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JP5645048B2 - 放熱部材、半導体装置、及び複合材料の製造方法 - Google Patents

放熱部材、半導体装置、及び複合材料の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、マグネシウム(いわゆる純マグネシウム)又はマグネシウム合金とダイヤモンドとが複合された複合材料、この複合材料から構成される放熱部材、この放熱部材を具える半導体装置、及び上記複合材料の製造方法に関するものである。特に、熱特性に優れ、半導体素子の放熱部材の構成材料に適した複合材料に関するものである。
昨今、各種の電子機器の高機能化、高密度実装化が望まれている。そのため、これら電子機器に組み込まれる半導体素子が作動上限温度に達しないように、半導体素子を十分に放熱する必要がある。従来、半導体素子の放熱には、自然対流や強制送風の他、放熱面積を拡大するための放熱部材(ヒートスプレッダ)が利用されている。
上記放熱部材の構成材料として、銅やCu-W,Cu-Mnといった金属材料のみからなるものの他、Al-SiCといった、金属と非金属無機材料(代表的にはセラミックス)との複合材料が利用されている。近年、放熱部材の軽量化を主目的として、アルミニウム(Al)よりも軽量であるマグネシウム(Mg)やその合金を金属マトリクスとする複合材料が検討されている(特許文献1参照)。
特開2006-299304号公報
半導体素子の放熱部材には、熱伝導性に優れると共に、半導体素子やその周辺部品の熱膨張係数(代表的には、4ppm/K(4×10-6/K)〜8ppm/K(8×10-6/K)程度)との整合性に優れることが望まれる。理想的には、放熱部材と半導体素子やその周辺機器とは、熱膨張係数が等しいことが望まれる。
上記銅や銅合金は、熱膨張係数が大きいため、銅などからなる放熱部材に半導体素子を載置すると、ヒートサイクル下で、両者の界面に熱応力が発生し、半導体素子に歪みが生じたり、最悪の場合、半導体素子と放熱部材とが剥離したりする恐れがある。また、上記銅や銅合金は、重く、車載用機器や携帯用機器といった軽量であることが望まれる場合、好ましくない。
一方、Al-SiCや特許文献1に記載されるマグネシウム基複合材料は、軽量であるものの、銅よりも熱伝導率が低い。今後ますますの高性能化や高密度実装化を考慮すると、熱伝導率の更なる向上が望まれる。
熱伝導率を向上するために、物質中で最も熱伝導率が大きいダイヤモンドを利用することが考えられる。しかし、ダイヤモンドは、熱膨張係数が非常に小さく、かつヤング率が大きいため、ダイヤモンドに半導体素子を直接載置すると、両者の界面で非常に大きな熱応力が発生する。従って、ダイヤモンドをそのまま放熱部材の構成材料に用いることは不適切である。
一方、ダイヤモンドと銅との成形体を銅に液相が生じる温度以上の温度で焼結した焼結体があるが、この焼結体は銅を含むことで上述のように重い。また、銅は、一般にダイヤモンドとの濡れ性が悪い。従って、ダイヤモンドと溶融した銅とを複合しても、気孔が形成され易く、気孔の存在により両者の界面の熱抵抗が大きな複合材料しか得られず、期待されるほど熱伝導率が大きな複合材料とならない。
そこで、本発明の目的の一つは、半導体素子の放熱部材に適した熱特性を有する複合材料を提供することにある。また、本発明の他の目的は、上記複合材料の製造に適した複合材料の製造方法を提供することにある。更に、本発明の他の目的は、上記複合材料からなる放熱部材、及びこの放熱部材を具える半導体装置を提供することにある。
本発明者らは、軽量でありながら、熱伝導率が高く、かつ熱膨張係数が半導体素子及びその周辺機器に近い値を取り得る材料として、マグネシウム又はマグネシウム合金(以下、Mg又はMg合金と呼ぶ)と、ダイヤモンドとを複合することが好ましい、と考え、両者の複合方法を検討した。
例えば、複合方法として、ダイヤモンド粉末とMg又はMg合金の粉末との混合粉末の成形体を作製し、この成形体を高温に保持してMg又はMg合金を溶融した後、凝固させることが考えられる。しかし、Mg又はMg合金の粉末は、取り扱い難い材料である上に、溶融状態のMg又はMg合金(以下、溶融Mgと呼ぶ)は、そのままではダイヤモンドとの濡れ性が悪い。従って、気孔が形成され易く、上述のように気孔の存在により熱特性の劣化を招く。
そこで、本発明者らは、特許文献1と同様に、ダイヤモンドの成形体に溶融Mgを溶浸させる溶浸法を利用することを検討した。しかし、溶浸法の場合も、上述のように溶融Mgとダイヤモンドとの濡れ性を高める必要がある。
ここで、溶融Mgは、酸素と非常に反応し易い(結合し易い)性質を有する。従って、ダイヤモンドの表面に酸素を含有する層、例えば、酸化物層を形成しておくことで、溶融Mgとダイヤモンドとの濡れ性を高められる。しかし、ダイヤモンドの表面に酸化物層を直接設けると、高コストになると考えられ、工業生産性を考慮すると好ましくない。
一方、ダイヤモンドは、炭素の供給源として利用することができる。そこで、ダイヤモンドと溶融Mgとを複合するにあたり、ダイヤモンドの表面に直接酸化物層を形成するのではなく、ダイヤモンドの表面に一旦炭化物を形成し、この炭化物を還元して酸化物層を形成することを提案する。特に、上記炭化物は、複合材料中に残存しても熱特性を大きく劣化させ難いようにSiCとする。
本発明の複合材料の製造方法は、ダイヤモンドと、Mg又はMg合金との複合材料を製造する方法に係るものであり、以下の準備工程、酸化工程、及び複合工程を具える。
準備工程:ダイヤモンドからなる粉末成形体の表面がSiCに転化されているSiC被覆成形体を形成する工程。
酸化工程:上記SiC被覆成形体を酸化して、上記SiCの少なくとも表面側部分を珪素酸化物に転化して、珪素酸化物を具える酸化成形体を形成する工程。
複合工程:上記酸化成形体に溶融したMg又はMg合金を溶浸させ、上記珪素酸化物と上記溶融したMg又はMg合金との反応によりMg2Siを生成しながら、当該Mg又はMg合金と上記ダイヤモンドとを複合する工程。
本発明製造方法において、SiC被覆成形体を形成するにあたり、SiCの炭素源をダイヤモンド自体とする。そのため、炭素源を別途用意する必要がない上に、ダイヤモンド粒子とSiCとは密着性に優れ、両者の界面に気孔が実質的に存在しない。かつ、このように密着したSiCの少なくとも一部を酸化物に転化することで、ダイヤモンド粒子の少なくとも最表面部分に酸化物を具えるものを容易に形成できる上に、この酸化物層とSiCとも密着性に優れる。そして、上記酸化物層を具える酸化成形体を用意することで、本発明製造方法では、当該酸化成形体と溶融Mgとの濡れ性に優れる。詳しくは、上記溶融Mgが上記酸化成形体の表面に存在する珪素酸化物の酸素を取り込む能力が高いことから、上記ダイヤモンドと溶融Mgとの複合時、溶融Mgは、珪素酸化物を還元しながら、ダイヤモンドを濡らしていく。このような濡れが原動力となって、溶融Mgは、自発的に上記酸化物成形体に溶浸される。従って、本発明製造方法によれば、複合時に気孔が生じ難く、ダイヤモンドとMg又はMg合金とを十分に複合することができ、気孔が少なく緻密であることで熱特性に優れる複合材料が得られる。
また、上述のような還元反応により、フリーのSiが生成される。ここで、Siは、溶融Mg中にほとんど固溶しない。そのため、生成されたフリーのSiは、Mgと結合し、Mg2Siが生成される。従って、本発明製造方法により得られた複合材料中には、Mg2Siが存在する。Mg2Siは、熱伝導率が高くないが、微細な粒子として分散して存在することで、複合材料の熱伝導性を大きく劣化させ難い。
上記本発明製造方法により、本発明複合材料が得られる。本発明の複合材料は、ダイヤモンドとMg又はMg合金とが複合された複合材料であり、Mg又はMg合金からなる金属マトリクス中にダイヤモンド粒子が分散されている。上記金属マトリクス中にはMg2Siを含有する。また、上記ダイヤモンド粒子のうち、少なくとも一部の粒子は、その表面にSiC層を具える。
本発明複合材料は、金属マトリクスをMg又はMg合金とすることから非常に軽量である上に、ダイヤモンドを含有することで、熱伝導性に優れる。また、ダイヤモンド粒子間に主としてMg又はMg合金が存在することで連続した放熱経路が構築される。このことからも本発明複合材料は熱伝導性に優れる。
かつ、本発明複合材料は、金属とダイヤモンドとが複合されていることで、ダイヤモンド単体の場合と比較して、熱膨張係数が小さくなり過ぎない。具体的には、本発明複合材料は、例えば、熱膨張係数が1.5ppm/K〜4ppm/K程度を有することができる。
本発明複合材料は、上述のように熱伝導率が高く、半導体素子やその周辺部品との熱膨張係数の整合性に優れることから、放熱部材の構成材料に好適に利用することができる。また、本発明複合材料は、金属とダイヤモンドとが複合されていることで、ダイヤモンド単体の場合と比較して、ヤング率が高くなり過ぎず、切削加工などの後加工時にチッピングなどが生じ難い。
以下、本発明をより詳細に説明する。
[複合材料]
<金属マトリクス>
金属マトリクスは、99.8質量%以上のMg及び不純物からなるいわゆる純マグネシウム、又は添加元素と残部がMg及び不純物からなるマグネシウム合金とする。金属マトリクスが純マグネシウムである場合、合金である場合と比較して、複合材料の熱伝導性を高められる、凝固時に晶出物が不均一に析出するなどの不具合が生じ難く均一的な組織を有する複合材料を得易い、といった利点を有する。金属マトリクスがマグネシウム合金である場合、液相線温度が低下するため、溶融時の温度を低下できる、複合材料の耐食性や機械的特性(強度など)を高められる、といった利点を有する。添加元素は、Li,Ag,Ni,Ca,Al,Zn,Mn,Si,Cu,及びZrの少なくとも1種が挙げられる。これらの元素は、含有量が多くなると熱伝導率の低下を招くため、合計で20質量%以下(金属マトリクスを100質量%とする。以下、添加元素の含有量について同様)が好ましい。特に、Alは3質量%以下、Znは5質量%以下、その他の元素はそれぞれ10質量%以下が好ましい。Liを添加すると、複合材料の軽量化、及び加工性の向上の効果がある。公知のマグネシウム合金、例えば、AZ系(AZ31,AZ61,AZ91など),AS系,AM系,ZK系,ZC系,LA系などでもよい。所望の組成となるように金属原料を用意する。
<ダイヤモンド>
《成分》
上記金属マトリクスに複合されているダイヤモンドは、原料に用いたものがほぼそのままの成分で存在し得る。原料のダイヤモンドは、人工物でも天然物でもよい。特に、窒素といった不純物が少なく、高純度であるほどダイヤモンドの熱伝導率が高い(例えば、室温における熱伝導率が700W/m・K程度)ことから、熱伝導性に優れる複合材料とすることができる。窒素の含有量は、質量割合で200ppm以下、特に150ppm以下が挙げられる。但し、高純度の天然ダイヤモンドは一般に宝飾に用いられて高価であるため、工業用ダイヤモンドの中でも高純度である、窒素の含有量が10ppm以上、特に50ppm以上のダイヤモンドが好適に利用することができる。
《SiC層》
複合材料中に存在するダイヤモンドの粒子のうち、少なくとも一部の粒子は、その表面にSiC層を具える。上述のように本発明複合材料を製造するにあたり、ダイヤモンドの粒子の表面をSiCに転化した後、SiO2といった珪素酸化物に転化する。ここで、SiCは、耐酸化性が高いため、SiCの全体が上記酸化物に転化することはなく、SiCの少なくとも表面側部分が上記酸化物に転化し、残部は転化せずにそのままSiCとして存在し得る。このような酸化成形体を用いることで、製造された複合材料中に存在するダイヤモンド粒子の少なくとも一部の粒子は、その表面にSiC層を有し得る。SiCは、ダイヤモンドに比較すれば熱伝導性に劣るものの、熱膨張係数がダイヤモンドより大きくかつMg又はMg合金よりも小さいことで、複合材料の熱膨張係数が小さくなり過ぎることを抑制する効果がある。
《大きさ》
本発明複合材料中のダイヤモンド粒子は、代表的には、上記金属マトリクス中にばらばらに分散して存在する。ダイヤモンド粒子の平均粒径は10μm以上100μm以下が好ましい。10μm未満では、ダイヤモンド粒子とMg又はMg合金との界面の面積が大きくなることから熱抵抗が増大し、複合材料の熱伝導率が低下する。ダイヤモンド粒子が大きいほど熱伝導性に優れる傾向にあるが、100μm超では、複合材料中のダイヤモンド粒子が大き過ぎて、複合材料の製造後、切断や研磨などの加工の際にチッピングなどが生じ易く、これらの加工が行い難い。より好ましい平均粒径は、20μm以上70μm以下である。原料に用いたダイヤモンド粒子は、複合材料の製造時に実質的に粒成長しない。また、製造時に形成されるSiC層や酸化物層も非常に薄い。従って、複合材料中のダイヤモンド粒子の大きさは、原料に用いたダイヤモンド粒子の大きさに実質的に一致する。
《含有量》
上記複合材料中のダイヤモンドが少な過ぎると、複合材料の熱伝導率が低くなる上に、粉末成形体を形成し難かったり、粉末成形体の強度が弱く、崩壊する恐れがある。一方、ダイヤモンドが多いほど、熱伝導性に優れる複合材料となるものの熱膨張係数が小さくなり過ぎる上に、溶融Mgが溶浸するための開気孔を十分に有する粉末成形体を形成し難くなる。従って、複合材料中のダイヤモンドの含有量は、当該複合材料の全体に対して35体積%以上85体積%以下が好ましく、特に、50体積%以上80体積%以下がより好ましい。
《Mg2Si》
そして、本発明複合材料は、金属マトリクス中に微細なMg2Siが分散していることを特徴の一つとする。上述のように溶融Mgと、粉末成形体の表面に存在する珪素酸化物とが反応しながら濡れていくことで、Mg2Siが生成される。Mg2Siは、上述のように微細な粒子であり、かつ複合材料中に分散して存在することで、Mg2Siの存在による複合材料の熱伝導性の低下は実質的に問題にならない程度であると考えられる。
なお、製造段階で形成したSiO2といった珪素酸化物は、溶浸時に溶融Mgと反応してMg2Siを形成し、複合材料中には実質的に残存しない。また、複合材料中におけるMg2SiのSi、及びSiCのSiの合計含有量は、原料に用いたSiの量に実質的に等しい。複合材料中のSiが多いと、SiCやMg2Siが多く存在することになり、熱伝導率の低下を招くことから、複合材料中のSiの含有量は、10体積%以下が好ましい。
<熱特性>
《熱伝導率》
上記範囲でダイヤモンドを含有する複合材料は、熱伝導率κが高く、例えば、室温における熱伝導率κが250W/m・K以上を満たす。ダイヤモンドの含有量や粒子の大きさ、金属マトリクスの組成などにもよるが、室温における熱伝導率κが300W/m・K以上、特に400W/m・K以上である複合材料とすることができる。
《熱膨張係数》
上記範囲でダイヤモンドを含有する複合材料は、熱膨張係数αが比較的小さく、例えば、1.5ppm/K〜4ppm/K程度を満たし、熱膨張係数αが4ppm/K程度の半導体素子やその周辺機器との熱膨張係数の整合性に優れる。
<用途>
上述のように本発明複合材料は、半導体素子及びその周辺機器との熱膨張係数の整合性に優れる上に、熱伝導性が高いため、半導体素子の放熱部材に好適に利用することができる。この放熱部材と、この放熱部材に搭載される半導体素子とを具える半導体装置は、各種の電子機器の部品に好適に利用することができる。
[製造方法]
本発明複合材料は、上述のようにダイヤモンドの成形体と溶融Mgとを複合する(溶浸→凝固)ことで製造することができる。特に、上記成形体として、ダイヤモンド粒子の表面にSiC層を形成し、更にこのSiC層を珪素酸化物に転化したものを利用する。
《原料》
上記粉末成形体の主原料は、ダイヤモンド粉末とする。この粉末を構成するダイヤモンド粒子の平均粒径は、上述のように10μm〜100μmが好ましい。Siを含有した粉末成形体を作製する場合、上記ダイヤモンド粉末に加えて、Si粉末を利用する。
《準備工程》
[粉末成形体の形成]
上記粉末成形体は、例えば、原料粉末に適宜なバインダを加えてプレス成形することで形成することができる。プレス成形は、乾式プレスでも、原料粉末に加えて水などの液体を利用する湿式プレスでもよい。形成された粉末成形体は、多孔体であり、SiCへの転化時や酸化物への転化時、溶融Mgとの複合時の熱によりバインダが消失することで、開気孔を十分に具える多孔体となる。これらの開気孔に溶融Mgが溶浸することで、複合材料が得られる。
上記粉末成形体は、実質的にダイヤモンド粉末からなるもの、又は実質的にダイヤモンド粉末及びSi粉末からなるものが挙げられる。Si粉末は、SiC層の形成に必要なだけ添加するとよく、成形体を形成する原料粉末全体の体積に対して5%〜10%程度が適切である。なお、これらの粉末成形体を焼結して、焼結体としてもよい。焼結体とすることで、取り扱い易くなり、鋳型などに配置し易い。
[SiCへの転化]
上記粉末成形体を構成するダイヤモンドを炭素源とし、液相又は気相のSiと反応させて、粉末成形体の表面がSiCに転化されたSiC被覆成形体を形成する。
ダイヤモンド粉末とSi粉末とを用いて粉末成形体を形成した場合、Si粉末がSi源となる。この粉末成形体を、例えば、Siの融点以上の所定の保持温度に加熱することにより、この粉末成形体を構成するダイヤモンド粒子の表面をSiCに転化することができる。Siの融点は1400℃程度であることから、上記保持温度は、少なくともSiが液相状態となる温度を選択するとよい。例えば、真空中で1450℃程度が挙げられる。但し、1000℃を超えるとダイヤモンドがグラファイト化し易くなるため、上記保持温度は、Siの融点以上であって、できるだけ低温であることが好ましい。グラファイトは、ダイヤモンドよりも熱伝導性に劣り、脆弱であるため、グラファイト化を抑制することが望まれる。
或いは、Si粉末を用いず、実質的にダイヤモンド粉末のみを用いて粉末成形体を形成した場合、Si源を別途用意する。例えば、Siを含有するガス、具体的には、SiH4,SiCl4などが利用できる。この場合、Siを含有するガス中で上記粉末成形体を所定の保持温度に加熱することにより、この粉末成形体を構成するダイヤモンド粒子の表面をSiCに転化することができる。上記保持温度は、ダイヤモンドとSiとが反応可能な温度を適宜選択するとよく、Siを含有するガスを用いる場合、上記Si粉末の場合よりも反応し易いことから低くでき、例えば、800℃程度とすることができる。上記保持温度は、Si粉末を用いる場合のようにSiの融点以上の温度としてもよいが、1000℃以下とするとグラファイト化を抑制することができて好ましい。
上記SiCへの転化において、所定の保持温度までの昇温速度を制御することが重要である。ダイヤモンドは、真空中でも、凡そ1000℃程度からグラファイトに構造相が転移していく傾向がある。従って、特に、上記保持温度を1000℃超とする場合に上記昇温速度が小さいと、ダイヤモンドがグラファイトに変化してしまう。但し、グラファイト化への構造相転移は、ある程度時間がかかるため、上記昇温速度を大きくすることでグラファイト化を抑制することができる。昇温速度を大きくするには、例えば、上記Si粉末を用いた粉末成形体の場合、放電プラズマ焼結炉やミリ波加熱炉といった急速昇温が可能な炉により加熱を行うことが挙げられる。
特に、ダイヤモンド粉末として工業用ダイヤモンドを利用し、上記保持温度を1000℃超とする場合、所定の保持温度(例えば、1450℃)までに加熱する時間を10分以下とすることが好ましい。より好ましくは、5分〜10分とする(昇温速度を145℃/分〜290℃/分とする)。なお、宝飾用ダイヤモンドのような高純度のダイヤモンドは、グラファイト化し難いため、上記所定の保持温度までに加熱する時間を10分超としてもよいが、短い方が好ましい。
上記保持温度での加熱時間は数十秒程度でよい。このような短時間であっても、ダイヤモンド粒子の表面を簡単にSiCに転化することができる。
《酸化工程》
上述のようにして得られたSiC被覆成形体を酸化して、SiCの少なくとも一部を珪素酸化物に転化する。珪素酸化物は、代表的にはSiO2が挙げられる。この酸化工程を最も簡単に実施するには、大気中で加熱することが挙げられる。加熱するときの保持温度は、800℃以上が好ましく、更に850℃以上、とりわけ875℃以上が好ましい。保持温度が高いほど珪素酸化物に転化し易く、短時間で酸化することができるものの、上述のように1000℃を超えるとグラファイト化し易い上に、酸化物層が過剰に形成されたり、不均一な厚さに形成される恐れがある。従って、グラファイト化の抑制を考慮すると、保持温度は、1000℃以下が好ましい。保持温度を1000℃超とする場合、SiCを形成する場合と同様に、所定の保持温度までに加熱する時間を10分以下とし、加熱時間も短くすることが好ましい。
上述のようにSiCは耐酸化性に優れるため、この酸化工程によりSiCの全てが珪素酸化物にならず、SiCが残存する。即ち、酸化成形体を構成する粒子は、ダイヤモンド、SiC層、珪素酸化物層が順に積層された多層構造を有する。
[その他の酸化成形体の製造方法]
その他、ダイヤモンド粉末を用意して、上述のようにSiを含有するガス中で加熱して各粒子の表面をSiCに転化した後、更に、上述のように酸素を含有するガス中で加熱して各粒子の少なくとも最表面を珪素酸化物に転化した酸化粉末を作製する。この酸化粉末を所定の形状の鋳型にタッピングして得られた粉末集合体を酸化成形体とすることができる。この方法は、ダイヤモンドの含有量が比較的少ない複合材料の形成に適している。或いは、上記酸化粉末をプレス成形して酸化成形体とすることができる。また、これらの酸化成形体を焼結して、焼結体としてもよい。酸化粉末を形成して利用するこれらの手法は、複合材料が複雑な形状である場合に好適に利用することができる。また、例えば、融点が900℃以上1500℃以下の種々の材質の部材(例えば、SUS製のパイプなど)を複合材料に埋め込む場合などに好適に利用することができる。複合材料の形状や用途などに応じて、成形体の形成方法を選択するとよい。
《複合工程》
上述のようにして得られた酸化成形体を所定の形状の鋳型に収納して、溶融Mgを溶浸させた後、溶融Mgを凝固させることで、複合材料が得られる。この複合工程は、大気圧(概ね0.1MPa(1atm))以下の雰囲気で行うと、雰囲気中のガスを取り込み難く、ガスの取り込みに伴う気孔が生じ難い。但し、Mgは蒸気圧が高いため、高真空状態とすると溶融Mgを取り扱い難くなる。従って、上記複合工程の雰囲気圧力を大気圧未満とする場合、0.1×10-5MPa以上が好ましい。また、上記複合工程は、Arといった不活性雰囲気で行うと、特にMg成分と雰囲気ガスとの反応を防止でき、反応生成物の存在に伴う熱特性の劣化を抑制できる。溶浸温度は、650℃以上が好ましく、溶浸温度が高いほど溶融Mgと珪素酸化物との濡れ性が高まるため、700℃以上、特に800℃以上、更に850℃以上が好ましい。但し、1000℃超とすると、引け巣やガスホールといった欠陥が生じたり、Mgが沸騰する恐れがあるため、溶浸温度は1000℃以下、特に900℃以下が好ましい。
本発明複合材料及びこの複合材料から構成される本発明放熱部材は、半導体素子などとの熱膨張係数の整合性に優れる上に、熱伝導性に優れる。本発明複合材料の製造方法は、上記本発明複合材料を生産性よく製造することができる。本発明半導体装置は、上記放熱部材を具えることで熱特性に優れる。
[試験例]
純マグネシウムとダイヤモンドとを複合した複合材料を作製し、熱特性を調べた。
原料として、以下を用意した。
(1) ダイヤモンド:表1に示す平均粒径を有する市販のダイヤモンド。
工業用:黄色みかかったダイヤモンド粉末。
宝石用:宝飾用の透明なダイヤモンド粉末(高純度)。
(2) Si粉末:純度99.9%、平均粒径1μmの粉末。
(3) 純マグネシウム:99.8質量%以上のMg及び不純物からなるインゴット(市販品)。
[粉末成形体の作製]
ダイヤモンド粉末及びSi粉末を表1に示す所定の体積割合となるように用意して、ボールミルで混合して混合粉末を得た。この混合粉末とバインダ(カンファ)とを用いてプレス成形し、直径:φ10mm、厚さ:2mmの円板状の粉末成形体を作製した。得られた粉末成形体の密度を体積と質量とから求め、相対密度(成形体の密度/理論密度)を求めた。その結果も表1に示す。
[SiCへの転化]
作製した粉末成形体を放電プラズマ焼結炉の分割式黒鉛金型に装填し、真空中で、表1に示す保持温度まで加熱し、この保持温度を表1に示す保持時間だけ保持した。この試験では、上記保持温度までに加熱する時間が表1に示す時間となるように昇温速度を調整して加熱した。加熱終了後、上記黒鉛金型を試料(SiC被覆成形体)から外して自然冷却させた。
[珪素酸化物への転化]
作製したSiC被覆成形体を、表1に示す保持温度に予め保持しておいた横型電気炉(大気炉)に装入して、表1に示す保持時間だけ保持した後、当該電気炉から取り出した。得られた試料(酸化成形体)の断面において表面組成をEDX装置により調べたところ、ダイヤモンドの表面にSiC層、SiO2層が順に形成された粒子が存在することが確認できた。また、得られた酸化成形体の相対密度を上記粉末成形体と同様にして求めた。その結果も表1に示す。
[複合]
用意したインゴットをSF6ガス雰囲気の鉄るつぼに入れて電気炉で溶解して溶湯を作製し、この溶湯を750℃に保持した。一方、作製した酸化成形体をカーボン製の鋳型に配置し、上記溶湯を接触させて酸化成形体に溶浸させ(溶浸温度:750℃、Ar雰囲気、雰囲気圧力:大気圧)、1〜2時間程度保持した後、純マグネシウムを凝固させることで複合材料を形成した。なお、溶浸する際の保持時間は、複合材料の大きさに応じて適宜変更することができる。また、鋳型において酸化成形体が接触する箇所に市販の離型剤を塗布しておくと、離型性に優れる。その他、鋳型として、インゴットの配置箇所と、複合材料の形成箇所とを具えるものを用意し、作製した酸化成形体を上記形成箇所に配置し、鋳型を加熱して上記配置箇所に載置したインゴットを溶融し、この溶融金属を上記酸化成形体に溶浸させてもよい。
[複合材料の評価]
得られた複合材料について、熱伝導率、熱膨張係数、及び生成相の同定を行った。その結果を表1に示す。また、得られた各複合材料の相対密度を上記粉末成形体と同様にして求めた。その結果も表1に示す。
熱伝導率は、レーザーフラッシュ式熱伝導率測定装置により、室温における熱伝導率(W/m・K)を測定した。
熱膨張係数は、差動トランス式熱膨張係数測定装置により、室温から500℃までの平均熱膨張係数(ppm/K)を測定した。
生成相の同定は、各試料を電子顕微鏡により観察し、金属マトリクスとダイヤモンド粒子との界面近傍を観察した。そして、X線回折により、当該界面近傍に存在する生成相を同定した。観察倍率は、適宜選択することができる。
更に、Mg2Si相が生成された各試料について、その断面組成をEDX装置により調べたところ、Mg及びダイヤモンド、残部:Mg2Si及び不可避不純物であり、ダイヤモンド粒子の表面にSiC層を有する粒子が確認できた。また、各試料の断面を顕微鏡観察して、ダイヤモンド粒子の平均粒径を調べたところ、原料に用いたダイヤモンド粒子の大きさに概ね一致していた。
Figure 0005645048
表1に示すようにダイヤモンドと純マグネシウムとを複合することで、熱伝導率が高い上に、熱膨張係数が小さい複合材料が得られること分かる。特に、ダイヤモンド粉末を用いた粉末成形体の表面をSiCに転化した後、更に、珪素酸化物に転化することで、上記複合材料が得られることが分かる。また、SiCの転化時や珪素酸化物への転化時に昇温速度を大きく(保持温度までの加熱時間を短く)したり、平均粒径が大きなダイヤモンド粉末を用いたり、高純度なダイヤモンドを用いたりすることで、熱伝導率が高い複合材料が得られることが分かる。上記昇温速度が小さいと、熱伝導率が小さくなった。この理由は、ダイヤモンドの一部がグラファイト化したためであると考えられる。また、宝飾用のダイヤモンドを用いると、700W/m・K程度といった非常に高い熱伝導率を有する複合材料が得られる。このように熱伝導率が高く、熱膨張係数が4ppm/K程度の半導体素子やその周辺部品との整合性に優れる複合材料は、当該半導体素子の放熱部材の構成材料に好適に利用できると期待される。
これに対して、SiCに転化した後、更に珪素酸化物に転化しない場合、溶融Mgが十分に溶浸せず、途中で溶浸が進まなくなった。また、ダイヤモンドの含有量が少ないと、粉末成形体が崩壊した。なお、複合材料中のダイヤモンドの含有量(体積%)は、粉末成形体の相対密度×ダイヤモンドの体積割合に概ね一致する。
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、複合材料中のダイヤモンドの含有量、金属成分の組成(例えば、マグネシウム合金)、SiCへの転化時の条件(温度や昇温速度など)、珪素酸化物への転化時の条件(温度や昇温速度など)、複合時の条件(温度、雰囲気、圧力など)を適宜変更することができる。
本発明複合材料は、パーソナルコンピュータやモバイル電子機器などに具備されるCPU、GPU(Graphics Processing Unit)、チップセット、メモリーチップに利用される半導体素子のヒートスプレッダ(本発明放熱部材)に好適に利用することができる。本発明複合材料の製造方法は、上記複合材料の製造に好適に利用することができる。本発明半導体装置は、上記パーソナルコンピュータやモバイル電子機器などの各種の電子機器の構成部品に好適に利用することができる。

Claims (11)

  1. マグネシウム又はマグネシウム合金からなる金属マトリクス中にダイヤモンド粒子が分散された複合材料により構成されており、
    前記ダイヤモンドの含有量が前記複合材料の全体に対して50体積%以上85体積%以下であり、
    前記金属マトリクス中にMgSiを含有し、
    前記ダイヤモンド粒子のうち、少なくとも一部の粒子は、その表面にSiC層を具え、
    前記複合材料の室温における熱伝導率が400W/m・K以上である放熱部材。
  2. 前記複合材料の相対密度が97.5%超である請求項1に記載の放熱部材。
  3. 前記ダイヤモンドの粒子の平均粒径が10μm以上100μm以下である請求項1又は請求項に記載の放熱部材。
  4. 前記ダイヤモンドの粒子の平均粒径が70μm以下である請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の放熱部材。
  5. 前記ダイヤモンドの含有量が前記複合材料の全体に対して62.19体積%以上85体積%以下である請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の放熱部材。
  6. 前記複合材料中のSiの含有量が{(19.0827/309.6879)×100}質量%以下である請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の放熱部材。
  7. 請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の放熱部材と、この放熱部材に搭載される半導体素子とを具える半導体装置。
  8. ダイヤモンドからなる粉末成形体の表面がSiCに転化されているSiC被覆成形体を用意する準備工程と、
    前記SiC被覆成形体を酸化して、前記SiCの少なくとも表面側部分を珪素酸化物に転化して、珪素酸化物を具える酸化成形体を形成する酸化工程と、
    前記酸化成形体に溶融したマグネシウム又はマグネシウム合金を溶浸させ、前記珪素酸化物と前記溶融したマグネシウム又はマグネシウム合金との反応によりMgSiを生成しながら、当該マグネシウム又はマグネシウム合金と前記ダイヤモンドとを複合する複合工程とを具える複合材料の製造方法。
  9. 前記準備工程では、
    ダイヤモンド粉末とSi粉末とを用いて粉末成形体を形成した後、この粉末成形体をSiの融点以上の所定の保持温度に加熱することで、この粉末成形体の表面をSiCに転化する請求項に記載の複合材料の製造方法。
  10. 前記準備工程では、
    ダイヤモンド粉末を用いて粉末成形体を形成した後、この粉末成形体を、Siを含有するガス中で所定の保持温度に加熱することで、この粉末成形体の表面をSiCに転化する請求項に記載の複合材料の製造方法。
  11. 前記ダイヤモンド粉末は、工業用ダイヤモンドであり、
    前記所定の保持温度までに加熱する時間を10分以下とする請求項9又は請求項10に記載の複合材料の製造方法。
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