以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示す断面図である。カラープリンタ100は、本実施形態では、異なる4色(イエロー、シアン、マゼンタおよびブラック)に対応する4つの感光体ドラム1a、1b、1cおよび1dを並列配置して画像形成を行う、4連タンデム型のカラープリンタである。
カラープリンタ100の装置本体内には、4つの画像形成部Pa、Pb、PcおよびPdが、図1では左側から順に配設されている。これらの画像形成部Pa〜Pdは、異なる4色(イエロー、シアン、マゼンタおよびブラック)の画像に対応して設けられており、それぞれ帯電、露光、現像および転写の各工程によりイエロー、シアン、マゼンタおよびブラックの画像を順次形成する。
この画像形成部Pa〜Pdには、各色の可視像(トナー像)を担持する上記した感光体ドラム1a〜1dがそれぞれ配設されており、さらに図1において反時計回りに回転する中間転写ベルト8が各画像形成部Pa〜Pdに隣接して設けられている。これらの感光体ドラム1a〜1d上に形成されたトナー像が、各感光体ドラム1a〜1dに当接しながら移動する中間転写ベルト8上に順次転写された後、二次転写ローラ9において用紙P上に一度に転写され、さらに、定着装置13において記録媒体の一例としての用紙P上に定着された後、装置本体より排出される。感光体ドラム1a〜1dを図1において時計回りに回転させながら、各感光体ドラム1a〜1dに対する画像形成プロセスが実行される。
トナー像が転写される用紙Pは、装置下部の用紙カセット16内に収容されており、給紙ローラ12aおよびレジストローラ対12bを介して二次転写ローラ9へと搬送される。中間転写ベルト8には誘電体樹脂製のシートが用いられ、主に継ぎ目を有しない(シームレス)ベルトが用いられる。中間転写ベルト8および二次転写ローラ9は、ベルト駆動モータ(図示せず)により感光体ドラム1a〜1dと同一線速で回転駆動される。また、二次転写ローラ9の下流側には中間転写ベルト8表面に残存するトナー等を除去するためのブレード状のベルトクリーナ17が配置されている。
次に、画像形成部Pa〜Pdについて説明する。回転自在に配設された感光体ドラム1a〜1dの周囲および下方には、感光体ドラム1a〜1dを帯電させる帯電装置2a、2b、2cおよび2dと、各感光体ドラム1a〜1dに対して画像データに基づく露光を行う露光ユニット5と、感光体ドラム1a〜1d上に形成される静電潜像をトナーで現像する現像ユニット3a、3b、3cおよび3dと、感光体ドラム1a〜1d上でトナー像の転写後に残留した現像剤(トナー)を回収、除去するクリーニング装置7a、7b、7cおよび7dとが設けられている。
パソコン等の上位装置から画像データが入力されると、先ず、帯電装置2a〜2dによって感光体ドラム1a〜1dの表面を一様に帯電させ、次いで露光ユニット5によって画像データに基づいて光照射し、各感光体ドラム1a〜1d上に画像データに応じた静電潜像を形成する。現像ユニット3a〜3dは、感光体ドラム1a〜1dに対向配置された現像ローラを備え、それぞれシアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの各色のトナーを含む二成分現像剤が所定量充填されている。
なお、後述のトナー像の形成によって各現像ユニット3a〜3d内に充填された二成分現像剤中のトナーの割合が規定値を下回った場合にはトナーコンテナ4a〜4dから各現像ユニット3a〜3dにトナーが補給される。このトナーは、現像ユニット3a〜3dにより感光体ドラム1a〜1d上に供給され、静電的に付着することにより、露光ユニット5の露光により形成された静電潜像に応じたトナー像が形成される。
そして、一次転写ローラ6a〜6dに所定の転写電圧を付与することにより、感光体ドラム1a〜1d上のイエロー、シアン、マゼンタおよびブラックのトナー像が中間転写ベルト8上に一次転写される。これらの4色の画像は、所定のフルカラー画像形成のために予め定められた所定の位置関係をもって形成される。その後、引き続き行われる新たな静電潜像の形成に備え、感光体ドラム1a〜1dの表面に残留したトナーがクリーニング装置7a〜7dにより除去される。
中間転写ベルト8は、従動ローラ10及び駆動ローラ11に掛け渡されており、上記ベルト駆動モータによる駆動ローラ11の回転に伴い中間転写ベルト8が反時計回りに回転を開始すると、用紙Pがレジストローラ12bから所定のタイミングで中間転写ベルト8に隣接して設けられた二次転写ローラ9と中間転写ベルト8のニップ部(二次転写ニップ部)へ搬送され、ニップ部において用紙P上にフルカラー画像が二次転写される。トナー像が転写された用紙Pは定着装置13へと搬送される。
定着装置13に搬送された用紙Pは、加熱ローラ14aと加圧ローラ14bとで構成される定着ローラ対14の定着ニップ部を通過する際に加熱および加圧されてトナー像が用紙Pの表面に定着され、所定のフルカラー画像が形成される。フルカラー画像が形成された用紙Pは、搬送ローラ対15を経て用紙搬送路18の分岐部に配置された搬送ガイド部材21によって搬送方向が振り分けられ、そのまま(或いは、両面搬送路22に送られて両面コピーされた後に)、排出ローラ対19を介して排出トレイ20に排出される。
用紙搬送路18は、具体的には、搬送ローラ対15の下流側において左右二股に分岐し、一方の経路(図1では左方向に分岐する経路)は排出トレイ20に連通するように構成されている。そして、他方の経路(図1では右方向に分岐する経路)は両面搬送路22に連通するように構成されている。用紙Pの両面に画像を形成する場合は、定着装置13を通過した用紙Pの一部を一旦排出ローラ対19から装置外部にまで突出させる。
その後、排出ローラ対19を逆回転させるとともに搬送ガイド部材21を略水平に揺動させることにより、用紙Pは搬送ガイド部材21の上面に沿って両面搬送路22へ案内され、画像面を反転させた状態で二次転写ローラ9に再搬送される。そして、中間転写ベルト8上に形成された次の画像が二次転写ローラ9により用紙Pの画像が形成されていない面に転写され、定着装置13に搬送されてトナー像が定着された後、排出トレイ20に排出される。
図2は、図1における定着装置周辺の拡大図であり、図3は定着装置の外観斜視図である。なお、図3では定着装置13を図12の状態から反時計方向に90°回転させた状態を示しており、図3の白矢印方向が装置上側となる。加熱ローラ14aは、熱伝導性に優れたアルミや鉄等の金属からなる円筒形状の芯金の外周面に、フッ素樹脂のコーティングやチューブを被覆したものが用いられる。加熱ローラ14aの芯金内部にはハロゲンランプやキセノンランプ等のヒータ(図示せず)が配置されている。
加熱ローラ14aは、ギヤ列を介してローラ駆動モータ(図示せず)に連結されており、ローラ駆動モータが回転駆動すると、加熱ローラ14aが図2の反時計方向に回転する。加熱ローラ14aの回転により、加熱ローラ14aに圧接される加圧ローラ14bが図2の時計方向に従動回転する。なお、ローラ駆動モータが加熱ローラ14aにギヤ接続する構成に替えて、ローラ駆動モータが加圧ローラ14bに接続され、加圧ローラ14bの回転により加熱ローラ14aを従動回転させる構成としてもよい。
加圧ローラ14bは、合成樹脂、金属その他材料から構成される円筒形状の基材上にシリコンゴム等の弾性層が形成され、この弾性層の表面がフッ素樹脂等の離形性に優れた樹脂で覆われたものが用いられる。加圧ローラ14bが加熱ローラ14aに当接する部分には、定着ニップ部Nが形成される。そして、後述するニップ圧調整機構50によって定着ニップ部Nに所定のニップ圧が作用する。
また、装置後側(図2の右側)には両面搬送路22の一部(外側面)を構成する側面カバー23が下端部に設けられた支軸(図示せず)において回動可能に支持されている。また、側面カバー23の内側には、定着装置13の上流側(下側)における両面搬送路22の一部(内側面)と用紙搬送路18の一部(外側面)を構成する搬送ユニット24が下端部を支点として回動可能に支持されている。さらに、定着装置13の下流側(上側)における両面搬送路22の一部(内側面)と用紙搬送路18の一部(外側面)を構成する定着ジャム処理カバー25が、定着装置13の下方の支点25aで上下に回動可能に支持されている。図4は、側面カバー23及び搬送ユニット24を開放した状態を示すカラープリンタ100の部分斜視図である。
レジストローラ対12bの上流側直近にはレジストセンサ26が配置されており、レジストローラ対12bにおける用紙Pの通過を検知する。レジストセンサ26による検知結果は制御部90(図13参照)に送信される。レジストセンサ26としては、用紙の通過の有無を検知可能な種々のセンサを用いることができ、例えば直接用紙を突き当てて検知を行うアーム型センサや、発光部より用紙に光を射出し、用紙表面からの反射光を受光部で検知する反射型センサ等が用いられる。
定着ジャム処理カバー25の用紙搬送路18を構成する面には、搬送ローラ対15の一方のローラ15aと、定着アクチュエータ27とが配置されており、定着ジャム処理カバー25の先端には搬送ガイド部材21が揺動可能に支持されている。定着ジャム処理カバー25を開放することで搬送ローラ対15が定着ジャム処理カバー25側のローラ15aと装置本体側のローラ15bとに離間し、定着ローラ対14から排出ローラ対19までの用紙搬送路18が露出するようになっている。
定着アクチュエータ27は、用紙の先端部及び後端部の通過を検知する用紙検知機構30(図5参照)を構成する一部材であり、用紙搬送方向に対して定着ニップ部Nの下流側の近傍に配置される。
図5は、定着アクチュエータ27を含む用紙検知機構の斜視図であり、図6は、定着センサ付近の拡大図である。用紙検知機構30は、定着アクチュエータ27と、リンク部材28と、定着センサ29とで構成される。
定着アクチュエータ27は、用紙搬送路上に突出する検知部27aと、検知部27aが固定されるシャフト27bと、シャフト27bの一端に形成された当接部27cとを有する。当接部27cには、揺動軸28aを中心に揺動可能なリンク部材28の一端が当接しており、リンク部材28の他端には定着センサ29のON及びOFFの切り替えを行う遮光板28bが形成されている。定着センサ29は、平面視コ字型の対向する内面に発光部及び受光部から成る光検知部が設けられたPI(フォトインタラプタ)センサである。
用紙の先端部が定着アクチュエータ27の検知部27aを通過すると、検知部27aが用紙に押し上げられて、定着アクチュエータ27はシャフト27bを中心に図5の反時計方向に回動する。定着アクチュエータ27の回動に伴い、リンク部材28が揺動軸28aを中心に図5の時計方向に揺動する。このとき、リンク部材28の遮光板28bが定着センサ29の光検知部の光路を遮断することにより、光検知部の受光信号レベルがLOW(OFF状態)に切り換わり、用紙の先端部の通過を検知可能となっている。
さらに、用紙の後端部が検知部27aを通過すると、定着アクチュエータ27及びリンク部材28が元の位置に戻り、遮光板28bが定着センサ29の光検知部の光路を開放する。これにより、光検知部の受光信号レベルがHIGH(ON状態)に切り換わり、用紙の後端部を検知可能となっている。従って、定着ニップ部Nに用紙が残っているときは、定着センサ29はOFF状態となっているので、定着センサ29が所定時間以上OFF状態となっているときは、用紙のジャムとして検知することがきる。
図3に戻って、定着装置13の長手方向の両端部には、加圧ローラ14bを加熱ローラ14aに圧接させて定着ニップ部Nで所定のニップ圧を発生させるニップ圧調整機構50(図7参照)を構成する偏芯カム31が配置されている。2つの偏芯カム31はカムシャフト33で連結されており、カムシャフト33の一端には駆動入力ギヤ35が固定されている。駆動入力ギヤ35はギヤ列を介して定着圧調整モータ37の駆動出力ギヤ37aに連結されている。定着圧調整モータ37としては、回転方向及び回転角度を精度良く制御可能なステッピングモータが用いられる。
図7は、定着装置のニップ圧調整機構周辺を示す部分斜視図であり、図8は、ニップ圧調整機構を含む定着装置の側面断面図である。以下、図3における定着装置13の手前側のニップ圧調整機構について説明するが、図3における定着装置13の奥側のニップ圧調整機構についても基本的に同様の構成であるため説明を省略する。
ニップ圧調整機構50は、加圧ローラ14bを加熱ローラ14aに圧接させて定着ニップ部Nを形成するとともに、定着ニップ部Nにおけるニップ圧の切り替えを行うものであり、図7及び図8に示すように、偏芯カム31と、第1圧解除部材40と、第2圧解除部材41と、アーム部材43と、第1弾性部材45と、第2弾性部材47とを有する。第1圧解除部材40、第2圧解除部材41、及びアーム部材43は鉄等の金属板を所定の形状に折り曲げて形成された板金部材である。
第1圧解除部材40は、支点40aを中心として定着装置13のフレーム側板13aに回動可能に支持されている。第1圧解除部材40の上面には偏芯カム31が接触しており、偏芯カム31の接触する面と反対側には第2圧解除部材41の上端が接触している。第2圧解除部材41は、定着装置13のフレーム側板13aに上下方向に摺動可能に支持された側面視逆L字状の部材であり、垂直面にはスリット41aが形成されている。
アーム部材43は、支軸43aを中心として定着装置13のフレーム側板13aに揺動可能に支持されている。アーム部材43の略中央部には、加圧ローラ14bの回転軸を回転可能に支持するU字状の軸受部43bが形成されている。
アーム部材43の揺動端(図8の左端)には折曲部43cが形成されており、折曲部43cは第2圧解除部材41のスリット41aに遊嵌されている。また、軸受部43bと折曲部43cとの間には、下方へ舌片状に突出するバネ受け部43dが形成されている。
第1弾性部材45及び第2弾性部材47は圧縮コイルバネである。第1弾性部材45の上端のバネ座面は第2圧解除部材41の下端部に当接し、第1弾性部材45の下端のバネ座面はフレーム側板13aのバネ台座48に当接している。また、第2弾性部材47の上端のバネ座面にはアーム部材43のバネ受け部43dが挿入され、第2弾性部材47の下端のバネ座面はフレーム側板13aのバネ台座48に当接している。
図7及び図8は、ニップ圧が普通紙設定(通常圧)であるときのニップ圧調整機構50を示している。普通紙設定の場合、偏芯カム31の小径部31aが第1圧解除部材40に接触しており、第2圧解除部材41が第1弾性部材45の付勢力P1により第1圧解除部材40と接触する位置まで上方に押し上げられている。これにより、第2圧解除部材41のスリット41aに遊嵌されたアーム部材43の折曲部43cも上方向に持ち上げられる。
その結果、アーム部材43は支軸43aを中心として図8の時計方向に揺動するため、軸受部43bに支持された加圧ローラ14bは加熱ローラ14a(図8の白矢印方向)に押圧される。このとき、第2弾性部材47は自由長であり、第2弾性部材47の付勢力P2はアーム部材43に作用していない。従って、定着ニップ部Nには第1弾性部材45の付勢力P1のみによるニップ圧が作用する。
図9は、図7及び図8と反対側(図3における紙面奥側)の定着装置13の端部を外側から見た部分斜視図である。図9に示すように、フレーム側板13aの外側には偏芯カム31の位相を検知するカム位置検知センサ51が配置されている。カム位置検知センサ51は、定着センサ29(図5参照)と同様の光検知部が設けられたPIセンサである。また、フレーム側板13aから突出するカムシャフト33の端部には遮光部材53が固定されている。ニップ圧が普通紙設定である場合、遮光部材53はカムシャフト33の上側に位置しており、カム位置検知センサ51の光検知部の光路は開放されている。
ニップ圧を封筒設定(封筒圧)に切り替える場合は、定着圧調整モータ37(図3参照)を駆動させて図7及び図8の状態から偏芯カム31を180°回転させることにより、図10及び図11に示すように、偏芯カム31の大径部31bが第1圧解除部材40に接触するため、第1圧解除部材40は支点40aを中心として反時計方向に回動する。そして、第1圧解除部材40bの回動により第2圧解除部材41が第1弾性部材45を圧縮しながら下向きに押し下げられる。
第2圧解除部材41が所定量押し下げられると、アーム部材43の折曲部43cがスリット41aの下端から離れるため、第1弾性部材45の付勢力P1はアーム部材43に作用しなくなる。一方、アーム部材43にはバネ受け部43dに当接する第2弾性部材47の付勢力P2が作用するため、定着ニップ部Nには第2弾性部材47の付勢力P2のみによるニップ圧が作用する。
ここで、第2弾性部材47の付勢力P2は、第1弾性部材45の付勢力P1に比べて弱く設定されている。また、付勢力P1、P2が同じであっても、第2弾性部材47の付勢力P2は加圧ローラ14bの回転軸に近い位置で作用するので、図7及び図8の状態に比べてアーム部材43を押し上げる力は小さくなる。従って、アーム部材43は普通紙設定の状態から図11の反時計方向に所定量だけ揺動し、ニップ圧が普通紙設定よりも弱い封筒設定となる。
また、ニップ圧を封筒設定に切り替えた場合、図12に示すように、遮光部材53も偏芯カム31及びカムシャフト33と共に180°回転するため、遮光部材53はカムシャフト33の下側に配置され、カム位置検知センサ51の光検知部の光路を遮断している。即ち、カム位置検知センサ51の受光信号レベルによって偏芯カム31の位相を検知することができる。
以上のように、封筒状の記録材を用いて画像形成を行う場合はニップ圧を封筒設定に切り替えることにより、封筒端部の密封された用紙間に空気が溜まることがなく、シワの発生を防ぐことができる。特に、本実施形態のように第1弾性部材45、第2弾性部材47の2本のバネ部材を用いてニップ圧を設定することで、加圧ローラ14bには常に第1弾性部材45若しくは第2弾性部材47の付勢力が作用する。そのため、加圧ローラ14bが加熱ローラ14aに対し適度な弾性を持って圧接され、定着ニップ部Nを用紙が通過する際のニップ圧の変動を抑制することができる。
通常圧から封筒圧へ、若しくは封筒圧から通常圧への切り替えは、パーソナルコンピュータのプリンタドライバから用紙の設定が行われ、印字開始ボタンから印字開始命令が入力された時点で開始される。
次に、本発明の画像形成装置の制御経路について説明する。図13は、本発明の画像形成装置に用いられる制御経路の一例を示すブロック図である。なお、カラープリンタ100を使用する上で装置各部の様々な制御がなされるため、カラープリンタ100全体の制御経路は複雑なものとなる。そこで、ここでは制御経路のうち、本発明の実施に必要となる部分を重点的に説明する。また、上述したレジストセンサ26、定着センサ29、定着圧調整モータ37、カム位置検知センサ51については説明を省略する。
操作部60には、液晶表示部61、LED62が設けられており、液晶表示部61及びLED62は、カラープリンタ100の状態を示したり、画像形成状況や印刷部数を表示したりするようになっている。印字に用いる用紙のサイズや種類等の、カラープリンタ100の各種設定はパーソナルコンピュータのプリンタドライバから行われる。
その他、操作部60には、画像形成を中止する際等に使用するストップ/クリアボタン、カラープリンタ100の各種設定をデフォルト状態にする際に使用するリセットボタン等が設けられている。
画像入力部70は、カラープリンタ100にパーソナルコンピュータ等から送信される画像データを受信する受信部である。画像入力部70より入力された画像信号はデジタル信号に変換された後、一時記憶部94に送出される。
インターロックスイッチ80は、側面カバー23(図4参照)の開閉と連動して駆動系の電源をON/OFFするものである。即ち、側面カバー23を開放した状態ではインターロックスイッチ80がOFFとなり、それに連動して駆動系の電源を遮断することにより、ジャム処理時の安全性を確保する。
制御部90は、中央演算処理装置としてのCPU(Central Processing Unit)91、読み出し専用の記憶部であるROM(Read Only Memory)92、読み書き自在の記憶部であるRAM(Random Access Memory)93、一時的に画像データ等を記憶する一時記憶部94、カウンタ95、カラープリンタ100内の各装置に制御信号を送信したり操作部50からの入力信号を受信したりする複数(ここでは2つ)のI/F(インターフェイス)96、制御に必要な数値の演算処理を行う演算部97を少なくとも備えている。また、制御部90は、装置本体内部の任意の場所に配置可能である。
また、制御部90は、カラープリンタ100における各部分、装置に対し、CPU91からI/F96を通じて制御信号を送信する。また、各部分、装置からその状態を示す信号や入力信号がI/F96を通じてCPU91に送信される。制御部90が制御する各部分、装置としては、定着部13、レジストセンサ26、定着センサ29、定着圧調整モータ37、カム位置検知センサ51、操作部60、画像入力部70、インターロックスイッチ80の他、例えば、画像形成部Pa〜Pd、露光ユニット5等が挙げられる。
ROM92には、カラープリンタ100の制御用プログラムや、制御上の必要な数値等、カラープリンタ100の使用中に変更されることがないようなデータ等が収められている。RAM93には、カラープリンタ100の制御途中で発生した必要なデータや、カラープリンタ100の制御に一時的に必要となるデータ等が記憶される。カウンタ95は、印字枚数を積算してカウントする。
図14は、本発明の画像形成装置におけるジャム検知から用紙除去までの制御手順を示すフローチャートである。必要に応じて図1〜図13を参照しながら、図14のステップに従い本発明の画像形成装置におけるジャム処理操作、及びジャム処理時における定着ニップ部Nのニップ圧の切り替え制御について詳述する。なお、図14では普通紙を用いて画像形成を行う場合の手順について示しており、定着ローラ対14のニップ圧は普通紙設定(通常圧)であるものとする。
レジストセンサ26、定着センサ29を含むカラープリンタ100内の用紙検知センサにより画像形成処理中にジャムが検知されると(ステップS1)、定着センサ29が用紙検知状態であるか否かが判断される(ステップS2)。定着センサ29が用紙検知状態である場合は定着ニップ部Nに用紙が挟まれた状態で停止しているため、制御部90から定着圧調整モータ37に制御信号を送信し、偏芯カム31を180°回転させて定着ニップ部Nのニップ圧を封筒圧に切り替える(ステップS3)。偏芯カム31の位相は、図12のように遮光部材53がカム位置検知センサ51の光路を遮断することにより検知信号がOFFとなることで検知される。
そして、図4に示したように側面カバー23を開放し(ステップS4)、定着ニップ部Nに挟まれている用紙を下方向に引き出して除去する(ステップS5)。なお、用紙が定着装置13から下方に垂れ下がっていない場合は、さらに定着ジャム処理カバー25を開放して用紙を上方向に引き出して除去する。このとき、定着ニップ部Nのニップ圧が封筒圧に切り替えられているため、定着ニップ部Nに挟まれた用紙を容易に引き出すことができる。
また、側面カバー23の開放によりインターロックスイッチ80が作動して駆動系の電源が遮断されるが、インターロックスイッチ80が作動しても定着圧調整モータ37だけは継続して駆動するようになっている。このようにしておけば、通常圧から封筒圧への切り替え途中で側面カバー23を開放した場合でも封筒圧への切り替えが確実に行われ、円滑なジャム処理が可能となる。
用紙を除去した後、制御部90は定着圧調整モータ37に制御信号を送信し、偏芯カム31を180°回転させて定着ニップ部Nのニップ圧を通常圧に切り替える(ステップS6)。偏芯カム31の位相は、図9のように遮光部材53がカム位置検知センサ51の光路を開放することによりカム位置検知センサ51の検知信号がONとなることで検知される。
一方、ステップS2において定着センサ29が用紙検知状態でない場合は、次にレジストセンサ26が用紙検知状態であるか否かが判断される(ステップS7)。レジストセンサ26が用紙検知状態であるときは、用紙の先端がレジストローラ対12bから定着ローラ対14までの間にある場合と、用紙の先端が定着ローラ対14から定着アクチュエータ27までの間にある場合とが考えられる。用紙の先端が定着ローラ対14から定着アクチュエータ27までの間にある場合は、定着ニップ部Nに用紙が挟まれた状態で停止している。
そこで、ステップS7においてレジストセンサ26が用紙検知状態であるときにも定着ニップ部Nのニップ圧を封筒圧に切り替えることで、定着ニップ部Nに用紙が挟まれた状態で停止していると想定される全ての場合に定着ニップ部Nのニップ圧を封筒圧に切り替えることができる。そして、定着センサ29が用紙検知状態である場合と同様にステップS3〜S6の手順でジャム処理を行う。
一方、ステップS7においてレジストセンサ26が用紙検知状態でないときは、用紙は定着ローラ対14に挟まれていない。そこで、定着ニップ部Nのニップ圧の切り替えは行わずに、用紙のジャム位置に応じて側面カバー23、搬送ユニット24を開放したり、或いは用紙カセット16を引き出したりして、用紙を除去して(ステップS8)ジャム処理を終了する。
上記手順で制御を行うことにより、ジャム発生時に用紙が定着ニップ部Nに挟まれた状態で停止している場合は定着ニップ部Nのニップ圧が通常圧から封筒圧に切り替えられるため、定着ニップ部Nに挟まれた用紙を容易に除去することができる。
また、ジャム処理時の定着ニップ部Nのニップ圧を封筒圧とすることで、ニップ圧を通常圧と封筒圧の2段階に制御すれば良いため、ニップ圧の切り替えに用いる偏芯カム31の位相を2つにすることができる。これにより、ニップ圧の切り替え制御が簡単になるとともに、偏芯カム31の位相を急激に変化させる必要がなく、偏芯カム31を回転させるための定着圧調整モータ37の出力を低減することができる。また、1つのカム位置検知センサ51で偏芯カム31の2つの位相を検知できるため、カム位置検知センサ51を複数設ける構成に比べて低コストとなる。
また、定着センサ29が用紙検知状態、またはレジストセンサ26が用紙検知状態のときのみ定着ニップ部Nのニップ圧を封筒圧に切り替えるようにしたので、用紙が定着ニップ部に挟まれている可能性がある場合にのみニップ圧の切り替えが行われる。従って、ニップ圧の切り替え動作を必要最低限に抑えて印字待ち時間を短縮することができ、偏芯カム31の耐久性も向上する。
さらに、インターロックスイッチ80が作動しても定着圧調整モータ37の駆動を継続させることで、ニップ圧の切り替え途中で側面カバー23を開放したときでもジャム処理を確実に行うことができる。
なお、封筒状の記録材を用いて画像形成を行う場合は、定着ローラ対14のニップ圧は予め封筒設定(封筒圧)となっている。この封筒設定は、定着ニップ部Nを通過した封筒状の記録材にシワが発生するのを極力防止するために、定着可能な最小限の圧力に設定されている。そのため、通常圧に比べてかなり弱く、封筒状の記録材が定着ニップ部Nに挟まれた状態で停止しても容易に除去することができる。従って、封筒状の記録材を用いる場合は上述したニップ圧の切り替え制御は不要となる。
その他本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば上記実施形態では、ローラ方式の定着装置に適用した例を示したが、本発明はこれに限らず、加熱部材として無端状の定着ベルトを使用するベルト方式や、加熱部材は固定支持された加熱体と、この加熱体に密着して摺動する耐熱性フィルムとを有し、加熱体と加圧ローラとを耐熱性フィルムを介して圧接させる方式の定着装置に適用してもよい。
また、上記実施形態では、定着ニップ部Nのニップ圧の切り替え機構を、偏芯カム31、第1圧解除部材40、第2圧解除部材41、第1弾性部材45、第2弾性部材47で構成し、第1弾性部材45と第2弾性部材47のいずれかの付勢力を解除することによって定着ニップ部Nのニップ圧を切り替える構成を示したが、本発明はこれに限らず、第1圧解除部材40と第2圧解除部材41とを一体成型した圧解除部材を用いても良い。また、ニップ圧調整機構に一つの弾性部材(コイルバネ)を設けて、この弾性部材の伸縮を変える構成として、ニップ圧を切り替えてもよい。この場合も上記実施形態と同様の効果を奏する。