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JP5658067B2 - セラミックス成形体、セラミックス構造体及びセラミックス構造体の製造方法 - Google Patents

セラミックス成形体、セラミックス構造体及びセラミックス構造体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、セラミックス構造体の製造工程の途中で得られるセラミックス成形体に関し、より詳しくは有機バインダーや無機バインダーを多量に含有させることなく強度を向上させたセラミックス成形体に関する。
通常、セラミックスからなる各種構造体(セラミックス構造体)は、有機バインダーが添加されたセラミックス形成材料に水を加えて混練して得た坏土を所定形状のセラミックス成形体に成形した後、それを乾燥してセラミックス乾燥体とし、このセラミックス乾燥体を脱脂して有機バインダーを除去してから焼成することによって製造される(例えば、特許文献1参照)。このようなセラミックス構造体の製造工程の途中で得られるセラミックス成形体は、白加工等の取り扱い時に、端部が欠ける等の不良が生じにくいよう、その強度をなるべく高くすることが望まれる。
一般に、セラミックス形成材料に添加する有機バインダーの量を増加させれば、セラミックス成形体の強度は向上する。しかしながら、有機バインダーの添加量を増加させると、脱脂時や焼成時に有機バインダーが燃焼することにより生じるCOや有害ガスの発生量も増加し、環境汚染、地球温暖化といった環境面での問題が生じる。また、有機バインダーの量を増加させると、脱脂による有機バインダー除去後の気孔率が増大するため、いわゆる脱脂切れが生じたり、最終的に得られるセラミックス構造体の機械的強度が低下したりするという問題もある。更に、大型のセラミックス構造体の製造する場合には、焼成時に表面近傍部分と内部との温度差が大きくなるため、多量の有機バインダーを含んでいると、熱応力によりクラック等の欠陥が発生し、構造体としての機械的強度が低下するだけでなく、歩留まりが大幅に低下するという問題もある。
また、有機バインダーに代えて、あるいは有機バインダーと共に、無機バインダーをセラミックス形成材料に添加することによっても、セラミックス成形体の強度を向上させることができる(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、無機バインダーは焼成後もセラミックス構造体中に残存するため、無機バインダーを多量に添加するとセラミックス構造体の組成が変化し、それに伴ってセラミックス構造体の製品特性が悪化する(例えば、熱膨張係数が増大する)という問題がある。更に、無機バインダーを多量に添加すると製造コストが上昇するという問題もある。
なお、坏土の調製時に、セラミックス形成材料に加える水の比率(水比)を低下させると、セラミックス成形体の強度が向上するが、坏土の硬度が上昇するため、混練や成形に用いる設備の負荷が大きくなり、設備の大型化による設備費の増大を招く。また、混練や成形の際の発熱も大きくなるため、冷却の強化が必要となり、エネルギー消費量も増大する。
特開2006−282405号公報 特開2007−1836号公報
本発明は、このような従来の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、有機バインダーや無機バインダーを多量に含有させたり、水比を低下させたりすることなく強度を向上させたセラミックス成形体と、当該セラミックス成形体を用いて製造されたセラミックス構造体と、当該セラミックス成形体を用いたセラミックス構造体の製造方法を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明によれば、以下のセラミックス成形体、セラミックス構造体及びセラミックス構造体の製造方法が提供される。
[1] 有機バインダーが添加された、全体の20〜100質量%が疎水性原料からなるセラミックス形成材料に水を加えて混練して得た坏土を用いて成形したセラミックス成形体であって、前記有機バインダーの添加量が、前記セラミックス形成材料に対し外配で1〜10質量%であり、前記セラミックス成形体の表面の少なくとも一部に、電解質の溶解濃度が50%以上である電解質水溶液を塗布したものであり、前記電解質水溶液が、クエン酸イオン、酒石酸イオン及び酢酸イオンからなる群より選択される少なくとも1種の陰イオンと、アルカリ土類金属イオン(マグネシウムイオンを含む)、水素イオン及びアンモニウムイオンからなる群より選択される少なくとも1種の陽イオンとを含有するものであるセラミックス成形体。
[2] 前記疎水性原料の単位表面積当たりの水に対する浸漬熱が0.28J/m以下である[1]に記載のセラミックス成形体。
[3] 前記セラミックス成形体の表面の一部にのみ前記電解質水溶液を塗布した[1]又は[2]に記載のセラミックス成形体。
] 前記電解質が、酢酸マグネシウム及びクエン酸からなる群より選択される少なくとも1種の電解質である[1]〜[]の何れかに記載のセラミックス成形体。
] 押出成形により成形したものである[1]〜[]の何れかに記載のセラミックス成形体。
] ハニカム形状に成形したものである[1]〜[]の何れかに記載のセラミックス成形体。
] [1]〜[]の何れかに記載のセラミックス成形体を乾燥させ、脱脂した後、焼成して得られたセラミックス構造体。
] [1]〜[]の何れかに記載のセラミックス成形体を乾燥させ、脱脂した後、焼成するセラミックス構造体の製造方法。
本発明のセラミックス成形体は、その表面の少なくとも一部に、所定溶解濃度の電解質水溶液を塗布したものであり、塗布した電解質水溶液中の電解質がセラミックス成形体中に含まれる有機バインダーから水分を奪って硬化させるため、高い強度を発揮する。よって、セラミックス成形体の強度を向上させるために、有機バインダーや無機バインダーを多量に含有させる必要が無く、その結果、それらバインダーの多量添加に伴う諸問題、具体的には、COや有害ガスの発生量増加による環境汚染や地球温暖化、気孔率増大による脱脂切れや機械的強度の低下、焼成時の熱応力増大に伴う欠陥発生と歩留まりの低下、セラミックス構造体の組成変化による製品特性の悪化、製造コストの上昇といった問題を解消できる。また、セラミックス成形体の強度を向上させるために、坏土の調製時にセラミックス形成材料に加える水の比率(水比)を低下させる必要も無く、その結果、坏土の硬度上昇に伴う諸問題、具体的には、混練や成形に用いる設備の負荷や発熱の増大によって生じる設備費とエネルギー消費量の増大の問題を解消できる。更に、本発明のセラミックス成形体を乾燥して得られるセラミックス乾燥体も、表面に電解質の膜が形成されるとともに、電解質が内部に浸透してバインダー的な役割を果たすことにより、高い強度を発揮するので、その取り扱いが容易となる。なお、セラミックス成形体の表面に塗布した電解質水溶液の乾燥は、セラミックス成形体本体の乾燥と同時に行うことができるので、本発明のセラミックス成形体を用いてセラミックス構造体を製造するに際し、乾燥工程が増加することはない。
また、本発明のセラミックス構造体は、本発明のセラミックス成形体を用いて製造されたものであるので、その製造に当たって、本発明のセラミックス成形体の前記効果を享受することができる。
更に、本発明のセラミックス構造体の製造方法は、本発明のセラミックス成形体を用いてセラミックス構造体を製造するものであるので、その実施に当たって、本発明のセラミックス成形体の前記効果を享受することができる。
ハニカム成形体の強度を測定する方法を説明するための説明図である。
以下、本発明を具体的な実施形態に基づき説明するが、本発明は、これに限定されて解釈されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加え得るものである。
前記のとおり、本発明のセラミックス成形体は、有機バインダーが添加された、全体の20〜100質量%が疎水性原料からなるセラミックス形成材料に水を加えて混練して得た坏土を用いて成形したセラミックス成形体であって、前記有機バインダーの添加量が、前記セラミックス形成材料に対し外配で1〜10質量%であり、前記セラミックス成形体の表面の少なくとも一部に、電解質の溶解濃度が50%以上である電解質水溶液を塗布したものであることを、その主要な特徴とする。
電解質水溶液を塗布する前のセラミックス成形体は、一般的なセラミックス構造体の製造工程の途中で得られるものであり、従来公知の方法によって得ることができる。具体的には、まず、有機バインダーが添加された、全体の20〜100質量%が疎水性原料からなるセラミックス形成材料に水を加えて混練して、坏土を得る。
坏土を得るために用いるセラミックス形成材料は、焼成することによって最終的に製造しようとするセラミックス構造体の主成分となるセラミックスの粉末である。なお、本発明において、セラミックス形成材料は、全体の20〜100質量%、好ましくは、全体の70〜100質量%が疎水性原料からなることを要する。ここで、本発明における「疎水性原料」とは、単位表面積当たりの水に対する浸漬熱が0.52J/m以下であるようなセラミックス粉末を意味する。セラミックス粉末の単位表面積当たりの水に対する浸漬熱(単位:J/m)は、例えば、東京理工社製のマルチマイクロカロリーメーターで測定した浸漬熱(単位:J/g)を、Micromeritics社製の流動式比表面積測定装置で測定したBET比表面積(単位:m/g)で除することにより算出することができる。
セラミックス形成材料のうち、疎水性原料としては、例えば、タルク、カオリン、シリカ、シリカゲルを挙げることができる。また、セラミックス形成材料のうち、疎水性原料以外の原料(親水性原料)としては、例えば、アルミナ、マグネシア、水酸化アルミニウムを挙げることができる。セラミックス形成材料として、例えば、タルク、カオリン、アルミナ、シリカ及びマグネシアの粉末からなるコージェライト形成原料(焼成によりコージェライトを形成する原料)を用いる場合には、疎水性原料であるタルク、カオリン及びシリカの粉末がコージェライト形成原料全体の20質量%以上を占めるようにする。
本発明において、疎水性原料には、単位表面積当たりの水に対する浸漬熱が0.28J/m以下であるものを用いるのが好ましい。
このようなセラミックス形成材料に添加する有機バインダーとしては、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ポリビニルアルコール等が好適に使用できる。有機バインダーの添加量は、セラミックス形成材料に対し外配で1〜10質量%、好ましくは、1〜6質量%である。有機バインダーの添加量が、セラミックス形成材料に対し外配で1質量%未満では、坏土の可塑性、成形性、保形性等が十分に得られない。一方、有機バインダーの添加量が多くなると、前述したように、COや有害ガスの発生量増加による環境汚染や地球温暖化、気孔率増大による脱脂切れや機械的強度の低下、焼成時の熱応力増大に伴う欠陥発生と歩留まりの低下といった問題が発生するので、セラミックス形成材料に対し外配で10質量%を超えない添加量とする。本発明のセラミックス成形体は、電解質水溶液を塗布することによって、その強度を向上させるものであるので、セラミックス形成材料に対し外配で10質量%を超えるような多量の有機バインダーを添加しなくても、十分な強度が得られる。
なお、セラミックス形成材料には、有機バインダーとともに、必要に応じて、他の添加物、例えば、分散剤、造孔剤、可塑剤、焼結助剤、無機バインダー等を添加してもよい。
分散剤としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、又はポリアルコール等を挙げることができる。造孔材としては、例えば、グラファイト、小麦粉、澱粉、フェノール樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、未発泡樹脂、既発泡樹脂、シラスバルーン、フライアッシュバルーン等を挙げることができる。可塑剤としては、例えば、グリセリン誘導体等を挙げることができる。焼成助剤としては、例えば、イットリア(Y)、カルシア(CaO)、マグネシア(MgO)、又はセリア(CeO)等を挙げることができる。なお、これら各添加物は、目的に応じて1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
無機バインダーとしては、例えば、モンモリロナイト、パイロフィライト、スメクタイト、バーミキュライト、アタパルジャイト、ハイドロタルサイト等が好適に使用できる。セラミックス形成材料に無機バインダーを添加する場合、その添加量は、セラミックス形成材料に対し外配で1〜10質量%とすることが好ましく、1〜3質量%とすることがより好ましい。無機バインダーの添加量が、セラミックス形成材料に対し外配で1質量%未満では、添加効果はほとんど得られない。また、無機バインダーの添加量が多くなると、前述したように、最終的に得られるセラミックス構造体の組成変化による製品特性の悪化、製造コストの上昇といった問題が発生するので、セラミックス形成材料に対し外配で10質量%を超えない程度の添加量とすることが好ましい。本発明のセラミックス成形体は、電解質水溶液を塗布することによって、その強度を向上させるものであるので、セラミックス形成材料に対し外配で10質量%を超えるような多量の無機バインダーを添加しなくても、十分な強度が得られる。
有機バインダーが添加されたセラミックス形成材料の混練に際し、分散媒として加える水の量は、セラミックス形成材料の種類によって異なるため、一義的に決定することは困難であるが、例えば、セラミックス形成材料がコージェライト形成原料である場合には、セラミックス形成材料に対して、外配で10〜50質量%程度の水を加えることが好ましい。混練は、従来公知の混練機、例えば、シグマニーダ、バンバリーミキサ、スクリュー式の押出混練機等を用いて行うことができる。特に、真空減圧装置(例えば、真空ポンプ等)を備えた混練機(いわゆる真空土練機や二軸連続混練押出成形機等)を用いると、欠陥が少なく、成形性の良好な坏土を得ることができ好ましい。
混練により得られた坏土は、所定形状のセラミックス成形体に成形される。セラミックス成形体の形状としては、特に制限はなく、例えば、シート形状、チューブ形状、レンコン形状、ハニカム形状等を挙げることができる。なお、ハニカム形状とは、2つの端面を有し、それら端面間を貫通する複数のセルが隔壁によって区画形成された形状であり、このようなハニカム形状のセラミックス成形体は、ディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)等のフィルターや排ガス浄化用触媒の触媒担体等の製造に用いられる。
セラミックス成形体を成形する方法についても、特に制限はなく、ろくろ成形、押出成形、射出成形、プレス成形、シート成形等の従来公知の成形法を用いることができる。例えば、ハニカム形状のセラミックス成形体を成形する場合には、坏土を、所望のセル形状、隔壁厚さ、セル密度を有する口金を用いて押出成形する方法が好適である。
本発明のセラミックス成形体は、このようにして得られたセラミックス成形体の表面の少なくとも一部に、電解質の溶解濃度が50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上である電解質水溶液を塗布したものである。なお、ここで言う「溶解濃度」とは、20℃における飽和溶解度に対する電解質水溶液の濃度の割合を意味し、下式により算出される。
溶解濃度(%)=(電解質の質量/電解質水溶液の質量)/飽和溶解度
電解質には、その周囲に水分を引きつける性質があるため、セラミックス成形体の表面に、電解質の溶解濃度が50%以上である電解質水溶液を塗布すると、塗布された電解質水溶液中の電解質が、セラミックス成形体中に含まれる有機バインダーから水分を奪う。そして、電解質に水分を奪われたセラミックス成形体中の有機バインダーは、瞬時にゲル化(離水)する。この有機バインダーのゲル化により、セラミックス成形体は硬化し、その強度が向上する。なお、有機バインダーから奪われた水分は、セラミックス成形体の表面から水滴となって外部に排出される。
このように本発明のセラミックス成形体は、電解質水溶液の塗布によって強度の向上が図られているので、有機バインダーや無機バインダーを多量に含有させなくても高い強度を発現し、その結果、それらバインダーの多量添加に伴う諸問題、具体的には、COや有害ガスの発生量増加による環境汚染や地球温暖化、気孔率増大による脱脂切れや機械的強度の低下、焼成時の熱応力増大に伴う欠陥発生と歩留まりの低下、セラミックス構造体の組成変化による製品特性の悪化、製造コストの上昇といった問題を解消できる。
また、本発明のセラミックス成形体は、電解質水溶液の塗布によって強度の向上が図られているので、坏土の調製時にセラミックス形成材料に加える水の比率(水比)を低下させなくても高い強度を発現し、その結果、坏土の硬度上昇に伴う諸問題、具体的には、坏土の混練や成形に用いる設備の負荷や発熱の増大によって生じる設備費とエネルギー消費量の増大の問題を解消できる。更に、本発明のセラミックス成形体を乾燥して得られるセラミックス乾燥体も、表面に電解質の膜が形成されるとともに、電解質が内部に浸透してバインダー的な役割を果たすことにより、高い強度を発揮するので、その取り扱いが容易となる。
なお、電解質の溶解濃度が50%未満の電解質水溶液を用いた場合には、電解質の水分を引きつける力が不十分となるため、セラミックス成形体中に含まれる有機バインダーから水分を奪うことができず、逆に、電解質水溶液の水分がセラミックス成形体中に含まれる有機バインダーに吸水されて、セラミックス成形体が軟化し、変形が生じることがある。
また、前述のとおり、本発明においては、全体の20〜100質量%、好ましくは、70〜100質量%が疎水性原料からなるセラミックス形成材料を用いている。疎水性原料の含有量が、セラミックス形成材料全体の20質量%未満となる、すなわち、親水性原料の含有量が、セラミックス形成材料全体の80質量%を超えると、電解質によって有機バインダーから奪われた水分が外部に排出されずに、親水性原料の周囲に移動してしまい、セラミックス成形体が軟化し、変形が生じることがある。
本発明のセラミックス成形体は、その表面全体に電解質水溶液が塗布したものでもよいし、例えば、他の部位より肉薄で強度が劣る部分や、白加工が施される特定部分の強度を向上させるために、その表面の一部にのみ電解質水溶液が塗布したものでもよい。このように、電解質水溶液の塗布部分を強度向上が必要な部分に限定することにより、電解質の使用量を低減して、製造コストを抑えることができる。
なお、本発明のセラミックス成形体において、電解質水溶液に含まれる電解質の種類としては、クエン酸イオン、酒石酸イオン及び酢酸イオンからなる群より選択される少なくとも1種の陰イオンと、アルカリ土類金属イオン(マグネシウムイオンを含む)、水素イオン及びアンモニウムイオンからなる群より選択される少なくとも1種の陽イオンとが含有されていることが好ましい(電解質を、対になるイオンで示している)。電解質水溶液中に溶解させる電解質としては、例えば、クエン酸、酒石酸、酢酸、クエン酸マグネシウム、酒石酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、クエン酸アンモニウム、酒石酸アンモニウム、酢酸アンモニウム等を挙げることができる(電解質を、物質名で示している)。これらの中でも、酢酸マグネシウム、クエン酸が特に好適に用いられる。また、電解質水溶液の塗布方法についても、特に制限はなく、例えば、スプレー塗布、刷毛塗り、電解質水溶液中へのセラミックス成形体の浸漬等の方法を用いることができる。また、電解質水溶液を塗布したセラミックス成形体は、その後のセラミックス構造体の製造工程において乾燥されるが、セラミックス成形体の表面に塗布した電解質水溶液の乾燥は、セラミックス成形体本体の乾燥と同時に行うことができるので、本発明のセラミックス成形体を用いてセラミックス構造体を製造するに際し、乾燥工程が増加することはない。
次に、本発明のセラミックス構造体について説明する。本発明のセラミックス構造体は、本発明のセラミックス成形体を乾燥させ、脱脂した後、焼成して得られたものである。ここで、「脱脂」とは、乾燥後のセラミックス成形体(セラミックス乾燥体)に含まれる有機バインダー等の有機物を燃焼させて除去する操作を意味する。
セラミックス成形体の乾燥の方法には特に制限はなく、例えば、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、誘電乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等の従来公知の乾燥法を用いることができる。中でも、セラミックス成形体全体を迅速かつ均一に乾燥させることができる点で、熱風乾燥と、マイクロ波乾燥又は誘電乾燥とを組み合わせた乾燥方法を用いることが好ましい。
一般に、有機バインダーの燃焼温度は100〜300℃程度であるので、乾燥後のセラミックス成形体(セラミックス乾燥体)に含まれる有機物が、有機バインダーのみである場合、あるいは有機バインダーと有機バインダーの燃焼温度より低い温度で燃焼する有機物である場合には、脱脂温度を前記のような温度範囲に設定すればよい。また、セラミックス乾燥体に含まれる有機物が、有機バインダーと有機バインダーの燃焼温度より高い温度で燃焼する有機物である場合には、脱脂温度を当該有機物の燃焼温度以上の温度に設定する。
脱脂時間としては特に制限はないが、通常は、1〜10時間程度である。脱脂の雰囲気は、セラミックス乾燥体を構成するセラミックス形成材料やセラミックス乾燥体に含まれる有機バインダー等の有機物の種類によって適宜選択され、具体的な雰囲気としては、大気雰囲気、酸素雰囲気、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気、真空雰囲気等を挙げることができる。
セラミックス乾燥体を脱脂した後に行う焼成の条件(温度・時間)は、セラミックス乾燥体を構成するセラミックス形成材料の種類により異なるため、その種類に応じて適当な条件を選択すればよい。例えば、セラミックス形成材料として、コージェライト形成原料を用いた場合には、脱脂後のセラミックス乾燥体を、1300〜1500℃で、3〜10時間程度焼成することが好ましい。焼成温度が1300℃未満では、目的の結晶相(コージェライト相)が得られないことがあり、1500℃を超えると、融解してしまうことがある。また、焼成の雰囲気も、セラミックス乾燥体を構成するセラミックス形成材料の種類によって適宜選択され、具体的な雰囲気としては、大気雰囲気、酸素雰囲気、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気、真空雰囲気等を挙げることができる。
本発明のセラミックス構造体は、本発明のセラミックス成形体を用いて製造されたものであるので、その製造に当たって、本発明のセラミックス成形体の前記効果を享受することができる。
次いで、本発明のセラミックス構造体の製造方法について説明する。本発明のセラミックス構造体の製造方法は、本発明のセラミックス成形体を乾燥させ、脱脂した後、焼成するものである。このセラミックス構造体の製造方法における好適な乾燥方法や脱脂条件や焼成条件は前述のとおりである。
本発明のセラミックス構造体の製造方法は、本発明のセラミックス成形体を用いてセラミックス構造体を製造するものであるので、その実施に当たって、本発明のセラミックス成形体の前記効果を享受することができる。
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[水溶液の調製]
電解質である酢酸マグネシウム、クエン酸、又は有機バインダーであるメチルセルロースを塗布物質(溶質)とし、それらを表1に示す配合量で水(溶媒)と配合して溶解させることにより、塗布物質の溶解濃度が同表に示す値となるような5種類の水溶液1〜5を調製した。
Figure 0005658067
[坏土の調製]
タルク、カオリン、アルミナ、シリカ及びマグネシアの粉末を表2に示す割合で調合したセラミックス形成材料(コージェライト形成原料)に対し、有機バインダーとしてのメチルセルロース、無機バインダーとしてのモンモリロナイトを、それぞれ外配で同表に示す添加量となるよう添加し、これに坏土の硬度が20となるように所定量の水を加えて混練することにより、セラミックス形成材料中の疎水性原料の含有量が同表に示す値となるような6種類の坏土1〜6を得た。なお、前記坏土の硬度は、日本碍子(株)製のNGK硬度計を用いて測定した値である。また、タルク、カオリン、アルミナ、シリカ及びマグネシアの粉末の単位表面積当たりの水に対する浸漬熱は、表3に示すとおりである。
Figure 0005658067
Figure 0005658067
(実施例1)
坏土1を用い、外形が直径40mmの円柱形で、隔壁厚さ12ミル(305μm)、セル密度300セル/平方インチ(46.5セル/cm)、セル形状が正方形であるハニカム形状のセラミックス成形体(ハニカム成形体)を連続的に押出成形し、それを長さ60mmとなるように切断した。次に、切断後のハニカム成形体の表面に、水溶液1をスプレー塗布し、その塗布時の表面状態を目視観察して、変形が生じているかどうかを確認するとともに、手触りにて軟化が生じているかどうかを確認した。その後、このハニカム成形体について、強度を測定した。強度の測定は、図1に示すように、オートグラフにてハニカム成形体(試験片)1の径方向から圧縮荷重を負荷し、圧縮変位が3mmとなった時の圧縮荷重をハニカム成形体の強度とした。また、水溶液塗布後のハニカム成形体をシッピキ(切り糸)を用いて径方向から切断し、この切断時に変形が生じるかどうかを目視観察により調べた。更に、水溶液塗布後のハニカム成形体をマイクロ波乾燥及び熱風乾燥により乾燥させた後、大気中にて450℃で5時間かけて脱脂し、脱脂後のハニカム成形体について、その外観を目視観察することにより、脱脂切れの有無を調べた。なお、ここで言う「脱脂切れ」とは、脱脂後のハニカム成形体において、本来連続しているべき隔壁やセルが不連続になっている状態のことである。前記水溶液塗布時のハニカム成形体の表面状態の観察結果、ハニカム成形体の強度の測定結果、切断時のハニカム成形体の変形の有無の調査結果、及び脱脂後のハニカム成形体の脱脂切れの有無の調査結果を表4に示した。
(実施例2)
水溶液1の代わりに水溶液2を用いた以外は、前記実施例1と同様にして、ハニカム成形体を得、水溶液塗布時のハニカム成形体の表面状態の観察、ハニカム成形体の強度の測定、切断時のハニカム成形体の変形の有無の調査、及び脱脂後のハニカム成形体の脱脂切れの有無の調査を行い、その結果を表4に示した。
(実施例3)
水溶液1の代わりに水溶液3を用いた以外は、前記実施例1と同様にして、ハニカム成形体を得、水溶液塗布時のハニカム成形体の表面状態の観察、ハニカム成形体の強度の測定、切断時のハニカム成形体の変形の有無の調査、及び脱脂後のハニカム成形体の脱脂切れの有無の調査を行い、その結果を表4に示した。
(実施例4)
坏土1の代わりに坏土2を用いた以外は、前記実施例1と同様にして、ハニカム成形体を得、水溶液塗布時のハニカム成形体の表面状態の観察、ハニカム成形体の強度の測定、切断時のハニカム成形体の変形の有無の調査、及び脱脂後のハニカム成形体の脱脂切れの有無の調査を行い、その結果を表4に示した。
(実施例5)
坏土1の代わりに坏土3を用いた以外は、前記実施例1と同様にして、ハニカム成形体を得、水溶液塗布時のハニカム成形体の表面状態の観察、ハニカム成形体の強度の測定、切断時のハニカム成形体の変形の有無の調査、及び脱脂後のハニカム成形体の脱脂切れの有無の調査を行い、その結果を表4に示した。
(実施例6)
坏土1の代わりに坏土5を用いた以外は、前記実施例1と同様にして、ハニカム成形体を得、水溶液塗布時のハニカム成形体の表面状態の観察、ハニカム成形体の強度の測定、切断時のハニカム成形体の変形の有無の調査、及び脱脂後のハニカム成形体の脱脂切れの有無の調査を行い、その結果を表4に示した。
(比較例1)
水溶液1の代わりに水溶液4を用いた以外は、前記実施例1と同様にして、ハニカム成形体を得、水溶液塗布時のハニカム成形体の表面状態の観察、及び切断時のハニカム成形体の変形の有無の調査を行い、その結果を表4に示した。なお、この比較例1については、水溶液塗布時にハニカム成形体の表面が軟化し、切断時にハニカム成形体が変形したため、ハニカム成形体の強度の測定、及び脱脂後のハニカム成形体の脱脂切れの有無の調査は行わなかった。
(比較例2)
水溶液1の代わりに水溶液5を用いた以外は、前記実施例1と同様にして、ハニカム成形体を得、水溶液塗布時のハニカム成形体の表面状態の観察、及び切断時のハニカム成形体の変形の有無の調査を行い、その結果を表4に示した。なお、この比較例2については、水溶液塗布時にハニカム成形体の表面が軟化し、切断時にハニカム成形体が変形したため、ハニカム成形体の強度の測定、及び脱脂後のハニカム成形体の脱脂切れの有無の調査は行わなかった。
(比較例3)
何れの水溶液の塗布も行わなかった以外は、前記実施例1と同様にして、ハニカム成形体を得、ハニカム成形体の強度の測定、切断時のハニカム成形体の変形の有無の調査、及び脱脂後のハニカム成形体の脱脂切れの有無の調査を行い、その結果を表4に示した。
(比較例4)
坏土1の代わりに坏土4を用いた以外は、前記実施例1と同様にして、ハニカム成形体を得、水溶液塗布時のハニカム成形体の表面状態の観察、ハニカム成形体の強度の測定、切断時のハニカム成形体の変形の有無の調査、及び脱脂後のハニカム成形体の脱脂切れの有無の調査を行い、その結果を表4に示した。
(比較例5)
坏土1の代わりに坏土6を用いた以外は、前記実施例1と同様にして、ハニカム成形体を得、水溶液塗布時のハニカム成形体の表面状態の観察、及び切断時のハニカム成形体の変形の有無の調査を行い、その結果を表4に示した。なお、この比較例5については、水溶液塗布時にハニカム成形体の表面が軟化し、切断時にハニカム成形体が変形したため、ハニカム成形体の強度の測定、及び脱脂後のハニカム成形体の脱脂切れの有無の調査は行わなかった。
Figure 0005658067
表4に示すとおり、疎水性原料の含有量がセラミックス形成材料全体の20〜100質量%の範囲にあり、かつ、有機バインダーの添加量がセラミックス形成材料に対し外配で1〜10質量%の範囲内にある坏土(坏土1〜5)を用いるとともに、電解質の溶解濃度が50%以上である電解質水溶液(水溶液1〜3)を用いた実施例1〜6は、電解質水溶液の塗布を行っていない比較例3に比して、高い強度を示した。一方、電解質の溶解濃度が50%未満である電解質水溶液(水溶液4)を用いた比較例1と、電解質ではなく有機バインダーの水溶液(水溶液5)を用いた比較例2と、疎水性原料の含有量がセラミックス形成材料全体の20質量%未満である坏土(坏土6)を用いた比較例5は、水溶液の塗布時に表面が軟化し、切断時に変形が生じた。また、有機バインダーの添加量が、セラミックス形成材料に対し外配で10質量%を超える坏土(坏土4)を用いた比較例4は、高い強度を示したものの脱脂切れが発生した。
本発明のセラミックス成形体、セラミックス構造体及びセラミックス構造体の製造方法は、例えば、セラミックフィルター、触媒担体等の各種セラミック製品に用いられるセラミックス構造体やその製造に好適に利用することができる。
1:ハニカム成形体(試験片)

Claims (8)

  1. 有機バインダーが添加された、全体の20〜100質量%が疎水性原料からなるセラミックス形成材料に水を加えて混練して得た坏土を用いて成形したセラミックス成形体であって、
    前記有機バインダーの添加量が、前記セラミックス形成材料に対し外配で1〜10質量%であり、
    前記セラミックス成形体の表面の少なくとも一部に、電解質の溶解濃度が50%以上である電解質水溶液を塗布したものであり、
    前記電解質水溶液が、クエン酸イオン、酒石酸イオン及び酢酸イオンからなる群より選択される少なくとも1種の陰イオンと、アルカリ土類金属イオン(マグネシウムイオンを含む)、水素イオン及びアンモニウムイオンからなる群より選択される少なくとも1種の陽イオンとを含有するものであるセラミックス成形体。
  2. 前記疎水性原料の単位表面積当たりの水に対する浸漬熱が0.28J/m以下である請求項1に記載のセラミックス成形体。
  3. 前記セラミックス成形体の表面の一部にのみ前記電解質水溶液を塗布した請求項1又は2に記載のセラミックス成形体。
  4. 前記電解質が、酢酸マグネシウム及びクエン酸からなる群より選択される少なくとも1種の電解質である請求項1〜の何れか一項に記載のセラミックス成形体。
  5. 押出成形により成形したものである請求項1〜の何れか一項に記載のセラミックス成形体。
  6. ハニカム形状に成形したものである請求項1〜の何れか一項に記載のセラミックス成形体。
  7. 請求項1〜の何れか一項に記載のセラミックス成形体を乾燥させ、脱脂した後、焼成して得られたセラミックス構造体。
  8. 請求項1〜の何れか一項に記載のセラミックス成形体を乾燥させ、脱脂した後、焼成するセラミックス構造体の製造方法。
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