以下に、本発明に係る車両運動制御装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
〔実施形態〕
図1は、実施形態に係る車両運動制御装置を備える車両の概略図である。実施形態に係る車両運動制御装置2を備える車両1は、内燃機関であるエンジン12が動力源として搭載され、エンジン12の動力によって走行可能になっている。このエンジン12には変速装置の一例である自動変速機14が接続されており、エンジン12が発生した動力は、自動変速機14に伝達可能になっている。この自動変速機14は、複数の変速段を複数有しており、自動変速機14で変速した動力は動力伝達経路を介して、車両1が有する車輪4のうち駆動輪として設けられる左右の前輪6へ駆動力として伝達される。これにより、車両1は走行可能になっている。また、自動変速機14には、当該自動変速機14の出力軸(図示省略)の回転速度を検出することを介して車速を検出可能な車速検出手段である車速センサ16が設けられている。
なお、実施形態に係る車両運動制御装置2を備える車両1は、エンジン12で発生した動力が前輪6に伝達され、前輪6で駆動力を発生する、いわゆる前輪駆動車となっているが、車両1は、後輪8で駆動力を発生する後輪駆動や、全ての車輪4で駆動力を発生する四輪駆動など、前輪駆動以外の駆動形式であってもよい。また、動力源としては内燃機関以外を使用してもよく、動力源として電動機を用いたり、エンジン12と電動機との双方を用いたりしてもよい。
前輪6は駆動輪として設けられると同時に操舵輪としても設けられており、このため前輪6は、運転者が運転操作を行う際に用いるハンドル20によって操舵可能に設けられている。このハンドル20は、電動パワーステアリング装置であるEPS(Electric Power Steering)装置22に接続されており、EPS装置22を介して、前輪6を操舵可能に設けられている。
また、車両1には、車両1の外部の温度である外気温を検出する外気温検出手段である外気温センサ30が設けられている。この外気温センサ30は、検出部分の少なくとも一部が車両1の外部に連通、または露出しており、これにより外気温を検出することができる。
これらのように車両1に搭載される各装置のうち、エンジン12や自動変速機14、EPS装置22は、車両1に搭載されると共に車両1の各部の制御を行うECU(Electronic Control Unit)40に接続されており、このECU40により制御されて作動する。また、ECU40には、車速センサ16や外気温センサ30が接続されており、これらの車速センサ16や外気温センサ30は、車速や外気温を検出して、ECU40に伝達する。ECU40は、このように当該ECU40に接続される各装置やセンサ類との間で情報の伝達や信号の送受信が可能になっている。
図2は、図1に示す車両運動制御装置の要部構成図である。ECU40には、CPU(Central Processing Unit)等を有する処理部42や、RAM(Random Access Memory)等の記憶部62、さらに入出力部64が設けられており、これらは互いに接続され、互いに信号の受け渡しが可能になっている。また、ECU40に接続されているエンジン12、自動変速機14、車速センサ16、EPS装置22、舵角センサ24、外気温センサ30は、入出力部64に接続されており、入出力部64は、これらのエンジン12等との間で信号の入出力を行う。また、記憶部62には、車両運動制御装置2を制御するコンピュータプログラムが格納されている。
また、このように設けられるECU40の処理部42は、舵角センサ24での検出結果等に基づいて運転者の運転操作の状態を取得する運転操作取得手段である運転操作取得部44と、車速センサ16での検出結果に基づいて車両1の走行時における車速を取得する車速取得手段である車速取得部46と、外気温センサ30での検出結果に基づいて外気温を取得する外気温取得手段である外気温取得部48と、車両1の走行時におけるタイヤ温度を取得するタイヤ温度取得手段であるタイヤ温度取得部50と、エンジン12で発生する動力を制御したり、自動変速機14の変速制御を行ったりすることにより車両1の走行制御を行う走行制御手段である走行制御部52と、車両1の運動を制御する運動制御手段である運動制御部54と、車両1の走行状態を判定する走行状態判定手段である走行状態判定部56と、を有している。
ECU40によって車両運動制御装置2の制御を行う場合には、例えば、車速センサ16等の検出結果に基づいて、処理部42が上記コンピュータプログラムを当該処理部42に組み込まれたメモリに読み込んで演算し、演算の結果に応じてEPS装置22等を作動させることにより制御する。その際に処理部42は、適宜記憶部62へ演算途中の数値を格納し、また格納した数値を取り出して演算を実行する。
この実施形態に係る車両運動制御装置2は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。車両1の走行時には、運転者がアクセルペダル等の運転操作手段を操作することによる運転操作の状態を、運転操作取得部44で取得し、この運転操作取得部44で取得した運転操作の状態に応じて、走行制御部52で、エンジン12等の走行に関わる装置を制御する。これにより、車両1は運転者の運転操作に応じて走行をする。
また、車両1は、運転者から運動を行わせる入力や外部から入力があった場合、その入力に応じた運動を行う。例えば、車両1を旋回させる際に、運転者がハンドル20を操作した場合には、ハンドル20を操舵する際における回転トルクである操舵トルクがEPS装置22に入力され、入力された操舵トルクの大きさに応じてEPS装置22から前輪6に対して押力または引張力が出力される。その際に、EPS装置22は、操舵トルクに対してアシストトルクを付与して、前輪6に対して出力する。これにより、前輪6はハンドル20操作に応じた舵角で向きが変化し、前輪6には横力が発生する。従って、前輪6の向きが変化し、車両1全体の進行方向が変化するため、車両1は旋回する。
また、この車両1は、当該車両1の走行時における安全性の向上や、車両1の運動特性を運転者の感覚に近付ける等を目的とする運動制御が可能になっている。具体的には、運転者がハンドル20操作を行う場合、EPS装置22は、操舵トルクにアシストトルクを付与して前輪6の向きを変えるが、運動制御を行う場合には、車両1の走行状態に応じて、このアシストトルクを変化させる。これにより、運転者による運転操作に対する運転特性を、車両1の走行状態に応じて変化させる。
車両1の走行時には、このように走行状態に応じて運転特性を変化させることにより、運動制御を行うことができるように設けられているが、この場合に用いる車両1の走行状態としては、車輪4が有するタイヤ10の温度であるタイヤ温度を用いる。即ち、本実施形態に係る車両運動制御装置2では、運転操作に対する運動特性をタイヤ温度に基づいて変化させ、車両1の走行時における運動制御を行う。
ここで、タイヤ温度と運動特性との関係について説明する。車両1の走行時には、車輪4が有するタイヤ10は様々な力を発生し、この力に基づいた運動特性で車両1は走行する。車両1は、このようにタイヤ10で発生する力に基づいた運動特性で走行するが、タイヤ10で発生する力の特性は温度依存性が高く、タイヤ10の温度に応じて変化する。
このように、タイヤ10で発生し、車両1の走行時における運動特性に影響を与える力としては、コーナリングパワーや、セルフアライニングパワーが挙げられる。このうち、コーナリングパワーは、図1に示す単位スリップ角(横滑り角)β当たりのコーナリングフォースCFに相当する力になっている。スリップ角βとは、タイヤ10の進行方向とタイヤ中心面とがなす角度であり、コーナリングフォースCFは、車両1のコーナリング時に、タイヤ10の進行方向に対して直角方向へかかる分力となっている。つまり、コーナリングパワー(CP)は、車輪4の回転方向に直交する方向の力となっており、即ち、タイヤ10に発生する横力となっている。
また、セルフアライニングパワーは、図1に示す単位スリップ角β当たりのセルフアライニングトルクSATに相当する力になっている。このセルフアライニングトルクSATとは、タイヤ10の接地点周り(垂直軸周り)に発生するモーメントであり、車両1の直進方向に対して前輪6の向きを変化させた場合に、前輪6が直進方向の向きに戻ろうとする復元力になっている。つまり、タイヤ10は、所定のスリップ角βを有して転がっている場合、コーナリングフォースCFの着力点がタイヤ10の接地中心点とずれるため、接地中心周りに、スリップ角βを小さくしようとする方向に力(トルク)が働く。この力がセルフアライニングトルクSATになっており、セルフアライニングトルクSATは、車両1の直進安定性やハンドル20の操舵時の重さに影響を与える力になっている。つまり、セルフアライニングパワー(SAP)は、車輪4の移動方向に対して車輪4の向きが回転方向に沿った方向になるようにタイヤ10に発生する力となっており、このようにタイヤ10に発生する力によって、直進安定性や操舵時の重さが変化する。
図3は、タイヤ温度とコーナリングパワーとの関係を示す説明図である。図4は、タイヤ温度とセルフアライニングパワーとの関係を示す説明図である。タイヤ10は、外周部分にトレッドゴムが配設されて構成されているが、トレッドゴムは、温度によって状態が変化し、タイヤ温度が高くなるに従って柔らかくなって変形し易くなる。このため、CPやSAPは、垂直荷重が同等の場合には、タイヤ温度によって特性が変化し、例えば、CPは、図3に示すように、タイヤ温度が低くなるに従って大きくなり、反対にタイヤ温度が高くなるに従って小さくなる。SAPも同様に、図4に示すように、タイヤ温度が低くなるに従って大きくなり、反対にタイヤ温度が高くなるに従って小さくなる。
CPやSAPは、これらのようにタイヤ温度に伴って変化するが、CPやSAPが変化した場合、車両1の走行時における運転者の運転感覚も変化する場合がある。このため、例えば、車両1の走行開始初期等のタイヤ10の冷間時と、走行開始後、所定時間が経過してタイヤ10の温度が上昇した場合とでは、CPやSAPが変化し、運転者の運転感覚が相違する場合がある。具体的には、タイヤ10の温度が高くなり、CPやSAPが低下するに従って、運転者による運転操作の操作力や、車両1の走行時における外乱入力に対して、車両1の挙動が変化し易くなる。
このため、本実施形態に係る車両運動制御装置2では、タイヤ10の温度が相対的に高くなるに従って、操作力や外乱等の入力に対する車両1の挙動変化を抑制し、或いは、タイヤ10の温度が相対的に低くなるに従って、操作力や外乱等の入力に対する車両1の挙動変化を許容し、タイヤ温度に関わらず操作力等の入力に対する車両1の挙動を、極力一定にする。即ち、車両1への入力に対する挙動変化の変化量を、タイヤ温度に関わらず一定にする。
図5は、タイヤ特性と挙動変化の抑制度合いとの関係を示す説明図である。タイヤ温度に関わらず、車両1への入力に対する挙動変化の変化量を一定にする方法について説明すると、車両1の走行時における挙動変化を任意に制御できるようにし、この挙動変化の制御を、タイヤ温度に応じて変化させる。具体的には、車両1への入力に対する挙動変化を抑制可能にし、この挙動変化の抑制度合いL1を、図5に示すようにタイヤ温度が上昇するに従って大きくする。これにより、タイヤ温度の上昇に伴って低下するCPやSAP等の低下分を、車両1の運動特性を変化させることにより補償する。
図6は、EPSゲインマップの説明図である。車両1への入力に対する挙動変化の変化量を、タイヤ温度に関わらず一定にする場合には、このようにタイヤ温度に応じて車両1の運動特性を変化させるが、この運動特性の変化は、ECU40の処理部42が有する運動制御部54で、EPS装置22で発生するアシストトルクを変化させることにより行う。つまり、EPS装置22は、ハンドル20に入力される操舵トルクにアシストトルクを付与して前輪6の向きを変化させることにより、前輪6を操舵する際における操舵力の軽減を図っているが、運動特性を変化させる場合には、タイヤ温度に応じて、このアシストトルクを変化させる。これにより、操舵力に対する実際の操舵量を変化させ、車両1の走行時における運動特性を変化させる。
このように、タイヤ温度に応じてEPS装置22のアシストトルクを変化させる場合には、例えば、EPS装置22を制御する際におけるゲインであるEPSゲインを、タイヤ温度に応じて変化させる。具体的には、EPS装置22への入力に対してEPS装置22から出力する際におけるゲインであるEPSゲインを、運動制御部54によって調節することによりタイヤ温度が高くなるに従って小さくし、タイヤ温度が低くなるに従って大きくする。これにより、タイヤ温度が高くなるに従ってEPS装置22のアシストトルクを小さくし、タイヤ温度が低くなるに従ってアシストトルクを大きくする。
つまり、タイヤ特性であるCPやSAPは、タイヤ温度が上昇すると低下するため、運転者が操舵した際における反力、即ち、操舵トルクに対する反力も、タイヤ温度が高くなるに従って低下する。このため、タイヤ温度が高い場合には、タイヤ温度が低い場合と比較して、操作する際における力が小さくても操舵することが可能になる。これにより、タイヤ温度が高くなった場合のアシストトルクを、タイヤ温度が低い場合のアシストトルクと同じ大きさにすると、操舵をするのに必要な力に対する運転者の操舵トルクとアシストトルクとの合計値が、タイヤ温度が低い場合と比較して過剰に大きくなり易くなる。この場合、前輪6の向きを必要以上に変化させ過ぎる場合があり、車両1の挙動が大きくなり過ぎる場合がある。従って、タイヤ温度が高くなるに従ってEPS装置22のアシストトルクが小さくなるように運動制御部54でEPSゲインを小さくすることにより、車両1の挙動が大きくなり過ぎることを抑制する。
反対に、CPやSAPは、タイヤ温度が低下すると上昇するため、操舵トルクに対する反力も、タイヤ温度が低くなるに従って増加する。このため、タイヤ温度が低い場合には、タイヤ温度が高い場合と比較して、操作する際における力を大きくする必要がある。従って、タイヤ温度が低くなるに従ってEPS装置22のアシストトルクが大きくなるように運動制御部54でEPSゲインを大きくすることにより、車両1を走行の運転操作に対する挙動量を確保する。これにより、車両1への入力に対する挙動変化の変化量を、タイヤ温度に関わらず同程度にすることができる。
車両1の運動制御を行う場合には、このようにタイヤ温度に応じて車両1の運動特性を変化させることにより、走行時の挙動の変化量を調節するが、この制御に用いるタイヤ温度は、実施形態に係る車両運動制御装置2では、車速と外気温とに基づいて推定する。このうち、車速は、車速センサ16での検出結果により、ECU40の処理部42が有する車速取得部46で取得し、外気温は外気温センサ30での検出結果より、ECU40の処理部42が有する外気温取得部48で取得する。これらのように取得した車速と外気温とに基づいて、ECU40の処理部42が有するタイヤ温度取得部50でタイヤ温度を推定することにより、タイヤ温度を取得する。
図7は、横加速度の発生率についての説明図である。図8は、前後加速度の発生率についての説明図である。これらの図7及び図8は、車両1の一般的な走行時における加速度の発生の度合いを図示したものになっている。ここで、タイヤ温度の推定方法について説明する。車両1の走行時におけるタイヤ10は、車両1が走行することにより外部から入力されるエネルギによって熱を発生するが、車両1の走行時にタイヤ10に入力されるエネルギは、(Qin=転がり抵抗分エネルギ+制駆動分エネルギ+コーナリング分エネルギ)で表すことができる。
また、車両1の走行時における一般的な走行では、図7に示すように、走行時間の約60%が横加速度0.1G以下となり、図7、図8に示すように、走行時間の約90%が横加速度及び前後加速度とも0.4G以下となる。このように、一般的な走行では、走行時の大部分において、横加速度や前後加速度が小さい状態で走行をする場合が多いので、横加速度が発生した場合にタイヤ10に発生するエネルギであるコーナリング分エネルギや、前後加速度が発生した場合にタイヤ10に発生するエネルギである制駆動分エネルギは、一般走行では無視することができる。このため、タイヤ10に入力されるエネルギQinは、コーナリング分エネルギ及び制駆動分エネルギを無視し、タイヤの転がり抵抗をRRとし、車速をVとし、タイヤ10によって決まる係数をaと設定した場合に、下記の式(1)で表すことができる。
Qin=α・RR・d=α・RR・Δt・V=aV・・・(1)
また、式(1)に基づいて、タイヤ10の温度を推定する場合におけるタイヤ温度Ttireを式で表すと、外気温をTairとし、タイヤ10によって決まる係数b、cを設定した場合に、下記の式(2)のように表すことができる。
Ttire=a・V+b・(Ttire−Tair)+Ttire+c・・・(2)
なお、式(1)、式(2)で用いられる係数のうち、aは、タイヤ10の発熱に関する係数となっており、タイヤ10を構成するゴムの物性によって変化する。この係数aは、ヒステリシスロスが小さいゴムを使用した場合に、値が小さくなる。また、bは、タイヤ10の放熱に関する係数となっており、タイヤ10のサイズによって変化する。例えば、サイズが大きいタイヤ10の場合、表面積が大きくなるので、放熱し易くなるが、このような放熱特性を、係数bによって表す。また、cは、ハンドル20を操舵した場合にタイヤ10が発熱をする量や、制動装置(図示省略)によってブレーキをかけることによって発熱する量など、車両1の走行状態によって変化する値になっている。また、これらの係数a、b、cは、全て0以外の値として設定される。
車両1の走行時には、車速取得部46で取得した車速Vと、外気温取得部48で取得した外気温Tairとに基づいて、タイヤ温度取得部50で式(2)を用いてタイヤ温度Ttireを推定し、取得する。
タイヤ温度は、このように車速と外気温とに基づいて推定することができるが、タイヤ温度によって変化するタイヤ特性は、図3や図4に示すように温度が高くなるに従ってCPやSAPが小さくなっている。さらに、このタイヤ特性は、タイヤ温度が所定の温度を越えると、タイヤ温度に対するCPやSAPの変化が小さくなっている。
一方、車両1の運動制御は、タイヤ温度を推定しながら行うため、制御時には演算等の処理が多く、ECU40の負担が大きくなっているが、タイヤ特性は、このようにタイヤ温度が所定の温度よりも高い場合には、タイヤ温度の変化に対する変化が少なくなる。このため、本実施形態に係る車両運動制御装置2では、タイヤ温度が所定の温度よりも高い場合にはタイヤ温度の推定を行わず、タイヤ温度は予め設定される温度であるものとして運動制御を行う。
このような、タイヤ温度が高くなる走行状態としては、横加速度や前後加速度が大きい場合における走行状態が挙げられる。つまり、横加速度や前後加速度が大きい場合には、タイヤ10に入力されるコーナリング分エネルギや制駆動分エネルギが大きくなることによりタイヤ温度が高くなり易くなるため、横加速度や前後加速度が大きくなる頻度が高い場合には、タイヤ温度の推定を行わずに運動制御を行う。
ここで、このように横加速度や前後加速度が大きくなり易い状況について説明すると、一般的な走行では、図7、図8に示すように、横加速度や前後加速度は、走行時間の約90%で0.4G以下となり、横加速度、または前後加速度が0.4G以上となる頻度は、走行時間の約10%以下である。このため、このような一般的な走行時における加速度の状態から推察すると、横加速度、または前後加速度が0.4G以上となる頻度が走行時間に対して10%以上の場合には、一般的な走行とは異なる特殊な走行をしており、大きな横加速度や前後加速度によってタイヤ温度が高くなり易い状況であると判定することができる。
従って、横加速度、または前後加速度が0.4G以上となる頻度が走行時間に対して10%以上の場合には、一般的な通常走行ではない特殊な走行、例えば、スポーツ走行をしていると判定し、タイヤ温度の推定を行わずに運動制御を行う。即ち、車両1の走行状態は、車両1の走行時に車両1に生じる加速度に応じて判断し、詳しくは、所定の大きさの加速度が生じる頻度に応じて判断し、スポーツ走行をしていると判定した場合には、タイヤ温度の推定を行わずに運動制御を行う。この場合、タイヤ温度は予め設定される温度であるものとして運動制御を行うが、このように設定される温度は、図3や図4においてTconstで示すように、タイヤ温度の変化に対してCPやSAPの変化が小さくなると判断することのできる境界の温度となっている。
つまり、車両1がスポーツ走行をしていると判定された場合には、タイヤ温度取得部50でタイヤ温度の推定を行わずに、タイヤ温度は、設定値であるTconstであるものとして、運動制御部54でEPS装置22を制御することにより、運動特性を、タイヤ温度がTconstである場合に適した運動特性にする。このように、運動制御部54は、車両1の走行状態に応じて、タイヤ温度取得部50で取得したタイヤ温度に基づく運動制御と、予め定められた所定値に基づく運動制御とを切替えて運動制御を行う。
図9は、実施形態に係る車両運動制御装置の処理手順の概略を示すフロー図である。次に、本実施形態に係る車両運動制御装置2の制御方法、即ち、当該車両運動制御装置2の処理手順の概略について説明する。なお、以下の処理は、車両1の運動特性をタイヤ温度に基づいて設定し、車両1の運動制御を行う場合における処理手順になっており、車両1の運転時に各部を制御する際に、所定の期間ごとに呼び出されて実行する。
本実施形態に係る車両運動制御装置2の処理手順では、まず、車速Viと外気温Tairiとを取得する(ステップST101)。なお、ここで用いるiは、制御時におけるカウンタを示しており、ECU40の記憶部62に記憶されている。このiは、車両1のメインスイッチがONになった場合、または、車両運動制御装置2による運動制御の開始時にi=0が演算され、iには0が入れられる。また、車速Viは、運動制御の処理が重ねられることによって増加するカウンタi時における車速Vを示しており、同様に外気温Tairiは、カウンタi時における外気温Tairを示している。これらの車速Viと外気温Tairiとの取得は、車速Viは車速センサ16の検出結果を車速取得部46で取得し、外気温Tairiは外気温センサ30の検出結果を外気温取得部48で取得することにより行う。
次に、i≠0であるか否かを判定する(ステップST102)。この判定は、運動制御部54で行い、記憶部62に記憶されているiが0であるか否かを判定する。この判定により、i≠0ではないと判定された場合、即ち、i=0であると判定された場合(ステップST102、No判定)には、タイヤ温度Ttirei=外気温Tairiにする(ステップST103)。つまり、i=0の場合には、車両1のメインスイッチがONになった直後であったり、車両運動制御装置2による運動制御の開始直後であったりするため、タイヤ10の温度は、車両1の走行時に発生するエネルギによっては上昇していないと推測することができる。このため、この場合には、タイヤ温度は現在の外気温と同程度であると判断し、タイヤ温度取得部50でタイヤ温度Ttirei=外気温Tairiを演算してタイヤ温度Ttireiに外気温Tairiの値を代入する。
これに対し、i≠0であると判定された場合(ステップST102、Yes判定)には、次に、長時間駐車であるか否かを判定する(ステップST104)。この判定は、運動制御部54で行う。運動制御部54は、車速取得部46で取得する車速に基づき、車速が0km/hになってからの時間が長時間であるか否かを判定する。この判定をする際に用いる時間は、車両1を停止させた後に、車両1を長時間停止させることによってタイヤ10の温度が外気温と同程度になると判断することができる時間の閾値として予め設定され、記憶部62に記憶されている。運動制御部54は、車速が0km/hになってからの時間が、このように記憶部62に記憶されている閾値となる時間以上であるか否かを判定することにより、長時間駐車であるか否かを判定する。
この判定により、長時間駐車であると判定された場合(ステップST104、Yes判定)には、タイヤ温度は現在の外気温と同程度であると判断し、タイヤ温度取得部50でタイヤ温度Ttirei=外気温Tairiを演算する(ステップST103)。これにより、タイヤ温度Ttireiに外気温Tairiの値を代入する。
これに対し、長時間駐車ではないと判定された場合(ステップST104、No判定)には、走行状態判定ルーチンを実行する(ステップST105)。
図10は、走行状態判定ルーチンの処理手順を示すフロー図である。走行状態判定ルーチンを実行する場合には、記憶部62に記憶されている走行状態判定ルーチンを呼び出して実行する。この走行状態判定ルーチンでは、まず、横加速度、前後加速度を取得する(ステップST201)。この横加速度や前後加速度は、車両1に搭載され、車両1に発生する加速度を検出する加速度センサ(図示省略)によって検出し、この検出結果を走行状態判定部56で取得する。
なお、これらの横加速度や前後加速度は、加速度センサで検出すること以外によって取得してもよい。例えば、前後加速度は、エンジン12の運転状態や自動変速機14で選択されている変速段や車速センサ16で検出される車速に基づいて加速度を推定したり、制動装置の作動状態に基づいて減速度を推定したりすることにより取得してもよい。また、横加速度は、車速センサ16で検出される車速と舵角センサ24で検出される舵角とに基づいて推定することにより取得してもよい。
次に、加速度の発生頻度を計算する(ステップST202)。この計算は、走行状態判定部56で横加速度や前後加速度を継続的に取得し、図7や図8に例示するように、加速度の大きさごとの発生頻度を算出する。
次に、0.4G頻度>10%であるか否かを判定する(ステップST203)。つまり、車両1の走行時間に対して、前後加速度や横加速度が0.4G以上になっている時間が10%を超えているか否かを、走行状態判定部56で算出した加速度の発生頻度に基づいて走行状態判定部56で判定する。
この判定により、0.4G頻度>10%であると判定された場合(ステップST203、Yes判定)には、スポーツ走行であると判定する(ステップST204)。つまり、スポーツ走行を行っている場合には、前後加速度や横加速度は値が大きくなり、また、値が大きくなる頻度も高くなる。このため、前後加速度や横加速度が0.4G以上になっている時間が10%を超えていると判定され、大きな加速度が発生し易い状態で走行をしていると判定された場合には、スポーツ走行を行っていると判定する。
これに対し、0.4G頻度>10%ではないと判定された場合(ステップST203、No判定)には、通常走行であると判定する(ステップST205)。つまり、通常の走行時には、前後加速度や横加速度は値が大きくなり難いため、前後加速度や横加速度が0.4G以上になっている時間が10%以下であると判定され、大きな加速度はあまり発生しない状態で走行をしていると判定された場合には、通常走行を行っていると判定する。
これらのように、加速度に基づいて車両1の走行状態を判定したら、この走行状態判定ルーチンから抜け出て、運動制御の元の処理手順に戻る。元の処理手順に戻ったら、次に、スポーツ走行であるか否かを判定する(ステップST106)。この判定では、走行状態判定ルーチンで判定した車両1の走行状態がスポーツ走行であるか否かを判定する。
この判定により、車両1の走行状態は通常走行であると判定された場合(ステップST106、No判定)には、{タイヤ温度Ttirei=a・Vi+b・(Ttirei−1−Tairi−1)+Ttirei−1+c}を演算する(ステップST107)。つまり、車両1は通常走行を行っていると判定された場合には、タイヤ温度取得部50は、車速取得部46で取得した車速Viと、外気温取得部48で取得した外気温Tairiとに基づいて、上述した式(2)を用いてタイヤ温度Ttireiを算出する。ここで、この演算に用いるTtirei−1とTairi−1とは、当該運動制御の処理手順が前回呼び出されて一連の処理を行った場合に取得したタイヤ温度と外気温になっている。タイヤ温度取得部50は、このように車速と外気温とを用いて演算することによりタイヤ温度を推測し、現在のタイヤ温度を取得する。
これに対し、スポーツ走行であるか否かの判定により、車両1の走行状態はスポーツ走行であると判定された場合(ステップST106、Yes判定)には、タイヤ温度Ttirei=設定タイヤ温度Tconstにする(ステップST108)。即ち、車両1はスポーツ走行を行っていると判定された場合には、タイヤ温度取得部50でタイヤ温度Ttirei=設定タイヤ温度Tconstを演算する。この設定タイヤ温度Tconstは、CPやSAPの変化が小さくなる温度として予め設定され(図3、図4参照)、記憶部62に記憶されている。タイヤ温度取得部50は、この演算を行うことにより、タイヤ温度Ttireiに設定タイヤ温度Tconstの値を代入する。
これらのように、{Ttirei=a・Vi+b・(Ttirei−1−Tairi−1)+Ttirei−1+c}を演算することによってタイヤ温度Ttireiを算出した場合(ステップST107)、または、Ttirei=Tconstを演算することによってタイヤ温度Ttireiを算出した場合(ステップST108)、または、Ttirei=Tairiを演算することによってタイヤ温度Ttireiを算出した場合(ステップST103)には、次に、タイヤ温度Ttireiに基づいて運動制御を行う(ステップST109)。この運動制御は、運動制御部54で行う。運動制御部54は、タイヤ温度Ttireiと、記憶部62に記憶されたEPS装置22のゲインマップとに基づいてEPS装置22を制御することにより、運動制御を行う。
詳しくは、このように運動制御を行う際に用いるEPS装置22のゲインマップは、図6に示すように、タイヤ温度とEPSゲインとの関係を示すマップになっており、運動制御部54は、算出したタイヤ温度Ttireiを、このゲインマップに照らし合わせることにより、現在のタイヤ温度におけるEPSゲインを導出する。運動制御部54は、このEPSゲインを用いてEPS装置22を制御することにより、運転者がハンドル20を操作した場合にEPS装置22で発生するアシストトルクを、タイヤ温度に応じて調節する。即ち、運動制御部54は、タイヤ温度に応じて運動特性を変化させることにより、運動制御を行う。
このように、タイヤ温度Ttireiに基づいて運動制御を行ったら、次に、i=i+1を演算する(ステップST110)。つまり、記憶部62に記憶されているiに対してi+1の値を入れることにより、iに1を加算する。このように、i=i+1を演算したら、この処理手順から抜け出る。
以上の車両運動制御装置2は、タイヤ温度に基づいて車両1の運動を制御する運動制御部54は、車両1の走行状態に応じて、車両1の運動制御に用いるタイヤ温度を切替えている。これにより、車両1の運動制御を一律な手法で行わず、車両1の走行状態によっては、簡易な制御によって運動制御を行うことができる。これにより、車両1の走行状態に適した運動制御を、より容易に行うことができる。
具体的には、車両1の走行状態に応じて運動制御を切替えており、タイヤ温度取得部50で取得したタイヤ温度に基づいて行う運動制御と、予め定められた所定値に基づいて行う運動制御とを、車両1の走行状態に応じて切替えている。これにより、タイヤ温度に基づいて運動制御を行う場合には、走行時に変化するタイヤ温度に基づいて制御することにより適切な制御を行うことができ、所定値に基づいて運動制御を行う場合には、演算時間の短縮を図ったり、ECU40の負荷を低減したりすることができる。この結果、車両1の走行状態に適した運動制御を、より容易に行うことができる。
また、運動制御部54は、車両1の通常走行時には、タイヤ温度取得部50で取得したタイヤ温度に基づいて運動制御を行い、車両1のスポーツ走行時には、所定値として予め定められた設定タイヤ温度Tconstに基づいて運動制御を行っている。これにより、タイヤ温度の変化による運動特性が変化し易い通常走行時は、タイヤ温度に基づいて運動制御を行うことにより、適切な制御を行うことができる。また、タイヤ温度の変化による運動特性が変化し難いスポーツ走行時には、所定値に基づいて運動制御を行うことにより、演算時間の短縮やECU40の負荷の低減を図ることができる。この結果、車両1の走行状態に適した運動制御を、より容易に行うことができる。
また、タイヤ温度取得部50は、車速取得部46で取得した車速と、外気温取得部48で取得した外気温とに基づいてタイヤ温度を算出することにより推定し、現在のタイヤ温度を取得するので、タイヤ10の温度を検出するセンサ類を設けることなく、タイヤ10の温度を取得することができる。これにより、タイヤ温度に基づいて車両1の運動制御を行う際に、容易に行うことができ、また、製造コストの低減を図ることができる。つまり、車両1の走行時には、タイヤ10は回転をするため、このように回転をするタイヤ10に温度を検出するセンサ類を設けるのは困難なものとなっており、製造コストの上昇につながり易くなる。これに対し、実施形態に係る車両運動制御装置2では、車速と外気温とに基づいてタイヤ温度を取得するので、容易にタイヤ温度を取得することができる。この結果、車両1の走行状態に適した運動制御を、製造コストの上昇を抑えつつ、より容易に行うことができる。
また、スポーツ走行を行っていると判定された場合の運動制御に用いる所定値は、予め定められたタイヤ温度である設定タイヤ温度Tconstになっている。このため、車両1の運動制御を行う場合に、車両1がスポーツ走行を行っていると判定された場合には、この設定タイヤ温度Tconstに基づいて制御を行うことにより、演算時間の短縮やECU40の負荷の低減を図りつつ、車両1の走行状態に適した制御を行うことができる。この結果、より容易に、車両1の走行状態に適した運動制御を行うことができる。
また、運動制御の切替えの基準となる車両1の走行状態は、車両1の走行時に車両1に生じる加速度に応じて判断するので、タイヤ温度に影響する車両1の走行状態を、より適切に判断することができる。この結果、より確実に、車両1の走行状態に適した運動制御を行うことができる。
また、車両1の走行状態は、さらに、所定の大きさの加速度が生じる頻度に応じて判断するので、所定の走行時間にかけての加速度に基づいて車両1の走行状態を判定することができ、車両1の走行状態を、精度よく判断することができる。この結果、より確実に、車両1の走行状態に適した運動制御を行うことができる。
なお、実施形態に係る車両運動制御装置2では、車両1のスポーツ走行時の運動制御を行う場合に用いる所定値として、予め設定されているタイヤ温度である設定タイヤ温度Tconstを使用し、この設定タイヤ温度Tconstに基づいて運動制御を行っているが、スポーツ走行時の運動制御に用いる所定値は、設定タイヤ温度Tconst以外でもよい。スポーツ走行時の運動制御を行う場合に用いる所定値は、例えば、予め定められたタイヤ温度の場合に当該タイヤ温度に基づいて運動制御を行う際に用いる値を用いてもよい。つまり、運動制御をEPS装置22によって行う場合について説明すると、設定タイヤ温度Tconstのように、予め定められたタイヤ温度の場合のEPSゲインを予め設定し、この設定されたEPSゲインを、スポーツ走行時の運動制御を行う場合に用いる所定値として用いてもよい。
このように、EPSゲインの所定値を設定した場合には、車両1がスポーツ走行を行っていると判定された場合には、EPS装置22を、このEPSゲインの設定値で制御することにより、運動特性をスポーツ走行に適した特性に変化させる。これにより、スポーツ走行を行っていると判定された場合には、タイヤ温度に基づいてEPSゲインを導出することなく、EPSゲインの設定値によって直接EPS装置22を制御することができるので、演算処理を省略することができる。従って、より確実に、演算時間の短縮化を図ったり、ECU40の負荷を低減したりすることができる。この結果、車両1の走行状態に適した運動制御を、より確実に容易に行うことができる。
また、実施形態に係る車両運動制御装置2では、EPS装置22の制御を行うことにより車両1の運動制御を行っているが、車両1の運動制御は、EPS装置22以外の装置を用いて行ってもよい。例えば、車両1の走行状態に応じて後輪8の操舵を行うアクティブ後輪操舵装置であるARS(Active Rear Steering)装置が設けられている場合、ARS装置で後輪8を操舵することにより車両1の運動制御を行ってもよい。この場合、後輪8を操舵する際における制御量を、通常走行時にはタイヤ温度に基づいて変化させ、スポーツ走行時には、予め定められたタイヤ温度に基づく制御量、または、予め定められた制御量で制御することにより、車両1の運動制御を切替える。
また、車両1の走行状態に応じて駆動力や制動力を制御することにより挙動の安定化を図る挙動安定化装置であるVSC(Vehicle Stability Control)装置が設けられている場合、VSC装置で駆動力や制動力を制御することにより、車両1の運動制御を行ってもよい。この場合、駆動力や制動力の制御量を、通常走行時にはタイヤ温度に基づいて変化させ、スポーツ走行時には、予め定められたタイヤ温度に基づく制御量、または、予め定められた制御量で制御することにより、車両1の運動制御を切替える。
また、車輪4の懸架装置に、懸架装置によって車輪4がストロークする際の減衰力を調節可能な減衰力可変装置であるAVS(Adaptive Variable Suspension system)装置が設けられている場合、AVS装置で減衰力を調節することにより車両1の運動制御を行ってもよい。この場合、減衰力の制御量を、通常走行時にはタイヤ温度に基づいて変化させ、スポーツ走行時には、予め定められたタイヤ温度に基づく制御量、または、予め定められた制御量で制御することにより、車両1の運動制御を切替える。
これらのように、車両1の運動制御を行う場合における装置は、タイヤ温度に基づいて装置の制御量を変化させることができ、このように制御量を変化させることにより運動制御を行うことができる装置であれば、装置の種類や、制御の手法は問わない。
また、実施形態に係る車両運動制御装置2では、タイヤ温度は車速と外気温とに基づいて推定することにより取得しているが、タイヤ温度は、これ以外の手法で取得してもよい。例えば、車速や外気温以外に基づいてタイヤ温度を推定してもよく、または、タイヤ温度を検出するセンサ等の検出手段を設け、このような検出手段で検出することにより、タイヤ温度を取得してもよい。タイヤ温度を取得する手法は、車両1の走行時に変化する温度を適宜取得することができる方法であれば、その手法は問わない。
また、実施形態に係る車両運動制御装置2では、車両1の走行状態がスポーツ走行であるか否かを判定する場合に、前後加速度や横加速度が0.4G以上になっている時間が10%を超えているか否かに基づいて行っているが、これ以外の判定基準で判定を行ってもよい。即ち、車両1の走行状態が、タイヤ温度が、タイヤ温度の変化に対してCPやSAP等のタイヤ特性の変化が小さくなる温度領域になる走行状態であると判定できる基準であれば、判定基準や判定方法は問わない。
例えば、上述した判定方法とは異なる判定方法について例示すると、エンジン12の出力特性や、懸架装置の減衰力の特性を複数のモードに切替えることができ、スポーツ走行に適したモードを有する車両1の場合には、選択されるモードに基づいて車両1の走行状態を判定してもよい。即ち、この場合において、スポーツ走行に適したモードが選択された場合には、車両1の走行状態はスポーツ走行であるとの判定を行ってもよい。