JP5663245B2 - X線ct装置 - Google Patents
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Description
投影データの補正としては、例えば、ビームハードニング効果によるCT値の一様性低下の補正やX線検出器素子固有の入出力特性(非線形性特性)のばらつきを補正するものがある。以下では、これらの補正をリニアリティ補正と総称する。リニアリティ補正のキャリブレーションデータは、頭部や腹部といった部位または患者の体格の個人差による減弱の違いに対して対応するため、管電圧毎など、出来る限り多くの撮影条件別に収集する必要がある。
従来のキャリブレーションデータの取得技術としては、特許文献1〜3に記載の手法が知られている。
また、特許文献2では、断面が円形かつ体軸方向の厚さが均一の円柱形状を有するファントムを、回転中心からずらした位置に配置(オフセンター配置)してスキャンする。これによって、あるX線検出器素子に入射するX線がファントムを透過する際の透過パス長がビュー(view)方向に変化するので、様々な透過パス長の投影データを収集することができる。また、特許文献2では、円柱形状のファントムの他、断面が楕円形状または扇形状などを用いることも記載されている。特許文献2に記載の手法においても、サイズ(円の直径、楕円の長径または短径、あるいは扇形の半径など)が異なる数種類のファントムを用いる。
このような諸問題を解決する為、特許文献3では、円形のファントムを体軸方向に動かしながら、ヘリカルスキャンによってスキャンしてキャリブレーションデータを収集する。これにより、ファントム厚さは、最大X線ビーム幅以下にすることが可能となり、作業者の安全やファントムの保管場所の確保の面では、ある程度有効である。
特許文献1、2の手法では、ファントムのオフセンター配置や人体の形状に合わせたファントムなどの使用によって、ある程度の減弱の幅を持ったデータを収集可能ではあるが、数種類の異なるファントムが必要であり、ファントムの交換に時間を要してしまう。
また、特許文献3のように、ヘリカルスキャンを用いたキャリブレーションデータ収集であっても、様々な減弱の投影データを得るためには数種類の径の異なるファントムを用いる必要がある。
最初に、図1から図4を参照しながら、X線CT装置1の構成と、X線CT装置1による処理の概要を説明する。
図1には、X線CT装置1における方向の定義を示している。X方向は、被検体が仰向けに寝台102に載置された状態において、被検体の体幅方向である。Z方向は、被検体が仰向けに寝台102に載置された状態において、被検体の体軸方向である。Y方向は、被検体の体幅方向および被検体の体軸方向に直交する方向である。以下、X方向、Y方向、Z方向と記載したときは、図1に示す方向を示すものとする。
X線CTスキャナ204は、計測条件に応じて、X線を照射するX線管205、X線の強度分布を調整するためのX線補償フィルタとX線のビーム幅を調整するためのコリメータなどが格納されているコリメータユニット206、および被検体が載置される寝台207等をそれぞれ制御する。
コリメータユニット206は、X線管205とX線検出器208の間に設置され、X線管205から照射されるX線に対して、Z方向の開口幅および位置が制御可能になっている。
X線検出器208は、X線管205と対向する位置に設置され、X方向に数100〜1000程度のチャネル数、Z方向に1〜数100程度のスライス数のX線検出器素子が2次元マトリックス状に配列されている。X線検出器208は、X線管205から照射され、被検体を透過したX線を検出し、電気信号に変換する。
データ収集回路209は、X線検出器208に配列されている各X線検出器素子が検出する投影データを収集してA/D変換し、通信I/F207を介して画像処理装置210に送信する。
キャリブレーションデータ計測装置214は、キャリブレーションデータを収集する。補正係数算出装置213は、キャリブレーションデータに基づいて、リニアリティ補正のための補正係数を算出し、記憶装置211に保存する。ここで、リニアリティ補正とは、ビームハードニング効果によるCT値の一様性の低下や、X線検出器素子固有の入出力特性(非線形性特性)のばらつきなどの補正を意味する。
スキャンして得られる投影データに対して、画像処理装置208が、公知のオフセット補正、対数変換、エアー補正などの前段階の各種補正1を行い(S103)、キャリブレーションデータを記録装置211に保存する(S104)。
図3のS103と同様、スキャンして得られる投影データに対して、画像処理装置208が、公知のオフセット補正、対数変換、エアー補正などの前段階の各種補正1を行う(S202)。
そして、画像処理装置208は、記憶装置211に記憶されている補正係数Cdを読み出し、式(1)の多項式変換によって、リニアリティ補正を行う(S203)。
その後、画像処理装置208は、ノイズ除去などの各種補正2を行い(S204)、ローデータを作成し、記憶装置211に保存する(S205)。
そして、画像処理装置208は、ユーザの指示に従い、記憶部211に記憶されているローデータに基づいて断層像を再構成し、記憶部211に保存し、表示装置212に表示する(S206)。
図5〜図7を参照しながら、第1の実施の形態について説明する。第1の実施の形態では、図5に示す形状のファントム301を用いて、図6に示すキャリブレーションデータ収集処理を行う。
以下では、ファントム301の形状を説明するときは、寝台207に固定された状態であるものとする。
ファントム301の素材は、人体の主な組成組織である水、もしくは水に近いポリエチレンなどが好ましいが、本発明はこれに限定されない。
ファントム301のX方向の曲率は、図5(a)に示すX線管205の位置からX線が照射されたときに、ファントム301の透過パス長(X線がファントム301の内部を透過するときの軌跡の長さ)が、同一スライス位置のX線検出素子(任意のスライスに対する全てのチャネル)に対して同程度になるようにすることが望ましい。
但し、ファントム301のX方向の長さは、両端のX線ビーム302a、302b(二点鎖線にて図示)の軌跡よりも、やや内側までに留めておくことが望ましい。これは、X線のゆらぎを補正するためのリファレンス補正に使用する両端のチャネル304a、304bをカバーしない、すなわち両端のチャネル304a、304bによって検出されるX線が、ファントム301を透過しないようにするためである。そのために、ファントム301のX方向の長さは、左端のチャネル304aによって検出されるX線ビームの中で最も内側のX線ビーム303a(一点鎖線にて図示)の軌跡から、右端のチャネル304bによって検出されるX線ビームの中で最も内側のX線ビーム303b(一点鎖線にて図示)の軌跡までとすることが望ましい。
尚、両端のチャネル304a、304bによって検出されるデータをリファレンス補正に使わない場合、ファントム301のX方向の長さは、全てのチャネルをカバーしても良い。
図5(b)に示す例では、ファントム301の下部が傾斜部305となっているが、上部が傾斜部305となっても良い。また、ファントム301の上部および下部の両方が傾斜部305となっても良い。
ファントム301のX方向の設置位置は、X方向(X線検出器208のチャネル方向)にX線が一様な減弱となる位置とする。
図7(a)に示すように、sスライス目の初期透過パス長をL0(mm)とし、このときのビュー(view)をjとする。また、ファントム301の傾斜部305の傾斜角度をθ、ファントム301が固定される寝台207の移動速度をT1(mm/s)、ビューレートをR(view/s)とする。
尚、第1の実施の形態では、静止スキャンによってキャリブレーションデータを収集することから、全てのビューにおいてX線管205およびX線検出器208の周方向の位置は同一である。
ここで、図7(b)に示すように、jビューからmビュー後の透過パス長をL(j+m)(mm)とすると、L(j+m)は次式で表される。
これは、全てのチャネルに対して同様の計測が可能な手法であるから、全てのX線検出素子において、様々な透過パス長Lの投影データを収集できる。
S/N比が不十分な場合、ファントム301のZ方向の移動を繰り返すスキャン(シャトルスキャン)を行い、データサンプル数を増やして平均化する。これによって、データのS/N比が向上する。
S/N比が十分になると、X線CT装置1は、スキャンを終了する。そして、図3のS103〜S105の処理を行い、補正係数を記憶装置211に保存する。
更に、図5に示すファントム301を用いてシャトルスキャンを行うことで、補正精度を向上するために様々な減弱データを収集することができる。
但し、ある透過パス長のデータのサンプル数が1ビュー分のみなので、計測のバラツキを抑えるためにはシャトルスキャンを行い、平均化することが望ましい。尚、初期透過パス長L0は、人体の形状からすると、最低値としては水換算にして10cm程度で良いと考えられる。
図8、図9を参照しながら、第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態では、図5に示す形状のファントム301を用いて、図8に示すキャリブレーションデータ収集処理を行う。
図9(a)に示すように、sスライス目の初期透過パス長をL0(mm)とし、このときのスキャンをgスキャン目とする。また、ファントム301の傾斜部305の傾斜角度をθ、スキャン間の寝台207の移動距離(=ファントム301の移動距離)をT2(mm/scan)とする。
ここで、図9(b)に示すように、gスキャン目からnスキャン後の透過パス長をL(g+n)(mm)とすると、L(g+n)は次式で表される。
これは、全てのチャネルに対して同様の計測が可能な手法であるから、全てのX線検出素子において、様々な透過パス長Lの投影データを収集できる。
サンプル数が不十分な場合、S401を繰り返し、2回目のステップ&シュートを行う。ここで、1回目のステップ&シュートの初期透過パス長L0の位置と、2回目のステップ&シュートの初期透過パス長L0の位置とがずれるように、ファントム301のZ方向の初期位置を変える。具体的には、2回目のステップ&シュートの時には、例えば、1回目のステップ&シュートの時よりも、ファントム301のZ方向の初期位置をT2/2(mm)だけずらしてセッティングする。これによって、2回目のステップ&シュートによって収集される投影データの透過パス長は、1回目と異なるものとなり、サンプル数を2倍にすることが可能となる。
これに対して、前述したファントム301のZ方向の初期位置を変える手法は、1回目のステップ&シュートにおいて、静止スキャンごとの寝台207の移動量が最小送り量であっても、サンプル数を増やすことができる。
更に、図5に示すファントム301を用いてシャトルスキャンを行うことで、補正精度を向上するために様々な減弱データを収集することができる。
従って、補正精度を向上するためには、前述した通り、サンプル数を増加する手法が必要となる。
図10〜図14を参照しながら、第3の実施の形態について説明する。第3の実施の形態では、図10に示す形状のファントム401を用いて、図11に示すキャリブレーションデータ収集処理を行う。
以下では、ファントム401の形状を説明するときは、寝台207に固定された状態であるものとする。
ファントム401の素材は、人体の主な組成組織である水、もしくは水に近いポリエチレンなどが好ましいが、本発明はこれに限定されない。
ファントム401は、円錐台の中心軸の位置が、X線CT装置1の回転中心となるように設置することが前提である。
断面401aを見れば分かるように、ファントム401は、Z方向の各位置において、Y方向の長さが異なる形状になっており、Z方向に傾斜をなす傾斜部405a、406aを有する。また、断面401bも同様に、傾斜部405b、406bを有する。また、断面401cも同様に、傾斜部405c、406cを有する。
そして、断面401a、401b、401cを比較すると分かるように、ファントム401は、X方向の位置によって形状が異なる。
以下では、ファントム401の上部側の傾斜部405a、405b、405cを総称するときは、傾斜部405と記載する。同様に、ファントム401の下部側の傾斜部406a、406b、406cを総称するときは、傾斜部406と記載する。
ファントム401は、円錐台の中心軸の位置が、X線CT装置1の回転中心となるように設置する。
ここで、寝台207のピッチ速度をT3(mm/回転)、データのビューレートをR(view/s)、スキャン時のスキャン回転速度をV(s/回転)とする。
図12(b)に示すように、jビューからmビュー後の透過パス長をLch0(j+m)(mm)とすると、Lch0(j+m)は次式で表される。
そして、jビューからmビュー後の透過パス長をLch1(j+m)(mm)とすると、Lch1(j+m)は次式で表される。
そして、jビューからmビュー後の透過パス長をLch1(j+m)(mm)とすると、Lch2(j+m)は次式で表される。
また、傾斜角θを小さく(傾斜をきつく)する、すなわち、つまりファントム401の大口径側の直径をより大きくすると、更に広範囲の透過パス長Lの投影データが収集可能であることが分かる。
S/N比が不十分な場合、ファントム401のZ方向の移動を繰り返すスキャン(シャトルスキャン)を行い、データサンプル数を増やして平均化する。これによって、データのS/N比が向上する。
S/N比が十分になると、X線CT装置1は、スキャンを終了する。そして、図3のS103〜S105の処理を行い、補正係数を記憶装置211に保存する。
特に、第3の実施の形態は、X方向の中心のチャネルch0では、広範囲の透過パス長の投影データを収集し、外側のチャネルch1、ch2では、限られた範囲の透過パス長の投影データを収集することになる。これによって、X線CT装置1は、X線検出器208のX線検出素子の位置に応じて、必要最小限の投影データを取得することができる。
第4の実施の形態では、X線CT装置1は、図10に示す形状のファントム401を用いて、回転スキャンと寝台207の移動(ファントム401の移動)とを繰り返しながら、キャリブレーションデータを収集する(ステップ&シュート)。
第4の実施の形態では、透過パス長Lの範囲は第3の実施の形態と同様である。また、第2の実施の形態と同様、データのS/N比は十分である。但し、透過パス長Lのデータは、連続的ではなく離散的になる。
第5の実施の形態では、図10に示す形状のファントム401を用いて、図6に示すキャリブレーションデータ収集処理を行う。すなわち、X線CT装置1は、位置決めスキャン(スキャノグラム)のように、寝台207をZ方向に連続的に移動させながら、X線CTスキャナ204を回転しない静止スキャンを行い、キャリブレーションデータを収集する。
第5の実施の形態では、透過パス長Lの範囲は第3の実施の形態と同様である。また、第1の実施の形態と同様、透過パス長Lのデータは連続的となり、サンプル数が多くなる。但し、ある透過パス長のデータのサンプル数が1ビュー分のみなので、計測のバラツキを抑えるためにはシャトルスキャンを行い、平均化することが望ましい。
第6の実施の形態では、X線CT装置1は、図10に示す形状のファントム401を用いて、図8に示すキャリブレーションデータ収集処理を行う。すなわち、X線CT装置1は、静止スキャンと寝台207の移動(ファントム401の移動)とを繰り返しながら、キャリブレーションデータを収集する(ステップ&シュート)。
第6の実施の形態では、透過パス長Lの範囲は第3の実施の形態と同様である。また、第2の実施の形態と同様、データのS/N比は十分である。但し、透過パス長Lのデータは、連続的ではなく離散的になる。
図15を参照しながら、第7の実施の形態について説明する。第7の実施の形態では、第1の実施の形態〜第6の実施の形態におけるキャリブレーションデータ収集処理において、必要な領域のみX線を曝射するように、図15に示すコリメータ制御を行う。
ここで、図15(a)に位置するファントム301が、連続的に移動して、図15(b)に示す位置に移動したものとする。
ファントム301のZ方向の長さ(ファントム301の厚さ)は、X線検出器208の最大X線ビーム幅以下であり、X線検出器208の上部を横切るように移動する。
通常、キャリブレーションデータを収集するためのスキャンでは、データのS/N比を高くするため、可能な限り線量を大きくしてスキャンする。ファントム301を透過したX線はある程度減弱するので、X線検出器208が検出するX線の強度はあまり大きくない。一方、ファントム301を透過しないX線は、ほとんど減弱しないままX線検出器208に検出され、シンチレータの劣化を引き起こす可能性がある。また、X線検出素子は、X線を検出していくにつれて感度が変化するので、補正精度を低減することにもなりかねない。
図15(a)のZ方向のX線ビーム幅601aは、基準線602(点線にて図示)に対して左側に偏っている。一方、図15(b)のZ方向のX線ビーム幅601bは、基準線602(点線にて図示)に対して右側に偏っている。
例えば、第1の実施の形態〜第6の実施の形態では、1つのファントムによってキャリブレーションデータ収集処理を行うとしたが、より広い範囲の透過パス長をカバーしようとする場合には、傾斜角度を小さくすることに加えて、異なる傾斜角度を有する複数のファントムを用いても良い。
また、当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
201………操作装置
202………制御装置
203………通信I/F
204………X線CTスキャナ
205………X線管
206………コリメータユニット
207………通信I/F
208………X線検出器
209………データ収集回路
210………画像処理装置
211………記録装置
212………表示装置
213………補正係数算出装置
214………キャリブレーションデータ計測装置
301、401………ファントム
302a、302b………両端のX線ビーム
303a、303b………内側のX線ビーム
304a、304b………両端のチャネル
305、405a、405b、405c、406a、406b、406c………傾斜部
601a、601b………Z方向のX線ビーム幅
602………基準線
Claims (4)
- X線を照射するX線管と、前記X線管と対向する位置に設置されX線を検出するX線検出素子が2次元マトリックス状に配列されたX線検出器と、前記X線検出器から投影データを収集するデータ収集回路と、前記X線管と前記X線検出器と前記データ収集回路が搭載されたスキャナと、被検体が載置される寝台とを備えるX線CT装置であって、
被検体が仰向けに寝台に載置された状態において、それぞれ被検体の体幅方向をX方向、被検体の体軸方向をZ方向とし、更に前記X方向および前記Z方向に直交する方向をY方向とし、
前記寝台に固定された状態において、前記Z方向の各位置において連続的に前記Y方向の長さが変化する傾斜面を有し、かつ前記Z方向の長さが前記X線管によって照射されるX線のZ方向の最大X線ビーム幅以下であるファントムと、
前記ファントムを前記寝台に固定し、前記寝台を前記Z方向に移動させてスキャンすることで、キャリブレーションデータを収集する収集手段と、
を具備することを特徴とするX線CT装置。 - 前記ファントムは、更に、前記寝台に固定された状態において前記Z方向から見た形状が、前記X方向の長さが前記Y方向の上端部から下端部に向かって広がる略扇形をなすことを特徴とする請求項1に記載のX線CT装置。
- 前記ファントムは、更に、前記寝台に固定された状態において、X−Y平面による断面が円形となる円錐台の形状を有し、前記円錐台の中心軸の位置が回転中心となるように前記寝台に固定されることを特徴とする請求項1に記載のX線CT装置。
- 前記収集手段は、前記ファントムを前記Z方向に連続的に移動させながらスキャンすることによって前記キャリブレーションデータを収集することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のX線CT装置。
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