芳香族ポリアミド、セルロース、ニトロセルロース等の樹脂系高分子;SBR(スチレン−ブタジエンゴム)、NBR(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)、フッ素ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム等のゴム状高分子;スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体)、スチレン・エチレン・ブタジエン・エチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物等の熱可塑性エラストマー状高分子;シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体等の軟質樹脂状高分子;ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体等のフッ素系高分子;アルカリ金属イオン(特にリチウムイオン)のイオン伝導性を有する高分子組成物等が挙げられる。なお、これらの物質は、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
スラリーを形成するための液体媒体としては、正極活物質、導電材、結着剤、並びに必要に応じて使用される増粘剤を溶解又は分散することが可能な溶媒であれば、その種類に特に制限はなく、水系溶媒と有機系溶媒のどちらを用いても良い。
特に水系媒体を用いる場合、増粘剤と、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)等のラテックスを用いてスラリー化するのが好ましい。増粘剤は、通常、スラリーの粘度を調製するために使用される。増粘剤としては、特に制限はないが、具体的には、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼイン及びこれらの塩等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。更に増粘剤を添加する場合には、活物質に対する増粘剤の割合は、0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは0.6質量%以上であり、また、上限としては5質量%以下、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下の範囲である。この範囲を下回ると、著しく塗布性が低下する場合がある。上回ると、正極活物質層に占める活物質の割合が低下し、電池の容量が低下する問題や正極活物質間の抵抗が増大する問題が生じる場合がある。
塗布、乾燥によって得られた正極活物質層は、正極活物質の充填密度を上げるために、ハンドプレス、ローラープレス等により圧密化することが好ましい。正極活物質層の密度は、下限として好ましくは1.5g/cm3以上、より好ましくは2g/cm3、更に好ましくは2.2g/cm3以上であり、上限としては、好ましくは3.5g/cm3以下、より好ましくは3g/cm3以下、更に好ましくは2.8g/cm3以下の範囲である。この範囲を上回ると集電体/活物質界面付近への非水系電解液の浸透性が低下し、特に高電流密度での充放電特性が低下する場合がある。また下回ると活物質間の導電性が低下し、電池抵抗が増大する場合がある。
正極集電体の材質としては特に制限は無く、公知のものを任意に用いることができる。具体例としては、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ、チタン、タンタル等の金属材料;カーボンクロス、カーボンペーパー等の炭素材料が挙げられる。中でも金属材料、特にアルミニウムが好ましい。
本発明の場合、高出力かつ高温時の安定性を高める観点から、正極活物質層の面積は、電池外装ケースの外表面積に対して大きくすることが好ましい。具体的には、二次電池の外装の表面積に対する前記正極の電極面積の総和が面積比で20倍以上とすることが好ましく、更に40倍以上とすることがより好ましい。外装ケースの外表面積とは、有底角型形状の場合には、端子の突起部分を除いた発電要素が充填されたケース部分の縦と横と厚さの寸法から計算で求める総面積をいう。有底円筒形状の場合には、端子の突起部分を除いた発電要素が充填されたケース部分を円筒として近似する幾何表面積である。正極の電極面積の総和とは、負極活物質を含む合材層に対向する正極合材層の幾何表面積であり、集電体箔を介して両面に正極合材層を形成してなる構造では、それぞれの面を別々に算出する面積の総和をいう。
本発明の特定化合物を含有する非水系電解液を用いる場合、二次電池の1個の電池外装に収納される電池要素のもつ電気容量(電池を満充電状態から放電状態まで放電したときの電気容量)が、3アンペアーアワー(Ah)以上であると、周辺部材との接触面積が大きくなり、熱伝導性向上の観点で好ましい。そのため、正極板は、放電容量が満充電で、3アンペアーアワー(Ah)以上20Ah以下になるように設計することが好ましく、更に4Ah以上10Ah以下がより好ましい。3Ah未満では、大電流の取り出し時に電極反応抵抗による電圧低下が大きくなり電力効率が悪くなる場合がある。20Ah以上では、電極反応抵抗が小さくなり電力効率は良くなるが、パルス充放電時の電池内部発熱による温度分布が大きく、充放電繰り返しの耐久性が劣り、また、過充電や内部短絡等の異常時の急激な発熱に対して放熱効率も悪くなり、内圧が上昇してガス放出弁が作動する現象(弁作動)、電池内容物が外に激しく噴出する現象(破裂)に至る確率が上がる場合がある。
正極板の厚さは特に限定されるものではないが、高容量かつ高出力の観点から、芯材の金属箔厚さを差し引いた合材層の厚さは、集電体の片面に対して下限として、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上で、上限としては、好ましくは200μm以下、より好ましくは100μm以下である。
電池形状は特に限定されるものではないが、有底筒型形状、有底角型形状、薄型形状、シート形状、ペーパー形状が挙げられる。システムや機器に組み込まれる際に、容積効率を高めて収納性を上げるために、電池周辺に配置される周辺システムへの収まりを考慮した馬蹄形、櫛型形状等の異型のものであってもよい。電池内部の熱を効率よく外部に放出する観点から、比較的平らで大面積の面を少なくとも一つを有する角型形状が好ましい。
本発明の充放電可能なリチウムイオン二次電池は、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極及び負極、本発明の上記非水系電解液、正極と負極の間に配設されるセパレータ、集電端子、及び外装ケース等によって少なくとも構成される。更に要すれば、電池の内部及び/又は電池の外部に保護素子を装着してもよい。
本発明で用いられるセパレータは、両極間を電子的に絶縁する所定の機械的強度を有し、イオン透過度が大きく、かつ、正極と接する側における酸化性と負極側における還元性への耐性を兼ね備えるものであれば特に限定されるものではない。このような要求特性を有するセパレータの材質として、樹脂、無機物、ガラス繊維等が用いられる。前記樹脂としては、オレフィン系ポリマー、フッ素系ポリマー、セルロース系ポリマー、ポリイミド、ナイロン等が用いられる。具体的には、電解液に対して安定で、保液性の優れた材料の中から選ぶのが好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンを原料とする多孔性シート又は不織布等を用いるのが好ましい。
電極群は、前述の正極板と負極板とを前述のセパレータを介してなる積層構造のもの、及び前述の正極板と負極板とを前述のセパレータを介して渦巻き状に捲回した構造のものの何れでもよい。
集電構造は特に限定されるものではないが、本発明の温度順応による出力回復をより効果的に実現するには、配線部分や接合部分の抵抗を低減する構造にする必要がある。こうした内部抵抗が小さい場合、本発明の非水系電解液と負極活物質とを併用した効果が特に良好に発揮される。
外装ケースの材質は用いられる非水系電解質に対して安定な物質であれば特に限定されるものではない。具体的には、ニッケルめっき鋼板、ステンレス、アルミニウム又はアルミニウム合金、マグネシウム合金等の金属類、又は、樹脂とアルミ箔との積層フィルム(ラミネートフィルム)が用いられる。軽量化の観点から、アルミニウム又はアルミニウム合金の金属、ラミネートフィルムが好適に用いられる。
前述の保護素子として、異常発熱や過大電流が流れた時に抵抗が増大するPTC(Positive Temperature Coefficient)、温度ヒューズ、サーミスター、異常発熱時に電池内部圧力や内部温度の急激な上昇により回路に流れる電流を遮断する弁(電流遮断弁)等が挙げられる。前記保護素子は高電流の通常使用で作動しない条件のものを選択することが好ましく、高出力の観点から、保護素子がなくても異常発熱や熱暴走に至らない設計にすることがより好ましい。
「特定化合物を含有する非水系電解液」と、「円形度0.85以上であり、広角X線回折法による(002)面の面間隔(d002)が0.337nm未満であり、ラマンR値が0.12以上0.8以下である黒鉛質炭素粒子を含有する負極活物質」とを組み合わせることで、低温状態から早期に出力を回復できるリチウムイオン二次電池を提供できる作用・原理は明らかではないが、また、その作用・原理によって本発明は限定されるものではないが、電池作製後の初回の充電時に特定物質存在下で生成するSEI(Solid Electrolyte Interface 固体電解質界面)被膜が、ラマンR値が高く、円形度が大きい球形化黒鉛では薄く、熱的伝導性が高い被膜を形成するため、周囲の温度上昇時に外部から電極反応部位への熱の伝導が早く、温度に対する応答性が良く出力が向上すると推察している。
なお、実施例6〜15は参考例6〜15と読み替えるものとする。
市販の天然黒鉛粉末(A)を粗大粒子の混入を防ぐため、ASTM400メッシュの篩いを5回繰り返した。ここで得られた負極活物質を炭素質物(B)とした。
市販の天然黒鉛粉末(C)(d002:0.336nm、Lc:100nm以上、ラマンR値:0.11、タップ密度:0.46g/cm3、真密度:2.27g/cm3、体積平均粒径:28.7μm)を微粉砕機(マツボー社製ターボミル)にて、処理し、粗大粒子の混入を防ぐため、ASTM400メッシュの篩いを5回繰り返して炭素質物(D)を調製した。
天然黒鉛粉末(C)をハイブリダイゼーションシステム((株)奈良機械製作所製ハイブリダイゼーションシステムNHS−1型)を用いて、処理量90g、ローター周速度60m/s、処理時間3分にて処理することによって球形化を行い、更に粗大粒子の混入を防ぐため、ASTM400メッシュの篩いを5回繰り返した。ここで得られた負極活物質を炭素質物(E)とした。この操作を繰り返すことで、電池作製に必要な量を確保した。
市販の天然黒鉛粉末(F)(d002:0.336nm、Lc:100nm以上、ラマンR値:0.09、タップ密度:0.57g/cm3、真密度:2.26g/cm3、体積平均粒径:85.4μm)をハイブリダイゼーションシステムにて処理量90g、ローター周速度30m/s、処理時間1分で球形化を行い、更に粗大粒子の混入を防ぐため、ASTM400メッシュの篩いを5回繰り返した。ここで得られた負極活物質を炭素質物(G)とした。この操作を繰り返すことで、電池作製に必要な量を確保した。
キノリン不溶分が0.05質量%以下のコールタールピッチを、反応炉にて460℃で10時間熱処理し、軟化点385℃の、溶融性のある塊状の炭化処理前駆体を得た。得られた塊状の炭化処理前駆体を金属製の容器に詰め、箱形の電気炉で窒素ガス流通下、1000℃で2時間、熱処理を行なった。得られた非晶質の塊を粗砕機(吉田製作所製ロールジョークラッシャー)で粉砕、更に微粉砕機(マツボー社製ターボミル)を用いて微粉砕し、体積基準平均径18μmの非晶質粉末を得た。得られた粉末を粗大粒子の混入を防ぐため、ASTM400メッシュの篩いを5回繰り返した。ここで得られた負極活物質を炭素質物(H)とした。
(負極活物質の作製5)で得られた炭素質物(H)を更に、黒鉛坩堝に移し替え、直接通電炉を用いて不活性雰囲気下で3000℃で5時間かけて黒鉛化し、得られた粉末を粗大粒子の混入を防ぐため、ASTM400メッシュの篩いを5回繰り返した。ここで得られた負極活物質を炭素質物(I)とした。
(負極活物質の作製6)で得られた炭素質物(I)をハイブリダイゼーションシステムにて処理量90g、ローター周速度30m/s、処理時間1分の条件で球形化を行い、更に粗大粒子の混入を防ぐため、ASTM400メッシュの篩いを5回繰り返した。ここで得られた負極活物質を炭素質物(J)とした。この操作を繰り返すことで、電池作製に必要な量を確保した。
天然黒鉛粉末(A)よりも純度の低い天然黒鉛粉末(K)(d002:0.336nm、Lc:100nm以上、ラマンR値:0.10、タップ密度:0.49g/cm3、真密度:2.27g/cm3、体積平均粒径:27.3μm、灰分0.5質量%)を(負極活物質の作製3)と同様の条件にて球形化及び、篩いを行い、炭素質物(L)を調製した。これの操作を繰り返すことで、電池作製に必要な量を確保した。
市販の鱗片状天然黒鉛粉末(M)を粗大粒子の混入を防ぐため、ASTM400メッシュの篩いを5回繰り返した。ここで得られた負極活物質を炭素質物(N)とした。
《正極の作製1》
正極活物質としてのコバルト酸リチウム(LiCoO2)90質量%と、導電材としてのアセチレンブラック5質量%と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)5質量%とを、N−メチルピロリドン溶媒中で混合して、スラリー化した。得られたスラリーを厚さ15μmのアルミ箔の両面に塗布して乾燥し、プレス機で厚さ80μmに圧延したものを、活物質層のサイズとして幅100mm、長さ100mm及び幅30mmの未塗工部を有する形状に切り出し、正極とした。このときの正極の活物質の密度は2.35g/cm3であった。
負極活物質を98重量部に、増粘剤、バインダーとしてそれぞれ、カルボキシメチルセルロースナトリウムの水性ディスパージョン(カルボキシメチルセルロースナトリウムの濃度1質量%)100重量部、及び、スチレン−ブタジエンゴムの水性ディスパージョン(スチレン−ブタジエンゴムの濃度50質量%)2重量部を加え、ディスパーザーで混合してスラリー化した。得られたスラリーを厚さ10μmの圧延銅箔の両面に塗布して乾燥し、プレス機で厚さ75μmに圧延したものを、活物質層のサイズとして幅104mm、長さ104mm及び幅30mmの未塗工部を有する形状に切り出し、負極とした。このときの負極の活物質の密度は1.35g/cm3であった。
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)及びエチルメチルカーボネート(EMC)の混合物(体積比3:3:4)に、1mol/Lの濃度で、充分に乾燥したヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)を溶解させた。更に、ジフルオロリン酸リチウム塩(LiPO2F2)を0.3質量%となるように含有させた。
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)及びエチルメチルカーボネート(EMC)の混合物(体積比3:3:4)に、1mol/Lの濃度で、充分に乾燥したヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)を溶解させた。更に、メタンスルホン酸トリメチルシリルを0.3質量%となるように含有させた。
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)及びエチルメチルカーボネート(EMC)の混合物(体積比3:3:4)に、1mol/Lの濃度で、充分に乾燥したヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)を溶解させた。更に、ヘキサメチルシクロトリシロキサンを0.3質量%となるように含有させた。
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)及びエチルメチルカーボネート(EMC)の混合物(体積比3:3:4)に、1mol/Lの濃度で、充分に乾燥したヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)を溶解させた。
正極32枚と負極33枚は交互となるように配置し、各電極の間に多孔性ポリエチレンシートのセパレータ(厚さ25μm)が挟まれるよう積層した。この際、正極活物質面が負極活物質面内から外れないよう対面させた。この正極と負極それぞれについての未塗工部同士を溶接して集電タブを作製し、電極群としたものを電池缶(外寸:120×110×10mm)に封入した。その後、電極群を装填した電池缶に非水系電解液を20mL注入して、電極に充分浸透させ、密閉し角型電池を作製した。この電池の定格放電容量は約6アンペアーアワー(Ah)であり、10kHz交流法で測定される直流抵抗成分は約5ミリオーム(mΩ)である。電池の外装表面積の和に対する、正極の電極面積の総和の比は20.6であった。
《負極の作製1》項の負極活物質を炭素質物(D)として作製した負極と、《正極の作製1》項で作製した正極と《非水系電解液の作製1》項で作製した非水系電解液を用いて、《電池の作製1》項の手法で電池を作製した。この電池について、下記の《電池の評価》の項で述べる方法及び上記した測定方法で、測定を実施した。結果を表2に示す。
実施例1の《負極の作製1》項の負極活物質に炭素質物(E)を用いた以外は同様にして電池を作製し、《電池の評価》項記載の電池評価を実施した。結果を表2に示す。
実施例1の《負極の作製1》項の負極活物質に炭素質物(G)を用いた以外は同様にして電池を作製し、《電池の評価》項記載の電池評価を実施した。結果を表2に示す。
実施例1の《負極の作製1》項の負極活物質に炭素質物(J)を用いた以外は同様にして電池を作製し、《電池の評価》項記載の電池評価を実施した。結果を表2に示す。
実施例1の《負極の作製1》項の負極活物質に炭素質物(L)を用いた以外は同様にして電池を作製し、《電池の評価》項記載の電池評価を実施した。結果を表2に示す。
実施例1〜5の非水系電解液を、《非水系電解液の作製2》の項で作製した非水系電解液に代えた以外は、それぞれ同様の方法にて電池を作製し、評価を実施した。結果を表2に示す。
実施例1〜5の非水系電解液を、《非水系電解液の作製3》の項で作製した非水系電解液に代えた以外は、それぞれ同様の方法にて電池を作製し、評価を実施した。結果を表2に示す。
実施例1の《負極の作製1》項の負極活物質に炭素質物(B)を用いた以外は同様にして電池を作製し、《電池の評価》項記載の電池評価を実施した。結果を表2に示す。
比較例1の非水系電解液に《非水系電解液の作製4》項で作製した非水系電解液を用いた以外は、同様にして電池を作製し、《電池の評価》項記載の電池評価を実施した。結果を表2に示す。
実施例2の非水系電解液に《非水系電解液の作製4》項で作製した非水系電解液を用いた以外は、同様にして電池を作製し、《電池の評価》項記載の電池評価を実施した。結果を表2に示す。
実施例1の非水系電解液に《非水系電解液の作製4》項で作製した非水系電解液を用いた以外は、同様にして電池を作製し、《電池の評価》項記載の電池評価を実施した。結果を表2に示す。
実施例1の《負極の作製1》項の負極活物質に炭素質物(H)を用いた以外は同様にして電池を作製し、《電池の評価》項記載の電池評価を実施した。結果を表2に示す。
比較例5の非水系電解液に《非水系電解液の作製4》項で作製した非水系電解液を用いた以外は、同様にして電池を作製し、《電池の評価》項記載の電池評価を実施した。結果を表2に示す。
実施例1の《負極の作製1》項の負極活物質に炭素質物(N)を用いた以外は同様にして電池を作製し、《電池の評価》項記載の電池評価を実施した。結果を表2に示す。
比較例7の非水系電解液に《非水系電解液の作製4》項で作製した非水系電解液を用いた以外は、同様にして電池を作製し、《電池の評価》項記載の電池評価を実施した。結果を表2に示す。
実施例1の《負極の作製1》項の負極活物質に炭素質物(I)を用いた以外は同様にして電池を作製し、《電池の評価》項記載の電池評価を実施した。結果を表2に示す。
比較例9の非水系電解液に《非水系電解液の作製4》項で作製した非水系電解液を用いた以外は、同様にして電池を作製し、《電池の評価》項記載の電池評価を実施した。結果を表2に示す。
比較例1、5、7、9の非水系電解液を、《非水系電解液の作製2》の項で作製した非水系電解液に代えた以外は、それぞれ同様の方法にて電池を作製し、評価を実施した。結果を表2に示す。
比較例1、5、7、9の非水系電解液を、《非水系電解液の作製3》の項で作製した非水系電解液に代えた以外は、それぞれ同様の方法にて電池を作製し、評価を実施した。結果を表2に示す。
(容量測定)
充放電を経ていない新たな電池に対して、25℃で電圧範囲4.1V〜3.0Vの25℃で5サイクル初期充放電を行った(電圧範囲4.1V〜3.0V)。この時の5サイクル目0.2C(1時間率の放電容量による定格容量を1時間で放電する電流値を1Cとする、以下同様)放電容量を初期容量とした。
25℃環境下で0.2Cの定電流により150分間充電を行ない、−30℃環境下で3時間静置した後に各々、0.1C、0.3C、1.0C、3.0C、5.0Cで10秒間放電させ、その10秒目の電圧を測定した。電流−電圧直線と下限電圧(3V)とで囲まれる3角形の面積を初期低温出力(W)とした。
出力測定1の後に、4.1Vの低電圧充電を1時間実施した後、電池を25℃の環境下に移動し、15分後に、0.1C、0.3C、1.0C、3.0C、5.0Cで10秒間放電させ、その10秒目の電圧を測定した。電流−電圧直線と下限電圧(3V)とで囲まれる3角形の面積を温度上昇時出力(W)とした。
温度順応出力向上率(%)
=[(温度上昇時出力(W)/初期低温出力(W))−1]×100
Claims (13)
- 非水溶媒とリチウム塩を含有する非水系電解液、正極活物質及び負極活物質を有するリチウムイオン二次電池であって、
該非水系電解液が、ジフルオロリン酸リチウムを非水系電解液全体中に10ppm以上含有するものであり、
かつ、該負極活物質が、円形度0.85以上であり、広角X線回折法による(002)面の面間隔(d002)が0.337nm未満であり、アルゴンイオンレーザーラマンスペクトル法における1580cm-1のピーク強度に対する1360cm-1のピーク強度の比として定義されるラマンR値が0.12以上0.8以下である黒鉛質炭素粒子を含有するものであることを特徴とするリチウムイオン二次電池。 - 黒鉛質炭素粒子のタップ密度が、0.55以上である請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
- 黒鉛質炭素粒子のBET比表面積が、0.1m2/g以上、100m2/g以下である請求項1又は請求項2に記載のリチウムイオン二次電池。
- 黒鉛質炭素粒子の体積平均粒径が、1μm以上、50μm以下である請求項1ないし請求項3の何れかの請求項に記載のリチウムイオン二次電池。
- 黒鉛質炭素粒子の水銀ポロシメトリーにおける0.01μm〜1μmの範囲の細孔容積が、0.01mL/g以上である請求項1ないし請求項4の何れかの請求項に記載のリチウムイオン二次電池。
- 黒鉛質炭素粒子の灰分が、1ppm以上、1質量%以下である請求項1ないし請求項5の何れかの請求項に記載のリチウムイオン二次電池。
- 黒鉛質炭素粒子が、天然黒鉛を含有するものである請求項1ないし請求項6の何れかの請求項に記載のリチウムイオン二次電池。
- 該負極活物質が、炭素質粒子に力学的エネルギー処理を含む処理をして得られた黒鉛質炭素粒子であって、該力学的エネルギー処理が、処理前後の体積平均粒径の比が1以下になるように粒径を減じ、かつ、処理によりタップ密度を高め、かつ、アルゴンイオンレーザーラマンスペクトルにおける1580cm-1のピーク強度に対する1360cm-1のピーク強度比であるラマンR値が処理により1.1倍以上となるような力学的エネルギー処理である請求項1ないし請求項7の何れかの請求項に記載のリチウムイオン二次電池。
- 炭素質粒子が、天然黒鉛を含有するものである請求項8に記載のリチウムイオン二次電池。
- 力学的エネルギー処理が、ケーシング内部に複数のブレードを設置したローターを有する装置を用い、そのローターを高速回転させることにより行うものである請求項8又は請求項9に記載のリチウムイオン二次電池。
- 二次電池の外装の表面積に対する正極の電極面積の総和が、面積比で20倍以上である請求項1ないし請求項10の何れかの請求項に記載のリチウムイオン二次電池。
- 二次電池の直流抵抗成分が、10ミリオーム(mΩ)以下である請求項1ないし請求項11の何れかの請求項に記載のリチウムイオン二次電池。
- 二次電池の1個の電池外装に収納される電池要素のもつ電気容量が、3アンペアーアワー(Ah)以上である請求項1ないし請求項12の何れかの請求項に記載のリチウムイオン二次電池。
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